説明

浚渫方法

【課題】所定の深さの浚渫を行なう際に、含泥率を向上させるとともに土砂をすくう回数を低減させて、効率よく作業を行なえる浚渫方法春を提供する。
【解決手段】ウインチ装置13によって吊りワイヤ10aを介して昇降される第1バケットによって、予め設定された浚渫深さDに対して仕上げ深さtを残して浚渫を行なった後、第1バケットに替えて、第1バケットよりも最大掘り深さが小さく、かつ最大開口面積が大きい仕上げバケット1を吊りワイヤ10aに取付け、この仕上げバケット1によって仕上げ深さtの仕上げ掘りを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫方法に関し、さらに詳しくは、所定の深さの浚渫を行なう際に、含泥率を向上させるとともに土砂をすくう回数を低減させて、効率よく作業を行なえるようにした浚渫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業船等に設置されたウインチ装置によって、吊りワイヤを介して昇降されるグラブバケットによって浚渫を行なう方法が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。従来、所定の深さの浚渫を行なう場合、1つのウインチ装置に対しては、工程の最初から最後までグラブバケットを付け替えることなく1種類のグラブバケットを使用して浚渫を行なうことが一般的であった。
【0003】
そのため、最後の工程となる仕上げ掘りの際に、仕上げ深さが、そのバケットによる最大掘り深さよりも小さい場合は、バケットに余分な水分を取り込んでしまうため、含泥率(バケット容量に対する土砂量の割合)が低くなり、作業効率を低下させる要因になっていた。この余分な水分は、さらに浚渫した土砂の運搬効率、土砂処理場での処理効率を低下させていた。
【0004】
また、この方法では、バケットの最大開口面積が一定なので、一度に土砂をすくうことのできる最大面積が変わることがない。そのため、仕上げ掘りの際に一度にすくい上げる土砂量が少ないにも関らず、浚渫対象となる全領域を浚渫するには、土砂をすくい上げる回数を低減することができず、作業効率を向上させるには不利な方法であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−335834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、所定の深さの浚渫を行なう際に、含泥率を向上させるとともに土砂をすくう回数を低減させて、効率よく作業を行なえるようにした浚渫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の浚渫方法は、ウインチ装置によって吊りワイヤを介して昇降される第1のグラブバケットによって、予め設定された浚渫深さに対して仕上げ掘りの仕上げ深さを残して浚渫を行なった後、第1のグラブバケットに替えて、このグラブバケットよりも最大掘り深さが小さく、かつ最大開口面積が大きい仕上げ掘りグラブバケットを前記吊りワイヤに取付け、この仕上げ掘りグラブバケットによって仕上げ掘りを行なうことを特徴とするものである。
【0008】
ここで、例えば、前記仕上げ掘りグラブバケットのバケット容量を、前記第1のグラブバケットのバケット容量と同じにする。また、前記仕上げ掘りグラブバケットに、そのバケット容量を変えることができるバケットカバーを着脱可能に設け、仕上げ深さに応じてこのバケットカバーを装着して仕上げ掘りを行なうこともできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウインチ装置によって吊りワイヤを介して昇降される第1のグラブバケットによって、そのバケット容量を満たすように土砂をすくって、予め設定された浚渫深さに対して仕上げ掘りの仕上げ深さを残して浚渫を行なうことができる。その後、第1のグラブバケットに替えて、このグラブバケットよりも最大掘り深さが小さく、かつ最大開口面積が大きい仕上げ掘りグラブバケットを吊りワイヤに取付け、この仕上げ掘りグラブバケットによって仕上げ掘りを行なうので、仕上げ深さが小さい場合でも、第1のグラブバケットに比して、バケットに取り込む余分な水分が少なくなり高い含泥率を確保することができる。
【0010】
また、より最大開口面積の大きな仕上げ掘りグラブバケットを用いることによって、一度に土砂をすくうことができる最大面積が大きくなる。そのため、浚渫対象となる全領域を仕上げ掘りするに際して、土砂をすくい上げる回数を低減することが可能になる。
【0011】
このように、最大掘り深さおよび最大開口面積が異なる2種類のグラブバケットを巧みに利用することにより、予め設定された浚渫深さまで効率よく浚渫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】仕上げ掘りグラブバケットを例示する正面図である。
【図2】図1のグラブバケットが全開した状態を例示する正面図である。
【図3】図1の側面図である。
【図4】図1のグラブバケットにバケットカバーを装着した状態を例示する正面図である。
【図5】第1のグラブバケットを例示する正面図である。
【図6】図5の第1のグラブバケットが全開した状態を例示する正面図である。
【図7】図5の側面図である。
【図8】図5の第1のグラブバケットによる浚渫工程を例示する説明図である。
【図9】図1の仕上げ掘りグラブバケットによる仕上げ掘り工程を例示する説明図である。
【図10】図1の仕上げ掘りグラブバケットと図5の第1のグラブバケットの最大開口面積を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の浚渫方法を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0014】
本発明では、図5〜図7に例示する第1のグラブバケット11(以下、第1バケット11という)と、図1〜図3に例示する仕上げ掘りグラブバケット1(以下、仕上げバケット1という)との2種類のバケットを使用する。
【0015】
第1バケット11は、吊りワイヤ10aに接続された上フレーム3を有し、上フレーム3には、2つのアーム5、5がそれぞれの一端部を支軸6cを介して回転自在に支持されている。それぞれのアーム5、5の他端部には、支軸6bを介してそれぞれのシェル12、12が回転自在に支持されている。
【0016】
それぞれのシェル12、12の上端部は、下フレーム4に設けられた支軸6aによって回転自在に支持されている。下フレーム4は開閉ワイヤ10bによって上フレーム3に対して上下移動するようになっている。そして、下フレーム4を下方移動させると、それぞれのシェル12、12が支軸6b、6bを中心に回転して、図6に例示するように開口した状態になる。
【0017】
下方移動させた下フレーム4を、開閉ワイヤ10bによって上方移動させると、それぞれのシェル12、12が支軸6b、6bを中心に回転して、互いの対向する部分を当接させて図5に例示するように閉口した状態になり密閉空間が形成される。この密閉空間の容積がバケット容量になる。バケット容量は、作業効率を向上させるために、ウインチ装置13の能力の上限近くに設定する。
【0018】
このように、一対のシェル12、12によって形成された密閉空間には、土砂が取り込まれることになる。一対のシェル12、12の互いの対向する部分には、密閉性を確保するシール部材を設けるとよい。
【0019】
図7に例示するように、一対のシェル12、12は幅W2、最大掘り深さ(バケット深さ)はd2になっている。
【0020】
また、それぞれのシェル12、12の壁面には、この壁面に形成された貫通孔9aを開閉する開閉扉9bが設けられている。一対のシェル12、12を開いた状態で第1バケット11を水底に投下する際には、開閉扉9bが開いて貫通孔9aを通じて水が通過するので円滑な投下が可能になっている。また、一対のシェル12、12を閉じた状態で水上に引き上げる際には、開閉扉9bが閉じて取り込んだ土砂が外部に漏れないようになっている。
【0021】
仕上げバケット1の基本構造は、第1バケット11と同じなので、相違点のみを説明する。仕上げバケット1は、第1バケット11よりも最大掘り深さが小さく、かつ最大開口面積が大きくなっている。図3に例示するように、一対のシェル2、2の幅W1は第1バケット11の一対のシェル12、12の幅W2に比して幅広(W1>W2)になっている。また、最大掘り深さ(バケット深さd1)が、第1バケット11の最大掘り深さ(バケット深さd2)よりも小さくなっている(d1<d2)。
【0022】
また、それぞれのシェル2、2の内部には固定アングル8が設けられている。図4に例示するように、固定アングル8にはバケットカバー7が着脱できるようになっている。バケットカバー7を固定アングル8に取り付けることにより、バケット容量を変えることが可能になっている。固定アングル8は複数の異なる位置(上下位置)に設けることもできる。尚、第1バケット11にも同様にバケットカバー7を着脱可能にしてバケット容量を変えるようにすることもできる。
【0023】
図8に例示するように作業船14の上にはクレーンが備わり、そのクレーンのウインチ装置13によって、吊りワイヤ10aが巻取りおよび繰り出されるようになっている。吊りワイヤ10aには第1バケット11(上フレーム3)が取り付けられている。
【0024】
まず、この第1バケット11を用いて、予め設定された浚渫深さDに対して仕上げ深さtを残して浚渫を行なう。仕上げ深さtは、第1バケット11の最大掘り深さよりも小さくなっている。したがって、第1バケット11により通常に浚渫を行なうと、余分な水分を多く取り込んでしまう。
【0025】
そこで、仕上げ深さtを残した浚渫の後に、図9に例示するように第1バケット11に替えて、仕上げバケット1を吊りワイヤ10aに取り付ける。そして、仕上げバケット1によって、残っている仕上げ深さtの仕上げ掘りを行なう。
【0026】
仕上げバケット1は、上述したように第1バケット11に比して最大掘り深さが小さいため、第1バケット11によって通常の浚渫を行なう場合に比べて、余分な水分を取り込むことがなくなる。したがって、浚渫の際の含泥率が高くなり、作業効率を向上させることが可能になる。含泥率が高いので(含水率が低いので)、浚渫した土砂の運搬効率、土砂処理場での処理効率も向上させることが可能になる。
【0027】
また、図10に例示するように仕上げバケット1の最大開口面積S1は、第1バケット11の最大開口面積S2に比べて大きいので、一度に土砂をすくうことができる最大面積が大きくなる。そのため、浚渫対象となる全領域Sを仕上げ掘りするに際して、土砂をすくい上げる回数を低減することができる。
【0028】
このように、順次、最大掘り深さおよび最大開口面積が異なる2種類のグラブバケット(第1バケット11、仕上げバケット1)を用いて浚渫することにより、予め設定された浚渫深さDまで作業効率よく浚渫することができる。
【0029】
仕上げバケット1のバケット容量は、ウインチ装置13の能力の上限を超えない範囲で、第1バケットのバケット容量の90%〜110%、或いは、第1バケット11のバケット容量と同じにするとよい。これにより、ウインチ装置13の能力を無駄にすることなく、最大限活用することができる。
【0030】
仕上げ深さtに応じて、仕上げバケット1にバケットカバー7を装着して仕上げ掘りを行なうこともできる。即ち、バケットカバー7によって、仕上げバケット1のバケット容量を仕上げ深さtに適合するように調整して浚渫を行なう。
【0031】
具体的には、縦断面積の異なる(上下突出量が異なる)複数種類のバケットカバー7を用意して、この中から選択した1種類のバケットカバー7をそれぞれのシェル2、2の固定アングル8に取り付けてバケット容量を調整する。或いは、1種類のバケットカバー7を用いて、それぞれのシェル2、2に設けられた位置(上下位置)の異なる複数の固定アングル8の中から選択した1つの位置の固定アングル8にバケットカバー7を取り付けてバケット容量を調整する。
【0032】
上記実施形態では、第1バケット11および仕上げバケット1を密閉式のグラブバケットにしているが、本発明は、いずれか一方もしくは両方がシェルの上面を開口したオープン式のグラブバケットである場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 仕上げ掘りグラブバケット
2 シェル
3 上部フレーム
4 下部フレーム
5 アーム
6a〜6c 支軸
7 バケットカバー
8 固定アングル
9a 貫通孔9a
9b 開閉扉
10a 吊りワイヤ
10b 開閉ワイヤ
11 第1のグラブバケット
12 シェル
13 ウインチ装置
14 作業船

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインチ装置によって吊りワイヤを介して昇降される第1のグラブバケットによって、予め設定された浚渫深さに対して仕上げ掘りの仕上げ深さを残して浚渫を行なった後、第1のグラブバケットに替えて、このグラブバケットよりも最大掘り深さが小さく、かつ最大開口面積が大きい仕上げ掘りグラブバケットを前記吊りワイヤに取付け、この仕上げ掘りグラブバケットによって仕上げ掘りを行なう浚渫方法。
【請求項2】
前記仕上げ掘りグラブバケットのバケット容量を、前記第1のグラブバケットのバケット容量と同じにする請求項1に記載の浚渫方法。
【請求項3】
前記仕上げ掘りグラブバケットに、そのバケット容量を変えることができるバケットカバーを着脱可能に設け、仕上げ深さに応じてこのバケットカバーを装着して仕上げ掘りを行なう請求項1または2に記載の浚渫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−159545(P2010−159545A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−866(P2009−866)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】