説明

消泡剤組成物、潤滑油組成物および潤滑油組成物の製造方法

【課題】
フッ素化シリコーン消泡剤を使用する場合において、基油に対する分散性が高く、優れた初期消泡性能を発揮すると共にその耐久性に優れ、かつ貯蔵しても初期の消泡性能を維持できる潤滑油組成物および潤滑油組成物の製造方法を提供する。

【解決手段】
潤滑油基油ならびに該潤滑油基油に配合された成分(A)含フッ素系有機化合物、成分(B)フッ素化シリコーンおよび成分(C)有機溶媒からなることを特徴とする潤滑油組成物および該潤滑油組成物の成分として用いられる成分(A)成分(B)および成分(C)からなる消泡剤組成物ならびに消泡剤組成物を調製する工程と該消泡剤組成物を基油と混合する工程からなる潤滑油組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤組成物、潤滑油組成物および該潤滑油組成物の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、消泡剤組成物、該消泡剤組成物を用いることにより得られる初期消泡性能およびその耐久性に優れ、かつ貯蔵後においても初期の消泡性能を長期間にわたり維持することが可能な性能(以下、「安定性」または「貯蔵安定性」ということがある。)を有する潤滑油組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
また、本発明によれば、潤滑油組成物の初期消泡性能および耐久性ならびに貯蔵安定性の改善方法を提供するものである。

【背景技術】
【0003】
各種機械装置の摺動部位の潤滑に使用される潤滑油および駆動系装置において使用される駆動系流体にとって、泡の発生により、油の噴出、油膜切れまたは油切れ等に伴なう機械装置の作動不良、潤滑油のオーバーフロー、潤滑油の酸化劣化の促進など多数の弊害が生ずるため、従来からその防止技術が求められている。その防止技術の手段の一つとして潤滑油に配合される各種消泡剤が開発されてきており、各種の消泡剤のなかでも現在ではシリコーンを消泡剤として配合するのが一般的であるが、かかるシリコーンには消泡性能の寿命が短いという難点がある。
【0004】
初期の消泡性能を長期に維持できないということは、長期連続的な作動が要求される機械装置にとって、重大な障害となり得るため、従来から長寿命の消泡剤が求められてきた。
【0005】
かかる状況下において、長寿命の消泡剤として、例えば、パーフルオロアルキル基含有オルガノシロキサンを有効成分とする有機溶媒用消泡剤が提案されている(特公1992−50045号公報(以下、「特許文献1」という))。特許文献1によれば、かかる消泡剤は炭化水素またはフッ素系界面活性剤を溶解した有機溶媒溶液の気泡に対して優れた消泡効果を示すことが記載されている。しかし、特許文献1には、有機溶媒として潤滑油の如き消泡剤に対して低溶解性を示す炭化水素油は開示されておらず、かかる消泡剤の配合による該炭化水素油の気泡に対する消泡効果についても開示されていない。
【0006】
また、低温から高温まで優れた消泡性を維持できる潤滑油組成物として、基油に、(a)25℃における動粘度が300,000から1,500,000mm/sのポリジメチルシロキサンおよび(b)25℃における動粘度が500〜9000mm/sのフッ素化ポリシロキサンを配合した潤滑油組成物が提案されている(特開2000−87065号公報(以下、「特許文献2」という))。
【0007】
さらに、溶解性の高い基油を用いた場合、高温下においても安定した消泡性能を与える潤滑油組成物としては、粘度比重恒数(VGC)が0.85以上である炭化水素系合成油からなる基油に15℃における密度が1.15g/cm以上のポリフルオロアルキルシロキサンを5〜30ppm配合した潤滑油組成物が提案されている(特開2000−87069号公報(以下、「特許文献3」という))。
【0008】
また、米国特許第7060662号明細書、(以下、「特許文献4」という。)には、自動車用の自動変速機流体に用いられる消泡剤として、ポリジメチルシロキサンとフッ素化シリコーン消泡剤との混合物からなるケイ素含有消泡剤が記載されている。
【0009】
前記の通り、各特許文献にはフッ素化シリコーンを消泡剤として使用することが開示されているが、フッ素化シリコーンは、潤滑油の如き消泡剤に対する低溶解性を有する炭化水素油に対しては分散性が低く、しかも貯蔵に伴ない消泡性能が著しく低下するという問題点が指摘されている。
【0010】

かかるフッ素化シリコーンの問題点の解決については、前記特許文献のいずれにも開示がなく、また、その解決について示唆する点も当然なく、実用上の難点を包蔵したものである。
【0011】
従って、消泡性能が高く、貯蔵安定性にも優れた潤滑油組成物、特に前記潤滑油組成物を実現するために、潤滑油組成物におけるフッ素化シリコーンの分散性の維持に有用な消泡剤組成物の開発が切望されてきた。
【0012】

【特許文献1】特公1992−50045号公報
【特許文献2】特開2000−87065号公報
【特許文献3】特開2000−87069号公報
【特許文献4】米国特許第7060662号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の課題は、フッ素化シリコーンを潤滑油組成物の消泡剤として使用する場合において、潤滑油基油または潤滑油組成物に対してフッ素化シリコーンの分散性が高く、優れた初期消泡性能を付与すると共にその耐久性に優れ、かつ貯蔵安定性の付与可能な消泡剤組成物、該消泡剤組成物を構成成分とする初期消泡性能およびその耐久性ならびに貯蔵安定性に優れた潤滑油組成物、およびかかる潤滑油組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者は、前記の本発明の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、フッ素化シリコーンと特定の含フッ素有機化合物と特定の有機溶媒との組合せからなる消泡剤組成物が潤滑油組成物に対し良好な初期消泡性能および貯蔵安定性を付与できることに着目し、さらには、フッ素系界面活性剤を付加することにより、一層優れた消泡性能およびその耐久性ならびに貯蔵安定性が得られることを見出し、かかる知見に基いて本発明に到達した。
【0015】
かくして、本発明によれば、
潤滑油組成物の成分として用いられる消泡剤組成物であって、下記の成分(A),(B)および(C);
(A)下記の一般式(1)および(2)で表される含フッ素有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の含フッ素有機化合物,

X−(R) (1)

Y−(R) (2)

(一般式(1)および(2)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基であり、
(iii)R1は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、二種以上存在する置換基については、互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)mは1〜6であり、
(v)Rは、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、水素原子,フッ素原子,炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、二種以上存在する置換基については、互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(vi)nは2〜5である。)
(B)フッ素化シリコーン
および
(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒
からなることを特徴とする消泡剤組成物が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、
潤滑油基油と、該潤滑油基油に配合された消泡剤組成物とからなる潤滑油組成物であって、該消泡剤組成物が、
(A)下記の一般式(1)および(2)で表される含フッ素有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の含フッ素有機化合物,

X−(R) (1)

Y−(R) (2)

(一般式(1)および(2)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基であり、
(iii)R1は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、二種以上存在する置換基については、互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)mは1〜6であり、
(v)Rは、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、水素原子,フッ素原子,炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、該二種の置換基については、互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(vi)nは2〜5である。)
(B)フッ素化シリコーン
および
(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒
からなることを特徴とする潤滑油組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、
(A)下記の一般式(1)および(2);

X−(R) (1)

Y−(R) (2)

(一般式(1)および(2)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基であり、
(iii)R1は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、二種以上存在する置換基については互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)mは1〜6であり、
(v)Rは、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、水素原子,フッ素原子,炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、二種以上存在する置換基については互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(vi)nは2〜5である。)
で表される含フッ素有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の含フッ素有機化合物と、(B)フッ素化シリコーンと、(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒とを混合することからなる消泡剤組成物を調製する工程
および
前記工程において調製された前記消泡剤組成物を潤滑油基油に配合する工程からなることを特徴とする潤滑油組成物の製造方法
が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の混合溶液からなる消泡剤組成物を調製し、これを潤滑油基油に添加することを特徴とする潤滑油組成物の初期消泡性能およびその耐久性ならびに貯蔵安定性の改善方法が提供される。

【発明の効果】
【0018】
本発明に係る消泡剤組成物は、含フッ素有機化合物とフッ素化シリコーンと炭化水素系またはアルコール系有機溶媒との均質な混合溶液からなり、消泡有効成分、特にフッ素化シリコーンの透明溶液を提供するものである。かかる均質な混合溶液を潤滑油基油に配合することにより、消泡有効成分のフッ素化シリコーンの分離、白濁を防止し、その分散性を改善した潤滑油組成物を提供することができる。
【0019】
また、本発明に係る潤滑油組成物は、優れた初期消泡性能および特に、フッ素化シリコーンが有する酸化等による劣化に対する耐久性を有し、かつ、貯蔵によっても初期の消泡性能を維持することができるという著しく顕著な効果を奏し、広範囲の潤滑油の使用条件下における各種の用途に使用することができる。例えば、空気混入の可能性の高い高速回転条件下においても気泡の形成を防止し、または形成した気泡を容易に破壊することができるので、円滑な潤滑が可能であり、自動変速機油、無段変速機油、油圧油、コンプレッサー油、エンジン油等として好適な潤滑油組成物を提供することができる。特に、本発明に係る潤滑油組成物は、駆動系装置用の駆動流体、特に自動車用自動変速機油、CVTフルード等として好適である。
【0020】
さらに、本発明に係る潤滑油組成物の製造方法によれば、消泡剤組成物の調製工程と、消泡剤組成物の基油への配合工程を組み合わせることにより、安定性の優れた消泡特性を有する潤滑油組成物を効率的に安定して製造することができ、生産能率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明によれば、(A)含フッ素有機化合物、(B)フッ素化シリコーンおよび(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒を混合してなる消泡剤組成物を提供するものである。また、本発明によれば、前記の通り潤滑油基油と、該潤滑油基油に配合された(A)含フッ素有機化合物、(B)フッ素化シリコーンおよび(C)炭化水素系又はアルコール系有機溶媒とを混合してなる消泡剤組成物を含有してなる潤滑油組成物を提供するものである。さらに、本発明によれば、(A)含フッ素有機化合物、(B)フッ素化シリコーンおよび(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒を混合してなる消泡剤組成物の調製工程と、該調製工程において得られた消泡剤組成物を潤滑油基油に配合する配合工程とからなる潤滑油組成物の製造方法を提供するものである。
【0022】
また、(A)含フッ素有機化合物、(B)フッ素化シリコーンおよび(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒の混合溶液から消泡剤組成物を調製し、これを潤滑油基油または潤滑油組成物に添加することからなる潤滑油組成物の消泡性能の改善方法を提供するものであるが、さらに好ましい実施の態様として次の(1)〜(14)に掲げるものを包含する。
【0023】

(1)前記成分(A)の含フッ素有機化合物が、次の一般式(11)または一般式(22)で表される構造を有する化合物である前記消泡剤組成物。
【0024】

11−X−R12 (11)

21−Y−R22 (22)

(一般式(11)および(22)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、OまたはSのヘテロ原子を少なくとも一種有する基であり、
(iii)R11およびR12は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の二個の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)R21およびR22は、各々前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、該置換基は互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基である。)

(2)前記一般式(11)において、R11およびR12が、それぞれ炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基および炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基であり、Xが芳香族炭化水素基である前記消泡剤組成物。
【0025】

(3)前記一般式(22)において、R21およびR22が、それぞれ炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基および炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基であり、Yが酸素原子または硫黄原子を有する基である前記消泡剤組成物。
【0026】

(4)前記消泡剤組成物の成分(A),成分(B)および成分(C)の配合割合が前記消泡剤組成物の全重量基準で成分(A)2〜98重量%,成分(B)0.01〜10重量%および成分(C)2〜98重量%である前記消泡剤組成物。
【0027】

(5)前記消泡剤組成物の成分(A)、成分(B)および成分(C)の配合割合が前記消泡剤組成物の全重量基準で、成分(A)20〜80重量%、成分(B)0.1〜8重量%、成分(C)20〜80重量%である前記消泡剤剤組成物。
【0028】

(6)前記(A),(B)および(C)からなる成分にさらに添加される成分が成分(D)フッ素系界面活性剤である前記消泡剤組成物。
【0029】

(7)潤滑油基油と、該潤滑油基油に配合された前記(1)〜(6)のいずれかの消泡剤組成物とからなる前記潤滑油組成物。
【0030】

(8)前記含フッ素有機化合物が、次の一般式(11)または一般式(22)で表される構造を有する化合物である前記潤滑油組成物の製造方法。
【0031】

11−X−R12 (11)

21−Y−R22 (22)

(一般式(11)および(22)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、OまたはSのヘテロ原子を少なくとも一種有する基であり、
(iii)R11およびR12は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の二個の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)R21およびR22は、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、該置換基は互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基である。)

(9)前記一般式(11)において、R11およびR12が、それぞれ炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基および炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基であり、Xが芳香族炭化水素基である前記潤滑油組成物の製造方法。
【0032】

(10)前記一般式(22)において、R21およびR22が、それぞれ炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基および炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基であり、Yが酸素原子または硫黄原子を有する基である前記潤滑油組成物の製造方法。
【0033】

(11)前記(A),(B)および(C)からなる成分にさらに添加される成分が成分(D)フッ素系界面活性剤である前記潤滑油組成物の製造方法。
【0034】

(12)前記潤滑油基油の100℃における動粘度が2〜10mmである前記潤滑油組成物。
【0035】

(13)前記潤滑油基油の配合割合が、前記潤滑油組成物全重量基準で、99.5〜50重量%である前記潤滑油組成物。
【0036】

(14)潤滑油基油に(A)含フッ素有機化合物、(B)フッ素化シリコーンおよび(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒の混合溶液からなる消泡剤組成物を添加することによる初期消泡性能および耐久性の改善方法。
【0037】

消泡剤組成物
本発明に係る消泡剤組成物は、潤滑油組成物の成分として用いられる構成成分であって、(A)含フッ素有機化合物、(B)フッ素化シリコーンおよび(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒からなるものであり、任意成分として(D)フッ素系界面活性剤が付加されてなる混合溶液である。かかる混合溶液は均質であり、透明のものが好適である。消泡剤組成物は添加剤パッケージの一成分として、また添加剤マスターバッチの形態で使用することもできる。
【0038】
添加剤マスターバッチは、鉱油系基油、合成油系基油またはこれらの混合油系基油に消泡剤組成物を高割合で混合したものであり、潤滑油組成物の調製の際にはこれを媒体により適宜希釈して使用すればよい。
【0039】
本発明に係る消泡剤組成物の構成成分において、成分(A)の含フッ素有機化合物および成分(C)の有機溶媒は、成分(B)のフッ素化シリコーンの透明溶液を調製するために、それぞれ特定されたものであり、特に成分(A)の含フッ素有機化合物は、前記一般式(1)または(2)で表される化合物である。
【0040】
前記消泡剤組成物の前記各成分の混合割合は、消泡剤組成物の全重量基準で、成分(A)2〜98重量%、成分(B)0.01〜10重量%、成分(C)2〜98重量%であり、好ましい混合割合は、成分(A)20〜80重量%、成分(B)0.1〜8重量%、成分(C)20〜80重量%である。さらに好ましい混合割合としては、成分(A)30〜70重量%、成分(B)1〜3重量%、成分(C)30〜70重量%の範囲が採用される。
【0041】
また、成分(D)は、0.005〜5重量%、好ましくは0.01%〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲で使用することができる。
【0042】
潤滑油組成物において、成分(B)のフッ素化シリコーンの分散性及び貯蔵における安定性が維持されるには、消泡剤組成物における成分(A)と成分(C)の共存が重要であり、特に、成分(A)が2重量%に達しない場合は成分(C)が存在しても消泡剤組成物が白濁・分離状態となり、分離状態の消泡剤組成物を潤滑油基油に配合しても成分(B)の分散性が劣り十分な消泡効果が得られない。一方、成分(A)が含まれる場合も、成分(C)が含まれないとき、特に2重量%に達しないときは、消泡剤組成物は均質で透明状態であり分離状態にはならないが、成分(B)の初期消泡性能を維持することができず、貯蔵安定性を欠如するなどの難点が生ずることから成分(B)の初期性能および貯蔵安定性を発揮させるには成分(A)と成分(C)が不可欠であり、従って、成分(A)、(B)及び(C)の共存は重要である。
【0043】
消泡剤組成物が、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)ならびにそれぞれの混合割合をすべて充足することにより、白濁、分離を生ずることなく透明となり、これを基油に配合することにより、前記成分(A),成分(B)および成分(C)を各々単独で基油に配合した場合に比較して著しく優れた初期消泡性能および貯蔵安定性を有する潤滑油組成物の形成に寄与することができる。
【0044】
また、成分(D)を添加することにより、消泡性能およびその貯蔵安定性をさらに改善することができる。
【0045】

(A)含フッ素有機化合物
本発明に係る潤滑油組成物の構成成分である含フッ素有機化合物は、下記の一般式(1)および(2);

X−(R) (1)

Y−(R) (2)

一般式(1)および(2)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基である。
(iii)R1は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)mは1〜6であり、
(v)Rは、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、水素原子,フッ素原子,炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、二種以上存在する置換基については互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(vi)nは2〜5である。
【0046】
前記の含フッ素有機化合物のうち、さらに好ましい化合物は、次の一般式(11)または一般式(22)で表される構造を有するものである。
【0047】

11−X−R12 (11)

21−Y−R22 (22)

一般式(11)および(22)で表される含フッ素系有機化合物は、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基または2価のヘテロ原子を有する基にそれぞれニ置換基を有するものである。前記炭化水素基のなかでは、芳香族炭化水素基が好適である。
【0048】
炭素数1〜10の炭化水素基は、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基および炭素数3〜10の脂環式炭化水素基を包含するものである。これらの炭化水素基のなかで、特に好ましい炭化水素基は脂肪族炭化水素基であり、不飽和結合を有し、直鎖構造または分岐構造等を有すものでもよい。また、脂肪族炭化水素基のなかでも炭素数1〜7の比較的短鎖の脂肪族炭化水素基が好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜6であり、最も好ましくは、炭素1〜5の低級炭化水素基が挙げられる。
【0049】
また、炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基は、前記の炭化水素基の水素原子の全部または一部をフッ素原子と置換した構造のものでよいが、異なる炭化水素構造のものでもよい。
【0050】
従って、一般式(1)、(2)、(11)および(12)において、好ましい置換基R1、11、R12、、R21およびR22は、フッ素原子、炭素数1〜7の脂肪族系炭化水素基および炭素数1〜7のフッ素含有脂肪族炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、これらの二種以上存在する置換基については、互いに同一でも異なるものでもよく、それらの置換基の少なくとも一種が、炭化水素数1〜7のフッ素含有脂肪族炭化水素基である。
【0051】
さらに、好適な置換基Rとしては、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基および水素数1〜5のフッ素含有脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0052】
含フッ素有機化合物において、一分子中のフッ素の数は、含フッ素有機化合物全体で、一般式(1)のRの合計の炭素数または一般式(2)のRの合計の炭素数より多いことが好ましい。また、含フッ素有機化合物中に少なくとも一つのトリフルオロメチル基(CF−)を有することが好ましい。
【0053】
前記一般式(1)、(2)において、Xは、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基であり、Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一個有する基であり、具体的には、次の1〜3のグループに属する基から選択することができる。
【0054】

1.芳香族炭化水素基
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜10を有するものであり、ベンゼン環、少なくとも一つのアルキル基、アルケニル基を有するベンゼン環、例えば、アルキルベンゼン、スチルベンゼン、キシレン等のほか、ナフタレン環等の縮合環を挙げることができるが、フッ素化シリコーンの溶解性の維持を図るという観点からは、ベンゼン環、ナフタレン環が好適であり、特に、ベンゼン環が好ましく、アルキルベンゼンとしては、特に2個の置換基を有するもの、例えば、2個のアルキルを有するベンゼン環がさらに好ましい。
【0055】

2.脂環式炭化水素基
脂環式炭化水素基としては炭素数3〜10を有するシクロアルキル基または側鎖を有するシクロアルキル基を挙げることができるが、シクロアルキル基としては具体的にはシクロプロパン、シクロペンタン、シクロへキサン等が好ましい。また、特に2個の置換基を有するシクロアルキル基がさらに好ましい。
なお、前記芳香族炭化水素基および前記脂環式炭化水素基のなかでは、前記芳香族炭化水素基が好ましい。
【0056】

3.O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を有する基
O,S,N,P,Siのヘテロ原子を有する基としては、酸素(−O−)、カルボニル基(−CO−)、カルボキシル基(−CO−)、カーボネート(−CO−)、イオウ(−S−)、スルホキシド基(−SO−)、スルホン基(−SO−)、スルホン酸基(−SO−)、硫酸基(−SO−)、−O(RO)n−(ここでRは炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはフッ素含有炭化水素基、nは1〜10の整数である。nが2以上の場合、Rは同一であっても異なるものであってもよい。)、窒素(−N=)、ホスホリル基(−PO=)、ホスホン酸基(−PO=)、リン酸基(−PO=)等を挙げることができる。
【0057】
前記ヘテロ原子を有する基のなかでも、酸素(−O−)、イオウ(−S−)、窒素(−N=)を有する基が好適であり、特に酸素(−O−)、イオウ(−S−)を有する基が好適である。
【0058】
前記の含フッ素有機化合物の具体例として、下記記載のものを挙げることができる。
【0059】
トリフルオロメチルベンゼン
トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン
ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
メチルペンタフルオロベンゼン
ペンタフルオロトルエン
ヘキサフルオロベンゼン
パーフルオロトルエン
ベンゾトリフルオライド
o−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
パーフルオロシクロペンタン
パーフルオロシクロヘキサン
2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール
オクタフルオロペンタノール
パーフルオロブチルメチルエーテル
パーフルオロブチルエチルエーテル
パーフルオロブチルブチルエーテル
パーフルオロブチルベンジルエーテル
パーフルオロブチルフェニルエーテル
ペンタフルオロアニソール
ペンタフルオロアセトフェノン
ペンタフルオロベンゾニトリル
パーフルオロトリブチルアミン
パーフルオロトリプロピルアミン
パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)
ビス(ヘプタフルオロイソプロピル)ケトン
F−DPC〔CCHO(C=O)OCH
F−DEC〔CFCHO(C=O)OCH
フルオロエチレンカーボネート、
前記の含フッ素有機化合物のなかで好ましい具体例として、トリス(トリフルロオメチル)ベンゼン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(トリフルオロメチル)エーテル、メチルペンタフルオロベンゼン、トリフルオロメチルペンタフルオロエチルエーテル、トリフルオロメチルエチルエーテル、トリフルオロメチルトリフルオロエーテル、ビス(ペンタフルオロエチル)エーテル、ビス(テトラフルオロエチル)エーテル、トリフルオロエチルテトラフルオロエチルエーテル、ビス(トリフルオロエチルエーテル)、トリフルオロメチルイソプロピルエーテル、ビス(ヘプタフルオロn−プロピル)エーテル、エチルイソノナフルオロブチルエーテル等を挙げることができる。
【0060】
また、前記含フッ素有機化合物として利用可能な市販品のなかで、パーフルオロブチルメチルエーテルとしては、スリーエム社のHFE−7100を、パーフルオロブチルエチルエーテルとしては、同社のHFE−7200を使用することができる。その他の商品としてもFC−72,FC−84,FC−77,FC−75,PF−5080,PF−5052等を挙げることができる。また、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンとして、セントラルガラス社のMTF−TFMを、トリフルオロエチルテトラフルオロエチルエーテルとしてアサヒガラス社のアサヒクリーンAE−3000等の含フッ素有機化合物をそれぞれ入手することができる。
【0061】

(B)フッ素化シリコーン
本発明に係る消泡剤組成物の構成成分であるフッ素化シリコーンとしては、分子中にフッ素含有オルガノシロキサンおよびオルガノシロキサンを有する化合物が用いられる。
【0062】
フッ素含有オルガノシロキサンとしては、下記に示す一般式(3)または一般式(4)で表される構造が、また、オルガノシロキサンとしては一般式(5)で表される構造を挙げることができる。
【0063】




【0064】



【0065】

【0066】
本発明におけるフッ素化シリコーンは、分子中に前記一般式(3)、(4)で表されるフッ素含有オルガノシロキサン構造および前記一般式(5)で表されるオルガノシロキサン構造を有するものであり、下記一般式(6)で例示することができる。
【0067】






【0068】
前記一般式(3)、一般式(4)において、Aは、RfR−で示される一価の基、水素原子または炭素数1〜8の非置換または置換の一価炭化水素基である。
【0069】
Rfは、炭素数1〜14のパーフルオロアルキル基であり、Rは炭素数1〜8の二価炭化水素基である。
Rfの具体例としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロペプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロトリデシル基、パーフルオロテトラデシル基等を挙げることができる。
【0070】
かかるパーフルオロアルキル基は直鎖状または分岐状のいずれのものでもよい。
の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、フェニレン基等を挙げることができる。
【0071】
また、一般式(3)および(6)におけるRは、水素原子または炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、フェニルエチル基等のアラルキル基である。
【0072】
一般式(5)および一般式(6)のRも前記Rと同様に水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、炭化水素基の具体例としてRと同様に
は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基の如きシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、フェニルエチル等のアラルキル基等である。
【0073】
一般式(6)のmおよびnは、それぞれ1000以下の整数であり、所望の粘度により決定される。粘度としては25℃における動粘度が100〜2500mm/s、好ましくは300〜2000mm/sの範囲のものを採用することができる。25℃動粘度が100mm/sに達しないと消泡効果が得られにくくなり、一方、2500mm/sを超える場合も消泡剤組成物においても沈降分離等を生ずるおそれがある。
【0074】
かかるフッ素化シリコーンの市販品として、FL−5,X−22−821,X−22−822,FL−100−100cs,FL−100−450cs,FL−100−1000cs,FL−100−10000cs,FA630(以上、信越化学社製)、FS1265(300cs),FS1265(1000cs),FS1265(10000cs),(以上、東レダウコーニング社製)等を入手することができる。これらのなかでも本発明に係る潤滑油組成物の成分としてはFL−100−450cs、FA630、FS1265(300cs)等が好ましく、特にFL−100−450cs、FA630を選択することが好ましい。
【0075】

(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒
本発明に係る消泡剤組成物の構成成分としての有機溶媒は、フッ素化シリコーンの分散性の安定のために使用される媒体である。有機溶媒としては、フッ素化シリコーンの分散化および分散状態の維持にとって有効に作用するものであれば、例えば、カルボニル基を含有するものでも特に制限されることなく、任意に選択することができる。特に好ましい有機溶媒は、炭化水素系溶媒であり、具体的には、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素等であり、また、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、エーテル等を含めた含酸素化合物を挙げることができる。さらに好ましい有機溶媒としては、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素を挙げることができる。特に引火点が−10℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは10℃〜100℃のものを用いることができる。引火点が−10℃未満では本発明に係る消泡剤組成物を用いる潤滑油組成物の製造において、安全性確保のために冷却装置の導入が必要となる場合があり、一方、200℃を超えると良好な消泡性能は得られないという問題が生じるおそれがある。
【0076】

(D)フッ素系界面活性剤
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基、親油基および親水基からなるオリゴマーを採用することができ、かかるオリゴマーは、分子中の疎水基の炭素原子に結合した水素原子の代わりにその全部または一部をフッ素原子で置換したものである。
【0077】
本発明に係る潤滑油組成物の構成成分としては分子中にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が用いられる。オキシC2−3アルキレン基は式;−R−O−(Rは炭素数2または3の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基)で表される。オキシC2−3アルキレン基を有することにより、潤滑油基油へのフッ素化シリコーンの分散性を改善することができる。フッ素系界面活性剤はオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有していれば特に限定されないが、潤滑油基油に対する分散性の観点から非イオン型界面活性剤が好ましい。また、分子中にオキシエチレン基(−CHCHO−)、オキシプロピレン基[−CHCH(CH)O−]等のいずれか1種を有していてもよく、2種以上を有していてもよい。なお、フッ素系界面活性剤は、単独で、または2種以上組み合せて使用することができる。
【0078】
フッ素化炭化水素基としては、特に限定されないが、パーフルオロ基が好適であり、該パーフルオロ基は、1価であってもよく、2価以上の多価であってもよい。また、フッ素化炭化水素基は二重結合や三重結合を有していてもよく、直鎖でも枝分かれ構造や環式構造を有していてもよい。フッ素化炭化水素基の炭素数としては特に限定されず、1または2以上、好ましくは3〜30、さらに好ましくは4〜20である。これらのフッ素化炭化水素基が界面活性剤分子中に1種または2種以上導入されている。オキシC2−3アルキレン基としては、末端の酸素原子に水素原子が結合したアルコール、他の炭化水素基と結合したエーテル、カルボニル基を介して他の炭化水素基と結合したエステル等、いずれの形態でもよい。また、環式エーテル類やラクトン類等、環状構造の一部に該構造を有する形態でもよい。
【0079】
フッ素系界面活性剤の構造としては特に制限されないが、例えば、オキシC2−3アルキレン基を有する単量体およびフッ素化炭化水素基を有する単量体をモノマー成分として含む共重合体を好適に用いることができる。このような共重合体としては、ブロック共重合体、グラフト共重合体など、様々な構造が考えられるが、いずれも好適に用いられる。
【0080】
ブロック共重合体(主鎖にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、例えば、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキレート、ポリオキシプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシイソプロピレンパーフルオロアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーパーフルオロアルキレート、ポリオキシエチレングリコールパーフルオロアルキレート等である。
【0081】
グラフト共重合体(測鎖にオキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有する共重合体)としては、モノマー成分として少なくとも、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物およびフッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物を含む共重合体、特に、アクリル系共重合体が好適に用いられる。ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリレートが挙げられる。フッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物としては、例えば、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレートなどのパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等、フッ素化炭化水素基を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0082】
フッ素系界面活性剤は、分子中に上記構造の他に脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基などの構造を有していてもよく、潤滑油基油への分散性を阻害しない範囲内でカルボキシル基、スルホン酸基、シアノ基、アミド基、アミノ基等様々な官能基を有していてもよい。例えばフッ素系界面活性剤がビニル系共重合体である場合は、モノマー成分として、ポリオキシアルキレン基を有するビニル系化合物およびフッ素化炭化水素基を有するビニル系化合物と共重合可能なモノマー成分が用いられてもよい。このようなモノマーは単独でまたは2種以上組み合せて使用することができる。
【0083】
上記共重合可能なモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル;シクロペンチル(メタ)アクリレートなどの脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;フェニル(メタ)アクリレートなどの芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好適に用いられる。その他、マレイン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有単量体;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエンなどのオレフィンまたはジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド等のアミド基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのグリシジル基含有単量体;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有単量体などが挙げられる。さらにまた、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性共重合性単量体(多官能モノマー)が用いられてもよい。
【0084】
フッ素系界面活性剤の具体例としては、商品名「メガファックF−477」、「メガファックF−483」、「メガファックF−470」(以上、DIC株式会社製)、商品名「サーフロンS−381」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンS−383」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンS−393」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンKH−20」(セイケミカル株式会社製)、商品名「サーフロンKH−40」(セイケミカル株式会社製)、などが挙げられる。オキシC2−3アルキレン基およびフッ素化炭化水素基を有し、且つ重量平均分子量20000以上であるフッ素系界面活性剤の具体例としては、商品名「エフトップEF−352」(株式会社ジェムコ製)、商品名「エフトップEF−801」(株式会社ジェムコ製)、商品名「ユニダインTG−656」(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、いずれも本発明に好適に用いることができる。 特に本発明の目的を達成するには、前記のDIC社製「メガファックF−477」、「メガファックF−483」を採用することが好ましい。
【0085】

潤滑油基油
本発明に係る潤滑油組成物の構成成分の基油は、通常の潤滑油基油として使用され、また使用が可能なものであれば、特に限定されるものではないが、本発明に係る潤滑油組成物の構成成分として用いられるフッ素化シリコーンを完全に溶解せず分散させることができるものが好適である。具体的には、かかる要求を満たす鉱油系基油、GTL(Gas to liquid)系基油、合成油系基油またはこれらの混合油系基油等が用いられる。
【0086】
鉱油系基油としては、パラフィン系、中間基系またはナフテン系原油の常圧蒸留装置の残渣油の減圧蒸留による留出油として得られる潤滑油留分または残渣油を溶剤精製、水素化分解、水素化処理、水素化精製、溶剤脱蝋、接触脱蝋、白土処理等の各種精製工程を任意に選択して用いることにより処理して得られる溶剤精製鉱油または水素化処理鉱油および溶剤精製と水素化処理を組み合わせた工程により得られる鉱油、または減圧蒸留残渣油の溶剤脱瀝処理により得られる脱瀝油を前記の精製工程により処理して得られる鉱油、またはワックス分の異性化により得られる鉱油等、これらの混合油を基油基材として用いることができる。
【0087】
前記の溶剤精製においては、フェノール、フルフラール、N−メチル−2−ピロリドン等の芳香族抽出溶剤が用いられ、溶剤脱瀝処理には液化プロパン等の脱瀝溶剤が、また、溶剤脱蝋の溶剤としては、液化プロパン、MEK/トルエン等が用いられる。
【0088】
一方、接触脱蝋においては、例えば形状選択性ゼオライト等が脱蝋触媒として用いられる。
【0089】
前記の如くして得られる精製基油基材として粘度レベルの異なる軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストック等を挙げることができ、これらの基材を潤滑油製品の各用途に応じて動粘度等の要求性状を満たすように適宜調合することにより鉱油系基油を製造することができる。
【0090】
また、GTL油系基油としては、GTLプロセスにより天然ガス等を原料として得られる液体生成物から分離される潤滑油留分、または生成ワックスの水添異性化または水素化分解により得られる潤滑油留分等を挙げることができる。さらには、アスファルト等の重質残油成分を原料とするATL(Asphalt to Liquid)プロセスにより得られる液状生成油から分離される潤滑油留分等も用いることができる。
【0091】
一方、合成油系基油としては、ポリアルファオレフィンオリゴマー(例えば、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等およびこれらの混合物。);ポリブテン;エチレン−アルキレンコポリマー;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)ベンゼン、ジノニルベンゼン等。);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、アルキル化ポリフェニル等。);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびこれらの誘導体;二塩基酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スペリン酸、セバチン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー等。)と各種アルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、2ーエチルヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール等。)とのエステル;炭素数5〜18のモノカルボン酸とポリオール(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等。)とのエステル;その他、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールエステル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、リン酸エステル等を挙げることができる。
【0092】
潤滑油基油は、前記の鉱油系基油、合成油系基油およびGTL油系基油を潤滑油組成物の用途に応じて所望の粘度およびその他の性状を満たすように単独でまたは二種以上の基油を混合することにより製造される。
潤滑油基油としては、特に合成油系基油と鉱油系基油との混合油系基油が好適であり、GTL油系基油と鉱油系基油との混合油系基油、二種以上の鉱油系基油からなる混合油系基油または二種以上のGTL油系基油からなる混合油系基油等が好ましく、さらに、GTL油系基油と鉱油系基油との混合油系基油および二種以上の鉱油系基油からなる混合油系基油が粘度特性と経済性とのバランスを図る点から好適である。
【0093】
本発明に係る潤滑油組成物中の構成成分としての潤滑油基油の粘度は、潤滑油組成物の用途に応じて決定されるが、環境保全の観点から低粘度化油が求められる状況下にあり、潤滑油基油の100℃における動粘度が2〜10mm/sの範囲にあり、好ましくは3〜7mm/sの範囲に制御される。
【0094】
潤滑油基油の粘度が高すぎると、摩擦抵抗が大きくなり、また流体潤滑域における摩擦係数が高くなり、省燃費特性が悪化するという問題がある。一方、粘度が低すぎると、摺動部分、例えば内燃機関の動弁系、ピストンリングおよび軸受等において摩耗が増加するという難点が生ずる。
【0095】
潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物全重量基準で99.5〜50重量%、好ましくは99〜60重量%、さらに好ましくは95〜70重量%である。
【0096】

潤滑油組成物
本発明に係る潤滑油組成物は、潤滑油基油と、該潤滑油基油に配合された消泡剤組成物とからなるものであり、潤滑油組成物の用途に応じて要求される性能を満たすためにさらに他の各種添加剤が任意に配合される。消泡剤組成物については前記に記載の通りであり、成分(A)の含フッ素有機化合物、成分(B)のフッ素化シリコーンおよび成分(C)の炭化水素系またはアルコール系有機溶媒からなるものであり、任意成分(D)としてフッ素系界面活性剤を含有させたものである。
【0097】
潤滑油基油と該潤滑油基油に配合された成分(A)、(B)および(C)さらに(D)を含有する消泡剤組成物とからなる潤滑油組成物において、消泡剤組成物の含有量は、潤滑油組成物全重量基準で、0.05〜10重量%の範囲で採用される。
【0098】
成分(A)の含フッ素有機化合物の含有量は、潤滑油組成物全重量基準で0.001〜5重量%であり、好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。含有量が0.001重量%に満たないと良好な消泡性能が得られないおそれがあり、一方、5重量%を超えると潤滑油に沈澱が発生するおそれがある。
【0099】
また、成分(B)のフッ素化シリコーンの含有量は、0.0005〜1重量%、好ましくは0.005〜0.8重量%、さらに好ましくは0.05〜0.3重量%である。
【0100】
また、成分(C)の炭化水素系またはアルコール系有機溶媒の含有量は、有機溶媒の含有量は、潤滑油組成物全重量基準で0.001〜5重量%であり、好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.5重量%である。含有量が0.001重量%に満たないと消泡剤組成物を基油に配合した際に沈澱が発生する場合があり、一方、5重量%を超えると良好な消泡性を得ることができないおそれがある。
【0101】
成分(D)のフッ素系界面活性剤の含有量は、潤滑油組成物全重量基準で0.000005〜0.5重量%、好ましくは0.00001〜0.1重量%、さらに好ましくは0.00005〜0.05重量%である。
【0102】

潤滑油組成物の製造方法
本発明に係る潤滑油組成物の製造方法は、次の工程Iおよび工程IIによることが好ましい。
工程Iは、(A)下記の一般式(1)および(2);

X−(R) (1)

Y−(R) (2)

(一般式(1)および(2)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基である。
【0103】
(iii)R1は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)mは1〜6であり、
(v)Rは、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、水素原子,フッ素原子,炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、該置換基は互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(vi)nは2〜5である。)
で表される含フッ素有機化合物、(B)フッ素化シリコーンおよび(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒を混合することからなる消泡剤組成物を調製する工程である。
【0104】
成分(A),(B)および(C)の混合方法の操作は、特に限定されるものではなく、任意に決定すればよいが、成分(A)と(B)をあらかじめ混合した後に成分(C)を添加して全体を溶解させることが好ましい。成分(D)を付加する場合においても、これらを混合する際には成分(A)と成分(B)と成分(D)をあらかじめ溶解させた後に成分(C)を添加して全体を溶解させることが好ましい。かかる混合の条件は特に限定されるものではなく、環境温度でよいが、必要な範囲において適宜加温してもよい。
工程IIは、前記工程Iにおいて調製された成分(A)、(B)および(C)好ましくはさらに(D)からなる消泡剤組成物を潤滑油基油に配合する工程である。配合の操作および条件として特に限定されるものではなく、通常の添加剤配合方法を採用すればよい。また、他の添加剤は、前記工程Iにおいて、前記成分(A)、(B)および(C)の混合溶液に加えてもよいが、工程IIにおいて基油に事前にまたは消泡剤組成物と同時に添加してもよい。
【0105】

他の添加剤
本発明に係る潤滑油組成物は、自動変速機油、無段変速機油、油圧油、ギヤ油、タービン油、コンプレッサー油およびエンジン油等として好適なものであり、基油の選択により、必要な粘度調整を行ない、用途に応じてそれぞれ要求される性能を満たすために各種添加剤、例えば、粘度指数向上剤、無灰分散剤、有機酸金属塩(金属系洗浄剤)、摩擦調整剤、摩擦防止剤、酸化防止剤、極圧剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、防錆剤、着色剤などを適宜添加することができる。
【0106】

粘度指数向上剤としては、一般に非分散型ポリメタアクリレート、分散型ポリメタアクリレート、非分散型オレフィンコポリマー(ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体)、分散型オレフィンコポリマー、ポリアルキルスチレン、スチレン−ブタジエン水添共重合体、スチレン−無水マイレン酸エステル共重合体、星状イソプレン等が挙げられる。非分散型オレフィンコポリマーとは、分子中に酸素または窒素を含有せずに分散性能を有しているものである。ポリイソブチレンやエチレン−プロピレン共重合体の分子量としては、重量平均分子量で10万以上(GPC分析においてポリスチレン換算量)のものが好ましい。これは単独だけでなく複数のものを併用してもよい。通常0.01重量%〜30重量%の割合で使用される。
【0107】

無灰分散剤としては、コハク酸イミド、コハク酸アミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、コハク酸エステル−アミド等を含有する添加剤およびそれらのホウ素含有等が挙げられるが、コハク酸イミド系およびホウ素含有コハク酸イミド系が好ましく用いられる。コハク酸イミド系およびホウ素含有コハク酸イミド系の配合量は、通常0.05重量%〜8重量%である。
【0108】

金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルホネート、フェネート、サリシレート、カルボキシレートから選択される化合物を含むものが挙げられ、過塩基性塩、塩基性塩、中性塩等の塩基価の異なるものを任意に選択して用いることができる。これらの配合量は、金属元素量として、通常0.05重量%〜5重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0109】

摩擦調整剤としては、例えば、有機モリブデン系化合物、脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル、油脂類、アミン、ポリアミド、硫化エステル、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられる。これらは、通常0.05重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0110】

摩耗防止剤としては、一般にジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸金属塩(Pb,Sb,Moなど)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn,Pb,Sb,Moなど)ナフテン酸金属塩(Pbなど)、脂肪酸金属塩(Pbなど)、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、通常0.1重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0111】

酸化防止剤としては、一般にアルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネイト等の硫黄系酸化防止剤、ホスファイト等のリン系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、さらにジチオリン酸亜鉛等が挙げられ、特に、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤およびこれらの組合せが好ましく用いられる。これらは、通常0.05重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0112】

極圧剤としては、一般に無灰系サルファイド化合物、硫化油脂、リン酸エステル、亜リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩等が挙げられ、これらは、通常0.05重量%〜3重量%の割合で使用される。
【0113】

金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体等が挙げられ、これらは、通常0.01重量%〜3重量%の割合で使用される。
【0114】
流動点降下剤としては、一般にエチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタリンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、特に、ポリメタアクリレートが好ましく用いられる。これらは、通常0.01重量%〜5重量%の割合で使用される。
【0115】

防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸基、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、これらは、通常0.01重量%〜3重量%の割合で使用される。
【0116】

また、特に、自動変速機油(ATF)用の添加剤パッケージとしては、自動変速機の駆動系流体としてスリップ制御等の性能を発揮できるように前記の添加剤群から有用な添加剤を選択して使用することができるが、摩擦調整剤のほか、通常、酸化防止剤、清浄分散剤、金属不活性化剤、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、防錆剤、腐食防止剤等を含有するものである。各添加剤の配合量の具体例としては、下記記載の通りである。本発明に係る消泡剤組成物を配合した潤滑油組成物は、発泡を抑制し、または形成された気泡を破壊することができ、如何なる添加剤フォーミュレーションによっても泡立ち抑制上での問題は生じない。
【0117】
また、本発明を実施するに際し、市販の自動変速機油(ATF)用添加剤パッケージを用いることができる。例えば、ATFWSパッケージ等を使用することができる。
【0118】
好ましい含有量(重量%)
金属清浄剤 0.05〜 5.0
粘度指数向上剤 4.0〜 30.0
無灰分散剤 0.1〜 5.0
酸化防止剤 0.1〜 3.0
極圧剤 0.1〜 2.0
金属不活性化剤 0.01〜 2.0
摩耗防止剤 0.1〜 3.0
摩擦調整剤 0.1〜 5.0
流動点降下剤 0.01〜 8.0
腐食防止剤 0.01〜 5.0

【実施例】
【0119】
以下、本発明について実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも本発明は、実施例等により限定されるものではない。
【0120】
なお、実施例、比較例で使用した基油、消泡剤混合溶液の組成および性能評価試験等については次に示す。また、実施例等の「%」は重量%を示す。
【0121】

基油
(1)鉱油系基油
溶剤精製・水素化処理鉱油
100℃動粘度; 3mm/s
(2)合成油系基油
ポリアルファオレフィンオリゴマー
100℃動粘度; 3mm/s

消泡剤混合溶液
消泡剤混合溶液は、下記の成分(A)、(B)および(C)の混合溶液であり、各成分の混合割合については表1に示す。
【0122】
成分(A);含フッ素有機化合物
(1)セントラルガラス社製MTF−TFM;CF−C−CF
(2)アサヒガラス社製Asahi−CleanAE3000;
CF−CH−O−CF−CHF
(3)スリーエム社製 HFE7200; C−O−C
(4)デュポン社製 Vertrel; C10

成分(B);フッ素化シリコーン
(1)信越化学社製 FL−100−450CS
(2)信越化学社製 FA−630

成分(C);炭化水素系またはアルコール系有機溶媒
n−ヘプタン、ケロシン、軽油、アルケンL(新日石社製アルキルベンゼン)、トルエン、メタノール

成分(D).フッ素系界面活性剤
(1)DIC社製 メガファックF−477
(2)DIC社製 メガファックF−483

その他の添加剤
ATF用添加剤パッケージ
ATFWS消泡剤不含パッケージ
金属清浄剤
アフトンケミカル社製Hitech614(カルシウムスルホネート)

性能評価方法
外観観察試験および消泡性能を次の方法により評価した
(1)外観観察試験
試料を200CCビーカーに100CC採り、20℃に調整した恒温エアオーブン内で24時間保持した後、白色光源をビーカーの背後に設置した状態で目視観察を行なう。その際に、白色光源が鮮明に確認できる透過度の有無について、さらに分離および白濁の生成の有無について観察する。
(2)消泡性能試験
試料を500CCのトールビーカーに200CC採取し、ホットプレートで120℃に昇温後に空気を100ml/min吹き込みながらホモジナイザー(IKA社製)にて3分間撹拌した後の上昇した液面高さを測定し泡立ち量とする。
【0123】
下記の実施例および比較例においては、消泡剤混合溶液を配合し、試作油の調製直後および7日間静置後に、それぞれ消泡性能試験を行ない、各試験結果(泡立ち量)について前者を初期消泡性能、後者を貯蔵安定性と称する。
実施例1
フッ素化シリコーンFL−100−450csを含フッ素有機化合物MTF−TFM(ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)に溶解させた後、さらに炭化水素溶媒(n−ヘプタン)に全体を溶解させ、フッ素化シリコーン3%、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン68% および n−ヘプタン29%の消泡剤混合溶液M1を調製した(表1−1参照。)。混合溶液M1を前記の性能評価試験に供し、外観を観察したところ透明であった。
【0124】
前記の如くして調製された外観が透明の消泡剤混合溶液M1を前記の鉱油系基油に配合し、表2−1に示す組成の試作油1を調製した。
【0125】
なお、実施例16〜19および比較例9を除き、以下のすべての実施例および比較例において調製する各試作油に共通して他の添加剤として前記ATF用添加剤パッケージを試作油全重量基準で20%配合した。実施例16〜19および比較例7においては、金属清浄剤を試作油全重量基準で5重量%配合した。
【0126】
前記試作油1を前記消泡性能試験に供したところ、試作油の調製直後の消泡性能が12mm、7日間静置後の消泡性能が14mmであり、消泡性能の水準が高く、しかもその低下はほとんどなく、優れた貯蔵安定性が示された。
【0127】

実施例2
含フッ素有機化合物MTF−TFM(ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)の代わりに、Asahi−clean AE−3000(CFCHOCFCHF)を使用したこと以外、すべて実施例1の成分と同一の成分を同一割合で含有する消泡剤混合溶液M2を調製した。混合溶液M2の外観観察によれば透明であった。
【0128】
前記の如くして調製した消泡剤混合溶液M2を前記基油に配合し、表2−1に示す組成の試作油2を調製した。
【0129】
前記試作油2を前記消泡性能試験に供したところ、調製直後の消泡性能が12mm、7日間静置後の消泡性能が12mmであり、実施例1の試作油1と同様に優れた消泡性能および貯蔵安定性が示された。
【0130】

実施例3
含フッ素有機化合物MTF−TFM(ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)の代わりに、含フッ素有機化合物HFE7200パーフルオロプチルエチルエーテル(COC)を使用したこと以外、すべて実施例1の成分と同一の成分を同一割合で含有する消泡剤混合溶液M3を調製した。混合溶液M3は外観観察によれば透明であった。
【0131】
前記の如くして調製した消泡剤混合溶液M3を前記基油に配合し、表2−1に示す組成の試作油3を調製した。
【0132】
試作油3を前記消泡性能試験に供したところ、調製直後の消泡性能が12mm、7日間静置後の消泡性能が13mmであり、優れた初期消泡性能およびその貯蔵安定性が示された。
【0133】

実施例4〜6
表1−1に示すようにフッ素化シリコーンFA−630を用い、同表に示す割合で含フッ素有機化合物および炭化水素溶媒を用い、消泡剤混合溶液M4〜M6を調製した。
【0134】
混合溶液M4〜M6をそれぞれ基油と配合し、表2−1に示す組成の試作油4〜6を調製した。性能評価の結果を同表に示す。
【0135】

実施例7〜11
フッ素化シリコーンFL−100−450csおよび含フッ素有機化合物MTF−TFMと、表1−1及び表1−2に示す各種炭化水素溶媒とを同表に示す割合で混合し、混合溶液M7〜M11を調製した。これらの混合溶液は前記の外観観察によれば透明であった。
【0136】
混合溶液M7〜M11をそれぞれ基油に配合し、表2−1に示す組成の試作油7〜11を調製した。消泡性能を同表に示す。
実施例12〜15
フッ素化シリコーンFA−630、含フッ素有機化合物MTF−TFMおよび炭化水素溶媒としてケロシンの混合物に対し、フッ素化界面活性剤F−477またはF−483を表1−2に示すように混合した混合溶液M12〜M15をそれぞれ基油に配合し、表2−1に示す組成の試作油12〜15を調製した。
試作油の性能評価は、前記の性能評価試験により行ない表2に示す結果が得られた。
【0137】

実施例16〜19
表1−2に示す消泡剤混合溶液M12〜M15を、表2−1に示すように、ATF用パッケージの代わりに前記金属清浄剤を配合した基油に、それぞれ配合したこと以外すべて実施例1と同様にして試作油16〜19を調製した。性能評価の結果を表2−2に示す。
【0138】

実施例20
基油として鉱油の代わりに合成油を使用したこと以外、すべて実施例1と同様に同一の消泡剤混合溶液M1を用いて試作油20を調製した。
試作油20の性能評価を前記の性能評価試験により行ない表2−2に示す消泡結果を得た。
【0139】
前記性能評価によれば、基油が鉱油または合成油であってもその相違は消泡効果には大きい影響がないことが判明した。
【0140】

実施例21
ATF用添加剤パッケージまたは金属清浄剤のいずれの添加剤も使用しなかったこと以外すべて実施例1と同様に同一の消泡剤混合溶液M1を用いて試作油21を調製した。
試作油21の性能評価を前記の性能評価試験により行ない表2−2に示す消泡効果を得た。
【0141】

比較例1
表1−2に示す割合で、フッ素化シリコーンFL−100−450csを含フッ素脂肪族炭化水素溶媒C10に溶解させた後、炭化水素溶媒(ケロシン)に全体を溶解させ混合溶液M16を調製した。含フッ素脂肪族炭化水素溶媒は、本発明の含フッ素有機化合物の範囲を逸脱するものであり、混合溶液の外観は白濁状態であった。混合溶液M16を基油に配合し、表2−2に示す組成の試作油aを調製した。
試作油aの前記性能評価の結果を表2−2に示す。この結果から、特に貯蔵安定性に欠けることが判明した。
【0142】

比較例2
フッ素化シリコーンFL−100−450csを含フッ素有機化合物HFE7200に溶解させて混合溶液M17を調製したが、炭化水素系またはアルコール系有機溶媒を使用しなかった。混合溶液M17の外観は透明であった。次に、混合溶液M17を基油に配合し、表2−2に示す組成の試作油を得た。試作油bは前記の通り有機溶媒を欠如するものであり、同表に示すように初期消泡性能が低く、また、貯蔵安定性を欠如することが判明した。
【0143】

比較例3
フッ素化シリコーンFL−100−450csを炭化水素溶媒(ケロシン)のみに溶解させた。得られた混合溶液M18は含フッ素有機化合物を欠如したものであり、透明であったが、混合溶液18を基油に配合し、試作油cを調製したところ、試作油cは二層に分離した。
【0144】

比較例4
フッ素化シリコーンを使用せずに含フッ素有機化合物HFE7200と炭化水素溶媒(ケロシン)のみの混合溶液M19を調製した。混合溶液19の外観観察によれば透明であった。表2−2に示すように混合溶液M19を基油に配合し、同表に示す組成の試作油dを調製した。
試作油dを前記性能評価試験に供したところ、初期消泡性能、貯蔵安定性共に消泡剤性能は得られなかった。
【0145】

比較例5
表2−2に示すように、潤滑油基油とATF用添加剤パッケージにフッ素化シリコーンFL−100−450csのみを配合し、試作油eを調製した。前記消泡性能試験により評価した結果を同表に示した。性能評価の結果、フッ素化シリコーンを配合したにも拘らず、フッ素化シリコーンを含有しない試作油fと比較して同様に初期消泡性能および貯蔵安定性が劣るものであった。この事実からも消泡剤混合溶液の有効性がわかる。
【0146】

比較例6
表2−2に示すように、基油とATF用添加剤パッケージのみの組成の試作油fを調製した。性能評価の結果を同表に示す。
【0147】

比較例7
ATF用添加剤パッケージの代わりに金属清浄剤を表2−2に示す割合で基油に配合したこと以外比較例6と同一の操作により試作油gを調製した。
【0148】
性能評価の結果を表2−2に示す。
【0149】

以上の実施例および比較例の結果から、潤滑油組成物を調製する際に、含フッ素有機化合物、フッ素化シリコーンならびに炭化水素系またはアルコール系有機溶媒を混合した透明の消泡剤混合溶液を用いることにより潤滑油組成物の初期消泡性能およびその貯蔵安定性において顕著な効果を奏することが判明した。
【0150】
【表1−1】

【0151】
【表1−2】

【0152】
【表2−1】

【0153】
【表2−2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物の成分として用いられる消泡剤組成物であって、下記の成分(A),(B)および(C)からなることを特徴とする消泡剤組成物。
(A)下記の一般式(1)および(2)で表されるフッ素有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の含フッ素有機化合物,

X−(R) (1)

Y−(R) (2)

(一般式(1)および(2)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基であり、
(iii)R1は、前記芳香族炭化水素基または前記脂環式炭化水素基の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、二種以上存在する置換基については、互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)mは1〜6であり、
(v)Rは、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、水素原子,フッ素原子,炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、二種以上存在する置換基については、互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(vi)nは2〜5である。)
(B)フッ素化シリコーン
および
(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒。

【請求項2】
前記成分(A)の含フッ素有機化合物が、次の一般式(11)または一般式(22)で表される構造を有する化合物である請求項1に記載の消泡剤組成物。

11−X−R12 (11)

21−Y−R22 (22)

(一般式(11)および(22)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、OまたはSのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基であり、
(iii)R11およびR12は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の二個の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、該置換基が互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、
(iv)R21およびR22は、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、該置換基は互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基である。)

【請求項3】
前記消泡剤組成物の成分(A),成分(B)および成分(C)の混合割合が前記消泡剤組成物の全重量基準で成分(A)2〜98重量%,成分(B)0.01〜10重量%および成分(C)2〜98重量%である請求項1ないし2のいずれか1項に記載の消泡剤組成物。

【請求項4】
前記成分(A),成分(B)および成分(C)からなる成分にさらに添加される成分が成分(D)フッ素系界面活性剤である請求項1に記載の消泡剤組成物。

【請求項5】
潤滑油基油と、該潤滑油基油に配合された請求項1ないし4のいずれか1項に記載の消泡剤組成物とからなることを特徴とする潤滑油組成物。

【請求項6】
前記消泡剤組成物の配合量が、前記潤滑油組成物の全量を基準として
0.05〜10重量%である請求項5に記載の潤滑油組成物。

【請求項7】
前記潤滑油基油の100℃における動粘度が2〜10mmである請求項5に記載の潤滑油組成物。

【請求項8】
前記潤滑油組成物の用途が自動車の自動変速機油、無段変速機油、その他の駆動系流体である請求項5ないし7のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。

【請求項9】
(A)下記の一般式(1)および(2);

X−(R) (1)

Y−(R) (2)

(一般式(1)および(2)において、
(i)Xは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり、
(ii)Yは、O,S,N,PまたはSiのヘテロ原子を少なくとも一種含有する基であり、
(iii)R1は、前記芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基の水素原子と置換されるフッ素原子、炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であって、二種以上存在する置換基については互いに同一でもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基がフッ素原子または炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、mは1〜6であり、
(iv)Rは、前記ヘテロ原子を含有する基に結合する置換基であって、水素原子,フッ素原子,炭素数1〜10の炭化水素基および炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基からなる群より選択される置換基であり、二種以上存在する置換基については互いに同一であってもまたは異なるものであってもよいが、少なくとも一種の置換基が炭素数1〜10のフッ素含有炭化水素基であり、nは2〜5である。)
で表される含フッ素有機化合物からなる群より選択される少なくとも一種の含フッ素有機化合物と、(B)フッ素化シリコーンと、(C)炭化水素系またはアルコール系有機溶媒とを混合することにより消泡剤組成物を調製する工程
および
前記工程において調製された前記消泡剤組成物を潤滑油基油に配合する工程
からなることを特徴とする潤滑油組成物の製造方法。

【請求項10】
前記成分(A),成分(B)および成分(C)からなる成分にさらに添加される成分が成分(D)フッ素系界面活性剤である請求項9に記載の潤滑油組成物の製造方法。


【公開番号】特開2010−132792(P2010−132792A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310652(P2008−310652)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000108317)東燃ゼネラル石油株式会社 (22)
【Fターム(参考)】