説明

流量制御弁

【課題】常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保でき、製品間のCv値のバラツキを少なくする流量制御弁を提供すること。
【解決手段】流量制御弁は、入力ポート41B及び出力ポート41Cに連通する弁室44に弁座42を設けたバルブボディ41と、弁座42と接離するメタルダイアフラム43と、メタルダイアフラム43の中央部を上下動させるステムと、ステムを駆動させるアクチュエータと、その上部でアクチュエータが連結されたホルダ部5とを備え、ステムは、アクチュエータに連結された第1ステム71とメタルダイアフラム43の中央部上面に押し当てられた第2ステム72とに上下分割され、互いに当接、離間できること、メタルダイアフラム43の弁開位置で、第1ステム71が第2ステム72の上昇を規制することにより、メタルダイアフラム43の使用ストローク長をフルストローク長より減少した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として半導体製造装置のガス供給系において使用される流量制御弁に関するものであり、常温時から高温時まで弁のCv値を安定に保持して、流量変動の少ない流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高温用ガス弁は最大流量を維持させることに着目して、メタルダイアフラムを熱処理することによって硬度を高くし、高温時(例えば250℃位)のダイアフラムの変形量を抑制していた。このような技術は、以下に示す特許文献1に開示されている。
上記特許文献1には、コバルト合金からなるメタルダイアフラムを時効硬化熱処理によって、ビッカース硬度をHv500以上にすると、高温環境下であっても、メタルダイアフラムの反力の低下や熱膨張が抑えられるので、メタルダイアフラムと弁座との間のギャップを一定に保つことが可能となり、半導体製造装置内に原料ガスを安定して供給できる、と記載されている。
【0003】
しかし、ダイアフラム弁を大口径にすると、流体受圧面積も大きくなり、高温かつ真空状態で使用されると、負圧の荷重によってダイアフラムが弁座方向に大きく引かれるように落ち込んで、流量の減少に加えて弁が自然に閉塞する恐れもあった。
この問題に対応するため、ダイアフラムを弁座に接離させるための昇降動部材(アクチュエータのステム)に、ダイアフラムを溶着した技術が、特許文献2に開示されている。
【0004】
一方、硬度を高くしたドーム形状のメタルダイアフラムでは、そのドーム形状の最大膨出高さをストローク長として使用し、弁開閉回数を重ねると、クラックを生じやすく耐久性を低下させる。これには、弁開閉動作時にメタルダイアフラムにかかる歪量や歪応力を少なくするとよく、最大膨出高さの55〜70%の寸法(距離)をストローク長とした技術が、特許文献3に開示されている。
確かに、最大膨出高さの55〜70%の寸法(距離)をストローク長としたことによって、メタルダイアフラムの開閉耐久性は向上するものの、図4の従来品(100%)のグラフ1、及び参考品(66%)のグラフ5に示すように、常温時と高温時とではCv値が大きく変動することが、本発明者等の実験によって判明した。ここで、図4の従来品(100%)は、メタルダイアフラムの最大膨出高さの100%の寸法(距離)をストローク長としたものを示し、参考品(66%)は、メタルダイアフラムの最大膨出高さの66%の寸法(距離)をストローク長としたものを示す。Cv値は、JIS規格(JIS B0100−1984)に基づき算出した。測定温度は、23℃(常温時)、100℃、150℃、200℃、250℃(高温時)である。
【0005】
また、流量制御弁を構成する部品の加工精度や組み付け精度等のバラツキから、流量制御弁一つ一つの製品間でも流量特性にバラツキが生じる。特に、高温環境下で製造される半導体デバイスの製造プロセスにおいて、流量特性(例えば、Cv値)の機差は、プロセスへの影響が大きい。
そのため、例えば、特許文献3には、メタルダイアフラムのストローク長調整機構として、バルブボディを蓋するボンネット内へアクチュエータの支持用筒部をねじ込み、支持用筒部に螺着したロックナットにて固定することにより、アクチュエータのバルブボディに取り付ける高さを調節する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−151270号公報
【特許文献2】特開2006−90386号公報
【特許文献3】特開2007−64333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、温度変化に伴いバルブのCv値が大きく変化すると、特に、微細化・高集積化した半導体デバイスの成膜プロセスの品質管理に悪影響をもたらすので、温度変化に対するCv値の変動が少ないダイアフラム式の流量制御弁が求められている。
しかし、原料ガスや使用環境の温度が常温(約20℃位)から高温(約250℃位)に変化すると、ダイアフラムの強度が低下して、弁開時にダイアフラムの中央部が下方に落ち込み、弁座に近接することなる。真空状態で使用すると、負圧によりダイアフラムの下方への落ち込みは、一層多くなる。
すなわち、高温時には、ダイアフラムが軟化して、前述のような負圧が作用すると、ダイアフラムの弁開位置が低くなり、流量制御弁のCv値が常温時の40〜60%程度にまで減少することが、本発明者等の実験によって判明している。それならば、初期段階で、具体的には、常温時の取り付け状態(負圧も作用させない状態)で、ダイアフラムの高さを高温時の弁開位置まで予め規制して、高温時と常温時とにおける流量制御弁のCv値を測定してみたところ、高温時でのCv値は、当然、略同一でありながら、常温時でのCv値は、なにも規制しなかったときに比べて、約半分の変化に縮まることが判明した。つまり、初めから、高温時でのCv値に対応する弁開位置まで、ダイアフラムのストローク長を規制して使用すると、常温時と高温時との間でCv値の変動を、ストローク長を規制しないときに比較して、約半分程度に低減でき、しかも、高温時のCv値は、ストローク長を規制しないときと略同一の値を得ることが判明した。
【0008】
予め、ダイアフラムのストローク長を規制して使用するため、特許文献2に開示された構造のように、ダイアフラムを昇降動部材(ステム)に溶着すると、ダイアフラムは昇降動部材(ステム)と一体となっているので、昇降動部材(ステム)のみを取り外すことができない。そのため、製品ごとにダイアフラムのストローク長を簡便な機構で確実かつ正確に調節することができない。
その際、ステムを第1ステムと第2ステムとに上下分離して、第1ステムを昇降動部材(アクチュエータ)に連結し、第2ステムをダイアフラムに溶着する構造も考えられる。
しかし、第2ステムは、単独でダイアフラムに溶着されているので、高温時にはダイアフラムと一体となって下降し、常温時における弁開時の高さより低くなる。
そのため、常温時に弁開した時、第1ステムと当接する状態であった第2ステムは、高温時に弁開した時には、第1ステムと離間する状態となる場合がある。第1ステムと第2ステムとが、弁開時に離間していると、ダイアフラムのストローク長を一定に規制することができないので、Cv値が変動して、流量制御が安定しない。
【0009】
また、特許文献3に開示された構造のように、アクチュエータのバルブボディを蓋するボンネットに取り付ける高さをねじ込み量によって調節する構造では、アクチュエータのボンネットへの取り付け高さが、ねじ山及びねじ溝の加工精度等のバラツキによって微妙に変化し、ダイアフラムのストローク長を高精度かつ確実に調節することは困難である。
【0010】
さらに、弁室内を入力ポートから出力ポートに向かって流れる流体によるダイアフラムに作用する負圧は、出力ポート側で強くなる傾向にある。そして、高温時にダイアフラムが軟化すると、弁開時に上方に復元する弾性力が低下する。したがって、高温時には、上記負圧の影響が相対的に高くなり、ダイアフラムの復元姿勢に変化が生じやすくなる。これは、常温時と高温時との間で、Cv値が変動する要因の一つとなる。
【0011】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、その主目的は、高温かつ真空状態で使用しても、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保でき、また、製品間のCv値のバラツキを低減するため、ダイアフラムのストローク長の調節を簡便かつ正確に行うことができる流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る流量制御弁は、次のような構成を有している。
(1)入力ポート及び出力ポートに連通する弁室の底面に弁座を設けたバルブボディと、前記弁座の上方に配設されて前記弁座と接離し、その中央部が上方に膨出するメタルダイアフラムと、前記メタルダイアフラムの中央部を上下動させるステムと、前記ステムを駆動させるアクチュエータと、前記メタルダイアフラムの外周縁部の上方に配設され前記弁室の底面との間で前記メタルダイアフラムを気密状に挟圧すると共に、その上部で前記アクチュエータが連結されたホルダ部とを備えた流量制御弁において、
前記ステムは、前記アクチュエータに連結された第1ステムと前記メタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムとに上下分割され、互いに当接、離間できること、
前記メタルダイアフラムの弁開位置で、前記第1ステムが前記第2ステムの上昇を規制することにより、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長より減少したことを特徴とする。
【0013】
(2)(1)に記載された流量制御弁において、
前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長の20〜49%に規制することにより、高温時(250℃)と常温時とにおけるCv値の差を0.19以内としたことを特徴とする。
(3)(2)に記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、エアシリンダ部とスプリング部とを有し、
前記エアシリンダ部と前記スプリング部との間にシムを挟むことによって、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を前記規制値の範囲内にしたことを特徴とする。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、ケース内にピストンを有するエアシリンダを備え、
前記メタルダイアフラムのストローク長を計測する貫通孔を、前記エアシリンダのケースに設けたことを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記第2ステムは、前記ホルダ部中央に穿設された連通孔に摺接して上下動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このような特徴を有する本発明の流量制御弁は、以下のような作用効果を奏する。
(1)に記載された発明は、入力ポート及び出力ポートに連通する弁室の底面に弁座を設けたバルブボディと、弁座の上方に配設されて弁座と接離し、その中央部が上方に膨出するメタルダイアフラムと、メタルダイアフラムの中央部を上下動させるステムと、ステムを駆動させるアクチュエータと、メタルダイアフラムの外周縁部の上方に配設され弁室の底面との間でメタルダイアフラムを気密状に挟圧すると共に、その上部でアクチュエータが連結されたホルダ部とを備えた流量制御弁において、ステムは、アクチュエータに連結された第1ステムとメタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムとに上下分割され、互いに当接、離間できること、メタルダイアフラムの弁開位置で、第1ステムが第2ステムの上昇を規制することにより、メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長より減少したことを特徴とするので、以下に説明する作用効果を奏する。
【0015】
(1)の発明は、メタルダイアフラムの弁開位置で、第1ステムが第2ステムの上昇を規制しているので、常温時においては、メタルダイアフラムは強度が高い分、弁開時の復元力が強く、メタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムは、高温時における弁開位置より上方へ移動しようとするが、第2ステムはアクチュエータに連結された第1ステムと当接して、上方への移動が規制される。そのため、弁開時における第2ステムの上昇位置を、常温時から高温時まで略一定にでき、メタルダイアフラムの使用ストローク長も常温時から高温時にかけて略一定に制御できる。その結果、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できる。
【0016】
また、ステムは、アクチュエータに連結された第1ステムとメタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムとに上下分割され、互いに当接、離間できることにしたので、弁開時における第1ステムの上昇端位置を調整してダイアフラムの使用ストローク長を調節するとき、アクチュエータと第1ステムとを一体に組み付けた状態で、アクチュエータをホルダ部から外し第1ステムの取り付け位置等を調節したうえで、また、ホルダ部に連結することによって、ダイアフラムの使用ストローク長の調節を、簡便かつ正確に行うことができる。これによって、Cv値の調節を簡便かつ正確にできる。
【0017】
(2)に記載された発明は、(1)に記載された流量制御弁において、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長の20〜49%に規制することにより、高温時(250℃)と常温時とにおけるCv値の差を0.19以内としたことを特徴とするので、高温かつ真空状態で使用しても、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できる。
ここで、ダイアフラムの使用ストローク長の下限をフルストローク長の20%にしたのは、その時の高温時(250℃)におけるCv値(250℃)が、0.12となり、これよりCv値が小さくなると、実用上、ダイアフラムの外径を1ランク落としたものと同等となるため、大きいサイズである意味がないからである。また、ダイアフラムの使用ストローク長の上限をフルストローク長の49%にしたのは、その時の高温時(250℃)と常温時におけるCv値の差が、0.19となり、これよりCv値の差が大きくなると、実用上、流量コントロールシステムが複雑となり、安定した流量制御を行い難くなるからである。
すなわち、高温時(250℃)には、軟化したダイアフラムは負圧の作用を受けて弁座との隙間が縮まり、それに伴ってCv値が常温時に比べて、40〜60%程度まで減少する。この減少したCv値よりも、Cv値を小さく制限して使用する考え方の下で、初期状態でダイアフラムの使用ストローク長をダイアフラムのフルストローク長の20〜49%に規制することにより、常温時におけるCv値(常温)に対する高温時(250℃)におけるCv値(250℃)の差を0.19の範囲内にしたので、高温かつ真空状態で使用しても、実用上、ダイアフラムの外径を1ランク落とすことなく、また、流量コントロールシステムを複雑化することなく、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できるのである。
【0018】
(3)に記載された発明は、(2)に記載された流量制御弁において、アクチュエータは、エアシリンダ部とスプリング部とを有し、エアシリンダ部とスプリング部との間にシムを挟むことによって、メタルダイアフラムの使用ストローク長を規制値の範囲内にしたことを特徴とするので、エアシリンダ部とスプリング部との間に入るシムを複数枚用意しておけば、設定したい使用ストローク長に簡単かつ確実に調節できる。そのため、製品ごとにメタルダイアフラムの使用ストローク長が微妙に異なる場合でも、規制値の範囲内に納める調節を、高精度かつ確実にできる。また、シム調節であるので、アクチュエータをねじ込み量によって調節する構造と違って、ねじ山及びねじ溝の加工精度等のバラツキによって微妙に変化しないので、ダイアフラムのストローク長を高精度かつ確実に調節することが容易である。
よって、製品ごとのダイアフラムの使用ストローク長の調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう少なくすることができる。
【0019】
(4)に記載された発明は、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された流量制御弁において、アクチュエータは、ケース内にピストンを有するエアシリンダを備え、メタルダイアフラムのストローク長を計測する貫通孔を、エアシリンダのケースに設けたことを特徴とするので、エアシリンダをバルブボディに取り付けた状態で、エアシリンダのケースに設けた貫通孔に計測棒を挿入し、ピストンに当接することによって、メタルダイアフラムのストローク長を測定できる。ピストンは、ピストンロッドを介して第1ステムに連結され、第1ステムはメタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムの上昇を規制しているので、メタルダイアフラムの中央部の上下動に連動して上下動するからである。
これによって、製品ごとのダイアフラムのストローク長を簡単に確認できるので、その調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう低減することができる。
【0020】
(5)に記載された発明は、(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された流量制御弁において、第2ステムは、ホルダ部中央に穿設された連通孔に摺接して上下動することを特徴とするので、高温でメタルダイアフラムの強度が低下して、メタルダイアフラムの復元姿勢に変化が生じやすくなっても、メタルダイアフラムの中央部は、押し当てられた第2ステムの下端面に略沿った形状に保持されたまま第2ステムとともに上下動し、正しいストローク軌跡を正確に再現できる。
結果として、常温時と高温時(250℃)との間でCv値の変動を、いっそう低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の全体断面図であって、メタルダイアフラムの弁開状態を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の上部部分断面図であって、上部ホルダから外したときのシリンダ部の組み付け状態Sを示す。
【図3】本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の下部部分断面図であって、メタルダイアフラムの弁閉状態を示す。
【図4】本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1を用いて、バルブ温度とCv値との関係を求めたグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の上部部分断面図であって、メタルダイアフラムのストローク長を計測するために、計測棒を貫通孔に挿入した状態を示す。
【図6】本発明の第2実施形態に係る流量制御弁2のシリンダケースの断面図であって、ピストンロッドの上昇端位置を調整する調整つまみを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る流量制御弁の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る流量制御弁1の全体断面図であって、弁開状態を示す。図2は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の上部部分断面図であって、上部ホルダから外したときのシリンダ部の組み付け状態Sを示す。図3は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の下部部分断面図であって、メタルダイアフラムの弁閉状態を示す。図4は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1を用いて、バルブ温度とCv値との関係を求めたグラフである。図5は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1の上部部分断面図であって、メタルダイアフラムのストローク長を計測するために、計測棒を貫通孔に挿入した状態を示す。
第1実施形態の流量制御弁1は、従来技術と同様、半導体製造装置のガス供給系に組み付けられ、高温ガスの供給を制御する。流量制御弁1は、ノーマルクローズタイプのエアオペレイト式開閉弁である。流量制御弁1は、上方に配設されたアクチュエータ部3と、下方に配設されメタルダイアフラムを有する弁部4と、両者を連結するホルダ部5とから構成されている。アクチュエータ部3は、エアシリンダ部6とスプリング部7とが薄板(シム)52を介して連結されている。
【0023】
図1に示すように、エアシリンダ部6は、シリンダベース31、シリンダケース32、ピストン33、中間プレート34、ピストンロッド35、Oリング36、加圧室37を備えている。また、スプリング部7は、スプリングリテーナ61、圧縮スプリング62、ロッドガイド63、押えナット64、第1ステム71を備えている。
シリンダベース31には、上端側に上フランジ31Aが張り出し、その外周縁に筒状のシリンダガイド31Bが突設されている。シリンダガイド31Bには、上端を閉じた筒状のシリンダケース32が上から螺合されている。シリンダケース32内及びシリンダガイド31B内には、上ピストン33Aと下ピストン33Bとが、それぞれ摺動自在にはめ込まれている。上下ピストン33A、33Bの間には、中間プレート34が配設されている。中間プレート34には、上下ピストン33A、33Bと連結されたピストンロッド35の上下動を案内するガイド孔34Aが、中央に穿設されている。中間プレート34の外周端は、シリンダケース32の内壁面に下向きに形成された段付き部32Dに嵌合されている。シリンダケース32の上端下面とピストンロッド35に形成された段付き部35Bとが、弁開時に当接し、シリンダストローク長を規制している。
【0024】
シリンダケース32の上端中央には、パイロットポート32Aと、ピストンロッド35の上下動を案内するガイド孔32Bとが、上下貫通して形成されている。ピストンロッド35には、パイロットポート32Aから送給される操作エア(圧縮エア)を上ピストン33Aと中間プレート34との間、及び、下ピストン33Bとシリンダベース31との間に形成された上下の加圧室37、37に供給する送給孔35Aが穿設されている。したがって、パイロットポート32Aに操作エアを送給すると、上下ピストン33A、33B及びピストンロッド35は上方(弁開方向)に駆動する。そして、駆動する上下ピストン33A、33B及びピストンロッド35には、シリンダケース32、中間プレート34、及びシリンダガイド31Bと摺接する箇所に、Oリング36が嵌合されている。
【0025】
図5に示すように、シリンダケース32の上端外周側には、メタルダイアフラム43のストローク長を計測する貫通孔32Cが穿設されている。この貫通孔32Cに計測棒Rを挿入し、上ピストン33Aに当接することによって、メタルダイアフラム43のストローク長を測定できる。上ピストン33Aは、ピストンロッド35を介して第1ステム71に連結され、第1ステム71はメタルダイアフラム43の中央部上面に押し当てられた第2ステム72の上昇を規制しているので、メタルダイアフラム43の中央部の上下動に連動して上下動するからである。
【0026】
また、図1に示すように、シリンダベース31の下端には、下フランジ31Cが形成されている。下フランジ31Cは、薄板(シム)52を介して下方(弁閉方向)に付勢する圧縮スプリング62を保持するスプリングリテーナ61の上面61Aに当接している。
薄板(シム)52は、略C字形状に形成されている。薄板(シム)52は、外径を下フランジ31Cの外径と略程度とし、複数枚用意している中から、適宜選択する。薄板(シム)52の材質は、例えばSUS304で、厚さは、0.05mm程度である。なお、薄板(シム)52は、厚さの異なるシムと厚さの等しいシムを複数枚用意しておくとよい。組み合わせることによって、最適な寸法に調節できるからである。
下フランジ31Cの下端中央部には、雄ねじが設けられ、スプリングリテーナ61のボス部61Bに設けた雌ねじに螺合されている。薄板(シム)52は、そのねじを締め付けることによって、スプリングリテーナ61の上面61Aとシリンダベース31の下フランジ31Cとの間で挟圧されている。
したがって、下フランジ31Cの下端中央部のねじを緩めて、スプリングリテーナ61から外すことによって、簡単に薄板(シム)52を交換できる。
下フランジ31Cの中央部には、ピストンロッド35が貫通する貫通孔31Dが穿設されている。
【0027】
スプリングリテーナ61のボス部61Bの下端には、その中央部をピストンロッド35が貫通するロッドガイド63が配設されている。ロッドガイド63は、スプリング62Bを保持する役割を持っている。
また、貫通したピストンロッド35の下端部には、雄ねじが設けられ、第1ステム71の上端中央部71Aに設けられた雌ねじに螺合されている。そのため、ピストンロッド35の上方への駆動力が、第1ステム71に伝達される。ピストンロッド35が螺合している第1ステム71の上端外周部71Bには、圧縮スプリング62の下端が当接している。そのため、圧縮スプリング62の弾性力が、第1ステム71を下方に押圧する。本実施形態では、外径と線径とが異なる2種類の圧縮スプリング62A,62Bが配設されている。その理由は、必要推力を出し、かつ縦方向に省スペースとするためである。
スプリングリテーナ61の外周縁には、筒状のスプリングガイド61Cが垂下され、その下端に所定の厚みを有する鍔部61Dが、外向きに形成されている。
【0028】
次に、図3に示すように、ホルダ部5は、アダプタ51とホルダ53とを備えている。
アダプタ51には、上下に筒状の中空部51Bが形成され、その中には、圧縮スプリング62とピストンロッド35に連結されている第1ステム71とが挿入されている。
アダプタ51の上部外周面には、第1の雄ねじが設けられ、押えナット64の内周面に設けた雌ねじと螺合されている。押えナット64の上端内周縁には、係合部64Aが内向きに突設され、スプリングリテーナ61の鍔部61Dと係合している。押えナット64のねじを締結することによって、アダプタ51は、スプリングリテーナ61と連結されている。
【0029】
アダプタ51の下部外周面には、第2の雄ねじが設けられ、弁部4を構成するバルブボディ41の上部に突設された筒部41Aの内周面に設けられた雌ねじに螺合されている。
アダプタ51の下端には、ホルダ53の上端が当接している。ホルダ53の当接部53Bは、鉤型に形成され、アダプタ51の径方向と上下方向とを規制している。ホルダ53は、メタルダイアフラム43の外周縁部43Bの上方に配設され、弁室44の底面との間でメタルダイアフラム43を気密状に挟圧している。
ホルダ53の中央部には、弁開閉時に第2ステム72の外周縁72Aと摺接する連通孔53Aが、穿設されている。
【0030】
次に、図3に示すように、弁部4は、バルブボディ41、弁座42、メタルダイアフラム43、第2ステム72を備えている。
バルブボディ41の上部に突設された筒部41Aの内面には、入力ポート41B及び出力ポート41Cに連通する弁室44が形成されている。弁室44の底面には、入力ポート41Bに連通する箇所に弁座42が設けられている。弁座42の材質は、耐熱性の優れたPI(ポリイミド)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)である。また、弁座42は、バルブボディ41にかしめ結合されている。弁座42の上方には、弁座42と接離し、その中央部43Aが上方に膨出するメタルダイアフラム43が配設されている。メタルダイアフラム43は、ニッケル・コバルト合金製の薄膜が複数枚積層され、シート状に圧着されている。メタルダイアフラム43は、0.1mm厚の薄膜を3枚積層して、中央部43Aの膨出量は、自由状態で0.9mmとして、作製されている。また、メタルダイアフラム43は、高強度化するため、熱処理を行っているので、硬度は、ビッカース硬度Hv500以上を有している。
メタルダイアフラム43の中央部43Aは、その上面にて第2ステム72の下端72Bが押し当てられている。
第2ステム72は、略円柱形状で、その下端72Bは、下方になだらかに膨出して湾曲した形状に形成されている。バルブボディ41に取り付ける段階(初期段階)で、メタルダイアフラム43の中央部43Aを、第2ステム72の下端72Bの湾曲面に略沿った形状に規制する。弁開時においても、メタルダイアフラム43の中央部43Aは、押し当てられた第2ステム72の下端72Bの湾曲面に略沿った形状に保持されている。
【0031】
本実施形態では、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tを該メタルダイアフラム43のフルストローク長の20〜49%に規制することにより、高温時(250℃)と常温時とにおけるCv値の差を0.19以内とした。
以下、図4に基づいて、上記数値限定の根拠を説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係る流体制御弁1を用いて、バルブ温度とCv値との関係を求めたグラフである。
まず、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの下限をフルストローク長の20%にしたのは、その時の高温時(250℃)におけるCv値(250℃)が、0.12となり、これよりCv値が小さくなると、実用上、メタルダイアフラム43の外径を1ランク落としたものと同等となるため、大きいサイズである意味がないからである。また、メタルダイアフラム43の使用ストローク長の上限をフルストローク長の49%にしたのは、その時の高温時(250℃)と常温時におけるCv値の差が、0.19となり、これよりCv値の差が大きくなると、実用上、流量コントロールシステムが複雑となり、安定した流量制御を行い難くなるからである。
【0032】
なお、本実施形態では、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの最適値を、0.4mmとしている。この場合、メタルダイアフラム43の使用ストローク長は、フルストローク長(自由状態での高さ0.9mm)に対して、44%に規制されていることになる。
本発明者等の実験によると、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tをフルストローク長の44%に規制したとき、高温時(250℃)におけるCv値は0.39で、常温時(23℃)におけるCv値は、0.57であった。したがって、その場合のCv値の差は、0.18である。一方、メタルダイアフラム43の使用ストローク長を規制しなかったとき、高温時(250℃)におけるCv値は0.43で、常温時(23℃)におけるCv値は、0.79であった。したがって、その場合のCv値の差は、0.36である。
このように、メタルダイアフラム43のストローク長をフルストローク長の44%に規制することによって、高温時(250℃)におけるCv値をあまり低下させることなく(−0.04)、高温時(250℃)から常温時(23℃)におけるCv値の変動量(0.18)を、規制しなかった場合のCv値の変動量(0.36)に対して、約半分に減少させることができた。
なお、Cv値は、JIS規格(JIS B0100−1984)に基づき算出した。測定温度は、23℃(常温時)、100℃、150℃、200℃、250℃(高温時)である。
【0033】
図1、図3に示すように、弁開閉時において、第2ステム72の外周縁72Aは、ホルダ53の連通孔53Aに摺接して案内されているので、第2ステム72の姿勢は、常に一定に保持される。したがって、第2ステム72の下端に押し当てられたメタルダイアフラム43の中央部43Aの姿勢も、弁開閉に伴って上下動する際、傾斜することなく略一定の形態に保持される。より具体的には、高温でメタルダイアフラム43の強度が低下して、メタルダイアフラム43の復元姿勢に変化が生じやすくなっても、メタルダイアフラム43の中央部は、押し当てられた第2ステム72の下端面に略沿った形状に保持されたまま第2ステム72とともに上下動し、正しいストローク軌跡を正確に再現できる。
また、図1に示すように、第2ステム72の外径Qは、少なくとも弁座42の外径Pより大きい。そのため、第2ステム72の下端面に略沿った形状に保持されたメタルダイアフラム43の中央部43Aは、少なくとも弁座42と当接する範囲において、略同じ形状が保持されている。
これは、常温時から高温時(250℃)に温度が変化しても、弁開時におけるメタルダイアフラム43と弁座42との隙間が、より一定に維持され易くしていることを意味する。
【0034】
第2ステム72の上端は、第1ステム71の下端と当接、又は、分離できる。したがって、第1ステム71は、エアシリンダ部6を構成するシリンダベース31、シリンダケース32、ピストン33、ピストンロッド35、スプリングリテーナ61、圧縮スプリング62を一体に組み付けた状態S(図2に示す状態)で、第2ステム72から分離できる。
また、図3に示すように、第2ステム72の上端中央部には、凹座面72Cが形成され、第1ステム71の下端中央部には、先端を円錐又は円弧状にした凸座面が下向きに形成されている。したがって、第1ステム71に多少傾きが生じても第2ステム72との当接位置には変動が生じ難いので、メタルダイアフラム43のストローク長を、より正確に規制できる。
【0035】
<動作説明>
図1に示すように、流量制御弁1は、パイロットポート32Aに操作エアを送給すると、操作エアが加圧室37、37に供給され、上下ピストン33A、33B及びピストンロッド35を上方(弁開方向)に駆動する。第1ステム71は、ピストンロッド35と連結されているので、圧縮スプリング62の弾性力に抗して、上昇端位置まで上昇する。第1ステム71によって上昇を規制されていた第2ステム72は、メタルダイアフラム43の復元力によって上昇する。メタルダイアフラム43の中央部43Aは、弁座42と離間し、弁開状態となる。メタルダイアフラム43の弁開位置で、第1ステムが第2ステムの上昇を規制しているので、メタルダイアフラムの使用ストローク長Tは、フルストローク長より減少している。メタルダイアフラム43が弁開すると、原料ガスが入力ポート41Bから弁室44を通って出力ポート41Cに供給される。原料ガスの温度や流量制御弁の設置場所の環境温度が高温(250℃位)になると、メタルダイアフラム43の強度が低下し、また、真空状態では原料ガスの負圧が作用するので、高温時(250℃位)におけるメタルダイアフラム43の弁開位置は、常温時の弁開位置より低くなる。
しかし、高温時(250℃位)においても、第1ステム71が第2ステム72の上昇を規制しているので、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tは、常温から高温(250℃位)に温度が変化しても、略一定に保持される。
一方、流量制御弁1は、パイロットポート32Aへの操作エアの送給を停止すると、圧縮スプリング62の弾性力によって、第1ステム71を下方(弁閉方向)に駆動する。第1ステム71は、第2ステム72の上昇を規制したまま、第2ステム72とともに下降する。図3に示すように、第2ステム72の下降に伴いメタルダイアフラム43は、その中央部43Aが、弁座42と当接し、弁閉状態となる。メタルダイアフラム43が弁閉すると、原料ガスの出力ポート41Bへの供給が停止される。
【0036】
<作用効果>
メタルダイアフラム43の弁開位置で、第1ステム71が第2ステム72の上昇を規制しているので、常温時においては、メタルダイアフラム43は強度が高い分、弁開時の復元力が強く、メタルダイアフラム43の復元動作によって第2ステム72は、高温時における弁開位置より上方へ移動しようとするが、第2ステム72はピストンロッド35に連結された第1ステム71と当接して、上方への移動が規制される。そのため、弁開時における第2ステム72の上昇端位置を、常温時から高温時まで略一定にでき、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tも常温時から高温時にかけて略一定に制御できる。その結果、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できる。
【0037】
また、ステムは、ピストンロッド35に連結された第1ステム71とメタルダイアフラム43の中央部上面に押し当てられた第2ステム72とに上下分割され、互いに当接、離間できることにしたので、弁開時における第1ステム71の上昇端位置を調整してメタルダイアフラム43の使用ストローク長Tを調節するとき、第1ステム71を含むアクチュエータ部3を一体に組み付けた状態S(図2に示す状態)で、アクチュエータ部3をホルダ部5から外し第1ステム71の取り付け位置等を調節したうえで、また、ホルダ部5に連結することによって、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの調節を、簡便かつ正確に行うことができる。これによって、Cv値の調節を簡便かつ正確にできる。
【0038】
特に、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tを該メタルダイアフラム43のフルストローク長の20〜49%に規制することにより、Cv値の差を0.19以内としたので、高温かつ真空状態で使用しても、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できる。
ここで、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの下限をフルストローク長の20%にしたのは、その時の高温時(250℃)におけるCv値(250℃)が、0.12となり、これよりCv値が小さくなると、実用上、メタルダイアフラム43の外径を1ランク落としたものと同等となるため、大きいサイズである意味がないからである。また、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの上限をフルストローク長の49%にしたのは、その時の高温時(250℃)と常温時におけるCv値の差が、0.19となり、これよりCv値の差が大きくなると、実用上、流量コントロールシステムが複雑となり、安定した流量制御を行い難くなるからである。
すなわち、高温時(250℃)には、軟化したメタルダイアフラム43は負圧の作用を受けて弁座との隙間が縮まり、それに伴ってCv値が常温時に比べて、40〜60%程度まで減少する。この減少したCv値よりも、Cv値を小さく制限して使用する考え方の下で、初期状態でメタルダイアフラム43の使用ストローク長Tをメタルダイアフラム43のフルストローク長の20〜49%に規制することにより、常温時におけるCv値(常温)に対する高温時(250℃)におけるCv値(250℃)の差を0.19の範囲内にしたので、高温かつ真空状態で使用しても、実用上、メタルダイアフラム43の外径を1ランク落とすことなく、また、流量コントロールシステムを複雑化することなく、常温時と高温時との間でCv値の変動が少なくて安定した流量を確保できるのである。
【0039】
エアシリンダ部6とスプリング部7との間に薄板(シム)52を挟むことによって、メタルダイアフラム43の使用ストローク長Tを規制値の範囲内にしたので、エアシリンダ部6とスプリング部7との間に入る薄板(シム)52を複数枚用意しておけば、設定したい使用ストローク長Tに簡単かつ確実に調節できる。そのため、製品ごとにメタルダイアフラム43の使用ストローク長Tが微妙に異なる場合でも、規制値の範囲内に納める調節を、高精度かつ確実にできる。また、シム調節であるので、アクチュエータをねじ込み量によって調節する構造と違って、ねじ山及びねじ溝の加工精度等のバラツキによって微妙に変化しないので、メタルダイアフラム43のストローク長Tを高精度かつ確実に調節することが容易である。
よって、製品ごとのメタルダイアフラム43の使用ストローク長Tの調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう少なくすることができる。
なお、薄板(シム)52の厚さを0.05mmとすることにより、高温時(250℃)における製品間のCv値のバラツキを±8.6%、温度によるバラツキを5℃あたり±1.3%、合わせて約±10%に抑えることができた。
【0040】
また、メタルダイアフラム43のストローク長Tを計測する貫通孔32Cを、シリンダケース32の上端外周側に設けたので、エアシリンダ部6をバルブボディ41に取り付けた状態で、シリンダケース32に設けた貫通孔32Cに計測棒Rを挿入し、上ピストン33Aに当接することによって、メタルダイアフラム43のストローク長Tを測定できる。上ピストン33Aは、ピストンロッド35を介して第1ステム71に連結され、第1ステム71はメタルダイアフラム43の中央部上面に押し当てられた第2ステム72の上昇を規制しているので、メタルダイアフラム43の中央部の上下動に連動して上下動するからである。
これによって、製造装置に使用された流量制御弁1について、製品ごとのメタルダイアフラム43のストローク長Tを簡単に確認できるので、その調節を、より簡便かつ正確に行い、製品間のCv値のバラツキをいっそう少なくすることができる。また、計測する際、流量制御弁1を製造装置から取り外す必要がないので、ライン停止等を最小限に抑えることができる。
【0041】
また、第2ステム72は、ホルダ53中央に穿設された連通孔53Aに摺接して上下動するので、高温でメタルダイアフラム43の強度が低下して、メタルダイアフラム43の復元姿勢に変化が生じやすくなっても、メタルダイアフラム43の中央部43Aは、押し当てられた第2ステム72の下端72Bの湾曲面に略沿った形状に保持されたまま第2ステム72とともに上下動し、正しいストローク軌跡を正確に再現できる。
結果として、常温時と高温時(250℃)との間でCv値の変動を、いっそう低減できる。
【0042】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る流量制御弁2のシリンダケース32の断面図であって、ピストンロッド35の上昇端位置を調整する調整つまみ38を示す。
第2実施形態は、ピストンロッド53の上昇端位置を調整する調整つまみ38を、シリンダケース32上端中央に設けた点が第1実施形態と相違し、その他の点は、第1実施形態と共通している。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と共通している箇所には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0043】
図6に示すように、調整つまみ38は、シリンダケース32の上端中央に配設された頭部38Aと、その下端に延びシリンダケース32内にねじ込まれた脚部38Bとから構成されている。頭部38Aは、シリンダケース32の外側にあって、ピストンロッド35の上昇端位置を調節するつまみである。シリンダケース32内で、脚部38Bの下端は、ピストンロッド35の上端と当接している。したがって、頭部38Aを回すと、脚部38Bのねじ込み深さが変化し、ピストンロッド35の上昇端位置も連動して変化する。
一方、調整つまみ38には、頭部38Aの上端中央にパイロットポート32Aが形成されている。また、調整つまみ38には、ピストンロッド35の送給孔35Aに連通する第2の送給孔38Cが、頭部38A上端のパイロットポート32Aから脚部38Bの下端まで貫通して形成されている。したがって、パイロットポート32Aから送給される操作エアは、第2の送給孔38Cとピストンロッド35の送給孔35Aとを介して、上下の加圧室37、37に供給される。
シリンダケース32の上端外周側には、メタルダイアフラム43のストローク長Tを計測する貫通孔32Cが穿設されている。この貫通孔32Cに計測棒Rを挿入し、上ピストン33Aに当接することによって、メタルダイアフラム43のストローク長Tを測定しながら、この調整つまみ38を回転することによって、ピストンロッド35の上昇端位置を調整することができる。メタルダイアフラム43のストローク長Tを、より一層簡便に調節することができる。
【0044】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)例えば、上記実施形態では、流体制御弁1を半導体製造装置に使用したが、使用用途はこれに限定されないことは言うまでもない。
(2)例えば、上記実施形態では、流体制御弁1はノーマルクローズタイプのエアオペレイト式開閉弁であるが、ノーマルオープンタイプのエアオペレイト式開閉弁としてもよい。また、流体制御弁1は、流量調整弁、手動弁、電磁弁等であっても良い。
(3)例えば、上記実施形態では、エアシリンダ部6とスプリング部7とが薄板(シム)52を介して連結されているが、スプリング部7とホルダ部5とを薄板(シム)52を介して連結してもよい。その場合、スプリングリテーナ61の鍔部61Dの下端と、アダプタ51の上端との間に薄板(シム)52を挟むことになるので、押えナット64のねじを外して、簡単に薄板(シム)52調節ができる。
(4)また、薄板(シム)52は、略C字形状に限らず、略U字形状でも略ドーナツ形状でもよい。
【符号の説明】
【0045】
1、2 流量制御弁
3 アクチュエータ部
4 弁部
5 ホルダ部
6 エアシリンダ部
7 スプリング部
31 シリンダベース
32 シリンダケース
32C 貫通孔
33 ピストン
34 中間プレート
35 ピストンロッド
36 Oリング
37 加圧室
38 調整つまみ
41 バルブボディ
42 弁座
43 メタルダイアフラム
44 弁室
51 アダプタ
52 薄板(シム)
53 ホルダ
61 スプリングリテーナ
62 圧縮スプリング
63 ロッドガイド
64 押えナット
71 第1ステム
72 第2ステム
P 弁座の外径
Q 第2ステムの外径
S アクチュエータ部の組み付け状態
T メタルダイアフラムの使用ストローク長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポート及び出力ポートに連通する弁室の底面に弁座を設けたバルブボディと、前記弁座の上方に配設されて前記弁座と接離し、その中央部が上方に膨出するメタルダイアフラムと、前記メタルダイアフラムの中央部を上下動させるステムと、前記ステムを駆動させるアクチュエータと、前記メタルダイアフラムの外周縁部の上方に配設され前記弁室の底面との間で前記メタルダイアフラムを気密状に挟圧すると共に、その上部で前記アクチュエータが連結されたホルダ部とを備えた流量制御弁において、
前記ステムは、前記アクチュエータに連結された第1ステムと前記メタルダイアフラムの中央部上面に押し当てられた第2ステムとに上下分割され、互いに当接、離間できること、
前記メタルダイアフラムの弁開位置で、前記第1ステムが前記第2ステムの上昇を規制することにより、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長より減少したことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載された流量制御弁において、
前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を該メタルダイアフラムのフルストローク長の20〜49%に規制することにより、高温時(250℃)と常温時とにおけるCv値の差を0.19以内としたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項2に記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、エアシリンダ部とスプリング部とを有し、
前記エアシリンダ部と前記スプリング部との間にシムを挟むことによって、前記メタルダイアフラムの使用ストローク長を前記規制値の範囲内にしたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記アクチュエータは、ケース内にピストンを有するエアシリンダを備え、
前記メタルダイアフラムのストローク長を計測する貫通孔を、前記エアシリンダのケースに設けたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載された流量制御弁において、
前記第2ステムは、前記ホルダ部中央に穿設された連通孔に摺接して上下動することを特徴とする流量制御弁。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−189165(P2012−189165A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54391(P2011−54391)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000106760)CKD株式会社 (627)
【Fターム(参考)】