流路構造、これを備えた流路基板及び流体制御方法
【課題】高い精度で流体を制御できる流路構造を提供すること。
【解決手段】試料を導入する第1の導入部(11)と、前記試料を挟み込むための流体を導入する第2の導入部(13,17)と、前記試料を排出する排出部(12)と、を少なくとも備えた流路構造であり、前記試料の導入方向をX方向とすると、Y軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部(15)と、X軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部(16)と、を少なくとも備える流路構造(1)とすること。
【解決手段】試料を導入する第1の導入部(11)と、前記試料を挟み込むための流体を導入する第2の導入部(13,17)と、前記試料を排出する排出部(12)と、を少なくとも備えた流路構造であり、前記試料の導入方向をX方向とすると、Y軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部(15)と、X軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部(16)と、を少なくとも備える流路構造(1)とすること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造に関する。より詳しくは流路構造、これを備えた流路基板及び流体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少量の試料をマイクロ流路等に流し、その試料の分析を流路中で行う技術が、バイオ関連の分析や化学分析等をはじめ、幅広い分野に応用されている。例えば、生体物質や、自然環境における物質等の微量化学分析等に用いられている。
【0003】
このような技術が用いられるものとして、例えば、フローサイトメトリーが挙げられる。フローサイトメトリーでは、試料として細胞やタンパク質やビーズ等を対象とし、これらの分析を流路内で行う。この分析結果等を踏まえて、試料の分取を続いて行う。試料のソーティングを正確に行うためには、流路中の試料を整然と搬送し続けることが重要である。
【0004】
それ以外の分野として、例えば、化学分析等でもこのような流路中での測定技術がマイクロシステム技術として応用されている。例えば、基板上に流体素子として同様のマイクロ流路を設け,各種検出器等を集積化したマイクロ化学分析システム等への応用が考えられている。
【0005】
しかし、このような流路構造において特に問題となるのは、流量等による速度分布変化に起因する乱れの発生であり、特に層流から乱流へと遷移することが大きな影響を及ぼすことが知られている。このような問題を解決するために、例えばフローサイトメトリー等では、所定の流路構造を基板に形成し、そこに試料をいわゆるシース液で左右から挟みこんで送液すること等が行われている。このような流路構造に関するものとして、非特許文献1には流路構造に関する技術が開示されている。
【0006】
【非特許文献1】Anal. Chem. 2006, Vol. 78, 5653-5663.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、流体制御に関していえば、前記流体で試料を挟み込むことで、挟み込んだ方向においては一定の層流を実現することができたが、それ以外の方向については、層流を実現することができない。その結果、十分な流体制御を行なうことができないといった問題がある。そこで、本発明は、高い精度で流体制御できる流路構造を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本発明は、試料を導入する第1の導入部と、前記試料を挟み込むための流体を導入する第2の導入部と、前記試料を排出する排出部と、を少なくとも備えた流路構造であり、前記試料の導入方向をX方向とすると、Y軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、X軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、を流路中に少なくとも備える流路構造を提供する。このような立体的形状の流路構造とすることで、流路の略中央部分に試料を集束させて、流路中を搬送させることができる。そして、本発明は、更に、Z軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部を、流路中に少なくとも備える流路構造とすることができる。
次に、前記試料の搬送方向に対して前記流路を断面視した形状は、略同じ形状で維持されている流路構造を提供する。断面視した形状が流路内において略同じ形状であることで、試料が流路中で詰まる現象を効果的に防止できる。
また、本発明は、この流路構造を備えた流路基板を提供する。
更に、本発明は、前記試料を流体で挟み込んで流路中を搬送させる際に、順不動で、下記(1)前記試料の導入方向をX方向とすると、前記試料をY軸周りに略90度曲折させる工程と、(2)前記試料をX軸周りに略90度曲折させる工程と、を少なくとも行う流体制御方法を提供する。
そして、本発明は、前記試料又は前記流体の流体条件を制御することで、前記流路中における前記試料の位置制御を行なう流体制御方法を提供する。前記流量を制御することで、流路中を流れる前記試料の位置を制御できる。その結果、より高精度の流体制御が可能となる。
また、本発明は、前記試料は細胞及び/又はビーズを含み、前記細胞及び/又はビーズの前記流路中の位置情報を、前記流路中の所定位置において検出し、該位置情報に基づいて前記位置制御を行なう流体制御方法を提供する。細胞やビーズの位置情報を検出することで、より正確な位置制御を行なうことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い精度で流体を制御できる流路構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る流路構造、流路基板及び流体制御方法について説明する。なお、以下の添付図面等は、本発明に係わる代表例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
図1は、本発明に係る流路構造の第1実施形態の簡略斜視図である。図2は、同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。本発明における流路構造は、立体的な構造を備えることを特徴の一としている。この流路構造を備えた流路基板は、後述する両面成形や片面成形した基板等を貼り合わせること等によって簡便に得ることができる。
【0012】
図1の符号1は、流路構造1を示している。該流路構造1は、試料を導入する第1導入部11と試料を排出する排出部12とを備えている。まず試料は、前記第1導入部11から流路内へと導入される。そして、流体を第2導入部13,13から導入して、試料を左右から流体で挟みこむ。これにより試料液が形成される。
【0013】
試料液は、そのまま試料の導入方向(矢印参照)に沿って搬送される。曲折部14にてZ軸周りに略90度に曲折し、この曲折部14を経由することで試料液はY軸正方向に折れ曲がって搬送される。その下流において、曲折部15にてX軸周りに略90度に曲折し、この曲折部15を経由することで試料液はZ軸正方向に向けて搬送される。更に、曲折部16にて、Y軸周りに略90度に曲折することで、試料液は、再びX軸正方向に搬送される。なお、略90度の曲折は、時計回りでもよいし反時計回りでもよく、必要に応じて好適に選択することができる。
【0014】
そして、曲折部16の下流において、更に、流体を第2導入部17,17から導入して、試料液を左右から挟みこむ。これによって、流路構造1の流路中心部に集束した試料が、排出部12から搬送される。
【0015】
流路構造1における試料の流れについて図2を中心に説明する。図2では、説明の便宜上、流体等の流れは点線で示している。
【0016】
図1に示す流路構造1では、第1導入部11から導入された試料は、第2導入部13から導入された流体により挟み込まれ、図2に示すように横幅が狭い形状となる。そして、試料液はZ軸周りに略90度回転した後、Y軸、X軸周りに略90度ずつ回転することで、縦方向(Z軸方向)に狭い断面視形状へと変換され、更に、第2導入部17から導入された流体によって再び挟み込まれることで、流路中心部に試料が集束した層流を実現できる(図2の符号C1,C2,C3,Out参照)。即ち、第1導入部から試料を導入し、各第2導入部から流体を導入する。
【0017】
これにより、とりわけ、試料が流路内の縦方向(Z方向)にぶれて送液されてしまったり、縦方向の流路壁面に衝突したり、付着することを防止できる。一般に、流路断面における速度分布はハーゲン=ポアズイユの原理により流路内部の壁面で遅く、流路中心部で速くなる分布となることが知られている。これに関して、本発明に係る流路構造では、試料液を流路内の中心部を通過させることができる(図2参照)。
【0018】
試料が流路内の中心部を流れるため、流路壁面と試料との衝突を避けることができる。更に、試料が流路壁面に付着して、当該流路を塞ぐのを防止できる。これにより、試料の流速や、流路中の試料の位置や、搬送される試料の順番等について優れた安定性を得ることができる。そして、試料の流速についても、当該流路中で一定速度を保ち続けることができる。
【0019】
少なくとも試料を流路構造1の中心部に集束させるだけであれば、少なくともX軸周りに略90度曲折する曲折部15と、Y軸周りに略90度曲折する曲折部16をそれぞれ流路中に備えればよいが、分岐した流路構造とする場合等には、前記試料の導入方向をX方向とすると(図1参照)、Z軸周りに略90度曲折する曲折部14と、X軸周りに略90度曲折する曲折部15と、Y軸周りに略90度曲折する曲折部16と、をそれぞれ流路中に備えることが望ましい。
【0020】
また、本発明の流路構造では、必ずしも折れ曲がる順序や回数について限定されない。例えば、図1に示す流路構造を繰り返し単位として用いてもよいし、あるいは、Z軸回りに略90度曲折する曲折部14の上流に、X軸周りに略90度曲折する曲折部15を設けてもよい(図示せず)。このように、折れ曲がる順序や回数については、測定条件や使用条件等を考慮して適宜好適な条件とすることができる。
【0021】
なお、本発明に係る流路構造1では、流体を導入する第2導入部13,17等をどこにどのように設けるのか等については限定されないが、より正確に試料を流路中心部に集束させることができる等の観点から、少なくとも第2導入部を流路構造中に2箇所設けることが望ましい。更に好適には、試料を左右から挟み込むための最初の第2導入部13,13をいずれの曲折部14,15,16よりも上流に設けることが望ましい。また、試料液を左右から挟み込むための次なる第2導入部17,17をいずれの曲折部14,15,16よりも下流の位置に設けることが望ましい。
【0022】
この流路構造1の流路形状については、特に限定されず、試料の種類や大きさや形状、更には搬送する流速等を考慮して適宜好適な形状に設計することができる。より好ましくは、前記流路の断面視した形状は、略同じ形状に維持されていることが望ましい。流路の断面形状が略同一に維持されることで、流路中での試料の目詰まりや壁面への接触等を効果的に防止できる。
【0023】
また、流路構造の曲折部14,15,16等の形状について限定されない。例えば、曲折部14,15,16等の連結構造に余長部(ずらし長)を設けてもよい(図示せず)。余長部を設けることで製造プロセスへの負担を軽減できる。例えば、複数の基板を貼り合わせて本発明の流路構造とする際には、貼り合わせの際の基板の位置きめは高精度であることが求められるが、この余長部を設けることでこのような負担を軽減できる。これについては、後述する。
【0024】
同様に、本発明では、前記試料を流体で挟み込んで流路中を搬送させる際に、順不同で、(1)前記試料の導入方向をX方向とすると、前記試料をY軸周りに略90度曲折させる工程と、(2)前記試料をX軸周りに略90度曲折させる工程と、を少なくとも行う流体制御方法とすることができる。この流体制御方法は、本発明の流路構造を用いることで実現させることもできる。
【0025】
なお、本発明において、流体で試料(あるいは試料液)を挟み込むことを複数回行うことが望ましい。これによって、効率的に層流を得ることができる。より望ましくは、試料を流体により左右から挟み込んで試料液とし、前記(1),(2)工程を少なくとも1回以上行った後に、再び試料液を次なる流体によって左右から挟み込む工程を行うことが望ましい。これにより、流路内の中心部分に試料液をより集束させることができる。そして、必要に応じ、その後にも試料液を更に曲折させてもよいことは勿論である(例えば、図4,5参照)。
【0026】
また、更に、試料液をZ軸周りに略90度曲折させる工程((3)工程)を行う場合であれば、(1)〜(3)工程を行った後に、再び試料液を流体により左右から挟み込む工程を行うこともできる(例えば、図1,2,3参照)。
【0027】
そして、試料又は流体の流体条件を制御することで、流路中の試料の位置制御を行なうことができる。試料を流体で挟み込んで流路中を搬送しているが、この際の試料や流体の流体条件を制御することで、流路内の中心部分に試料液を集束させて搬送できる。この流体条件としては、流量、圧力(導入部入口圧力、流路出口圧力)、流体比重等といった物理的条件に限らず、流路構造1の流路幅や流路長や流路深さ等を調節すること等も包含する。即ち、各層の層流形成流路の流量、圧力、流路幅、流路深さ等を変えることによって、流路内を流れる細胞やビーズの位置を、任意に制御することができる。その結果、流路中の試料の位置や、試料の流速等を安定させることができる。
【0028】
試料としては、微小粒子であればよく、その対象は特に限定されず、例えば、細胞やタンパク質やビーズ等を用いることができる。更に、この細胞やビーズの流路中における位置情報を検出し、この位置情報に基づいて試料の位置制御を行なうことが望ましい。流路中の所定位置で、細胞やビーズの位置情報を検出し、その位置情報に基づいて、流量の制御を行なうことができる。
【0029】
本発明では、試料として細胞やビーズ等を用いることができる。ビーズとして通常用いられる種々のビーズを適宜採用でき、例えば、ポリスチレン等の樹脂製のビーズや、ガラス等のガラス製ビーズを用いることができる。更には、これらの表面や内部に、蛍光色素や磁性体、各種導体、光学物質等を混合したり修飾したりしたものを用いることができ、例えば、樹脂ビーズや蛍光ビーズや磁気ビーズ等を用いることができる。更に、これらビーズの大きさや形状等も適宜選択することができ、例えば、球体以外にも楕円体や立方体や直方体等の形状であってもよい。そして、このようなビーズは、測定する物性等に応じて選択できる。
【0030】
位置情報として用いる情報は限定されないが、例えば、光学的物性、電気的物性、磁気的物性等が挙げられる。流路中を流れる試料についてこのような物性を測定することで、試料の位置情報を得ることができる。
【0031】
光学的物性の測定として、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等を用いることができる。例えば、蛍光測定を行う場合には蛍光色素を用いることができるし、励起波長が異なる蛍光色素を併用することで、より検出精度を向上させること等もできる。また、位置検出の一例としては、流路内の細胞やビーズについての蛍光や散乱光や反射光や透過光等の焦点深度ずれ量等を測定することが挙げられる。
【0032】
本発明で可能な電気的物性の測定としては、例えば、試料に関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行うことができる。例えば、流路中の所定領域に何らかの電気的測定素子を形成させ、そこに試料を通過させて電気的な物性情報を得る。このようにして得られた電気的な物性情報に基づいて、流路内のどの位置を試料が通過しているか等を検出できる。位置検出の一例としては、対向する電極を流路内の所定領域に配置し、そこを試料が通過することで発生する電気抵抗や電気インピーダンス等を測定すること等が挙げられる。
【0033】
本発明で可能な磁気的物性の測定としては、例えば、試料に関する磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行うことができる。このようなものとして、例えば、試料表面に磁性体を修飾したものや、磁気ビーズを用いることができる。更には、磁気ビーズ等を蛍光色素で標識して一体としてもよい。例えば、抗体等と磁気ビーズとを反応させた細胞を、強力な磁界中に配置した流路中の所定領域に通過させて測定(更には分離)すること等が可能である。例えば、試料を対向する磁気コイルに通過させ、発生した磁界の直流成分や高周波成分である周波数スペクトルを測定できる。あるいは、磁気抵抗素子等により磁化の変化を測定することもできる。
【0034】
図3は、本発明に係る流路構造の第2実施形態の簡略斜視図である。図3の符号2は、流路構造を示している。該流路構造2は、分岐した流路構造であることを特徴の一としている。以下、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0035】
流路構造2は、試料を導入する第1導入部21と試料を排出する2箇所の排出部22,22とを備えている。まず試料は、前記第1導入部21から流路内へと導入される(図3の符号In参照)。そして、流体を最初の第2導入部23,23,24から導入して、試料を左右から流体で挟みこむ。これにより試料液が形成される。特に、第2導入部24から導入される流体は分岐して搬送される。
【0036】
まず、試料液は、それぞれの曲折部25にてZ軸周りに略90度曲折して、Y軸正方向に折れ曲がる。この曲折部25を経て、試料液は曲折部26にてX軸周りに略90度曲折して、Z軸正方向に搬送される。更に、この曲折部26を経て、試料液は曲折部27にてY軸周りに略90度曲折して、再びX軸正方向に搬送される。
【0037】
そして、曲折部27の下流において、次なる流体を第2導入部28,28,29から導入して、試料液を左右から挟みこむ。これによって、流路構造2の略中心部に集束した試料が、2箇所の排出部22から搬送される。
【0038】
このように、本発明に係る流路構造は、適宜、分岐した流路構造とすることができる。また、図3では、分岐した流路がX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれにおいても正方向に折れ曲がっているが、基板の形状等を考慮して、各軸について負方向に折れ曲がった流路構造等としてもよい。また、曲折部26,27,28の配置順序は一例であるから、本発明の範囲において、適宜、所望する順番に各曲折部を配置してもよい。
【0039】
図4は、本発明に係る流路構造の第3実施形態の簡略斜視図である。図5は、同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。図4の符号3は、流路構造を示している。該流路構造3は、Z軸周りに略90度回転する曲折部(例えば、図1の曲折部14等参照)を備えないことを特徴の一とする。以下、前述した各実施形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
前述のように、本発明に係る流路構造では、流路内の中心部分に試料液を集束させて搬送するだけであれば、必ずしもZ軸周りの曲折部を設ける必要がない。従って、分岐する必要がない場合等には、この流路構造3のような構造を採用することができる。流路構造3は、試料を導入する第1導入部31と、試料を排出する排出部32を備えている。まず試料は、第1導入部31から流路内へと導入される(図4,5の符号In参照)。そして、流体を最初の第2導入部33,33から導入して、試料を左右から流体で挟みこむ。これにより試料液が形成される(図5参照)。
【0041】
試料液は、そのままX軸正方向に沿って搬送される。曲折部34にてY軸周りに略90度曲折して、Z軸正方向に折れ曲がる(図5の矢印C4参照)。続いて、曲折部35にてX軸周りに略90度曲折して、Y軸負方向に折れ曲がる(図5の矢印C5参照)。そして、曲折部35の下流において、流体を次なる第2導入部36,36から導入して、試料液を左右から挟みこむ。これによって、流路構造3の流路中心部に試料を集束させて搬送することができる。
【0042】
流路構造3における試料の流れについて説明する。図5では、説明の便宜上、流体等の流れは点線で示している。図5に示す流路構造3では、第1導入部31から導入された試料は、最初の流体を第2導入部33,33から導入することで挟み込まれる。これにより、試料液はX軸方向から正面視した場合、狭い形状となる。続いて、曲折部34,35を経由し、更に次なる流体を第2導入部36,36から導入して試料液を挟み込むことで、流路中心部に試料を集束させることができる。そのため、流路中心部にのみ試料が存在する層流を高精度に実現できる(図5の符号Out参照)。
【0043】
なお、本発明に係る流路構造3では、流体を導入する第2導入部33,36等をどこにどのように設けるのか等については限定されないが、より効率的に層流を得ることができる等の観点から、流体を導入するための第2導入部を流路構造中に少なくとも2箇所設けることが望ましい。更に、流体を最初に導入する導入部33,33をいずれの曲折部よりも上流に設けることが望ましい。また、試料液を左右から挟み込むための次なる流体の導入部36,36をいずれの曲折部よりも下流の位置に設けることが望ましい。
【0044】
図6は、本発明に係る流路基板の製造方法の一例を説明する側面概念図である。本発明の流路基板は、両面金型を用いた射出成形等によっても簡便に製造できる。図6に本発明における流路基板の製造方法の一例として、両面金型を用いた製造方法を示す。以下、工程に沿って説明する。
【0045】
基板1aに対して、流路形状及びスルーホール形状(図1の第1導入部11,排出部12等参照)を有する上面金型D1と下面金型D2を射出成形機(図示せず)にセットし、基板1aへの形状転写を行う。
【0046】
射出成形された基板1aには、流路構造とスルーホール形状が形成されている(符号(II)参照)。また、同様にして射出成形された基板1b,1cをこの基板1aの両面に貼り合わせる(符号(III)参照)。これによって本発明に係る流路基板1を簡便に製造することができる(符号(IV)参照)。
【0047】
両面成形の手法は、従来の手法を適宜用いることができる。両面成形とすることで、曲折部の構造を1度に成形できるため、接合時のズレ等を防止できる点で好適である。
【0048】
また、基板1a,1b,1cの貼り合わせの手法は、従来の手法を適宜用いることができる。貼り合わせとしては、例えば、熱融着、接着剤、陽極接合、粘着シートを用いた接合、プラズマ活性化結合、超音波接合等を適宜用いることができる。基板の材質や形状や大きさ等を考慮して好適な貼り合わせ手法を選択することができる。
【0049】
更に、図示はしないが、射出成形後の基板1a(符号(II)参照)の表面について、表面加工を施す工程を適宜入れることもできる。これにより、流路表面の疎水性等のような物性についてもコントロールできる。
【0050】
図7は、本発明に係る流路基板の製造方法の別の一例を説明する側面概念図である。本発明の流路基板は、両面成形した基板同士を貼り合わせることによっても簡便に製造できることを特徴の一とする。図7では、本発明における流路基板の製造方法の一例として、両面成形した基板等を用いた製造方法を示している。先に述べた製造方法と同様の点は説明を割愛し、その相違点を中心に説明する。以下、工程に沿って説明する。
【0051】
基板1dに対して、流路形状及びスルーホール形状(図1の第1導入部11,排出部12等参照)を有する上面金型D3と下面金型D4を射出成形機(図示せず)にセットし、基板1dへの形状転写を行う。(符号(I)参照)。このようにして両面成形された基板1dには、流路構造とスルーホール形状が形成されている(符号(II)参照)。また、同様にして基板1eを得ておく。この2枚の基板1d,1eを貼り合わせる(符号(III)参照)。これによって本発明に係る流路基板1を簡便に製造することができる(符号(IV)参照)。
【0052】
なお、基板の製造方法としては、このような両面成形に限定されず、片面成形等の手法を採用することもできる。片面成形の手法としては、いわゆるプレート打抜き等といった従来の手法を適宜用いることができるが、成形精度等の観点から両面成形を用いることが望ましい。このように、本発明に係る流路構造を採用する基板であれば、両面金型による射出成形等といった簡便な方法で、高精度の流体制御が可能な流路基板を製造できる。
【0053】
特に、両面金型による射出成形及びカバーシートの貼り合わせプロセスによって、本発明の流路基板は簡便に製造できる。勿論、片面金型による射出成形及び基板貼り合わせプロセスであっても、本発明の流路基板は簡便に製造できる。従って、低い製造コストで高精度の流体制御が可能な流路基板を製造できる。このように、本発明に係る流路構造や流路基板は、製造上の利点も有している。
【0054】
なお、基板を張り合わせる際には、その基板の位置あわせを正確に行う必要がある(図6や図7の符号(III)等参照)。とりわけ、マイクロ流路において、基板の位置決め精度は重要である。しかし、そのために半導体チップの位置合わせ手法等を用いるのでは、製造コストの増加は避けられず、安価な流路構造を製造することは困難である。このような問題等の観点から、本発明に係る流路構造の曲折部に余長部を設けておくことが望ましい。余長部を設けることで、貼り合わせの際に微小な貼り合わせ誤差等が起こったとしても、その影響を軽減できる。余長部の形状については、このような貼り合わせ工程での位置ずれを考慮して形状の設計ができるが、例えば、各屈曲部において流路が屈曲していく方向と逆方向に所定長だけ突き出した余長部を設けることが望ましい。
【0055】
そして、本発明に係る流路基板の製造に際して、射出成形に用いる材料や手法については適宜好適な材料や手法を選択することができる。基板は、成形可能な樹脂類を用いることができ、その種類は限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、ポリメタクリル酸メチルやシリコン樹脂等が挙げられる。分光分析を流路基板上にで行なう場合には、光透過性の樹脂を用いることが望ましい。また、低融点ガラスを用いた射出成形基板や、紫外硬化樹脂を用いたナノインプリントの手法等を用いることができる。
【0056】
本発明は流体制御に関する技術として種々の分野に用いることができ、その用途等に応じて試料や流体を選択することができる。流体としては、対象とする試料を挟み込んで搬送可能な物質であればよく、その種類等は限定されない。従って、試料として用いるものの性質等を考慮して適宜好適な流体を選択できる。また、必要に応じて、添加物等を加えてもよい。
【0057】
例えば、フローサイトメトリーの分野であれば、試料として細胞やタンパク質やビーズ等を用い、流体として、生理食塩水等のシース液を用いることができる。また、各種アナライザーやマイクロリアクターとして用いる場合であれば、流体として、種々の油、有機溶媒、電解液等を用いることで、ナノエマルジョン、ナノカプセル、各種サンプルの結晶化、危険物質の化学合成や成分分析等が可能となる。
【0058】
図8は、本発明の流路基板を用いたFACSシステムの概念図である。図8の符号Aは、FACS(fluorescence activated cell sorting)システムを示している。該FACSシステムAでは、光学検出系として流路中の試料に対して光照射を行うものである。
【0059】
流路基板4中の試料は、流体で挟み込まれた状態で流路中の中心部分を搬送されている。測定対象である試料を含むサンプル流とシース流が規定圧力(流速)で流路基板4中の流路に注入されることで、細胞が一列となる流れを成形する。そして、光源5から励起光L1が発せられ、集光レンズ6を介して、流路基板4中の流路を整列して搬送されている試料へ照射される。
【0060】
この試料に励起光L1が照射されることによって、蛍光や前方散乱光(FCS)等が発生する。これらの戻り光L2を、同軸光路上に設けたダイクロックミラー7,7と、バンドパスフィルター8,8,8によって特定波長をそれぞれ分離する。そして、対応する波長ごとに検出器9(例えば、photo multiplier tube;PMT)で検出することができる。これによって、流路中の試料の分光解析を行うことができる。
【0061】
更に、図示はしないが、解析結果によって所望の試料である場合には、流路下流の分岐領域にて所望の細胞のみの採取を行うこともできる。分取方法には圧電素子や電磁バルブなどを用いた様々な分取方式を採用することができる。ここでは、一例として、分取用レーザーを用いた場合を例として説明する。
【0062】
分光検出器の取得情報(例えば、蛍光スペクトル、大きさ、速度等)により、最適なタイミングと照射パワーで分取用レーザーを別途照射する。そして、流路中に照射された光エネルギーによって気泡を生成させる。そして、気泡の発生により流路中の流れ変化が生じ、所望の試料のみを目的の採取エリアに導くことができる。
【0063】
このように、FACS装置Aにおいて、サンプルとなる細胞をレーザー光により分光解析し、所望の細胞であるかどうかの判断を行い、更に分岐流路(符号41参照)において所望の細胞のみを分取することもできる。このような分岐する流路構造であっても、本発明によれば、高い精度で流体制御を行なうことができる(例えば、図3、図4等参照)
【0064】
また、FACS装置Aのような検出系と分取系の距離がある程度離れている場合でも、分取部に搬送されてくる試料の中から、採取目標の試料の位置を特定するためには、試料の流速が一定であることが重要である。これに関して、本発明に係る流路構造では、流路中であっても、試料を整然と搬送し続けることができる。その結果、試料のソーティング等も正確に行うことができる。更には、流路中を流れる試料の流速や、流路中の位置が安定しているため、安定した分光解析や分取作業を行うことができる。
【0065】
なお、ここでは、FACS装置への応用を一例として説明したが、観察対象である試料の位置や速度制御を必要とする分析チップ全般に対しても、本発明は有効に用いることができる。応用可能なものとして、例えば、種々のDNA解析装置や、質量分析装置、その他リアルタイムでの細胞観察装置等が挙げられる。また、これら以外の各種アナライザー装置やマイクロリアクター装置等にも応用できる。
【実施例】
【0066】
本発明に係る流路構造の効果を検証した。具体的には、本発明における流路構造について、コンピュータ解析を行った。この流体解析は、有限体積法熱流体解析ツールである米国ANSYS社製「ANSYS−CFX」を用いた。また、特に明示が無い限り、計算の離散化に用いた要素数はいずれのモデルも30万程度であり、境界条件やメッシュ品質や計算精度も同一の条件である。
【0067】
<実施例1>
図9に示す流路構造のモデルについてコンピュータ解析を行なった。図9は同流路構造のモデルの概略図である。図9の(1)は、流路構造を上面視した状態を示す。図9の(2)は流路構造を右側方から側面視した状態を示す。この図9の流路構造は、3箇所の曲折部を有している(例えば、図1等参照)。なお、図9に示す大きさや形状はシミュレーションの一例として採用したものであり、本発明の流路構造のサイズ等について限定するものではない(以下同様)。
【0068】
図10に、この流路構造の流体シミュレーションの境界条件を示す。なお、図10は図9の矢印方向から斜視した状態である。図10に示すように、サンプル流の流速は0.5mL/h、第1のシース流の流速は1mL/h、第2のシース流の流速は5mL/h、排出される圧力は1atmとなる条件とした。
【0069】
この流体シミュレーションの解析結果を図11に示す。なお、図11は図10の矢印方向から斜視した状態である。図11は、流路中をサンプル流が流れる様子(Stream Line)を示している。このサンプル流の濃淡色は流速を示している。これによれば、3箇所の曲折部を経由したサンプル流は、3次元的にみても均一な流速分布を示し、かつ流路内の中心部分に集束して流れていることが示された。
【0070】
<実施例2>
図12に示す流路構造のモデルについてコンピュータ解析を行なった。図12は同流路構造のモデルの概略図である。図12の(1)は、流路構造を上面視した状態を示す。図12の(2)は流路構造を右側方から側面視した状態を示す。図12の流路構造は、3箇所の曲折部を有している。なお、図12に示す大きさや形状はシミュレーションの一例として採用したものであり、本発明の流路構造のサイズ等について限定するものではない。
【0071】
この流路構造は、図12の(2)からも明らかなように流路Z軸方向の高さを最小としていることを構造上の特徴の一つとしている。そして、図12の結合部において2層に分けて考察できる。この流路構造は、成形したマイクロ分析チップを2枚貼り合わせることで得ることができる。
【0072】
この流体シミュレーションの解析結果を図13に示す。なお、図13は図13の矢印方向から斜視した状態である。図13は、流路中をサンプル流が流れる様子(Stream Line)を示している。本実施例は、実施例1の解析モデルと同様の条件でシミュレーションを行った。これによれば、本実施例でも、3箇所の曲折部を経由したサンプル流は、3次元的にみても均一な流速分布を示し、かつ流路内の中心部分に集束して流れていることが示された。
【0073】
<実施例3>
図14に示す流路構造のモデルについてもコンピュータ解析を行なった。図14の流路構造は、流路の接続部分が、Y方向とX軸方向にそれぞれ0.1mmの余長(つきだし長)を有して接合している(図14の矢印参照)。これ以外は、図12と同様の構造である。
その結果、実施例3でも、3箇所の曲折部を経由したサンプル流は、3次元的にみても均一な流速分布を示し、かつ流路内の中心部分に集束して流れていることが示された。従って、一定の貼り合わせ誤差が生じた場合であっても、良好なサンプル流形状を確保できることが示唆された。
【0074】
以上の検討結果から、射出成形基板を複数貼り合わせることで、本発明の流路構造を得る場合等を鑑みれば、流路構造の曲折部において、折れ曲がり方向において所定長の余長を有することが望ましいことが示された。
【0075】
従来であれば、高精度の貼り合わせ技術を要するため、製造上のコスト的にも多大な負担があった。これに関して、本発明に係る流路構造は、高精度の流体制御を可能とならしめただけでなく、製造上の負担も大幅に軽減することができる。即ち、あらかじめ前記所定長の余長を有するように射出成形基板を製造するだけで、高精度の流体制御が可能な流路基板をより簡便かつ確実に製造ができる。
【0076】
<実施例4>
更に、流路構造の曲折部の構造について検討すべく、曲折部の連結構造について比較実験を行った。図15に示す種々の連結構造(1)〜(4)において、今までと同様の条件で流体シミュレーションを行い、これらの連結構造が及ぼす流体への影響を検討した。
【0077】
連結構造1は、実施例1でシミュレーションした流路構造の曲折部分である。
連結構造2は、実施例3でシミュレーションした流路構造の曲折部分である。
連結構造3は、流路の接続部分が、Y方向とX軸方向にそれぞれ0.1mmの余長(つきだし長)を有して接合している。即ち、流路が屈曲していく方向と逆方向に所定の余長を設けている。これ以外は、実施例3のモデルと同様の構造である。
連結構造4は、流路の接続部分について、流路を屈曲させる間にH=0.6mmの中継路を設けている。これ以外は、実施例3のモデルと同様の構造である。
これらのシミュレーション結果を図15に示し、その比較結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
図15及び表1のなかでは、両面成形した連結構造4が最も評価がよかった。そして、連結構造1,2の形状が同程度の良好の評価であった。また、R形状である連結構造3は、実用可能な程度の流体制御は可能であったが、他の連結構造1,2,4と比較すればやや劣る結果となった。
【0080】
以上より、連結構造4等の知見から、流路を屈曲させる間に中継路を設けることで、より流れを安定させることができることが示された。即ち、例えば図9の(2)等に示すように、折り曲げられた流路と流路の間の距離(高さH)が、所定長を有することが望ましい。なお、このような構造は、特に両面成形によって簡便に得ることができる(例えば、図6の符号(III)等参照)。
【0081】
また、通常の貼り合わせで基板流路を形成する場合には、位置ズレが発生しやすい。そのような場合であっても、連結構造2等のように、屈曲方向と逆方向に所定長の余長を設けることで、連結構造1等と同程度の安定性を得ることができる。
【0082】
以上より、本発明によれば流路中において高精度の流体制御が可能となることが、本実施例によって示された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る流路構造の第1実施形態の簡略斜視図である。
【図2】同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。
【図3】本発明に係る流路構造の第2実施形態の簡略斜視図である。
【図4】本発明に係る流路構造の第3実施形態の簡略斜視図である。
【図5】同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。
【図6】本発明に係る流路基板の製造方法の一例を説明する側面概念図である。
【図7】本発明に係る流路基板の製造方法の別の一例を説明する側面概念図である。
【図8】本発明に係る流路基板を用いたFACSシステムの概念図である。
【図9】解析を行なった流路構造のモデルを示す概念図である。
【図10】同流路構造のモデルの流体シミュレーションの境界条件を示す図である。
【図11】同流路構造のモデルの流体シミュレーションの解析結果を示す図である。
【図12】解析を行なった流路構造の別のモデルを示す概念図である。
【図13】同流路構造のモデルの流体シミュレーションの解析結果を示す図である。
【図14】解析を行なった流路構造の更に別のモデルの解析結果を示す図である。
【図15】連結構造(1)〜(4)の比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
・ 流路構造
11,21,31 第1導入部
12,22,32 排出部
13,17,23,24,28,29,33,36 第2導入部
14,15,16,25,26,27,34,35 曲折部
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路構造に関する。より詳しくは流路構造、これを備えた流路基板及び流体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少量の試料をマイクロ流路等に流し、その試料の分析を流路中で行う技術が、バイオ関連の分析や化学分析等をはじめ、幅広い分野に応用されている。例えば、生体物質や、自然環境における物質等の微量化学分析等に用いられている。
【0003】
このような技術が用いられるものとして、例えば、フローサイトメトリーが挙げられる。フローサイトメトリーでは、試料として細胞やタンパク質やビーズ等を対象とし、これらの分析を流路内で行う。この分析結果等を踏まえて、試料の分取を続いて行う。試料のソーティングを正確に行うためには、流路中の試料を整然と搬送し続けることが重要である。
【0004】
それ以外の分野として、例えば、化学分析等でもこのような流路中での測定技術がマイクロシステム技術として応用されている。例えば、基板上に流体素子として同様のマイクロ流路を設け,各種検出器等を集積化したマイクロ化学分析システム等への応用が考えられている。
【0005】
しかし、このような流路構造において特に問題となるのは、流量等による速度分布変化に起因する乱れの発生であり、特に層流から乱流へと遷移することが大きな影響を及ぼすことが知られている。このような問題を解決するために、例えばフローサイトメトリー等では、所定の流路構造を基板に形成し、そこに試料をいわゆるシース液で左右から挟みこんで送液すること等が行われている。このような流路構造に関するものとして、非特許文献1には流路構造に関する技術が開示されている。
【0006】
【非特許文献1】Anal. Chem. 2006, Vol. 78, 5653-5663.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、流体制御に関していえば、前記流体で試料を挟み込むことで、挟み込んだ方向においては一定の層流を実現することができたが、それ以外の方向については、層流を実現することができない。その結果、十分な流体制御を行なうことができないといった問題がある。そこで、本発明は、高い精度で流体制御できる流路構造を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本発明は、試料を導入する第1の導入部と、前記試料を挟み込むための流体を導入する第2の導入部と、前記試料を排出する排出部と、を少なくとも備えた流路構造であり、前記試料の導入方向をX方向とすると、Y軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、X軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、を流路中に少なくとも備える流路構造を提供する。このような立体的形状の流路構造とすることで、流路の略中央部分に試料を集束させて、流路中を搬送させることができる。そして、本発明は、更に、Z軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部を、流路中に少なくとも備える流路構造とすることができる。
次に、前記試料の搬送方向に対して前記流路を断面視した形状は、略同じ形状で維持されている流路構造を提供する。断面視した形状が流路内において略同じ形状であることで、試料が流路中で詰まる現象を効果的に防止できる。
また、本発明は、この流路構造を備えた流路基板を提供する。
更に、本発明は、前記試料を流体で挟み込んで流路中を搬送させる際に、順不動で、下記(1)前記試料の導入方向をX方向とすると、前記試料をY軸周りに略90度曲折させる工程と、(2)前記試料をX軸周りに略90度曲折させる工程と、を少なくとも行う流体制御方法を提供する。
そして、本発明は、前記試料又は前記流体の流体条件を制御することで、前記流路中における前記試料の位置制御を行なう流体制御方法を提供する。前記流量を制御することで、流路中を流れる前記試料の位置を制御できる。その結果、より高精度の流体制御が可能となる。
また、本発明は、前記試料は細胞及び/又はビーズを含み、前記細胞及び/又はビーズの前記流路中の位置情報を、前記流路中の所定位置において検出し、該位置情報に基づいて前記位置制御を行なう流体制御方法を提供する。細胞やビーズの位置情報を検出することで、より正確な位置制御を行なうことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い精度で流体を制御できる流路構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る流路構造、流路基板及び流体制御方法について説明する。なお、以下の添付図面等は、本発明に係わる代表例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
図1は、本発明に係る流路構造の第1実施形態の簡略斜視図である。図2は、同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。本発明における流路構造は、立体的な構造を備えることを特徴の一としている。この流路構造を備えた流路基板は、後述する両面成形や片面成形した基板等を貼り合わせること等によって簡便に得ることができる。
【0012】
図1の符号1は、流路構造1を示している。該流路構造1は、試料を導入する第1導入部11と試料を排出する排出部12とを備えている。まず試料は、前記第1導入部11から流路内へと導入される。そして、流体を第2導入部13,13から導入して、試料を左右から流体で挟みこむ。これにより試料液が形成される。
【0013】
試料液は、そのまま試料の導入方向(矢印参照)に沿って搬送される。曲折部14にてZ軸周りに略90度に曲折し、この曲折部14を経由することで試料液はY軸正方向に折れ曲がって搬送される。その下流において、曲折部15にてX軸周りに略90度に曲折し、この曲折部15を経由することで試料液はZ軸正方向に向けて搬送される。更に、曲折部16にて、Y軸周りに略90度に曲折することで、試料液は、再びX軸正方向に搬送される。なお、略90度の曲折は、時計回りでもよいし反時計回りでもよく、必要に応じて好適に選択することができる。
【0014】
そして、曲折部16の下流において、更に、流体を第2導入部17,17から導入して、試料液を左右から挟みこむ。これによって、流路構造1の流路中心部に集束した試料が、排出部12から搬送される。
【0015】
流路構造1における試料の流れについて図2を中心に説明する。図2では、説明の便宜上、流体等の流れは点線で示している。
【0016】
図1に示す流路構造1では、第1導入部11から導入された試料は、第2導入部13から導入された流体により挟み込まれ、図2に示すように横幅が狭い形状となる。そして、試料液はZ軸周りに略90度回転した後、Y軸、X軸周りに略90度ずつ回転することで、縦方向(Z軸方向)に狭い断面視形状へと変換され、更に、第2導入部17から導入された流体によって再び挟み込まれることで、流路中心部に試料が集束した層流を実現できる(図2の符号C1,C2,C3,Out参照)。即ち、第1導入部から試料を導入し、各第2導入部から流体を導入する。
【0017】
これにより、とりわけ、試料が流路内の縦方向(Z方向)にぶれて送液されてしまったり、縦方向の流路壁面に衝突したり、付着することを防止できる。一般に、流路断面における速度分布はハーゲン=ポアズイユの原理により流路内部の壁面で遅く、流路中心部で速くなる分布となることが知られている。これに関して、本発明に係る流路構造では、試料液を流路内の中心部を通過させることができる(図2参照)。
【0018】
試料が流路内の中心部を流れるため、流路壁面と試料との衝突を避けることができる。更に、試料が流路壁面に付着して、当該流路を塞ぐのを防止できる。これにより、試料の流速や、流路中の試料の位置や、搬送される試料の順番等について優れた安定性を得ることができる。そして、試料の流速についても、当該流路中で一定速度を保ち続けることができる。
【0019】
少なくとも試料を流路構造1の中心部に集束させるだけであれば、少なくともX軸周りに略90度曲折する曲折部15と、Y軸周りに略90度曲折する曲折部16をそれぞれ流路中に備えればよいが、分岐した流路構造とする場合等には、前記試料の導入方向をX方向とすると(図1参照)、Z軸周りに略90度曲折する曲折部14と、X軸周りに略90度曲折する曲折部15と、Y軸周りに略90度曲折する曲折部16と、をそれぞれ流路中に備えることが望ましい。
【0020】
また、本発明の流路構造では、必ずしも折れ曲がる順序や回数について限定されない。例えば、図1に示す流路構造を繰り返し単位として用いてもよいし、あるいは、Z軸回りに略90度曲折する曲折部14の上流に、X軸周りに略90度曲折する曲折部15を設けてもよい(図示せず)。このように、折れ曲がる順序や回数については、測定条件や使用条件等を考慮して適宜好適な条件とすることができる。
【0021】
なお、本発明に係る流路構造1では、流体を導入する第2導入部13,17等をどこにどのように設けるのか等については限定されないが、より正確に試料を流路中心部に集束させることができる等の観点から、少なくとも第2導入部を流路構造中に2箇所設けることが望ましい。更に好適には、試料を左右から挟み込むための最初の第2導入部13,13をいずれの曲折部14,15,16よりも上流に設けることが望ましい。また、試料液を左右から挟み込むための次なる第2導入部17,17をいずれの曲折部14,15,16よりも下流の位置に設けることが望ましい。
【0022】
この流路構造1の流路形状については、特に限定されず、試料の種類や大きさや形状、更には搬送する流速等を考慮して適宜好適な形状に設計することができる。より好ましくは、前記流路の断面視した形状は、略同じ形状に維持されていることが望ましい。流路の断面形状が略同一に維持されることで、流路中での試料の目詰まりや壁面への接触等を効果的に防止できる。
【0023】
また、流路構造の曲折部14,15,16等の形状について限定されない。例えば、曲折部14,15,16等の連結構造に余長部(ずらし長)を設けてもよい(図示せず)。余長部を設けることで製造プロセスへの負担を軽減できる。例えば、複数の基板を貼り合わせて本発明の流路構造とする際には、貼り合わせの際の基板の位置きめは高精度であることが求められるが、この余長部を設けることでこのような負担を軽減できる。これについては、後述する。
【0024】
同様に、本発明では、前記試料を流体で挟み込んで流路中を搬送させる際に、順不同で、(1)前記試料の導入方向をX方向とすると、前記試料をY軸周りに略90度曲折させる工程と、(2)前記試料をX軸周りに略90度曲折させる工程と、を少なくとも行う流体制御方法とすることができる。この流体制御方法は、本発明の流路構造を用いることで実現させることもできる。
【0025】
なお、本発明において、流体で試料(あるいは試料液)を挟み込むことを複数回行うことが望ましい。これによって、効率的に層流を得ることができる。より望ましくは、試料を流体により左右から挟み込んで試料液とし、前記(1),(2)工程を少なくとも1回以上行った後に、再び試料液を次なる流体によって左右から挟み込む工程を行うことが望ましい。これにより、流路内の中心部分に試料液をより集束させることができる。そして、必要に応じ、その後にも試料液を更に曲折させてもよいことは勿論である(例えば、図4,5参照)。
【0026】
また、更に、試料液をZ軸周りに略90度曲折させる工程((3)工程)を行う場合であれば、(1)〜(3)工程を行った後に、再び試料液を流体により左右から挟み込む工程を行うこともできる(例えば、図1,2,3参照)。
【0027】
そして、試料又は流体の流体条件を制御することで、流路中の試料の位置制御を行なうことができる。試料を流体で挟み込んで流路中を搬送しているが、この際の試料や流体の流体条件を制御することで、流路内の中心部分に試料液を集束させて搬送できる。この流体条件としては、流量、圧力(導入部入口圧力、流路出口圧力)、流体比重等といった物理的条件に限らず、流路構造1の流路幅や流路長や流路深さ等を調節すること等も包含する。即ち、各層の層流形成流路の流量、圧力、流路幅、流路深さ等を変えることによって、流路内を流れる細胞やビーズの位置を、任意に制御することができる。その結果、流路中の試料の位置や、試料の流速等を安定させることができる。
【0028】
試料としては、微小粒子であればよく、その対象は特に限定されず、例えば、細胞やタンパク質やビーズ等を用いることができる。更に、この細胞やビーズの流路中における位置情報を検出し、この位置情報に基づいて試料の位置制御を行なうことが望ましい。流路中の所定位置で、細胞やビーズの位置情報を検出し、その位置情報に基づいて、流量の制御を行なうことができる。
【0029】
本発明では、試料として細胞やビーズ等を用いることができる。ビーズとして通常用いられる種々のビーズを適宜採用でき、例えば、ポリスチレン等の樹脂製のビーズや、ガラス等のガラス製ビーズを用いることができる。更には、これらの表面や内部に、蛍光色素や磁性体、各種導体、光学物質等を混合したり修飾したりしたものを用いることができ、例えば、樹脂ビーズや蛍光ビーズや磁気ビーズ等を用いることができる。更に、これらビーズの大きさや形状等も適宜選択することができ、例えば、球体以外にも楕円体や立方体や直方体等の形状であってもよい。そして、このようなビーズは、測定する物性等に応じて選択できる。
【0030】
位置情報として用いる情報は限定されないが、例えば、光学的物性、電気的物性、磁気的物性等が挙げられる。流路中を流れる試料についてこのような物性を測定することで、試料の位置情報を得ることができる。
【0031】
光学的物性の測定として、例えば、蛍光測定、散乱光測定、透過光測定、反射光測定、回折光測定、紫外分光測定、赤外分光測定、ラマン分光測定、FRET測定、FISH測定その他各種スペクトラム測定等を用いることができる。例えば、蛍光測定を行う場合には蛍光色素を用いることができるし、励起波長が異なる蛍光色素を併用することで、より検出精度を向上させること等もできる。また、位置検出の一例としては、流路内の細胞やビーズについての蛍光や散乱光や反射光や透過光等の焦点深度ずれ量等を測定することが挙げられる。
【0032】
本発明で可能な電気的物性の測定としては、例えば、試料に関する抵抗値、容量値(キャパシタンス値)、インダクタンス値、インピーダンス、電極間の電界の変化値等の測定を行うことができる。例えば、流路中の所定領域に何らかの電気的測定素子を形成させ、そこに試料を通過させて電気的な物性情報を得る。このようにして得られた電気的な物性情報に基づいて、流路内のどの位置を試料が通過しているか等を検出できる。位置検出の一例としては、対向する電極を流路内の所定領域に配置し、そこを試料が通過することで発生する電気抵抗や電気インピーダンス等を測定すること等が挙げられる。
【0033】
本発明で可能な磁気的物性の測定としては、例えば、試料に関する磁化、磁界変化、磁場変化等の測定を行うことができる。このようなものとして、例えば、試料表面に磁性体を修飾したものや、磁気ビーズを用いることができる。更には、磁気ビーズ等を蛍光色素で標識して一体としてもよい。例えば、抗体等と磁気ビーズとを反応させた細胞を、強力な磁界中に配置した流路中の所定領域に通過させて測定(更には分離)すること等が可能である。例えば、試料を対向する磁気コイルに通過させ、発生した磁界の直流成分や高周波成分である周波数スペクトルを測定できる。あるいは、磁気抵抗素子等により磁化の変化を測定することもできる。
【0034】
図3は、本発明に係る流路構造の第2実施形態の簡略斜視図である。図3の符号2は、流路構造を示している。該流路構造2は、分岐した流路構造であることを特徴の一としている。以下、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0035】
流路構造2は、試料を導入する第1導入部21と試料を排出する2箇所の排出部22,22とを備えている。まず試料は、前記第1導入部21から流路内へと導入される(図3の符号In参照)。そして、流体を最初の第2導入部23,23,24から導入して、試料を左右から流体で挟みこむ。これにより試料液が形成される。特に、第2導入部24から導入される流体は分岐して搬送される。
【0036】
まず、試料液は、それぞれの曲折部25にてZ軸周りに略90度曲折して、Y軸正方向に折れ曲がる。この曲折部25を経て、試料液は曲折部26にてX軸周りに略90度曲折して、Z軸正方向に搬送される。更に、この曲折部26を経て、試料液は曲折部27にてY軸周りに略90度曲折して、再びX軸正方向に搬送される。
【0037】
そして、曲折部27の下流において、次なる流体を第2導入部28,28,29から導入して、試料液を左右から挟みこむ。これによって、流路構造2の略中心部に集束した試料が、2箇所の排出部22から搬送される。
【0038】
このように、本発明に係る流路構造は、適宜、分岐した流路構造とすることができる。また、図3では、分岐した流路がX軸方向、Y軸方向、Z軸方向のいずれにおいても正方向に折れ曲がっているが、基板の形状等を考慮して、各軸について負方向に折れ曲がった流路構造等としてもよい。また、曲折部26,27,28の配置順序は一例であるから、本発明の範囲において、適宜、所望する順番に各曲折部を配置してもよい。
【0039】
図4は、本発明に係る流路構造の第3実施形態の簡略斜視図である。図5は、同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。図4の符号3は、流路構造を示している。該流路構造3は、Z軸周りに略90度回転する曲折部(例えば、図1の曲折部14等参照)を備えないことを特徴の一とする。以下、前述した各実施形態との相違点を中心に説明する。
【0040】
前述のように、本発明に係る流路構造では、流路内の中心部分に試料液を集束させて搬送するだけであれば、必ずしもZ軸周りの曲折部を設ける必要がない。従って、分岐する必要がない場合等には、この流路構造3のような構造を採用することができる。流路構造3は、試料を導入する第1導入部31と、試料を排出する排出部32を備えている。まず試料は、第1導入部31から流路内へと導入される(図4,5の符号In参照)。そして、流体を最初の第2導入部33,33から導入して、試料を左右から流体で挟みこむ。これにより試料液が形成される(図5参照)。
【0041】
試料液は、そのままX軸正方向に沿って搬送される。曲折部34にてY軸周りに略90度曲折して、Z軸正方向に折れ曲がる(図5の矢印C4参照)。続いて、曲折部35にてX軸周りに略90度曲折して、Y軸負方向に折れ曲がる(図5の矢印C5参照)。そして、曲折部35の下流において、流体を次なる第2導入部36,36から導入して、試料液を左右から挟みこむ。これによって、流路構造3の流路中心部に試料を集束させて搬送することができる。
【0042】
流路構造3における試料の流れについて説明する。図5では、説明の便宜上、流体等の流れは点線で示している。図5に示す流路構造3では、第1導入部31から導入された試料は、最初の流体を第2導入部33,33から導入することで挟み込まれる。これにより、試料液はX軸方向から正面視した場合、狭い形状となる。続いて、曲折部34,35を経由し、更に次なる流体を第2導入部36,36から導入して試料液を挟み込むことで、流路中心部に試料を集束させることができる。そのため、流路中心部にのみ試料が存在する層流を高精度に実現できる(図5の符号Out参照)。
【0043】
なお、本発明に係る流路構造3では、流体を導入する第2導入部33,36等をどこにどのように設けるのか等については限定されないが、より効率的に層流を得ることができる等の観点から、流体を導入するための第2導入部を流路構造中に少なくとも2箇所設けることが望ましい。更に、流体を最初に導入する導入部33,33をいずれの曲折部よりも上流に設けることが望ましい。また、試料液を左右から挟み込むための次なる流体の導入部36,36をいずれの曲折部よりも下流の位置に設けることが望ましい。
【0044】
図6は、本発明に係る流路基板の製造方法の一例を説明する側面概念図である。本発明の流路基板は、両面金型を用いた射出成形等によっても簡便に製造できる。図6に本発明における流路基板の製造方法の一例として、両面金型を用いた製造方法を示す。以下、工程に沿って説明する。
【0045】
基板1aに対して、流路形状及びスルーホール形状(図1の第1導入部11,排出部12等参照)を有する上面金型D1と下面金型D2を射出成形機(図示せず)にセットし、基板1aへの形状転写を行う。
【0046】
射出成形された基板1aには、流路構造とスルーホール形状が形成されている(符号(II)参照)。また、同様にして射出成形された基板1b,1cをこの基板1aの両面に貼り合わせる(符号(III)参照)。これによって本発明に係る流路基板1を簡便に製造することができる(符号(IV)参照)。
【0047】
両面成形の手法は、従来の手法を適宜用いることができる。両面成形とすることで、曲折部の構造を1度に成形できるため、接合時のズレ等を防止できる点で好適である。
【0048】
また、基板1a,1b,1cの貼り合わせの手法は、従来の手法を適宜用いることができる。貼り合わせとしては、例えば、熱融着、接着剤、陽極接合、粘着シートを用いた接合、プラズマ活性化結合、超音波接合等を適宜用いることができる。基板の材質や形状や大きさ等を考慮して好適な貼り合わせ手法を選択することができる。
【0049】
更に、図示はしないが、射出成形後の基板1a(符号(II)参照)の表面について、表面加工を施す工程を適宜入れることもできる。これにより、流路表面の疎水性等のような物性についてもコントロールできる。
【0050】
図7は、本発明に係る流路基板の製造方法の別の一例を説明する側面概念図である。本発明の流路基板は、両面成形した基板同士を貼り合わせることによっても簡便に製造できることを特徴の一とする。図7では、本発明における流路基板の製造方法の一例として、両面成形した基板等を用いた製造方法を示している。先に述べた製造方法と同様の点は説明を割愛し、その相違点を中心に説明する。以下、工程に沿って説明する。
【0051】
基板1dに対して、流路形状及びスルーホール形状(図1の第1導入部11,排出部12等参照)を有する上面金型D3と下面金型D4を射出成形機(図示せず)にセットし、基板1dへの形状転写を行う。(符号(I)参照)。このようにして両面成形された基板1dには、流路構造とスルーホール形状が形成されている(符号(II)参照)。また、同様にして基板1eを得ておく。この2枚の基板1d,1eを貼り合わせる(符号(III)参照)。これによって本発明に係る流路基板1を簡便に製造することができる(符号(IV)参照)。
【0052】
なお、基板の製造方法としては、このような両面成形に限定されず、片面成形等の手法を採用することもできる。片面成形の手法としては、いわゆるプレート打抜き等といった従来の手法を適宜用いることができるが、成形精度等の観点から両面成形を用いることが望ましい。このように、本発明に係る流路構造を採用する基板であれば、両面金型による射出成形等といった簡便な方法で、高精度の流体制御が可能な流路基板を製造できる。
【0053】
特に、両面金型による射出成形及びカバーシートの貼り合わせプロセスによって、本発明の流路基板は簡便に製造できる。勿論、片面金型による射出成形及び基板貼り合わせプロセスであっても、本発明の流路基板は簡便に製造できる。従って、低い製造コストで高精度の流体制御が可能な流路基板を製造できる。このように、本発明に係る流路構造や流路基板は、製造上の利点も有している。
【0054】
なお、基板を張り合わせる際には、その基板の位置あわせを正確に行う必要がある(図6や図7の符号(III)等参照)。とりわけ、マイクロ流路において、基板の位置決め精度は重要である。しかし、そのために半導体チップの位置合わせ手法等を用いるのでは、製造コストの増加は避けられず、安価な流路構造を製造することは困難である。このような問題等の観点から、本発明に係る流路構造の曲折部に余長部を設けておくことが望ましい。余長部を設けることで、貼り合わせの際に微小な貼り合わせ誤差等が起こったとしても、その影響を軽減できる。余長部の形状については、このような貼り合わせ工程での位置ずれを考慮して形状の設計ができるが、例えば、各屈曲部において流路が屈曲していく方向と逆方向に所定長だけ突き出した余長部を設けることが望ましい。
【0055】
そして、本発明に係る流路基板の製造に際して、射出成形に用いる材料や手法については適宜好適な材料や手法を選択することができる。基板は、成形可能な樹脂類を用いることができ、その種類は限定されず、例えば、熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、ポリメタクリル酸メチルやシリコン樹脂等が挙げられる。分光分析を流路基板上にで行なう場合には、光透過性の樹脂を用いることが望ましい。また、低融点ガラスを用いた射出成形基板や、紫外硬化樹脂を用いたナノインプリントの手法等を用いることができる。
【0056】
本発明は流体制御に関する技術として種々の分野に用いることができ、その用途等に応じて試料や流体を選択することができる。流体としては、対象とする試料を挟み込んで搬送可能な物質であればよく、その種類等は限定されない。従って、試料として用いるものの性質等を考慮して適宜好適な流体を選択できる。また、必要に応じて、添加物等を加えてもよい。
【0057】
例えば、フローサイトメトリーの分野であれば、試料として細胞やタンパク質やビーズ等を用い、流体として、生理食塩水等のシース液を用いることができる。また、各種アナライザーやマイクロリアクターとして用いる場合であれば、流体として、種々の油、有機溶媒、電解液等を用いることで、ナノエマルジョン、ナノカプセル、各種サンプルの結晶化、危険物質の化学合成や成分分析等が可能となる。
【0058】
図8は、本発明の流路基板を用いたFACSシステムの概念図である。図8の符号Aは、FACS(fluorescence activated cell sorting)システムを示している。該FACSシステムAでは、光学検出系として流路中の試料に対して光照射を行うものである。
【0059】
流路基板4中の試料は、流体で挟み込まれた状態で流路中の中心部分を搬送されている。測定対象である試料を含むサンプル流とシース流が規定圧力(流速)で流路基板4中の流路に注入されることで、細胞が一列となる流れを成形する。そして、光源5から励起光L1が発せられ、集光レンズ6を介して、流路基板4中の流路を整列して搬送されている試料へ照射される。
【0060】
この試料に励起光L1が照射されることによって、蛍光や前方散乱光(FCS)等が発生する。これらの戻り光L2を、同軸光路上に設けたダイクロックミラー7,7と、バンドパスフィルター8,8,8によって特定波長をそれぞれ分離する。そして、対応する波長ごとに検出器9(例えば、photo multiplier tube;PMT)で検出することができる。これによって、流路中の試料の分光解析を行うことができる。
【0061】
更に、図示はしないが、解析結果によって所望の試料である場合には、流路下流の分岐領域にて所望の細胞のみの採取を行うこともできる。分取方法には圧電素子や電磁バルブなどを用いた様々な分取方式を採用することができる。ここでは、一例として、分取用レーザーを用いた場合を例として説明する。
【0062】
分光検出器の取得情報(例えば、蛍光スペクトル、大きさ、速度等)により、最適なタイミングと照射パワーで分取用レーザーを別途照射する。そして、流路中に照射された光エネルギーによって気泡を生成させる。そして、気泡の発生により流路中の流れ変化が生じ、所望の試料のみを目的の採取エリアに導くことができる。
【0063】
このように、FACS装置Aにおいて、サンプルとなる細胞をレーザー光により分光解析し、所望の細胞であるかどうかの判断を行い、更に分岐流路(符号41参照)において所望の細胞のみを分取することもできる。このような分岐する流路構造であっても、本発明によれば、高い精度で流体制御を行なうことができる(例えば、図3、図4等参照)
【0064】
また、FACS装置Aのような検出系と分取系の距離がある程度離れている場合でも、分取部に搬送されてくる試料の中から、採取目標の試料の位置を特定するためには、試料の流速が一定であることが重要である。これに関して、本発明に係る流路構造では、流路中であっても、試料を整然と搬送し続けることができる。その結果、試料のソーティング等も正確に行うことができる。更には、流路中を流れる試料の流速や、流路中の位置が安定しているため、安定した分光解析や分取作業を行うことができる。
【0065】
なお、ここでは、FACS装置への応用を一例として説明したが、観察対象である試料の位置や速度制御を必要とする分析チップ全般に対しても、本発明は有効に用いることができる。応用可能なものとして、例えば、種々のDNA解析装置や、質量分析装置、その他リアルタイムでの細胞観察装置等が挙げられる。また、これら以外の各種アナライザー装置やマイクロリアクター装置等にも応用できる。
【実施例】
【0066】
本発明に係る流路構造の効果を検証した。具体的には、本発明における流路構造について、コンピュータ解析を行った。この流体解析は、有限体積法熱流体解析ツールである米国ANSYS社製「ANSYS−CFX」を用いた。また、特に明示が無い限り、計算の離散化に用いた要素数はいずれのモデルも30万程度であり、境界条件やメッシュ品質や計算精度も同一の条件である。
【0067】
<実施例1>
図9に示す流路構造のモデルについてコンピュータ解析を行なった。図9は同流路構造のモデルの概略図である。図9の(1)は、流路構造を上面視した状態を示す。図9の(2)は流路構造を右側方から側面視した状態を示す。この図9の流路構造は、3箇所の曲折部を有している(例えば、図1等参照)。なお、図9に示す大きさや形状はシミュレーションの一例として採用したものであり、本発明の流路構造のサイズ等について限定するものではない(以下同様)。
【0068】
図10に、この流路構造の流体シミュレーションの境界条件を示す。なお、図10は図9の矢印方向から斜視した状態である。図10に示すように、サンプル流の流速は0.5mL/h、第1のシース流の流速は1mL/h、第2のシース流の流速は5mL/h、排出される圧力は1atmとなる条件とした。
【0069】
この流体シミュレーションの解析結果を図11に示す。なお、図11は図10の矢印方向から斜視した状態である。図11は、流路中をサンプル流が流れる様子(Stream Line)を示している。このサンプル流の濃淡色は流速を示している。これによれば、3箇所の曲折部を経由したサンプル流は、3次元的にみても均一な流速分布を示し、かつ流路内の中心部分に集束して流れていることが示された。
【0070】
<実施例2>
図12に示す流路構造のモデルについてコンピュータ解析を行なった。図12は同流路構造のモデルの概略図である。図12の(1)は、流路構造を上面視した状態を示す。図12の(2)は流路構造を右側方から側面視した状態を示す。図12の流路構造は、3箇所の曲折部を有している。なお、図12に示す大きさや形状はシミュレーションの一例として採用したものであり、本発明の流路構造のサイズ等について限定するものではない。
【0071】
この流路構造は、図12の(2)からも明らかなように流路Z軸方向の高さを最小としていることを構造上の特徴の一つとしている。そして、図12の結合部において2層に分けて考察できる。この流路構造は、成形したマイクロ分析チップを2枚貼り合わせることで得ることができる。
【0072】
この流体シミュレーションの解析結果を図13に示す。なお、図13は図13の矢印方向から斜視した状態である。図13は、流路中をサンプル流が流れる様子(Stream Line)を示している。本実施例は、実施例1の解析モデルと同様の条件でシミュレーションを行った。これによれば、本実施例でも、3箇所の曲折部を経由したサンプル流は、3次元的にみても均一な流速分布を示し、かつ流路内の中心部分に集束して流れていることが示された。
【0073】
<実施例3>
図14に示す流路構造のモデルについてもコンピュータ解析を行なった。図14の流路構造は、流路の接続部分が、Y方向とX軸方向にそれぞれ0.1mmの余長(つきだし長)を有して接合している(図14の矢印参照)。これ以外は、図12と同様の構造である。
その結果、実施例3でも、3箇所の曲折部を経由したサンプル流は、3次元的にみても均一な流速分布を示し、かつ流路内の中心部分に集束して流れていることが示された。従って、一定の貼り合わせ誤差が生じた場合であっても、良好なサンプル流形状を確保できることが示唆された。
【0074】
以上の検討結果から、射出成形基板を複数貼り合わせることで、本発明の流路構造を得る場合等を鑑みれば、流路構造の曲折部において、折れ曲がり方向において所定長の余長を有することが望ましいことが示された。
【0075】
従来であれば、高精度の貼り合わせ技術を要するため、製造上のコスト的にも多大な負担があった。これに関して、本発明に係る流路構造は、高精度の流体制御を可能とならしめただけでなく、製造上の負担も大幅に軽減することができる。即ち、あらかじめ前記所定長の余長を有するように射出成形基板を製造するだけで、高精度の流体制御が可能な流路基板をより簡便かつ確実に製造ができる。
【0076】
<実施例4>
更に、流路構造の曲折部の構造について検討すべく、曲折部の連結構造について比較実験を行った。図15に示す種々の連結構造(1)〜(4)において、今までと同様の条件で流体シミュレーションを行い、これらの連結構造が及ぼす流体への影響を検討した。
【0077】
連結構造1は、実施例1でシミュレーションした流路構造の曲折部分である。
連結構造2は、実施例3でシミュレーションした流路構造の曲折部分である。
連結構造3は、流路の接続部分が、Y方向とX軸方向にそれぞれ0.1mmの余長(つきだし長)を有して接合している。即ち、流路が屈曲していく方向と逆方向に所定の余長を設けている。これ以外は、実施例3のモデルと同様の構造である。
連結構造4は、流路の接続部分について、流路を屈曲させる間にH=0.6mmの中継路を設けている。これ以外は、実施例3のモデルと同様の構造である。
これらのシミュレーション結果を図15に示し、その比較結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
図15及び表1のなかでは、両面成形した連結構造4が最も評価がよかった。そして、連結構造1,2の形状が同程度の良好の評価であった。また、R形状である連結構造3は、実用可能な程度の流体制御は可能であったが、他の連結構造1,2,4と比較すればやや劣る結果となった。
【0080】
以上より、連結構造4等の知見から、流路を屈曲させる間に中継路を設けることで、より流れを安定させることができることが示された。即ち、例えば図9の(2)等に示すように、折り曲げられた流路と流路の間の距離(高さH)が、所定長を有することが望ましい。なお、このような構造は、特に両面成形によって簡便に得ることができる(例えば、図6の符号(III)等参照)。
【0081】
また、通常の貼り合わせで基板流路を形成する場合には、位置ズレが発生しやすい。そのような場合であっても、連結構造2等のように、屈曲方向と逆方向に所定長の余長を設けることで、連結構造1等と同程度の安定性を得ることができる。
【0082】
以上より、本発明によれば流路中において高精度の流体制御が可能となることが、本実施例によって示された。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る流路構造の第1実施形態の簡略斜視図である。
【図2】同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。
【図3】本発明に係る流路構造の第2実施形態の簡略斜視図である。
【図4】本発明に係る流路構造の第3実施形態の簡略斜視図である。
【図5】同実施形態において流路中を試料が流れる状態を示す簡略斜視図である。
【図6】本発明に係る流路基板の製造方法の一例を説明する側面概念図である。
【図7】本発明に係る流路基板の製造方法の別の一例を説明する側面概念図である。
【図8】本発明に係る流路基板を用いたFACSシステムの概念図である。
【図9】解析を行なった流路構造のモデルを示す概念図である。
【図10】同流路構造のモデルの流体シミュレーションの境界条件を示す図である。
【図11】同流路構造のモデルの流体シミュレーションの解析結果を示す図である。
【図12】解析を行なった流路構造の別のモデルを示す概念図である。
【図13】同流路構造のモデルの流体シミュレーションの解析結果を示す図である。
【図14】解析を行なった流路構造の更に別のモデルの解析結果を示す図である。
【図15】連結構造(1)〜(4)の比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
・ 流路構造
11,21,31 第1導入部
12,22,32 排出部
13,17,23,24,28,29,33,36 第2導入部
14,15,16,25,26,27,34,35 曲折部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を導入する第1の導入部と、
前記試料を挟み込むための流体を導入する第2の導入部と、
前記試料を排出する排出部と、を少なくとも備えた流路構造であり、
前記試料の導入方向をX方向とすると、
Y軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、
X軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、を少なくとも備える流路構造。
【請求項2】
更に、Z軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部を、流路中に少なくとも備えることを特徴とする請求項1記載の流路構造。
【請求項3】
前記試料の搬送方向に対して前記流路を断面視した形状は、略同じ形状で維持されていることを特徴とする請求項1記載の流路構造。
【請求項4】
請求項1記載の流路構造を備えた流路基板。
【請求項5】
前記試料を流体で挟み込んで流路中を搬送させる際に、順不同で、下記(1)工程と、(2)工程と、を少なくとも行う流体制御方法。
(1)前記試料の導入方向をX方向とすると、前記試料をY軸周りに略90度曲折させる工程、
(2)前記試料をX軸周りに略90度曲折させる工程。
【請求項6】
前記試料又は前記流体の流体条件を制御することで、前記流路中における前記試料の位置制御を行なうことを特徴とする請求項5記載の流体制御方法。
【請求項7】
前記試料は細胞及び/又はビーズを含み、前記細胞及び/又はビーズの前記流路中における位置情報を、前記流路中の所定位置において検出し、該位置情報に基づいて前記試料の位置制御を行なうことを特徴とする請求項6記載の流体制御方法。
【請求項1】
試料を導入する第1の導入部と、
前記試料を挟み込むための流体を導入する第2の導入部と、
前記試料を排出する排出部と、を少なくとも備えた流路構造であり、
前記試料の導入方向をX方向とすると、
Y軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、
X軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部と、を少なくとも備える流路構造。
【請求項2】
更に、Z軸周りに略90度に流路が曲折する曲折部を、流路中に少なくとも備えることを特徴とする請求項1記載の流路構造。
【請求項3】
前記試料の搬送方向に対して前記流路を断面視した形状は、略同じ形状で維持されていることを特徴とする請求項1記載の流路構造。
【請求項4】
請求項1記載の流路構造を備えた流路基板。
【請求項5】
前記試料を流体で挟み込んで流路中を搬送させる際に、順不同で、下記(1)工程と、(2)工程と、を少なくとも行う流体制御方法。
(1)前記試料の導入方向をX方向とすると、前記試料をY軸周りに略90度曲折させる工程、
(2)前記試料をX軸周りに略90度曲折させる工程。
【請求項6】
前記試料又は前記流体の流体条件を制御することで、前記流路中における前記試料の位置制御を行なうことを特徴とする請求項5記載の流体制御方法。
【請求項7】
前記試料は細胞及び/又はビーズを含み、前記細胞及び/又はビーズの前記流路中における位置情報を、前記流路中の所定位置において検出し、該位置情報に基づいて前記試料の位置制御を行なうことを特徴とする請求項6記載の流体制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−115542(P2009−115542A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287337(P2007−287337)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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