浸透性改良地盤の構造
【課題】施工性に優れ、透水性の高い改良地盤を得ることができる、浸透性改良地盤の構築技術を提供する。
【解決手段】地盤を撹拌混合して高透水性材料2を混入させて透水性を有する改良体4を構築する。構築された改良体4は高透水性材料が改良体4の土粒間に不規則に介在し、高透水性材料2群を介して改良体4の全体に透水性が付与される。
【解決手段】地盤を撹拌混合して高透水性材料2を混入させて透水性を有する改良体4を構築する。構築された改良体4は高透水性材料が改良体4の土粒間に不規則に介在し、高透水性材料2群を介して改良体4の全体に透水性が付与される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドレーン工法、山留工法、地盤改良工法、各種工事における地下水流の制御等に適用できる、浸透性改良地盤の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に人工的な排水路(ドレーン)を形成し、地中の間隙水を排水して圧密改良するバーチカルドレーン工法にあっては、排水路を構成するドレーン材が全長に亘って連続性を有すること及び高い透水性を有することが肝要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来のドレーン技術には次のような問題点がある。
<イ> ドレーン材が破断したり目詰まりを起こして連続性を失うとドレーン材としての機能が半減又は喪失する。そのため、取扱いや施工に慎重さが要求され、工期が長期化する傾向にある。
<ロ> ペーパドレーン、プラスチックドレーン等の各種ドレーン材料が存在するが、ドレーン材の透水性能に比例してコストが高くなる。
<ハ> サンドドレーンやグラベルドレーン等の場合は、大量に発生する掘削土砂の後処理の問題が残る。
<ニ> 地盤改良工法に用いた場合、地盤の支持力増強作用を期待できる反面、地下水流の流況を阻害し易く、これらの両方を満足させることが技術的に困難である。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、施工性に優れ、透水性の高い改良地盤を得ることができる、浸透性改良地盤の構築技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、改良対象の地盤に撹拌混合した高透水性材料が改良体の土粒間に不規則に介在し、前記高透水性材料を介して改良体が透水性を具備する、浸透性改良地盤の構造である。請求項2に係る発明は、改良体が柱状体又は柱列状体である、請求項1に記載の浸透性改良地盤の構造である。請求項3に係る発明は、高透水性材料が強度を有する多孔質坦体である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造である。請求項4に係る発明は、高透水性材料が生態性崩壊材料である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造である。請求項5に係る発明は、地盤の地下水位置に揃えて改良体を形成した、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は次のような効果を得ることができる。
<イ> 現地地盤に高透水性材料を撹拌混合するだけで、透水性の高い改良体(改良地盤)を得ることができる。
<ロ> 高透水性材料に強度を有する材料を用いれば、地盤の強度増加を確保しつつ、地下水の流況阻害を回避することができる。
<ハ> 透水性が連続していることを基本思想とする従来のドレーン技術と比べて本発明は不連続な透水性を付与するだけで良く、工費の低減と工期の大幅短縮が可能となる。
<ニ> 現地地盤を撹拌混合するだけで排土量が少なくて済む。そのため、掘削土砂の後処理の問題が軽減される。
<ホ> ドレーン材工法、山留工法、地下水の制御、雨水の地盤涵養等の多くの分野で活用でき、汎用性に富む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
<イ>浸透性改良地盤の構造これまでのドレーン工法の考え方はドレーン材が連続した透水性を有することが基本思想であった。これに対して、本発明はミクロ的には透水性が不連続の構造を呈していながら改良範囲全体としては一定の透水性を付与するものである。すなわち、図1に示す如く現地土砂1に高透水性材料2を撹拌混合して改良部3群を不連続(不規則)に形成することで、全体として透水性を有する柱状の改良体4を得るもので、透水性付与のために高透水性材料2に連続性を持たせない点が従来のドレーン技術と異なる。
【0009】
図1では発明の理解を助けるために改良体4をデフォルメして大きな塊体で表記しているが、実際は図3に拡大して示す如く土粒よりやや大きな粒体又は粉体又は塊体の高透水性材料2が不規則に混入するのみで土砂が塊状になるものではない。
【0010】
<ロ>高透水性材料高透水性材料2は透水性を有する種々の素材を使用できる。透水性能を維持する期間の長短によって、使い分けることが望ましい。透水性能を長期的に期待するときは、例えば軽石、コルク材、人工的に製造できる多孔質材等の目詰まりが少なく、変形しないだけの強度を持った多孔質坦体が好適である。強土増加を期待しない場合は、低強度材料の使用も可能である。
【0011】
また透水性能を短期的に期待するときは、例えば貝殻、藁等の強度を問題とせず、環境に優しい生態性崩壊材料も使用できる。以上の材料は粒状又は粉状に破砕することの他に、4〜30mm程度に粉砕して破砕粒体として使用する。
【0012】
他の高透水性材料2としては、地盤内に強制的に水路を形成する、ガラス繊維、ゼオライト、パーライト(ガラスの発泡体)、木炭、ビニール繊維等の繊維状物を使用することも可能である。上記した高透水性材料2は単独で用いることの他に、複数種を混合して用いても良く、またその混入量は現地地盤の性状や使用する高透水性材料2によって異なる。
【0013】
<ハ>高透水性材料の混入手段上記した高透水性材料2は現地土砂を撹拌混合して混入する。図1,2に例示した撹拌混合装置について説明すると、中空のロッド5の先端部に多段的に撹拌翼6,7を有すると共に、噴射口8を形成していて、ロッド5を回転しながら所定の深度まで地盤を撹拌して地盤を緩めた後、ロッド5を逆転しながら引き上げる際に、ロッド5の基端から高透水性材料2をエアー圧送する。 高透水性材料2を噴射口8から噴射して現地土砂1と撹拌し、現地土砂1の土粒間に不規則に混合させる。
【0014】
尚、図1において符号9は噴出防止カバーで、高透水性材料2の圧送に用いたエアーを集めて排気する。また図2において符号10はロッド5の周面に突設したエア回収用の短羽根で、噴射口8から噴射したエアを地上へ排出する空間をロッド5の周囲の土砂を押し退けるための羽根である。
【0015】
<ニ>改良体の形成形態改良体4は図4に示すように柱状のまま間隔を隔てて構築する形態と、図5に示す如く柱列状に形成する形態があり、いずれの形態を採用するかは、改良目的や改良範囲等を考慮して決定する。
【0016】
<ホ>透水原理現地土砂1に高透水性材料2を不規則に混入させた改良体4が良好な透水性能を有し、また改良体4の強度及び支持力が増加するのはつぎの理由による。
【0017】
[透水原理]地盤中に高透水性材料を撹拌混合することにより、この材料内においては透水性が高いのは明らかである。この高透水性材料が不規則に配置されることにより透水性の低い地山の平均的な透水距離が減少する。これの直列モデルを図6に示す。同図より、改善前の透水距離をL、改良後の透水距離をLi とすると、つぎの数式1の関係となるため、透水距離が減少することが期待できる。
【0018】
【数1】
【0019】
また強度を有する高透水性材料を用いることにより、軟弱な土砂を良い材料に置換することになり支持力が増加する。また地山の特性に応じて混合による締固効果や、地山同士の摩擦よりも地山と透水性材料の摩擦力が大きいことによる強度増加等を期待することもできる。
【0020】
[透水性が発揮されるメカニズム]前述の透水原理を用いて透水性地盤改良により高い透水性が発揮されるメカニズムについて述べる。地下水が図面の左から右側へ流れる図7のモデルについて説明する。無改良の場合、A側面における水頭をPA 、B点における水頭をPB 、A点とB点の距離をL,地盤内を流れる地下水の流速をvとすると、透水係数kはダルシーの法則により次の数式2で示される。
【0021】
【数2】
【0022】
改良前においては、境界における条件が同じであれば、地山における地下水の流速に変化がないが、改良越せ野改良体内においては透水係数kp が極端に大きいため、流速vp は平均流速vよりも大きくなる。つまり改良地盤における平均的な透水流速は、v<vave (平均的な透水流速)<vp となる。したがって、平均的な透水係数も、k<kave (平均的な透水係数)<kp となり、改善される。尚透水性能は改良体の配置や改良率によるが、後述(段落番号0018)の改良効果で確認済みである。
【0023】
[地盤の強度増加、支持力の増加理由]高透水性材料2として強度を有する材料を使用した場合、土粒間に介在する高透水性材料2の混入量に見合った強度が地盤に付与される。また地盤の強度の向上に伴い支持力も当然に増加する。以上は高透水性材料2の強度に起因するものであるが、多孔質性の高透水性材料2による排水効果により土粒間の過剰な間隙水が排水され、地盤の圧密促進による強度及び支持力の増急効果も期待できる。
【0024】
<ヘ>改良効果つぎに簡単なモデルを用いて透水性の向上を数値計算によって確認する。解析は浸透流定常解析(plaxis)を用いた。
【0025】
解析モデルを図8に示す。条件データは、地山の透水係数(cm/s)が1.0×10-6、改良体の透水係数(cm/s)が1.0×10-1である。解析ケースは如く改良範囲を水平に方向にランダムに配置した状態(ケース1)と、レギュラーに配置した状態(ケース2)の2つのケースを実施した。
【0026】
図9は改良率(改良範囲の体積/全体の体積)60%の解析ケース例を示す。
【0027】
図10に改良率と見掛けの透水係数(解析から得られた排出量から逆算して得られた透水係数)の関係を示す。図10により改良率60%で見掛けの透水係数が3〜4オーダ上がることが期待できる。この解析モデルでは1.0×10-6cm/sの地山を改良率60%にすることにより一般的なドレーンの透水係数(1.0×10-3cm/s)まで改良できることを期待できる。
【0028】
また図11は斜面11の近傍地盤を対象に、高透水性材料2を広範囲に亘って混合したときの浸潤面の変化を示すモデル図で、改良前の浸潤面L1 に対して改良後の浸潤面L2 が大幅に低下し、斜面11に作用する土圧が軽減する。このときの改良効果を数値解析により確認した。図12の解析モデルを基に、改良前の地盤の解析結果を図13に示し、改良後の解析結果を図14に示す。本例は山留の補助工法としても活用することができる。
【0029】
[発明の実施の形態2]図15,16に地盤の改良位置を地下水位の位置に合わせた他の実施の形態を示す。図15は一定の距離を隔てて改良体4を構築した場合を示し、図16は改良体4を接合して構築した場合を示す。いずれの場合も改良体4の改良範囲4aを地下水の高さに位置させて構築することが肝要である。図15の場合にあっては、地下水が隣合う改良体4の間に位置する現地土砂と改良範囲4aを通過し、改良体4の存在が地下水の流れを阻害しないで済む。図16の場合は改良範囲4aが横方向に連続性を有しているので、図15と比べて地下水がより流れ易くなる。
【0030】
[発明の実施の形態3]図17は透水性の高い改良体4を雨水の涵養に適用した他の実施の形態を示す。 本例は、難透水性地盤12に高透水性材料を広範囲に亘って混入した改良体4を構築したもので、高透水性を付与した改良体4の範囲が雨水の地盤涵養を促進する。本例にあっては、ポーラス構造の歩道、道路、鉄道等の直下地盤に適用することで、開発に伴う自然環境への負荷を軽減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1に係る説明図
【図2】撹拌混合装置の説明図
【図3】改良体を構成する地盤の拡大モデル図
【図4】改良体の形成形態を示す横断面図
【図5】改良体他の形成形態を示す横断面図
【図6】透水原理を説明するための直列モデル図
【図7】透水性が発揮されるメカニズムを説明するためのモデル図
【図8】改良効果を実証するための解析モデル図
【図9】改良率60%の解析ケースの説明図
【図10】改良率と見掛け透水係数の関係の説明図
【図11】斜面の近傍地盤を改良したときの水頭の変化を示すモデル図
【図12】図11の解析モデル図
【図13】改良前の水頭を示す解析結果の説明図
【図14】改良後の水頭を示す解析結果の説明図
【図15】地盤の改良位置を地下水位の位置に合わせた他の実施の形態の説明図
【図16】地盤の改良位置を地下水位の位置に合わせた他の実施の形態の説明図
【図17】雨水の涵養に適用した他の実施の形態の説明図
【符号の説明】
【0032】
1 現地土砂
2 高透水性材料
3 改良部
4 改良体(浸透性改良地盤)
5 ロッド
6,7 撹拌翼
8 噴射口
9 噴出防止カバー
10 短羽根
11 斜面
12 難透水性地盤
【技術分野】
【0001】
本発明はドレーン工法、山留工法、地盤改良工法、各種工事における地下水流の制御等に適用できる、浸透性改良地盤の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に人工的な排水路(ドレーン)を形成し、地中の間隙水を排水して圧密改良するバーチカルドレーン工法にあっては、排水路を構成するドレーン材が全長に亘って連続性を有すること及び高い透水性を有することが肝要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した従来のドレーン技術には次のような問題点がある。
<イ> ドレーン材が破断したり目詰まりを起こして連続性を失うとドレーン材としての機能が半減又は喪失する。そのため、取扱いや施工に慎重さが要求され、工期が長期化する傾向にある。
<ロ> ペーパドレーン、プラスチックドレーン等の各種ドレーン材料が存在するが、ドレーン材の透水性能に比例してコストが高くなる。
<ハ> サンドドレーンやグラベルドレーン等の場合は、大量に発生する掘削土砂の後処理の問題が残る。
<ニ> 地盤改良工法に用いた場合、地盤の支持力増強作用を期待できる反面、地下水流の流況を阻害し易く、これらの両方を満足させることが技術的に困難である。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、施工性に優れ、透水性の高い改良地盤を得ることができる、浸透性改良地盤の構築技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、改良対象の地盤に撹拌混合した高透水性材料が改良体の土粒間に不規則に介在し、前記高透水性材料を介して改良体が透水性を具備する、浸透性改良地盤の構造である。請求項2に係る発明は、改良体が柱状体又は柱列状体である、請求項1に記載の浸透性改良地盤の構造である。請求項3に係る発明は、高透水性材料が強度を有する多孔質坦体である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造である。請求項4に係る発明は、高透水性材料が生態性崩壊材料である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造である。請求項5に係る発明は、地盤の地下水位置に揃えて改良体を形成した、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は次のような効果を得ることができる。
<イ> 現地地盤に高透水性材料を撹拌混合するだけで、透水性の高い改良体(改良地盤)を得ることができる。
<ロ> 高透水性材料に強度を有する材料を用いれば、地盤の強度増加を確保しつつ、地下水の流況阻害を回避することができる。
<ハ> 透水性が連続していることを基本思想とする従来のドレーン技術と比べて本発明は不連続な透水性を付与するだけで良く、工費の低減と工期の大幅短縮が可能となる。
<ニ> 現地地盤を撹拌混合するだけで排土量が少なくて済む。そのため、掘削土砂の後処理の問題が軽減される。
<ホ> ドレーン材工法、山留工法、地下水の制御、雨水の地盤涵養等の多くの分野で活用でき、汎用性に富む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
<イ>浸透性改良地盤の構造これまでのドレーン工法の考え方はドレーン材が連続した透水性を有することが基本思想であった。これに対して、本発明はミクロ的には透水性が不連続の構造を呈していながら改良範囲全体としては一定の透水性を付与するものである。すなわち、図1に示す如く現地土砂1に高透水性材料2を撹拌混合して改良部3群を不連続(不規則)に形成することで、全体として透水性を有する柱状の改良体4を得るもので、透水性付与のために高透水性材料2に連続性を持たせない点が従来のドレーン技術と異なる。
【0009】
図1では発明の理解を助けるために改良体4をデフォルメして大きな塊体で表記しているが、実際は図3に拡大して示す如く土粒よりやや大きな粒体又は粉体又は塊体の高透水性材料2が不規則に混入するのみで土砂が塊状になるものではない。
【0010】
<ロ>高透水性材料高透水性材料2は透水性を有する種々の素材を使用できる。透水性能を維持する期間の長短によって、使い分けることが望ましい。透水性能を長期的に期待するときは、例えば軽石、コルク材、人工的に製造できる多孔質材等の目詰まりが少なく、変形しないだけの強度を持った多孔質坦体が好適である。強土増加を期待しない場合は、低強度材料の使用も可能である。
【0011】
また透水性能を短期的に期待するときは、例えば貝殻、藁等の強度を問題とせず、環境に優しい生態性崩壊材料も使用できる。以上の材料は粒状又は粉状に破砕することの他に、4〜30mm程度に粉砕して破砕粒体として使用する。
【0012】
他の高透水性材料2としては、地盤内に強制的に水路を形成する、ガラス繊維、ゼオライト、パーライト(ガラスの発泡体)、木炭、ビニール繊維等の繊維状物を使用することも可能である。上記した高透水性材料2は単独で用いることの他に、複数種を混合して用いても良く、またその混入量は現地地盤の性状や使用する高透水性材料2によって異なる。
【0013】
<ハ>高透水性材料の混入手段上記した高透水性材料2は現地土砂を撹拌混合して混入する。図1,2に例示した撹拌混合装置について説明すると、中空のロッド5の先端部に多段的に撹拌翼6,7を有すると共に、噴射口8を形成していて、ロッド5を回転しながら所定の深度まで地盤を撹拌して地盤を緩めた後、ロッド5を逆転しながら引き上げる際に、ロッド5の基端から高透水性材料2をエアー圧送する。 高透水性材料2を噴射口8から噴射して現地土砂1と撹拌し、現地土砂1の土粒間に不規則に混合させる。
【0014】
尚、図1において符号9は噴出防止カバーで、高透水性材料2の圧送に用いたエアーを集めて排気する。また図2において符号10はロッド5の周面に突設したエア回収用の短羽根で、噴射口8から噴射したエアを地上へ排出する空間をロッド5の周囲の土砂を押し退けるための羽根である。
【0015】
<ニ>改良体の形成形態改良体4は図4に示すように柱状のまま間隔を隔てて構築する形態と、図5に示す如く柱列状に形成する形態があり、いずれの形態を採用するかは、改良目的や改良範囲等を考慮して決定する。
【0016】
<ホ>透水原理現地土砂1に高透水性材料2を不規則に混入させた改良体4が良好な透水性能を有し、また改良体4の強度及び支持力が増加するのはつぎの理由による。
【0017】
[透水原理]地盤中に高透水性材料を撹拌混合することにより、この材料内においては透水性が高いのは明らかである。この高透水性材料が不規則に配置されることにより透水性の低い地山の平均的な透水距離が減少する。これの直列モデルを図6に示す。同図より、改善前の透水距離をL、改良後の透水距離をLi とすると、つぎの数式1の関係となるため、透水距離が減少することが期待できる。
【0018】
【数1】
【0019】
また強度を有する高透水性材料を用いることにより、軟弱な土砂を良い材料に置換することになり支持力が増加する。また地山の特性に応じて混合による締固効果や、地山同士の摩擦よりも地山と透水性材料の摩擦力が大きいことによる強度増加等を期待することもできる。
【0020】
[透水性が発揮されるメカニズム]前述の透水原理を用いて透水性地盤改良により高い透水性が発揮されるメカニズムについて述べる。地下水が図面の左から右側へ流れる図7のモデルについて説明する。無改良の場合、A側面における水頭をPA 、B点における水頭をPB 、A点とB点の距離をL,地盤内を流れる地下水の流速をvとすると、透水係数kはダルシーの法則により次の数式2で示される。
【0021】
【数2】
【0022】
改良前においては、境界における条件が同じであれば、地山における地下水の流速に変化がないが、改良越せ野改良体内においては透水係数kp が極端に大きいため、流速vp は平均流速vよりも大きくなる。つまり改良地盤における平均的な透水流速は、v<vave (平均的な透水流速)<vp となる。したがって、平均的な透水係数も、k<kave (平均的な透水係数)<kp となり、改善される。尚透水性能は改良体の配置や改良率によるが、後述(段落番号0018)の改良効果で確認済みである。
【0023】
[地盤の強度増加、支持力の増加理由]高透水性材料2として強度を有する材料を使用した場合、土粒間に介在する高透水性材料2の混入量に見合った強度が地盤に付与される。また地盤の強度の向上に伴い支持力も当然に増加する。以上は高透水性材料2の強度に起因するものであるが、多孔質性の高透水性材料2による排水効果により土粒間の過剰な間隙水が排水され、地盤の圧密促進による強度及び支持力の増急効果も期待できる。
【0024】
<ヘ>改良効果つぎに簡単なモデルを用いて透水性の向上を数値計算によって確認する。解析は浸透流定常解析(plaxis)を用いた。
【0025】
解析モデルを図8に示す。条件データは、地山の透水係数(cm/s)が1.0×10-6、改良体の透水係数(cm/s)が1.0×10-1である。解析ケースは如く改良範囲を水平に方向にランダムに配置した状態(ケース1)と、レギュラーに配置した状態(ケース2)の2つのケースを実施した。
【0026】
図9は改良率(改良範囲の体積/全体の体積)60%の解析ケース例を示す。
【0027】
図10に改良率と見掛けの透水係数(解析から得られた排出量から逆算して得られた透水係数)の関係を示す。図10により改良率60%で見掛けの透水係数が3〜4オーダ上がることが期待できる。この解析モデルでは1.0×10-6cm/sの地山を改良率60%にすることにより一般的なドレーンの透水係数(1.0×10-3cm/s)まで改良できることを期待できる。
【0028】
また図11は斜面11の近傍地盤を対象に、高透水性材料2を広範囲に亘って混合したときの浸潤面の変化を示すモデル図で、改良前の浸潤面L1 に対して改良後の浸潤面L2 が大幅に低下し、斜面11に作用する土圧が軽減する。このときの改良効果を数値解析により確認した。図12の解析モデルを基に、改良前の地盤の解析結果を図13に示し、改良後の解析結果を図14に示す。本例は山留の補助工法としても活用することができる。
【0029】
[発明の実施の形態2]図15,16に地盤の改良位置を地下水位の位置に合わせた他の実施の形態を示す。図15は一定の距離を隔てて改良体4を構築した場合を示し、図16は改良体4を接合して構築した場合を示す。いずれの場合も改良体4の改良範囲4aを地下水の高さに位置させて構築することが肝要である。図15の場合にあっては、地下水が隣合う改良体4の間に位置する現地土砂と改良範囲4aを通過し、改良体4の存在が地下水の流れを阻害しないで済む。図16の場合は改良範囲4aが横方向に連続性を有しているので、図15と比べて地下水がより流れ易くなる。
【0030】
[発明の実施の形態3]図17は透水性の高い改良体4を雨水の涵養に適用した他の実施の形態を示す。 本例は、難透水性地盤12に高透水性材料を広範囲に亘って混入した改良体4を構築したもので、高透水性を付与した改良体4の範囲が雨水の地盤涵養を促進する。本例にあっては、ポーラス構造の歩道、道路、鉄道等の直下地盤に適用することで、開発に伴う自然環境への負荷を軽減できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態1に係る説明図
【図2】撹拌混合装置の説明図
【図3】改良体を構成する地盤の拡大モデル図
【図4】改良体の形成形態を示す横断面図
【図5】改良体他の形成形態を示す横断面図
【図6】透水原理を説明するための直列モデル図
【図7】透水性が発揮されるメカニズムを説明するためのモデル図
【図8】改良効果を実証するための解析モデル図
【図9】改良率60%の解析ケースの説明図
【図10】改良率と見掛け透水係数の関係の説明図
【図11】斜面の近傍地盤を改良したときの水頭の変化を示すモデル図
【図12】図11の解析モデル図
【図13】改良前の水頭を示す解析結果の説明図
【図14】改良後の水頭を示す解析結果の説明図
【図15】地盤の改良位置を地下水位の位置に合わせた他の実施の形態の説明図
【図16】地盤の改良位置を地下水位の位置に合わせた他の実施の形態の説明図
【図17】雨水の涵養に適用した他の実施の形態の説明図
【符号の説明】
【0032】
1 現地土砂
2 高透水性材料
3 改良部
4 改良体(浸透性改良地盤)
5 ロッド
6,7 撹拌翼
8 噴射口
9 噴出防止カバー
10 短羽根
11 斜面
12 難透水性地盤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良対象の地盤に撹拌混合した高透水性材料が改良体の土粒間に不規則に介在し、前記高透水性材料を介して改良体が透水性を具備する、浸透性改良地盤の構造。
【請求項2】
改良体が柱状体又は柱列状体である、請求項1に記載の浸透性改良地盤の構造。
【請求項3】
高透水性材料が強度を有する多孔質坦体である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造。
【請求項4】
高透水性材料が生態性崩壊材料である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造。
【請求項5】
地盤の地下水位置に揃えて改良体を形成した、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造。
【請求項1】
改良対象の地盤に撹拌混合した高透水性材料が改良体の土粒間に不規則に介在し、前記高透水性材料を介して改良体が透水性を具備する、浸透性改良地盤の構造。
【請求項2】
改良体が柱状体又は柱列状体である、請求項1に記載の浸透性改良地盤の構造。
【請求項3】
高透水性材料が強度を有する多孔質坦体である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造。
【請求項4】
高透水性材料が生態性崩壊材料である、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造。
【請求項5】
地盤の地下水位置に揃えて改良体を形成した、請求項1又は請求項2に記載の浸透性改良地盤の構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−63988(P2007−63988A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332358(P2006−332358)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【分割の表示】特願平10−71331の分割
【原出願日】平成10年3月5日(1998.3.5)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【分割の表示】特願平10−71331の分割
【原出願日】平成10年3月5日(1998.3.5)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】
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