説明

海藻漬物及びその製造方法

【課題】海藻を主原料として容易に漬物用調味液を利用して海藻漬物を製造すること。
【解決手段】漁獲されたホンダワラ1を生の状態で海水を沸騰させた釜の中に投入する。
ホンダワラの色が茶褐色から鮮やかな緑色になるまで茹でる。湯通し後アク等を抜くために真水で洗浄する。洗浄後、ある程度の水分を抜き、天日干しをする。上記の処理を行ったホンダワラを漬物用桶2に移し、海藻塩をベースに、醸造醤油、醸造酢、りんご酢、甘味料、タカノツメ等を合わせた漬物用調味液3を加え、蓋4をして重石5を乗せて脱水する。一昼夜寝かせた後、ホンダワラを桶から取り出し、軽く水分を絞って、食べ易い大きさに切り揃えて、食することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漬物用調味液に浸漬することにより製造される海藻を主原料とした海藻漬物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、漬物と言えば各種野菜、即ち、大根、白菜、茄子、胡瓜等を主原料として、漬物用調味液や各種の漬物床等に漬ける等、様々な製法により作られており、果物や魚介類等もその原料とされている。
また、海藻成分が漬物用調味液や各種漬物床に添加される例もあった。
下記特許文献1には、漬物用糠床の熟成時に雑菌や有害微生物の増殖を抑制するため、或は海藻由来の有用成分を添加するために、漬物用糠床に海藻成分を混入させた発明が開示されている。
更に、被漬物原料として海藻を利用し、粕漬や糠漬等の漬床に漬けた例は存在するものの、これら海藻を漬物用調味液に浸漬した海藻漬物或はその製造方法についての先例はこれまで存在していなかった。
【特許文献1】特開2004−242548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明においては、各種の海藻を主原料とし、比較的容易に漬物用の調味液を利用して海藻漬物を製造することがその第一の課題である。
しかも、この調味液に浸漬して漬物を製造する方法において、これまで全く海藻が使用されて来なかったのであるが、種々の問題点を解決することにより、歯ごたえがよく、風味もよく、見た目の色合いも良好な海藻漬物を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1のものは、海藻を主原料として使用し、この海藻に、漬物用調味液に浸漬する漬物加工を施したことを特徴とする海藻漬物である。
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、主原料である海藻を海水による湯通しを行い、その後漬物用調味液に浸漬する漬物加工を施したことを特徴とする海藻漬物である。
【0005】
本発明の第3のものは、上記第2の発明において、湯通し後、真水での洗浄を経て、天日干し等による脱水処理を行い、その後漬物加工を施したことを特徴とする海藻漬物である。
本発明の第4のものは、上記第1乃至第3の発明において、漬物加工において使用する漬物用調味液の塩成分として海藻塩を使用したことを特徴とする海藻漬物である。
【0006】
本発明の第5のものは、漁獲した海藻を、塩成分として海藻塩を使用した漬物用調味液に浸漬する漬物加工工程を経て漬物を製造することを特徴とする海藻漬物の製造方法である。
本発明の第6のものは、上記第5の発明において、漬物加工工程前に、漁獲した海藻を海水を用いて湯通しする湯通し工程を付加したことを特徴とする海藻漬物の製造方法である。
本発明の第7のものは、上記第5又は第6の発明において、湯通し工程の後に、海藻を真水で洗浄する洗浄工程を付加し、その後海藻表面の水分を除去する天日干し等の脱水処理工程を付加し、その後漬物加工工程を施すことを特徴とする海藻漬物の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の第1の海藻漬物においては、漬物用調味液に所定時間漬けるだけでこれまでになかった新しいタイプの海藻漬物を容易に得ることができる。
勿論、必要に応じて、重石等の重しを負荷して漬け込むことも可能である。
本発明の第2の海藻漬物においては、漬物加工を施す前に、所定時間茹でる工程を施すことにより、原料として使用する海藻の種類に応じて、その硬さの調整を行うことができると共に、その海藻の色合いを鮮やかなものとすることができる。
そして、この発明では海水により湯通しを行っているために、真水による湯通しと比べて硬く茹で上がり、程よい食感のものに仕上がり、更にまたその艶も味もよくなる。
【0008】
本発明の第3の海藻漬物においては、湯通し後、真水での洗浄を行い、天日干し等の脱水処理を行うことにより、歯応えの向上を図ることができ、その食感を更に向上させることができる。
本発明の第4の海藻漬物においては、漬物用調味液の塩成分として海藻塩を使用しているために、塩分が尖らずに塩味がまろやかとなり、漬物独特の匂いも減少し、磯の風味が増強され、漬物の風味が際立って向上する。
【0009】
本発明の第5の海藻漬物の製造方法においては、上記第4の発明と同様、海藻塩をその調味液に使用しているために、塩味が尖らずに塩味がまろやかとなり、漬物独特の匂いも軽減され、磯の風味が増強され、非常に風味が良好な海藻漬物を得ることができる。
本発明の第6の海藻漬物の製造方法においては、海水を用いた湯通し工程を経ているために、上記第2の発明同様に、海藻の硬さの調整と、色合いの向上を図ることができ、見た目の美しい、食感のよい海藻漬物を得ることができる。
本発明の第7の海藻漬物の製造方法においては、真水による洗浄工程と脱水処理工程を付加することにより、上記第3の発明と同様に、歯応えの向上を図ることができ、その食感が向上した海藻漬物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
図1が本発明の実施形態に係る海藻漬物を製造する状態を示す説明図である。
図2が本発明の実施形態に係る製造方法のフロー図である。
本発明に係る第一の実施形態においては、原料の海藻としてホンダワラ(神馬藻)1を使用している。
また、本発明においては、その製造方法とその方法から製造された海藻漬物とは非常に密接な関係を有しており、その製法と物自体は表裏一体をなすものである。それ故、以下その製造方法について順次説明する。
【0011】
(1) 先ず、漁獲されたホンダワラは、生の状態で、海水を沸騰させた釜の中に投入する(図2中の工程1)。
約5分間程度湯通しして、ホンダワラの色が茶褐色から鮮やかな緑色になるまで茹でる。
ここで、茹でる時間は、原料である海藻によって異なり、その原料に応じて調整する。
湯通しに際して、海水を用いたのは、先ず、真水で湯通しした場合には、海藻が柔らかくなりすぎる場合が多く、漬物としての食感が損なわれる恐れがあるからである。これに比較すると、原因は不明であるが、海水で湯通しした場合には、真水と比べると硬く茹で上がり、程よい食感のものに仕上がるのである。
また、実際に比較製造した結果、やはりその原因は不明であるが、海水で湯通しした物の方が、真水で湯通しした物よりも艶も味も良くなった。
【0012】
(2) 湯通し後、海中微生物や汚れ、更にアク等を抜くために真水で洗浄する(工程2)。
(3)洗浄後、ある程度の水分を抜き、食感を良好にするために、天日干しをする(工程3)。
この天日干しの工程が脱水処理工程であり、天日干し以外の方法でもよい。
天日干しの時間は、季節や天候に応じて適宜調整する。
(4) 上記の処理を行ったホンダワラを漬物用桶2に移し、海藻塩をベースに、醸造醤油、醸造酢、りんご酢、甘味料、タカノツメ等を合わせた漬物用調味液3を加え、蓋4をして重石5を乗せて脱水する(工程4)。
(5) 一昼夜寝かせた後、ホンダワラを桶から取り出し、軽く水分を絞って、食べ易い大きさに切り揃えて、食することができる。
【0013】
次に、ワカメを原料とした海藻漬物の場合は以下の通りとなる。
(1) 水揚げされたワカメを生の状態で、海水を沸騰させた釜の中に投入する。
約3分前後湯通しして、ワカメの色が茶褐色から鮮やかな緑色になるまで茹でる。
湯通しに際して、海水を用いているのは、上記ホンダワラの場合と同じ理由である。
(2) 湯通し後、アク等を抜くために真水で洗浄する。
(3) 茎の部分が湯通ししても硬いために、更に圧力鍋で過熱し、食べ易い硬さに調整する。
【0014】
(4) その後、水分を抜き、食感を良好にするために、軽く天日干しをする。
(5) 上記の処理を行ったワカメを(適宜大きさに切り)漬物用桶に移し、海藻塩をベースに、醸造醤油、醸造酢、りんご酢、甘味料、タカノツメ等を合わせた漬物用調味液を加え、蓋をして重石を乗せて脱水する。
(6) 一昼夜寝かせた後、ワカメを桶から取り出し、軽く水分を絞って、適宜大きさに切り揃えて、食することができる。
【0015】
以上の工程により、ホンダワラ或はワカメを主原料とした海藻漬物が完成するのであるが、各工程による効果は、以下の通りとなる。
先ず、漁獲された海藻を海水で所定時間茹でることにより、海藻の種類に応じてその硬さを適宜調整することができ、海水を用いることにより、適度な硬さと、良好な艶と風味を得ることができる。
天日干し等の脱水処理により、海藻の食感を更に向上させることができる。
漬物用調味液の塩成分として海藻塩(又は藻塩)を用いているために、その塩味が尖ることなく、マイルドな塩加減となり、匂いも軽減され、風味が良好となる。更には海藻塩に含まれるミネラル等の栄養成分や旨味成分により漬物自体の味も向上する。
【0016】
ここで、海藻塩(又は藻塩)とは、海藻成分を含む塩のことを意味しており、かつて玉藻と呼ばれていたホンダワラという海藻を使用して作った塩のことである。
即ち、海藻(主にホンダワラ)を海水で茹でることにより海藻の成分が海水中に溶出し、その成分が溶出した海水を煮詰めて、結晶化させたものである。
辛さに尖ったところがなく、口当たりは大変にまろやかであり、しかもヨードをはじめ海藻の栄養成分が豊かで、カルシウム、カリウム、マグネシウムといったミネラルを豊富に含むものである。その分、塩(塩化ナトリウム)自体の濃度が低くなるため、塩分が控えめとなるという特色も有している。
色は淡いベージュで海水と海藻だけの旨味が凝縮した味わい深いものである。
【0017】
このように、本発明においては、漬物用調味液の塩成分として、上記の海藻塩を使用しているために、その塩味が尖ることなく、マイルドな塩加減となり、各種の旨味成分並びに栄養成分をも保有し、しかも、漬物臭さも除去するという効果も発揮することとなるのである。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明において、その主原料とする海藻は、ホンダワラやワカメに限られず、食用の海藻であれば、種々選択して使用することができる。
その場合、海藻の種類に応じて、湯通しの時間を適宜調整すればよい。
漬物用調味液の構成材料も種々好みに応じて調合すればよいが、塩成分としては、海藻塩又は藻塩を使用することが本発明の一つの特徴である。
湯通し後の脱水処理も、天日干しに限らず、干し機によるもの等、各種の乾燥方法を利用することができる。
【0019】
また、脱水処理を行うための乾燥時間も種々設定することができ、季節によってもその時間は異なるものである。
漬物加工工程においては、通常重石を用いて漬け込むが、この重石を用いずに、単に調味液に浸漬するのみで、浅漬けの海藻漬物として実施することができる。
重石は、天然の石以外に、コンクリートブロック等でもよく、適切な重力を負荷できるものであれば何でも良い。
以上、本発明は、簡易な方法により、海藻を主原料とした、風味豊で、食感がよく、旨味成分及び各種ミネラル等の栄養成分を豊富に含んだ海藻漬物及びその製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る海藻漬物を製造する状態を示す説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る製造方法のフロー図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ホンダワラ
2 漬物用桶
3 漬物用調味液
4 蓋
5 重石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻を主原料として使用し、この海藻に、漬物用調味液に浸漬する漬物加工を施したことを特徴とする海藻漬物。
【請求項2】
主原料である海藻を海水による湯通しを行い、その後漬物用調味液に浸漬する漬物加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の海藻漬物。
【請求項3】
湯通し後、真水での洗浄を経て、天日干し等による脱水処理を行い、その後漬物加工を施したことを特徴とする請求項2に記載の海藻漬物。
【請求項4】
漬物加工において使用する漬物用調味液の塩成分として海藻塩を使用したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の海藻漬物。
【請求項5】
漁獲した海藻を、塩成分として海藻塩を使用した漬物用調味液に浸漬する漬物加工工程を経て漬物を製造することを特徴とする海藻漬物の製造方法。
【請求項6】
漬物加工工程前に、漁獲した海藻を海水を用いて湯通しする湯通し工程を付加したことを特徴とする請求項5に記載の海藻漬物の製造方法。
【請求項7】
湯通し工程の後に、海藻を真水で洗浄する洗浄工程を付加し、その後海藻表面の水分を除去する天日干し等の脱水処理工程を付加し、その後漬物加工工程を施すことを特徴とする請求項5又は6に記載の海藻漬物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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