説明

浄化装置および光触媒カートリッジ

【課題】 流体中の有害物質の分解を行う光触媒カートリッジの全面に光が照射され、かつ光触媒カートリッジの内部を流体が通過しない光触媒カートリッジの提供により、流体中の浮游粒子が捕捉されることのない、光触媒性能の向上した光触媒カートリッジ及び浄化装置の提供。
【解決手段】 シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)とからなる繊維であって、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大している、光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布を円盤状に成形した複数個の成形物が、反応容器内に着脱可能となるように配置されていることを特徴とする光触媒カートリッジ、及び該光触媒カートリッジを使用した浄化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば紫外線照射ランプからの紫外線を光触媒に照射して、光触媒と空気、水等の処理流体を接触させ、光触媒反応により処理流体中の有害物質等の分解を行なう有害物質の浄化装置及びそれに使用される光触媒カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全に対する関心の高まりとともに、大気中及び水中の有害物質を処理する浄化装置が求められるようになってきた。このような状況の中で光触媒を用いた浄化装置が注目されている。従来、光触媒を用いた有害物質の浄化は、光触媒として粉末状の酸化チタンが主として用いられてきた。しがしながらこれら粉末状の光触媒は、取り扱いが難しい上、水の浄化においては水中に酸化チタンが混ざるために処理水から酸化チタンを分離する必要がある。この問題を解決するために、基材に光触媒粉末を担持させることが行われている。例えば特許文献1に示されているように、ガラスフィルター上に酸化チタンをコーティングすることにより得られるフィルターが提案されている。また、例えば特許文献2に示されているように、目開きクロスに光触媒を担持させた光触媒担持体からなる光触媒カートリッジが提案されている。この光触媒担持体は中空円錐台形状の一定目開きクロスの積み重ね構造である。
【0003】
しかしながら、一般にコーティングによる光触媒粉末の担持では被処理物との接触等により光触媒粉末が脱落しやすいために処理物に光触媒粉末が混入するという問題は解決されていない。また、特許文献2のように、クロスに触媒を担持する方法では、クロスを構成する繊維同士のブリッジングが避けられない。その結果、処理流体が繊維間を通過することが難しく、圧力損失が大きくなる。この圧力損失を回避するために、ある一定以上の目開きを規定するか、あるいは上記触媒担持体に意図的に穴を開けるという方策が取られる。上記特許文献2に記載された中空円錐台形状の一定目開きクロスの積み重ね構造は、上記回避策を講じたものにすぎない。
【0004】
光触媒作用による有害物質の浄化においては、光触媒と処理流体との接触を良くすること、すなわち光触媒と処理流体との有効接触面積をいかに大きく取るかが極めて重要であり、上記先行特許のように繊維一本一本の間よりもむしろ、中心部の穴やクロスの目開き領域を処理流体が優先的に通過する構造では効果的な光触媒活性は得られない。 これらの課題を解決するものとして特許文献3が提案されている。
【特許文献1】特開平8−103631号公報
【特許文献2】特開平7−227547号公報
【特許文献3】特許第3436467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載されているように、中空円錐状の光触媒カートリッジは流体との接触効率に優れているが、紫外線の照射効率という面で課題が残されている。例えば同特許の図2に示されている構造においては、紫外線は光触媒に吸収されるために光触媒カートリッジの内面(紫外線ランプに近い側)では十分な紫外線照射が確保されるものの、外面では十分な紫外線照射が確保できない。したがって、流体中の有害物質の分解はほぼ光触媒カートリッジの内面のみで行なわれることになる。さらに、この光触媒カートリッジの構造では流体が全て光触媒カートリッジ中を通過するため、浮遊粒子状物質が含まれる流体を処理する場合、光触媒カートリッジ表面に浮遊粒子状物質が捕捉される。このため、該粒子状物質が堆積し、光触媒性能が大幅に低下する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はシリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)とからなる繊維であって、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大している、光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布を円盤状に成形した成形物が、活性光線照射器、例えば紫外線ランプを備えた反応容器内に設置されていることを特徴とする処理流体と光触媒との接触効率に優れた浄化装置を提供する。
【0007】
さらに本発明はシリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)とからなる繊維であって、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大している、光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布を円盤状に成形した複数個の成形物が、活性光線照射器、例えば紫外線ランプを備えた反応容器内に着脱可能となるように配置されることを特徴とする光触媒カートリッジを提供する。
【0008】
本発明はさらに、上記円盤状成形物が、開口部が設けられ、該開口部を通過した処理粒体が下流側円盤状成形物と逐次接触するように、該円盤状成形物が多段に配置されていることを特徴とする光触媒カートリッジを提供する。
【0009】
本発明はさらに、上記円盤状成形物が、開口部及び少なくとも1個の孔部を有し、該孔部に活性光線照射器が配置できるように該円盤状成形物が多段に配置されていることを特徴とする光触媒カートリッジを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、光触媒カートリッジを円盤状とすることにより、紫外線照射効率と流体との接触効率の両方を向上させたことが特徴である。光触媒カートリッジを円盤状にすることにより光触媒カートリッジの両面から十分な紫外線照射が確保されるという特徴を有する。本発明はさらに、開口部を有する円盤状光触媒カートリッジを多段に配置することにより、流体を蛇行させ、流体と光触媒カートリッジとの接触効率を高めることができるという特徴を有している。すなわち、本発明は、光触媒カートリッジと流体との接触を、流体を光触媒カートリッジを通過させるのではなく、流体の流れを制御することにより、流体を光触媒カートリッジに接触させることが特徴である。そのため、特許第3436267号の問題である光触媒カートリッジ表面への浮遊粒子状物質の堆積も回避できるという利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のシリカ基複合酸化物繊維において、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とは、非晶質であっても結晶質であっても良く、またシリカと固溶体或いは共融点化合物を形成し得る金属元素或いは金属酸化物を含有していても良い。シリカと固溶体を形成し得る金属元素(A)あるいはその酸化物がシリカと特定組成の化合物を形成し得る金属元素(B)としては特に限定されるものではないが、例えば(A)としてチタン、また(B)としてアルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、リチウム、ナトリウム、バリウム、カルシウム、ホウ素、亜鉛、ニッケル、マンガン、マグネシウム、鉄等があげられる。
【0012】
この第1相は、本発明で得られる繊維の内部相を形成しており、力学的特性を負担する重要な役割を演じている。繊維全体に対する第1相の存在割合は98〜40重量%であることが好ましく、目的とする第2相の機能を十分に発現させ、なお且つ高い力学的特性をも発現させるためには、第1相の存在割合を50〜95重量%の範囲内に制御することが好ましい。
【0013】
一方、第2相を構成する金属酸化物は、光触媒機能を発現させる上で重要な役割を演じるものである。金属酸化物相を構成する金属としては、Tiが挙げられる。この金属酸化物は、単体でもよいし、その共融点化合物やある特定元素により置換型の固溶体を形成したもの等でもよい。この繊維の表層部を構成する第2相の存在割合は、酸化物の種類により異なるが、2〜60重量%が好ましく、その機能を十分に発現させ、また高強度をも同時に発現させるには5〜50重量%の範囲内に制御することが好ましい。また、第2相のTiを含む金属酸化物の結晶粒径は15nm以下、特に10nm以下が好ましい。
【0014】
この第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合は、繊維の表面に向って傾斜的に増大しており、その組成の傾斜が明らかに認められる領域の厚さは5〜500nmの範囲に制御することが好ましいが、繊維直径の約1/3に及んでも良い。尚、本発明において、第1相及び第2相の「存在割合」とは、第1相を構成する金属酸化物と第2相を構成する金属酸化物全体、即ち繊維全体に対する第1相の金属酸化物及び第2相の金属酸化物の重量%を意味している。
【0015】
また、このシリカ基複合酸化物繊維は、光触媒機能を有すると同時に優れた耐熱性を有している。例えば、加熱空気中に1時間保持した後に元の繊維強度の90%以上残存する温度が1000℃である。
【0016】
次に、本発明のシリカ基複合酸化物繊維の製造方法について説明する。本発明においては、主として一般式
【0017】
【化1】

【0018】

(但し、式中のRは水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を示す。)で表される主鎖骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランを、Tiを含む有機金属化合物で修飾した構造を有する変性ポリカルボシラン、或いは変性ポリカルボシランとTiを含む有機金属化合物との混合物を溶融紡糸し、不融化処理後、空気中又は酸素中で焼成することにより、シリカ基複合酸化物繊維を製造することができる。
【0019】
第1工程は、シリカ基複合繊維を製造するための出発原料として使用する数平均分子量が1,000〜50,000の変性ポリカルボシランを製造する工程である。上記変性ポリカルボシランの基本的な製造方法は、特開昭56−74126号に極めて類似しているが、本発明では、その中に記載されている官能基の結合状態を注意深く制御する必要がある。これについて以下に概説する。
【0020】
出発原料である変性ポリカルボシランは、主として一般式
【0021】
【化2】

【0022】

(但し、式中のRは水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を示す。)で表される主査骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランと、一般式、M(OR')n或いはMR''m(Mは少なくともTi、R'は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはフェニル基、R"はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とするTiを含む有機金属化合物(以下、単に有機金属化合物という)とから誘導されるものである。
【0023】
ここで、本発明の傾斜組成を有する繊維を製造するには、上記有機金属化合物の一部のみがポリカルボシランと結合を形成する緩慢な反応条件を選択する必要がある。その為には280℃以下、好ましくは250℃以下の温度で不活性ガス中で反応させる必要がある。この反応条件では、上記有機金属化合物はポリカルボシランと反応したとしても、1官能性重合体として結合(即ちペンダント状に結合)しており、大幅な分子量の増大は起こらない。この有機金属化合物が一部結合した変性ポリカルボシランは、ポリカルボシランと有機金属化合物の相溶性を向上させる上で重要な役割を演じる。
【0024】
尚、2官能以上の多くの官能基が結合した場合は、ポリカルボシランの橋掛け構造が形成されると共に顕著な分子量の増大が認められる。この場合は、反応中に急激な発熱と溶融粘度の上昇が起こる。一方、上記1官能しか反応せず未反応の有機金属化合物が残存している場合は、逆に溶融粘度の低下が観察される。
【0025】
本発明では、未反応の有機金属化合物を意図的に残存させる条件を選択することが望ましい。本発明では、主として上記変性ポリカルボシランと未反応状態の有機金属化合物或いは2〜3量体程度の有機金属化合物が共存したものを出発原料として用いるが、変性ポリカルボシランのみでも、極めて低分子量の変性ポリカルボシラン成分が含まれる場合は、同様に本発明の出発原料として使用できる。
【0026】
第2工程においては、前記第1工程で得られた変性ポリカルボシラン、或いは変性ポリカルボシランと低分子量の有機金属化合物の混合物(以下前駆体ポリマーという)を溶融させて紡糸原液を造り、場合によってはこれをろ過してミクロゲル、不純物等の紡糸に際して有害となる物質を除去し、これを通常用いられる合成繊維紡糸用装置により紡糸する。紡糸する際の紡糸原液の温度は原料の変性ポリカルボシランの軟化温度によって異なるが、50〜200℃の温度範囲が有利である。上記紡糸装置において、必要に応じてノズル下部に加湿加熱筒を設けても良い。尚、繊維径は、ノズルからの吐出量と紡糸機下部に設置された高速巻き取り装置の巻き取り速度を変えることにより調整される。
【0027】
第2工程は、前記溶融紡糸の他に、前記第1工程で得られた前駆体ポリマーを、例えばベンゼン、トルエン、キシレンあるいはその他前駆体ポリマーを溶融することのできる溶媒に溶解させ、紡糸原液を造り、場合によってはこれをろ過してマクロゲル、不純物等紡糸に際して有害な物質を除去した後、前記紡糸原液を通常用いられる合成繊維紡糸装置により乾式紡糸法により紡糸し、巻き取り速度を制御して目的とする繊維を得ることができる。
【0028】
これらの紡糸工程において、必要ならば、紡糸装置に紡糸筒を取り付け、その筒内の雰囲気を前記溶媒のうち少なくとも1つの気体との混合雰囲気とするか、或いは空気、不活性ガス、熱空気、熱不活性ガス、スチーム、アンモニアガス、炭化水素ガス、有機ケイ素化合物ガスの雰囲気とすることにより、紡糸筒中の繊維の固化を制御することができる。
【0029】
第3工程においては、前記紡糸繊維を酸化雰囲気中で、張力または無張力の作用の下で予備加熱を行い、前記紡糸繊維の不融化を行う。この工程は、後工程の焼成の際に繊維が溶融せず、且つ隣接繊維と接着しないことを目的として行うものである。処理温度並びに処理時間は、組成により異なり、特に規定しないが、一般に50〜400℃の範囲内で、数時間〜30時間の処理上条件が選択される。また、上記酸化雰囲気中には、水分、窒素酸化物、オゾン等、紡糸繊維の酸化力を高めるものが含まれていても良く、酸素分圧を意図的に変えても良い。
【0030】
ところで、原料中に含まれる低分子量物の割合によっては、紡糸繊維の軟化温度が50℃を下回る場合もあり、その場合は、あらかじめ上記処理温度よりも低い温度で、繊維表面の酸化を促進する処理を施す場合もある。尚、同第3工程並びに第2工程の際に、原料中に含まれている低分子量化合物の繊維表面へのブリードアウトが進行し、目的とする傾斜組成の下地が形成されるものと考えている。
【0031】
第4工程においては、前記不融化した繊維を、張力または無張力下で、500〜1800℃の温度範囲で酸化雰囲気中において焼成し、目的とする、シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)との複合酸化物相からなり、表層に向かって第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が傾斜的に増大するシリカ基複合酸化物繊維を得る。この工程において、不融化繊維中に含まれる有機物成分は基本的には酸化されるが、選択する条件によっては、炭素や炭化物として繊維中に残存する場合もある。このような状態でも、目的とする機能に支障を来さない場合はそのまま使用されるが、支障を来す場合は、更なる酸化処理が施される。その際、目的とする傾斜組成並びに結晶構造に問題が生じない温度、処理時間が選択されなければならない。
【0032】
本発明においては、上記製法により得られた光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維を短繊維にした後、ニードルパンチを行うことにより不織布とする。不織布の目付けや厚みについては特に限定は無いが通常、目付けが50〜500g/m、厚みが0.5〜20mmのものが用いられるが、必要に応じてこの不織布を必要な厚みになるように積層しても良い。
【0033】
また、本発明のシリカ基複合酸化物繊維の不織布は、メルトブロー法を用いて、前記前駆体ポリマーを溶融し、溶融物を紡糸ノズルから吐出すると共に、前記紡糸ノズルの周囲から加熱窒素ガスを噴出させて紡糸し、紡糸ノズルの下部に配置した受器に紡糸繊維を捕集することにより不織布を形成させ、次いで、該不織布を不融化処理後、酸化雰囲気中で焼成することにより製造することができる。
【0034】
紡糸ノズルの直径は通常100〜500μm程度のものを用いる。窒素ガス噴出速度は30〜300m/sの程度であり、速度が速いほど細い繊維が得られる。また、窒素ガスの加熱温度は、所望の紡糸繊維が得られれば、特に制限はないが、通常500℃程度に加熱した窒素ガスを噴出させる。従来、一般的なメルトブロー法では、噴出ガスとして空気が用いられているが、前記前駆体ポリマーを紡糸するには窒素を用いる必要がある。噴出ガスとして窒素を用いることにより、安定して紡糸を行うことができる。
【0035】
また、前記前駆体ポリマーを紡糸し、紡糸ノズルの下部に配置した受器に紡糸繊維を捕集する際、吸引可能な受器を用いて、受器の下側から吸引しながら行うことが好ましい。吸引することにより、繊維が効果的にからまり、高強度の不織布が得られる。吸引速度は2〜10m/s程度の範囲が好ましい。
【0036】
次に、得られた不織布に上記溶融紡糸の場合と同様の不融化処理及び焼成を行うことにより、本発明のシリカ基複合酸化物繊維の不織布が得られる。上記メルトブロー法により製造されるシリカ基複合酸化物繊維は、平均繊維径が1〜20μm、好ましくは、1〜8μm、より好ましくは、2〜6μmと、溶融紡糸法で製造される繊維に比べてより細いものとすることができる。これにより、繊維の表面積も大きくでき、触媒活性が増大する。また、メルトブロー法により製造される不織布は、溶融紡糸法で製造された長さ40〜50μm程度の短繊維をニードルパンチ法で不織布としたものに比べて、繊維が長いものとなる。その結果、不織布は強度が高く(引張強度2N以上)、フィルター等に加工する際に、十分なプリーツ加工性を有する。
【0037】
次いで、上記により得られた不織布を所望の形状に成形することにより、反応容器内に着脱可能である光触媒カートリッジが得られる。成形方法については、特に制限はないが例えばステンレス製の金網等をサポート材として特定形状物に成形することができる。
【0038】
本発明の浄化装置及び光カートリッジを図1〜図3に基づいて説明する。図1に示すように、反応容器2内に着脱自在である光カートリッジ1が収納される。光カートリッジ1は、円盤状成形物5が連結部材6により間隔を設けてそれぞれがほぼ平行となるように複数段にわたり連結されたものである。円盤状成形物と反応容器内周面とは、摺動可能な状態で密着している。円盤状成形物としては、通常金網等のサポート材9の両面に不織布を配置したものが使用される。円盤状成形物には処理流体通過用の開口部が設けられる。多段に連結された円盤状成形物の開口部は、一段ごとに好ましくは180°異なる位置となるように、円盤状成形物5を連結部材6に配置する。なお、本発明において、円盤状成形物は、単に円状のみを意味せず、楕円状でも多角形状であるものをも包含する。反応容器の形状に沿った形状であればよい。反応容器2の蓋部又は底部を開閉自在とし、光カートリッジ1を着脱自在とする。反応容器2の外周部に沿って活性光線照射器3、例えば紫外線ランプを設置する。反応容器2の入り口7から送入された流体は初段目の円盤状成形物5の下面と接触した後、開口部を経て初段目と2段目の円盤状成形物に接触し、ついで2段目の円盤状成形物に設けられた開口部を経て2段目と3段目の空間に到達し、初段目と同じように有害物質の分解処理が実施される。これらの段階を複数段階経て、処理流体は出口8から排出される。図1の上段は、A,A’面における断面図を示している。円盤状成形物に設けられる開口部の該成形物に対する割合は、流体の性質等により適宜変更される。通常好ましくは5から30%程度である。
【0039】
図2は反応容器2の中央部に紫外線ランプ3を設けた浄化装置及び光触媒カートリッジを示す。この場合、円盤状成形物の中央部に孔を設け、この孔に紫外線ランプ3を設置している。図2の上段はA,A’面における断面図を示している。
【0040】
図3は反応容器2の内部に4個の紫外線ランプ3を設けた浄化装置及び光触媒カートリッジを示す。図3の上段はA,A’面における断面図を示している。
【0041】
上記したように、紫外線ランプ3は、反応容器の外周部あるいは内部に1乃至複数個必要に応じて設置することができる。また、光触媒カートリッジは、連結部材に円盤状成形物を固定し、連結部材と共に反応容器から脱着してもよく、あるいは円盤状成形物を連結部材の所定位置に取り付け、円盤状成形物のみを連結部材から脱着自在とすることもできる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0043】
参考例1
5リットルの三口フラスコに無水トルエン2.5リットルと金属ナトリウム400gとを入れ窒素ガス気流下でトルエンの沸点まで加熱し、ジメチルジクロロシラン1リットルを1時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間加熱還流し沈殿物を生成させた。この沈殿をろ過し、まずメタノールで洗浄した後、水で洗浄して、白色粉末のポリジメチルシラン420gを得た。
【0044】
ポリジメチルシラン250gを水冷還流器を備えた三口フラスコ中に仕込み、窒素気流下、420℃で30時間加熱反応させて数平均分子量が1200のポリカルボシランを得た。
【0045】
実施例1
参考例1の方法により合成されたポリカルボシラン16gにトルエン100gとテトラブトキシチタン64gを加え、100℃で1時間予備加熱させた後、150℃までゆっくり昇温してトルエンを留去させてそのまま5時間反応させ、更に250℃まで昇温して5時間反応して変性ポリカルボシランを合成した。この変性ポリカルボシランに意図的に低分子量の有機金属化合物を共存させる目的で5gのテトラブトキシチタンを加えて、変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物を得た。
【0046】
この変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物をトルエンに溶解させたのちガラス製の紡糸装置に仕込み、内部を十分に窒素置換してから昇温してトルエンを留去させて、180℃でメルトブロー紡糸を行った。
【0047】
紡糸繊維を、空気中、段階的に150℃まで加熱し不融化させた後、1200℃の空気中で1時間焼成を行いチタニア/シリカ繊維の不織布を得た。
【0048】
このチタニア/シリカ繊維不織布をステンレス製の金網(線径1mm、3メッシュ)をサポート材(9)として直径180mmで、一部に切りかきによる開口部(開口部の割合:25%)をつけ、さらに中央部に直径30mmの穴を1個あけた中空円盤形状物に成形し、光触媒カートリッジ(1)を作成した。これを図2に示すように反応容器(2)に設置した。このとき光触媒カートリッジの設置は、各光触媒カートリッジを180°づつ向きを変えて設置した。図2において、反応容器の寸法は特に限定されるものではないが、本実施例では内径180mm、高さ600mmとした。この反応容器の材質は、処理流体に成分が溶出しない物質が望ましい。本実施例の場合はステンレスを用いた。この反応容器の中心部に60Wの紫外線ランプ(3)を1本配置してある。この紫外線ランプ(3)は、紫外線を透過し、且つ処理流体中に成分が溶出しない物質でできた直径30mmの保護管に挿入されている。本実施例では、透明石英製の保護管を用いた。光触媒カートリッジ(1)は、反応容器(2)内周面および保護管と密着した構造となっている。紫外線を照射しながら、反応容器入口(7)から300ppbのトリクロロメタンを含む水を0.3m/sの流速で流した。反応容器出口(8)の水をサンプリングしてトリクロロメタンを分析した結果、1ppb以下であった。
【0049】
比較例1
実施例1に記載の方法で得られたチタニア/シリカ繊維不織布を、特許第3436267号の実施例1に記載の方法により、直径180mm、高さ90mmで中央部に直径30mmの穴を開けた中空円錐台形状物に成形し、光触媒カートリッジとした。この光触媒カートリッジを実施例1と同寸法、同材質の反応容器に多段で設置し、紫外線を照射しながら、反応容器入口から300ppbのトリクロロメタンを含む水を0.3m/sの流速でながした。反応容器出口の水をサンプリングしてトリクロロメタンを分析した結果、120ppbと実施例1の場合と比較して浄化能力は著しく低かった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の浄化装置及び光触媒カートリッジを示す図面である。
【図2】本発明の浄化装置及び光触媒カートリッジの他の例を示す図面である。
【図3】本発明の浄化装置及び光触媒カートリッジの他の例を示す図面である。
【符号の説明】
【0051】
1 光触媒カートリッジ
2 反応容器
3 紫外線ランプ
5 円盤状成形物
6 連結部材
7 流体入り口
8 流体出口
9 円盤状成形物のサポート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)とからなる繊維であって、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大している、光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布を円盤状に成形した成形物が、活性光線照射器を備えた反応容器内に設置されていることを特徴とする光触媒による処理流体の浄化装置。
【請求項2】
少なくとも2個の円盤状成形物が、開口部が設けられ、該開口部を通過した処理流体が、下流側円盤状成形物と逐次接触するように反応容器内に直列に設置されていることを特徴とする請求項1記載の浄化装置。
【請求項3】
活性光線照射器が、反応容器の外側及び/又は内側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の浄化装置。
【請求項4】
シリカ成分を主体とする酸化物相(第1相)とTiを含む金属酸化物相(第2相)とからなる繊維であって、第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合が繊維の表層に向かって傾斜的に増大している、光触媒機能を有するシリカ基複合酸化物繊維の不織布を円盤状に成形した複数個の成形物が、反応容器内に着脱可能となるように配置されていることを特徴とする光触媒カートリッジ。
【請求項5】
円盤状成形物が、楕円状又は多角形状成形物である請求項4記載の光触媒カートリッジ。
【請求項6】
円盤状成形物が、直列状に反応容器内に配置されていることを特徴とする請求項4記載の光触媒カートリッジ。
【請求項7】
円盤状成形物が、開口部が設けられ、該開口部を通過した処理粒体が下流側円盤状成形物と逐次接触するように、該円盤状成形物が多段に配置されていることを特徴とする請求項4記載の光触媒カートリッジ。
【請求項8】
円盤状成形物が、開口部及び少なくとも1個の孔部を有し、該孔部に活性光線照射器が配置できるように該円盤状成形物が多段に配置されていることを特徴とする請求項4記載の光触媒カートリッジ。
【請求項9】
繊維全体に対する第1相の存在割合が98〜40重量%、第2相の存在割合が2〜60重量%であることを特徴とする請求項4記載の光触媒カートリッジ。
【請求項10】
第2相を構成する金属酸化物のTiの存在割合の傾斜が、繊維表面から5〜500nmの深さで存在することを特徴とする請求項4記載の光触媒カートリッジ。
【請求項11】
第2相の金属酸化物がチタニアであり、その結晶粒径が15nm以下であることを特徴とする請求項4記載の光触媒カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−326043(P2007−326043A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159487(P2006−159487)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】