説明

浮腫を治療または軽減するための新規な化合物およびその使用方法

単離され、実質的に精製されたオリゴヌクレオチド化合物は、腫脹および浮腫の低下に有効であることが示された。様々な病因の浮腫を予防、軽減、または治療するための新規な方法および物質に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明およびその実施形態は、医学の分野、特に、いくつかの医学的状態において直面する、任意の器官または組織中の間質液のバランスにおける障害または機能不全である浮腫の治療または軽減で使用するための新規な化合物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
浮腫は、組織空間または体腔における細胞の間中の隙体液の異常な蓄積(貯留)として定義することができる。これは、血管系から組織への体液の過剰な移動、または組織から血管系へ戻る体液の不適正な移動によって引き起こされ得る。これらの2つの区画間での体液の正常な交換は、組織液の「スターリングの式」によって調節され、間質液の生成は、半透性の毛細血管壁を介して反対方向に作用する浸透圧および静水圧のバランスに依存する。浮腫は、これらの力におけるアンバランスの結果であり、これは、間質空間における体液の異常な蓄積を引き起こす傾向がある。
【0003】
浮腫の臨床症状は、身体の軽症から重症の腫脹および体重の増加を含む。腫脹は、細胞外液における広汎の(もしくは全身性の)増加によってまたは限局性の部位に限られる浮腫の集中により引き起こされ得る。広汎の浮腫についての医学的状態である全身浮腫は、皮下組織の腫脹によって特徴づけられるが、限局性の浮腫は通常、とりわけ水胸症(胸膜の間の空間における漿液過多)、心膜水腫(心膜における体液過多)、腹水症、または腹水(腹膜腔における体液過多)など、罹患部位に基づいて称される。
【0004】
浮腫において蓄積する血管外液の組成は、その病因によって変動する。非炎症性のメカニズムによって引き起こされる浮腫の場合において、体液(漏出液)は、比較的低いタンパク質濃度を含み、比重が小さく、罹患部位の内皮が正常であることを示す。そのような場合において、漏出液は、本質的に、血漿の限外濾過液である。この種類の非炎症性の浮腫は、毛細血管壁を介した、血行動態による力の変化によって主に引き起こされ、血行動態による浮腫としても知られている。他方では、炎症応答によって引き起こされる浮腫の場合において、血管外液(滲出液)は、高濃度のタンパク質、細胞、および細胞破片を含み、比重が大きい。これは、罹患エリアにおける微小血管の正常な透過性における著しい変化を示す。
【0005】
浮腫は、様々な疾患の発病の重要な機能的徴候として通常、生じるが、外傷および傷害の結果としても生じ得る。心不全、肝硬変、およびネフローゼ症候群などの腎疾患は、浮腫を引き起こす最も一般的な全身性疾患の一部である。疾患発病の間の浮腫の発症に関与する主なメカニズムは、血管内の静水圧の増加、リンパ流の機能障害、不適切な腎臓のナトリウムおよび水の貯留(滞留)、血漿浸透圧の低下、ならびに血管透過性の増加を含む。
【0006】
静脈における静水圧の増加は、組織からの体液の再吸収の不良をもたらし、このアンバランスは、浮腫をもたらす。静水圧の増加は、静脈圧の広汎の増加として生じる可能性もあり、または特定の部位にしか影響しない可能性もある。静水圧の局所的な増加は、静脈流出障害に起因する可能性があり、これは、普通、より低い末端で起こり、閉塞性血栓症および静脈瘤の発症に対する二次性のものである。結果として生じる浮腫は、肢および下肢において限局性であり、末梢浮腫として一般的に知られている。静脈圧の広汎の増加は、全身性の浮腫をもたらし、これは、うっ血性心不全の場合において一般的に観察される。具体的には、心臓の左側の不全は、肺(肺胞)における体液の集中をもたらし、肺水腫および呼吸困難をもたらす。他方では、心臓の右側の不全の間に、体液は、下肢において蓄積し、末梢浮腫を引き起こす。状態が進行するまたは悪化するとともに、上肢もまた膨張し、最終的に、腹膜腔において体液が集中し、これは、腹水として知られている浮腫の状態をもたらす。全身において広汎である浮腫の原因は、複数の器官において浮腫を引き起こし得ることが観察されている。
【0007】
リンパ流の障害またはリンパ液の閉塞は、間質液の不適正な排液をもたらし、これは、結果的に、限局性のリンパ水腫を引き起こす。リンパ水腫は、リンパ液過多が組織に集中する、一般的な衰弱性の浮腫状態である。それは、とりわけ炎症性のもしくは新生物性の閉塞、癌もしくは拡大したリンパ節からの圧力、放射線療法によるリンパ管の破壊、または象皮病もしくはフィラリア症などの感染によるリンパ管の浸潤によって引き起こされ得る。
【0008】
腎臓によるナトリウムおよび水の過剰な貯留は、血管内の体液の容量の増加を引き起こし、これは、最終的に、静水圧を増加させ、浮腫を引き起こす。とりわけ急性腎不全または連鎖球菌性糸球体腎炎などの状態は、正常な腎機能に直接、影響を与え、身体における異常な塩類貯留を引き起こす。これとは別に、うっ血性心不全、低アルブミン血症などのいくつかの障害の発病は、レニン−アンギオテンシン−アルドステロン(RAAS)ホルモン系を活性化し、これは、ナトリウムおよび水の貯留を促進する。したがって、あるメカニズムによって開始される浮腫は、塩類および体液の貯留の二次性のメカニズムによって複雑になる。身体における余分な体液負荷および体液の貯留の悪循環は、膜を介した圧力勾配をさらにアンバランスにし、浮腫の悪化をもたらす。
【0009】
血管内部の血漿浸透圧の減少は、間質空間への体液の移動を促進し、浮腫をもたらす。血漿浸透圧のそのような減少は、血液容量を維持するために主として寄与する、毛細血管膜に対して不透過性である血漿タンパク質、特にアルブミンの過剰な損失または合成の低下のいずれかの結果となり得る。アルブミンの過剰な損失の最も重要な原因は、ネフローゼ症候群として知られている腎臓障害であり、これは、漏出性の糸球体基底膜によって特徴づけられ、これは、広汎の浮腫を最終的にもたらす。血清タンパク質、特にアルブミンの合成の低下(または低アルブミン血症)は、肝硬変などの肝臓のびまん性疾患において生じるまたは栄養失調と関連する。これらのすべての例において、血管内から間質区画への体液の移動は、血漿の容量の収縮をもたらし、これは、とりわけ腹水および末梢浮腫などの広汎の浮腫様の症状をもたらす。
【0010】
血漿タンパク質の過剰な損失の他の重要な原因は、血漿タンパク質に対する血管の透過性の増加である。この透過性の増加は、血行路から間質への、タンパク質および白血球などの細胞の移動を引き起こす。血漿からの、タンパク質が豊富な体液の損失は、血管内の浸透圧を低下させ、間質空間の浸透圧を増加させて、これは、血管から間質への体液の流出を最終的にもたらし、浮腫を引き起こす。血管透過性の増加は、特に急性炎症の場合における、刺激に対する身体の炎症応答の主な特徴の1つである。実際に、浮腫は、急性炎症の主な徴候の1つである。炎症の間に、血漿に由来し、炎症性の刺激によって誘発される化学的因子は、罹患部位におけるいくつかの血管応答および細胞応答を媒介する。微小血管系におけるこれらの構造変化は、血管膜の透過性の増加をもたらし、血行路から間質への、血漿タンパク質および細胞、たとえば白血球の移動を引き起こし、これは、部位特異的な浮腫を最終的にもたらす。炎症性浮腫は、大部分は、ヒスタミン、ブラジキニン、および他の放出される物質の直接作用に起因し得る。炎症における血管透過性の増加の主なメカニズムは、とりわけ内皮細胞収縮、接合部の退縮、直接の傷害、白血球依存性の漏出、再生内皮を含む。間質への体液濾過の増加は、炎症媒介物質の小動脈血管拡張作用によってさらに増強され、これは、血流、灌流表面積、毛細血管静水圧を増加させ、同様に、他のメカニズムによって浮腫を促進する。
【0011】
要約すれば、浮腫は、様々な疾患の発病の重要な機能的徴候の1つとして知られている。とりわけ心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群は、浮腫を最終的にもたらす最も一般的な全身性疾患の一部である。浮腫の動態およびこれらの疾患と関連する他の関係する臨床症状の理解は、それらの全病状を解明するのに重要であり、これらの疾患への、新規かつ高度に特異的な診断、治療および予防的な戦略を開発する際に助けとなり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Guochang Hu、 Stephen M.Vogel、 David E.Schwartz、 Asrar B.Malik、 Richard D.Minshall.(2008) 「Intercellular Adhesion Molecule-1-Dependent Neutrophil Adhesion to Endothelial Cells Induces Caveolae-Mediated Pulmonary Vascular Hyperpermeability」 Circ Res.102:e120-e131.
【非特許文献2】A.Gennaro(編)、 Remington's Pharmaceutical Sciences、 第18版、 Mack Publishing Co.、 Easton、 PA、 1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
一目的は、浮腫を予防、軽減、または治療するための新規な化合物および方法を利用可能にすることである。他の目的およびそれらの関連する利点は、説明および実施例の検討後に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、参照によって本明細書に組み込まれる添付の特許請求の範囲において記載されるように、浮腫を予防、治療、または軽減するための新規な化合物および方法を利用可能にする。本発明者らは、驚いたことに、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10を含む群から選択される配列を含むオリゴヌクレオチド化合物が、浮腫の治療または軽減に有効であることを発見した。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、配列番号1〜10の配列の少なくとも1つを含むオリゴヌクレオチド化合物は、約12〜約30塩基の全長を有する。
【0016】
本発明者らは、個々のオリゴヌクレオチド配列を同定し、試験し、浮腫の治療または軽減におけるそれらの有用性を示した。
【0017】
これらの発見に基づいて、本発明者らは、添付の特許請求の範囲において開示される特定の化合物を提供する。これらの化合物は、インビトロおよびインビボの両方で試験され、実験結果は、化合物が、血管透過性を低下させることによって浮腫を低下させるという理論を暫定的に支持する。
【0018】
この説明、実施例、および特許請求の範囲において、より詳細に下記で実施形態を説明し、添付の図面と共に検討する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】テトラデカノイルホルボール13−アセテート(TPA)誘発性の耳浮腫モデルにおける、試験薬剤およびコントロール薬剤の抗炎症効果を示すグラフである。IDX0920(50μg)、IDX0150(100μg)、IDX0955(100μg)、および試験薬剤IDX0001(100μg)をTPAの投与の20分前に、1回の単一s.c.注射として与えた。耳の最初の厚さを100%として設定した。PBSと比較した曲線下面積(AUC)の低下は、IDX0920 −22.1%(P<0.011)、IDX0150 −38.9%(P<0.011)、IDX0955 −4.8%、およびIDX0001 −15.7%(P>0.05)である。ダネットの多重比較検定を用いる一元配置ANOVA。
【0020】
【図2】ネガティブコントロール(TPAを有するPBS媒体)と比較した、TPAモデルを用いる10回の実験から組み合わせた、100μg IDX0150の投与の後の膨張の平均炎症ピーク値を示す、TPA誘発性の耳浮腫モデルからの結果を示す図である。スチューデント検定、***P<0.001、±SD。
【0021】
【図3a】TPA誘発性の耳浮腫モデルからの組み合わせのヒストグラムを示す図である。媒体(PBS)治療と比較した、IDX0150治療による浮腫ピーク値の低下。黒色の棒、鼻腔内(i.n.)投与、白色の棒、腹腔内(i.p.)投与、および斜線をひいた棒、皮下(s.c.)投与。TPA投与の4日前(I、E、およびF)、TPA投与の2日前(D)、TPA投与の20分前(H、A、B、およびC)、TPA投与の2時間後(JおよびG)にIDX0150を用いて治療。50μg IDX0150/マウスを使用した試験Fを除いて、すべての場合において、100μg IDX0150/マウスを治療に使用した。E、FまたはB、Cは、2回の実験の平均である。
【0022】
【図3b】TPA誘発性の耳浮腫モデルからの組み合わせのヒストグラムを示す図である。媒体(PBS)治療と比較した、IDX0150治療による浮腫曲線下面積(AUC)の低下。黒色の棒、鼻腔内(i.n.)投与、白色の棒、腹腔内(i.p.)投与、および斜線をひいた棒、皮下(s.c.)投与。TPA投与の4日前(I、E、およびF)、TPA投与の2日前(D)、TPA投与の20分前(H、A、B、およびC)、TPA投与の2時間後(JおよびG)にIDX0150を用いて治療。50μg IDX0150/マウスを使用した試験Fを除いて、すべての場合において、100μg IDX0150/マウスを治療に使用した。E、FまたはB、Cは、2回の実験の平均である。
【0023】
【図4】アラキドン酸(AA)誘発性の耳浮腫モデルにおける、フェニドンおよびIDX0150の効果を示すヒストグラムである。AA誘発の30分前に与えたフェニドンは、AUC −39.1%、P<0.05の低下を示し、これは、前に得られたIDX0150を用いる治療に類似した(図2を参照されたい)。AAの20分前に与えたIDX0150と組み合わせた、AAの30分前に与えたフェニドンは、さらなる低下をもたらした(−76.8%、P<0.001)。
【0024】
【図5a】TPA誘発性の耳浮腫モデルにおける試験薬剤および媒体(PBS)の抗炎症効果を示すグラフである。10μgのIDX9024、IDX9025、IDX9038、IDX9051、およびIDX9053を、TPAの投与の20分前に、1回の単一s.c.注射として与えた。耳の最初の厚さを100%として設定した。AUC低下は、PBSコントロールと比較して、IDX9024 −47.3%、IDX9025 −57.8%、IDX9038 −47.4%、IDX9051 −54.0%、およびIDX9053 −39.0%。
【0025】
【図5b】TPA誘発性の耳浮腫モデルにおける試験薬剤および媒体(PBS)の抗炎症効果を示すグラフである。10μgのIDX9064、IDX9076、IDX9078、IDX9080、およびIDX9089を、TPAの投与の20分前に、1回の単一s.c.注射として与えた。耳の最初の厚さを100%として設定した。AUC低下は、PBSコントロールと比較して、IDX9064 −59.7%、IDX9076 −5.1%、IDX9078 −41.3%、IDX9087 −40.2%。
【0026】
【図5c】AA誘発性の耳浮腫モデルにおける試験薬剤および媒体(PBS)の抗炎症効果を示すグラフである。10μgのIDX9024、IDX9025、およびIDX9051を、AAの投与の20分前に、1回の単一s.c.注射として与えた。耳の最初の厚さを100%として設定した。AUC低下は、PBSコントロールと比較して、IDX9024 −58.5%、IDX9025 −81.9%、およびIDX9051 −67.5%。
【0027】
【図5d】AA誘発性の耳浮腫モデルにおける試験薬剤および媒体(PBS)の抗炎症効果を示すグラフである。10μgのIDX9076、IDX9078、およびIDX0150を、AAの投与の20分前に、1回の単一s.c.注射として与えた。耳の最初の厚さを100%として設定した。AUC低下は、PBSコントロールと比較して、IDX9076 −45.7%、IDX9078 −79.4%、およびIDX0150 −89.4%。
【0028】
【図6】オボアルブミン(OVA)誘発性のアレルギー性気道炎症のマウスモデルについての予防および治療プロトコルを示す図である。
【0029】
【図7】最後のOVAエアロゾルの48時間後の、OVA免疫Balb/cマウスからの気管支肺胞洗浄(BAL)体液中の異なる細胞型の総数を示す組み合わせを示すヒストグラムである。マウスは、予防プロトコルにおいて、16および21日目に鼻腔内滴下によって投与されるIDX0150(50μg/動物)を用いて治療した(IDX0150、M&Mを参照されたい)。治療プロトコルにおいて、IDX0150を、30および33日目(IDX0150A、M&Mを参照されたい)または30および34日目(IDX0150B)に与えた。30および33日目の治療プロトコル(A&B)における滴下を、エアロゾル誘発の4時間後に行った。34日目のプロトコルBにおける第2の滴下を、最後のエアロゾル誘発の24時間後に行った。健常コントロールは、PBSを用いて治療し、OVAエアロゾルに曝露した。データは平均±SDとして示す。*P<0.05、***P<0.001、分散(ANOVA)の一元配置分析、ダネットの事後補正を使用。PBSグループは、PBSを用いて偽治療し、OVAエアロゾルに曝露した。
【0030】
【図8】OVA誘発性のアレルギー喘息モデルにおける予防プロトコルの結果を示す、組み合わせのヒストグラムである。最後のOVAエアロゾルの48時間後の、OVA免疫Balb/cマウス(最初0日目、最後12日目)からの気管支肺胞洗浄(BAL)体液における細胞の総数。マウスは、第1の免疫の後に、16および21日目に鼻腔内滴下によって投与したIDX9025、IDX9038、またはIDX9053(50μg/動物)を用いて治療した。PBSグループは、免疫し、PBSを用いて偽治療し、OVAエアロゾルに曝露した。データは平均±SDとして示す。*P<0.05、***P<0.001、分散(ANOVA)の一元配置分析、ダネットの事後補正を使用。
【0031】
【図9a】チオグリコレート誘発性の胸膜炎の誘発の20分前に与えた50μg IDX0150/マウスを用いる腹腔内治療の結果を示すヒストグラムである。胸膜滲出液における多形核細胞(PMN)の数は、炎症を起こしたマウス(PBS)と比較して、IDX0150治療の後に40.9%の低下を示した。データは平均±SDとして示す。
【0032】
【図9b】チオグリコレート誘発性の胸膜炎の誘発の20分前に与えた50μg IDX0150/マウスを用いる腹腔内治療の結果を示すヒストグラムである。IDX0150は、チオグリコレート治療と比較して、69.2%の、胸膜浮腫のクリアランス容量の低下を示した。データは平均±SDとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施形態について説明する前に、実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるので、本明細書において用いられる術語は、特定の実施形態のみを説明する目的で使用され、限定することを意図しないことを理解されたい。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に規定しない限り、複数の指示物を含むことに注意されなければならない。
【0035】
用語「軽減」、「治療」、「予防」、「療法」、「治療的な使用」、「予防的な使用」、「医薬」、および「医学的な使用」は、明細書および請求項において使用される場合、ヒトおよび動物の両方または獣医の適用を包含する。重要なことに、用語「治療」は、本明細書ではその最も広い意味においてここで使用され、疾患の反転または治癒に限定されないが、症状の軽減または疾患の進行の遅延も含む。
【0036】
さらに、用語「治療方法」を使用する場合、方法のステップおよび付属的な方法もまた包含される、つまり、開示される方法自体が網羅的な方法を構成しない場合もまた包含される。本発明の方法は、一連の操作および手段におけるステップを構成し、疾患の軽減、予防、または治療を導くことができることが企図される。
【0037】
用語「約」は、数値との関連で使用される場合、当業者によく知られており、許容可能である精度の間隔を表す。上述の間隔は、+/−10%または好ましくは+/−5%とすることができる。
【0038】
本明細書において使用される場合の句「治療有効量」は、ピーク値または他の妥当な測定値の低下として測定される、ある有益な程度まで、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも20%、およびより好ましくは少なくとも30%またはそれ以上、浮腫を阻害するまたは低下させるのに十分な量に関する。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「生理学的に許容可能な」は、細胞、細胞培養物、組織、または器官などの生物系と適合する材料を指す。好ましくは、生物系は、脊椎動物などの生きている生物である。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「担体」は、任意の賦形剤、希釈剤、増量剤、塩類、緩衝剤、安定剤、溶解剤、脂質、または医薬製剤における使用のための、当技術分野においてよく知られている他の材料を包含する。担体、賦形剤、または希釈剤の特徴は、特定の適用のための投与経路に依存することが理解されるであろう。粘膜投与に特に適した担体の例は、生理食塩水、リポソーム、界面活性剤、粘膜付着性化合物、酵素阻害剤、胆汁酸塩、吸収促進剤、およびシクロデキストリンを含むが、これらに限定されない。これらの材料を含有する薬学的に許容可能な製剤の調製は、たとえばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1990において記載される。
【0041】
本明細書の目的で、用語「免疫調節性」は、哺乳動物などの脊椎動物に投与される場合に、生物において、免疫系を刺激するまたは免疫系を抑制するまたはその両方の免疫応答を誘発するための、化合物、たとえば、本明細書および請求項において定義されるオリゴヌクレオチドの特性を指す。本明細書において使用される場合、用語「哺乳動物」は、限定を伴うことなく、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、雌ウシ、ブタ、ウサギ、非ヒト霊長動物、およびヒトを含む。
【0042】
本明細書の目的で、用語「オリゴヌクレオチド」は、複数の連結された個々のヌクレオシド単位から形成されるポリヌクレオシドを指す。そのようなオリゴヌクレオチドは、ゲノムまたはcDNAを含む既存の核酸源から得ることができるが、合成法によって好ましくは産生される。ヌクレオシド残基は、多数の知られているヌクレオシド間連結のいずれかによって互いに結合させることができる。そのようなヌクレオシド間連結は、限定を伴うことなく、天然のヌクレオシド間ホスホジエステル結合またはこれらに限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボアルコキシ、アセトアミデート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート、およびスルホンヌクレオシド間連結などの実際に修飾されたヌクレオシド間のものを含む。用語「オリゴヌクレオチド」はまた、1つまたは複数の立体特異的ヌクレオシド間連結(たとえば(Rp)−または(Sp)−ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、またはホスホトリエステル連結)を有するポリヌクレオシドを包含する。本明細書において使用される場合、連結がリン酸基を含むかどうかにかかわらず、用語「オリゴヌクレオチド」および「ジヌクレオチド」は、任意のそのようなヌクレオシド間連結を有するポリヌクレオシドおよびジヌクレオシドを含むことが明らかに意図される。ある好ましい実施形態において、これらのヌクレオシド間連結は、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、もしくはホスホロジチオエート連結またはその組み合わせであってもよい。
【0043】
用語「オリゴヌクレオチド」はまた、限定を伴うことなく、タンパク質群、親油基、挿入剤、ジアミン、葉酸、コレステロール、およびアダマンタンを含む追加の置換基を有するポリヌクレオシドをも包含する。用語「オリゴヌクレオチド」はまた、限定を伴うことなく、ペプチド核酸(PNA)、リン酸基を有するペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ骨格オリゴヌクレオチド、およびアルキルリンカーまたはアミノリンカーの付いた骨格セクションを有するオリゴヌクレオチドを含む、任意の他の核酸塩基含有ポリマーをも包含する。
【0044】
用語「粘膜投与」は、動物体における粘膜のタイプのいずれか、たとえば、これらに限定されないが、鼻、頬側、食道、胃、腸、嗅、口腔、気管支、および泌尿生殖器粘膜への投与を含む。
【0045】
様々の実施形態は、配列番号1〜10の中から選ばれる配列を含む、単離され、実質的に精製されたオリゴヌクレオチド化合物を利用可能にする。特定の配列が、下記の表1および2において提供される。表1の配列、配列番号1〜7が、以下の配列またはモチーフ:5’−TCGTC−3’を共有することに注意されたい。
【0046】
これらの配列を含む本発明の様々な実施形態による化合物は、約12〜約30塩基の全長を好ましくは有することが意図される。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
本発明者らはまた、ポジティブおよびネガティブコントロールとして異なるオリゴヌクレオチド配列をも使用した。これらを表3に挙げる。
【0050】
【表3】

【0051】
本発明の実施形態によれば、一般式1によるオリゴヌクレオチド、配列番号1〜7の中から選ばれるオリゴヌクレオチド、または配列番号8〜10の中から選ばれるオリゴヌクレオチドを、化学的に修飾することができる。この化学修飾は、たとえば、少なくとも1つのヌクレオチドのリン酸骨格修飾である。好ましくは、リン酸骨格修飾は、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート修飾である。
【0052】
他の実施形態は、配列番号1〜7の中から選ばれるオリゴヌクレオチドまたは配列番号8〜10の中から選ばれるオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を利用可能にする。そのような医薬組成物は、さらに好ましくは、薬理学的に適合し、生理学的に許容可能な賦形剤または担体を含む。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、上記に定義されるオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物は、生理食塩水、リポソーム、界面活性剤、粘膜付着性化合物、酵素阻害剤、胆汁酸塩、吸収促進剤、シクロデキストリンなどから選ばれる、薬理学的に適合し、生理学的に許容可能な賦形剤または担体をさらに含む。当業者は、発明的努力を伴うことなく、必要な賦形剤または担体を容易に選ぶであろう。
【0054】
現在好ましい実施形態は、配列番号1〜7の中から選ばれるオリゴヌクレオチドまたは配列番号8〜10の中から選ばれるオリゴヌクレオチドを含む、粘膜投与のための医薬製剤に関する。本発明の実施形態はまた、浮腫を予防、治療、および/または軽減するための医薬組成物の製造のための、配列番号1〜7の中から選ばれるオリゴヌクレオチドまたは配列番号8〜10の中から選ばれるオリゴヌクレオチドの使用にも関する。
【0055】
本発明の一実施形態によるこの使用は、浮腫を伴う状態または障害の予防、治療、および/または軽減に好ましくは着目し、浮腫は、たとえば心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などの腎疾患、栄養失調、癌、喘息、アレルギー性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、虚血、外傷、および敗血症性ショックの中から選ばれる状態につながる、任意の器官または組織中の間質液のバランスにおける障害または機能不全として定義される。
【0056】
本発明の実施形態によるそのような使用において、上述のオリゴヌクレオチドは、生理学的に許容可能な治療有効量、つまり、血管透過性の調節、白血球遊走の阻害または低下、好中球遊走または活性化の阻害または低下、好酸球遊走の阻害または低下、およびリンパ球遊走の阻害または低下の1つを達成するのに有効な量で投与される。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、オリゴヌクレオチドは、配列番号1〜7からなる群から選ばれ、または配列番号8〜10の中から選ばれるオリゴヌクレオチドであり好中球遊走もしくは活性化の阻害もしくは低下によって喘息を治療するために使用される。
【0058】
本発明の実施形態はまた、浮腫を予防、治療、および/または軽減するための方法をも利用可能にし、配列番号1〜7の中から選ばれるオリゴヌクレオチドまたは配列番号8〜10の中から選ばれるオリゴヌクレオチドは、血管透過性の修飾、好中球遊走および/または活性化の阻害、好酸球遊走の阻害または低下、白血球遊走の阻害または低下、ならびにリンパ球遊走の阻害または低下の1つまたはいくつかを達成するのに有効な用量で投与される。
【0059】
大まかに言えば、本発明の実施形態は、浮腫を予防、治療、および/または軽減するための方法をも利用可能にし、配列番号1〜7の中から選ばれるオリゴヌクレオチドまたは配列番号8〜10の中から選ばれるオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物を患者に投与する。投与の適した経路は、粘膜投与、経皮投与、皮下投与、および腹腔内投与から選ばれる。
【0060】
一実施形態によれば、粘膜投与は、胃、経鼻投与、吸入、眼内投与、直腸投与、泌尿生殖器、および膣投与から選ばれる。
【0061】
本発明者らによって行われた動物実験において記録された著しい抗膨張効果および抗浮腫効果に基づいて、浮腫を予防、治療、および/または軽減するための方法は、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などの腎疾患、栄養失調、癌、喘息、アレルギー性鼻炎、COPD、急性肺傷害、1つまたは複数の肺における滲出液の蓄積を伴う状態、虚血、外傷、および敗血症性ショックの中から選ばれる疾患または状態などの、浮腫が構成要素である任意の疾患または状態まで広げることができる。
【0062】
肺における滲出液の蓄積を伴う状態の中で、以下の状態に言及することができる:異なる病因の複数の浸出液、下気道感染、肺炎、肺の急性細菌感染、結核、職業性肺疾患、主に塵肺(無機塵および粒子状物質の吸入によって引き起こされる慢性繊維性肺疾患、たとえば石綿肺、珪肺)ならびに過敏性肺炎(有機塵の吸入に起因する炎症などのアレルギー性肺疾患、たとえば農夫肺)、放射能に対する曝露に起因する肺損傷など。
【0063】
本発明の実施形態による方法において、オリゴヌクレオチドは、体重1kg当たり約5〜約500μgの量で、好ましくは、体重1kg当たり約10〜100μgの量で投与される。
【0064】
他の実施形態は、オリゴヌクレオチドが、たとえば侵襲性の外科手技、放射線療法、ホルモン治療、移植手術、および移植術の前に、予防的に投与される方法を利用可能にする。動物実験は、化合物が、浮腫の誘発の前に投与された場合にも、顕著な効果を有することを示す。
【0065】
本発明者はまた、オリゴヌクレオチドが、刺激源またはアレルゲンへの曝露が予期される前に、予防的に投与される方法を利用可能にする。本発明の実施形態による化合物は、したがって、単独でまたは他の慣習的に使用される医薬品と組み合わせて、季節性アレルギーを軽減または予防するために使用することができる。
【0066】
他の実施形態は、オリゴヌクレオチドが抗炎症薬、たとえばステロイド薬と組み合わせて投与される方法である。
【0067】
他の実施形態は、オリゴヌクレオチドが利尿薬と組み合わせて投与される方法である。
【0068】
興味深いことに、目下試験されている化合物を用いて達成される抗膨張効果または抗浮腫効果はまた、表1ならびに2において提供される配列を含む他の免疫調節性化合物ならびに分岐オリゴヌクレオチド、ダンベル状オリゴヌクレオチド構築物、グリシン連結オリゴヌクレオチド構築物、およびその他同種のものなどのその構造変化体を投与する場合にも見ることができたことが企図される。
【0069】
しかしながら、あらゆる特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、ここで提供されるDNAベースのオリゴヌクレオチドが、膨張または浮腫に対するより高い特異性および効能の改善を示し、それらの特異的配列により、ヒトの臨床使用に、より適していると考える。
【実施例】
【0070】
1.マウスホルボールアセテート(テトラデカノイルホルボール13−アセテート、TPA)またはアラキドン酸(AA)誘発性の耳浮腫に対する、異なる投与計画によって与えられる実験用オリゴヌクレオチド化合物の効果
【0071】
材料および方法
化学薬品
TLC(Sigma−Aldrich Sweden AB、Stockholm、Sweden)のテトラデカノイルホルボール13−アセテート(TPA)、CAS 16561−29−8、純度約99%を凍結乾燥粉末として保存した。ジメチルスルホキシド(DMSO)、CAS 67−68−5、無菌濾過、Hybri−Max(登録商標)(Sigma−Aldrich Sweden AB、Stockholm、Sweden)。アセトン、分析グレード、CAS 67−64−1、Labora AB、Sollentuna、Sweden。
【0072】
TPAの原液は、1mg/mLでDMSO中にTPAを溶解することによって調製し、−80℃で凍結保存した。試験B〜Eについては、使用溶液は、200μLのTPA原液を800μLアセトンに加えて調製した。使用溶液は、それを調製したのと同じ日に使用した。
【0073】
TLC(Sigma−Aldrich Sweden AB、Stockholm、Sweden)のアラキドン酸(AA)、CAS 506−32−1、Batch 106K1432、油状、純度約99%。アセトン、分析グレード、CAS 67−64−1、Labora AB、Sollentuna、Sweden。
【0074】
AAの原液は、4mg/10μLでアセトン中にAAを希釈することによって調製し、−80℃で凍結保存した。アセトン中の最終使用溶液1mg/10μLを調製した。使用溶液は調製の後の1時間以内に使用した。
【0075】
試験化合物
合計で、15種の化合物を、TPAおよび/またはAA実験において試験した。表1〜3を参照されたい。オリゴヌクレオチドは、biomers.net GmbH、Ulm、Germanyによって合成され、−20℃で凍結保存された。
【0076】
製剤
化合物は、室温で、PBS(Fluka、Sigma)を用いて使用濃度まで希釈した。濃度は、UV分光光度法(SmartSpec(登録商標)3000、BIO−RAID、Hercules、USA)を用いて95%の精度まで調整した。
【0077】
動物実験および投薬量
動物
メスおよびオスのSPF NMRI/KSマウス(InDex Pharmaceutical AB所有の種畜のSPF NMRIマウス、MTC、Karolinska Institutet、Stockholm、Sweden)またはメスのBALB/cJマウス(Jackson Laboratory、Bar Harbor、Maine、USA)。動物は、グループ化し、実験に入る前に少なくとも1週間、順応させた。
【0078】
飼育ケース
動物を、21℃±3℃および55%±15%の相対湿度の部屋で飼育した。換気システムを、1時間当たり10回、空気交換するように設計した。部屋を、12時間明および12時間暗のサイクルとなるように照明した。照明を06:00〜18:00の時間つけた。
【0079】
マウスを、それぞれのケージに8匹、透明なポリカーボネート(MacroloneタイプIII)ケージ(床面積:810cm2)において飼育した。
【0080】
敷床
ケージ中の敷床は、Beekay敷床(B&K、Sollentuna、Sweden)とした。
【0081】
環境強化
環境強化のために、動物に、Sizzele NestまたはHappy−Mat(Scanbur A.S、Lellinger、Denmark)を供給した。
【0082】
食餌
十分なペレットげっ歯動物用食餌、R36(Laktamin AB、Stockholm、Sweden)を適宜、供給した。
【0083】
飲料水
動物が国内品質の飲料水を有する動物飲用ボトルに自由にアクセスできるようにした。
【0084】
動物識別、グループ化、および治療
それぞれのケージを、試験番号、グループ番号、倫理的な承認番号、性別、および動物耳番号を用いてマークしたケージカードによって識別した。動物は、パーマネントインクフェルトペンを使用して、動物の番号に対応する横線を用いて尾に個々にマークした。異なる治療に使用したプロトコルの例を表4に概説する。化合物を、必要な変更を伴う同じプロトコルに従って試験した。
【0085】
【表4】





【0086】
試験手順
用量投与
腹の右下腹部中に100μLを施すことによって腹腔内(i.p.)注射を行った。首領域中に100μLを用いて皮下注射を行った。鼻孔の中に液滴、全容量40μLをマウスに吸入させることによって鼻腔内投与を行った。投与をすべて、非麻酔マウスに行った。
【0087】
浮腫の誘発
非麻酔マウスの両方の外耳を、柔らかい歯ブラシを使用して、低刺激石けん(Palmolive、Sweden)を用いて洗浄し、ティッシュを用いて耳を乾燥させ、アセトンを浸したティッシュを用いてきれいにした。アセトンを蒸発させた後に、TPAまたはAAを、耳全体を覆うように注意して、耳のそれぞれの側に10μL、両側に適用した。溶媒を蒸発させるために、マウスを20秒間保持した。
【0088】
薬理学的治療
腹腔内注射を、動物を背位に保持して、腹の右下腹部に施した。皮下(s.c.)注射を、動物の首に施した。鼻腔内投与を、わずかに後にもたれかかる姿勢に保持したマウスに施した。調整可能なマイクロピペット40μLの試験物質を鼻孔上に液滴で施し、マウスに自由意志で吸引させた。
【0089】
臨床徴候
殺すまでそれぞれのマウスを毎日観察した。病気のすべての徴候、健康、およびあらゆる行動の変化を記録した。
【0090】
臨床パラメーター
非麻酔マウスの耳を、TPAを投与した後の96時間までまたはAAモデルについては24時間までの異なる時点で測定した。第1の測定を、浮腫を誘発する前に行った。耳当たりすべての時点で三通り、スプリング式ダイヤルマイクロメーター(Limit、Thickness Gauge、精度0.01mm、接触域φ6mm、Luna AB、Allingsaes、Sweden)を用いて厚さを記録した。
【0091】
マウスの両方の耳についての平均の厚さを計算し、開始時点の耳の平均の厚さと比較した。実験の開始時に得た値を100%として設定した。治療グループについてのピーク値および曲線下面積(AUC)値を計算し、PBSを用いて治療した、炎症を起こしたコントロールグループ(100%として設定)と比較し、パーセンテージ変化(△%AUC)として表した。
【0092】
統計
スチューデントのt検定を使用して統計的有意性を計算した(Excel Statistical Functions、Microsoft(登録商標) Excel 2002、Microsoft Corp.、Redmond、USA)。
【0093】
基準線を100に設定した曲線下面積(AUC)は、GraphPad Prism version 4.03 for Windows(登録商標)を使用して計算した(GraphPad Software、San Diego California USA、www.graphpad.com)。
【0094】
結果
実験プロトコルを、表4に示す例によって示す。AUC低下およびP−値をポジティブコントロール(TPAまたはAA+PBS)に対して計算した。
【0095】
試験A
この試験は、浮腫の誘発を0日目に開始して、本発明の化合物をi.p.で施した場合、浮腫の低下を示した。本実験において、コントロール物質IDX0150は、炎症のほぼ十分な寛解を示し、AUCを−38.9%低下させた。
【0096】
試験B
試験Bは、浮腫の誘発の4日前にs.c.を施した場合の化合物の予防効果を調査した。IDX0920、IDX0955、およびIDX0001は、それぞれ−19.3%、−22.7%、および−16.3%のAUCの低下を示したが、統計的に有意ではなかった(NS)。IDX0150は、AUCの低下を示さなかった。測定値の間の大きな差異による不十分な結果のために、この試験を繰り返した(試験C)。
【0097】
試験C
試験Bの繰り返しの試験において、浮腫の誘発の4日前にs.c.を施したODNは、それぞれ、−3%、−22%、−24.3%、および−17.9%のAUCの低下を示し、IDX0150(P<0.01)、IDX0955(P<0.01)、およびIDX0001(P<0.05)について統計的に有意であった。
【0098】
試験D
より短い予防レジメンにおいて、浮腫の誘発の2日前にs.c.を施すと、試験Cとほぼ類似した結果が得られた。IDX0920、IDX0150、IDX0955(P<0.01)について統計的に有意であったが、IDX0001について有意ではなかった。AUCの低下は、それぞれ、−19.1%、−16.5%、−17.8%、および−12.4%であった。
【0099】
試験E
この試験において、浮腫を誘発したのと同じ日に化合物を施した。誘発は、それぞれのマウスについて約20分間の待ち時間を考慮に入れるためにずらした。この試験において、AUCの比較的一様な低下、IDX0920 −19.4%、IDX0150 −27.3%、IDX0955 −17.7%、およびIDX0001 −16.7%があった。すべての化合物は、統計的に有意な低下をもたらした(P<0.01)。
【0100】
試験F
この試験において、それぞれの動物に対して等用量(50μg)で、膨張を誘発したのと同じ日に化合物を施した。これもまた、AUCの低下、IDX0920 −17%、IDX0150 −31.1%、IDX0955 −18.3%、およびIDX0001 −13.2%をもたらした。下方への傾斜の遅れを示したIDX0920を除いて、すべての他の化合物は、膨張の有意な低下を示し、IDX0150およびIDX0955はP<0.01およびIDX0001はP<0.05であった。
【0101】
試験G
治療レジメンを調査するために、化合物を浮腫の誘発の2時間後に与えた。これは、AUCの有意な低下、IDX0920 −43.8%(P<0.01)、IDX0150 −42.3%(P<0.01)、およびIDX0955 −40.7%(P<0.05)をもたらした。IDX0001は、統計的に有意ではない−17.9%の低下を示した。
【0102】
試験H
代替投与経路を検討するために、鼻腔内投与を調査した。s.c.投与に対する比較において、類似した時点および用量を選んだ。試験Hにおいて、鼻腔内投与を、膨張を誘発する4日前に予防プロトコルにおいて施した。これは、s.c.投与を用いて得たものよりも膨張の有効な低下をもたらした。AUCの低下は、IDX0920 −33.8%。(P<0.01)、IDX0150 −25.7%(P<0.01)、IDX0955 −17.4%(P<0.05)、およびIDX0001 −25.7%(P<0.05)であった。
【0103】
試験I
鼻腔内投与を、浮腫を誘発したのと同じ日に、0日目に施した場合、膨張の有効な低下が見られた。AUCの低下は、IDX0920 −27.3%。(P<0.01)、IDX0150 −28.4%(P<0.01)、IDX0955 −28.8%(P<0.05)、およびIDX0001 −6.4%(NS)であった。
【0104】
試験J
試験Gにおいて使用したような治療プロトコルにおいて、鼻腔内投与もまた膨張の好適な低下をもたらした。AUCは、IDX0920で−28.7%(P<0.05)、IDX0150で−28.8%(P<0.01)、IDX0955で−17.2%(P<0.05)、およびIDX0001で−25.2%(P<0.05)低下することが示された。
【0105】
試験K
用量応答を試験K〜Oにおいて調査した。試験Kにおいて、0.1、1、10、および100μgのIDX0150を与えた。結果は、用量依存的に膨張の低下を示した。AUCの低下は、0.1μgで−13.9%(P<0.05)、1μgで−16.3%(P<0.05)、10μgで−27.9%(P<0.05)、および100μgで−45%(P<0.01)であった。
【0106】
試験103L
GCを用いて置換したCpGモチーフを有するネガティブコントロールIDX0526を、試験Kに類似した用量応答プロトコルにおいて調査した。IDX0526を使用すると、抗膨張活性がなかったことが分かった。AUCにおける差異は、0.1μgで+1.24%、1μgで−1.24%、10μgで−0.26%、および100μgで+6.18%であり、統計的に有意な変化は全くなかった。
【0107】
試験M
オリゴヌクレオチドの骨格におけるホスホロチオエート修飾の程度の有意性を調査するために、完全にホスホロチオエート化したオリゴヌクレオチド、IDX0500を使用した。この化合物は、すべての試験した用量において統計的に有意な抗膨張特性を示し、AUCの低下は、0.1μg −46.9%、1μg −41.3%、10μg −40.9%、および100μg −59.1%(すべてP<0.01)であった。
【0108】
試験N
IDX0500の治療濃度域をさらに検討するために、試験Nを試みた。用量は、0.005μg、0.01μg、0.1μg、および1μgとした。化合物は、試験Mと一致して、用量0.1および1μgにおいて統計的に有意な効果を示した。AUCの低下は、0.005μgについて−15%(NS)、0.01μgについて−15.3%(NS)、0.1μgについて−18.2%(P<0.01)、および1μgについて−54.1%(P<0.01)であった。
【0109】
試験O
本実験において、IDX0500およびIDX0150を、0日目にs.c.を施した、10および100μgの等用量で比較した。類似した結果が用量および2つの化合物の間で得られ、AUCの統計的に有意な低下を示し、IDX0500については、10μgで−25.5%、100μgで−39.9%、IDX0150については、10μgで−25.5%、100μgで−39.9%であった(すべての用量でP<0.01)。
【0110】
コントロール化合物およびIDX0001を用いて行った実験に加えて、すべての他の試験化合物を、TPAおよび/またはAAの耳浮腫モデルにおいて類似した様式において調査し、浮腫の誘発の20分前に皮下に試験化合物を施した(10μg)。結果を、表5において、ピーク値の低下および曲線下面積(AUC)の低下として表した。
【0111】
【表5】

【0112】
ピーク値
ピーク値およびAUC値もまた、異なる治療計画の抗膨張有効性を階層化するために比較した。
【0113】
考察
本実験により、腹腔内、皮下、および鼻腔内経路を使用して、広範な予防的なおよび治療上の治療レジメンを検討した。さらに、用量応答を、化合物IDX0150およびIDX0500(それぞれ配列番号11および12)を使用して調査した。
【0114】
浮腫のグレードは、マウスにおける外耳の局所的なTPA治療の後の浮腫形成または膨張を測定することによってたどることができる。この膨張は、24時間後に通常ピークに達し、その後、1週間の間に徐々におさまる。
【0115】
AUC値およびピーク値はすべて、ポジティブコントロールよりも低いことが分かった。ほとんどの例において、膨張のこの低下は統計的に有意であった(P<0.05)。しかしながら、いくつかの実験において、統計的に有意な低下に達しなかった。これは、そのような実験全体における低いグレードの浮腫誘発に関連して観察された。これを回避するために、TPA用量を最適化するように、また免疫学的に成熟したマウスを使用することによって特別に注意した。
【0116】
耳浮腫は、すべての浮腫測定からTPA誘発性の浮腫のピーク値を得ることによっておよび曲線下面積(AUC)を計算することによって検討することができる。AUCは、したがって、浮腫の誘発および寛解の両方を表す。
【0117】
10回のIDX0150実験からの平均ピーク値を計算すると(図2)、ピーク値における非常に高度な統計的に有意な低下が見られた(P<0.001)。
【0118】
したがって、IDX0150を、この試験において、他の化合物との比較のための基準として使用した。
【0119】
IDX0150(0.1〜100μg)およびIDX0500(0.005〜100μg)の抗膨張効果は、広い用量応答範囲を示した。ピーク値低下として計算される、異なる時点で与えたIDX0150の抗膨張効果は、2時間>−2日>0日>−4日の順に減少した。
【0120】
AUC低下は2時間>0日>−2日>−4日の順に減少した。これらの結果は、これらの化合物が、予防投与および膨張を開始させた後の治療の両方に使用することができることを示す。鼻腔内投与を用いる非常に好適な結果は、粘膜投与が、身体における免疫系にオリゴヌクレオチド化合物を提供するのに効率的であることを示す。
【0121】
結論
試験A〜Oは、まとめると、マウスにおけるTPA誘発性の耳浮腫モデルにおける本発明の化合物の抗膨張効果を支持する。これらの化合物は、腹腔内、皮下、および鼻腔内投与経路によって与えた場合、有効な免疫調節剤となり、浮腫を低下させるためのそれらの効能はまた、図1〜3におけるIDX0150によって例示されるように、異なる予防および治療計画においても証明された。化合物の抗膨張効果は、一般的な炎症経路に限定されないが、たとえばプロスタグランジン系を活性化するAAによって誘発される炎症をダウンレギュレートすることもできる。試験化合物配列番号1〜10はすべて、TPAおよび/またはAAモデルにおいて示されるように浮腫を低下させることができた。
【0122】
2.オボアルブミン(OVA)誘発性の気道炎症のマウスモデルにおける免疫調節オリゴヌクレオチド試験物質の経鼻投与:予防および異なる治療プロトコルの比較
【0123】
材料および方法
動物
B&K(Sollentuna、Stockholm、Sweden)から得たメスのBalb/cマウス(8週齢)を実験において使用した。マウスに、十分なペレットげっ歯動物用食餌、R36(Laktamin AB、Stockholm、Sweden)および国内の飲用に適した品質の水を適宜与えた。動物は、21℃±3℃および55%±15%の相対湿度の動物室で飼育した。換気システムは、1時間当たり10回、空気交換するように設計した。部屋は、12時間明および12時間暗のサイクルとなるように照明した。照明は07:00〜19:00の時間、つける。マウスは、それぞれのケージに5匹、透明なポリカーボネート(MacroloneタイプIII)ケージ(床面積:820cm2)において飼育した。ケージ中の敷床は4HVポプラ敷床(Tapvei、Finland)とした。それぞれのケージを、試験番号、グループ番号、性別、および動物番号を用いてマークしたケージカードによって識別した。
【0124】
感作およびエアロゾル誘発
マウスは、0および12日目に、200μL OVA/水酸化アルミニウムゲル(1:3)を用いて腹腔内感作した(図6を参照されたい)。OVA(ニワトリ卵アルブミングレードV、Sigma、St.Louis、MO)を生理食塩水中に溶解し、3時間4℃での回転流動によって50μg/mLの濃度まで水酸化アルミニウムゲルと混合した。23、26、30、および33日目に(図6を参照されたい)、Batelle曝露チャンバーを使用して、30分間、エアロゾル化OVAの吸入によってマウスの肺中で誘発した。エアロゾルを、PBS中に溶解した10mg/mL OVA(Sigma、St Louis、MO、USA)の噴霧器濃度を使用して、気流7.4L/分で圧縮空気噴霧器(Collison 6−jet)によって生成した。非感作動物を有するコントロールグループは、23、26、30、および33日目のエアロゾル化OVA以外に治療を受けなかった。エアロゾル誘発を受けなかった感作マウスのコントロールグループもまた用意した。
【0125】
オリゴヌクレオチド
このOVAモデルにおいて(図6)、合計4つのオリゴヌクレオチドを試験した、IDX9025、IDX9038、IDX9053(表1、配列番号2〜4))、およびIDX0150(表3、配列番号11)。オリゴヌクレオチドは、biomers.net GmbH、Ulm、Germanyによって合成され、−20℃で凍結保存された。オリゴヌクレオチドは、使用濃度(1,247μg/μL)にPBSを用いて希釈し、滴下の1日目まで−20℃に保ち、その後、それらを4℃にした。
【0126】
OVA誘発性の気道炎症の治療
第1の実験において、予防および治療プロトコルの両方を試験した(図6を参照されたい)。薬剤治療は、16および21日目(予防プロトコル)、30および33日目(治療プロトコルA)、または30および34日目(治療プロトコルB)のIDX0150(InDex Pharmaceuticals AB、Stockholm、Swedenによって提供される1,247μg/μL)の鼻腔内滴下からなった。30および33日目の治療プロトコル(A&B)における滴下は、エアロゾル誘発の4時間後に施した。34日目のプロトコルBにおける第2の滴下は、最後のエアロゾル誘発の24時間後に施した。薬剤は、40μL PBS中で投与し、約50μg/マウス(49.88μg/マウス)の用量を施した。2つの感作偽治療グループに、予防プロトコル(16および21日目)または治療プロトコルA(30および33日目)による治療グループと同じ全容量のPBSを滴下した。
【0127】
【表6】

【0128】
第2の実験において、予防プロトコル(図6)を使用する第1の実験におけるIDX0150の投与が、気道炎症の有意な低下を示したので(図7)、他の3つの物質を、同じプロトコルを用いて試験した。薬剤治療は、16および21日目(図6、予防プロトコルを参照されたい)のIDX9025、IDX9038、およびIDX9053(表1)(1,247μg/μL、InDex Pharmaceuticals ABによって提供される)の鼻腔内滴下からなった。物質はすべて、40μL PBS中で投与し、約50μg/マウス(49.88μg/マウス)の用量を施した。2つの感作偽治療グループに、予防プロトコル(16および21日目)に従って、治療グループと同じ全容量のPBSを滴下した。
【0129】
気道炎症パラメーターの分析
最後のOVAエアロゾル誘発の42時間後に頚椎脱臼によってマウスを殺した。気管に、ポリエチレン管(Becton Dickinson、Sparks、MD、USA)を挿入し、気管支肺胞洗浄(BAL)を、4×1mL分割量の氷冷ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Sigma、St Louis、MO、USA)を使用して行った。BAL体液を遠心分離し(400g、10分、4℃)、BAL体液細胞を0.4mL PBS中に再懸濁した。白血球の総数を、Buerkerチャンバー中で、トリパンブルー排除法を使用して数えた。BAL体液細胞の二連のCytospin(Cytospin3、Shandon、Runcorn、UK)調製物を、標準的な形態学的基準を使用して、白血球百分率について、May Gruenewald Giemsaを用いて染色した。
【0130】
統計分析
統計比較は、感作PBS治療コントロールマウスと比較するために、ダネットの事後補正を使用する分散(ANOVA)の一元配置分析を使用して行った(GraphPad Prism 3)。データは平均±標準偏差として示す。P<0.05は、有意であると考えた。
【0131】
結果
オボアルブミン誘発性のアレルギー喘息モデルは、喘息の間に見られる肺炎症を再現するために広く使用されるモデルである。ここで得られた結果は、気道の粘膜の膨張に相互に関連し、結果は、したがって、浮腫の低下の妥当な測定値である。このモデルの分析は、多形核細胞(PMN)などの浸潤炎症細胞のタイプおよび量が同定され、数えられるBAL分析などの喘息の一般的な指標に依存する。
【0132】
結果的に、それぞれのマウスに由来するBAL体液細胞を記載されるように数え、値を、異なる治療グループの平均値を提供する組み合わせのヒストグラムとしてプロットした(図7)。
【0133】
大まかに言えば、実験の両方における動物(PBSグループ)の肺への4つの分析した細胞型の多量の流入によって示されるように、誘発性の気道炎症のレベルは高度であった。コントロールグループ(「エアロゾルなし」また「誘発なし」)は、誘発性の炎症の徴候を示さず、動物が、エアロゾルオボアルブミンタンパク質に対して天然のアレルギー応答を示さなかったことおよび使用したオボアルブミンタンパク質にたとえばLPSが混入していなかったことを確認した。
【0134】
「エアロゾルなし」コントロールグループにおける炎症のあらゆる徴候の完全な欠如により、OVA免疫自体の実験手順が肺炎症を誘発しなかったことを確認した。
【0135】
予防プロトコルにおける鼻治療に続いて、炎症の誘発の7および2日前に、2度施した場合、試験物質IDX0150は、BAL体液への白血球および好酸球の遊走を有意に低下させることができた(それぞれP<0.05およびP<0.001)(図7)。
【0136】
このプロトコルの治療アームにおいて、IDX0150を炎症の誘発の7および11日後に、つまり実験期間の極めて後半に施した場合、統計的に証明された効果はなかった。
【0137】
第2の実験における鼻治療に続いて(図8)、試験物質IDX9038は、BALF体液への白血球(P<0.05)および好酸球(P<0.001)の遊走を有意に低下させることができた。IDX9025およびIDX9053は、本実験において、BALF体液への細胞遊走の有意な低下を示さなかった。
【0138】
結論
本インビボ試験は、以下の結論を出す:BAL体液に浸潤する白血球、好酸球、およびリンパ球の数の統計的に有意な低下は、本発明の化合物を用いて治療した場合、動物において観察された。本モデルにおいて、炎症を測定することは、より適切であったが、結果は、浮腫に対して等しく適用可能である。さらに、試験は、有効な経路としての経鼻投与の適合性を確認した。
【0139】
3.C57/BI6マウスにおけるチオグリコレート誘発性の胸膜炎
【0140】
材料および方法
動物モデルは、細胞遊走および血管透過性に対する本発明の実施形態によるオリゴヌクレオチドの効果を検討するために設定した。
【0141】
マウスに、ケタミン(Ketalar(登録商標) Parke−Davis;25mg/ml)およびキシラジン(Narcoxyl vet.(登録商標) Veterinaria AG;5mg/ml)の0.15〜0.20mlの混合物の腹腔内注射によって麻酔をかけた。
【0142】
左の頚静脈に、静脈内投与(i.v.)のためのポリエチレン管(PE10)を挿入した。皮膚切開を胸の右側に行った。下層にある筋肉の解剖に続いて、胸膜炎(胸膜の炎症)を、100μlのチオグリコレート(Sigma)の単一胸膜内注射によって誘発した。無菌PBSを、ネガティブコントロールとして使用した。
【0143】
PBS中のFITC抱合デキストラン(100μl、30mg/ml)をi.v.注射した。4時間後、動物を、過量の麻酔を用いて安楽死させ、胸を慎重に開き、滲出液を吸引によって取り出し、容量を書き留めた。胸部を、その後、PBS中の氷冷3mM EDTAの1mlですすいだ。赤血球が混入した滲出液を廃棄した。
【0144】
滲出液およびすすいだ材料を、5分間、1500gで遠心分離し、上清を、蛍光光度計(Fluoroskan Acsent、LabSystems)における蛍光強度の測定のために使用し、FITCデキストランのクリアランス容量を計算した。ペレットを、非特異的抗体結合を遮断するために15分間、0.1%BSAを有するPBS中に再懸濁した。10μlの細胞懸濁液を、Buerkerチャンバーにおいて、白血球(WBC)百分率のために使用した。
【0145】
滲出液からの細胞を、好中球およびマクロファージ特異的抗体を用いて染色し、フローサイトメトリー(FACSortおよびCellQuestのソフトウェア、BD)によって分析した。分析は、前方散乱光および側方散乱光のそれらの典型的な出現に基づく総白血球数を含んだ。PMNおよびマクロファージは、それぞれLy6GおよびF4/80のそれらの発現によってさらに同定した。
【0146】
本発明の実施形態によるオリゴヌクレオチドの効果を試験するために、試験される化合物を、100μlの用量、つまり50μg/マウスで、胸膜炎の誘発の約20分前に、腹腔内に投与した。この試験において、試験した化合物をIDXO150(配列番号11、表3)とした。
【0147】
結果
チオグリコレート誘発性の胸膜炎モデルは、技術的に複雑になり、時に個々の異なる値を示し得るが、開発中の新薬の実践的なスクリーニングに最適なモデルの1つである。しかしながら、このモデルは、同時に試験することができる動物の数が制限される。
【0148】
結果は、胸膜腔へのPMNの高度な移行によって、炎症誘発剤、チオグリコレートに対して動物が応答したことを示した。この細胞反応は、高度なクリアランス容量として見られる胸膜浮腫の蓄積において反映された。IDX0150治療は、チオグリコレート炎症誘発の後にPMNの動員を低下させた(42%低下)(図9a)。IDX0150を用いる治療はまた、PBSコントロールに類似した、低レベルの血管透過性(68.2%低下)をも示した(図9b)。結果は平均±SDを表す。
【0149】
Huら(2008)は、浮腫形成に対する経内皮小胞経路の寄与を調査した。グループは、肺血管透過性が、血管壁に付着したPMNの活性化によってを誘発することができることを示し、より重症の浮腫は、より多いPMN数を伴って観察された。本発明の実施形態による化合物は、PMNの低下(図7、8、および9a)および結果的に浮腫の低下(図9b)を明確に示す。抗PMN抗体を使用する実験は、抗PMN−abが、本発明の化合物と類似したレベルまでPMNおよび浮腫を等しく低下させることができたことを示した(データ示さず)。
【0150】
結論
胸膜炎動物モデルにおけるこれらの結果は、化合物が、さらなる試験および薬剤開発に適した好ましい治療プロファイルを有するという事実を指す。
【0151】
特定の実施形態が本明細書において詳細に開示されるが、これは、例証のみの目的で、一例として開示されたものであり、続く、添付の特許請求の範囲に関して限定することを意図しない。特に、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な置換、変更、および改変を、本発明に対してなし得ることが本発明者によって企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10の中から選ばれる配列を含む、単離され、実質的に精製されたオリゴヌクレオチド化合物。
【請求項2】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、および配列番号7の中から選ばれる配列を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド化合物。
【請求項3】
配列番号8、配列番号9、および配列番号10の中から選ばれる配列を含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド化合物。
【請求項4】
化合物の全長が、約12〜約30塩基である、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド化合物。
【請求項5】
化学的に修飾される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
少なくとも1つのヌクレオチドがリン酸骨格修飾を有する、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
リン酸骨格修飾が、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートの修飾である、請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項9】
薬理学的に適合し、生理学的に許容可能な賦形剤または担体をさらに含む、請求項8に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項10】
生理食塩水、リポソーム、界面活性剤、粘膜付着性化合物、酵素阻害剤、胆汁酸塩、吸収促進剤、およびシクロデキストリンから選ばれる、薬理学的に適合し、生理学的に許容可能な賦形剤または担体をさらに含む、請求項8に記載のオリゴヌクレオチドを含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドを含む、粘膜投与のための医薬製剤。
【請求項12】
浮腫を予防、治療、および/または軽減するための医薬組成物の製造のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の単離され、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項13】
浮腫が、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などの腎疾患、栄養失調、癌、喘息、アレルギー性鼻炎、COPD、虚血、外傷、および敗血症性ショックの中から選ばれる状態につながる、任意の器官または組織中の間質液のバランスにおける障害または機能不全として定義される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記オリゴヌクレオチドが、血管透過性の調節、白血球遊走の阻害または低下、好中球遊走または活性化の阻害または低下、好酸球遊走の阻害または低下、およびリンパ球遊走の阻害または低下の1つを達成するのに有効な量で投与される、請求項12に記載の使用。
【請求項15】
浮腫を予防、治療、および/または軽減するための医薬組成物の製造のための、単離され、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドの使用であって、オリゴヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、および配列番号10からなる群から選ばれ、好中球遊走または活性化の阻害または低下によって喘息を治療または軽減するのに有効な投与量および形態で投与される使用。
【請求項16】
請求項1に記載のオリゴヌクレオチドが、血管透過性の修飾、好中球遊走/活性化の阻害、好酸球遊走の阻害または低下、白血球遊走の阻害または低下、およびリンパ球遊走の阻害または低下の1つまたはいくつかを達成するのに有効な用量で投与される、浮腫を予防、治療、および/または軽減するための方法。
【請求項17】
請求項8から11のいずれか一項に記載の医薬組成物が患者に投与される、浮腫を予防、治療、および/または軽減するための方法。
【請求項18】
投与経路が、頬側、食道、胃、粘膜、経皮、皮下、および腹腔内投与から選ばれる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
粘膜投与が、経鼻投与、吸入、眼内投与、直腸投与、経口、泌尿生殖器、および膣投与から選ばれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
疾患が、心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群などの腎疾患、栄養失調、癌、喘息、アレルギー性鼻炎、急性肺傷害、滲出液の蓄積を伴う肺疾患、COPD、虚血、外傷、および敗血症性ショックの中から選ばれる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドが、体重1kg当たり約5〜約500μgの量で投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
オリゴヌクレオチドが、体重1kg当たり約10〜約100μgの量で投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オリゴヌクレオチドが、たとえば侵襲性の外科手技、放射線療法、ホルモン治療、移植手術、および移植術の前に、予防的に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
オリゴヌクレオチドが、アレルゲンへの曝露が予期される前に、予防的に投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
オリゴヌクレオチドが、抗炎症薬と組み合わせて投与される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2010−539974(P2010−539974A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527904(P2010−527904)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/SE2008/000542
【国際公開番号】WO2009/045145
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(508003011)インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ (12)
【Fターム(参考)】