説明

浴室ユニット及びこれに用いられるフロア延長部材

【課題】浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節できる浴室ユニット及びこれに用いられるフロア延長部材を提供する。
【解決手段】浴室ユニット1は、主フロア部材2と、角柱形状をなし主フロア部材2の端部2a,2bに添設されるフロア延長部材3とを有する。フロア延長部材3は、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面に設けられた凹部31と、他方の側面に設けられ凹部31に対応する凸部32と、を備える。これにより、浴室ユニット1を設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室ユニットのフロアに係り、特に、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節できる浴室ユニット及びこれに用いられるフロア延長部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な浴室ユニットでは、図8に示すように、洗い場フロア101は浴槽フロア102と一体に構成されている。この種のフロア100は、複数の既製サイズのものが準備されており、浴室ユニットを設置する空間(以下、設置空間という)の寸法に応じて適宜選択されている。したがって、一つのフロアでは、寸法の異なる設置空間に対応することができなかった。
【0003】
そこで、寸法の異なる設置空間に対応して寸法調整を可能とした浴室装置が提案され、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1の浴室装置は、複数の分割パンを備え、分割パン同士の重なる範囲を調節することで寸法の異なる設置空間に対応したフロアを構成している。また、特許文献2のスペース拡張型浴室は、浴室設置スペースが脱衣室との間の建築躯体の土台上の仕切りスペースまで延長され、この仕切りスペースを含んで形成されている。
【特許文献1】特開平9−316952号公報
【特許文献2】特開2002−364194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の浴室装置は、フロアのベースを分割構成したものであり、各分割パン同士の重なる範囲を調節して設置しても、ベースの表面には分割パンの接合部の段差が残るという問題があった。また、特許文献2のスペース拡張型浴室は、カウンター部が外側へ延長する構造であり、フロア自体の面積調整構造については開示されていない。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節できる浴室ユニット及びこれに用いられるフロア延長部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の浴室ユニットは、主フロア部材と、角柱形状をなし主フロア部材の端部に添設されるフロア延長部材とを有することを特徴とする。
【0007】
フロア延長部材は、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面から他方の側面へ貫通し、締結部材を受容する貫通穴を備えることが望ましい。
【0008】
また、フロア延長部材は、好ましくは、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面に設けられた凹部と、他方の側面に設けられ、凹部に対応する凸部とを備える。
【0009】
さらに、フロア延長部材は、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面に長さ方向に沿って設けられたシール部材を有してもよい。
【0010】
また、本発明のフロア延長部材は、浴室ユニットのフロアを延長するための部材であって角柱形状をなし、長手方向に垂直な水平方向に連設されることで床面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の浴室ユニットによれば、主フロア部材と、角柱形状をなし主フロア部材の端部に添設されるフロア延長部材とを有するから、フロア延長部材を主フロア部材の端部に添設することにより、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節することができる。
【0012】
フロア延長部材が、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面から他方の側面へ貫通する貫通穴を備える場合は、この貫通穴に締結部材を挿通することでフロア延長部材を主フロア部材の端部に確実に添設することができる。
【0013】
フロア延長部材が、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面に設けられた凹部と、他方の側面に設けられ、凹部に対応する凸部とを備える場合は、一のフロア延長部材の凸部が他のフロア延長部材の凹部に嵌合することにより、フロア延長部材同士を確実に位置合わせすることができる。
【0014】
さらに、フロア延長部材は、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面に長さ方向に沿って設けられたシール部材を有していれば、シール部材がフロア延長部材同士の隙間を遮断するため、水が通ることがない。
【0015】
また、本発明のフロア延長部材によれば、角柱形状をなし、長手方向に垂直な水平方向に連設されることで床面を形成するから、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[浴室ユニットの実施形態]
以下、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1に、実施形態の浴室ユニットを示す。浴室ユニット1は、主フロア部材2と、角柱形状をなし主フロア部材2の端部に添設される複数のフロア延長部材3とを有する。主フロア部材2は、浴槽(図示省略)を載置するための浴槽フロア21と洗い場フロア22とからなり、この点において従来のフロア部材と同様である。
【0017】
浴室の床面積がこの主フロア部材2の面積より広い場合には、主フロア部材2のみで床面積を満たすことはできない。そこで、図1に示すようにフロア延長部材3を、主フロア部材2の一端部2a及びこれに隣接する他の端部2bに添うように、適宜の本数を連設して設けることで、床面積を満たすことができる。この際、図1(A)に示すように浴室の床面積が比較的広い場合と図1(B)に示すように浴室の床面積が比較的狭い場合とではフロア延長部材3の本数のみならず必要な長さも異なる。そのため、フロア延長部材3は規格に合わせて複数の長さのものを用意するか、必要に応じて切断して微調整する。
【0018】
[フロア延長部材の第一の実施形態]
図2(A)に示すように、第一の実施形態のフロア延長部材3は、略角柱形状をなし、長手方向に垂直な水平方向、すなわち幅方向の一方の側面に設けられた凹部31と、他方の側面に設けられ、凹部31に対応する凸部32とを備える。凹部31及び凸部32は共にフロア延長部材3の長手方向に沿って設けられ、フロア延長部材3の一端から他端まで達している。すなわち、フロア延長部材3は、長手方向に垂直な面による断面形状が原則的に一定である。
【0019】
同一形状のフロア延長部材3が幅方向に複数連結されることで、それらの上面がフロア面を構成する。この際、凸部32が、隣接するフロア延長部材3の凹部31に嵌合することで、フロア面が面一になる。このように連設されたフロア延長部材3同士の境目は、図2(B)に示すようにフロア延長部材3及び主フロア部材2により構成されるフロア面全体を加飾シート4で覆うことにより隠すことができる。
【0020】
図3に示すように、フロア延長部材3は、幅の一方の側面、図において左側面から、他方の側面へ貫通し、ボルト51を受容する貫通穴33を備えている。また、主フロア部材2は、この貫通穴33に対応し、締結部材であるボルト51を受容する取付穴23を備えている。この貫通穴33及び取付穴23にボルト51を挿通し、ナット52で締結することで、フロア延長部材3を主フロア部材2に固定することができる。なお、貫通穴33及び取付穴23は、上面からの距離が同一であるから、上面であるフロア面が面一となる。また、貫通穴33及び取付穴23は、フロア延長部材3の長手方向に適宜間隔をあけて複数備えられている。
【0021】
[フロア延長部材の第二の実施形態]
図4は、第二の実施形態のフロア延長部材6を示す断面図である。図4(A)に示すように、フロア延長部材6は、凹部61及び凸部62を備え、これらを含む基本的な構成においてフロア延長部材3と同様であるが、幅方向の一方の側面、図において左側面にシール部材63を有する点でフロア延長部材3と異なる。シール部材63は、フロア延長部材6の長さ方向に沿って、凹部61と上面6sとの間に設けられる。
【0022】
また、図において左側面における凹部61と上面6sとの間には、シール部材63を受容する窪み64が備えられ、この窪み64にシール部材63が嵌合している。他方、図において右側面における凸部62と上面6sとの間には、シール部材63を受容する窪み65が備えられている。
フロア延長部材6同士を連結する際には、図4(B)に示すように、凸部62が、隣接するフロア延長部材3の凹部61に嵌合すると共に、シール部材63が窪み64及び窪み65に挟まれるように液密的に嵌合することで、フロア延長部材6同士の隙間を遮断するため、この隙間を水が通ることはない。なお、図4に示すように、最外端のフロア延長部材6にはシール部材63がなくてもよい。
【0023】
[フロア延長部材の第三の実施形態]
図5は第三の実施形態のフロア延長部材7を示す断面図である。フロア延長部材7は、凹部及び凸部を備えない角柱形状をなし、この点において第一の実施形態のフロア延長部材3及び第二実施形態のフロア延長部材6と異なる。
【0024】
フロア延長部材7は、凹部及び凸部を備えないため、互いに係合することはできない。しかし、フロア延長部材7は、第一の実施形態のフロア延長部材3と同様、図において左側面から右側面へ貫通しボルト51を受容する貫通穴73を備えている。そのため、この貫通穴73及び主フロア部材2の取付穴23にボルト51を挿通し、ナット52で締結することで、フロア延長部材7を主フロア部材2に固定することができる。このフロア延長部材7は、製造が容易であるという利点がある。
【0025】
[フロア延長部材の第四の実施形態]
図6は第四の実施形態のフロア延長部材8を示す断面図である。フロア延長部材8は、凹部81及び凸部82を備え、基本的な構成において第一実施形態のフロア延長部材3と同様であるが、凹部81の上下幅が凸部82の上下幅より多少広い点において第一の実施形態のフロア延長部材3と異なる。言い換えれば、フロア延長部材8同士が連結された場合、凹部81は上下に若干の空間を介して凸部82を受容する。また、上面8sは主フロア部材2の表面2sに設定された水勾配に合わせた勾配が備えられている。そのため、上面8sは側面に対して垂直でなく、水勾配を考慮して多少傾斜している。
【0026】
このように構成されたフロア延長部材8は、連結時、相対的に上下に多少ずれる余地があるため、上面8sが斜めになるよう上下に適宜ずらして連結することで、上面8sを面一としつつ、主フロア部材2に合わせた水勾配を確保することができる。
【0027】
[実施の形態の浴室ユニットの使用方法]
図7は、実施の形態の浴室ユニットにおいて、フロア延長部材3上に壁9を設置する方法を示す。なお、ここでは第一の実施形態のフロア延長部材3を例とするが、他の実施形態のフロア延長部材であっても同様である。また、図7では説明のため壁9における二点鎖線部を切り欠いて示す。
【0028】
壁9は、下端に突出したボス91が設けられている。フロア延長部材3上に壁9を設置する際は、フロア延長部材3にボス穴34を穿設する。さらに、壁9とフロア延長部材3との隙間に水やゴミが入り込むことを防ぐと共に手入れのしやすさを確保するため、矢印Aに示すようにフロア延長部材3上に乾式目地92を載置し、この上に壁9を設置する。
【0029】
乾式目地92は軟質樹脂からなり、壁9の下端に接する平坦部93と、壁9とフロア延長部材3との隙間を覆う表側シール部94と、裏側シール部95とを備え、壁9のボス91を受容するボス穴96が設けられている。この乾式目地92を、ボス穴96がボス穴34と一致するようにフロア延長部材3に敷設し、この上に、ボス91がボス穴96及びボス穴34に嵌入するよう壁9を設置することで、壁9をフロア延長部材3に位置決めしつつ設置すると共に壁9とフロア延長部材3との隙間を塞ぐことができる。
【0030】
以上説明したように、本発明は、主フロア部材と角柱形状をなし主フロア部材の端部に添設されるフロア延長部材とを有することにより、浴室ユニットを設置する空間の寸法に応じてフロア面のサイズを調節できる浴室ユニットを提供するものであり、明細書や図面において説明した形状、寸法、個数に限らず、その主旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態の浴室ユニットを示す平面図であり、(A)は浴室の床面積が比較的広い場合、(B)は浴室の床面積が比較的狭い場合を示す。
【図2】第一の実施形態のフロア延長部材を示す斜視図であり、(A)はフロア延長部材の連設状態、(B)はこれを加飾シートで一部覆った状態を示す。
【図3】図2(A)の状態における断面図である。
【図4】第二の実施形態のフロア延長部材を示す断面図である。
【図5】第三の実施形態のフロア延長部材を示す断面図である。
【図6】第四の実施形態のフロア延長部材を示す断面図である。
【図7】実施の形態の浴室ユニットの使用方法を示す斜視図である。
【図8】従来のシステムバスのフロアを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 浴室ユニット
2 主フロア部材
2a,2b 主フロア部材の一端部
2s 主フロア部材の表面
3,6,7,8 フロア延長部材
4 加飾シート
6s,8s フロア延長部材の上面
9 壁
21 浴槽フロア
22 洗い場フロア
23 取付穴
31,61,81 凹部
32,62,82 凸部
33,73 貫通穴
34,96 ボス穴
51 ボルト
52 ナット
63 シール部材
91 ボス
92 乾式目地
93 平坦部
94 表側シール部
95 裏側シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主フロア部材と、角柱形状をなし上記主フロア部材の端部に添設されるフロア延長部材と、を有することを特徴とする、浴室ユニット。
【請求項2】
前記フロア延長部材は、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面から他方の側面へ貫通し、締結部材を受容する貫通穴を備えたことを特徴とする、請求項1に記載の浴室ユニット。
【請求項3】
前記フロア延長部材は、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面に設けられた凹部と、他方の側面に設けられ、上記凹部に対応する凸部と、を備えたことを特徴とする、請求項1または2に記載の浴室ユニット。
【請求項4】
前記フロア延長部材は、長手方向に垂直な水平方向の一方の側面に長さ方向に沿って設けられたシール部材を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の浴室ユニット。
【請求項5】
浴室ユニットのフロアを延長するための部材であって、角柱形状をなし、長手方向に垂直な水平方向に連設されることで床面を形成することを特徴とする、フロア延長部材。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−185590(P2009−185590A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29845(P2008−29845)
【出願日】平成20年2月11日(2008.2.11)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】