説明

浮屋根補強支持構造及びこれを用いた固定屋根形成方法

【課題】 浮屋根の変形を軽減又は防止する浮屋根補強支持構造及びこれを用いた固定屋根形成方法を提供する。
【解決手段】 デッキ板を有する浮屋根式貯槽の浮屋根を底板から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根の上で固定屋根の骨組みを形成する場合に、この浮屋根を補強しながら支持する浮屋根補強支持構造であって、前記デッキ板の表面に配置した第一補強部材と、前記デッキ板の裏面に配置し、前記デッキ板を介して前記第一補強部材と交差する第二補強部材と、前記第一補強部材上に配置し、前記骨組みを支持する第一支持装置と、前記底板上に配置し、前記第二補強部材を支持する第二支持装置と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浮屋根式貯槽の浮屋根を底板から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根の上で固定屋根の骨組みを形成する場合に、この浮屋根を補強しながら支持する浮屋根補強支持構造、及びこれを用いて浮屋根式貯槽に固定屋根を形成する固定屋根形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮屋根を利用して浮屋根式貯槽に固定屋根を形成する固定屋根形成方法がある。例えば、特許文献1には、基礎上に底板を敷設して、この底板外周部に側板を数段組み立てると共に、底板上で浮屋根を組立て、且つこの浮屋根上に該浮屋根と一緒に浮上し得る固定屋根を組立てた後、底板上に注水して浮屋根と共に固定屋根を所定高さ浮上させる等して固定屋根を形成する「カバーフローティングタンクの構築工法」が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭57−68380号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような固定屋根形成方法等においては、底板から上方向に間隔(例えば1m〜2m程度)をあけて支持した浮屋根の上で固定屋根の骨組みを形成する。浮屋根は、通常デッキサポート(図1の符号106参照)等の浮屋根サポート部材により、底板の上に着地しないように底板から間隔を空けて支持する。浮屋根のデッキ板の表面に骨組みを支持する支持装置を直接配置すると、支持装置からの荷重(支持装置自身の自重及び骨組みから伝達される荷重等がある。)が支持装置の脚部直下の位置に集中する。このとき、浮屋根サポート部材は、浮屋根が底板の上に着地しないようにするためのものであって、浮屋根を補強できず、また、上記荷重を適切に底板に伝達することが出来ないため、浮屋根が変形する場合があった。この変形を軽減又は防止するために、浮屋根を補強しながら支持するとともに支持装置からの荷重を効率的に底板に伝達する浮屋根補強支持構造が望まれていた。浮屋根が変形してしまうと、浮屋根の上で安全に作業できないからである。しかし、特許文献1では、このような浮屋根補強支持構造についての具体的な工夫の開示は無い。
【0005】
この発明は上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、浮屋根の変形を軽減又は防止する浮屋根補強支持構造及びこれを用いた固定屋根形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の浮屋根補強構造は、
デッキ板を有する浮屋根式貯槽の浮屋根を底板から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根の上で固定屋根の骨組みを形成する場合に、この浮屋根を補強しながら支持する浮屋根補強支持構造であって、
前記デッキ板の表面に配置した第一補強部材と、
前記デッキ板の裏面に配置し、前記デッキ板を介して前記第一補強部材と交差する第二補強部材と、
前記第一補強部材上に配置し、前記骨組みを支持する第一支持装置と、
前記底板上に配置し、前記第二補強部材を支持する第二支持装置と、を有することを特徴とする浮屋根補強支持構造。
【0007】
上記の浮屋根補強支持構造では、第一支持装置を第一補強部材の上に配置し、第一補強部材がデッキ板を介して第二補強部材と交差し、底板上の第二支持装置が第二補強部材を支持する。このため、第一支持装置からの荷重を、互いに交差する第一補強部材及び第二補強部材を介して第二支持装置に伝達し、元々強固に形成されている底板に伝達することが出来る。そして、互いに交差する第一補強部材及び第二補強部材により浮屋根は補強される。このため、この浮屋根補強支持構造は、浮屋根を補強しながら支持するとともに第一支持装置からの荷重を効率的に底板に伝達できるので、浮屋根の変形を軽減又は防止できる。
【0008】
この浮屋根補強支持構造は、例えば、シングルデッキの浮屋根中央部分に形成できる。
【0009】
本発明の浮屋根補強支持構造は、
ポンツーンを有する浮屋根式貯槽の浮屋根を底板から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根の上で固定屋根の骨組みを形成する場合に、この浮屋根を補強しながら支持する浮屋根補強支持構造であって、
前記ポンツーンの上部デッキ板の表面に配置した第三補強部材と、
前記ポンツーンの下部デッキ板の裏面に配置した第四補強部材と、
一端が前記上部デッキ板に接し、他端が前記下部デッキ板に接するとともに、前記上部デッキ板を介して前記第三補強部材と交差し、かつ前記下部デッキ板を介して前記第四補強部材と交差する第五補強部材と、
前記第三補強部材上に配置し、前記骨組みを支持する第三支持装置と、
前記底板上に配置し、前記第四補強部材を支持する第四支持装置と、
を有することを特徴とする。
【0010】
この浮屋根補強支持構造では、第三支持装置を第三補強部材の上に配置し、第三補強部材が上部デッキ板を介して第五補強部材と交差し、第五補強部材が下部デッキ板を介して第四補強部材と交差し、底板上の第四支持装置が第四補強部材を支持する。このため、第三支持装置からの荷重を、互いに交差する、第三補強部材及び第五補強部材と第五補強部材及び第四補強部材とを介して第四支持装置に伝達し、元々強固に形成されている底板に伝達することが出来る。また、互いに交差する、第三補強部材及び第五補強部材と第五補強部材及び第四補強部材とによりポンツーンは補強されるので、浮屋根は補強される。このため、この浮屋根補強支持構造は、浮屋根を補強しながら支持するとともに第三支持装置からの荷重を効率的に底板に伝達できるので、ポンツーンの変形を軽減又は防止でき、浮屋根の変形を軽減又は防止できる。
【0011】
なお、ポンツーンは、例えば、浮屋根の外周部に位置する外周部ポンツーン、ダブルデッキの浮屋根上下デッキ板で囲まれたポンツーン、中間ポンツーン等である。
【0012】
本発明の固定屋根形成方法は、
浮屋根式貯槽に固定屋根を形成する固定屋根形成方法において、
上記の浮屋根補強支持構造を形成するとともに、この浮屋根補強支持構造を使用して固定屋根の骨組みを形成するステップと、
浮屋根式貯槽に注水して浮屋根を浮かせ、前記ステップで形成した骨組みを浮屋根式貯槽の上部に移動させるステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
このような形成方法によれば、上記のように浮屋根の変形を軽減又は防止できる。また、浮屋根上で構築した固定屋根を、水張りによって安全作業で効率良く上昇させて移動することができる。
【0014】
本発明における第一支持装置、第二支持装置、第三支持装置、又は第四支持装置は、例えば、支柱のみから構成しても良い。
【0015】
本発明の例として、第一補強部材、第二補強部材、第三補強部材、及び第四補強部材は、直線状のもの、湾曲したもの、不連続の環状(円環状の他、多角環状も含む。)のもの、連続の環状(円環状の他、多角環状も含む。)のもの、又は折れ線状のもの等の棒状のものとすることが出来る。棒状のものは、例えば、棒状形鋼材である。棒状形鋼材は、断面略L字状のアングル材、断面略コ字状のチャンネル材、断面略H字状のH形鋼材等により構成されるが、強度や形成し易さ等の面から、断面略コ字状のチャンネル材が望ましい。
【0016】
本発明の例として、第五補強部材は、既設の板状部材とすることが出来る。既設の板状部材は、例えば、ポンツーンが予め有する、バルクヘッド又はリム板等である。またこの第五補強部材は、既設の形鋼材などの補強部材とすることも出来る。第五補強部材は、一端が上部デッキ板に接し、他端が下部デッキ板に接する部材であればよい。第五補強部材を既設の部材とすることにより、既設の部材を有効利用して浮屋根補強支持構造を形成できる。
【0017】
本発明の例として、デッキ板(上部デッキ板又は下部デッキ板を含む。)の表面の一以上の補強部材と、デッキ板の裏面の一以上の補強部材と(例えば、一以上の第一補強部材と一以上の第二補強部材と)の交差箇所を複数にするとよい。特に一の補強部材(例えば第一補強部材等のデッキ板の表面側に位置する補強部材)につき交差箇所(例えば、一の第一補強部材と一以上の第二補強部材との交差箇所)を複数にする。交差箇所を複数にするには、補強部材を複数設けるか、または、補強部材を曲げる(湾曲、屈曲、折曲げる等を含む)等する。このような浮屋根補強支持構造は、補強強度が強くなるので、浮屋根の変形をより軽減又は防止出来る。さらに、デッキ板の表面の一以上の補強部材とデッキ板の裏面の一以上の補強部材と(例えば、一以上の第一補強部材と一以上の第二補強部材と)は、デッキ板を介して碁盤の目状(目は一つでもよい。目は、四角形に限らない。また、少なくとも一辺が曲線であっても良い。)に配置するとよい。このような浮屋根補強支持構造は、補強強度が強くなるので、浮屋根の変形をより軽減又は防止出来る。
【0018】
本発明の例として、第二支持装置又は第四支持装置を一以上設け、この一以上の第二支持装置又は第四支持装置で一の第二補強部材又は第四補強部材の複数の箇所を支持する。一の第二支持装置又は第四支持装置は、一箇所を支持しても良いし、複数箇所を支持しても良い。このような浮屋根補強支持構造は、一以上の第二支持装置又は第四支持装置が一の第二補強部材又は第四補強部材の複数箇所を支持するので、荷重を分散出来、浮屋根の変形をより軽減又は防止できる。
【0019】
本発明における固定屋根の骨組みは、少なくとも固定屋根の骨組みの一部を含めばよい。また、この骨組みは、他の部材(屋根板等)を付加したものも含む。
【発明の効果】
【0020】
上記のように本発明によれば、浮屋根を適切に補強しながら支持して浮屋根の変形を軽減又は防止出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態例について図面を参照しながら説明する。なお、図面において同様のものや対応するもの、総称できるものについては同じ符号を付して説明する場合がある。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の実施形態に変更(例えば構成要素(部材、装置等)の省略、付加、又は形状変更等)を加えることが出来るのはもちろんである。また、ここでは、既設かつ上部開口の浮屋根式貯槽に、新たな固定屋根を形成する場合の浮屋根補強支持構造及びこれを用いた固定屋根形成方法について説明するが、本発明の用途はこれに限らない。以下で説明する部材(固定屋根の骨組み、又は補強部材等)や装置(支持装置等)は、鋼材等を溶接等で組み立てて形成することができる。
【0022】
(固定屋根形成方法)
(ステップ1)
まず、浮屋根式貯槽100に貯蔵した貯蔵液を全て抜く(図1参照)。浮屋根式貯槽100は、底板102と、この底板102に立設した側板104と、貯蔵液に浮く浮屋根1と、その他の諸設備と、により構成される。貯蔵液が抜かれると、浮屋根式貯槽100の浮屋根1は、デッキサポート106等の浮屋根サポート部材により、底板102から上方向に間隔をあけて支持される。貯蔵液は、例えば液体燃料又は水等である。液体燃料は、例えば原油等の危険物である。図示した浮屋根1はシングルデッキタイプの浮屋根1であって、この浮屋根1は、デッキ板2と、このデッキ板2の外側(すなわち浮屋根1の外周部)に位置する外周部ポンツーン3と、を有する。デッキ板2の形状は、浮屋根式貯槽100の形状に合わせて決定し、例えば円盤状等の板状になる。外周部ポンツーン3の形状は、浮屋根式貯槽100の形状に合わせて決定し、例えば円環状等の環状(円環に限らず多角環状も含む。)になる。
【0023】
(ステップ2)
そして、ゲージングホーム116、ゲージポール(図示せず)、エアフォーム(図示せず)、せき板(図示せず)、雨よけ板108、ローリングラダー112、レール114、液面計(図示せず)、シール部材110等の諸設備を撤去する。なお、図2以降ではデッキサポート106が省略されているが、デッキサポート106等の浮屋根サポート部材は、固定屋根を設置して浮屋根1が降下した際の支えに使うため残しておく。
【0024】
(ステップ3)
浮屋根補強支持構造を形成するとともに、この浮屋根補強支持構造を使用して固定屋根の骨組み7を形成する(図2及び図3参照)。なお、作業台30は、デッキ板2上を移動可能であり、骨組み7の形成に用いる。
【0025】
詳しくは後述するが、浮屋根補強支持構造は、第一浮屋根補強支持構造10と、第2浮屋根補強支持構造20と、を有する。
【0026】
第一浮屋根補強支持構造10は、浮屋根1を底板102から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根1の上で固定屋根の骨組み7を形成する場合に、この浮屋根1を補強しながら支持するものである。第一浮屋根補強支持構造10は、デッキ板2の表面に配置した第一補強部材12と、デッキ板2の裏面に配置し、デッキ板2を介して第一補強部材12と交差する第二補強部材14と、第一補強部材12上に配置し、骨組み7を支持する第一支持装置11と、底板102上に配置し、第二補強部材14を支持する第二支持装置15と、を有する。
【0027】
第二浮屋根補強支持構造20は、浮屋根1を底板102から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根1の上で固定屋根の骨組み7を形成する場合に、この浮屋根1を補強しながら支持する浮屋根補強支持構造である。第二浮屋根補強支持構造20は、外周部ポンツーン3の上部デッキ板3aの表面に配置した第三補強部材22と、外周部ポンツーン3の下部デッキ板3bの裏面に配置した第四補強部材24と、一端が上部デッキ板3aに接し、他端が下部デッキ板3bに接するとともに、上部デッキ板3aを介して第三補強部材22と交差し、かつ下部デッキ板3bを介して第四補強部材24と交差する第五補強部材23(図8及び図9参照)と、第三補強部材22上に配置し、骨組み7を支持する第三支持装置21と、底板102上に配置し、第四補強部材24を支持する第四支持装置25と、を有する。
【0028】
(ステップ4)
浮屋根式貯槽100に注水して浮屋根1を浮かせ、ステップ3で形成した骨組み7を浮屋根式貯槽100の上部に移動させる(図4及び図5参照)。
【0029】
このステップ4で、骨組み7形成時の仮設架台である、第二支持装置15と第二補強部材14、第四支持装置25と第四補強部材24は基本的に取り除く。但し、第二補強部材14、第四補強部材24は、残しておいても良い。
【0030】
また、図4及び図5では、第一補強部材12及び第一支持装置11が省略されているが、これらの撤去は、骨組み7形成後、又は固定屋根31形成後等の適宜のタイミングで行う。第一補強部材12は、残しておいても良い。
【0031】
(ステップ5)
その後、骨組み7を用いて固定屋根31を浮屋根式貯槽100の上部に形成する。例えば浮屋根式貯槽100の上部に移動した骨組み7と、側板104の上部に形成した接続部8(ブラケット)とを固定して接続する。そして、その後に屋根板9で骨組み7や接続部8上を覆い、固定屋根31を形成する。
【0032】
なお、浮屋根1は撤去しても良いし、そのまま残して使用しても良い。浮屋根補強支持構造の一部や全部も撤去しても良いし、そのまま残しても良い。第一乃至第四補強部材は、浮屋根1を補強する役割も有するので、第一乃至第四補強部材のうちのいずれかを残しておくと、浮屋根1の補強にもなる。
【0033】
このような形成方法によれば、地震災害等に対応した安全性向上の観点による浮屋根式貯槽を固定屋根式貯槽に改造する需要に応じることが出来る。また、骨組み7を低所で形成でき、水張り浮上は安全作業となるので、安全作業で施行性良く、短期間で効率良く改造が出来る。
【0034】
(第一浮屋根補強支持構造10)
上述のように、第一浮屋根補強支持構造10は、シングルデッキの浮屋根1のデッキ板2の表面に配置した第一補強部材12と、デッキ板2の裏面に配置し、デッキ板2を介して第一補強部材12と交差する第二補強部材14と、第一補強部材12上に配置し、骨組み7を支持する第一支持装置11と、底板102上に配置し、第二補強部材14を支持する第二支持装置15と、を有する(図6及び図7参照)。この第一浮屋根補強支持構造10について、以下に詳細に説明する。
【0035】
第一補強部材12は、直線状の棒状形鋼材である。これを二つ、互いに平行となるように、デッキ板2の中央部表面に溶接等により固着して配置する。
【0036】
第二補強部材14は、直線状の棒状形鋼材である。これを三つ、互いに平行となるように、デッキ板2の中央部裏面に溶接等により固着して配置する。
【0037】
各第一補強部材12の上には、第一支持装置11の脚部が固着され、第一支持装置11が配置される。第一支持装置11を複数配置しても良い。第一支持装置11は、形鋼材を組み上げる等して所望の形状に形成する。第一支持装置11は、骨組み7の中央部(ここでは頂部になる。)を支持する。
【0038】
第二支持装置15は、各第二補強部材14につき二つ配置する。各第二補強部材14は、二箇所で、複数の第二支持装置15により支持される。第二支持装置15は、第二補強部材14を受ける断面略U字状の受け具15aと、この受け具15aの高さを調節可能に支持する脚部15bと、を有する。この受け具15aにより、第二補強部材14を所定箇所で適切且つ容易に支持できる。受け具15aと第二補強部材14とを固定しないことにより、第二支持装置15は再利用し易い。
【0039】
第一浮屋根補強支持構造10では、第一支持装置11からの荷重を、互いに交差する第一補強部材12及び第二補強部材14を介して第二支持装置15に伝達し、元々強固に形成されている底板102に伝達することが出来る。そして、互いに交差する第一補強部材12及び第二補強部材14により浮屋根1は補強される。このため、第一浮屋根補強支持構造10は、浮屋根1を補強しながら支持するとともに第一支持装置11からの荷重を効率的に底板に伝達できるので、浮屋根の変形を軽減又は防止できる。さらに第一浮屋根補強支持構造10では、第一支持装置11を第一補強部材12上に配置さえすれば、第一支持装置11からの荷重を底板102に伝達することが出来るため、第一補強部材12を目印に出来、第一支持装置11の位置合わせが容易になる。特に浮屋根1の裏面側を気にしなくて良い。
【0040】
第一浮屋根補強支持構造10では、一以上(ここでは二つ)の第一補強部材12と、一以上(ここでは三つ)の第二補強部材14との交差箇所を複数(ここでは六箇所)にしている。つまり一の第一補強部材12につき第二補強部材14と交差する箇所を複数(ここでは三箇所)にしている。これにより、第一浮屋根補強支持構造10は、補強強度が強くなるので、浮屋根の変形をより軽減又は防止出来る。また、第一補強部材12からの荷重を各第二補強部材14で分散して受けることができる。さらに、第一浮屋根補強支持構造10では、一以上(ここでは二つの)の第二支持装置15が一の第二補強部材14の複数箇所(ここでは二箇所)を支持する。これにより、第二補強部材14で受けた荷重を分散して各第二支持装置15で受けることができる。このようにして、この第一浮屋根補強支持構造10は、第一支持装置11からの荷重を適宜分散しながら底板102に伝達でき、浮屋根1の変形をより軽減又は防止出来る。
【0041】
また、第一浮屋根補強支持構造10では、一以上(ここでは二つ)の第一補強部材12と、一以上(ここでは三つ)の第二補強部材14とをデッキ板2を介して碁盤の目状に配置している。このため、第一浮屋根補強支持構造10は、補強強度が強くなる。また、第一支持装置11からの荷重を適宜分散しながら底板に効率よく伝達できるので、浮屋根1の変形をより軽減又は防止出来る。
【0042】
また、第一浮屋根補強支持構造10では、一以上(ここでは二つ)の第一補強部材12の複数箇所で第一支持装置11を支持している。これにより、この第一浮屋根補強支持構造10は、第一支持装置11からの荷重を第一補強部材12で分散でき、浮屋根1の変形をより軽減又は防止出来る。
【0043】
(第二浮屋根補強支持構造20)
上述のように、第二浮屋根補強支持構造20は、外周部ポンツーン3の上部デッキ板3aの表面に配置した第三補強部材22と、外周部ポンツーン3の下部デッキ板3bの裏面に配置した第四補強部材24と、一端が上部デッキ板3aに接し、他端が下部デッキ板3bに接するとともに、上部デッキ板3aを介して第三補強部材22と交差し、かつ下部デッキ板3bを介して第四補強部材24と交差する第五補強部材23と、第三補強部材22上に配置し、骨組み7を支持する第三支持装置21と、底板102上に配置し、第四補強部材24を支持する第四支持装置25と、を有する(図8及び図9参照)。この第二浮屋根補強支持構造20について、以下に詳細に説明する。なお、外周部ポンツーン3は、上部デッキ板3aと、下部デッキ板3bと、外周リム板3cと、内周リム板3dと、バルクヘッド(符号23第五補強部材を参照)等の一端(上端)が上部デッキ板3aに接し、他端(下端)が下部デッキ板3bに接する補強部材と、により形成され、さらに、形鋼材の補強トラスやステー等を適宜有する。
【0044】
第三補強部材22は、連続の円環状の棒状形鋼材である。これを二つ、互いに平行となるように、同心円状に、上部デッキ板3aに溶接等により固着して配置する。
【0045】
第四補強部材24は、連続の円環状の棒状形鋼材である。これを二つ、互いに平行となるように、同心円状に、下部デッキ板3bに溶接等により固着して配置する。
【0046】
第五補強部材23は、既設の板状部材であるバルクヘッドである。バルクヘッドは、放射状に複数配置する。バルクヘッドの上端と下端はそれぞれ上部デッキ板3aと下部デッキ板3bに固着され接する。第五補強部材23をバルクヘッドや補強トラス等の既設の部材とすることにより、既設の部材を有効利用して第二浮屋根補強支持構造20を形成できる。
【0047】
各第三補強部材22の上には、第三支持装置21の脚部が固着され、第三支持装置21が配置される。第三支持装置21を外周部ポンツーン3に沿って円周状に複数配置する。第三支持装置21は、形鋼材を組み上げる等して所望の形状に形成する。第三支持装置21は、骨組み7の縁部を支持する。
【0048】
第四支持装置25は、各第三補強部材22につき複数配置する。各第三補強部材22は、複数箇所で、複数の第四支持装置25により支持される。第四支持装置25は、第二支持装置15と同様であるので説明を省略する。
【0049】
第二浮屋根補強支持構造20では、第三支持装置21からの荷重を、互いに交差する、第三補強部材22及び第五補強部材23と第五補強部材23及び第四補強部材24とを介して第四支持装置に伝達し、元々強固に形成されている底板102に伝達することが出来る。また、互いに交差する、第三補強部材22及び第五補強部材23と第五補強部材23及び第四補強部材24とによりポンツーンは補強されるので、浮屋根1は補強される。このため、この第二浮屋根補強支持構造20は、浮屋根1を補強しながら支持するとともに第三支持装置21からの荷重を効率的に底板に伝達できるので、浮屋根1の変形を軽減又は防止できる。さらに第二浮屋根補強支持構造20では、第三支持装置21を第三補強部材22上に配置さえすれば、第三支持装置21からの荷重を底板102に伝達することが出来るため、第三補強部材22を目印に出来、第三支持装置21の位置合わせが容易になる。特に浮屋根1の裏面側を気にしなくて良い。
【0050】
第二浮屋根補強支持構造20では、一以上(ここでは二つ)の第三補強部材22と、一以上(ここでは複数)の第五補強部材23との交差箇所を複数にしている。第二浮屋根補強支持構造20では、一以上(ここでは二つ)の第四補強部材24と、一以上(ここでは複数)の第五補強部材23との交差箇所を複数にしている。つまり一の第三補強部材22又は第五補強部材23につき第五補強部材23又は第四補強部材24と交差する箇所を複数にしている。これにより、第二浮屋根補強支持構造20は、補強強度が強くなるので、外周部ポンツーン3の変形、すなわち浮屋根1の変形をより軽減又は防止出来る。また、第三補強部材22からの荷重を各第五補強部材23で分散して受けることができ、第五補強部材23からの荷重を各第四補強部材24で分散して受けることができる。さらに、第二浮屋根補強支持構造20では、一以上(ここでは、複数)の第四支持装置25が一の第四補強部材24の複数箇所を支持する。これにより、第四補強部材24で受けた荷重を分散して各第四支持装置25で受けることができる。このようにして、この第二浮屋根補強支持構造20は、第三支持装置21からの荷重を適宜分散しながら底板102に伝達でき、外周部ポンツーン3の変形、すなわち浮屋根1の変形をより軽減又は防止出来る。
【0051】
また、第二浮屋根補強支持構造20では、一以上(ここでは二つ)の第三補強部材22と、一以上(ここでは複数)の第五補強部材23とを上部デッキ板3aを介して碁盤の目状に配置している。第二浮屋根補強支持構造20では、一以上(ここでは二つ)の第四補強部材24と、一以上(ここでは複数)の第五補強部材23と下部デッキ板3bを介して碁盤の目状に配置している。このため、第二浮屋根補強支持構造20は、補強強度が強くなる。また、第三支持装置21からの荷重を適宜分散しながら底板に効率よく伝達できるので、外周部ポンツーン3の変形、すなわち浮屋根1の変形をより軽減又は防止出来る。
【0052】
また、第二浮屋根補強支持構造20では、一以上(ここでは二つ)の第三補強部材22の複数箇所で第三支持装置21を支持している。これにより、この第二浮屋根補強支持構造20は、第三支持装置21からの荷重を第三補強部材22で分散しながら底板102に効率よく伝達でき、外周部ポンツーン3の変形、すなわち浮屋根1の変形をより軽減又は防止出来る。
【0053】
なお、第四支持装置25が支持する箇所は、外周部ポンツーン3の第五補強部材23に対応させることで、外周部ポンツーン3の変形をより防ぐことが出来る。この場合、第五補強部材23を有効利用できる。
【0054】
(第二浮屋根補強支持構造20の変形例)
なお、第二浮屋根補強支持構造は、ダブルデッキの浮屋根中央部の中央部ポンツーン53を利用して形成しても良い(図10参照)。中央部ポンツーン53は、外周部ポンツーン3に対応する。上部デッキ板53aは、上部デッキ板3aに対応する。下部デッキ板53bは、下部デッキ板3bに対応する。外周リム板53cは、外周リム板3cに対応する。内周リム板53dは、内リム板3dに対応する。第三補強部材62は、第三補強部材22に対応する。第四補強部材64は、第四補強部材24に対応する。第五補強部材63は、第五補強部材23に対応する。第三支持装置61は、第三支持装置21に対応する。第四支持装置65は、第四支持装置25に対応する。外周部ポンツーン73についても、第二浮屋根補強支持構造20と同様の構成を採用することができる。その他の説明は第二浮屋根補強支持構造20の説明に準じる。
【0055】
また、第五補強部材23は、リム板(すなわち、外周リム板3c又は内周リム板53d)にしてもよい。この場合、例えば、第三補強部材62及び又は第四補強部材64を、直線状の棒状形鋼材にして、外周リム板53cから内周リム板53dに架け渡すようにして配置すると、第二浮屋根補強支持構造20と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明に係る浮屋根補強支持構造及びこれを用いた固定屋根形成方法は、浮屋根と水張りを利用して、既設の浮屋根式貯槽を固定屋根式貯槽に改造する場合のみならず、新規に浮屋根を備えた固定屋根式貯槽を構築する場合などに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明に係る固定屋根形成方法の一例を説明する説明図であり、貯槽の貯蔵液を抜いた状態を示す説明図である。
【図2】この発明に係る固定屋根形成方法の一例を説明する説明図であり、図1に続いて、骨組み支持構造を形成した後の状態を示す説明図である。
【図3】この発明に係る固定屋根形成方法の一例を説明する説明図であり、図2に続いて、骨組み支持構造を利用して固定屋根の骨組みを形成した後の状態を示す説明図である。
【図4】この発明に係る固定屋根形成方法の一例を説明する説明図であり、図3に続いて、貯槽内に水張りしている状態を示す説明図である。
【図5】この発明に係る固定屋根形成方法の一例を説明する説明図であり、図4に続いて、固定屋根を形成した後の状態を示す説明図である。
【図6】この発明に係る第一浮屋根補強支持構造の一例の一部を拡大して示した要部断面図である。
【図7】この発明に係る第一浮屋根補強支持構造の一例の一部を拡大して示した要部斜視図である。
【図8】この発明に係る第二浮屋根補強支持構造の一例の一部を拡大して示した要部断面図である。
【図9】この発明に係る第二浮屋根補強支持構造の一例の一部を拡大して示した要部斜視図である。
【図10】この発明に係る第二浮屋根補強支持構造の他の例の一部を拡大して示した要部斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 浮屋根
2 デッキ板
3 外周部ポンツーン
3a 上部デッキ板
3b 下部デッキ板
3c 外周リム板
3d 内周リム板
7 骨組み
8 接続部
9 屋根板
10 第一浮屋根補強支持構造
11 第一支持装置
12 第一補強部材
14 第二補強部材
15 第二支持装置
15a 受け具
15b 脚部
20 第二浮屋根補強支持構造
21 第三支持装置
22 第三補強部材
23 第五補強部材
24 第四補強部材
25 第四支持装置
25a 受け具
25b 脚部
31 固定屋根
53 中央部ポンツーン
53a 上部デッキ板
53b 下部デッキ板
53c 外周リム板
53d 内周リム板
62 第三補強部材
63 第五補強部材
64 第四補強部材
73 外周部ポンツーン
100 浮屋根式貯槽
102 底板
104 側板
108 雨よけ板
110 シール部材
112 ローリングラダー
114 レール
116 ゲージングホーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキ板を有する浮屋根式貯槽の浮屋根を底板から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根の上で固定屋根の骨組みを形成する場合に、この浮屋根を補強しながら支持する浮屋根補強支持構造であって、
前記デッキ板の表面に配置した第一補強部材と、
前記デッキ板の裏面に配置し、前記デッキ板を介して前記第一補強部材と交差する第二補強部材と、
前記第一補強部材上に配置し、前記骨組みを支持する第一支持装置と、
前記底板上に配置し、前記第二補強部材を支持する第二支持装置と、を有することを特徴とする浮屋根補強支持構造。
【請求項2】
ポンツーンを有する浮屋根式貯槽の浮屋根を底板から上方向に間隔をあけて支持し、支持した浮屋根の上で固定屋根の骨組みを形成する場合に、この浮屋根を補強しながら支持する浮屋根補強支持構造であって、
前記ポンツーンの上部デッキ板の表面に配置した第三補強部材と、
前記ポンツーンの下部デッキ板の裏面に配置した第四補強部材と、
一端が前記上部デッキ板に接し、他端が前記下部デッキ板に接するとともに、前記上部デッキ板を介して前記第三補強部材と交差し、かつ前記下部デッキ板を介して前記第四補強部材と交差する第五補強部材と、
前記第三補強部材上に配置し、前記骨組みを支持する第三支持装置と、
前記底板上に配置し、前記第四補強部材を支持する第四支持装置と、
を有することを特徴とする浮屋根補強支持構造。
【請求項3】
浮屋根式貯槽に固定屋根を形成する固定屋根形成方法において、
請求項1又は2記載の浮屋根補強支持構造を形成するとともに、この浮屋根補強支持構造を使用して固定屋根の骨組みを形成するステップと、
浮屋根式貯槽に注水して浮屋根を浮かせ、前記ステップで形成した骨組みを浮屋根式貯槽の上部に移動させるステップと、を有することを特徴とする固定屋根形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−167736(P2009−167736A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8832(P2008−8832)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】