説明

浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システム

【課題】本発明は緊急時に遮断弁を速やかに閉弁させることを課題とする。
【解決手段】貯液タンク30の排水経路40A,40Bには、浮屋根20の上面22に溜った雨水を外部に排水するための排水管50A,50Bと、排水管50A,50Bを遮断する遮断弁60A,60Bと、遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bにガス圧を供給する遮断弁駆動ユニット70A,70Bとが設けられている。アクチュエータ部62A,62Bは、ピストン・シリンダ機構からなる。遮断弁駆動ユニット70A,70Bは、地震発生を検知すると、液化ガスボンベ160A1,160A2から液化ガスを噴出させ、気化したガスを遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに供給する。これにより、アクチュエータ部62A,62Bのピストンが駆動され、その駆動力により遮断弁60A,60Bが閉弁動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムに係り、特に緊急時に浮屋根の排水管に設けられた遮断弁を閉弁駆動させるように構成された遮断弁システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、精油所などのように油液を大量に貯蔵する貯液タンクには、油液が蒸発することを防止する浮屋根が設けられている。この浮き屋根は、貯液タンクの貯蔵量(液面高さ)に応じて昇降するものであるが、雨水が上面に溜らないように排水管を備えている。
【0003】
この浮屋根の排水管は、貯液タンクの周囲に設けられた排水溝(または下水管)に排水するように設けられているので、例えば、地震発生などの緊急時に貯液タンク内の油液が揺動して油液の一部が浮屋根の上面に漏れてしまうことがある。そのままにしておくと、浮屋根の上面に漏れた油液が排水管を通って油液が排水溝へ排出されてしまう。
【0004】
このような油液の漏洩発生時においては、油液漏洩検知器を排水溝に設けると共に、油液漏洩検知時に閉弁動作する緊急遮断弁を排水管に設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような遮断弁を有するシステムでは、油液漏洩検知器が油液の漏洩を感知すると、液化ガスが封入された液化ガスボンベを開封して液化ガスが気化して得られるガス圧力により緊急遮断弁を閉弁駆動することで浮屋根の上面に漏れた油液が外部に排出されることを防止することが検討されている。
【特許文献1】実公昭60−37355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムにおいて、液化ガスボンベから噴射された低温の液化ガスがガス供給管を通過する際にガス供給管の温度が低下することにより、液化ガスの気化速度が抑えられて圧力上昇率が鈍くなり、遮断弁に供給されるガス圧が迅速に上昇せず、地震などの緊急自体が発生してから遮断弁が遮断(閉弁駆動)するまでに時間がかかるという問題があった。
【0006】
特に、浮屋根式貯液タンクの貯液タンクは、大型のものが多く、ガス供給管の長さが必然的に長くなり、この結果、緊急自体が発生してから遮断弁が遮断(閉弁駆動)するまでに要する時間がより大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0009】
本発明は、浮屋根式貯液タンクの上部開口を閉塞する浮屋根に連通され、当該浮屋根の上面に溜まった雨水を外部に排水する排水管と、該排水管に設けられた遮断弁と、ガス圧の供給により前記遮断弁の弁体を閉弁駆動するアクチュエータと、液化ガスが封入されたボンベを有し、緊急時に当該ボンベを開封することによって当該液化ガスを気体発生源として発生する気化ガスを前記アクチュエータに供給する遮断弁駆動ユニットと、を備えた浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムにおいて、前記遮断弁駆動ユニットは、一端が前記アクチュエータに連通され、他端が前記ボンベに連通されたガス圧供給管と、前記ガス圧供給管に設けられ、前記ボンベから噴出された気化ガスの気化を促進することでガス圧を増圧する増圧手段と、を備えることにより、上記課題を解決するものである。
【0010】
本発明は、請求項1に記載の浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムであって、前記ガス圧供給管または増圧手段に供給された気化ガスの圧力が所定圧力以上の圧力に達した場合に前記ガス圧供給管内の気化ガスを外部に放出する放出弁を備えることにより、上記課題を解決するものである。
【0011】
本発明は、請求項1または2に記載の浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムであって、前記増圧手段は、前記ガス圧供給管の流路面積よりも大きな流路面積を有する空間を形成する容器であることにより、上記課題を解決するものである。
【0012】
本発明は、前記遮断弁を有する排水管が複数設けられると共に、前記複数の遮断弁に対応する数の遮断弁駆動ユニット及び前記ガス圧供給管が設けられ、前記複数のガス圧供給管は、前記一の増圧手段の流入側に連通され、前記一の増圧手段の流出側より分岐されて前記複数の遮断弁の夫々を個別に駆動する複数のアクチュエータに連通されることにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボンベから噴出された気化ガスの気化を促進することで液化ガスの気化速度が速くなり、遮断弁に供給されるガスの圧力上昇率が高まるため、緊急時において遮断弁が遮断(閉弁駆動)するまでに要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明による浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムの一実施例を示す構成図である。図1に示されるように、遮断弁システム10は、浮屋根20を有する貯液タンク30の複数(本実施例では2本)の排水経路40A,40Bに設けられている。浮屋根20は、貯液タンク30の内部に貯蔵される油液も液面に対する浮力を受けており、油液貯蔵量の増減に伴う液面高さに応じて上下方向に移動する。
【0016】
遮断弁システム10は、浮屋根20の上面22に溜った雨水を外部に排水するための排水管50A,50Bと、排水管50A,50Bを遮断する遮断弁60A,60Bと、遮断弁60A,60Bに駆動源となるガス圧を供給する遮断弁駆動ユニット70A,70Bとから構成されている。
【0017】
排水管50A,50Bは、浮屋根20の高さ位置に合わせて伸縮するフレキシブル構造になっており、例えば、短いパイプを回動可能なユニバーサルジョイントなどで連結する構造になっている。
【0018】
また、浮屋根20の上面22は、中央部分24が低くなるように、中央部分24を囲む環状部分26が傾斜している。そのため、雨水は浮屋根20の中央部分24に溜る。
【0019】
排水管50A,50Bは、一端が浮屋根20の中央部分24に開口する排水口28A,28Bに連通され、他端が貯液タンク30の外周に設けられたドレン管80A,80Bに連通されている。このドレン管80A,80Bには、遮断弁60A,60Bが配されている。ドレン管80A,80Bは、L字状に曲げられており、その吐出側端部が排水溝100A,100Bに挿入されている。
【0020】
遮断弁60A,60Bは、通常開弁しており、緊急時に弁体を閉弁方向に駆動するためのアクチュエータ部62A,62Bを有する。遮断弁60A,60Bは、例えば、ボール弁からなり、ピストン・シリンダ機構(図2に示す)からなるアクチュエータ部62A,62Bによってボール弁が90度回動させられると、開弁状態から閉弁状態に切り替わる。
【0021】
また、遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bと遮断弁駆動ユニット70A,70Bとの間は、ガス圧供給管90A,90Bにより連通されている。
【0022】
地震発生時、遮断弁駆動ユニット70A,70Bで生成されたガス圧は、ガス圧供給管90A,90Bを通して遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに供給される。そのため、アクチュエータ部62A,62Bのピストンは、シリンダに供給されたガスの圧力が作用して、そのトルクが遮断弁60A,60Bの弁体を閉弁駆動させる際の負荷よりも大になったとき、遮断弁60A,60Bの弁体を閉弁させる方向に変位する。なお、遮断弁60A,60Bのボール弁が閉弁動作完了した後のアクチュエータ部62A,62B内部のガス圧は、アクチュエータ部62A,62B内に設けられた小穴等の脱圧機構(図示せず)により徐々に脱圧される。これにより、遮断弁60A,60Bが閉弁した後においてこの閉弁状態を解除する際には、アクチュエータ部62A,62B内は大気圧と略同じ圧力となっているため、閉弁解除を容易に行えるようになる。
【0023】
遮断弁駆動ユニット70A,70Bは、予め設定された震度よりも大きい地震を検知すると、液化ガスを噴出させ、気化したガスを遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに供給する。これにより、アクチュエータ部62A,62Bは、ピストンが駆動され、その駆動力により遮断弁60A,60Bを閉弁動作させることができる。
【0024】
ここで、遮断弁駆動ユニット70A,70Bの構成について説明する。尚、遮断弁駆動ユニット70A,70Bは、同一構成であるので、以下では一方の遮断弁駆動ユニット70Aについて説明する。
【0025】
図2は遮断弁駆動ユニット70A,70Bの構成を模式的に示す図である。図2に示されるように、遮断弁駆動ユニット70Aは、一対のガス発生器110A1,110A2と、ガス発生器110A1,110A2からのガス圧を供給するガス圧供給管120A1,120A2と、ガス圧供給管120A1,120A2に配された逆流防止弁130A1,130A2と、ガス圧供給管120A1,120A2が連通された増圧器140とから構成されている。
【0026】
ガス発生器110A1,110A2は、夫々同一構成であり、地震による震動(例えば、震度4以上)が入力された場合に開封動作のトリガとなる感震器150A1,150A2と、液化炭酸ガスが封入された液化ガスボンベ160A1,160A2と、液化ガスボンベ160A1,160A2のガス噴射口を封止する封止板を開封する開封機構170A1,170A2とを有する。従って、ガス発生器110A1,110A2は、感震器150A1,150A2と開封機構170A1,170A2とが一体化された構成であるので、外部に設けられた地震センサなどから地震検知信号が供給されなくても単独で緊急遮断のための駆動力となるガス圧を発生させることができる。そして、遮断弁システム10は、外部センサからの信号線やその配線作業や電源を必要としないので、停電時でも地震による閉弁動作を行なうことができ、地震などの緊急時の排水管50A,50Bの遮断動作を確実に行える。
【0027】
さらに、遮断弁システム10は、電気的信号を介さないため、貯液タンク30内に可燃性液体が貯留されている場合でも、遮断弁60A,60Bにより排水管50A,50Bを安全に遮断することができる。
【0028】
開封機構170A1,170A2は、例えば、感震器150A1,150A2に設けられた球体が所定以上の振動が入力されることで初期位置から移動することで、液化ガスボンベ160A1,160A2の封止板を開封するニードル部の係止が解除され、ニードル部をバネ力によって開封方向に駆動させるように構成されている。
【0029】
尚、上記感震器150A1,150A2、開封機構170A1,170A2の構成については、周知の技術(例えば、本出願人が先に出願した特開平11−294610号を参照のこと)であり、ここではその詳細な説明を省略する。また、開封機構170A1,170A2としては、この公開公報に記載されたものに限らず、これ以外の構成のものを用いても良いのは勿論である。
【0030】
逆流防止弁130A1,130A2は、液化ガスボンベ160A1,160A2から噴射された液化ガスをアクチュエータ部62A,62Bに供給する流れを許容するように開弁し、その逆方向の流れに対しては閉弁する。
【0031】
増圧器(増圧手段)140Aは、液化ガスボンベ160A1,160A2から噴射された液化ガスの気化を促進するものであり、ガス圧供給管120A1,120A2よりも大径な空間を有する円筒形状の金属製容器により形成されている。増圧器140Aの円筒形状の供給側端部(上流側端部)には、ガス圧供給管120A1,120A2が接続されている。そのため、地震検知に伴う開封機構170A1,170A2のボンベ開封動作が行なわれると、液化ガスボンベ160A1,160A2から噴射された液化ガスがガス圧供給管120A1,120A2を介して増圧器140Aに供給される。さらに、増圧器140Aの吐出側端部(下流側端部)には、ガス圧供給管90Aが連通されている。
【0032】
このように、遮断弁駆動ユニット70Aは、一対のガス発生器110A1,110A2を有するため、何れか一方のガス発生器が故障した場合でも他方のガス発生器からのガス圧がアクチュエータ部62Aに供給されて遮断弁60を確実に閉弁させることができる。
【0033】
また、ガス圧供給管120A1,120A2の何れか一方のガス圧供給管が切断された場合でも、他方のガス圧供給管を介して液化ガスを安定供給することができる。
【0034】
液化ガスは、ボンベ内に低温の状態で封入されており、液体から気体に変化する過程で周囲の熱を奪うことで気化する性質を有する。そのため、ガス圧供給管120A1,120A2のように細い管の場合、低温の液化ガスがガス圧供給管120A1,120A2を通過する際にガス圧供給管120A1,120A2を冷却してしまい、気化に必要な熱の供給が制限されてしまう。これにより、気化速度が上がらず、液化ガスボンベ160A1,160A2が開封されてからアクチュエータ部62A,62Bに供給されるガス圧がピストン・シリンダ機構を駆動するのに十分な圧力に達するまで時間がかかってしまう。
【0035】
この液化ガスが気化する現象は、液化ガス温度と大気温度(周囲の温度)との温度差が大きい程、気化速度が加速される。そのため、本実施例では、液化ガスを増圧器140Aに供給することで、液化ガスがガス圧供給管120A1,120A2よりも大径で容量の大きい増圧器140Aの内部空間に拡散される。
【0036】
これにより、増圧器140Aの内部空間においては、液化ガスが気化する際に冷却されてしまうことがなく、液化ガスへの熱の供給が行なわれて、液化ガスの気化速度が加速される。その結果、液化ガスボンベ160A1,160A2から噴射された液化ガスは、増圧器140Aの内部空間を通過する過程で気化が促進され、気化に伴う圧力上昇率が高められるので、短時間でガス圧がピストン・シリンダ機構64A,64Bを駆動するのに十分な圧力に達することができる。よって、地震検知から遮断弁60A,60Bが遮断するまでに要する時間を短縮することができ、地震発生直後に速やかに排水管50A,50Bを遮断して浮屋根20の上面22に漏れた油液が排水溝100A,100Bに流出することを防止できる。
【0037】
尚、増圧器140Aの直径や容量は、液化ガスボンベ160A1,160A2の容量及びアクチュエータ部62A,62Bを駆動するのに必要な圧力などとの相対関係により決められる。また、増圧器140Aは、円筒形状の容器以外の形状とされた容器(例えば、四角形などの多角形を立体的に組み合わせた構成のもの)、あるいは大径な配管などからなる筒体、あるいは十分な容積を有する室を形成する球体等でも良い。
【0038】
また、増圧器140Aは、周囲との熱伝導が良好に行える金属材(例えば、銅やステンレス鋼など)によって形成されることが望ましい。さらに、増圧器140Aにおける熱伝導を高めるために、増圧器140Aの内側や外側に複数のフィンまたは凹凸を設けることによって液化ガスが接する表面積を増やして液化ガスへの熱供給量を増加させて気化速度を加速するようにしても良い。
【0039】
また、気温の低い冬になると、液化ガスの温度と周囲の温度との温度差が小さいので、気化に必要な熱の供給が得られにくい状況となることがある。その場合には、増圧器140Aに電熱ヒータを設けることによって積極的に液化ガスを加熱して気化速度を急激に加速させることも可能であり、特に気温の低い寒冷地の冬場には有効である。
【0040】
図3は遮断弁駆動ユニット70Aの取付構造の一例を示す斜視図である。図3に示されるように、遮断弁駆動ユニット70Aのガス発生器110A1,110A2は、コンクリート製の基礎200の上面に固定された架台210に取り付けられている。また、架台210は、四角形状の取付面212を有する立方体形状に形成されており、各取付面212には内部に連通する開口214が設けられている。
【0041】
このように、ガス発生器110A1,110A2が架台210の各取付面212に取り付けられているので、ガス発生器110A1,110A2の不具合の有無を一括して行えるというメリットを有すると共に、例えば、ガス発生器110A1,110A2の点検や修理あるいは交換作業が容易に行えるので、メンテナンス性が高められている。
【0042】
液化ガスボンベ160A1,160A2は、取付面212に固定された筒状のカバー180A,180B内に収納されており、使用された場合、あるいは定期的に新しいものと交換される。尚、液化ガスボンベ160A1,160A2は、上端に突出する雄ネジ部をカバー180A,180B内の雌ネジに螺入させることにより容易に取り付けられる。
【0043】
また、架台210は、内部が空いているので、例えば、液化ガスボンベ160A1,160A2に連通されるガス圧供給管120A1,120A2や逆流防止弁130A1,130A2等を収納させることも可能である。
【0044】
また、架台210は、底面が基礎200の上面に載置固定されているので、最大4方向の側面に4台の遮断弁駆動ユニット70を取り付けることが可能であり、各遮断弁駆動ユニット70に連通されたガス圧供給管120は架台210の上面の開口214から引き出すことができる。
【0045】
本実施例では、地震発生時に排水管50A,50Bを遮断する場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、地震以外のとき、例えば、排水溝100A,100Bの液面が所定値以上になった場合に排水量検出センサの作動により遮断弁60A,60Bを閉弁動作させて排水管50A,50Bを遮断することも可能である。
【0046】
ここで、遮断弁駆動ユニット70Aの変形例について説明する。
【0047】
図4は遮断弁駆動ユニットの変形例1を示す斜視図である。尚、図4において、上記実施例と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。図4に示されるように、変形例1の遮断弁システム10Aでは、遮断弁60A,60Bを同時に閉弁させる遮断弁駆動ユニット270が設けられている。
【0048】
遮断弁駆動ユニット270は、ガス発生器110A,110B、ガス圧供給管120A,120B、逆流防止弁130A,130B、増圧器140の他に、ガス圧供給管120A,120Bに配された放出弁280A,280Bを有する。また、増圧器140の吐出側端部には、ガス圧供給管90A,90Bの上流側端部(一端)が接続されている。そして、ガス圧供給管90A,90Bは、下流側端部(他端)が遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに接続されている。
【0049】
放出弁280A,280Bは、ガス圧供給管120A,120Bのガス圧力がアクチュエータ部62A,62Bのピストンを駆動させるのに必要な圧力以上に昇圧した場合に開弁する。これにより、ガス圧供給管120A,120Bは、放出弁280A,280Bにより過剰な圧力が作用しないようになっており、一対のガス発生器110A,110Bが同時にガス供給を開始した場合でも、圧力上昇に伴う強度的負担が軽減される。
【0050】
また、地震発生時には、ガス発生器110A,110Bの開封機構170A,170Bが同時に液化ガスボンベ160A,160Bを開封して増圧器140に液化ガスを供給する。増圧器140は、前述したように液化ガスボンベ160A,160Bから噴射された液化ガスの気化速度を加速してガス圧力の上昇率を高めている。
【0051】
そして、上記実施例と同様に、増圧器140から供給されたガス圧によって遮断弁60A,60Bが閉弁すると、排水管50A,50Bは遮断される。よって、地震発生後、遮断弁駆動ユニット270から供給されたガス圧によって短時間で排水管50A,50Bを遮断できるので、浮屋根20の上面22に漏れた油液が排水溝100A,100Bに流出することを防止できる。
【0052】
遮断弁駆動ユニット270は、遮断弁60A,60Bの中間位置に設置されている。そのため、増圧器140の吐出側端部とアクチュエータ部62A,62Bとの間を連通するガス圧供給管90A,90Bは、上記図2に示す実施例の場合よりも全長が長く形成されている。しかしながら、本変形例1では、液化ガスボンベ160A,160Bから噴射された液化ガスが増圧器140によって気化速度が加速されてアクチュエータ部62A,62Bに供給されるので、ガス圧供給管90A,90Bの全長に拘わらず、短時間でガス圧がアクチュエータ部62A,62Bのピストン・シリンダ機構を駆動するのに十分な圧力に達する。よって、地震検知から遮断弁60A,60Bが遮断するまでに要する時間を短縮することができる。
【0053】
図5は遮断弁駆動ユニットの変形例3を示す斜視図である。尚、図5において、上記実施例と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。図5に示されるように、変形例3の遮断弁駆動ユニット370は、増圧器140に放出弁280が配されている。また、ガス圧供給管90A,90Bは、上流側端部(一端)が増圧器140に接続されている。そして、ガス圧供給管90A,90Bは、下流側端部(他端)が遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに接続されている。
【0054】
放出弁280は、増圧器140のガス圧力がアクチュエータ部62A,62Bのピストンを駆動させるのに必要な圧力以上に昇圧した場合に開弁する。これにより、増圧器140は、放出弁280により過剰な圧力が作用しないようになっており、一対のガス発生器110A,110Bが同時にガス供給を開始した場合でも、アクチュエータ部62A,62Bがガス圧によって駆動されて遮断弁60A,60Bが閉弁動作された後、放出弁280が開弁して増圧器140のガスを大気中に放出して増圧器140のガス圧を軽減することができる。
【0055】
また、地震発生時には、ガス発生器110A,110Bの開封機構170A,170Bが同時に液化ガスボンベ160A,160Bを開封して増圧器140に液化ガスを供給する。増圧器140は、前述したように液化ガスボンベ160A,160Bから噴射された液化ガスの気化速度を加速してガス圧力の上昇率を高めている。
【0056】
そして、上記実施例及び変形例1と同様に増圧器140から供給されたガス圧によって遮断弁60A,60Bが閉弁すると、排水管50A,50Bは遮断される。よって、地震発生後、遮断弁駆動ユニット370から供給されたガス圧によって排水管50A,50Bを遮断できるので、浮屋根20の上面22に漏れた油液が排水溝100A,100Bに流出することを防止できる。
【0057】
図6は遮断弁駆動ユニットの変形例3を示す斜視図である。尚、図6において、上記実施例と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。図6に示されるように、変形例2では、排水経路40A,40Bには、浮屋根20の上面22に溜った雨水を外部に排水するための排水管50A,50Bと、排水管50A,50Bを遮断する遮断弁60A,60Bと、遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bの夫々にガス圧を供給するメイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bと、遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bの両方にガス圧を供給するサブ遮断弁駆動ユニット470Cとが設けられている。
【0058】
メイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bは、夫々同一構成であり、ガス発生器110A,110Bと、ガス発生器110A,110Bからのガス圧を供給するガス圧供給管90A,90Bと、ガス圧供給管90A,90Bに配された逆流防止弁130A,130Bと、ガス圧供給管90A,90Bに配された放出弁280A,280Bとから構成されている。
【0059】
サブ遮断弁駆動ユニット470Cは、ガス発生器110Cと、ガス発生器110Cからのガス圧を供給するガス圧供給管120Cと、ガス圧供給管120Cの他端が接続された増圧器140と、増圧器140の吐出側端部に接続されたガス圧供給管120A,120Bと、ガス圧供給管120A,120Bに配された逆流防止弁132A,132Bと、増圧器140に配された放出弁280Cと、増圧器140に配された排気管480とから構成されている。また、排気管480には、増圧器140から排出されるガス流量を所定流量以下に制限する絞り490が設けられている。
【0060】
逆流防止弁132A,132Bは、メイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bの逆流防止弁130A,130Bと逆向きに設けられている。従って、増圧器140からガス圧供給管120A,120Bに供給されたガス圧がガス圧供給管90A,90Bに供給されたメイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bのガス圧より低い場合には、逆流防止弁132A,132Bは閉弁状態を保つ。すなわち、メイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bが正常に作動した場合には、サブ遮断弁駆動ユニット470Cからのガス圧が供給されないようになっている。
【0061】
尚、上記ガス発生器110A〜110Cは、前述したガス発生器と同一構成であるので、その説明は省略する。
【0062】
地震発生時には、上記実施例及び変形例1,2と同様に、ガス発生器110A〜110Cの開封機構170A〜170Cが同時に液化ガスボンベ160A〜160Cを開封して遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに液化ガスを供給する。増圧器140は、前述したように液化ガスボンベ160Cから噴射された液化ガスの気化速度を加速してガス圧力の上昇率を高めている。
【0063】
増圧器140によって気化されたガスは、ガス圧供給管120A,120Bを介して逆流防止弁132A,132Bに供給される。一方、液化ガスボンベ160A,160Bから噴射されたガスが、ガス圧供給管90A,90Bを介して遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに供給されている場合、逆流防止弁132A,132Bの吐出側(ガス圧供給管90A,90B)が高圧になっている。この場合、逆流防止弁132A,132Bは、開弁せず、増圧器140に供給されたガスは、排気管480を介して大気中に排出される。排気管480には、絞り490が設けられているので、増圧器140の内部のガスが少量ずつ排気されるため、増圧器140の圧力上昇が緩和される。
【0064】
また、増圧器140がさらに高圧になった場合は、放出弁280Cが開弁して増圧器140に供給されたガスを大気中に放出する。これにより、増圧器140の内部が過剰圧力に上昇することが防止される。
【0065】
また、メイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bの何れか、あるいは両方が故障していた場合には、ガス圧供給管90A,90Bの圧力が上昇してない。その場合は、増圧器140に供給されたガス圧(高圧)とガス圧供給管90A,90Bの圧力(大気圧)との圧力差によって逆流防止弁132A,132Bは開弁する。これにより、増圧器140で気化速度を加速された液化ガスは、ガス圧供給管120A,120B及び、ガス圧供給管90A,90Bを介して遮断弁60A,60Bのアクチュエータ部62A,62Bに供給される。
【0066】
そのため、メイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bが故障していた場合でもサブ遮断弁駆動ユニット470Cのガス発生器110Cからの液化ガスがアクチュエータ部62A,62Bに供給されるので、確実に遮断弁60A,60Bを閉弁させて排水管50A,50Bを遮断することができる。よって、地震発生後、メイン遮断弁駆動ユニット470A,470Bまたはサブ遮断弁駆動ユニット470Cの何れかから供給されたガス圧によって排水管50A,50Bを遮断できるので、浮屋根20の上面22に漏れた油液が排水溝100A,100Bに流出することを確実に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
上記実施例では、貯液タンクに油液が貯留された場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、油液以外の液体(例えば、化学薬品など)が貯留された貯液タンクにも本発明を適用することができるのは勿論である。
【0068】
また、上記実施例では、貯液タンクに2系統の排水経路40A,40Bを有する場合について説明したが、これに限らず、3系統以上の排水系統を有する構成のものにも本発明が適用できるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明による浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムの一実施例を示す構成図である。
【図2】遮断弁駆動ユニット70A,70Bの構成を模式的に示す図である。
【図3】遮断弁駆動ユニット70Aの取付構造の一例を示す斜視図である。
【図4】遮断弁駆動ユニットの変形例1を示す斜視図である。
【図5】遮断弁駆動ユニットの変形例2を示す斜視図である。
【図6】遮断弁駆動ユニットの変形例3を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
10 遮断弁システム
20 浮屋根
28A,28B 排水口
30 貯液タンク
40A,40B 排水経路
50A,50B 排水管
60A,60B 遮断弁
62A,62B アクチュエータ部
64A,64B ピストン・シリンダ機構
70A,70B,270,370,470A,470B 遮断弁駆動ユニット
80A,80B ドレン管
90A,90B ガス圧供給管
100A,100B 排水溝
110A,110B,110C,110A1,110A2 ガス発生器
120A,120B,120C,120A1,120A2 ガス圧供給管
130A,130B,130A1,130A2 逆流防止弁
140,140A,140B 増圧器
150A,150B,150A1,150A2 感震器
160A,160B,160A1,160A2 液化ガスボンベ
170A,170B,170A1,170A2 開封機構
210 架台
280,280A,280B 放出弁
470C サブ遮断弁駆動ユニット
480 排気管
490 絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮屋根式貯液タンクの上部開口を閉塞する浮屋根に連通され、当該浮屋根の上面に溜まった雨水を外部に排水する排水管と、
該排水管に設けられた遮断弁と、
ガス圧の供給により前記遮断弁の弁体を閉弁駆動するアクチュエータと、
液化ガスが封入されたボンベを有し、緊急時に当該ボンベを開封することによって当該液化ガスを気体発生源として発生する気化ガスを前記アクチュエータに供給する遮断弁駆動ユニットと、
を備えた浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムにおいて、
前記遮断弁駆動ユニットは、一端が前記アクチュエータに連通され、他端が前記ボンベに連通されたガス圧供給管と、
前記ガス圧供給管に設けられ、前記ボンベから噴出された気化ガスの気化を促進することでガス圧を増圧する増圧手段と、
を備えたことを特徴とする浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システム。
【請求項2】
請求項1に記載の浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムであって、
前記ガス圧供給管または増圧手段に供給された気化ガスの圧力が所定圧力以上の圧力に達した場合に前記ガス圧供給管内の気化ガスを外部に放出する放出弁を備えたことを特徴とする浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システムであって、
前記増圧手段は、前記ガス圧供給管の流路面積よりも大きな流路面積を有する空間を形成する容器であることを特徴とする浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システム。
【請求項4】
前記遮断弁を有する排水管が複数設けられると共に、前記複数の遮断弁に対応する数の遮断弁駆動ユニット及び前記ガス圧供給管が設けられ、
前記複数のガス圧供給管は、前記一の増圧手段の流入側に連通され、前記一の増圧手段の流出側より分岐されて前記複数の遮断弁の夫々を個別に駆動する複数のアクチュエータに連通されることを特徴とする浮屋根式貯液タンクの排水管の遮断弁システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−154940(P2009−154940A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337044(P2007−337044)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】