説明

流量計測装置および流体供給システム

【課題】器具判別技術の提供に際し、必要メモリ量などを減らしつつ、演算速度、器具判別精度の向上を図る。
【解決手段】ガスメータ100において、超音波流量計104は、流路102に流れるガスの流量を一定時間間隔で計測し、演算部108が計測された流量の一定時間毎の差分値を演算する。そして、差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表110aに基づき、差分値変換部112は演算された差分値をコードに変換する。さらにコード列生成部114は、一定時間毎のコードの集合に基づき計測コード列を生成し、器具判別部116は、計測コード列と、ガス器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、ガスを使用するガス器具を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量の変化を捕らえることにより、流体を使用している器具を正しく判別するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスメータ装置を有する流体配管系において使用器具を特定するガスメータ装置として、特許文献1に記載のものがある。本文献のガスメータ装置1は、図9に示すように、家庭用ガス供給管に接続された流路6中に配置され、ガス流量を一定時間間隔で計測する流量計測手段3と流量計測手段3から出力される流量値の差分値を求める演算手段4と演算手段4により算出された差分値と記憶手段5内に登録された変化判定値との大きさを比較し、ガス器具の使用状態の変化を判定する比較判定手段7を有する構成である。演算手段4、比較判定手段7、ガス遮断弁2は、制御回路8によって制御されている。
【0003】
上記ガスメータ装置1においては、流量計測手段3から出力される瞬時流量の差分値の変化を逐次演算し、その変化量でもってガス器具の使用状態の変化を判定するものであり、登録されたデータと計測されたガス流量の変化(差分値)を比較し、使用ガス器具13,14,15の判別を可能とする。
【特許文献1】特開平2006−313114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成においては、差分値をそのまま使用しているため、基本的に時間軸上局所的なものとなるため、器具判別の精度が十分なものとは言い難く、長時間に渡り計測した流量値を元に全体的に判断しようとすると、ガス器具の判別に時間がかかるとともに、必要メモリ量などが膨大なものとなる。
【0005】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたもので、その目的は、演算を簡略化することにより、演算に必要メモリ量などを減らしつつ、演算速度、器具判別精度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流量計測装置は、流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測する流量計測部と、前記流量計測部によって計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算する演算部と、差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表と、前記演算部によって演算された差分値を、前記流量区分表に基づき前記コードに変換する差分値変換部と、前記差分値変換部によって得られた前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するコード列生成部と、前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別する器具判別部と、を備える。
【0007】
本発明によれば、流体の使用器具の判別に際しては、流量の差分値をコード化(変換)して得られる符合値が使用される。従って、器具判別の実行に際し、演算が簡略化され、演算に必要メモリ量などを減らしつつ、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【0008】
本発明の流量計測装置において、前記計測コード列および前記器具固有コード列は、器具の作動中、例えば、器具による流体の使用開始直後の流量の立ち上がり特性、流体の使用終了時の流量の立下り特性、または流体の安定使用時における流量の制御特性を示すものである。このような器具ごとに特徴のある特性をコード列として取り上げることにより、正確に器具判別を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記計測コード列および前記器具固有コード列は、器具による流体の使用開始後、特定のコード列パターンが出現するまでの長さをもつものであることが好ましい。このような構成により、正確に器具判別を行うことが可能となる。
【0010】
さらに本発明によれば、上記流量計測装置によって実行される流量計測方法、及び流量計測装置を制御するコンピュータ用のプログラムが提供される。さらに、これらの装置、方法、プログラムを使用した流体供給システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、器具判別に際し、必要メモリ量などを減らしつつ、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態における流量計測装置としてのガスメータのブロック図を示すものである。
【0014】
図1においてガスメータ100は、流路102と、流量計測部としての超音波流量計104と、計測流量情報記憶部106と、演算部108と、流量区分表保持部110と、差分値変換部112と、コード列生成部114と、器具判別部116と、器具固有コード列情報保持部118とを備えたものである。さらにガスメータ100は、流路102に配置され、緊急時などにガスを遮断する流路遮断弁122を含む。
【0015】
超音波流量計104は、流路102に流れる流体としてのガスに対し、一定時間間隔(例えば2秒など)で超音波を発射してその流量を計測するものであり、一般的なものを使用することができる。計測流量情報記憶部106は、超音波流量計104で計測された計測流量値と、当該計測流量値を計測した計測時間が対応付けられて記述された対象データを記憶する。
【0016】
演算部108は、超音波流量計104によって計測されたガスの流量の、前述した超音波発射間隔に相当する一定時間毎の差分値を演算するものである。例えば後述する図3において、所定タイミングの流量(絶対流量)が60L/h(リットル毎時)であり、次のタイミングでの流量が120L/hである場合、このときの差分値は120−60=60(L/h)として演算される。ここで差分値の演算は、次の次のタイミング(120L/hの流量の次の流量)の流量で行ってもよい。
【0017】
流量区分表保持部110は、図2に示すような、差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表110aを保持するものである。流量区分表110aは、計測された差分値を所定の区分に区分けし、当該区分を表す所定のコードに変換する変換テーブルの役割を果たす。流量区分表110aの区分の数は特に限定されないが、図2では、16(コードN1)と4(コードN2)の2種類が用意されている。すなわち、ガスメータ100は、区分の数が16である流量区分表と、区分の数が4である流量区分表を適宜切り替えて使用することができる。
【0018】
図2に示すように流量区分表において、それぞれコードN1、コードN2で表される2種類の区分が用意されている。コードN1では、流量区分表の区分が、流量がゼロと判断する領域、流量が安定していると判断する領域(安定領域)、流量が増加していると判断する領域(増加領域)、流量が減少していると判断する領域(減少領域)の4事象で区分けされている。表に示すように、これら四つの領域は、0,1,2,3の4つの数字に対応付けられており、それぞれ2ビッドのコードで表現することができる。すなわち、0は“00”,1は“01”、2は“10”、3は“11”で表現することができる。このように、区分を従来の差分値ではなく、コードを用いて表すことにより、マイコンプログラムとのより良い親和性が確保され、少ないメモリサイズと演算量で判断指標を提供することができる。
【0019】
尚、本例では、流量がゼロと判断される領域を挙げたが、実際の装置では実際に計測される流量が、多少のばらつきを有するため完全にゼロとなることはあまりない。したがって、流量がゼロとなるのはほぼゼロ、実質的にゼロとなったときをも含む。
【0020】
コードN2はさらに上記各領域を細分化して生成されるものであり、安定領域を流量安定度合いに応じて七つ、増加領域を増加度合いに応じて4つ、流量減少度合いに応じて4つに各々細分化して生成される。流量がゼロと判断する領域は細分化されていない。したがって、コードN2は、4ビットのコード(0〜9、A〜F)で表現することができる。
【0021】
また、コードN1においては、各領域が異なる流量間隔を有して細分化されている。例えば増加領域においては、差分流量の小さい方が間隔が小さくなっている。例えば、コード“6”の領域では、差分流量の幅が150―100=50L/hであるが、コード“4”の領域では、50−10=40L/h、コード3の領域では10−1=9L/hとなっている。このような構成は、差分流量の小さい領域では器具の種類が多いため、判別精度を上げるために間隔を小さくしておく必要から採用されている。
【0022】
差分値変換部112は、演算部108によって演算された差分値を、流量区分表110aに基づき、(超音波発射の)一定時間毎の差分値が分類される区分を表すコードに変換する。コード列生成部114は、差分値変換部112によって得られた一定時間毎のコードの集合に基づき、実際の計測により得られたコードの列である計測コード列を生成する。この計測コード列は、流体の流量変化を擬似的に表現するものである。コード生成部114は、生成された計測コード列を必要に応じて図示せぬメモリに記録する。
【0023】
器具判別部116は、コード列生成部114によって生成された計測コード列に基づき、流体としてのガスを使用しているガス器具を判別する。ここで器具判別部116は、計測コード列と、予めガス器具ごとに器具固有コード列情報保持部118に記憶されたガス器具固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、その類似関係等からガスを使用するガス器具を判別する。
【0024】
器具別流量算出部120は、器具判別部116により判別されたガス器具毎の流量を算出することもできる。また、ガスメータ100は上流側においてガス管路19に接続されるとともに、下流側にてガステーブル、ファンヒータ、床暖房等、種々のガス器具13,14,15に接続されている。
【0025】
以下、本実施形態のガスメータ100を用いた流量変化履歴記録方法について説明する。まず、超音波流量計104によって一定時間間隔(例えば2秒など)をおいて計測される流量(絶対流量)Q(n)と前回計測された流量Q(n−1)は、計測流量情報記憶部106に一旦記憶される。その後、Q(n)と前回計測された流量Q(n−1)との差である差分値ΔQ(n)=Q(n)−Q(n−1)を演算部108は演算する。
ここで一定間隔は4秒や6秒であってもよい。
【0026】
差分値変換部112は、演算部108によって演算された差分値ΔQ(n)を、図2の流量区分表110aを参照し、一定時間毎の差分値が分類される区分を表すコードである区分コード(N1またはN2の2ビットコードまたは4ビットコード)に変換する。ここで、区分コードN1またはN2のいずれを用いるかは自由に選択が可能である。
【0027】
図3はこのような流量区分表を用いた変換の一例を示している。図1のガス器具13,14,15のいずれかに相当するガス器具A(例えばファンヒータ)が起動を開始し、ガス流量が発生すると、計測される流量は、図3(a)の「流量値」、図3(b)のグラフで示されるように、流量Q(n)=0から流量Q(n)≠0となり、ガス使用量に応じて流量が変化する。超音波流量計104による流量の計測と同時に、演算部108が差分値を演算し、区分コードN1、または区分コードN2への変換が差分値変換部112によって行われる。
【0028】
変換の結果得られたコードから、コード列生成部114は、図3(a)の「区分コードN1」、「区分コードN2」の2ビットコードまたは4ビットコードに相当する計測コード列を生成する。このような一定時間毎のコードの集合である実際の計測により得られた計測コード列は、ガスの流量変化を擬似的に表現するものであり、コード列生成部114は、得られた計測コード列を必要に応じて図示せぬメモリに記録する。
【0029】
すなわち、図3(a)の「区分コードN1」、「区分コードN2」は、図3(a)の「流量値」、図3(b)のグラフのように、流量そのものを表現するものではない。しかしながら、このようなコード列はガス流量の変化を概ね、すなわち流量がゼロと判断する領域、流量が安定していると判断する領域、流量が増加していると判断する領域、流量が減少していると判断する領域、の4事象を擬似的に表しており、おおよその流量の挙動変化を、コード列を用いて把握することが可能となる。
【0030】
上述した計測コード列は、従来技術の差分値からなる履歴に比べ情報量は減少しているものの、メモリサイズは小さいものとなるため、大変扱いやすいものとなる。したがって、ガスメータなどの装置による各種演算処理が容易となるとともに、装置内もしくはその他の個所に設けられる必要メモリ量を減らすことができる。また、本発明の計測コード列は、従来技術の差分値からなる履歴に比べ、同じ計測時間分のデータであってもメモリサイズは小さいものとなるため、より長い計測時間のデータを扱うことが容易となる。
【0031】
また、このような計測コード列がガス器具毎に固有のものである場合、ガスを使用しているガス器具を判別することが可能となる。
【0032】
ガスの使用開始から所定時間、例えば、3つ目のサンプリング(6秒経過)までの流量変化に注目する。図3のガス器具Aの例では、区分コードN1(計測コード列)は「0553」となっている。一方、同じようにして得られた、図4に示すガス器具B(例えば給湯器)の起動後のガス流量により、3つ目のサンプリングまでのガス流量の区分コードN1(計測コード列)は「0777」となる。
【0033】
ここでガス器具Aとガス器具BのコードN1を比較すると、ガス器具Aは「0553」の固有のコード列、ガス器具Bは「0777」の固有のコード列に沿って立上っている。このようなガス器具毎の個別の立ち上り特性である固有のコード列を予め記憶しておき、計測、変換により得られた計測コード列である区分コードN1が「0553」であれば使用されたガス器具がガス器具Aであると判別することができる。また得られた計測コード列である区分コードN1が「0777」であれば、使用されたガス器具がガス器具Bであると判別することができる。
【0034】
器具判別部116は、コード列生成部114によって生成された計測コード列に基づき、上述の方法で、ガスを使用しているガス器具を判別する。ここで器具判別部116は、計測コード列と、予めガス器具ごとに器具固有コード列情報保持部118に記憶されたガス器具固有の固有のコード列を比較し、その類似関係等からガスを使用するガス器具を判別する。図3、図4のN1,N2と同様なガス器具固有のコード列が、器具固有コード列情報保持部118に予め記憶されている。ガス器具固有のコード列は、図2に示した流量区分表110aの各差分流量帯と対応したコードN1,N2を考慮して作成されている。
【0035】
上述の例では、計測コード列および器具固有コード列は、上述したガス器具A、ガス器具B、・・・の立ち上がり特性、すなわち、ガス器具によるガスの使用開始直後の流量の立ち上がり特性を示すものである。しかしながら、ガス器具を特定することができるものであれば、特に限定はされず、計測コード列および器具固有コード列として、ガス器具の作動中における制御特性(流量の制御特性)を示すもの全般が用いられる。器具の作動中の流量特性には、例えば、器具による流体の使用開始直後の流量の立ち上がり特性、流体の使用終了時の流量の立下り特性、または流体の安定使用時における流量の制御特性等が含まれる。ここで器具固有コード列情報保持部118に記憶されたガス器具固有のコード列は、予め設定するのではなく、実際の流量計測によって学習し補正してもよい。
【0036】
また、流量の立ち上り(起動時)から所定時間(例えば7つ目)までのコードN2に注目すると、ガス器具AのコードN2は「01131133」で、ガス器具BのコードN2は「01111333」となっている。ここで、コードN2は、0:流量がゼロの領域、1:増加領域、2:減少領域、3:安定領域と定義されており、ガス器具Aは一旦立上って増加し、一時安定し、再度増加する特徴があることがガス器具AのコードN2から理解される。一方、ガス器具Bは一旦立上り、増加し続けて、その後安定する特徴があることがガス器具BのコードN2から理解される。従って、コードN2が「01131133」であれば、使用ガス器具がガス器具Aである可能性が判断できる。また、コードN2「01111333」であれば、使用ガス器具がガス器具Bである可能性が判断できる。そして、コードN1とコードN2とを組み合わせることにより、ガス器具Aの特徴とガス器具Bの特徴を容易に判断することができる。
【0037】
図3、図4では、ガス使用開始直後の流量の立ち上がり特性を2つのガス器具間で比較し、ガス器具を判別している。図5は、ガス器具の作動中における流量変化特性を比較することにより、ガス器具を判別する例を示す。図5の(a),(b)は、ガス器具Cの作動中において、使用流量が増加したタイミングを含む流量変化の表及びグラフを示し、図5の(c),(d)は、ガス器具Dのガス使用開始後から作動中におけるの流量変化の表及びグラフを示す。
【0038】
ガス器具Cによるガス使用量が増大した場合、図5(a),(b)の動作例では、計測流量の11個目で流量が増加し、13個目以降再度安定している。そして、この作動中の増加特性は、コードN2のコード列では「3333333333113・・」で、コードN1のコード列では「999111199991449・・」で表される。各コード列において、増加領域はコードN2では「11」部分に、コードN1では「44」部分に相当する。したがって、作動中流量増加特性のコードN2が「11」またはコードN1が「44」である場合、使用ガス器具がガス器具Cであることが判別できる。
【0039】
また、図5(c),(d)のガス器具Dの動作例では、計測流量の10個目で流量が増加し、13個目以降再度安定している。この作動中の増加特性は、コードN2のコード列では「0111333331113・・」で、コードN1のコード列では「05653AA234542・・」で表される。各コード列において、増加領域はコードN2では後半の「111」部分に、コードN1では「454」部分に相当する。したがって、作動中流量増加特性のコードN2が「111」またはコードN1が「454」である場合、使用ガス器具がガス器具Dであることが判別できる。
【0040】
ガス器具Cの流量増加特性は2桁の連続コードで表されるのに対し、ガス器具Dの流量増加特性は3桁の連続コードで表される。このことは、ガス器具Cは急激な増加特性、ガス器具Dは緩やかな増加特性を示すことを意味する。このような増加特性のコード列を予めガス器具毎に器具固有コード列として器具固有コード列情報保持部118に記憶しておき、計測した増加時におけるコード列と比較すれば、ガス器具Cとガス器具Dを容易に判別することができる。そして、計測コード列と合わせて、差分値の絶対量や流量の絶対値の大小関係をも比較すれば、精度よい器具判別が可能となる。
【0041】
図6は、ガス器具の停止時(ガスの使用終了時)の流量の立下り特性を比較することにより、ガス器具を判別する例を示す。図6の(a),(b)は、ガス器具Eの起動時から停止時までの使用流量の変化の表及びグラフを示し、図6の(c),(d)は、ガス器具Fの起動時から停止時までの使用流量の変化の表及びグラフを示す。
【0042】
図6の(a),(b)における流量がゼロになる直前の流量差分値をコード化すると、コードN1は「・・・9DDC0」で、コードN2は「・・・32220」で表される。ここでコードN2の「2220」に注目すると、対応するコードN1は「DDC0」であり、ガス器具Eの立下り特性は3桁の連続コードで表されることがわかる。そして、N2のコード列「DDC0」からわかるように、ガス器具Eの停止時における流量は、急激に2回減少し、最後は緩やかに減少して停止することがわかる。
【0043】
図6の(c),(d)における流量がゼロになる直前の流量差分値をコード化すると、コードN1は「・・・9DD0」で、コードN2は「・・・3220」で表される。ここでコードN2の「220」に注目すると、対応するコードN1は「DD0」であり、ガス器具Fの立下り特性は2桁の連続コードで表されることがわかる。そして、N2のコード列「DD0」からわかるように、ガス器具Fの停止時における流量は、急激に2回減少して停止することがわかる。
【0044】
上述したような立下り特性を予めガス器具毎に器具固有コード列として器具固有コード列情報保持部118に記憶しておき、計測した減少時におけるコード列と比較すれば、ガス器具Eとガス器具Fを容易に判別することができる。そして、計測コード列と合わせて、差分値の絶対量や流量の絶対値の大小関係をも比較すれば、精度よい器具判別が可能となる。
【0045】
計測コード列および器具固有コード列は、ガス器具によるガスの使用開始後、特定のコード列パターンが出現するまでの長さをもたせるようにしてもよい。
【0046】
例えば、ガス器具の中には、室温制御や湯温制御を行うため、燃焼のオンとオフを繰り返す器具もあり、燃焼オン期間、燃焼オフ期間、燃焼オン/オフ周期時間等を計測することにより、器具の特徴を把握して判別できるものがある。このような場合、単純にガス器具の使用開始(立上り特性)から停止(立下り特性)までの期間の1回分に相当する流量を計測するだけでなく、複数回の使用開始から停止までの繰り返し流量測定すると、特定のコード列パターンとして器具を判別することができる。例えば、図7(a)はガス器具Gの流量特性であるが、後半に燃焼オンと燃焼オフを繰り返していることがわかる。
【0047】
A点からB点の変化を拡大して示したものが図7(b)であり。コードN1は、「・・・8888888CDB000000006633B33A92399AA99D88888DD0000000006623A・・・」で、コードN2は、「・・・3333333223000000001133333333333332333332200000000011333・・・」で表される。ここで、停止から次回の起動開始までのコードN2は「・・・0001133」で表され、このパターンが後半にもう一度計測されている。この場合、繰り返される立上り特性「・・・0001133・・」とその間の経過時間(33データ×計測周期時間(例えば2秒)=66秒)を器具の特徴として検出することができる。従って、流量使用が完全に停止するまでコード列を算出し続け、立上り特性と周期時間に対して、次回同様なパターンでコード列が計測されると、使用器具はガス器具Gであることを判別することができる。
【0048】
上述したように、本発明の計測コード列は、従来の差分値からなる履歴に比べ、同じ計測時間分のデータであってもメモリサイズは小さいものとなるため、より長い計測時間のデータを扱うことが容易となる。したがって、器具判別に際しても、長い計測時間に相当する流量変化履歴を扱いやすくなる。長時間の流量変化履歴を用いることにより、器具判別の精度を向上させることができる。
【0049】
図8は、流量区分表110aの他の例を示す。図5の流量区分表は、図2のものと区分される絶対値が異なっている。図2の例では、150L/hの差分値までの範囲で16区分(コードN1)、4区分(コードN2)用意されているが、図8の例では30L/hの差分値までの範囲で同じく16区分(コードN1)、4区分(コードN2)用意されている。したがって、図8の表は、図2の表に比べ、流量が小さいガス器具(絶対流量が小さく、変化幅も小さいガス器具)が起動している際、その判別により好適に使用される。例えば、流量Q(n)≧200L/hのガス器具が使用されている場合は、図2の表を使用し、流量Q(n)<200L/hのガス器具が使用されている場合は、図8の表を使用することにより、正確にガス器具を判別することができる。
【0050】
また、流量の立上り特性、制御特性、立下り特性(停止特性)に応じて区分表を切り換えて使用してもよい。
【0051】
以上のような流量計測方法を実施するため、ガスメータ100の器具判別部116や図示せぬコンピュータ(演算装置)には、流量計測方法の各ステップを実行させるプログラムが記憶されている。また、本発明の流量計測装置、流量計測方法、コンピュータに実行させるプログラムを用いた流体(ガス)の供給源も含む流体供給システムも本発明に含まれる。
【0052】
なお、以上の説明は超音波流量計を用いた場合について説明したが、サンプリング信号を用いる他の瞬間式の流量計測装置でも、同様の効果が得られることは明白である。器具判別後の処理は説明を省略したが、ガスメータでは、登録器具ごとあるいは分類分けされたグループごとの積算流量の計測による器具別料金や、登録器具ごとあるいは分類分けされたグループごとに安全管理(保安機能)処理の器具別保安機能を設定することも可能であることは明白である。また、ガスメータとガス器具に無線機のような送受信手段を装備させることができれば、より器具判別の精度が向上することは明白である。さらに、ガスメータおよびガス器具で説明したが、工業用流量計や水道メータにおいても同様に、流量計測装置の下流側に接続された使用器具の特定や、そのグルーピングに使用することができる。
【0053】
尚、上記した流量区分表の区分(図2、図8)のコードN1では、細分化された各領域の差分流量の幅は異なっていた。しかしながら、少なくとも増加領域、減少領域において、略均等に細分化してももちろんかまわない。
【0054】
また、上述の実施形態では流体であるガスの流量の差分値をコード化の対象とした。しかしながら、本発明のコード化の対象は流量に限らず、流体の温度、圧力、質量など、広く流体の物理量と把握することができる。
【0055】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明によれば差分値を、より扱いやすいコードに変換するため、流体の使用器具の判別技術を提供するに際し、装置に必要なメモリ量などを減らしつつ、演算速度、器具判別精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態におけるガスメータのブロック図
【図2】流量区分表の一例を示す図
【図3】ガス器具Aの使用による流量の差分値を流量区分表にしたがって区分する概念を示す図
【図4】ガス器具Bの使用による流量の差分値を流量区分表にしたがって区分する概念を示す図
【図5】(a),(b)は、ガス器具Cの使用による流量の差分値を流量区分表にしたがって区分する概念を示す図で、(c),(d)は、ガス器具Dの使用による流量の差分値を流量区分表にしたがって区分する概念を示す図
【図6】(a),(b)は、ガス器具Eの使用による流量の差分値を流量区分表にしたがって区分する概念を示す図で、(c),(d)は、ガス器具Fの使用による流量の差分値を流量区分表にしたがって区分する概念を示す図
【図7】ガス器具Gの計測流量を示すグラフ
【図8】流量区分表の他の例を示す図
【図9】従来のガスメータのブロック図
【符号の説明】
【0058】
13、14、15 ガス器具
19 ガス管路
100 ガスメータ(流量計測装置)
102 流路
104 超音波流量計
106 計測流量情報記憶部
108 演算部
110 流量区分表保持部
112 差分値変換部
114 コード列生成部
116 器具判別部
118 器具固有コード列情報保持部
120 器具別流量算出部
122 流路遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測する流量計測部と、
前記流量計測部によって計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算する演算部と、
差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表と、
前記演算部によって演算された差分値を、前記流量区分表に基づき前記コードに変換する差分値変換部と、
前記差分値変換部によって得られた前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するコード列生成部と、
前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別する器具判別部と、
を備える流量計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記計測コード列および前記器具固有コード列は、器具の作動中における流量の制御特性を示すものである流量計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記計測コード列および前記器具固有コード列は、器具による流体の使用開始直後の流量の立ち上がり特性を示すものである流量計測装置。
【請求項4】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記計測コード列および前記器具固有コード列は、器具による流体の使用終了時の流量の立下り特性を示すものである流量計測装置。
【請求項5】
請求項1記載の流量計測装置であって、
前記計測コード列および前記器具固有コード列は、器具による流体の使用開始後、特定のコード列パターンが出現するまでの長さをもつ流量計測装置。
【請求項6】
流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測するステップと、
計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算するステップと、
差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表に基づき、演算された差分値を、前記コードに変換するステップと、
前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するステップと、
前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別するステップと、
を備える流量計測方法。
【請求項7】
流量計測装置を制御するコンピュータに、以下のステップを実行させるプログラムであって、
流路に流れる流体の流量を一定時間間隔で計測するステップと、
計測された流量の、前記一定時間毎の差分値を演算するステップと、
差分値の大きさに応じた複数の差分値の区分と、各区分を表すコードが対応付けられた流量区分表に基づき、演算された差分値を、前記コードに変換するステップと、
前記一定時間毎の前記コードの集合に基づく計測コード列を生成するステップと、
前記計測コード列と、器具ごとの固有のコード列を示す器具固有コード列を比較し、流体を使用する器具を判別するステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の流量計測装置または流量計測方法またはコンピュータに実行させるプログラムを用いた流体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−309498(P2008−309498A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154763(P2007−154763)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】