説明

浄水処理設備及び処理方法

【課題】 Mn除去槽から着水に返送される返送水を効果的に中和処理して着水井の酸化剤の使用量を少なくすることができる浄水処理設備を提供すること。
【解決手段】 浄水用の原水を取水する着水井4と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池6と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備8と、沈殿池6にて分離された上水汚泥を濃縮する濃縮槽10と、濃縮槽10にて分離された濃縮汚泥を脱水する脱水装置14と、濃縮槽10の上澄み水に含まれたマンガン成分を除去するMn除去槽12と、Mn除去槽12からの返送水を着水井4に返送する返送ライン19と、を備えた浄水処理設備。返送ライン19には中和槽20が設けられ、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガス又はこの燃焼排ガスを利用した炭酸水が中和槽20に供給され、この中和槽20にて返送水が燃焼排ガス又は炭酸水によって中和処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水を所要の通りに処理する浄水処理設備及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水の処理設備として、浄水用の原水を取水する着水井と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備と、沈殿池にて分離された上水汚泥を濃縮する濃縮槽と、濃縮槽にて分離された濃縮汚泥を脱水する脱水装置と、を備え、濃縮槽からの上澄み水を着水井に返送するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、濃縮槽から着水井に返送される返送水にマンガン成分が含まれていることから、濃縮槽と着水井との間にMn除去槽を設け、このMn除去槽にて返送水に含まれたマンガン成分を除するようにしたものも知られている。また、脱水装置からの脱水分離水を濃縮槽に戻すようにしたものも知られている。この浄水処理設備におけるマンガン成分の除去は、Mn除去槽にアルカリ剤を投入し、アルカリ雰囲気下で水酸化マンガンの形態で除去し、このようにマンガン成分を除去した後に、返送水が着水井に返送される。
【0003】
【特許文献1】特開平11−347595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した浄水処理設備には、次の通りの解決すべき問題がある。Mn除去槽においてマンガン成分を除去した返送水はアルカリ性を呈し、このアルカリ性の返送水が着水井に返送される。また、着水井に取水される原水は、水草などの同化作用により弱アルカリ性(pH7〜8程度)を呈することが多く、夏季においてはアルカリ性が幾分強くなる傾向にある。一方、原水中の懸濁物を効率的に除去するために、また水処理設備におけるオゾン処理時の臭素酸発生を抑制するために、着水井において弱酸性となるようにpH調整するのが望ましい。
【0005】
このようなことから、従来、着水井に硫酸などの酸性剤を投与してpH調整を行っているが、このようなpH調整では、着水井にて原水のpH調整と返送水のpH調整の双方を行っているために、着水井での酸性剤の使用量が多くなり、浄水処理のコストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、Mn除去槽から着水に返送される返送水を効果的に中和処理して着水井の酸性剤の使用量を少なくすることができる浄水処理設備及び処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の浄水処理設備は、浄水用の原水を取水する着水井と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備と、前記沈殿池にて分離された上水汚泥を濃縮する濃縮槽と、前記濃縮槽にて分離された濃縮汚泥を脱水する脱水装置と、前記濃縮槽の上澄み水に含まれたマンガン成分を除去するMn除去槽と、前記Mn除去槽からの返送水を前記着水井に返送する返送ラインと、を備えた浄水処理設備であって、
前記返送ラインには中和槽が設けられ、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスが前記中和槽に供給され、この中和槽において、前記Mn除去槽からの返送水が前記燃焼排ガスによって中和処理されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に記載の浄水処理設備は、浄水用の原水を取水する着水井と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備と、前記沈殿池にて分離された上水汚泥を濃縮する濃縮槽と、前記濃縮槽にて分離された濃縮汚泥を脱水する脱水装置と、前記濃縮槽の上澄み水に含まれたマンガン成分を除去するMn除去槽と、前記Mn除去槽からの返送水を前記着水井に返送する返送ラインと、を備えた浄水処理設備であって、
前記返送ラインには中和槽が設けられ、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスから得られた炭酸水が前記中和槽に供給され、この中和槽において、前記Mn除去槽からの返送水が前記炭酸水によって中和処理されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に記載の浄水処理設備では、前記炭酸水が、前記ガスエンジン又は前記ガスタービンからの前記燃焼排ガスを凝縮して炭酸水を得るための凝縮装置、又は前記燃焼排ガスを溶解して炭酸水を得るための溶解装置を用いて生成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に記載の浄水処理設備では、前記ガスエンジン又は前記ガスタービンからの前記燃焼排ガスが前記着水井に供給され、この着水井において、原水が前記燃焼排ガスによってpH調整処理されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に記載の浄水処理設備では、前記ガスエンジン又は前記ガスタービンからの前記燃焼排ガスから得られた前記炭酸水が前記着水井に供給され、この着水井において、原水が前記炭酸水によってpH調整処理されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に記載の浄水処理設備は、浄水用の原水を取水する着水井と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備と、を備えた浄水処理設備であって、
ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスから得られた炭酸水が前記着水井に供給され、この着水井において、原水が前記炭酸水によってpH調整処理されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に記載の浄水処理方法は、浄水用の原水を着水井にて取水し、取水した原水に含まれた懸濁物を沈殿池にて沈殿除去し、前記沈殿池からの上水を水処理設備によって所要の通りに水処理するとともに、前記沈殿池にて分離された上水汚泥を濃縮槽にて濃縮し、前記濃縮槽にて上澄みされた上澄み水に含まれたマンガン成分をMn除去槽にて除去し、Mn除去槽からの返送水を前記着水井に返送する浄水処理方法であって、
前記Mn除去槽と前記着水井との間に中和槽を設け、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガス又はこの燃焼排ガスから得られた炭酸水を前記中和槽に供給し、前記中和槽にて、前記Mn除去槽からの返送水を前記燃焼排ガス又は前記炭酸水によって中和処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の浄水処理設備によれば、Mn除去槽からの返送ラインに中和槽が設けられ、この中和槽にガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスが供給される。近年、浄水場には、多量の電力を消費することからコージェネレーションシステムが設置されることが多く、このコージェネレーションシステムのガスエンジン又はガスタービンの燃焼排ガスを有効に利用してMn除去槽からの返送水を中和して着水井に返送することができる。このように中和槽にて返送水を中和処理することによって、着水井で処理する場合に比して燃焼排ガスの接触効率が高くなり、この返送水を効率よく中和することができる。また、このように中和槽で中和処理することによって、着水井でのpH調整の処理に使用する酸性剤の使用量を少なくすることができ、これによって、浄水処理のコストの低減を図ることができる。尚、脱水装置からの脱水分離水も濃縮槽に返送した後、このMn除去槽にて併せてマンガン成分を除去した後に着水井に戻すようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の浄水処理設備によれば、Mn除去槽からの返送ラインに設けられた中和槽にガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスから得られた炭酸水が供給される。このように中和槽にて炭酸水を用いて返送水を中和処理することによって、返送水を効率よく中和することができ、特に炭酸水として用いることによってより効果的に作用させて効率的な中和処理を行うことができる。
【0016】
また、本発明の請求項3に記載の浄水処理設備によれば、燃焼排ガスを凝縮装置によって凝縮させて、又は溶解装置によって溶解させて炭酸水を得ることができる。例えば、浄水場では多量の水を扱っているので、この水との熱交換によって燃焼排ガス中の水分を凝縮させ、この凝縮した水に二酸化炭素を吸収させて炭酸水を得ることができ、また燃焼排ガスを溶解装置に導入し、燃焼排ガス中の二酸化炭素を水に溶解させて炭酸水を得ることができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の浄水処理設備によれば、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスが着水井にも供給されるので、ガスエンジン又はガスタービンの燃焼排ガスを有効に利用して着水井の原水のpH処理を行うことができる。
【0018】
また、本発明の請求項5又は6に記載の浄水処理設備によれば、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスから得られる炭酸水が着水井にも供給されるので、この炭酸水が原水により接触し易くなって効果的に作用し、効率的なpH処理を行うことができる。
【0019】
また、本発明の請求項7に記載の浄水処理方法によれば、Mn除去槽からの返送ラインに設けた中和槽にガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガス又はこの燃焼排ガスから得られた炭酸水が供給されるので、このコージェネレーションシステムのガスエンジン又はガスタービンの燃焼排ガスを有効に利用してMn除去槽からの返送水を中和して着水井に返送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う浄水処理設備の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、第1の実施形態の浄水処理設備について説明する。図1は、第1の実施形態の浄水処理設備を簡略的に示すブロック図である。
【0021】
図1において、この浄水処理設備2は、着水井4、沈殿池6、水処理設備8、濃縮槽10及びMn除去槽12を備えている。河川などから導かれる原水は、着水井4に取水される。着水井4に取水された原水は原水送給ライン5を通して沈殿池6に導かれ、この沈殿池6にて原水中の懸濁物などが沈殿除去される。沈殿池6における沈殿効果を高めるために、着水井4から沈殿池6に流れる原水に凝集剤を添加し、この凝集剤により原水中の懸濁物が凝集される。凝集剤による凝集効果を高めるために、また水処理設備8におけるオゾン処理時の臭素酸の発生を防止するために、後述するように酸性剤としての燃焼排ガスが着水井4に供給され、燃焼排ガスを利用して原水のpH調整、例えば、pH6.5〜6.9程度になるように行われる。
【0022】
沈殿池4にて分離された上水は、上水送給ライン7を通して水処理設備8に導かれる。水処理設備8は、図示していないが、オゾン処理装置、活性炭処理装置、後処理装置及び塩素消毒装置などを含んでいる。オゾン処理装置は、処理水にオゾン処理を施して原水中の難分解性有機物を易分解性有機物に転換し、活性炭処理装置は、処理水に含まれた有機物を除去する。また、後処理装置は、活性炭処理装置から漏出する微量物質及び微生物などを除去し、塩素消毒装置は、液体塩素又は次亜塩素酸ナトリウムなどを投入して処理水を滅菌する。水処理設備8にてこのように水処理された水が浄水として浄水供給ライン9(例えば、水道管など)を通して家庭、工場などに送給される。
【0023】
一方、沈殿槽4にて分離された上水汚泥は上水汚泥送給ライン11を通して濃縮槽10に送給される。濃縮槽10では上水汚泥が例えば重力により濃縮され、濃縮槽10にて濃縮されて底部から引き出された濃縮汚泥は、濃縮汚泥送給ライン11を通して脱水装置114に送給され、またこの濃縮槽10からの上澄み水は上澄み水送給ライン13を通してMn除去槽12に送給される。
【0024】
脱水装置14においては、濃縮汚泥に脱水処理が行われ、この脱水処理にて脱水された脱水汚泥は脱水汚泥送給ライン15を通して乾燥機16に送給され、また脱水装置14にて脱水分離された脱水分離水は分離水送給ライン17を通して濃縮槽10に戻される。乾燥機16においては、脱水汚泥が乾燥処理され、乾燥された汚泥が固形物として取り出される。この乾燥処理の際には、浄水場に設置されたコージェネレーションシステムのガスタービン18にて発生する熱が利用され、ガスタービン18の熱を有効利用して脱水汚泥を減量化することができる。尚、コージェネレーションシステムにて発生する電力は、浄水場の各種設備の電力として利用される。
【0025】
Mn除去槽12には、濃縮槽10からの上澄み水が送給され、このMn除去槽12にてマンガン成分が除去される。Mn除去槽12にはアルカリ性剤としての例えば苛性ソーダ液などが投入され、アルカリ雰囲気下で水酸化マンガンの形態で除去され、アルカリ性剤を用いるので、Mn除去槽12からの返送水はアルカリ性を呈する。このマンガン成分が除去された返送水はMn除去槽12から返送ライン19を通して着水井4に戻され、着水井4にて河川などからの原水と混合され、かく混合された原水が上述したように浄化処理される。
【0026】
この浄水処理設備2においては、返送ライン19に中和槽20を設け、この中和槽20にて返送水を中和処理することが重要である。この実施形態では、濃縮槽10から返送ライン19を通して送給される返送水が中和槽20に流入するととともに、この中和槽20にコージェネレーションシステムのガスタービン18からの燃焼排ガスが第1排ガス送給ライン21を通して供給される。このように構成されているので、中和槽20においては、ガスタービン18からの燃焼排ガスが中和槽20内の返送水に作用する。燃焼排ガスには、酸性成分となる二酸化炭素が多く含まれており、この二酸化炭素が返送水に溶解すると酸性を呈し、それ故に、ガスタービン18からの燃焼排ガスを利用して中和槽20にて返送水の中和処理を行うことができ、薬剤の使用を抑える、又はその使用を無くすことができる。そして、中和処理された返送水が返送ライン19を通して着水井4に戻され、このように中和して戻すことによって、着水井4にての返送水に対するpH調整処理を行う必要がなくなり、着水井4のpH調整処理は取水された原水に対して行えばよく、これによって原水に対するpH調整を効率よく行うことができる。尚、燃焼排ガスによる中和処理は、例えば、第1排ガス送給ライン21を通して送給される燃焼排ガスを中和槽20内の返送水中にバブリングすることによって、比較的簡単な構成で効率よく中和処理を行うことができる。
【0027】
この実施形態では、更に、ガスタービン18からの燃焼排ガスが第2排ガス送給ライン23を通して着水井4にも供給され、ガスタービン18からの燃焼排ガスが着水井4内の原水に作用する。原水は水草などの同化作用により弱アルカリ性(pH7〜8)を呈しているが、原水に溶解して酸性を呈する燃焼排ガスを供給することによって、原水のpH調整を行うことができ、従来においてpH調整処理に多量に必要とした薬剤の使用を抑える、又はその使用を無くすことができる。尚、着水井4によるpH調整処理も、例えば、第2排ガス送給ライン23を通して送給される燃焼排ガスを着水井4内の原水中にバブリングすることによって、比較的簡単な構成で効率よく中和処理を行うことができる。
【0028】
この実施形態では、コージェネレーションシステムによる発電電力及び熱に加えて、ガスタービン18により発生する燃焼排ガスも酸性剤として用いているので、システム全体を効率的に運用することができ、またこの燃焼排ガスを利用してMn除去槽12からの返送水の中和処理及び着水井4の原水のpH調整を行うことができる。尚、ガスタービン18から第1及び第2燃焼排ガス送給ライン21,23へ燃焼排ガスを所要の通りに送給するために、必要に応じて、送給ブロア(図示せず)が設けられる。
【0029】
上述した浄水処理設備2では、ガスタービン18からの燃焼排ガスを返送水の中和処理及び原水のpH調整処理に用いているが、返送水の中和処理のみに用い、原水のpH調整処理については従来と同様の酸性の薬剤、例えば硫酸などを用いるようにしてもよい。
【0030】
次いで、図2及び図3を参照して、第2の実施形態の浄水処理設備について説明する。図2は、第2の実施形態の浄水処理設備を簡略的に示すブロック図であり、図3は、図2の浄水処理設備の凝縮装置を簡略的に示す図である。尚、図2及び図3において、上述した第1の実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0031】
図2において、この第2の実施形態の浄水処理設備2Aでは、ガスタービン18からの燃焼排ガスを利用して炭酸水が生成され、この炭酸水が中和槽20及び着水井4に送給される。更に説明すると、浄水処理設備2Aの燃焼排ガス排出ライン31に凝縮装置30が設けられ、この凝縮装置30にて燃焼排ガス中の水分を凝縮させて水にするとともに、この凝縮水に二酸化炭素を吸収させて炭酸水を生成する。このように生成された炭酸水は、第1炭酸水送給ライン32を通して中和槽20に送給され、また第2炭酸水送給ライン34を通して着水井4に送給される。
【0032】
中和槽20においては、Mn除去槽12からの返送水に第1炭酸水送給ライン32を通して投入される炭酸水が作用し、この炭酸水によって、返送水が中和処理され、中和処理された返送水が返送ライン19を通して着水井4に戻される。また、着水井4においては、取水された原水(返送水も含む)に第2炭酸水送給ライン34を通して投入される炭酸水が作用し、この炭酸水によって、原水がpH調整処理され、pH調整された原水に対して上述した浄水処理が行われる。このように炭酸水として用いることによって、返送水、原水との接触効率が高められ、また搬送などの取扱いが容易となり、中和処理、pH調整処理の効率を高めることができる。
【0033】
凝縮装置30は、例えば、図3に示すように構成することができる。図3において、この凝縮装置30は熱交換器36を備え、ガスタービン18からの燃焼排ガスが燃焼排ガス排出ライン31を通して熱交換器36に導かれ、この熱交換器36を通して大気中に排出される。燃焼排ガス排出ライン31の、熱交換器36より下流側の部位には回収ライン38が接続され、この回収ライン38に回収槽40が設けられている。また、回収槽40には炭酸水送出ライン42が接続され、この炭酸水送給ライン42に第1及び第2炭酸水送給ライン32,34が接続されるとともに、この炭酸水送出ライン42に送出ポンプ41が配設される。また、水処理設備8にて水処理された浄水の一部が浄水送給ライン44を通して熱交換器36に導かれ、この熱交換器36を通して家庭、工場などに送給される(水処理設備8からの浄水の残部は、熱交換器36を通ることなく直接的に送給される。
【0034】
このような凝縮装置30においては、ガスタービン18からの燃焼排ガスが燃焼排ガス排出ライン31を通して流れ、また水処理設備8からの浄水の一部が浄水送給ライン44を通して流れ、熱交換器36において、燃焼排ガスと浄水との間で熱交換が行われる。浄水場にて水処理された浄水は、年間を通して20℃以下の比較的低い温度に保たれるので、この浄水によって燃焼排ガスが冷却され、燃焼排ガス中の水分が凝縮して水となり、かく凝縮した凝縮水に燃焼排ガス中の二酸化炭素が吸収され、このようにして燃焼排ガスを利用して炭酸水が生成される。
【0035】
生成された炭酸水は、回収ライン38を通して回収槽40に回収される。そして、このように回収された炭酸水が送出ポンプ41によって回収槽40から送出され、第1炭酸水送給ライン32を通して中和槽20に送給されるとともに、第2炭酸水送給ライン34を通して着水井4に送給される。
【0036】
尚、凝縮液への二酸化炭素の溶解を効率よく行うために、コージェネレーションシステムから得られる水蒸気や温水を熱源として吸収式冷凍機を駆動させ、この吸収式冷凍機で発生した冷水を用いてガスタービンからの燃焼排ガスを冷却して炭酸水を得るようにしてもよい。
【0037】
炭酸水を得るために、図3に示す凝縮装置30に代えて、図4に示す溶解装置50を用いるようにしてもよい。図4において、図示の溶解装置50は、水処理設備8にて所要の通りに水処理された浄水の一部が浄水送給ライン52を通して流入する溶解槽54を備えている。尚、浄水に代えて、例えば河川などから取水した原水を原水送給ライン(図示せず)を通して溶解槽54に送給するようにしてもよい。
【0038】
この溶解槽54には、ガスタービン18からの燃焼排ガスが燃焼排ガス排出ライン31を通して送給され、溶解槽54中の水に浸漬された燃焼排ガス排出ライン31の先端部から水中にバブリングされ、このようにバブリングすることによって、炭酸水を効率よく得ることができる。生成された炭酸水は、回収ライン38を通して回収槽40に回収され、回収された炭酸水が送出ポンプ41によって回収槽40から送出され、第1炭酸水送給ライン32を通して中和槽20に送給されるとともに、第2炭酸水送給ライン34を通して着水井4に送給される。従って、このような溶解装置50を用いても、凝縮装置30を用いたときと同様に、中和槽20に炭酸水を供給して返送水の中和処理を行うことができるとともに、着水井4に炭酸水を供給して原水のpH調整処理を行うことができる。
【0039】
尚、二酸化炭素の溶解を効率よく行うために、コージェネレーションシステムから得られる水蒸気や温水を熱源として吸収式冷凍機を駆動させ、この吸収式冷凍機で得られた冷水にガスタービンからの燃焼排ガスを溶解させるようにしてもよい。
【0040】
上述した浄水処理設備2Aでは、ガスタービン18からの燃焼排ガスを利用して得られた炭酸水を返送水の中和処理及び原水のpH調整処理に用いているが、返送水の中和処理のみに用い、原水のpH調整処理については従来と同様の酸性の薬剤、例えば硫酸などを用いるようにしてもよく、或いはこの炭酸水を原水のpH処理のみに用いるようにしてもよい。
【0041】
実施例
燃焼排ガスによる中和処理及びpH調整処理を確認するために、次の通りの実験を行った。実験用に16リットルの溶解槽(曝気槽)を用意し、この曝気槽に12リットルの返送水(pH11)(Mn除去槽にてマンガン成分を除去した後の水)を投入するとともに、コージェネレーションシステムのガスタービンからの燃焼排ガスを曝気槽の返送水中にバブリングさせてこの返送水を中和処理した。返送水を中和処理するために、気液比2〜5(m−排ガス/m−原水)程度の燃焼排ガスを供給することによって、返送水をpH6.8程度に中和処理することができた。
【0042】
また、上述した曝気槽に12リットルの原水(pH7.5)(着水井の原水)を投入するとともに、コージェネレーションシステムのガスタービンからの燃焼排ガスを曝気槽の原水中にバブリングさせてこの原水をpH調整処理した。原水をpH調整処理するために、気液比0.25〜0.4(m−排ガス/m−原水)程度の燃焼排ガスを供給することによって、原水をpH6.8以下にすることができた。
【0043】
以上、本発明に従う浄水処理設備及び処理方法の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、コージェネレーションシステムの熱電発生装置の駆動源としてガスタービン18を用いているが、その駆動源としてガスエンジンを用いるようにしてもよく、この場合、ガスエンジンから排出される燃焼排ガスが利用される。尚、ガスタービン又はガスエンジンの燃料としては天然ガス(例えば、都市ガス)を用いるのが望ましく、天然ガスを燃焼することによって、その燃焼排ガス中に含まれる不純物による水道水の物性への影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態の浄水処理設備を簡略的に示すブロック図。
【図2】第2の実施形態の浄水処理設備を簡略的に示すブロック図。
【図3】図3は、図2の浄水処理設備の凝縮装置を簡略的に示す図。
【図4】溶解装置を簡略的に示す図。
【符号の説明】
【0046】
2,2A 浄水処理設備
4 着水井
6 沈殿池
8 水処理設備
10 濃縮槽
12 Mn除去槽
18 ガスタービン
19 返送ライン
20 中和槽
21,23 燃焼排ガス送給ライン
30 凝縮装置
32,34 炭酸水送給ライン
50 溶解装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水用の原水を取水する着水井と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備と、前記沈殿池にて分離された上水汚泥を濃縮する濃縮槽と、前記濃縮槽にて分離された濃縮汚泥を脱水する脱水装置と、前記濃縮槽の上澄み水に含まれたマンガン成分を除去するMn除去槽と、前記Mn除去槽からの返送水を前記着水井に返送する返送ラインと、を備えた浄水処理設備であって、
前記返送ラインには中和槽が設けられ、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスが前記中和槽に供給され、この中和槽において、前記Mn除去槽からの返送水が前記燃焼排ガスによって中和処理されることを特徴とする浄水処理設備。
【請求項2】
浄水用の原水を取水する着水井と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備と、前記沈殿池にて分離された上水汚泥を濃縮する濃縮槽と、前記濃縮槽にて分離された濃縮汚泥を脱水する脱水装置と、前記濃縮槽の上澄み水に含まれたマンガン成分を除去するMn除去槽と、前記Mn除去槽からの返送水を前記着水井に返送する返送ラインと、を備えた浄水処理設備であって、
前記返送ラインには中和槽が設けられ、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスから得られた炭酸水が前記中和槽に供給され、この中和槽において、前記Mn除去槽からの返送水が前記炭酸水によって中和処理されることを特徴とする浄水処理設備。
【請求項3】
前記炭酸水が、前記ガスエンジン又は前記ガスタービンからの前記燃焼排ガスを凝縮して炭酸水を得るための凝縮装置、又は前記燃焼排ガスを溶解して炭酸水を得るための溶解装置を用いて生成されることを特徴とする請求項2に記載の浄水処理設備。
【請求項4】
前記ガスエンジン又は前記ガスタービンからの前記燃焼排ガスが前記着水井に供給され、この着水井において、原水が前記燃焼排ガスによってpH調整処理されることを特徴とする請求項1に記載の浄水処理設備。
【請求項5】
前記ガスエンジン又は前記ガスタービンからの前記燃焼排ガスから得られた前記炭酸水が前記着水井に供給され、この着水井において、原水が前記炭酸水によってpH調整処理されることを特徴とする請求項2又は3に記載の浄水処理設備。
【請求項6】
浄水用の原水を取水する着水井と、原水に含まれた懸濁物を沈殿除去する沈殿池と、沈殿池からの上水を所要の通りに水処理する水処理設備と、を備えた浄水処理設備であって、
ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガスから得られた炭酸水が前記着水井に供給され、この着水井において、原水が前記炭酸水によってpH調整処理されることを特徴とする浄水処理設備。
【請求項7】
浄水用の原水を着水井にて取水し、取水した原水に含まれた懸濁物を沈殿池にて沈殿除去し、前記沈殿池からの上水を水処理設備によって所要の通りに水処理するとともに、前記沈殿池にて分離された上水汚泥を濃縮槽にて濃縮し、前記濃縮槽にて上澄みされた上澄み水に含まれたマンガン成分をMn除去槽にて除去し、Mn除去槽からの返送水を前記着水井に返送する浄水処理方法であって、
前記Mn除去槽と前記着水井との間に中和槽を設け、ガスエンジン又はガスタービンからの燃焼排ガス又はこの燃焼排ガスから得られた炭酸水を前記中和槽に供給し、前記中和槽にて、前記Mn除去槽からの返送水を前記燃焼排ガス又は前記炭酸水によって中和処理することを特徴とする浄水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−253052(P2007−253052A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80214(P2006−80214)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(500091416)財団法人大阪府水道サービス公社 (2)
【Fターム(参考)】