説明

浄水用スクリーンおよび該浄水用スクリーンを備えた貯水設備

【課題】道路側溝からの雨水のように、土砂や浮遊物を含む水が貯水槽等へ流入するときに、その流入水の浄化程度を従来のものよりも大きく向上させることのできる浄水用スクリーンを得る。
【解決手段】縦方向に水流入面を持つ貯水部材の前記水流入面に取り付けられ水中の異物を除去するための浄水用スクリーン70において、浄水用スクリーン70は、水流入面に取り付けられる面材71と、面材71に立設される1本または複数本の多孔材からなる筒状体72とを備える。好ましくは筒状体72の内に多孔質材料を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の異物を除去するための浄水用スクリーンおよび該浄水用スクリーンを備えた貯水設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中小河川の排水能力を上回る規模の降雨が短期間に集中して生じたときに、河川からの溢水によって災害が生じるのを防止する目的で、地中に貯水槽を備えた雨水流出抑制施設を設けることが都市部などで行われており、その一例が特許文献1に記載されている。貯水槽はコンクリート構造物の場合もあるが、特許文献2に記載のように、凸部からなる列が一定の間隔を置いて多列に平行に形成されている樹脂成形品である貯水空間形成部材の複数枚を交互に直角に交差した姿勢で積層して形成された貯水槽が用いられることも多い。
【0003】
このような施設において、雨水とともに砂やゴミ等の固形物が貯水槽内に流れ込むのを防止するために、通常、特許文献1に記載のよう、雨水の流入経路に沈砂桝が設けられ、さらに、沈砂桝で除去できなかった細かい砂や浮遊物を除去するために、沈砂桝から貯水槽への水流入部に編み目の細かいシート状の浄水用スクリーンが設けられる。
【0004】
また、特許文献3には、道路側溝に集水された雨水が排水ポンプ設備の雨水流入槽に流れ込むときに、雨水とともに流れ込むごみ等の異物を除去するための浄水用スクリーンとして、浄水用スクリーンを水流れ込み場所に設置したとき浄水用スクリーンの水流れ込み面に高低差がつくように構成したものが記載されている。この構成の浄水用スクリーンを用いることにより、浄水用スクリーンの水流れ込み面の高低の低い部分にごみ等の異物が詰まっても、高い部分はまだ異物で覆われておらず、ここを通して雨水が流れ込むことができるので、長時間に亘って浄水用スクリーン全体が目詰まりするのを回避できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−229803号公報
【特許文献2】特開2009−24447号公報
【特許文献3】特開2005−155149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地下の貯水槽に貯水した雨水を、道路面の清掃のために、あるいは夏季に路面温度が過度の上昇するのを防止するために用いれば、水資源の節減となり好ましい。また、道路に沿って植栽帯が設置されている場合に、貯水した雨水を植栽帯への散水に用いることができれば、やはり水資源の節減となり好ましい。そして、そのような用途に貯水された雨水を用いる場合には、浮遊物やごみ等がほぼ完全に除去された、いわば浄水化した雨水であることがより望ましい。
【0007】
しかし、従来の雨水流出抑制施設において、貯水槽への水流入部に取り付けられている浄水用スクリーンは、特許文献1に例示されるように、単に編み目の細かいシート状の浄水用スクリーン(フィルター)であることが多く、微細な浮遊物の除去が十分とはいえない。また、薄い樹脂シートなどが雨水中に混入しているような場合に、それが浄水用スクリーン面に張り付いて目詰まりを生じさせる恐れがある。特許文献3に記載のように、排水用浄水用スクリーンの水流れ込み面に高低差がつくように構成することによって、浄水用スクリーンの全面が目詰まりするのを回避できるとしても、浄水用スクリーンが単に編み目の細かいシート状の浄水用スクリーンである以上、雨水を浄水化できる程度は、特許文献1に記載される雨水流出抑制施設の貯水槽への水流入部に取り付けられる浄水用スクリーン(フィルター)と同じである。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、道路側溝からの雨水のように、土砂や浮遊物を含む水が貯水槽等へ流入するときに、その流入水の浄化程度を従来のものよりも大きく向上させることのできる浄水用スクリーンを提供することを第1の課題とする。また、その浄水用スクリーンを備えた貯水設備を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による浄水用スクリーンは、縦方向に水流入面を持つ貯水部材の前記水流入面に取り付けられ水中の異物を除去するための浄水用スクリーンであって、前記水流入面に取り付けられる面材と、前記面材に立設される1本または複数本の多孔材からなる筒状体とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明による浄水用スクリーンでは、面材に立設される筒状体に形成された孔を通過して、水は貯水部材内に流入する。浄水用スクリーンを通過する際に、孔を通過できない大きさの異物は除去される。そのために、浄水用スクリーンの水通過面積は、多孔材からなる面材のみからなる場合と比較して、面材に立設された筒状体の表面積(端面を除く)の分だけ大きくなる。従って、流入しようとする水中に樹脂シートのような浮遊するシート状材が含まれており、それが浄水用スクリーンの水が通過する領域を覆うことがあっても、水が通過する孔のすべてが当該シートによって覆われる確率はきわめて低くなり、水の流入に支障が出る程度に浄水用スクリーンが目詰まりしてしまうのを確実に回避することができる。
【0011】
本発明による浄水用スクリーンにおいて、好ましくは、前記筒状体内には多孔質材料が封入される。多孔質材料が濾材として機能することで、前記孔を通過した微細な異物等は、濾材に吸着されて除去される。それにより、水の濁りを改善する等、貯水部材に流れ込む水の水質を一層向上させることができる。それにより、貯水部材に貯水される水の水質を長期に安定させることができる。また、筒状体を面材に対して着脱自在に取り付けるようにしてもよく、この態様では封入した多孔質材料の交換が容易となり、長期的にわたって、浄水用スクリーン度、すなわち筒状体を通過するときの水の浄化度を所要の値に維持することもできる。
【0012】
本発明による浄水用スクリーンにおいて、使用する多孔質材料に制限はないが、好ましい例として、多孔質ウレタンを含む樹脂発泡体、活性炭や木炭や竹炭等の炭素、ゼオライト等の鉱物、多孔質セラミックス、不織布、合成有機系高分子材料、天然有機系高分子材料のいずれかまたは2つ以上の組み合わせが挙げられる。このような多孔質材料を筒状体内に封入することによって、水中の有機物質、浮遊物質、微粒子、懸濁物質、臭気成分のような物質をより確実に除去することが可能となる。
【0013】
本発明による浄水用スクリーンにおいて、前記筒状体の長さや形状は任意である。垂直断面形状としては、円形、楕円形、多角形等を挙げることができる。好ましくは、筒状体の上面側を、水平面ではなく、斜面あるいは曲面としておくことは好ましい。それにより、水位が低下するときに、筒状体の上面側の流れを大きくすることができ、上面に堆積している異物(固形物)を流し出すことができる。
【0014】
また、筒状体は細長いものとなるので、姿勢を安定させるために、面材にアングル材を取り付け、そこに筒状体を取り付けるようにしてもよい。さらに、筒状体内にアングル材を取り付けることで、筒状体内部の水の流れを乱流あるは渦流とすることができ、内部に封入した多孔質材料の偏りを効果的に是正することができる。
【0015】
本発明による浄水用スクリーンにおいて、前記面材は、無孔の面材であってもよく、有孔の面材であってもよい。有孔の場合、孔の大きさは、筒状体が有する孔と同じ大きさより小さな孔であることが好ましい。貯水部材内に貯水する水に求められる浄化程度に基づき、適宜設定すればよい。
【0016】
本発明による浄水用スクリーンは、縦方向に水流入面を持つ任意の貯水部材の水流入面に取り付けることができる。使用の具体的一例として、側溝からの水が流入する沈砂桝と前記沈砂桝に流入した水を貯水する貯水槽とを少なくとも備えた貯水設備であって、前記沈砂桝から前記貯水槽への水流入部に上記した浄水用スクリーンが配置されている貯水設備を挙げることができる。
【0017】
この態様の貯水設備では、浄化された雨水が貯水槽に貯水されるので、その水を道路面の清掃のための水として、夏季に路面温度が過度の上昇するのを防止するための水として、さらには、道路に沿って設置されている植栽帯への散水として、有効に用いることが可能となり、地下水や水道水を使用する場合と比較して、水資源を効果的に節減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、雨水のように異物を含む水が貯水槽等へ流入するときに、その流入水を高度に浄化することのできる浄水用スクリーンが得られる。また、その浄水用スクリーンを備えた貯水設備が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による浄水用スクリーンの2つの例を示す斜視図。
【図2】本発明による浄水用スクリーンを備えた貯水設備が道路散水システムに用いられている一例を説明する模式的斜視図。
【図3】図2に示した道路散水システムを備えた道路面を模式的に示す斜視図。
【図4】図2に示した貯水設備の一例を示す断面図。
【図5】本発明による浄水用スクリーンを備えた貯水設備が道路散水システムに用いられている他の例を説明する模式的斜視図。
【図6】本発明による浄水用スクリーンを備えた貯水設備の他の例を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明による浄水用スクリーンおよびそれを備えた貯水設備を説明する。
【0021】
図1は、本発明による浄水用スクリーン70の2つの例を示している。図1(a)に示す浄水用スクリーン70Aは、垂直方向の面材71と、該面材71に立設された1本または複数本(図示のものでは4本)の円筒体である筒状体72を備える。垂直方向の面材71は、縦方向に水流入面を持つ貯水部材(図1には図示されない)の前記水流入面に取り付けられる部分であり、図では矩形として示されるが、取り付けるべき水流入面の形状に合わせて適宜の形状とすればよい。面材71は、無孔であってもよく、図示のもののように有孔であってもよい。筒状体72は、一例として金属メッシュのような多孔材で作ることが必須である。面材71が有孔材である場合には、その孔径は筒状体72の孔径よりも小さいことが望ましい。
【0022】
筒状体72の長さは、浄水用スクリーン70Aを取り付ける場所(例えば後に説明する沈砂桝20等)の水平断面の形状と大きさに応じて設定される。その水平断面を横断できる長さであってもよいが、取り付けが困難なことと水の流れに対する抵抗が大きくなるすぎることから、水平断面の途中までの長さであることが好ましい。筒状体72の太さや本数も、水の流れに対する抵抗と求められる浄化度を考慮して適宜の数とされる。また、筒状体72は面材71に対して着脱できるように取り付けられていることが好ましく、さらに、図1(b)に示すように、面材71側に取り付けたアングル材74によって支持されていることが好ましい。
【0023】
上記の浄水用スクリーン70Aを図示しない縦方向に水流入面を持つ貯水部材の水流入面に取り付けたときに、流入する水の中に薄手の樹脂シート等が含まれているような場合に、それが浄水用スクリーン70Aに張り付くことがおこる。しかし、張り付いた樹脂シート等によって浄水用スクリーン70Aが目詰まりする面積のスクリーンの全面積に占める割合は、スクリーンが単に平面体である場合と比較して、筒状体72を有している分だけ小さくなり、結果として浄水用スクリーン70Aに支障となる程度の目詰まりが生じる確率を大きく低減することができる。
【0024】
筒状体72の内部は空であってもよい。しかし、浄水用スクリーン70Aを通過した後の水の浄化度を一層高くすることを望む場合には、筒状体72の内部に適宜の多孔質材料を充填する。充填した多孔質材は濾材として機能して、雨水中の微細な異物や浮遊物を除去することができ、浄水用スクリーン70Aを通過した後の水の浄化度は一層高くなる。多孔質材料には、多孔質ウレタンを含む樹脂発泡体、活性炭や木炭や竹炭等の炭素、ゼオライト等の鉱物、多孔質セラミックス、不織布、合成有機系高分子材料、天然有機系高分子材料等を例示できる。
【0025】
図1(b)に示すように、筒状体72をアングル材74で支持する態様においては、筒状体内部の水の流れを乱流あるは渦流とすることができ、内部に封入した多孔質材料の偏りを効果的に是正することができる。
【0026】
図1(c)示すスクリーン70Bは、筒状体72の垂直断面が矩形状であり、その一つの頂辺73を最上位とした姿勢で面材71に取り付けられている点で、図1(a)に示したスクリーン70Aと相違する。この形態のスクリーン70Bを縦方向に水流入面を持つ貯水部材の水流入面に取り付けた場合、流入側の水位が低下するときに、水の流れによって筒状体72の上面側に堆積している異物(固形物)を容易に流し出すことができ、異物(固形物)による筒状体72部分の目詰まりを、手で除去することなく、解消することが可能となる。なお、同様な作用効果は、図1(a)に示した断面円形の筒状体72においても、ある程度は期待することができる。
【0027】
次に、上記の浄水用スクリーン70(70A、70B)の実際の使用態様を、道路側溝4からの水が流入する沈砂桝20と該沈砂桝20に流入した水を貯水する貯水槽30とを少なくとも備えた貯水設備Aに用いた例で説明する。
【0028】
図2において、1は車道であり、車道1の中央には中央分離帯としての植栽帯2が路線方向に設置されている。車道1の側方には歩道3が設けられ、車道1と歩道3の境目にはU字側溝からなる道路側溝4が形成されている。また、歩道3にはバス停留所等の適宜の建造物5が設置されていて、この例では、建造物5の屋根面にはソーラーパネル6が張り付けられている。
【0029】
道路側溝4には所定の間隔をおいて集水桝10が設けてあり、道路側溝4内を流れる雨水等は該集水桝10に流入する。そして、集水桝10に流入した水は、地中に埋設された導水管11を通って、貯水設備Aに流入する。この例において、貯水設備Aは、沈砂桝20と、貯水槽30と、流出桝40とを備える。流出桝40には吐出ポンプ50が取り付けてあり、その吐出側には長尺状の散水パイプ60が取り付けてある。沈砂桝20、貯水槽30、流出桝40は道路下に埋設しており、図3に示すように、沈砂桝20と流出桝40は道路面に管理口としての開口21、41を有している。
【0030】
沈砂桝20はコンクリート造であり、一方の壁に前記導水管11との接続開口22を有し、他の壁には上下方向に距離をおいて2つの開口23、24(図4参照)を有している。上位の開口23は、前記接続開口22よりも少し下方の位置にあり、下位の開口24は当該沈砂桝20の底部25よりも上位の位置にある。そして、各開口23、24に、上記した浄水用スクリーン70が取り付けられている。
【0031】
貯水槽30は、限定されないが、この例では前記した特許文献2に記載されているような、凸部からなる列が一定の間隔を置いて多列に平行に形成されている樹脂成形品である貯水空間形成部材31の複数枚を交互に直角に交差した姿勢で積層して形成された貯水槽であり、全体が非透水性シート32で覆われている。貯水槽30の下には基礎材としてのコンクリート板33が、上面には荷重分散板としてのコンクリート板34が設置されている。
【0032】
貯水槽30の底面は、沈砂桝20に形成した下位の開口24よりも少し下方に位置し、上面は沈砂桝20に形成した上位の開口23よりも少し上方に位置している。貯水槽30の一方の端面側は、沈砂桝20の前記2つの開口23、24が形成された側壁と接しており、該2つの開口を介して、沈砂桝20の内部空間と貯水槽30の貯水空間とが連通している。
【0033】
流出桝40はコンクリート造であり、その一側壁は貯水槽30の他方の端面側と接している。そして、貯水槽30に接する前記側壁であって、貯水槽30の上位部分と下位部分に対向する部位に、2つの開口41、42が形成されている。図示されないが、該開口41、42には、貯水槽30内に貯水された水の流出を規制できる適宜のオリフィス、より好ましくは可動オリフィスが取り付けられており、流出桝40の底部には前記した吐出ポンプ50が防水された態様で設置されている。
【0034】
図2に示すように、吐出ポンプ50の吐出側には地表面への立ち上がり管61が接続しており、該立ち上がり管61は、図3に示すように、前記した車道1の中央に設置した植栽帯2を路線方向に走っている散水パイプ60に接続している。上記の構成によって、道路散水システムが構築されている。
【0035】
図示されないが、この例では、停留所5またはその近傍にはソーラーパネル6が発電する電力を蓄える蓄電池施設が設けてあり、商用電力に加えて、該蓄電池からの電力によっても吐出ポンプ50が作動するようになっている。
【0036】
図5は、上記の道路散水システムを備えた道路面の他の例を模式的に示している。この態様では、車道1の中央に植栽帯2が設置されてなく、車道1の中央近傍に前記した散水パイプ60のみが埋設されていて、その吐出孔62が道路面に現れている。他の構成は、図3および図4に示したものと同じであり、図において同じ符号を付している。
【0037】
上記の道路散水システムでは、雨が降ると、車道1やその周辺の雨水は道路側溝4に流入する。流入した雨水は集水桝10に集められ、そこから導水管11を通って沈砂桝20内に流入する。流入した雨水に含まれている土砂は、沈砂桝20の底部に沈降して除かれる。雨水の流入量が大きくなり、その水面レベルが下位の開口24のレベルより高くなると、雨水は貯水槽30内に入り込み、そこに貯水される。貯水槽30に貯水された雨水は、流出桝40の開口42に設けたオリフィスに規制される量だけ流出桝40側に流出し、残量はそのまま貯水槽30内に貯水される。
【0038】
また、貯水槽30内の空気が抜けないと貯水槽30内に雨水が流入しずらくなるので、上位の開口23、41は貯水槽30内の空気を抜く通気口として作用する。また、沈砂桝20に流入する雨水の量がさらに大きくなった場合には、上位の開口23からも雨水は貯水槽30内に入り込み、そこに貯水される。また、貯水槽30が満水になった場合、上面にあるコンクリート板34に浮力がかかるのを防止するために、満水になる前に上位の開口41から流出桝40へ水を出すことができる。
【0039】
散水パイプ60からの散水が必要となったときに、吐出ポンプ50を作動する。それにより、流出桝40内に貯水されている雨水は、立ち上がり管61を経由して散水パイプ60に圧送され、その吐出孔から、図3および図4に示す態様では植栽帯2の植物に散水される。また、図5に示す態様では、路面に埋設された散水パイプ60の地表面に開口した吐出孔から、道路面に散水される。吐出ポンプ50による汲み上げが始まると、流出桝40の開口42に設けたオリフィス部分に負圧が発生するので、貯水槽30内に貯水されている雨水は流出桝40側に引き出され、散水される。可動オリフィスを用いる場合には、吐出ポンプ50による汲み上げが始まると同時にオリフィスの開度を大きくすることでより多くの貯水を連続的に散水することができる。
【0040】
道路面に直接散水する態様では、散水された水は道路面を清掃しかつ路面の温度を奪いながら、蒸発する分を除いて再び道路側溝4内に流入する。そして、再度沈砂桝20に流入し、貯水あるいは散水に利用される。
【0041】
このような散水設備の複数個を道路に沿って設置することで、散水車を走らせることなく植栽帯2の植物への散水や道路面の清掃を雨水を利用して行うことができ、車速の異なる散水車と一般車が走行することに起因する高速道路等での交通障碍が発生するのを回避することができる。
【0042】
雨水量が少ないときには、十分な量の水を貯水槽30内に貯水できないことが起こり得る。それを回避するために、水道水や河川水を沈砂桝20あるいは貯水槽30に導入できるようにしておくことは好ましい態様である。
【0043】
道路散水システムが設置される道路環境によっては、道路側溝4に流れ込む雨水中に薄手の樹脂シート等の異物や極微少な浮遊物が多く含まれる場合がある。そのような状況では、沈砂桝20の開口23、24に平板状のスクリーンを取り付けただけでは、スクリーンにシートが張り付いて流路面積を極度に小さくしてしまうことが起こる。また、微少な浮遊物はスクリーンを通過して貯水槽30内に入り込むことも起こる。いずれの場合も、貯水槽30の貯水能力に悪影響を与えるので好ましくない。
【0044】
上記した本発明による浄水用スクリーン70を沈砂桝20の開口23、24に取り付けることで、上記の不都合を効果的に解消することができる。特に、筒状体72の内部に適宜の多孔質材料を充填することで、貯水槽30に貯水される雨水の浄化度を一層高くすることができる。すなわち、充填した多孔質材は濾材として機能して、雨水中の微細な異物や浮遊物を除去することができ、貯水の浄化度は高くなる。多孔質材料には、多孔質ウレタンを含む樹脂発泡体、活性炭や木炭や竹炭等の炭素、ゼオライト等の鉱物、多孔質セラミックス、不織布、合成有機系高分子材料、天然有機系高分子材料等を例示できる。
【0045】
上記した道路散水システムでは、このようにして浄化度の高くなった雨水を貯水槽30に貯水しておくことで、吐出ポンプ50でポンプアップした貯水を前記した停留所5の屋根面に張り付けたソーラーパネル6の洗浄水として用いることが可能となり、道路散水システム全体としての一層の効率化を図ることができる。
【0046】
図6は、本発明の浄水用スクリーン70の備えた貯水設備の他の例を示している。ここでは、道路側溝4に付設される集水桝10の出口側開口12にも、本発明の浄水用スクリーン70が取り付けられている。集水桝10の出口側開口12にも浄水用スクリーン70を取り付けることで、貯水槽30に流入する雨水の浄化度をさらに高くすることができる。なお、この場合、集水桝10に取り付ける浄水用スクリーン70の穴径を、沈砂桝20に取り付ける浄水用スクリーン70の穴径よりも大きくすることが望ましい。それにより、大きなものを順に排除することができ、各浄水用スクリーンでの除去効率が向上する。
【符号の説明】
【0047】
A…貯水水設備、
70…水中の固形物や浮遊物を除去できる浄水用スクリーン、
71…面材、
72…筒状体
1…車道、
2…中央分離帯としての植栽帯、
3…歩道、
4…道路側溝、
5…建造物、
6…ソーラーパネル、
10…集水桝、
11…導水管、
20…沈砂桝、
30…貯水槽、
40…流出桝、
50…吐出ポンプ、
60…長尺状の散水パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に水流入面を持つ貯水部材の前記水流入面に取り付けられ水中の異物を除去するための浄水用スクリーンであって、前記浄水用スクリーンは、前記水流入面に取り付けられる面材と、前記面材に立設される1本または複数本の多孔材からなる筒状体とを備えることを特徴とする浄水用スクリーン。
【請求項2】
前記筒状体の内部に封入された多孔質材料をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の浄水用スクリーン。
【請求項3】
前記多孔質材料は、多孔質ウレタンを含む樹脂発泡体、活性炭や木炭や竹炭等の炭素、ゼオライト等の鉱物、多孔質セラミックス、不織布、合成有機系高分子材料、天然有機系高分子材料のいずれかまたは2つ以上の組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載の浄水用スクリーン。
【請求項4】
前記筒状体は、上面側が斜面あるいは曲面とされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の浄水用スクリーン。
【請求項5】
側溝からの水が流入する沈砂桝と前記沈砂桝に流入した水を貯水する貯水槽とを少なくとも備えた貯水設備であって、前記沈砂桝から前記貯水槽への水流入部には、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の浄水用スクリーンが配設されていることを特徴とする貯水設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate