説明

流量計及びそれに用いるストレーナ

【課題】 簡単に取り付けられるストレーナを備えた流量計を提供する。
【解決手段】 流入口と流出口を有し、流体の流量を計測する羽根車15を流入口と流出口に対して縦方向に配置した流量計において、羽根車に向かう流体の流路に異物の通過を防止するストレーナを配置するとともに、そのストレーナは、前記流路の内壁に嵌合される筒状部と、その筒状部を仕切るように形成された壁部と、その壁部を貫通して多数形成された流体の通過孔を有し、かつ、そのストレーナの前記筒状部には、流路の内壁に対し接近・離間する方向に弾性変形可能な係止部が形成され、流路の内壁にはそのストレーナ側の係止部が弾性的に係合する係合部が形成されて、それら係止部と係合部との係合によりストレーナがワンタッチで流路の内壁に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道メータ等の流量計に関し、特に縦型ウォルトマン式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型ウォルトマン式流量計においては、図17に示すように、水道メータの1次側(上流側)より流入した水(被計量流体)は、補足管101を通過した後、下ケース102の下部へと入り、その後上昇して整流器103を通り、羽根車104にぼぼ軸方向から当たる。羽根車104等は自身の回転軸105に対して角度のある捻れた複数枚の板羽根を有し、その板羽根にほぼ軸方向から水が当たることにより、その水流の力で羽根車104が回転する。その回転数が機械的又は電気的に取り出されることにより流量が測定されて、それが上ケース106の計量表示部107に表示され、羽根車104を通過した水は流出口108から下流に流れる。
【0003】
ここで、従来の縦型ウォルトマン式流量計においては、多数の孔が打ち抜かれた金属製で板状(パンチングメタル状)のストレーナ110が、補足管101の流入側にスリーブ111を介してねじ112等により固定されて設置されている。補足管101の流出側113又は下ケース102の流入側104にそのストレーナ110が設置される場合もある。流入口115から入った流体はストレーナ110を通過して羽根車104を回転させ、流出口108へと向かう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のストレーナ110はパンチングメタル状の板形態をなすものであるため、単独での固定が難しく、スリーブ111やねじ112を用いた固定が必要で設置が面倒であり、量産には不向きであった。
【0005】
この発明の課題は、簡単に取り付けられるストレーナを備えた流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
この発明は、流入口と流出口をつなぐ方向に対して、流体の流量を計測する羽根車の回転軸が交差するように縦方向に配置された流量計において、前記羽根車に向かう流体の流路に異物の通過を防止するストレーナを配置するとともに、そのストレーナは、前記流路の内壁に嵌合される筒状部と、その筒状部を仕切るように形成された壁部と、その壁部を貫通して多数形成された流体の通過孔を有し、かつ、そのストレーナの前記筒状部には、流路の内壁に対し接近・離間する方向に弾性変形可能な係止部が形成され、流路の内壁にはそのストレーナ側の係止部が弾性的に係合する係合部が形成されて、それら係止部と係合部との係合によりストレーナがワンタッチで流路の内壁に取り付けられることを特徴とする。
【0007】
このように、筒状のストレーナの採用により、従来の板状のストレーナと固定用のスリーブ及びねじ部材の組合せに比べて、部品点数の削減、部品単価の低減さらには組立工数の低減を図ることができる。また樹脂化した場合でも強度の低下を防ぎ、水流方向にかかるスラスト荷重に対する強靱化を図ることができる。
【0008】
また、ストレーナの筒状部が管継ぎ手の開口から挿入される際に、そのストレーナに形成された係止部が弾性変形を伴い内壁で押し戻された後の弾性復帰作用によりその係合部に係合して、ストレーナが管継ぎ手の端部に抜け止めされた状態で取り付けられるようにすることができる。
【0009】
また、前記ストレーナの前記筒状部には、前記ストレーナ側の係止部を流路側の係合部から弾性的に離脱させて前記ストレーナをワンタッチで流路内壁から取り外すための係合解除つまみ部が前記ストレーナの前記筒状部の端部に形成されていることにより、ストレーナの取外しも簡単に行い得る。
【0010】
また、この発明は、流量計としてはもちろん、流量計に取り付けるためストレーナとして把握することもできる。
【発明の実施の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を図面に示す実施例を参照しつつ説明する。
以下の例は、例えば水道メータに適用される流量計であり、その場合の被計量流体は水である。
【0012】
図1において、流量計1は、補足管2と、その補足管2が接続された下ケース11と、その下ケース11の上部に設けられた計量装置4とを含む。下ケース11は、補足管2とジョイント5により連結された直管状の流入管部分3と、その直管状の流入管部分3から所定の曲率半径で直角に曲げられたL字管状の曲がり部として曲管部(以下、L字管ともいう)16と、計量室17の羽根車15を経た被計量流体を導くL字管状の流出管部分8とを備える。
【0013】
下ケース11内の計量室17は、曲がり部(L字管部)16の垂直管部分の上端に位置し、この計量室17内に垂直方向のピボット(回転支持軸)14により羽根車15が水平面内で回転可能に収容されている。羽根車15の中心部には下向きに開口する中心穴6が形成され、この中心穴6がピボット14に緩く嵌合するともに、そのピボット14の先端で羽根車15が回転可能に支持される。羽根車15は自身の中心線のまわりに螺旋状にねじれた複数の羽根15aを備え、ほぼ垂直下方から流入する被計量流体により回転する。
【0014】
羽根車15を回転させつつそこを通過した被計量流体は、計量室17の外周の開口から羽根車15の半径方向外方へ流出し、L字管状の流出管部分8により垂直下方から水平方向に所定の曲率で方向を変え、下流に導かれる。被計量流体の流量にほぼ比例する羽根車15の回転数は、電子的又は機械的に流量に変換されて計量装置4で計量され、所定の流量の表示がなされる。
【0015】
羽根車15の下側に近接して下ケース11には整流器13が固定されている。整流器13は環状をなして、その環状内に半径方向又はその他所定の配置形態で複数の整流板を有し、また中心部に上記ピボット14を備えて、羽根車15の支持機構を兼ねている。下方から導かれる被計量流体はこの整流器13を通過することにより、その整流板で整流された後、羽根車15に当たるようになっている。なお、放射状の整流板に加えて(又は置換して)、L字状管部16の曲がり部に、被計量流体の流れを乱さないための整流板19を配置することができる。整流板19は、L字状管部16の曲がり部の曲率にほぼ対応する曲率の曲がり(湾曲形態)を有し、L字状管部16の管壁の曲がりに沿って所定長さ延びるもので、整流板19の凹曲面側の板面には、その整流板19と垂直に交わるリブ18がL字状管部16の中心線と平行な方向に延びるように形成されている。
【0016】
上記整流板19としては、適数(例えば1〜4枚、好適には3枚程度)のものを用いることができ、複数設ける場合は、複数の整流板19が所定の間隔及び曲率半径で設けられ、各整流板19と垂直に交わるように、整流板19の幅方向の中間に適数(例えば1枚)のリブ18が形成され、リブ18が各整流板19を連結して一定の強度を確保する。このような整流板19は、整流器13の下端部に連結されて、その整流器13によって位置固定に支持される。
【0017】
この流量計1において、補足管2と直管状の流入管部分3(流入口)は水平方向で同軸上にあり、さらに流出管部分8(流出口)も同軸上にある。言い換えば、補足管2及び流入管部分3の中心線の延長線に対し、羽根車15に近い側を上側、羽根車15から遠い側を下側としたとき、補足管2から流入管部分3を経て導入される被計量流体を下向きに下げることなく、まっすぐ水平に導入し、そのままL字状管部(L字管)16により羽根車15の軸方向に沿う向き(垂直上方)に流れの方向を変えて、被計量流体を羽根車15に当てて計量する構成である。
【0018】
また、この流量計1においては、流入管部分3の流路断面積(流入口の断面積)をS1、羽根車15に対する下側からの導入部の断面積(整流器13の内径又は羽根車15の外径に対応する断面積とも言える)をS2としたとき、S1からS2に至るまでの断面積の変化として、S1とS2とはほぼ等しくなるように、あるいは等しくなくとも両者の差は所定値以下とされている。すなわち、S2/S1は例えば0.7〜1.4の範囲に規定される。
【0019】
ストレーナ20及び補足管2を通過した被計量流体は、下ケース11へ入る。流入口部分3は補足管2から続く直管を延長するように延びていき、整流器13に設置してあるピボット14上の羽根車15に、被計量流体が垂直に当たるように、上述のようにL字管のごとく直管が所定の曲率で直角に曲げられて、L字状管部16とされる。
【0020】
上記のように、流入口3側から羽根車15へと導く被計量流体の管路を、下側に下がることなく、水平から垂直へとL字状管部16で直角に曲げるようにし、また流入側から羽根車15までの断面変化を小さくした(滞留部をなくした)ことにより、流路の折れ曲がり部分が少なく、また滞留部がほとんどなく、さらに流体の流れの乱れが少なくなり、圧力損失が減少する。その結果、流量計の容量を増加させることができる。
【0021】
上記のような流量計1において、補足管2の流入側端部(フランジ38の開口部)には、樹脂製で筒状のストレーナ20が設置されている。ストレーナ20は、補足管2の流入側開口部の内壁に嵌合され、その内壁は円形断面をなすところから、ストレーナ20の外殻は円筒形態の筒状部22(円筒状部又は円筒部)を備えている。
【0022】
図2及び3に示すように、ストレーナ20の筒状部22内には、該筒状部22を仕切るように形成された壁部を備え、この壁部は流体の流入側に向かって凸となるドーム状凸曲面24を有して、そのドーム状曲面24に多数の流体の通過孔25が開口している。さらに具体的には、ストレーナ20の筒状部22内には、その軸方向に所定の厚みtを有するドーム状壁部(凸曲面状壁部)26が、流体の流入側(IN)に向かって凸となるように形成される。そのドーム状壁部26をストレーナ20の軸方向と平行に、上述の多数の通過孔25が貫通している。図3に示すように、通過孔25(格子)の流入側の端面には、所定の曲率の円弧状のアール部25aが形成され、このアール部25aが後述のように縮流(水流等が中心側に絞られて流れ径が細くなること)を防止する。なお、このようなアール部25aは、通過孔25(格子)の流出側にも形成することができる。
【0023】
それら通過孔25は多角形状の断面、特にこの例では正六角形状の断面を有し、その正六角形状の通過孔25の互いに隣り合うもの同士の仕切り壁部はほぼ一定の肉厚で形成されている。言い換えれば、ストレーナ20の通過孔25は正六角形状のハニカム筒状部28の空洞部により形成されるとともに、それら通過孔25の流体の流入側開口がその流入側に膨出したドーム状曲面に24に開口し、流出側の開口がドーム状壁部26の凹状のドーム状凹曲面27に開口している。これら流入側及び流出側のいずれの開口も、ハニカム形状となっている。
【0024】
上記ストレーナ20の筒状部22の一端にはフランジ29が半径方向外方に突き出るよう形成されている。その筒状部22の外周面には、フランジ29に近接して1又は複数(この例では2個)の係止部30が外向きに突出して、かつ180度の角度間隔で、ストレーナ20の中心に介して対称に形成されている。これらの係止部30は、フランジ29の側(流体の流入側)に、ストレーナ20の軸線のほぼ直角な係止面(ストッパ面)31と、その係止面31から流出側に向かって漸次高さが低くなる斜面32とを備える。
【0025】
また、これらの係止部30に対応してストレーナ20の筒状部22には、図4に示すように、それぞれ弾性変形部33が形成されている。この弾性変形部33は、筒状部22に対しフランジ29側の端部から軸方向と平行に2本のスリット34が形成されることにより、帯状の弾性変形部33が筒状部22の本体部分から部分的に切り離され、樹脂材料の弾性能の範囲で各弾性変形部33がストレーナ20の半径方向に弾性変形可能とされ、各係止部30はそれら弾性変形部33の中間部に形成されているため、各係止部30がストレーナ20の軸線に対し接近・離間する方向に弾性的に変位可能となる。
【0026】
各弾性変形部33の自由端部33aはフランジ29の外端面とほぼ面一に位置するが、その弾性変形部33の自由端部33aの外側に位置するようにフランジ29には、所定形状(例えば矩形状)の切欠35が形成され、それらの切欠35により弾性変形部33の自由端部33aは互いの接近・離間が許容されるとともに、それらの切欠35から指を入れて双方の自由端部33aをつまむようにして接近させれば、後述のように係止部30による係止(ストッパ)作用を解除することができる。ここでは、上記切欠35内の自由端部33aが係合解除つまみ部として機能することとなる。
【0027】
上記のようなストレーナ20が図1の補足管2の流体の流入側端部37に配置されており、この例ではその端部37にフランジ38が形成されている。ストレーナ20に対応してその流入側端部37の内壁には、図6に示すように、補足管2の内周部(流体通路内壁)39より内径の大きい大径内周部40が形成され、その大径内周部40は、ストレーナ20の筒状部22の厚みのほぼ2倍に相当する寸法だけ補足管2の通常の孔径(通路径)39より大きく、かつストレーナ20の軸方向長さに対応する長さとされ、フランジ37側に開口する。この大径内周部40にストレーナ20の筒状部22が嵌合することとなる。
【0028】
大径内周部40の開口端部(フランジ37に端面)の近傍には、その大径内周部40の周方向に連続する環状の(又は所定の位相で形成された部分的な)係合溝41が形成され、この係合溝41内にストレーナ20の2個の係止部30が係合するようになっている。さらに、補足管2の流入側の端面(この例ではフランジ37の端面)には、ストレーナ20のフランジ35の外径に対応する内径、及びフランジ35の厚みに対応する深さを有する座ぐり部42が形成され、この座ぐり部42にストレーナ20のフランジ29が着座する。
【0029】
この座ぐり部42と係合溝41との境界部は、大径内周部40とほぼ内径を有しているが、流入側端面(座ぐり部42)側に向かってやや内径が増大するテーパ状の内周部43か、丸みが付されたアール状の、もしくは面取り状の内周面43とされる。この内周部43は、ここを乗り越えてストレーナ20の係止部30が係合溝41に入り込む際の、係止部30の縮径(前進)、ひいては係止部30を支持する弾性変形部33の弾性変形をスムーズに行わせることに寄与する。
【0030】
そして、図6に示すように、ストレーナ20は補足管2の流入側端部37に対して、ドーム状凸曲面24が流入側に向かって凸となる向きで(フランジ29とは反対側の端部から)、補足管2の大径内周部40に挿入(嵌合)される。その挿入の終盤で、ストレーナ20の係止部30が補足管2の内壁(この例では内周部43)に当たって内側へ弾性的に押し戻される。この際、係止部30の先行する斜面32が内周部43に乗り上がることで、係止部30を中間に備えるストレーナ20の弾性変形部33が内側(中心側)に弾性変形し、その後、係止部30が係合溝41に至って弾性復帰することにより、係止部30が係合溝41に係合して、ストレーナ20の補足管2に対する取付けがワンタッチで完了する。
【0031】
この取付け状態では、図7に示すように、ストレーナ20の先端が大径内周部40の先端の段部44に当接又はごく近接し、補足管2の内周部39と、ストレーナ20の筒状部22の内周面との内径差はほとんどなく、双方の内周面がほぼ面一に連続する(又は筒状部22の内径が補足管20の内周部39の内径より小さくならない)ようにされる。これにより、補足管2へストレーナ20を嵌合しても、それによって水流の通路の最大直径は小さくならず、縮流(絞り)は生じにくい。
【0032】
また、ストレーナ20のフランジ29は、補足管2の開口端面の座ぐり部42に着座し、ストレーナ20の嵌合量が規定されるとともに、フランジ29ひいてはストレーナ20の端面は、補足管2の端面とほぼ面一となり、その補足管2の端面から突出しない。これにより、補足管2をフランジ37を介して別の管部材に連結する際に、ストレーナ20のフランジ29がその連結に干渉することはなく、またそのフランジ29が補足管2と別の管部材との間に密着して挟まれた状態となるようにすれば、ストレーナ20の管路に対する取付け状態が安定し、水流の通過による振動や音を抑えられる。
【0033】
さらに、ストレーナ20の補足管2への取付け状態では、ストレーナ20に引き抜き力が作用し、あるは振動等によりストレーナ20を補足管2から離脱させやすい状況が生じたとしても、ストレーナ20における係止部30の係止面31が、補足管2における係合溝41の開口側溝面に当接して、ストレーナの抜けが防止される。これにより、流量計の現場設置時にストレーナ20を補足管2に取り付けるのではなく(もちろんそれも可能だが)、工場あるいは倉庫等の出荷時に予め補足管2にストレーナ20を取り付け、その状態で運搬することができ、現場施工の手間が軽減される。
【0034】
また、何らかの理由(例えばストレーナからのゴミの除去やストレーナの交換等)で、ストレーナ20を補足管2から取り外す必要が生じた場合は、補足管2の流入側開口部に位置するストレーナ弾性変形部33の2個の自由端部33a(図5も参照)を、切欠35に指を入れ摘むようにして、それらの自由端部を弾性的にストレーナ20の中心側へ引き寄せれば、それらに付随する各係止部30が、補足管2の係合溝41から離脱するから、この状態でストレーナ20に引く抜き力を加えれば、ストレーナ20を補足管2からワンタッチで取り外すことができる。
【0035】
なお、図4に示すように、ストレーナ20の筒状部22の外周面に、流体の流入側の端部から先端方向に所定の長さで、1又は複数の低い突条(例えば帯状の凸部)45を形成することができる。この帯状の凸部45は、筒状部22の前記弾性変形部33を除く部分に、好ましくは所定の間隔で複数(例えば等角度間隔で4個程度)形成することが可能である。このような低い凸部45は、ストレーナ20の補足管2への嵌合状態で、補足管2の内壁(例えば大径内周部40)に接触してストレーナ20と補足管2とのガタを解消することに利用できる。それにより水流によるストレーナ20の振動等が抑制される。
【0036】
以上のようなストレーナ20が取り付けられた図1の流量計において、流体(代表的には水)は、補足管2の流入口37からストレーナ20のドーム状凸曲面24に当たるように流入し、そこの多数の通過孔25を経て補足管2を流れ、下ケース11に至ってから、そこのL字状の曲がり部16でほぼ90度向きを変えて上昇し、羽根車15に当たってこれを回転させた後、下降して下ケース11の流出口7から流出する。
【0037】
そこで、流体が補足管2のストレーナ20に流入する際には、図7に示すように、その通過水はストレーナ20のドーム状凸曲面(アール形状部)24により、通過孔25に単に流入するだけでなく、通過孔25の流入側のアール部25aによりスムーズに案内されて通過孔25の内部に導かれるから、通過孔25の入口部端面で水流が急激かつ強制的に絞られる縮流が生じにくい。また、ドーム状凸曲面24の頂部から裾野へ(中心から離れる拡径方向へ)水流を誘導する機能も生じやすくいため、このことも中心側に水流が絞られる縮流を抑制することに寄与する。縮流が生じると、その絞り作用で圧力損失や流速が変動して計量作用に好ましくない影響を生じる場合があるが、上記ストレーナ20によれば、そういった縮流が抑制されるため、安定した流量測定がしやすくなる。なお、縮流がある程度生じてもよいように、水流損失の確保が充分な場合は、図3の右欄下段に示すように、通過孔25の流入側端面にアール部を形成しないで、通過孔25の流入側内面と流入側端面とがほぼ直角なコーナーを形成するようにしてもよい。
【0038】
また、ストレーナ20の通過孔25が所定の厚み(軸方向幅)を有するドーム状壁部26(筒状部内の所定幅のリブも言える)に形成されて所定の軸方向長さを有し、ここに導かれた流体はこのドーム状壁部26の壁面(孔壁面)により整流されながらストレーナ20を通過するので、水流の乱れが生じにくい効果もある。
【0039】
ストレーナ20のドーム状凸曲面24が通過孔25の流入側端面に形成されているに加え、この例では通過孔25の流出側の端面もドーム状凹曲面25が形成されて、筒状部22内に全体としてドーム状壁部26とされているため、流出側で水流が絞られることはなく、また個々の通過孔25の長さもほぼ均一なものとなり、水流に対する縮流の抑制や整流の効果はより大きいと言える。
【0040】
また、このストレーナ20は樹脂化されたものであり、金属製のものと比べると強度の低下が考えられるが、ストレーナ20において流体の流れに対向する部分がドーム状凸曲面24(全体としてドーム状壁部26)とされ、言い換えれば立体的なアーチ形状とされたことにより、水流方向に対する強度を向上させることができる。さらに、このストレーナ20は前述のようにワンタッチによる取付けが可能で、ねじ止めを不要とし、組立工数を低減することができる。そして、樹脂成型品のストレーナ20とすることにより、さらに量産品としてのコストダウンが図れる。
【0041】
また、ストレーナ20の通過孔の断面形状を円形とせず、多角形状とすることにより、無駄な厚肉部を形成することなく、流体の通過面積を有効に確保することができる。ここでは、異物の通過をなるべく抑えるために孔断面の対角長を短くしつつ、有効通過面積を確保し、なおかつ強度を持たせる形状として正六角形の孔形状で、全体としてハニカム形状が採用されている。もちろん、充分な開口面積と強度が確保できる場合は、円形状、三角形状、四角形状、八角形状等も採用可能である。
【0042】
以上の実施例では、ストレーナ20がフランジ29を有していたが、図8に示すストレーナ47のようにフランジを有しない円筒状のものでもよい。その他の部分は図2及び3等に示した例と同様であるが、フランジが省略される場合は図6の補足管2の端面の座ぐり部42も省略されることとなる。
【0043】
また、以上の実施例では、図1の補足管2の流入側端部37にストレーナ20が取り付けられていたが、ストレーナは、補足管2の流出側端部48、あるいは下ケース11の流入側端部49に装着することもできる。下ケース11の流入側端部49に取り付けられるストレーナは、図2及び図3に示したものと同様のストレーナ20を使用することもできるし、図8のようにフランジを有しないストレーナ47を使用することもできる。他方、図1において補足管2の流出側端部48に取り付けるべきストレーナは、補足管2に対する取付方向(挿入方向)と流体の流れ方向とが逆になる点が、それらが同じ方向であった図1の実施例と異なる。
【0044】
つまり、例えば図9に示すストレーナ50のように、筒状部22において図3等に示したストレーナ20とは反対側の端部に(軸方向で反対向きの関係で)、フランジ52、弾性変形部33の自由端部33a、係止部51が形成され、またフランジ52とは反対側(流入側端)に、図3のストレーナ20と同様のドーム状壁部26が流入側に対向して膨出するように、かつ筒状部22内ではなく筒状部の端面がさらに流入側に向かって突出するように形成され、そのドーム状壁部26を貫通する単数の通過孔25の両端が、ドーム状凸曲面24及びドーム状凹曲面27にそれぞれ開口する。このストレーナ50は、図1の補足管2の流出側端部48の開口から水流の流れ方向と反対向きに挿入され、図1に図示はされていないが、図6の位置(41)とは反対側の管端に形成される係合溝に図9の係止部51が係合して、ワンタッチの装着ができる。
【0045】
また、図9のドーム状壁部26に代えて、図10に示すような円錐状壁部54(又は三角錐等の多角錘状壁部)を筒状部22の流入側の端部に、流入側に対向して突出するように備えたストレーナ55を採用することもできる。その円錐状(多角錘状)壁部54を貫通する通過孔25は、その壁部54の円錐状(又は多角錘状)凸部56及び凹部57にそれぞれ開口する。なお、この例では、筒状部22の周方向の4箇所の均等位置に係止部51が形成され、それに対応して4箇所に弾性変形部33を備えている。
【0046】
図11は、円錐状壁部54(又は三角錐等の多角錘状壁部)を筒状部22の中間に備えたストレーナ56で、流体の流れ方向と同じ方向において、補足管又は下ケースの流入側端部に挿入される、図3と同じタイプのものである。言い換えれば、図3のドーム状壁部26が円錐状壁部54(又は三角錐等の多角錘状壁部)に置き換えられたストレーナである。フランジ29はあってもなくてもよい。
【0047】
さらに、図12のストレーナ57のように、流体の流入方向に対向して突出する載頭円錐台状(又は載頭多角錘台状)壁部58を設けることもできる。この載頭円錐台状壁部(リブ)58は、流入方向に向かって細くなるテーパ状壁部とも言うことができ、その載頭円錐台状壁部58を貫通する多数の通過孔25は、その載頭円錐台状壁部58の前後の面となる載頭円錐台状(又は載頭多角錘台状)凸曲面及び凹曲面にそれぞれ開口する。このようなテーパ状壁部に多数の通過孔25を備えたストレーナの場合でも、ドーム状又は載頭円錐ないし多角錘台状のものとほぼ同様の効果が得られる。
【0048】
また、図13に示すストレーナ60のように、通過孔25が開口するストレーナ孔端面の流入側端面にドーム状凸曲面(R形状部)24を形成し、併せて図3等のように、流出側の孔端面にもドーム状凹曲面(R形状部)27を設けることができるが、図13のように流出側にドーム状部を形成せず、例えば流れにほぼ直角で平坦なストレーナ流出側孔端面61とすることもできる。同様に、図14は円錐状(又は三角錐等の多角錘状)凸曲面63を流入側孔端面に有する一方、流出側孔端面61は平坦面状としたストレーナ62である。図15は、載頭円錐台状(又は載頭多角錘台状)凸曲面66(テーパ形状部)を流入側孔端面に有する一方、流出側孔端面61は平坦面状としたストレーナ65である。
【0049】
さらに図16に示すストレーナ68のように、流入側に対向して突出する凸曲面(R形状部)ではなく、流出側に向かって凸となるドーム状壁部69等の凸部(流入側に凹曲面部70、流出側に凸曲面70’を有する)を形成することもできる。この場合でも、そのドーム状壁部69によりストレーナ68の強度が高く、また筒状部22の係止部30により、このストレーナ68を前述のように管部材に対しワンタッチ取付けができるメリットがある。
【0050】
なお、上記図11〜図16の簡略図で、通過孔が形成された筒状部の壁部(リブ)の変形例を示したが、一部を除き各図ではフランジや係止部等は無視し、壁部の形態のみに着目しており、それらの基本的な壁部形態に既述のフランジや係止部等を付ける場合、付けない場合の実施例をもすべて包含するものとする。
【0051】
さらに、これまでの説明では、ストレーナのワンタッチ取付け(嵌め込み)の構造として、弾性変形部33をスリット35により筒状部22の1〜数カ所に設けて、そこに係止部30を形成したスナップ式の嵌め込み構造のものであったが、それに代えて、筒状部の外周面に、その周方向(例えば円周方向)にリング部を一体的に設け、そのリング部を管内壁側の溝等の被係合部に強制的に嵌め込んで固定するリング押入式の嵌め込み構造であってもよい。そのリング部は、筒状部の全周に付けることも一定区間ごとに区切って形成することもできる。
【0052】
なお、以上説明したすべてのストレーナは、図1における補足管2の流入側端部37、流出側端部48及び下ケース11の流入側端部49に選択的に取り付けられることは既に説明したが、このタイプの流量計1以外にも、図17に示した流量計100における、補足管101の流入側端部115、流出側端部113及び下ケース102の流入側端部114に選択的に取り付けることもできる。これ以外にも、要するにこの発明のストレーナは、羽根車15又は104の上流の管路に組み込まれていればよく、上記の例は取付位置の例示であり、さらには上記羽根車を備えた計量部の下流に設けた場合でも、ゴミを捕獲する効果があることはもちろんである。
【0053】
さらに、図1の説明では、補足管2が水平配置で、羽根車15が垂直配置となるものとして縦型ウォルトマン式流量計の実施例を説明した。もちろん図1の配置で流量計が設置され、固定されるのが一般的ではあるが、図1に示した縦型ウォルトマン式流量計1において、補足管2が垂直等の上下配置になるように90度等の角度範囲で倒立させた姿勢で設置・固定される場合もある。図17についても同様である。前記説明における上下、あるいは水平・垂直等の表現は、説明を簡単にするための便宜上のもので、発明の本質を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】この発明の実施例である流量計の全体の断面図。
【図2】ストレーナの正面図。
【図3】ストレーナの側面断面図。
【図4】そのストレーナの側面図。
【図5】そのストレーナの正面の簡略図(内部省略)。
【図6】図3のストレーナを補足管に取り付ける工程を示す断面図。
【図7】図6の取付完了状態を示す断面図。
【図8】ストレーナの変形例1を示す断面図。
【図9】ストレーナの変形例2を示す断面図。
【図10】ストレーナの変形例3を示す断面図。
【図11】ストレーナの変形例4を示す断面図。
【図12】ストレーナの変形例5を示す断面図。
【図13】ストレーナの変形例6を示す断面図。
【図14】ストレーナの変形例7を示す断面図。
【図15】ストレーナの変形例8を示す断面図。
【図16】ストレーナの変形例9を示す断面図。
【図17】従来例のストレーナとそのストレーナが組み込まれた流量計を示す全体断面図。
【符号の説明】
【0055】
1、100 流量計
2、101 補足管
11、102 下ケース
15、104 羽根車
20、47、50、55、56、57、60、62、65、68 ストレーナ
22 筒状部
25 通過孔
26 ドーム状壁部(壁部)
30 係止部
33a 自由端部(係合解除つまみ部)
41 係合溝(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口と流出口をつなぐ方向に対して、流体の流量を計測する羽根車の回転軸が交差するように縦方向に配置された流量計において、
前記羽根車に向かう流体の流路に異物の通過を防止するストレーナを配置するとともに、そのストレーナは、前記流路の内壁に嵌合される筒状部と、その筒状部を仕切るように形成された壁部と、その壁部を貫通して多数形成された流体の通過孔を有し、かつ、そのストレーナの前記筒状部には、流路の内壁に対し接近・離間する方向に弾性変形可能な係止部が形成され、流路の内壁にはそのストレーナ側の係止部が弾性的に係合する係合部が形成されて、それら係止部と係合部との係合によりストレーナがワンタッチで流路の内壁に取り付けられることを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記ストレーナの前記筒状部には、前記ストレーナ側の係止部を流路側の係合部から弾性的に離脱させて前記ストレーナをワンタッチで流路内壁から取り外すための係合解除つまみ部が前記ストレーナの前記筒状部の端部に形成されている請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−212465(P2007−212465A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59132(P2007−59132)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【分割の表示】特願2001−402040(P2001−402040)の分割
【原出願日】平成13年12月28日(2001.12.28)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】