説明

消火ヘッド

【課題】消火ヘッドの設置作業時において、作業者によって不適切な方法で作業が行われようとしても当該消火ヘッドの破損や変形を防止することができ、汎用工具を用いた場合でも当該消火ヘッドの破損や変形を防止できる消火ヘッドを提供すること。
【解決手段】消火ヘッド1は、消火剤の供給口に対してねじ込み接続される接続ねじ11aと、供給口から供給された消火剤の放射経路に介在する発泡部30と、発泡部30を支持するフレーム13と、を備え、発泡部30の少なくとも一部を、接続ねじ11aの中心軸に沿った回動軸を中心として回動自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に消火剤を放出する消火ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火災発生時に放出口から消火剤や水を放出する消火ヘッドが用いられている。消火ヘッドは、消火剤等の供給管に接続されており、当該供給管を介して消火剤槽や水道管から消火剤等の供給を受ける。火災が発生していない通常時は、グラスバルブやヒュージブルリンクといった感熱体によって弁体が放出口に圧接されることで当該放出口が閉鎖されており、火災発生時にはこれらの感熱体が変形、あるいは、分解して弁体が放出口から離脱することにより、当該放出口が開放され、消火剤等が放出される。放出口から放出された消火剤等は、消火剤を拡散させるための拡散板に当たることにより消火ヘッドの周辺に拡散しながら放射される。
【0003】
このような消火ヘッドにおいては、感熱体を支持するためのフレームが、放出口の近傍から感熱体と当該フレームとの当接部に向かって延設されている。また、放出口から放出された消火剤等を拡散させるための拡散板や、泡沫消火剤を発泡させるための発泡部が、フレームにおける放出口に対向する位置に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−16473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の消火ヘッドを消火剤の供給管に接続させる場合には、消火ヘッドの一端に設けられている接続部を供給管の供給口に接続させる。接続部の外周及び供給口の内周にはねじ部が設けられているので、当該接続部を回転させることで供給口に螺合させることができる。この消火ヘッドの接続作業においては、本来、接続作業用の専用工具をねじ部の頭部等の消火ヘッドの一部に嵌合させて接続部を回転させる必要がある。しかし、上述した拡散板や発泡部の外径がねじ部の頭部よりも大きく、また、これらの拡散板や発泡部は消火ヘッドにおいて接続部とは反対側の端部に配置されており、接続作業を実施する作業者にとって手に持ち易い位置形状となっていることから、当該作業者が拡散板や発泡部を手やパイプレンチ等で把持した状態で接続部を回転させて接続作業を実施することがあった。この場合、拡散板や発泡部と消火ヘッド本体との結合部や消火ヘッド本体に対して過剰な力が負荷され、消火ヘッドの変形や破損を招く可能性があった。また、そのように変形した状態のままで使用されていた場合、消火ヘッドの作動時における消火剤の放射分布に悪影響が生じる可能性もあった。
【0006】
また、接続部を回転させるための工具としてスパナ等の汎用工具を当該接続部に嵌合させた場合に、誤って工具を感熱体に接触させてしまうことにより、当該感熱体を変形あるいは破損させてしまう可能性があった。このように変形あるいは破損した感熱体をそのまま使用した場合には、消火ヘッドの正常な作動が妨げられる可能性もあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、(1)消火ヘッドの設置作業時において、作業者によって不適切な方法で作業が行われようとしても当該消火ヘッドの破損や変形を防止することができ、(2)汎用工具を用いた場合でも当該消火ヘッドの破損や変形を防止できる消火ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の消火ヘッドは、消火剤の供給口に対してねじ込み接続される接続ねじと、前記供給口から供給された消火剤の放射経路に介在する終端構造体と、前記終端構造体を支持するフレームと、を備え、前記終端構造体の少なくとも一部を、前記接続ねじの中心軸に沿った回動軸を中心として回動自在としたこと、を特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の消火ヘッドは、請求項1に記載の消火ヘッドにおいて、前記フレームは、前記接続ねじの中心軸と略平行に当該接続ねじの頭部から当該接続ねじの先端とは反対側に向かって延設され、前記終端構造体は、外部に露出した略円板体または略円筒体を有し、当該略円板体または略円筒体の中心軸が前記接続ねじの中心軸に沿うように、前記フレームにおける前記接続ねじとは反対側の端部に固定されていること、を特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の消火ヘッドは、請求項2に記載の消火ヘッドにおいて、前記終端構造体は、前記供給口から供給された消火剤を拡散させる拡散手段であり、前記略円板体を有していること、を特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の消火ヘッドは、請求項2に記載の消火ヘッドにおいて、前記終端構造体は、前記供給口から供給された消火剤を発泡させる発泡手段であり、前記略円筒体を有していること、を特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の消火ヘッドは、請求項4に記載の消火ヘッドにおいて、前記略円筒体の両底面のうち前記フレームとは反対側にある第1の底面が前記回動軸を中心として回動自在であること、を特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の消火ヘッドは、請求項4に記載の消火ヘッドにおいて、前記略円筒体の両底面のうち前記フレームとは反対側にある第1の底面と当該略円筒体の外周面との連結構造が、前記第1の底面とは独立に前記回動軸を中心として回動自在であること、を特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の消火ヘッドは、請求項4から6のいずれか一項に記載の消火ヘッドにおいて、前記発泡手段は、前記略円筒体の外周面に網体を備え、前記網体は、前記回動軸を中心として回動自在であること、を特徴とする。
【0015】
また、請求項8に記載の消火ヘッドは、請求項1から7のいずれか一項に記載の消火ヘッドにおいて、前記終端構造体の外周を前記回動軸に沿って投影した空間の内部に前記フレームを含んでいること、を特徴とする。
【0016】
また、請求項9に記載の消火ヘッドは、請求項1から8のいずれか一項に記載の消火ヘッドにおいて、前記接続ねじを回転させる工具が嵌合される嵌合部を備え、前記嵌合部は、当該嵌合部と前記フレームとの間に当該嵌合部よりも外径の大きい鍔体を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、フレームによって支持されている終端構造体の少なくとも一部を、接続ねじの中心軸に沿った回動軸を中心としてフレームに対して回動自在としている。従って、供給管に対する消火ヘッドの接続作業を行う場合において、作業者が終端構造体を自らの手やパイプレンチ等で把持して回転させることによって接続ねじを回転させ供給管に接続しようとしても、当該終端構造体のみが回転し、消火ヘッドの本体には力が伝達されない。これにより、終端構造体とフレームとの接続部やフレーム自体に過剰な力が負荷されることを防止することができ、作業者に対して適切な方法で、すなわち嵌合部に工具を嵌合させる方法で接続作業を実施させることができる。
【0018】
また、この発明によれば、フレームは接続ねじの中心軸に沿って当該接続ねじの頭部から接続ねじの先端とは反対側に向かって延設されており、その先端に終端構造体が配置されている。また、終端構造体は略円板体または略円筒体としての外形を有し、その中心軸が接続ねじの中心軸に沿うように配置されている。このように、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとって把持しやすい位置に配置されている終端構造体の一部をフレームに対して回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッドの本体には力が伝達されず、消火ヘッドに変形や破損が生じることを効果的に防止することができる。
【0019】
また、この発明によれば、フレームにおける接続ねじとは反対側の端部には拡散手段が配置されている。拡散手段は略円板体を備えており、その中心軸は接続ねじの中心軸に沿うように配置されている。このように、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい位置に配置されている拡散手段をフレームに対して回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッドの本体には力が伝達されず、消火ヘッドに変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0020】
また、この発明によれば、フレームにおける接続ねじとは反対側の端部には発泡手段が配置されている。発泡手段は略円筒体を備えており、その中心軸は接続ねじの中心軸に沿うように配置されている。このように、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい位置に配置されている発泡手段をフレームに対して回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッドの本体には力が伝達されず、消火ヘッドに変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0021】
また、この発明によれば、発泡手段におけるフレームとは反対側にある第1の底面をフレームに対して回動自在としており、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい部分が回動自在となっているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッドの本体には力が伝達されず、消火ヘッドに変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0022】
また、この発明によれば、第1の底面と当該略円筒体の外周面との連結構造を、接続ねじの中心軸に沿った回動軸を中心としてフレームに対して回動自在としている。すなわち、発泡手段におけるフレームとは反対側の底面の外周に位置している連結構造をフレームに対して回動自在としたことにより、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい部分を回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッドの本体には力が伝達されず、消火ヘッドに変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0023】
また、この発明によれば、発泡手段における第1の底面に固定され当該発泡手段の外周面に位置している網体をフレームに対して回動自在としており、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい部分が回動自在となっているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッドの本体には力が伝達されず、消火ヘッドに変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0024】
また、この発明によれば、終端構造体の外周を回動軸に沿って投影した空間の内部にフレームが含まれるように終端構造体が形成されているので、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとってはフレームよりも終端構造体の方が把持しやすい。このように、把持しやすい配置及び形状を有する終端構造体をフレームに対して回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッドの本体には力が伝達されず、その結果消火ヘッドに変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0025】
また、この発明によれば、嵌合部とフレームとの間において嵌合部よりも外径の大きい鍔体が設けられているので、嵌合部に工具が嵌合された場合は、当該工具はフレームに向かう方向については当該鍔体によって掛止される。従って、嵌合部にスパナ等の汎用工具を嵌合させた場合でも、当該工具が嵌合部からフレームに向かって脱落することを防止することができ、消火ヘッドの構成部品の破損や変形を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る消火ヘッドの各実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念を説明した後、〔II〕各実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、各実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
〔I〕各実施の形態に共通の基本的概念
まず、各実施の形態に共通の基本的概念について説明する。各実施の形態に係る消火ヘッドは、火災発生による熱を感知して消火剤を放出させることを目的とするものである。
【0028】
各実施形態に係る消火ヘッドの設置対象は任意であり、例えば工場施設やビル等の大規模な建物内や地下街、あるいは、一般住宅の台所等にも設置することができる。
【0029】
各実施の形態に係る消火ヘッドの特徴の一つは、概略的に、当該消火ヘッドの端部に配置されている終端構造体を、供給管にねじ込み接続される接続ねじの中心軸に沿った回動軸を中心として回動自在とした点にある。ここで、終端構造体とは、例えば、発泡部や拡散板の全体又は少なくとも一部であり、消火ヘッドの接続作業時に作業者にとって把持しやすい部分の総称である。このように、消火ヘッドの接続作業を実施する作業者にとって把持しやすい部分を回動自在としているので、当該部分を作業者が把持した状態で消火ヘッドを回転させて供給管に接続しようとしても、当該部分だけが消火ヘッドの本体から独立して回転する。従って、過剰な力が消火ヘッドに加えられることを防止することができ、消火ヘッドの変形や破損を防止することができる。
【0030】
〔II〕各実施の形態の具体的内容
次に、本発明に係る各実施の形態の具体的内容について説明する。
【0031】
〔実施の形態1〕
まず実施の形態1について説明する。この形態は、発泡手段の底面を回動自在とした形態である。
【0032】
(消火ヘッドの構成)
まず、消火ヘッドの構成を説明する。図1は、実施の形態1に係る消火ヘッドの外観図であり、図1(a)が消火ヘッドの正面図、図1(b)が消火ヘッドの側面図、図1(c)が消火ヘッドの底面図である。また、図2は図1(b)におけるA−A断面を示した側断面図である。図1及び図2に示すように、消火ヘッド1は、消火ヘッド本体10、感熱部20、及び、発泡部30を備えている。
【0033】
(消火ヘッドの構成−消火ヘッド本体10)
消火ヘッド本体10は、接続部11、嵌合部12、フレーム13、鍔体14、及び、放出口15を備えている。接続部11は、図示しない消火剤の供給管に接続され、当該消火ヘッド1に対して消火剤が流入する部分であって、消火ヘッド本体10の一方の端部に配置されている。接続部11の外周には、消火剤の供給管に対してねじ込み接続される接続ねじ11aが形成されている。接続ねじ11aの具体的な形状は任意であり、例えば、管用テーパねじとして形成されている。嵌合部12は、消火ヘッド1を供給管に接続する際に接続部11を回転させるための工具が嵌合される部分であり、接続部11に隣接して配置されている。嵌合部12の具体的な形状は任意であり、例えば、接続ねじ11aの中心軸である第1の軸と長軸方向が略一致している四角柱若しくは六角柱として形成することで、スパナ等の汎用工具を嵌合させることができる。フレーム13は、後述する感熱体や発泡部30を支持するものであり、第1の軸に沿って嵌合部12から接続ねじ11aの先端とは反対側に向かって延設されている。また、フレーム13の先端には、後述する固定ボルト31が螺合される孔部130が、当該孔部130の長軸方向が第1の軸に沿うようにして設けられている。鍔体14は、嵌合部12に嵌合された工具が当該嵌合部12からフレーム13に向かって脱落することを防止するためのものであり、嵌合部12とフレーム13との間において嵌合部12よりも外径の大きい突段部として設けられている。放出口15は、供給管から接続部11に流入した消火剤が放出される開口部である。放出口15の形状は任意であるが、例えば円形の開口部として形成され、当該放出口15の開口面が第1の軸と直交するように配置されている。
【0034】
(消火ヘッドの構成−感熱部20)
感熱部20は、火災発生による熱を感知した場合に、放出口15を開放して消火剤を放出させるものであり、弁体21及び感熱体22を備えている。弁体21は、感熱体22によって放出口15に圧接されて当該放出口15を閉鎖するためのものである。感熱体22は、火災が発生していない常温の環境下では、弁体21における放出口15とは反対側の端部に嵌合されて当該弁体21を放出口15に向かって支持している。火災発生による熱を感知した場合は、変形あるいは分解することにより、弁体21を放出口15から離脱させ当該放出口15を開放させる。なお、感熱体22の具体的な形状は任意であるが、例えば図1に示すような略円筒状に形成され、一端は弁体21の底部に嵌合され、他端はフレーム13によって支持されている。また、感熱体22の具体的な構成は任意であるが、例えば、揮発性の液体を封入したガラス容器であるグラスバルブを用いることができる。この場合、グラスバルブに封入されている液体が所定の温度に到達すると、温度に伴って上昇した液体の圧力にグラスバルブが耐え切れずに破裂する。これにより、火災発生による熱を感知することができる。あるいは、所定の温度にて溶解し変形する合金を使用しているヒュージブルリンクを用いてもよい。
【0035】
(消火ヘッドの構成−発泡部30)
発泡部30は、放出口15から放出された消火剤を拡散及び発泡させて、消火ヘッド1の周囲に放射させるためのものであり、特許請求の範囲における終端構造体及び発泡手段に対応している。発泡部30は、固定ボルト31、プレート32、スクリーン33、及び、デフレクタ34を備えており、この内のプレート32とスクリーン33とによって、外部に露出している略円筒体としての外形が形成されている。この略円筒体は、その中心軸が第1の軸に沿うように、フレーム13における接続ねじ11aとは反対側の端部に配置されている。
【0036】
固定ボルト31は、後述するプレート32をフレーム13に固定するためのものである。固定ボルト31は、フレーム13の孔部130に螺合されるねじ部31a、当該固定ボルト31を回転させる工具が嵌合される頭部31b、及び、ねじ部31aと頭部31bとの間に位置している段部31cを備えている。ここで、段部31cの外径は、頭部31bの外径よりは小さく、ねじ部31aの外径よりは大きくなるように形成され、さらに、孔部130が配置されているフレーム13の端部の外径よりも小さくなるように形成されている。固定ボルト31は、プレート32に挿通されると共に、当該固定ボルト31の長軸方向が第1の軸に沿うようにしてフレーム13の孔部130に螺合されている。
【0037】
プレート32は、後述するスクリーン33を支持するためのものであり、特許請求の範囲における終端構造体の一部であって、第1の底面に対応している。プレート32は、上述の略円筒体におけるフレーム13と反対側の底面に位置している略円板として形成されており、放出口15の開口面に対して略平行に、固定ボルト31によってフレーム13に固定されている。また、プレート32の外周を第1の軸に沿って投影した空間の内部にフレーム13が含まれるように当該プレート32が形成されている。プレート32の中央近傍には、固定ボルト31を挿通させるための挿通穴320が設けられている。また、プレート32の周縁には、後述するスクリーン33が嵌込される溝である連結部321が設けられている。
【0038】
スクリーン33は、放出口15から放出された消火剤を通過させて発泡させるためのものであり、特許請求の範囲における終端構造体の一部であって、網体に対応している。スクリーン33は、発泡部30の外形として形成されている略円筒体における外周面及びプレート32と対向している底面を成しており、プレート32のフレーム13側に形成されている。スクリーン33の外周がプレート32の連結部321に嵌込されることで、当該スクリーン33とプレート32とが連結されている。また、スクリーン33の底面の中央部には、フレーム13が挿通されるフレーム挿通穴330が設けられている。なお、スクリーン33を構成する材料は任意であり、例えば、金属網を用いてもよく、あるいは、エッチング加工を施して微細な穴を多数設けた金属薄板を用いてもよい。
【0039】
デフレクタ34は、放出口15から放出された消火剤を拡散させる略円板として形成され、スクリーン33とプレート32とによって囲繞されている空間の内部において、放出口15の開口面に対して略平行に、フレーム13に固定されている。フレーム13に対するデフレクタ34の固定方法は任意であるが、例えば、フレーム13の外周に設けられた溝にデフレクタ34を嵌合させて固定させることできる。
【0040】
(消火ヘッドの構成−プレート32及びスクリーン33とフレーム13との関係)
プレート32に固定ボルト31を挿通させるための挿通穴320の内径は、当該固定ボルト31の頭部31bの外径よりも小さく、段部31cの外径よりは大きく、さらに、フレーム13端部の外径よりも小さい。また、挿通穴320の周縁部におけるプレート32の厚さは、固定ボルト31の段部31cの厚さより薄く形成されている。従って、プレート32は、挿通穴320の周縁において固定ボルト31の頭部31bとフレーム13の端部との間に掛止され、固定ボルト31を回動軸としてフレーム13に対して回動自在に固定されている。また、スクリーン33にフレーム13が挿通されるフレーム挿通穴330と当該フレーム13とは所定の間隔を隔てて配置され、相互に非接触に配置されている。従って、スクリーン33はプレート32と共にフレーム13に対して回動自在に配置されている。
【0041】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、フレーム13によって支持されている発泡部30のうちプレート32とスクリーン33とを、長軸方向が第1の軸に沿っている固定ボルト31を回動軸としてフレーム13に対して回動自在としている。従って、供給管に対する消火ヘッド1の接続作業を行う場合において、作業者がプレート32やスクリーン33を自らの手やパイプレンチ等で把持して回転させることによって接続ねじ11aを回転させ供給管に接続しようとしても、プレート32及びスクリーン33のみが回転し、消火ヘッド本体10には力が伝達されない。これにより、プレート32とフレーム13との接続部11やフレーム13自体に過剰な力が負荷されることを防止することができ、作業者に対して適切な方法で、すなわち嵌合部12に工具を嵌合させる方法で接続作業を実施させることができる。
【0042】
また、フレーム13は第1の軸に沿って嵌合部12から接続ねじ11aの先端とは反対側に向かって延設されており、その先端に発泡部30が配置されている。また、発泡部30は略円筒体としての外形を有し、その中心軸が第1の軸に沿うように配置されている。このように、消火ヘッド1の接続作業を実施する作業者にとって把持しやすい位置に配置されている発泡部30の一部をフレーム13に対して回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッド本体10には力が伝達されず、消火ヘッド1に変形や破損が生じることを効果的に防止することができる。
【0043】
特に、発泡部30におけるフレーム13とは反対側の底面に位置しているプレート32と当該プレート32に固定され発泡部30の外周面に位置しているスクリーン33とをフレーム13に対して回動自在としており、消火ヘッド1の接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい部分が回動自在となっているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッド本体10には力が伝達されず、消火ヘッド1に変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0044】
また、プレート32の外周を第1の軸に沿って投影した空間の内部にフレーム13が含まれるようにプレート32が形成されているので、消火ヘッド1の接続作業を実施する作業者にとってはフレーム13や嵌合部12よりもプレート32の方が把持しやすい。このように、把持しやすい配置及び形状を有するプレート32をフレーム13に対して回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッド本体10には力が伝達されず、その結果消火ヘッド1に変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0045】
また、嵌合部12とフレーム13との間において嵌合部12よりも外径の大きい鍔体14が設けられているので、嵌合部12に工具が嵌合された場合は、当該工具はフレーム13に向かう方向については当該鍔体14によって掛止される。従って、嵌合部12にスパナ等の汎用工具を嵌合させた場合でも、当該工具が嵌合部12からフレーム13に向かって脱落することを防止することができ、感熱体22の破損や変形を防止することができる。
【0046】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、保持部によってプレートを保持している形態である。
【0047】
(消火ヘッドの構成)
まず、消火ヘッドの構成を説明する。図3は、実施の形態2に係る消火ヘッドの断面図である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0048】
(消火ヘッドの構成−発泡部30)
図3に示すように、本実施の形態2に係る消火ヘッド1における発泡部30は、保持部35を備えている。保持部35は、固定ボルト31によってフレーム13に固定され、当該保持部35を介してプレート32をフレーム13に対して回動自在に固定するためのものである。保持部35は、略円筒体として形成されており、一方の底面の中央部に固定穴350を備えているとともに、外周には保持溝351を備えている。固定穴350は、固定ボルト31が挿通される部分である。固定穴350の外径は、固定ボルト31の頭部31bの外径よりも小さく、段部31cの外径よりは大きく、さらにフレーム13端部の外径よりも小さい。また、保持部35は、固定穴350の周縁部において固定ボルト31の段部31cの厚さ以上の厚さとなるように形成されている。従って、保持部35は、固定穴350の周縁において固定ボルト31の頭部31bとフレーム13の端部との間に狭持され、当該保持部35の中心軸が第1の軸に沿うようにフレーム13に対して固定されている。保持溝351は、プレート32の挿通穴320の周縁部が嵌合される部分である。保持溝351の幅は挿通穴320の周縁部におけるプレート32の厚さよりも大きく、保持溝351の底部における保持部35の外径は挿通穴320の内径よりも小さい。また、保持溝351を形成する凸段部における保持部35の外径は挿通穴320の内径よりも大きい。従って、プレート32は、挿通穴320の周縁において保持溝351に掛止され、フレーム13に対して保持部35を軸として回動自在に固定されている。
【0049】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、発泡部30のうちプレート32とスクリーン33とを、中心軸が第1の軸に沿っている保持部35を回動軸としてフレーム13に対して回動自在としている。従って、実施の形態1に係る消火ヘッド1と同様に、プレート32とフレーム13との接続部11やフレーム13自体に過剰な力が負荷されることを防止することができ、作業者に対して適切な方法で、すなわち嵌合部12に工具を嵌合させる方法で接続作業を実施させることができる。
【0050】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3について説明する。この形態は、発泡手段の第1の底面と外周面との連結構造を、第1の底面とは独立に回動自在とした形態である。
【0051】
(消火ヘッドの構成)
まず、消火ヘッドの構成を説明する。図4及び図5は、実施の形態3に係る消火ヘッドの断面図である。なお、実施の形態3の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0052】
図4及び図5に示すように、本実施の形態3に係る消火ヘッド1の発泡部30は、プレートリング36を備えている。プレートリング36は、実施の形態1における連結部321(プレート32とスクリーン33とを連結させるためのもの)をプレート32から独立した構造としたものであり、特許請求の範囲における終端構造体の一部であって、連結構造に対応している。プレートリング36は略輪体として形成され、その内周面にプレート32の外周とスクリーン33の外周とを嵌込させるための連結溝360が設けられている。連結溝360の幅は、プレート32の外周における厚さとスクリーン33の外周における厚さとを合計した値よりも大きい。また、連結溝360の底部におけるプレートリング36の内径はプレート32の外径及びスクリーン33の外径よりも大きい。さらに、連結溝360を形成する凸段部におけるプレートリング36の内径はプレート32の外径及びスクリーン33の外径よりも小さい。従って、プレートリング36を、連結溝360に嵌込されているプレート32を軸として自在に回動させることができる。
【0053】
ここで、連結溝360に嵌込されているスクリーン33は、図4に示すようにプレートリング36に固定されている。また、スクリーン33とフレーム13とは所定の間隔を隔てて配置され、相互に非接触に配置されている。従って、プレートリング36とスクリーン33とをフレーム13に対して自在に回動させることができる。
【0054】
また、図5に示すように、スクリーン33のフレーム挿通穴330をフレーム13に設けた溝に嵌合させることにより、当該スクリーン33をフレーム13に固定してもよい。この場合、スクリーン33はプレートリング36の連結溝360に対しては固定されず摺動自在に嵌込されているので、プレートリング36を、プレート32及びスクリーン33を軸としてフレーム13に対して自在に回動させることができる。
【0055】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、プレート32とスクリーン33とを連結しているプレートリング36を、中心軸が第1の軸に沿っているプレート32を回動軸としてフレーム13に対して回動自在としている。すなわち、発泡部30におけるフレーム13とは反対側の底面の外周に位置しているプレートリング36をフレーム13に対して回動自在としたことにより、消火ヘッド1の接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい部分を回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッド本体10には力が伝達されず、消火ヘッド1に変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0056】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4について説明する。この形態は、拡散手段が有する略円板体を回動自在とした形態である。
【0057】
(消火ヘッドの構成)
まず、消火ヘッドの構成を説明する。図6は、実施の形態4に係る消火ヘッドの断面図である。なお、実施の形態4の構成は、特記する場合を除いて実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたのと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0058】
(消火ヘッドの構成−拡散部40)
図6に示すように、本実施の形態4に係る消火ヘッド1は、実施の形態1における発泡部30に代えて、フレーム13における接続ねじ11aとは反対側の端部に拡散部40を備えている。拡散部40は、放出口15から放出された消火剤を拡散させて、消火ヘッド1の周囲に放射させるためのものであり、特許請求の範囲における終端構造体及び拡散手段に対応している。拡散部40は、実施の形態1における発泡部30と同様に、デフレクタ41、固定ボルト31、及び、プレート32を備えているが、スクリーン33を備えていない。
【0059】
デフレクタ41は、放出口15から放出された消火剤を拡散させる略円板であり、放出口15の開口面に対して略平行に、フレーム13における接続ねじ11aとは反対側の端部近傍において当該フレーム13に固定されている。
【0060】
本実施の形態4におけるプレート32は、消火ヘッド1の接続作業時において作業者がデフレクタ41を把持して接続作業を実施しないようにするために、当該デフレクタ41のカバーとして設けられているものであり、特許請求の範囲における終端構造体の一部であって、略円板体に対応している。プレート32は、フレーム13における接続ねじ11aとは反対側の端部に配置されている。なお、プレート32の形状、フレーム13に対するプレート32の固定方法、及び、プレート32をフレーム13に固定するための固定ボルト31については実施の形態1と同様であり、当該プレート32は固定ボルト31を回動軸としてフレーム13に対して回動自在に固定されている。
【0061】
なお、デフレクタ41とプレート32とを相互に一体とすることにより、フレーム13に回動自在に固定されているプレート32によって消火剤を拡散させるようにしても良い。
【0062】
(実施の形態4の効果)
このように実施の形態4によれば、フレーム13における接続ねじ11aとは反対側の端部には拡散部40が配置されている。拡散部40は略円板体であるプレート32を備えており、その中心軸は第1の軸に沿うように配置されている。このように、消火ヘッド1の接続作業を実施する作業者にとって特に把持しやすい位置に配置されているプレート32をフレーム13に対して回動自在としているので、作業者が不適切な方法で作業を行おうとした場合でも消火ヘッド本体10には力が伝達されず、消火ヘッド1に変形や破損が生じることを非常に効果的に防止することができる。
【0063】
〔III〕各実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0064】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0065】
(各実施の形態の相互の関係について)
上記説明した各実施の形態は、任意の組み合わせで相互に組み合わせることができる。例えば、実施の形態3におけるプレートリング36と、実施の形態4における拡散部40とを組み合わせることにより、プレート32がフレーム13に固定されており、当該プレート32を回動軸としてプレートリング36が回動自在な拡散部40を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明に係る消火ヘッドは、火災発生による熱を感知して消火剤を放出させる消火ヘッドに適用でき、当該消火ヘッドの設置作業時において、作業者によって不適切な方法で作業が行われようとしても当該消火ヘッドの破損や変形を防止することができ、汎用工具を用いた場合でも当該消火ヘッドの破損や変形を防止できる消火ヘッドに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1に係る消火ヘッドの外観図であり、図1(a)が消火ヘッドの正面図、図1(b)が消火ヘッドの側面図、図1(c)が消火ヘッドの底面図である。
【図2】図1(b)におけるA−A断面を示した側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る消火ヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る消火ヘッドの断面図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係る消火ヘッドの断面図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る消火ヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 消火ヘッド
10 消火ヘッド本体
11 接続部
11a 接続ねじ
12 嵌合部
13 フレーム
14 鍔体
15 放出口
20 感熱部
21 弁体
22 感熱体
30 発泡部
31 固定ボルト
31a ねじ部
31b 頭部
31c 段部
32 プレート
33 スクリーン
34 デフレクタ
35 保持部
36 プレートリング
40 拡散部
41 デフレクタ
130 孔部
320 挿通穴
321 連結部
330 フレーム挿通穴
350 固定穴
351 保持溝
360 連結溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤の供給口に対してねじ込み接続される接続ねじと、
前記供給口から供給された消火剤の放射経路に介在する終端構造体と、
前記終端構造体を支持するフレームと、を備え、
前記終端構造体の少なくとも一部を、前記接続ねじの中心軸に沿った回動軸を中心として回動自在としたこと、
を特徴とする消火ヘッド。
【請求項2】
前記フレームは、前記接続ねじの中心軸と略平行に当該接続ねじの頭部から当該接続ねじの先端とは反対側に向かって延設され、
前記終端構造体は、外部に露出した略円板体または略円筒体を有し、当該略円板体または略円筒体の中心軸が前記接続ねじの中心軸に沿うように、前記フレームにおける前記接続ねじとは反対側の端部に固定されていること、
を特徴とする請求項1に記載の消火ヘッド。
【請求項3】
前記終端構造体は、前記供給口から供給された消火剤を拡散させる拡散手段であり、前記略円板体を有していること、
を特徴とする請求項2に記載の消火ヘッド。
【請求項4】
前記終端構造体は、前記供給口から供給された消火剤を発泡させる発泡手段であり、前記略円筒体を有していること、
を特徴とする請求項2に記載の消火ヘッド。
【請求項5】
前記略円筒体の両底面のうち前記フレームとは反対側にある第1の底面が前記回動軸を中心として回動自在であること、
を特徴とする請求項4に記載の消火ヘッド。
【請求項6】
前記略円筒体の両底面のうち前記フレームとは反対側にある第1の底面と当該略円筒体の外周面との連結構造が、前記第1の底面とは独立に前記回動軸を中心として回動自在であること、
を特徴とする請求項4に記載の消火ヘッド。
【請求項7】
前記発泡手段は、前記略円筒体の外周面に網体を備え、
前記網体は、前記回動軸を中心として回動自在であること、
を特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の消火ヘッド。
【請求項8】
前記終端構造体の外周を前記回動軸に沿って投影した空間の内部に前記フレームを含んでいること、
を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の消火ヘッド。
【請求項9】
前記接続ねじを回転させる工具が嵌合される嵌合部を備え、
前記嵌合部は、当該嵌合部と前記フレームとの間に当該嵌合部よりも外径の大きい鍔体を備えること、
を特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の消火ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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