説明

浄水カートリッジ

【課題】 カートリッジ内部に、水の流れる向きを変えるためのデッドスペースがなく、少ない部品点数で組み立てることができ、さらに、吸着剤や中空糸膜の充填空間を最大化することができ、コンパクトで高性能の浄水カートリッジを提供する。
【解決手段】 原水流入口11と浄水流出口21を有し、内部に吸着剤層70と中空糸膜束60を備えた浄水カートリッジ1であって、前記浄水カートリッジの内部には、中空糸膜束をU字形に束ねて端部を封止固定した中空糸膜ケース40が略同軸に配設され、前記中空糸膜ケースの外側と前記浄水カートリッジの内壁との間に形成される円筒状の空間内に筒状体30が配設され、前記中空糸膜ケースと前記筒状体との間に形成される略円筒状の空間内に吸着剤層70が設けられ、かつ、前記筒状体と浄水カートリッジの内壁との間に流路を形成するための間隙形成部材32が設けられているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水器に内蔵して使用される浄水カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水をろ過する浄水器に用いる浄水カートリッジは、活性炭等の吸着剤と中空糸膜など複数の浄水手段を1つのカートリッジに収納した構造が知られている。特に、吸着剤と中空糸膜との配置構造については、多数提案されている。従来製品の一例を図4〜9に従って説明する。
【0003】
図4に示す従来製品1は、下方側面に原水流入口11を、下方底面に浄水流出口21を設けた本体ボディ20の内部に、中空糸膜束60を収納した中空糸膜ケース40を本体ボディ20と同軸に配置し、本体ボディ20と中空糸膜ケース40との間に設けられる円筒状の空隙に吸着剤70が充填されている。吸着剤70は円筒状の空隙の上下に嵌め込まれたフィルター(図示せず)で保持されている(特許文献1)。
【0004】
原水は、側面の原水流入口11からカートリッジ内部に入り、円筒状の空隙に充填された吸着剤70を上向きに通過した後、中空糸膜ケース40に充填された中空糸膜束60を下向きに通過して、浄水流出口21から流出する。吸着剤70から中空糸膜ケース40に向かう際、水が流れる方向を180度変えるための空間80が、カートリッジ内部に設けられている。
【0005】
図5に示す従来製品2は、図4と同様に、下方側面に原水流入口11を、下方底面に浄水流出口21を設けた本体ボディ20の内部に、吸着剤70と中空糸膜ケース40とが上下方向に収納されている。側面の原水流入口11から流入した原水は、本体ボディ20と収納された吸着剤70および中空糸膜ケース40との間隙を通ってカートリッジ上端に到達し、カートリッジ上端に設けた空間80で流れの方向を変え、吸着剤70、中空糸膜ケース40の順で処理され、浄水となって浄水流出口21から流出する(特許文献2)。
【0006】
図6に示す従来製品3は、上方に吸着剤70、下方に中空糸膜ケース40を備えている。吸着剤70は略円筒状の成形体であり、外側から内側に向かって水が流れ、内側に設けた集水管90が中空糸膜ケース40と連通している(特許文献3)。
【0007】
図4〜6に示した従来製品は、いずれも水が吸着剤層から中空糸膜ケースに向かう際、水の流れる方向が変わるようになっている。流れの方向を変えるための空間は、カートリッジにとってはデッドスペースとなる。
【0008】
図7〜9は、いずれも中空糸膜ケース40をカートリッジの軸心位置に配置し、その外周に吸着剤70を設け、水を外側から内側に向けて流すことで処理する構造となっている。この点は、図4〜6の従来製品に対して、水の流れる方向を変える空間80をなくすことを実現している。
【0009】
図7や図8に示した従来製品4および5は、中空糸膜ケース40の内側で中空糸膜束60を封止した封止部61に水が流れないように、封止部61の外周には吸着剤70を充填しないようにしている。この部分はデッドスペースであり、図4〜6と同様に、カートリッジ内部の空間を有効に利用できていない(特許文献4、特許文献5)。
【0010】
図9に示した従来製品6は、アーチ形状を有する網目状の中空糸膜ケース40を用いて、その外周に吸着剤70を充填している。吸着剤70の外側にも筒状体30を設けて水路を確保しているが、この筒状体30の具体的な形状や固定方法は特許文献6には何ら示唆されておらず、実現性は困難であるといえる。
【0011】
【特許文献1】特開平11−47733号公報
【特許文献2】特開平9−108861号公報
【特許文献3】特開2004−267839号公報
【特許文献4】特開平9−150043号公報
【特許文献5】特許第3242395号公報
【特許文献6】特開2004−313964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図4〜6に示すような浄水カートリッジの場合、吸着剤層と中空糸膜ケースを通過するために、水の流れる方向を変えるための空間を設ける必要がある。特にカートリッジを内蔵する浄水器の場合には、カートリッジ形状は変更できないため、除去性能を上げようとすると、吸着剤や中空糸膜を充填できない空間がデッドスペースとなってしまう問題が生じている。
【0013】
また、図7〜9は、カートリッジの軸心に設置した中空糸膜ケース側面から通水可能とする構成としているため、図4〜6のような、水の流れを変えるためのデッドスペースは回避できる。しかし、図7では、中空糸膜を封止した部分に水を流せないため、封止した部分に相当する空間がデッドスペースとして残存してしまう。また、図8では、吸着剤層と中空糸膜束とをそれぞれ保持する筒状のケースを保持するための上下保持板を設ける必要があるため、保持板を保持するための空間が別途必要となり、さらに部品点数が増える問題が生じる。図9は、図8のような保持板はないものの、実際にこのカートリッジの製造を考えた場合、吸着剤層を保持する筒状体の保持方法は何ら記載されておらず、実用的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するための本発明の浄水カートリッジは、以下の(1)の構成からなる。
(1)原水流入口と浄水流出口を有し、内部に吸着剤層と中空糸膜束を備えた浄水カートリッジであって、前記浄水カートリッジの内部には、中空糸膜束をU字形に束ねて端部を封止固定した中空糸膜ケースが略同軸に配設され、前記中空糸膜ケースの外側と前記浄水カートリッジの内壁との間に形成される円筒状の空間内に筒状体が配設され、前記中空糸膜ケースと前記筒状体との間に形成される略円筒状の空間内に吸着剤層が設けられ、かつ、前記筒状体と浄水カートリッジの内壁との間に流路を形成するための間隙形成部材が設けられていることを特徴とする浄水カートリッジ。
【0015】
また、かかる(1)の本発明の浄水カートリッジにおいて、より具体的に好ましくは、以下の(2)〜(9)のいずれかの構成からなるものである。
(2)前記筒状体は、複数の開口部を有する支持枠と、支持枠の外周に貼り付けられた布帛とから構成されることを特徴とする上記(1)に記載の浄水カートリッジ。
(3)前記筒状体の支持枠と布帛とは、一体成形されていることを特徴とする上記(2)に記載の浄水カートリッジ。
(4)前記布帛は、不織布であることを特徴とする上記(2)または(3)に記載の浄水カートリッジ。
(5)前記筒状体の支持枠に、前記間隙形成部材が一体的に付設されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
(6)前記布帛は、浄水カートリッジに備えられた吸着剤よりも通水抵抗が高いことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
(7)前記中空糸膜ケースは、複数の開口部が設けられ、前記中空糸膜ケースの内側にメッシュが貼り付けられていることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
(8)前記メッシュは、中空糸膜ケースと一体成形されていることを特徴とする上記(7)に記載の浄水カートリッジ。
(9)前記中空糸膜ケースの内部に配置した中空糸膜束を封止した端部と、前記浄水カートリッジと前記筒状体との間の間に形成された流路の端部とは、浄水カートリッジ内の同じ端部側に位置することを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、カートリッジ内部に水の流れる向きを変えるためのデッドスペースがなく、少ない部品点数で組み立てることができ、さらに、吸着剤や中空糸膜の充填空間を最大化することができるので、コンパクトで高性能な浄水カートリッジとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を用いて説明する。なお、本発明はこれらの図によって、特に制限されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の浄水カートリッジの一実施例をモデル的に示した概略縦断面図である。図2は、吸着剤70、中空糸膜束60および封止部61を取り除いた状態での縦断面図を示している。図3は、後述する筒状体30の一部を断面とした概略外観図である。
【0019】
浄水カートリッジ1は、一端が開口している略円筒状の本体ボディ20の内側に、図3に示す筒状体30と、筒状体30の内側に中空糸膜ケース40がそれぞれ略同軸上に配置されている。本体ボディ20の内側と筒状体30との間には、間隙を確保するために間隙形成部材32が設けられている。本体ボディ20の端部には、筒状体30と中空糸膜ケース40の一端を嵌入立設できるようなスリット22あるいは円筒形リブ23が設けられている。筒状体30と中空糸膜ケース40の他端には、キャップ50が嵌入してある。本体ボディ20の開口部には、本体フタ10が密着してある。本体フタ10には原水流入口11が、本体ボディ20には浄水流出口21がそれぞれ設けられている。
【0020】
筒状体30と中空糸膜ケース40とで形成される略円筒状の空間には、活性炭等の吸着剤70が充填されている。また、中空糸膜ケース40の内部には、中空糸膜束60がU字状に折り曲げられ、端部が浄水流出口21に向くように封止固定されている。
【0021】
次に、個々の部材について説明する。
【0022】
本体ボディ20は、一端が開口した略円筒であり、開口部と反対側に位置する端部には軸心位置に浄水流出口21が設けられている。浄水流出口21を囲むように、中空糸膜ケース40を嵌入立設するための円筒形リブ23と、円筒形リブ23の外側に筒状体30を嵌入立設するためのスリット22が、それぞれ本体ボディ20の内側に軸心位置がほぼ揃った状態で設けられている。
【0023】
ここで筒状体30は、図3に示すように、壁面に格子状の複数の開口部31を設け、その外周に布帛35が取り付けられている。筒状体30の材質は、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やAS(アクリルニトリル・スチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂など、成形時の寸法精度が高い樹脂で成形されたものが好ましい。
【0024】
筒状体30の外周に取り付ける布帛35は、接着剤で貼り付けたり、筒状体30に熱融着させたり、成形時に一体成形することが好ましい。本発明において、原水は筒状体30の外側から内側に向かって流れるため、筒状体30の外周に布帛35を取り付けておくと、原水の流れによって剥離する恐れがない。また、後述するように、筒状体30の内側には粒状活性炭等の吸着剤70を充填するため、筒状体30の厚み分だけ多くの吸着剤70を充填できる点からも、好ましい態様である。
【0025】
布帛35は、通水可能な素材で、吸着剤70が流出しない目付を有するものが好ましい。樹脂で成形する筒状体30との接着性も考慮して、PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)などの不織布を用いることが好ましい。
【0026】
また、布帛35は、内側に充填する吸着剤70よりも通水抵抗が高いことが好ましい。本発明では、本体ボディ20の軸方向のほぼ全長に渡って、筒状体30の外側から内側に向けて原水を流す構造になっている。このため、布帛35の通水抵抗が吸着剤70の通水抵抗より高くしておくと、筒状体30の下流側まで原水が到達してから布帛35を通過する。この結果、原水は充填した吸着剤70をショートパスすることなく、十分に吸着能力を発揮させることができる。
【0027】
筒状体30の上流側の端部には、本体ボディ20の内壁との間に原水が流れる間隙を確保するために、間隙形成部材32が設けられている。間隙形成部材32としては、筒状体30と一体成形した複数の突起、樹脂などのリング状の外周に突起を設けたものであると、間隙を容易に形成することができる。間隙は、浄水カートリッジを装着する浄水器の設定流量にもよるが、樹脂の成形精度も考慮すると、0.5mm以上あることが好ましい。間隙を大きくすると原水は流れやすくなるが、反面、吸着剤70の充填量が少なくなるため、1.5mm以下、好ましくは1.0mm以下とすることが好ましい。
【0028】
筒状体30の下流側の端部は、前述の本体ボディ20のスリット22に嵌入固定する。スリット22で水密に固定しなくとも、原水は筒状体30の内側にある吸着剤70を通過するため、Oリングなどを用いて水密に固定する必要はない。したがって、スリット22は筒状体30の厚みに相当する幅と、抜け落ちない程度の深さを確保できればよい。Oリングなどで水密に固定する場合に比べ、スリット22の幅や深さを最小にすることができ、その分、吸着剤70の充填量を増やすことができる。スリット22の幅は1〜2mm、深さは5〜10mm程度が好ましい。さらに、筒状体30の下流側の端部を超音波溶着したり、接着剤で固定したりすると、より強固に固定できる点で好ましい態様である。
【0029】
ここまでは、筒状体30は樹脂成形体の外周に布帛35を取り付けた態様について説明したが、以下のように変形実施することも可能である。すなわち、筒状体30は布帛35のみを幾重にも巻回させたものとし、上流側に樹脂製の間隙形成部材32を取り付けて、スリット22に直接嵌入させてもよい。この場合、布帛35は原水が通過する際に簡単に変形しないような目付の大きな不織布などを用いることが好ましい。また、間隙形成部材32は、上流側だけでなく、本体ボディ20の長手方向に複数箇所設けることも好ましい態様である。
【0030】
次に、中空糸膜ケース40について説明する。
【0031】
中空糸膜ケース40は、両端が開口した略円筒状であり、壁面に格子状の複数の開口部41を設け、その内周にメッシュ45が取り付けられている。中空糸膜ケース40の材質は、筒状体30と同様、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やAS(アクリルニトリル・スチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂など、成形時の寸法精度が高い樹脂で成形されたものが好ましい。
【0032】
メッシュ45は、PP(ポリプロピレン)などの合成繊維からなる布帛であり、ほぼ等間隔の目開きを有する。目開きは適宜選択することができるが、後述する吸着剤70に用いる粒子の粒度より小さな目開きを選択すると、吸着剤70がメッシュ45を通過することがないので、中空糸膜束60を傷つけない点で好ましい。
【0033】
メッシュ45を中空糸膜ケース40の内周面に取り付ける方法としては、中空糸膜ケース40の成形時にメッシュ45と一体成形する方法が強固に取り付けられる点で好ましい。この場合、メッシュ45の目開きを小さくし過ぎると、中空糸膜ケース40の樹脂がメッシュ45の目開きに流れ込まなくなり、かえって強固に取り付けられなくなる場合がある。一般的に、ABS樹脂を用いた場合の目開きは200メッシュ以下、PP樹脂やAS樹脂を用いた場合の目開きは250メッシュ以下とすることが好ましい。また、接着剤で貼り付けたり、熱融着させることも好ましい態様である。
【0034】
メッシュ45を中空糸膜ケース40の内周面に取り付けることで、後述する中空糸膜束60を挿入する際に、複数の開口部41で擦過させることもなく、スムーズに挿入させることができる。さらに、吸着剤70は中空糸膜ケース40の外側に充填させるため、中空糸膜ケース40の厚み分だけ充填量を増やすことができる。
【0035】
中空糸膜ケース40の内部には、中空糸膜束60を封止固定する封止部61がある。中空糸膜束60は、ポリスルホンやポリエチレンなどからなる、微多孔質の精密ろ過(MF)膜を用いると、原水中のゴミや細菌を除去できるとともに、低い通水抵抗で充分なろ過水量を得ることができる点で好ましい。精密ろ過(MF)膜の孔径は、0.1〜0.3μm程度が好ましい。
【0036】
このような中空糸膜束60を所定の本数束ねて、U字状に折り曲げた後で、中空糸膜ケース40に挿入する。この際、中空糸膜ケース40の一端には、封止しやすいように、中空糸膜ケース40の内壁に凹凸を設けたり、複数の溝を設けて接着面積を増やしておくことも好ましい態様である。中空糸膜ケース40と中空糸膜束60とは、ウレタンやエポキシなどの接着剤で封止固定する。
【0037】
中空糸膜束60の封止部61を設けた側の中空糸膜ケース40の端部には、本体ボディ20と水密に固定するためのOリング42が取り付けられている。本体ボディ20の内側に設けられた前述の円筒形リブ23の内側に、Oリング42が装着された側の中空糸膜ケース40を挿入する。中空糸膜ケース40は、後述するキャップ50によって位置決めされるため、Oリング42で水密に固定できる程度に円筒形リブ23の高さが設けられていれば良い。その分、吸着剤70の充填量を増やすことができる。高さは特に制限するものではないが、5〜10mm程度であると、中空糸膜ケース40がぐらつかずに挿入固定できる点で好ましい態様である。
【0038】
次に吸着剤70について説明する。
【0039】
本体ボディ20の内部に嵌入立設させた筒状体30および中空糸膜ケース40とから形成される略円筒状の空間に、吸着剤70を充填する。吸着剤70としては、椰子殻や木材、石炭などを原料とした粒状活性炭や、フェノール樹脂などの繊維を炭化させた繊維状活性炭をバインダで成形したものや、原水中の重金属を吸着するのに適したチタンケイ酸塩やアルミノケイ酸塩などのゼオライトを、適宜組み合わせて充填することができる。好ましくは、充填密度が高く、安価で入手しやすい椰子殻製の粒状活性炭とゼオライトを組み合わせると、多量の原水を吸着処理することができる。粒状の吸着剤を充填する場合、粒子の大きさ(粒径)を小さくすると比表面積が増えるため、吸着能力を高めることができる。反面、通水抵抗が高くなり、所定のろ過水量を達成できないこともありうる。このような相反する条件を満足させるため、吸着剤の充填量や粒径を適宜選択することができる。粒状活性炭の粒径が40〜150メッシュ程度を用いると、通水抵抗を高くせずに多量の原水を吸着処理できる点で好ましい態様である。
【0040】
キャップ50は、中空糸膜ケース40と筒状体30との間隙に充填した吸着剤70を外部に漏出させなかったり、中空糸膜ケース40の内側に流入した水と原水とを混合させないために装着するものである。キャップ50の材質は、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やAS(アクリルニトリル・スチレン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂など、成形時の寸法精度が高い樹脂で成形されたものが好ましい。
【0041】
キャップ50の形状は、中空糸膜ケース40の端部に嵌入できるような凹部を有することが好ましい。中空糸膜ケース40の端部に水密固定用のOリングを装着することも可能であるが、嵌合部51を設けて固定する方法であってもよい。
【0042】
また、吸着剤70を充填した間隙に入れ込む部分は、中空糸膜ケース40の端部より下流側に突き出した形状とすることが好ましい。このように突き出した形状にすると、充填した吸着剤70との間にデッドスペースができなくなり、原水を通水した際に吸着剤70をショートカットする恐れがなくなるからである。中空糸膜ケース40の端部から下流側に5〜10mm程度突き出しておくと、充填した吸着剤70と密に固定できる点で好ましい態様である。
【0043】
本体フタ10は、軸心位置に原水流入口11を有する略円盤状のものであり、本体ボディ20の内部に筒状体30、中空糸膜ケース40、吸着剤70、キャップ50を充填した後、本体ボディ20の端部と固定する。本体フタ10の固定方法は、超音波溶着、ネジ止め、接着剤による接着などの方法で密着させることができる。特に、本体ボディ20と同じ材質の樹脂を用いると、本体フタ10の溶着部12と本体ボディ20の溶着部24とを強固に超音波溶着できる点で好ましい態様である。
【0044】
また、本体フタ10の内側には、複数のリブ13が等間隔に設けられている。このリブ13は、原水流入口11から流入する原水を筒状体30の外周へ均等に通水させること、キャップ50が筒状体30や中空糸膜ケース40から抜け落ちないように固定させる機能を有する。
【0045】
以上のように構成された浄水カートリッジの水の流れについて説明する。
【0046】
原水流入口11から流入した原水は、本体フタ10の内側に設けられたリブ13に沿って円筒状にほぼ均等に拡散され、筒状体30に設けた間隙形成部材32によって形成された本体ボディ20との間隙に原水が流入する。筒状体30の外周に取り付けられた布帛35は吸着剤70より通水抵抗が高いため、原水は容易に布帛35を通過せず、間隙の末端にまで原水が到達してから、末端側から順次布帛35を通過して吸着剤70と接触する。吸着剤70によって原水中の有機物などが除去された処理水は、中空糸膜ケース40のメッシュ45を通過する。中空糸膜束60で処理水に含まれる細菌などが除去された浄水は、封止部61側に設けた中空糸膜束60の開口部から本体ボディ20の浄水流出口22を経て、浄水カートリッジから流出する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の浄水カートリッジの一実施例をモデル的に示した概略縦断面図である。
【図2】図1の浄水カートリッジから、中空糸膜束、封止部、吸着剤を取り除いた状態を示した概略縦断面図である。
【図3】本発明の浄水カートリッジに用いる筒状体の一部を断面とした概略外観図である。
【図4】従来の浄水カートリッジの一実施例(従来製品1)をモデル的に示した概略縦断面図である。
【図5】従来の浄水カートリッジの一実施例(従来製品2)をモデル的に示した概略縦断面図である。
【図6】従来の浄水カートリッジの一実施例(従来製品3)をモデル的に示した概略縦断面図である。
【図7】従来の浄水カートリッジの一実施例(従来製品4)をモデル的に示した概略縦断面図である。
【図8】従来の浄水カートリッジの一実施例(従来製品5)をモデル的に示した概略縦断面図である。
【図9】従来の浄水カートリッジの一実施例(従来製品6)をモデル的に示した概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:浄水カートリッジ
10:本体フタ
11:原水流入口
12:溶着部
13:リブ
20:本体ボディ
21:浄水流出口
22:スリット
23:円筒形リブ
24:溶着部
30:筒状体
31:開口部
32:間隙形成部材
35:布帛
40:中空糸膜ケース
41:開口部
42:Oリング
45:メッシュ
50:キャップ
51:嵌合部
60:中空糸膜束
61:封止部
70:吸着剤
80:空間
90:集水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水流入口と浄水流出口を有し、内部に吸着剤層と中空糸膜束を備えた浄水カートリッジであって、前記浄水カートリッジの内部には、中空糸膜束をU字形に束ねて端部を封止固定した中空糸膜ケースが略同軸に配設され、前記中空糸膜ケースの外側と前記浄水カートリッジの内壁との間に形成される円筒状の空間内に筒状体が配設され、前記中空糸膜ケースと前記筒状体との間に形成される略円筒状の空間内に吸着剤層が設けられ、かつ、前記筒状体と浄水カートリッジの内壁との間に流路を形成するための間隙形成部材が設けられていることを特徴とする浄水カートリッジ。
【請求項2】
前記筒状体は、複数の開口部を有する支持枠と、支持枠の外周に貼り付けられた布帛とから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記筒状体の支持枠と布帛とは、一体成形されていることを特徴とする、請求項2に記載の浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記布帛は、不織布であることを特徴とする、請求項2または3に記載の浄水カートリッジ。
【請求項5】
前記筒状体の支持枠に、前記間隙形成部材が一体的に付設されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
【請求項6】
前記布帛は、浄水カートリッジに備えられた吸着剤よりも通水抵抗が高いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
【請求項7】
前記中空糸膜ケースは、複数の開口部が設けられ、前記中空糸膜ケースの内側にメッシュが貼り付けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の浄水カートリッジ。
【請求項8】
前記メッシュは、中空糸膜ケースと一体成形されていることを特徴とする、請求項7に記載の浄水カートリッジ。
【請求項9】
前記中空糸膜ケースの内部に配置した中空糸膜束を封止した端部と、前記浄水カートリッジと前記筒状体との間に形成された流路の端部とは、浄水カートリッジ内の同じ端部側に位置することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の浄水カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−136933(P2008−136933A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325355(P2006−325355)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】