説明

流路封止部材

【課題】破断後、流路封止部材の一部がチューブ内の環状の段差部に突き当たったとき、段差部の流路を大きく確保できる流路封止部材を提供する。
【解決手段】チューブの内面に固定され、両端が開口形成された筒状の固定基部2と、チューブと隙間を形成し、固定基部2の下流側の開口端を閉塞する閉塞部3と、固定基部2と閉塞部3との間に形成される破断部4と、を備えた流路封止部材1において、閉塞部3が、本体5と、本体5の表面に本体5の軸方向に沿って形成される溝6と、溝6の下流端両側において、本体5よりも径方向外側に突出するように形成される一対の突出体7と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療用チューブに対して適用されるものであり、初めはチューブ内の流路を塞ぎ、必要時に流路を開通する流路封止部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液や医療用液体を流すチューブにおいて、初めはチューブ内の流路を塞ぎ、必要時の破断操作を受けて一部が破断することにより流路を開通する流路封止部材の従来例として特許文献1が挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の流路封止部材(文献では連通ピース)は、胴部と羽根部が破断部(文献では薄肉部)を介して一体に形成されたもので、羽根部はその中腹部から先端に向けて扁平状に形成されている。羽根部はチューブ内面と接触しない構造であることから、破断操作後、羽根部は流体の流れを受けて下流側に流される。
【特許文献1】特許第3429900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チューブの下流側には、流された流路封止部材片を受け止める等の目的で、チューブ内径を小径とした段差部が設けられている場合が多く、特許文献1では、図7に示されるように羽根部に対する連結筒の内壁肩部がこれに当たる。特許文献1では、羽根部がこの段差部に突き当たったときに段差部の流路を塞がないようにするため、前記したように羽根部を扁平状に形成し、羽根部の両側のスペースから流体を流す構造としている。
【0005】
しかしながら、この技術では羽根部の先端により段差部の流路を非常に小さくすることとなり、特に段差部の流路断面積が小さい場合には、羽根部の先端が流路を塞いでしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような問題を解決するために創作されたものであり、破断後、流路封止部材の一部がチューブ内の環状の段差部に突き当たったとき、段差部の流路を大きく確保できる流路封止部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、チューブの内面に固定され、両端が開口形成された筒状の固定基部と、前記チューブと隙間を形成し、前記固定基部の下流側の開口端を閉塞する閉塞部と、前記固定基部と前記閉塞部との間に形成される破断部と、を備え、予め前記チューブ内の流路を塞ぐように設置され、前記破断部の破断により流路を開通する流路封止部材であって、前記閉塞部は、本体と、この本体の表面に本体の軸方向に沿って形成される溝と、この溝の下流端両側において、前記本体よりも径方向外側に突出するように形成される一対の突出体と、を備えることを特徴とする流路封止部材とした。
【0008】
この流路封止部材によれば、破断後において流体は、本体の表面から溝に入り、一対の突出体間の空間を経由して下流側へと流れる。突出体は本体よりも径方向外側に突設され、突出体とチューブの内面との隙間は小さいことから、流体は突出体の外側表面へは流れ込みにくく、突出体間の空間へと効率的に流れ込む。また、閉塞部が下流に移動する際、チューブの内面との隙間が小さいため、突出体がチューブの内面にスムースにガイドされることにより、閉塞部の移動姿勢が安定する。したがって、破断後において閉塞部がチューブの内面に引っ掛かることもない。そして、閉塞部がチューブ内面の段差部に達したとき、突き当たる箇所は突出体の縁部となり、突出体間の空間と段差部の流路とが大きく連通し、段差部において十分な流路面積が確保される。
【0009】
また本発明は、前記溝は、前記本体の全長の半分以上の長さを有することを特徴とする流路封止部材とした。
【0010】
この流路封止部材によれば、溝の長さを本体の全長の半分以上とすることで、流体をスムースに突出体間の空間に送ることができる。
【0011】
また本発明は、前記溝は、前記本体の軸心を挟んで一対形成され、前記突出体は、両溝に連通し、かつ下流側が開口した凹部を有していることを特徴とする流路封止部材とした。
【0012】
この流路封止部材によれば、閉塞部がチューブ内面の段差部に達したとき、突き当たる箇所は突出体の縁部となり、突出体間の空間に加えて凹部が段差部の流路と大きく連通する。したがって、段差部において、より一層の流路面積が確保される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、破断後に流路封止部材の一部がチューブ内の環状の段差部に突き当たったときであっても、流路を大きく確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
先ず本発明の流路封止部材が使用される流路の一例を図5に示し、その使用方法の流れを説明する。図5は献血の際に用いられる採血処理ユニットの流路構成図である。採血針101に接続するチューブ102の下流端は、三つ又の分岐路の内の一つに通じ、分岐路の残り一方はチューブ104を介してサンプリングポート103に通じ、残り他方はチューブ106を介して採血バッグ105に通じている。
【0015】
三つ又の分岐路は、具体的には単体の分岐チューブ107から構成されるものであり、第1分岐路107A、第2分岐路107B、第3分岐路107Cがそれぞれチューブ102の下流端、チューブ104の上流端、チューブ106の上流端に接続する。後記する流路封止部材1は、この分岐チューブ107における第3分岐路107Cに未使用状態で予め接続されている。
【0016】
初めに、採血針101によりドナー(供血者)から採血された血液は、第3分岐路107Cが流路封止部材1で塞がれているため、チューブ102からチューブ104側へと流れ、サンプリングポート103で検査用血液として処理される。その後、チューブ104の途中に設けたシャッタークレンメ108等を用いてサンプリングポート103側への流れを絶ち、流路封止部材1を破断して第3分岐路107Cを開通させることで、ドナーの血液がチューブ106を介して採血バッグ105に送られる。採血バッグ105からの血液は、ろ過器109を経由して血液バッグ(親バッグ)110に送られる。親バッグ110内の血液は分離され、分離された血漿は第1子バッグ111に移送される。その後、第2子バッグ112内の保存液を親バッグ110内の濃厚赤血球に添加する。
【0017】
以下、流路封止部材1について詳細に説明する。図1の(a)、(b)、(c)はそれぞれ流路封止部材の平面図、側面図、正面図、図2の(a)、(b)、(c)はそれぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図、図3は流路封止部材の外観斜視図、図4は破断後の流路封止部材の作用説明図である。
【0018】
図1〜図4に示すように、流路封止部材1は、チューブTの内面に液密に固定され、両端が開口形成された筒状の固定基部2と、チューブTの内面との間で隙間を形成し、固定基部2の下流側の開口端を閉塞する閉塞部3と、固定基部2と閉塞部3との間に形成される破断部4とを備える。
【0019】
チューブTは、例えば前記した分岐チューブ107の第3分岐路107Cに接続されているものであり、材質は塩化ビニル等からなる。チューブTの下流周りの内面には、小径の段差部Ta(図4)が形成されている。流路封止部材1は、固定基部2、閉塞部3および破断部4が一体成形された部材であり(図3)、材質はポリカーボネート等からなる。
【0020】
固定基部2の下流側の筒部は下流に向けて漸次縮径して、薄肉の破断部4に連なる。閉塞部3は、破断部4に連なって形成される本体5と、本体5の表面に本体5の軸方向に沿って形成される溝6と、溝6の下流端6Bの両側において、本体5よりも径方向外側に突出するように形成される一対の突出体7と、を備えている。
【0021】
本体5は円柱形状を呈している。溝6は、血液などの流体を、下流に位置した一対の突出体7間に効率良く流すために形成されるものであり、本実施形態では、溝6を本体5の軸心を挟んで一対形成している。溝6の上流壁は、流体を溝内にスムースに導くように傾斜面6Aとして形成される。また、溝6は、本体5の全長の半分以上、好ましくは3/4以上の長さを有する。本体5の全長とは、破断部4との境界部から下流端6Bまでの長さをいう。
【0022】
突出体7はチューブTの内面と隙間を形成し得る外郭形状を呈し、突出体7の下流端面の縁部が段差部Ta(図4)に突き当たるようになっている。本実施形態の突出体7は、溝6の下流端6Bから下流側に突出して、軸方向視U字形状を呈している。つまり、突出体7は、両溝6に連通し、かつ下流側が開口した凹部8を有した形状からなる。互いに対向しあう凹部8の底部間の距離は、図4に示すように段差部Taの内径と略同一の寸法である。
【0023】
以上の構成からなる流路封止部材1の作用を説明すると、破断部4が破断する前の状態では、流路は閉塞部3によって閉塞されている。そして、必要時、チューブTの外側から外力を加えて破断部4を破断させると、流体の流れを受けて閉塞部3が下流側に移動し、固定基部2の下流側の開口端が開通する。
【0024】
固定基部2の下流側の開口端から流れ出る流体は、本体5の表面から溝6に入り、一対の突出体7間の空間および凹部8を経由して下流側へと流れる。溝6の長さを本体5の全長の半分以上、好ましくは3/4以上とすることで、流体をスムースに突出体7間の空間および凹部8に送ることができる。突出体7は本体5よりも径方向外側に突設され、突出体7とチューブTの内面との隙間は小さいことから、流体は突出体7の外側表面へは流れ込みにくく、凹部8へと効率的に流れ込む。また、閉塞部3が下流に移動する際、チューブTの内面との隙間が小さいため、突出体7がチューブTの内面にスムースにガイドされることにより、閉塞部3の移動姿勢が安定する。したがって、破断後において閉塞部3がチューブTの内面に引っ掛かることもない。
【0025】
そして、図4に示しているように、閉塞部3が流れてチューブTの下流側に形成された小径の段差部Taに達しても、突出体7の縁部が段差部Taに突き当たる構造のため、段差部Taの流路が塞がれることはなく、両側の凹部8と段差部Taの流路とが大きな重なり代をもって連通する。
【0026】
特に、段差部Taの壁部が緩やかな曲面で傾斜状に形成されている場合、この壁部が突出体7の縁部に接触して、閉塞部3の軸心をチューブTの軸心上に誘導するように作用する。これにより、チューブTに対する閉塞部3の偏心が防止され、段差部Taによる開口干渉を防げるので、その分、凹部8の開口面積を大きく確保できる。
【0027】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。本発明に係る流路封止部材は採血用のチューブに限定されず、他の医療用チューブ、さらには他の分野で使用されるチューブにおいても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)、(b)、(c)はそれぞれ本発明に係る流路封止部材の平面図、側面図、正面図である。
【図2】(a)、(b)、(c)はそれぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図である。
【図3】本発明に係る流路封止部材の外観斜視図である。
【図4】破断後の流路封止部材の作用説明図である。
【図5】採血処理ユニットの流路構成図である。
【符号の説明】
【0029】
1 流路封止部材
2 固定基部
3 閉塞部
4 破断部
5 本体
6 溝
7 突出体
8 凹部
T チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの内面に固定され、両端が開口形成された筒状の固定基部と、
前記チューブと隙間を形成し、前記固定基部の下流側の開口端を閉塞する閉塞部と、
前記固定基部と前記閉塞部との間に形成される破断部と、
を備え、予め前記チューブ内の流路を塞ぐように設置され、前記破断部の破断により流路を開通する流路封止部材であって、
前記閉塞部は、
本体と、
この本体の表面に本体の軸方向に沿って形成される溝と、
この溝の下流端両側において、前記本体よりも径方向外側に突出するように形成される一対の突出体と、
を備えることを特徴とする流路封止部材。
【請求項2】
前記溝は、前記本体の全長の半分以上の長さを有することを特徴とする請求項1に記載の流路封止部材。
【請求項3】
前記溝は、前記本体の軸心を挟んで一対形成され、
前記突出体は、両溝に連通し、かつ下流側が開口した凹部を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流路封止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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