説明

浄化槽

【課題】嫌気槽のスカムが好気槽に移送されにくく、ディスポーザから流入するような処理負荷が高い被処理水でも適切に浄化処理し易い浄化槽を提供する。
【解決手段】被処理水が外部から流入する嫌気槽Aと、嫌気槽で処理された被処理水を処理する好気槽Bと、好気槽で処理された被処理水中の固形分を沈殿させる沈殿槽Cとを備え、沈殿槽の被処理水を外部に排出可能に構成し、嫌気槽を、被処理水が外部から流入する固液分離槽A1と、固液分離槽で分離された被処理水がオーバーフローで移流する流量調整槽A2とで構成し、流量調整槽の被処理水を好気槽に移送するポンプ13と、好気槽の被処理水を沈殿槽にオーバーフローで移流させる移流口22と、沈殿槽で沈殿させた固形分を嫌気槽に返送する返送手段25とを設け、沈殿槽の底面形状を、沈殿槽内部の水平方向に沿う横断面積が下部ほど小さくなる下窄まり形状に形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水が外部から流入する嫌気槽と、前記嫌気槽で嫌気処理された被処理水を好気処理する好気槽と、前記好気槽で好気処理された被処理水中の固形分を沈殿させる沈殿槽とを備え、前記沈殿槽の被処理水を外部に排出可能に構成してある浄化槽に関する。
【背景技術】
【0002】
上記浄化槽では、従来、嫌気槽を、被処理水が外部から流入する夾雑物除去槽と、嫌気濾床槽とに仕切り壁で仕切り、夾雑物除去槽と嫌気濾床槽とを連通する流入口を、通常運転状態における液面の昇降高さ位置に合わせた上下幅で、その仕切り壁に設けて、通常運転状態において、夾雑物除去槽への被処理水の流入量に応じて、夾雑物除去槽の液面と嫌気濾床槽の液面とが、流入口を通して連続している状態で、同じレベルで昇降するように構成し、嫌気濾床槽の被処理水をポンプで好気槽に移送するように構成してある。
また、好気槽で好気処理された被処理水を、好気槽と沈殿槽とを区画している吊り壁の下端と槽底との間の流入口から沈殿槽の下部に流入させて、沈殿槽の被処理水を外部に排出可能に構成してある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−24880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の浄化槽は、上記のように、通常運転状態において、夾雑物除去槽への被処理水の流入量に応じて、夾雑物除去槽の液面と嫌気濾床槽の液面とが、流入口を通して連続している状態で、同じレベルで昇降するように構成し、嫌気濾床槽の被処理水をポンプで好気槽に移送するように構成してあるので、夾雑物除去槽と嫌気濾床槽との全体が、実質的に流量調整槽として機能しており、夾雑物除去槽の被処理水に浮遊しているスカムが流入口を通して嫌気濾床槽に流入して、被処理水とともに好気槽に移送され易い欠点がある。
また、ディスポーザから流入する被処理水のように、固形分が比較的多くて処理負荷が高い被処理水が夾雑物除去槽に大量に流入すると、その固形分の多い被処理水が流入口を通して嫌気濾床槽に流入してポンプで好気槽に移送され、その好気槽から沈殿槽に槽底部から流入し、それらの固形分が、沈殿槽における被処理水の槽底部から上部へ向かう上昇流に乗って、充分に沈殿させることができないまま、被処理水と共に外部に排出され易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、嫌気槽のスカムが好気槽に移送されにくく、ディスポーザから流入するような処理負荷が高い被処理水でも適切に浄化処理し易い浄化槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、被処理水が外部から流入する嫌気槽と、前記嫌気槽で嫌気処理された被処理水を好気処理する好気槽と、前記好気槽で好気処理された被処理水中の固形分を沈殿させる沈殿槽とを備え、前記沈殿槽の被処理水を外部に排出可能に構成してある浄化槽であって、前記嫌気槽を、被処理水が外部から流入する固液分離槽と、通常運転状態において、前記固液分離槽で固液分離された被処理水がオーバーフローで移流する流量調整槽とで構成し、前記流量調整槽の被処理水を前記好気槽に移送するポンプと、前記好気槽の被処理水を前記沈殿槽にオーバーフローで移流させる移流口と、前記沈殿槽で沈殿させた固形分を前記嫌気槽に返送する返送手段とを設け、前記沈殿槽の底面形状を、沈殿槽内部の水平方向に沿う横断面積が下部ほど小さくなる下窄まり形状に形成してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
嫌気槽を、被処理水が外部から流入する固液分離槽と、通常運転状態において、固液分離槽で固液分離された被処理水がオーバーフローで移流する流量調整槽とで構成してあるので、固液分離槽の被処理水が流量調整槽にオーバーフローで穏やかに流入し、固液分離槽の被処理水に浮遊しているスカムが流量調整槽に流入しにくいとともに、ディスポーザから流入する被処理水のような、固形分が比較的多くて処理負荷が高い被処理水が固液分離槽に流入しても、充分時間を掛けて固液分離させ易く、固形分も流量調整槽に流入しにくい。
また、流量調整槽の被処理水を好気槽に移送するポンプを設けてあるので、スカムや固形分の流入が少ない被処理水を好気槽に移送して好気処理できるとともに、好気槽の被処理水を沈殿槽にオーバーフローで移流させる移流口を設けてあるので、好気槽で好気処理した被処理水中の固形分を、沈殿槽における被処理水の移流口から槽底部に向かう下降流に乗せて、効率良く沈殿させ易く、その沈殿槽で沈殿させた固形分を嫌気槽に返送する返送手段を設けてあるので、その固形分を嫌気槽で再度嫌気処理することができる。
その上、沈殿槽の底面形状を、沈殿槽内部の水平方向に沿う横断面積が下部ほど小さくなる下窄まり形状に形成してあるので、沈殿した固形分を沈殿槽の底部に堆積させ易く、返送手段によって嫌気槽に効率良く返送できる。
従って、嫌気槽のスカムが好気槽に移送されにくいとともに、固形分が比較的多くて処理負荷が高い被処理水が固液分離槽に短時間の間に大量に流入した結果、それらの固形分が、万一、流量調整槽と好気槽とを経て、沈殿槽に流入しても、それらの固形分を沈殿槽の底部に効率良く堆積させて嫌気槽に返送し易く、処理負荷が高い被処理水でも、固形分が外部に排出されないように適切に浄化処理し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記固液分離槽内の被処理水の流動方向を下向きに規制する下向き規制流路と、前記固液分離槽内の被処理水の流動方向を上向きに規制する上向き規制流路とを、前記固液分離槽の径方向で互いに対向する槽壁部分に沿わせて各別に設けて、外部からの被処理水が前記下向き規制流路を通して前記固液分離槽に流入可能、かつ、前記固液分離槽の被処理水が前記上向き規制流路を通してオーバーフローで前記流量調整槽に移流可能に構成し、前記固形分を前記下向き規制流路から前記固液分離槽に返送可能に構成してある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
固液分離槽内の被処理水の流動方向を下向きに規制する下向き規制流路と、固液分離槽内の被処理水の流動方向を上向きに規制する上向き規制流路とを、固液分離槽の径方向で互いに対向する槽壁部分に沿わせて各別に設けて、外部からの被処理水が下向き規制流路を通して固液分離槽に流入可能、かつ、固液分離槽の被処理水が上向き規制流路を通してオーバーフローで流量調整槽に移流可能に構成してあるので、外部からの被処理水を、下向き規制流路の出口から上向き規制流路の入り口に移動するまでの間、流入済みの被処理水に強制的に混合させる状態で、固液分離槽内において長時間に亘って滞留させて、充分に固液分離させた被処理水を流量調整槽に移流させ易い。
また、沈殿槽で沈殿させた固形分を下向き規制流路から固液分離槽に返送可能に構成してあるので、それらの固形分を、固液分離槽内において長時間に亘って滞留させて、効率良く固液分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4は、生活排水(汚水)を被処理水として浄化処理するための本発明による浄化槽を示し、図1,図2に示すように、マンホール1などを備えた槽本体2に、流入口としての流入管3を通して被処理水が外部から流入する嫌気槽Aと、嫌気槽Aで嫌気処理された被処理水を好気処理する好気槽Bと、好気槽Bで好気処理された被処理水中の固形分を沈殿させる沈殿槽Cと、沈殿槽Cを通過した被処理水を消毒処理する消毒槽Dとを区画形成し、沈殿槽Cで固形分を沈殿させた被処理水を、消毒槽Dを介して、放流口としての流出管4から外部に排出可能に構成してある。
【0010】
前記嫌気槽Aは、その内側を第1仕切り壁5で仕切って、被処理水が流入管3を通して外部から流入する固液分離槽A1と、通常運転状態において、固液分離槽A1で固液分離された被処理水が第1仕切り壁5の上部に形成してある第1移流口6からオーバーフローで移流する流量調整槽A2とで構成してある。
【0011】
前記固液分離槽A1は、固液分離槽内に流入する被処理水の流動方向を下向きに規制する下向き規制流路7と、固液分離槽内から流出する被処理水の流動方向を上向きに規制する上向き規制流路8とを、固液分離槽A1の径方向で互いに対向する槽壁部分2a,5aに沿わせて各別に設けて、外部からの被処理水が流入管3から下向き規制流路7を通して固液分離槽A1に流入可能、かつ、固液分離槽A1の被処理水が上向き規制流路8を通して第1移流口6からオーバーフローで流量調整槽A2に移流可能に構成してある。
【0012】
前記下向き規制流路7は、水平断面形状が略コの字状の第1バッフル9を、その上端部分で流入管3の出口側を取り囲む状態で、通常運転状態における流量調整槽A2の最高液面高さHWL よりも高い位置と、最低液面高さLWL と略同じ高さ位置とに亘って、槽本体2における槽壁部分2aの内側に設けて、その内側に形成してある。
【0013】
前記上向き規制流路8は、水平断面形状が略コの字状の第2バッフル10を、その上端部分で第1移流口6を取り囲む状態で、通常運転状態における流量調整槽A2の最高液面高さHWL よりも高い位置と、最低液面高さLWL よりも低い位置とに亘って、第1仕切り壁5における槽壁部分5aの固液分離槽側に設けて、その内側に形成してある。
【0014】
前記流量調整槽A2は、図3にも示すように、被処理水中に含まれる溶解性有機物質を嫌気性濾床11の濾材に付着生息している嫌気性微生物によって分解処理する嫌気性濾床槽で構成してあり、流量調整槽A2の被処理水を略一定流量で、配管12を通して好気槽Bに移送する定容量式の第1エアリフトポンプ13と、嫌気性濾床11の逆洗管14とを設けてある。
【0015】
前記第1エアリフトポンプ13は、嫌気槽Aと好気槽Bとを仕切る第2仕切り壁15の嫌気槽側に、水平断面形状が略コの字状の第3バッフル16を、通常運転状態における流量調整槽A2の最高液面高さHWL よりも高い位置と、嫌気性濾床11の下面と略同じ高さ位置とに亘って設けて、その内側に設置してある。
【0016】
前記好気槽Bは、槽内に流動状態で充填してあるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂,ポリウレタン樹脂等の樹脂製の担体を、ばっ気用散気管17から吹き込んだ空気でばっ気攪拌することにより、担体の表面に付着生成している生物膜と被処理水とを繰り返し接触させて、被処理水中の有機物の分解除去や窒素化合物の酸化を行う担体反応槽で構成してあり、槽底部に溜まった汚泥を槽外に引き出し可能な汚泥引き出し管20を設けてある。
【0017】
前記沈殿槽Cは、図4にも示すように、担体流出防止用の多孔板21を設けてある第2移流口22を、好気槽Bと沈殿槽Cとを仕切る第3仕切り壁23の上部に形成して、好気槽Bの被処理水を第2移流口22からオーバーフローで移流させるように構成してあり、その底面24の形状を沈殿槽内部の水平方向に沿う横断面積が下部ほど小さくなる下窄まり形状に形成し、沈殿槽Cで沈殿させた固形分を嫌気槽Aに返送する返送手段25を設けてある。
【0018】
そして、水平断面形状が略コの字状の第4バッフル26を、第2移流口22を取り囲む状態で、通常運転状態における流量調整槽A2の最高液面高さHWL よりも高い位置と、最低液面高さLWL よりも低い位置とに亘って、第3仕切り壁23の沈殿槽側に設けて、その内側を下向き流路27に形成し、第2移流口22から移流した被処理水が下向き流路27を通って槽底部に向かって下降流動するように構成してある。
【0019】
前記返送手段25は、第2エアリフトポンプ28を上下方向中間位置に備えた吸入管29を下向き流路27に挿通して、返送路18を形成している返送管19に連通接続するとともに、その吸入口30を槽底近くに開口させて、下窄まり形状の槽底に沈殿させた固形分を、第2エアリフトポンプ28の作動で、返送路18を通して、固液分離槽A1の下向き規制流路7から嫌気槽Aに返送できるように構成してある。
【0020】
前記消毒槽Dは、沈殿槽Cと消毒槽Dとを仕切る第4仕切り壁31に第3移流口32を形成して、沈殿槽Cの被処理水を第3移流口32からオーバーフローで移流させるように構成してあり、薬剤筒33の塩素系消毒剤で被処理水を消毒した後、流出管4を通して外部に放流できるように構成してある。
【0021】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による浄化槽は、好気槽の被処理水を、必要に応じて適宜の処理を行うための処理槽を経由して、沈殿槽にオーバーフローで移流させるように設けてあっても良い。
2.本発明による浄化槽は、沈殿槽の被処理水を、必要に応じて適宜の処理を行うための処理槽を経由して、消毒槽から外部に排出可能に構成してあっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】浄化槽の縦断面図
【図2】浄化槽の内部を示す平面図
【図3】図2におけるIII-III線矢視横断面図
【図4】図2におけるIV-IV線矢視横断面図
【符号の説明】
【0023】
2a 槽壁部分
5a 槽壁部分
7 下向き規制流路
8 上向き規制流路
13 ポンプ
22 移流口
25 返送手段
A 嫌気槽
A1 固液分離槽
A2 流量調整槽
B 好気槽
C 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が外部から流入する嫌気槽と、前記嫌気槽で嫌気処理された被処理水を好気処理する好気槽と、前記好気槽で好気処理された被処理水中の固形分を沈殿させる沈殿槽とを備え、
前記沈殿槽の被処理水を外部に排出可能に構成してある浄化槽であって、
前記嫌気槽を、被処理水が外部から流入する固液分離槽と、通常運転状態において、前記固液分離槽で固液分離された被処理水がオーバーフローで移流する流量調整槽とで構成し、
前記流量調整槽の被処理水を前記好気槽に移送するポンプと、前記好気槽の被処理水を前記沈殿槽にオーバーフローで移流させる移流口と、前記沈殿槽で沈殿させた固形分を前記嫌気槽に返送する返送手段とを設け、
前記沈殿槽の底面形状を、沈殿槽内部の水平方向に沿う横断面積が下部ほど小さくなる下窄まり形状に形成してある浄化槽。
【請求項2】
前記固液分離槽内の被処理水の流動方向を下向きに規制する下向き規制流路と、前記固液分離槽内の被処理水の流動方向を上向きに規制する上向き規制流路とを、前記固液分離槽の径方向で互いに対向する槽壁部分に沿わせて各別に設けて、外部からの被処理水が前記下向き規制流路を通して前記固液分離槽に流入可能、かつ、前記固液分離槽の被処理水が前記上向き規制流路を通してオーバーフローで前記流量調整槽に移流可能に構成し、
前記固形分を前記下向き規制流路から前記固液分離槽に返送可能に構成してある請求項1記載の浄化槽。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−117908(P2007−117908A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314524(P2005−314524)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成17年9月12日 社団法人日本水環境学会発行の「第8回 日本水環境学会シンポジウム講演集」に発表
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(392013028)アムズ株式会社 (1)
【出願人】(505404530)株式会社ダイキアクシス (9)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】