説明

浄化装置

【課題】フィルタの早期の目詰まりを防止してフィルタの交換回数を削減したうえで、洗浄液や研削液等の被処理液に混在する不純物を効率的に除去するとともに、劣化した被処理液の廃棄を容易に行うことのできる浄化装置を提供する。
【解決手段】被処理液に混在する不純物を除去し、不純物が除去された被処理液を工作機械120に送出する浄化装置10において、工作機械120から落下する被処理液を貯留して被処理液に混在する不純物を沈殿させて被処理液を排出する沈殿漕11、沈殿漕11から排出される被処理液を濾過するフィルタ14cを有して被処理液を排出する濾過槽14、濾過槽14から排出される被処理液を被処理液と被処理液に混在する不純物とに分離して貯留する貯水槽20、貯水槽20に貯留された被処理液を吸入して工作機械120に送出する第1導液管50、貯水槽20に貯留された被処理液に浮遊する半固化状態の不純物を貯水槽20から付着させて搬出するフロートメッシュコンベア40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化装置、特に、加工機械等で使用された被処理液に混在する不純物を除去する浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工機械、例えば、バリ取り装置による金属被加工物のバリ取り加工に使用される洗浄液には、切粉、防錆油、研磨材剥離物等の種々の不純物が混在しているので、浄化装置によって不純物が除去されたうえで、再度、バリ取り装置用の洗浄液として使用される。しかし、洗浄液を繰り返し使用することにより洗浄液が劣化すると、浄化装置によっても洗浄液に混在する不純物を除去しきれなくなる。かかる洗浄液をバリ取り装置に使用すると、バリ取り加工後の製品の仕上げの品質に影響を及ぼすことになる。従って、劣化した洗浄液は、浄化装置から注出されて廃棄される。加工機械に再度使用される洗浄液や研削液等の被処理液を浄化する技術が、種々提案されている。
【0003】
図6は、浄化された被処理液をバリ取り装置に再度送り出す浄化装置の概略を説明する図である。図示のように、浄化装置100は、上流側から下流側へ向かって、バリ取り装置101の下部に配置される第1貯水槽102、第1貯水槽102から被処理液を吸い出すポンプ103a、ポンプ103aから送り出される被処理液を濾過する濾過媒体、例えばフィルタ104aを有する濾過槽104、濾過槽104で濾過された被処理液を温めるヒータ105aを有する第2貯水槽105、第2貯水槽105から被処理液を吸い出して、再度バリ取り装置101に送り出すポンプ103bを順次備える。
【0004】
第1貯水槽102から送り出された不純物が混在する被処理液は、濾過槽104のフィルタ104aによって微細な切粉や研磨剤等の不純物が除去されて、第2貯水槽105に送り出される。そして、第2貯水槽105のヒータ105aによって被処理液が温められて、再度、バリ取り装置101に送り出されてバリ取り加工の際の被処理液として使用される。
【0005】
繰り返しの使用によって劣化した被処理液は、第1貯水槽102の底部に設けられた排水口から排出されて、図示しない油水分離機によって油分と水分とに分離されて、それぞれ廃棄処理がなされる。
【0006】
他の例として、特許文献1において、浄化槽内で被処理液を循環させて不純物を除去する浄化装置が提案されている。この特許文献1で開示される浄化装置を、図7に基づいて説明する。
【0007】
図示のように、浄化装置110は、区分板112a〜112dによって、複数の浄化室である第1浄化室111a〜第5浄化室111eに区分された浄化槽111、導液路111gを介して浄化槽111の第5浄化室111eに形成された溢出口111fと連結されるとともに区分板115によって第1貯留室116a及び第2貯留室116bに区分された貯留槽116を備える。
【0008】
浄化槽111の第1浄化室111aには、図示しない加工機械から被処理液が供給される供給ホース117が設置されており、被処理液の循環流路の最上流部分を構成する。そして、区分板112a、112b及び112cの上方部分は、それぞれ略矩形に切り欠かれて、第1浄化室111aと第2浄化室111bとが連通し、第2浄化室111bと第3浄化室111cとが連通し、第3浄化室111cと第4浄化室111dとが連通する。また、区分板112dの通液穴を介して第4浄化室111dと最下流部分である第5浄化室111eとが連通する。そして、区画板112a、112b、112cの切欠部分に不純物を濾過する濾過媒体として機能する網113が張設されている。
【0009】
区分板112a〜112cにおける上流側面には、網113を囲んで平面視略矩形で下方部分に図示しない開口部が形成された導液板114a〜114cが取り付けられており、導液板114aが第1浄化室111a内に突出し、導液板114bが第2浄化室111b内に突出し、導液板114cが第3浄化室111c内に突出する。
【0010】
供給ホース117から第1浄化室111aに注入された被処理液は、上下に蛇行しながら導液板114aに形成された開口部から区分板112aに張設された網113を通過し、順次、第2浄化室111b及び第3浄化室111cを通過する。この間に、被処理液に混在する不純物のうち質量比重の大きな不純物が漸次沈殿するとともに、網113を通過することで、質量比重の小さな不純物が濾過される。第4浄化室111dから第5浄化室111eに流入した被処理液は、溢出口111fから導液路111gを介して第1貯留室116aに流入した後、区分板115の通液穴を介して第2貯留室116bに流入する。
【0011】
この間に、被処理液に残留する不純物が第1貯留室116a及び第2貯留室116bにおいて沈殿する。その後、第2貯留室116bに貯留された被処理液は、ポンプによって図示しない加工機械に送り出されて、被処理液の再使用が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開平7−7713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記浄化装置100によると、被処理液に混在する切粉、防錆油、研磨材剥離物等、種々の質量比重、大きさの異なる不純物をフィルタ104aで濾過するので、比較的早期にフィルタ104aの目詰まりが発生する可能性がある。従って、フィルタ104aの交換回数が増大することにより、フィルタ104aの交換作業及びフィルタ104aのコストの増大が懸念される。また、劣化した被処理液を浄化装置100から排出させて、油水分離機で油分と水分とに分離したうえでそれぞれ廃棄処理を行うことにより、被処理液の廃棄処理作業が複雑化するとともに廃棄処理コストが増大することが懸念される。
【0014】
上記特許文献1で開示された浄化装置110によると、被処理液に混在する切粉、防錆油、研磨材剥離物等、種々の質量比重や大きさの異なる不純物を網113で濾過するので、浄化装置100と同様に、比較的早期に網113の目詰まりが発生する可能性がある。従って、網113の交換回数が増大することにより、網113の交換作業及び網113のコストが増大するという浄化装置100と同様の課題が残されている。
【0015】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、濾過媒体の早期の目詰まりを防止して濾過媒体の交換回数を削減したうえで、洗浄液や研削液等の被処理液に混在する不純物を効率的に除去するとともに、劣化した被処理液の廃棄を容易に行うことのできる浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明による浄化装置は、工作機械による金属被加工物の加工に使用される被処理液に混在する不純物を除去し、該不純物が除去された前記被処理液を前記工作機械に送出する浄化装置において、前記工作機械からの前記被処理液を貯留して該被処理液に混在する前記不純物を沈殿させて前記被処理液を排出する沈殿漕と、該沈殿漕から排出される前記被処理液を濾過する濾過媒体を有して前記被処理液を排出する濾過槽と、該濾過槽から排出される前記被処理液を該被処理液と該被処理液に混在する不純物とに分離して貯留する貯水槽と、該貯水槽に貯留された前記被処理液を吸入して前記工作機械に送出する被処理液送出部と、前記貯水槽に貯留された前記被処理液上に浮遊する半固化状態の不純物を前記貯水槽から付着させて搬出する不純物搬出手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、金属被加工物の加工に使用された被処理液に混在する不純物が沈殿槽に沈殿するとともに、この被処理液が濾過槽に排出されて濾過される。従って、被処理液が濾過槽の濾過媒体を通過する際には、不純物が沈殿槽において予めある程度は除去されているので、濾過媒体によって濾過される不純物を減少させることができ、濾過媒体の目詰まりを低減させることが可能となる。その結果、濾過媒体の交換回数が削減されるので、濾過媒体の交換作業及び交換コストを削減することができる。
【0018】
また、劣化した被処理液を廃棄する場合は、貯水槽に貯留された被処理液に混在する不純物が不純物搬出手段によって貯水槽から搬出されるので、廃棄の際に被処理液と不純物とを改めて分離する必要がなく、被処理液の廃棄作業及び廃棄コストを削減することができる。更に、貯水槽に貯留する被処理液から不純物が除去されたうえで加工機械に浄化後の被処理液が送出されるので、被処理液による金属被加工物の処理効果の低減が抑制されるとともに、被処理液の劣化の進行を緩和することができる。また、半固化状態の不純物を付着させて搬出する簡易な構成で不純物搬出手段を構成することができるので、製造コストの抑制及び故障の可能性を抑制することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明による浄化装置は、請求項1に記載の浄化装置において、前記沈殿槽は、周面及び底面を有して上方が開放されて形成され、前記底面が湾曲して前記底面の端部から下方に突出する沈殿物堆積部と、前記周面の上端縁に前記濾過槽に連通する流出口と、を備えることを特徴とする。
【0020】
この発明は、請求項1の沈殿槽の内容を具体的に明らかにしたものであり、加工機械から落下する被処理液に混在する不純物が沈殿槽において沈殿して、この不純物が沈殿物堆積部に堆積されたうえで、被処理液が濾過槽に排出される。従って、濾過媒体によって濾過される不純物を減少させることができるので、濾過媒体の交換作業及び交換コストを削減するという請求項1の目的を効率的に達成することができる。
【0021】
請求項3に記載の発明による浄化装置は、請求項1または2に記載の浄化装置において、前記不純物搬出手段によって前記貯水槽から搬出される不純物を加温して液状化して前記不純物搬出手段から落下せしめて貯留する油除去槽を備えることを特徴とする。
【0022】
この発明によると、不純物搬出手段によって貯水槽から搬出される不純物を加温して液状化して不純物搬出手段から落下せしめることから、油除去槽にヒータ等の加熱装置を付加する簡単な構成で不純物搬出手段から不純物を効率的に搬出することができる。
【0023】
請求項4に記載の発明による浄化装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浄化装置において、前記被処理液送出部によって前記被処理液が前記工作機械に送出された前記貯水槽に新たな被処理液を供給する被処理液供給機構を備えることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、被処理液送出部によって被処理液が前記工作機械に送出されて貯水槽に貯留される被処理液の貯水量が減少すると、被処理液供給機構によって貯水槽に新たな被処理液が供給されて、被処理液の貯水量が維持される。従って、水位の低下によって、貯水槽において被処理液と被処理液に混在する不純物とに分離されて貯留された被処理液が、再び混在してしまうことが防止される。その結果、被処理液送出部によって工作機械に被処理液が送出される際に、被処理液に不純物が混在することが防止される。
【0025】
請求項5に記載の発明による浄化装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の浄化装置において、前記被処理液送出部から分岐して、前記貯水槽から吸入された前記被処理液を冷却して前記貯水槽に供給する被処理液還流部を備えることを特徴とする。
【0026】
この発明によると、不純物が冷却によって固化または半固化する場合は、貯水槽から吸入された被処理液を冷却して貯水槽に供給することで、不純物が固化または半固化されるので、不純物を不純物搬出手段によって貯水槽から搬出する際に、この不純物を効率的に搬出することができる。また、不純物が固化または半固化されることによって、貯水槽に貯留する被処理液に混在する不純物の除去効率が向上する。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、金属被加工物の加工に使用された被処理液に混在する不純物が沈殿槽に沈殿するとともに、この被処理液が濾過槽に排出されて濾過される。従って、被処理液が濾過槽の濾過媒体を通過する際には、不純物が沈殿槽において予めある程度は除去されているので、濾過媒体によって濾過される不純物を減少させることができ、濾過媒体の目詰まりを低減させることが可能となる。その結果、濾過媒体の交換回数が削減されるので、濾過媒体の交換作業及び交換コストを削減することができる。
【0028】
また、劣化した被処理液を廃棄する場合は、貯水槽に貯留された被処理液に混在する不純物が不純物搬出手段によって貯水槽から搬出されるので、廃棄の際に被処理液と不純物とを改めて分離する必要がなく、被処理液の廃棄作業及び廃棄コストを削減することができる。更に、貯水槽に貯留する被処理液から不純物が除去されたうえで加工機械に浄化後の被処理液が送出されるので、被処理液による金属被加工物の処理効果の低減が抑制されるとともに、被処理液の劣化の進行を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施の形態における浄化装置の概略を説明する図である。
【図2】同じく、本実施の形態における沈殿槽の概略を説明する図である。
【図3】同じく、本実施の形態の浄化装置による洗浄液の浄化及び循環の概略を説明するブロック図である。
【図4】同じく、本実施の形態の浄化装置において、貯水槽の水位が低下した場合の概略を説明する図である。
【図5】同じく、本実施の形態の沈殿物堆積部の下部に受け皿が配置された状態を説明する図である。
【図6】従来の浄化装置の概略を説明する図である。
【図7】同じく、従来の浄化装置の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施の形態について、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本実施の形態における浄化装置の概略を説明する図であり、図2は、本実施の形態における沈殿槽の概略を説明する図である。なお、本実施の形態において、加工機械がバリ取り装置、被処理液が洗浄液である場合を例として説明する。
【0031】
図1で示すように、浄化装置10は、上流側から下流側へ向かって、バリ取り装置120の下方に配置される沈殿槽11及び濾過槽14、これら沈殿槽11及び濾過槽14の下方に配置される貯水槽20、貯水槽20から洗浄液Wを吸い出してバリ取り装置120へ洗浄液Wを再度送出する第1導液管50を順次備える。また、貯水槽20と隣接して油除去槽30が配置され、貯水槽20と油除去槽30との間にフロートメッシュコンベア40が跨設される。これら沈殿槽11及び濾過槽14、貯水槽20、第1導液管50、油除去槽30、不純物搬出手段となるフロートメッシュコンベア40によって、浄化装置10の主要部分が構成される。
【0032】
図2で示すように、沈殿槽11は、前面11A及び後面11B及び第1側面11C、第2側面11D、底面11Eを有して上方が開放されたボックス状に形成される。第1側面11Cは、前面11Aから後面11B側に移行するに従って下部11Cbが下方に湾曲して形成されるとともに、後面11B側において更に下方に突出する第1凸部11Ccが形成される。そして、第1側面11Cの上部11Caには、後面11B側において側面視略凹状に切り欠いて形成された流出口12が形成される。第2側面11Dは、前面11Aから後面11B側に移行するに従って下部11Dbが下方に湾曲して形成されるとともに、後面11B側において更に下方に突出する第2凸部11Dcが形成される。
【0033】
底面11Eは、下方に湾曲して形成された第1側面11Cの下部11Cb及び第1側面11Cと同様に下方に湾曲して形成された第2側面11Dの下部11Dbに沿って下方に湾曲して形成される。そして、第1側面11Cの第1凸部11Ccにおける前面11A側の端縁と第2側面11Dの第2凸部11Dcにおける前面11A側の端縁との間に連続し、かつ底面11Eから連続する第3凸部11Eaが形成される。
【0034】
これら第1凸部11Ccの下端縁、第2凸部11Dcの下端縁、第3凸部11Eaの下端縁及び後面11Bの下部11Baの下端縁によって沈殿物排出口13aが形成され、この沈殿物排出口13aを開放及び閉鎖する底蓋13bが沈殿物排出口13aの一端に揺動自在に取り付けられて、沈殿物堆積部13が形成される。
【0035】
再び図1を参照して説明する。図示のように、濾過槽14は、上面、底面及び両側面を有して略矩形のボックス状に形成される。この濾過槽14は、濾過媒体となるフィルタ14cによって第1濾過槽14a及び第2濾過槽14bに区分され、第2濾過槽14bの底面には、供給口14dが開口形成されている。そして、一方の側面において沈殿槽11の第1側面11Cと連結されるとともに、この側面に、第1側面11Cに形成された流出口12と連通する図示しない流入口が形成される。
【0036】
貯水槽20は、側面20a及び底面20bを有して上方が開放されたボックス状に形成され、底面20bにおける貯水槽20の内部側には、ポンプ21が配設される。また、側面20aには、電磁開閉弁22が取り付けられた取水ホース23aを介して、洗浄液Wを貯留する供給装置23が連結されて、この電磁弁22、供給装置23、取水ホース23aによって被処理液供給機構が構成される。更に、貯水槽20の下部には、第1ドレン24が形成される。
【0037】
貯水槽20のポンプ21には、第1導液管50の一端が連結されるとともに、後述する第2導液管60に切り換える電磁弁51を介在して第1導液管50の他端がバリ取り装置120に連結されて、このポンプ21と第1導液管50とによって、被処理液送出部が構成される。電磁弁51からは第2導液管60が分岐され、冷却装置52を経由して貯水槽20に連結されて、この電磁弁51、冷却装置52、第2導液管60によって、被処理液還流部が構成される。
【0038】
油除去槽30は、側面及び底面を有して上方が開放されたボックス状に形成され、一方の側面において貯水槽20の側面に連結される。油除去槽30の他方の側面における油除去槽30の内部側には、ヒータ31が取り付けられている。また、油除去槽30の下部には、第2ドレン32が形成される。
【0039】
不純物搬出手段となるフロートメッシュコンベア40は、油除去槽30の対向する側面に上下方向に対称的に形成された図示しないガイド溝に上下移動可能に係合する移動ローラ40a、移動ローラ40aの上部であって油除去槽30の対向する側面間に架設されて図示しないモータによって回転駆動される第1固定ローラ40b、第1固定ローラ40bと水平方向で隣接して油除去槽30の対向する側面間に架設される第2固定ローラ40c、貯水槽20の対向する側面20aに上下方向に対称的に形成された図示しない第1ガイド溝に上下移動可能に係合する第1浮動ローラ40d、第1浮動ローラ40dと水平方向でかつ油除去槽30から離間する方向において、貯水槽20の対向する側面20aに上下方向に対称的に形成された図示しない第2ガイド溝に上下移動可能に係合する第2浮動ローラ40eを備える。
【0040】
更に、第1浮動ローラ40dと対峙し、かつ第1浮動ローラ40dと共に上下動する補助浮動ローラ41a、及び、油除去槽30の対向する側面間に架設されて第1固定ローラ40bと対峙する第1補助ローラ41b、第1補助ローラ41bと水平方向で隣接して油除去槽30の対向する側面間に架設されて第2固定ローラ40cと対峙する第2補助ローラ41cを備える。
【0041】
移動ローラ40aから第1固定ローラ40b及び第2固定ローラ40c、補助浮動ローラ41aに誘導されて第2浮動ローラ40eに巻回して、第1浮動ローラ40d、第2補助ローラ41c、第1補助ローラ41bに誘導されて移動ローラ40aに至る無端帯状で金属メッシュによって形成されたメッシュコンベアベルト42が張設される。
【0042】
かかる構成を有するフロートメッシュコンベア40は、洗浄液Wが貯留された貯水槽20においては、洗浄液Wの水面にフロート状態で配置され、洗浄液Wの水位の変動によって移動ローラ40a及び第1浮動ローラ40b、第2浮動ローラ40cが、それぞれガイド溝、第1ガイド溝及び第2ガイド溝に沿って移動するので、フロートメッシュコンベア40が水位変動に追従する。このフロートメッシュコンベア40には、図示しない水位変動検知センサが設けられており、予め定められた設定下限水位または設定上限水位に到達すると、水位変動検知センサから制御信号が送られて、電磁開閉弁22が開放または閉鎖されるように制御されている。
【0043】
次に、本実施の形態に係る浄化装置10による洗浄液の浄化及び循環について、図1及び図3〜図5を用いて説明する。図3は、本実施の形態の浄化装置による洗浄液の浄化及び循環の概略を説明するブロック図であり、図4は、本実施の形態の浄化装置において、貯水槽の水位が低下した場合の概略を説明する図であり、図5は、本実施の形態の沈殿物堆積部の下部に受け皿が配置された状態を説明する図である。
【0044】
図1及び図3で示すように、バリ取り装置120によって金属被加工物(図示しない)が加工された後の洗浄液Wが、沈殿槽11の底面11Eに自由落下して、沈殿槽11に貯留される。洗浄液W中に混在する研磨材剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等は沈殿槽11内において沈殿して、沈殿槽11に貯水された洗浄液Wの上層部分、すなわち上澄みは、沈殿槽11の限界貯水量を超えると、沈殿槽11の流出口12から流出して、濾過槽14の第1濾過室14aに流入する。
【0045】
一方、沈殿槽11の底面11Eは、沈殿槽11の後面11Bに向かうに従って漸次下方に湾曲する形状に形成されているので、沈殿槽11内において沈殿した研磨剤剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等は、底面11Eに沿って沈殿物堆積部13に滑り落ちて堆積される。
【0046】
第1濾過室14aに流入した洗浄液Wは、フィルタ14cを通過することによって、洗浄液Wに混在する微細な切粉等が除去される。そして、微細な切粉等が除去された防錆油Oの混在する洗浄液Wが第2濾過室14bに流入して、第2濾過室14bに形成された供給口14dから貯水槽20に自由落下し、防錆油Oの混在する洗浄液Wが貯水槽20に貯留される。
【0047】
貯水槽20に貯留された洗浄液Wは、洗浄液Wと防錆油Oとが分離されて、防錆油Oが洗浄液Wの水面に浮遊する。そして、貯水槽20の底面20bに設けられたポンプ21によって、防錆油が分離除去された洗浄液Wが吸い上げられて第1導液管50を通過して、バリ取り装置120に送出される。バリ取り装置120に送出された浄化後の洗浄液Wは、再度、バリ取り加工後の金属被加工物の洗浄液Wとして使用される。
【0048】
貯水槽20に貯水される洗浄液Wの水面の水位が、例えば図4にhで示すように、フロートメッシュコンベア40の水位変動検知センサの設定下限水位を下回ると、電磁開閉弁22が作動されて弁が開放され、水位が水位変動検知センサの設定上限水位に到達するまで、矢線Aで示すように、取水ホース23aを介して供給装置23から貯水槽20に洗浄液Wが供給される。
【0049】
一方、貯水槽20に貯留された洗浄液Wの水面に浮遊する防錆油Oを除去する場合は、貯水槽20に設けられたポンプ21によって吸い上げられた洗浄液Wを、第1導液管50に設けられた電磁弁51において第2導液管60に誘導して、冷却装置52によって冷却させる。冷却された洗浄液Wは、第2導液管60によって貯水槽20に排出される。これにより、貯水槽20に浮遊する防錆油Oの温度が低下して、防錆油Oが半固化(ゲル状化)される。
【0050】
半固化(ゲル状化)された防錆油Oは、貯水槽20に貯留された洗浄液Wの水面にフロート状態で配置されるフロートメッシュコンベア40に付着するので、第1固定ローラ40bの順送り方向への回転によりメッシュコンベアベルト42が回転駆動されて、防錆油Oが油除去槽30へ搬出される。油除去槽30へ搬出された防錆油Oは、油除去槽30の他方の側面に設けられたヒータ31によって温められて再び液状化状態とされ、防錆油Oの付着したメッシュコンベアベルト42が移動ローラ40a近傍に到達すると、防錆油Oはその自重によって油除去槽30内に自由落下して、油除去槽30に堆積される。従って、メッシュコンベアベルト42に付着して搬送された防錆油Oを加熱する簡単な構成で防錆油O等をメッシュコンベアベルト42から効率的に分離して搬出できる。
【0051】
沈殿槽11の沈殿物堆積部13に堆積された研磨剤剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等は、図5で示すように、沈殿物堆積部13の沈殿物排出口13aの下方に、底面70aが網状に形成された受け皿70が配置されたうえで、沈殿物堆積部13の底蓋13bが開放されて、水分が受け皿70の底面70aを通過して貯水槽20内に落下するとともに研磨剤剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等の不純物が受け皿70内に自由落下して、これらの不純物が廃棄される。また、油除去槽30に堆積された防錆油Oは、油除去槽30に形成された第2ドレン32から排出されて廃棄される。
【0052】
以上のような構成とすることにより、バリ取り加工された金属被加工物を洗浄した後の洗浄液Wが沈殿槽11に自由落下し、洗浄液Wに混在する研磨剤剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等の不純物が沈殿物堆積部13に堆積され、これらの不純物が除去された洗浄液Wが濾過槽14のフィルタ14cを通過して、洗浄液Wに混在する微細な切粉等が除去される。従って、濾過槽14のフィルタ14cを通過する際には、研磨剤剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等の不純物が予め除去されているので、フィルタ14によって除去される不純物を減少させることができ、フィルタ14cの目詰まりを低減させることが可能となる。その結果、フィルタ14cの交換回数が削減されるので、フィルタ14cの交換作業及び交換コストを削減することができる。
【0053】
また、貯水槽20に貯留された洗浄液Wは、防錆油Oが分離されて、防錆油Oが洗浄液Wの水面に浮遊する。そして、バリ取り装置120に送出される洗浄液Wを冷却して貯水槽20に供給することで、洗浄液Wの水面に浮遊する防錆油Oが半固化(ゲル状化)され、半固化(ゲル状化)された防錆油Oがフロートメッシュコンベア40に付着して油除去槽30に搬送される。従って、貯水槽20から防錆油Oを除去したうえでバリ取り装置120に浄化後の洗浄液Wを送出するので、洗浄液Wによる金属被加工物の洗浄効果の低減を抑制するとともに、洗浄液Wの劣化の進行を緩和することができる。
【0054】
更に、劣化した洗浄液Wを廃棄する場合も、浄化装置10とは別個の油水分離機等によって洗浄液Wを水分と防錆油Oとに分離する必要がなく、浄化装置10によって容易に洗浄液Wを水分と防錆油Oとに分離することができるので、劣化した洗浄液の廃棄処理を容易に行うことができる。その結果、洗浄液Wの廃棄作業及び廃棄コストを削減することができる。
【0055】
また、貯水槽20に貯水される洗浄液Wがバリ取り装置120に送出されて洗浄液Wの水位が水位変動検知センサの設定下限水位を下回ると、電磁開閉弁22が作動されて弁が開放され、水位が水位変動検知センサの設定上限水位に到達するまで貯水槽20に洗浄液Wが供給されるので、水位の低下によって防錆油Oが洗浄液Wに再び混在することを防止して、バリ取り装置120に洗浄液Wを送出する際に、防錆油Oが混在した洗浄液Wを送出することを防止することができる。
【0056】
沈殿槽11の沈殿物堆積部13に堆積された研磨材剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等は、受け皿70によって浄化装置10から容易に除去することができるので、使用後の浄化装置10の清掃等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0057】
そして、半固化状態の不純物を付着させて搬出する簡易な構成で不純物搬出手段を構成することができるので、製造コストの抑制及び故障の可能性を抑制することができる。更に、浄化装置10内において洗浄液Wを循環させる際に、洗浄液Wを自由落下させる構造とすることで、加圧機等によって強制的に洗浄水Wを循環させる必要がない。従って、部品点数を抑制して簡易な構成とすることによって故障の可能性を低減させるとともに、浄化装置10の製造コストを抑制することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、沈殿槽11の沈殿物堆積部13に堆積された研磨材剥離物及び比較的質量比重の大きい切粉等の不純物を廃棄する際に、受け皿70を沈殿物堆積部13の沈殿物排出口13aに配置することを例として説明したが、受け皿70を浄化装置10に着脱自在に予め設置しておいてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 浄化装置
11 沈殿槽
11E 底面
12 流出口
13 沈殿物堆積部
13a 沈殿物排出口
14 濾過槽
14c フィルタ(濾過媒体)
20 貯水槽
21 ポンプ
22 電磁開閉弁
23 供給装置
30 油除去槽
31 ヒータ
40 フロートメッシュコンベア(不純物搬出手段)
42 メッシュコンベアベルト
50 第1導液管
51 電磁弁
52 冷却装置
60 第2導液管
70 受け皿
120 バリ取り装置
W 洗浄液
O 防錆油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械による金属被加工物の加工に使用される被処理液に混在する不純物を除去し、該不純物が除去された前記被処理液を前記工作機械に送出する浄化装置において、
前記工作機械からの前記被処理液を貯留して該被処理液に混在する前記不純物を沈殿させて前記被処理液を排出する沈殿漕と、
該沈殿漕から排出される前記被処理液を濾過する濾過媒体を有して前記被処理液を排出する濾過槽と、
該濾過槽から排出される前記被処理液を該被処理液と該被処理液に混在する不純物とに分離して貯留する貯水槽と、
該貯水槽に貯留された前記被処理液を吸入して前記工作機械に送出する被処理液送出部と、
前記貯水槽に貯留された前記被処理液上に浮遊する半固化状態の不純物を前記貯水槽から付着させて搬出する不純物搬出手段と、
を備えることを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
前記沈殿槽は、
周面及び底面を有して上方が開放されて形成され、
前記底面が湾曲して前記底面の端部から下方に突出する沈殿物堆積部と、
前記周面の上端縁に前記濾過槽に連通する流出口と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の浄化装置。
【請求項3】
前記不純物搬出手段によって前記貯水槽から搬出される不純物を加温して液状化して前記不純物搬出手段から落下せしめて貯留する油除去槽を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の浄化装置。
【請求項4】
前記被処理液送出部によって前記被処理液が前記工作機械に送出された前記貯水槽に新たな被処理液を供給する被処理液供給機構を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の浄化装置。
【請求項5】
前記被処理液送出部から分岐して、前記貯水槽から吸入された前記被処理液を冷却して前記貯水槽に供給する被処理液還流部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−73067(P2011−73067A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223826(P2009−223826)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】