説明

消火薬剤

【課題】 ISO 7203で要求されている消火の迅速性、耐焔性、液状危険物の汚染に関する耐久性、再着火防止性等の消火性能を満たす消火薬剤を提供すること。
【解決手段】 ナフタレン等の炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤を必須成分とすることを特徴とする、強化液、合成界面活性剤泡消火薬剤、水成膜泡消火薬剤、水溶性高分子添加型フッ素系泡消火薬剤、フッ素系合成界面活性剤添加型蛋白泡消火薬剤等の用途に有用な消火薬剤、更に、フッ素系界面活性剤を含有する消火薬剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火薬剤に関し、詳しくは、一般建物火災、都市や市街地火災、各種液状危険物火災、危険物設備火災、自動車火災、トンネル火災、航空機火災、地下駐車場火災、地下街火災等の各種火災を消火する為の、消火薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水に希釈して適用する消火薬剤としては、主に噴霧やミストの形態で適用する強化液と称される消火薬剤、また主に泡の形態で適用する泡消火薬剤と称される消火剤が広く使用されている。前記強化液は、防炎剤、酸化防止剤、合成界面活性剤、付着剤等を主成分とし、一般建物火災や、一部の液体危険物火災に使用されている。
【0003】
一方、泡消火薬剤は、合成界面活性剤を主成分とする「合成界面活性剤泡消火薬剤」、牛のヒズメや血液等の動物性蛋白質を加水分解した物を主成分とする「蛋白泡消火薬剤」、フッ素系合成界面活性剤を主成分とする「水成膜泡消火薬剤」が開発され、更に近年ではフッ素系界面活性剤を主成分とする泡消火薬剤に水溶性又は水分散性の高分子を添加した「水溶性高分子添加型フッ素系泡消火薬剤」や「フッ素系合成界面活性剤添加型蛋白泡消火薬剤」が開発され、対象危険物の種類や、泡消火薬剤の製品寿命、高発泡や低発泡等のアプリケーションシステムの種類、火災リスクに対する経済的な効果等に応じて、また各種泡消火薬剤の特質に応じて使い分けされてきた。
【0004】
ところが、現実には、近年続いて発生した浮き屋根式タンクの全面火災や大型化学品製造工場の全面火災において、消火が困難を極め、実質的には危険物が燃え尽きる状況に近い段階で、漸くにして消火できた状況であり、社会的にも大きな波紋を及ぼした。消火用資機材、消火戦術や訓練、消火体制等の見直しが叫ばれる一方、いずれの場面でも、各種消火薬剤の各種用途に於いて、それぞれの消火薬剤の消火性能を更に一層向上する事が急務であることが、危険物施設を有する企業、公設消防組織、地方自治体等、各方面から強く望まれ、叫ばれるに至った。実際の火災の状況をより忠実に再現する事を目指し、ISO 7203に定めるように、ノズルから泡を空中に放射して、1m前後の高さからオイルパンの中央部に突入するフォースフルと呼ばれる、より厳しい評価方法が開発され、主流となっている。この様な方法によると、空中に放射された泡が液状危険物に突入し、激しく混じり合い、泡が液状危険物を抱き込む事になり、この条件の悪化した泡による、イ)消火の迅速性、ロ)耐焔性、ハ)液状危険物の汚染に関する耐久性、ニ)再着火防止性等の消火性能が不充分であった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−325493
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、前記の要求される消火性能を満たすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討の結果、芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤が前記課題を解決することを見出し発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤を必須成分とすることを特徴とする消火薬剤、更に、フッ素系界面活性剤を含有する消火薬剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ISO 7203に定めるような消火性能を満たす消火薬剤を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の消火薬剤は「強化液」、「合成界面活性剤泡消火薬剤」、「水成膜泡消火薬剤」、「水溶性高分子添加型フッ素系泡消火薬剤」及び「フッ素系合成界面活性剤添加型蛋白泡消火薬剤」の合成界面活性剤の一部を、炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素の構造を有する界面活性化合物で置き換えた消火薬剤、もしくは各種消火剤に炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素の構造を有する界面活性化合物の界面活性化合物を添加した消火薬剤である。
【0011】
本発明の消火薬剤は、炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤を必須成分とすることを特徴とする消火薬剤であるが、これらの中でも、炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素がナフタレン骨格を含有するものが好ましい。更に、前記炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素が、ナフタレンまたはナフタレン−ホルムアルデヒド重縮合物であることが好ましい。前記ナフタレンまたはナフタレン−ホルムアルデヒド重縮合物中のナフタレン骨格とは、下記、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表されるナフタレン骨格である。
【0012】
また、炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤としては、炭素数2〜4のアルキレン基を有するポリオキシアルキレン骨格及び/またはスルホン酸塩構造を有するものであることが好ましい。
【0013】
前記スルホン酸塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアルカリ土類金属塩からなる群からなる1種以上の塩であることが好ましい。
【0014】
前記炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素がナフタレンである界面活性剤の具体例としては、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表されるナフタレン骨格含有化合物が挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
(前記式(1)中のR11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、下記一般式(3)を表し、R11〜R18の内の少なくとも1つは一般式(3−1)または一般式(3−2)で表される構造を有する。また、前記式(2)中のR21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、下記一般式(3−3)を表し、R11〜R18の内の少なくとも1つは一般式(3)で表される構造を有する。)
【0017】
【化2】

【0018】
(式(3−1)〜(3−3)中のp、qは、それぞれ独立に、4〜30の繰り返し単位数を表す。)
【0019】
前記一般式(1)、一般式(2)の中でも、前記構造式(3−1)、(3−2)又は構造式(3−2)が、ナフタレン環に1個又は2個結合したものが好ましく、構造式(3−1)、または、(3−2)を有するものが、さらに好ましく、構造式(3−2)の場合が特に好ましい。
【0020】
本発明消火薬剤には、さらに、フッ素系合成界面活性剤を加えて、水成膜形成性を付与することが、高性能な泡消火薬剤を提供する観点から、有効である。前記フッ素系合成界面活性剤としては、フッ素化アルキル基、フッ素化アルキレン基、フッ素化オキシアルキレン基等を含有して界面活性を示す種々のフッ素系界面活性剤を何等問題なく使用することが可能であるが、特に水に対して1.0重量%もしくは0.1重量%で希釈もしくは分散させた際に、その表面張力が23mN/m以下を呈するものが好ましい。
【0021】
前記表面張力はウィルヘルミー法により測定した値である。ウィルヘルミー法は垂直板法、または吊り板法とも呼ばれ、一般に正常なガラスもしくは薄い金属板の末端を液体に垂直に吊るし、この薄板が下方に引かれる力を測定する方法である。力の測定にはねじりはかりのほか、化学はかり、電子はかりなどの種々の方法が使用されている。この方法の特長は浮力の影響や吊り板が清浄であること、液温などの留意点もあるが、操作が簡便で信頼できる測定値が得られる点にある。
【0022】
フッ素系界面活性剤としては、カチオン型、アニオン型、両性型、ノニオン型が挙げられるが、特に限定されない。
【0023】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、(PFA)j1−(Frame)−(P)j2と表される化合物が挙げられる。〔前記(Frame)は、骨格構造を表し、PFAは、フッ素化アルキル基やフッ素化オキシアルキレン基等を含有する構造単位を示す。フッ素化オキシアルキレン基及びフッ素化ポリオキシアルキレン基等は直鎖でも分枝状でも良く、また、PFAS(パーフルオロアルカンスルフォネート類)、PFAA(パーフルオロアルカネート類)等に代表される電解型、4フッ化エチレンのテロメリゼーションによるテロマー型、もしくはオリゴメリゼーション型、−[(CF−CF)−O]−構造を含む直鎖及び/又は分枝状フッ素化オキシエチレン類等を表し、Pは、フッ素系界面活性剤の親水性・極性構造を表す。また、j、jは結合価数に応じた整数を示す。〕
【0024】
前記PFAとしては、例えば、下記の構造式(PFA1)〜(PFA8)で表される。(下記構造式中のRfは、C2n+1−(但しnは正の整数、好ましくは3〜8、更に好ましくは4〜6)、又は−[(CF−CF)−O]-構造を含む直鎖及び/又は分枝状フッ素化ポリオキシアルキレン類を示し、iは、1〜5、の繰り返し単位数を表し、好ましくは1である。)
【0025】
【化3】

【0026】
前記(Frame)の例としては、下記構造式(F1)〜(F10)で表される構造が挙げられる。(式中の、Rは、それぞれ独立に、水素原子、直鎖もしくは分枝状のアルキル基、直鎖もしくは分枝状のヒドロキシアルキル基を表し、Rは、直接結合、2価のアルキレン基、ヒドロキシ基を有するアルキレン基、2価の芳香族炭化水素基を表し、k、k'は1〜20の整数を表し、jは、1〜30の繰り返し単位数を表す。)
【0027】
【化4】

【0028】
前記フッ素系界面活性剤の親水性・極性構造であるPとしては、例えば、下記構造式P1〜P5が挙げられる。
【0029】
【化5】

【0030】
前記の構造を組み合わせた構造の例として、下記構造式(5−1)〜(5−10)が挙げられる。
【0031】
【化6】

【0032】
これらの中でも、構造式(5−3)、(5−5)、(5−7)が好ましい。
【0033】
前記フッ素系界面活性剤は、水の表面張力を顕著に低下させ、ガソリン等の水不溶性液状危険物の表面に水成膜を形成させることを可能にするものであり、一方では泡が液状危険物を抱き込む作用を退ける作用を示し、拠って、イ)消火の迅速性、ロ)耐焔性、ハ)液状危険物の汚染に関する耐久性、ニ)再着火防止性等の消火性能を向上する一端を担う。本発明に係る消火薬剤においては、上記一般式(3)で表されるフッ素系界面活性剤を1種のみ、又は複数種を何れの組み合わせで用いても良い。
【0034】
前記多芳香環構造を含む界面活性化合物の含有量は、当該消火薬剤を、水でどのように希釈して用いるかに大きく依存するが(この場合の希釈濃度を適用濃度という)、消火薬剤の均一性、粘度、流動点、比重等の物理物性的諸性条件を満足すれば制限されないが、0.1〜10重量%が好ましい。
【0035】
本発明の消火薬剤にフッ素系界面活性剤を加えて用いる場合、その混合割合は、特に限定されないが、例えば、炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤100重量部当たり、フッ素系界面活性剤20〜500重量部添加することが好ましい。
【0036】
本発明の消火薬剤は、弱酸性〜弱塩基性の領域で用いることが好ましく、生体への安全性または各種金属製、プラスチック製タンク等の貯蔵容器の腐食性から中性領域で使用することが望まれ、耐腐食性の観点から中性〜弱塩基性の領域が特に好ましい。
【0037】
本発明の消火薬剤には、更に、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。添加剤としては、付加的泡安定剤、凝固点降下剤、防錆剤、緩衝剤、水溶性有機溶剤等が挙げられる。
【0038】
前記付加的泡安定剤には主に発泡倍率あるいは泡の還元時間(ドレネージ)を調節するために添加され、例としてポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ、ポリプロピレングリコール、ポリビニル樹脂、天然物由来の多糖類やガム類、ポリエチレンイミン、自然界由来のタンパク質やこれを加水分解した加水分解タンパク質、ポリアクリルアミド、(変性)ポリエチレングリコール、などがある。
【0039】
凝固点降下剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、セロソルブ類(エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ)、カルビトール類(エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキシルカルビトール、オクチルカルビトール)、低級アルコール(イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、(変性)ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、アラビアガム等の天然ガム類、尿素、あるいは各種無機塩類などがある。
【0040】
防錆剤、緩衝剤としては、種々のものを使用することができ、特に限定されるものではない。
【0041】
前記水溶性有機溶剤とは、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類、アミン等の含窒素有機化合物、含硫黄有機化合物等が挙げられる。更に具体的には、エチレングリコール、ブチルジグリコール、ヘキシルカルビトール等のアルコール系水溶性有機溶剤が挙げられる。
【0042】
本発明の消火薬剤は、希釈液中の前記水溶性有機溶剤の濃度が、1重量%以下となる場合、更に好適には0.5重量%以下となる場合に、フォースフル法(ISO 7203)に於いて新たに求められる消火性能の、泡の「耐焔性」が著しく向上することを見出したことにある。泡の耐焔性は、消火後一定時間放置し、耐火性試験のために泡の中央部にポットによる火源を設けた場合の、火炎の広がり具合(フレームアップ又はバーンアップと呼ばれる)で評価される性能である。
【0043】
更に、本発明に係る消火薬剤には、発泡性能の補助的な目的から、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性等の、一般の炭化水素系界面活性剤も、加えて用いてもよい。例えば、アルキルスルホン酸系、アルキルアミノ系、アルキル−ポリオキシエチレン及び又はポリオキシプロピレン系、アルキルベタイン系、特開2000−325493号記載のポリオキシエチレンアルキルフェノール系等の炭化水素系合成界面活性等が挙げられる。
【0044】
本発明の消火薬剤は種々の方法、例えば(1)すなわち空気、窒素、炭酸ガス、ジフロロジクロロメタンのような低沸点フロロカーボン類または適当な不燃性気体を吹き込むか混ぜることによって泡の形態で形成する方法、(2)ノンアスピレートノズルと称するノズルで適用濃度に希釈した希釈液のみを空中に放出し、しかる後空中で空気と混合し泡となる事により泡の形態で形成する方法(毎分1万リットル以上の大容量の泡希釈液を放射する消火システム(大容量泡放射システム)等)、(3)水面下泡注入(SSI)システムでは4倍程度の低発泡の形態で形成する方法、(4)噴霧又はミスト放射システム、モニターノズル放射システム等では液滴やミストの形態で形成する方法等に適用することができる。
【0045】
また、本発明の消火薬剤は濃厚溶液として貯蔵し、使用時に通常の方法、例えば、濃厚溶液を消火装置または放射ノズルに至る途中から水流中に流し込むことにより希釈度を調節し、火面の上方または表面下より放射または送り込む方法により適用することができる。また、あらかじめ水で使用濃度に希釈して、消火器、駐車場消火設備、危険物固定消火設備、パッケージ型消火設備等に充填して使用することも可能である。
【0046】
本発明に係る消火薬剤の放射方法については、種々の消火薬剤用途に使用される放射ノズルであればいずれのノズルを用いても、所望の性能を発揮する。これらのノズルとしては、例えば、石油タンク等に最も汎用に用いられるフォームチャンバーやISO規格に則したノズル、UN規格に則したノズル、化学消防車等に装備・付属されている泡ノズル、ハンドノズル、エアフォームハンドノズル、SSI用ノズル、日本舶用品協会規定のHKノズルや、駐車場消火設備に用いられるフォームヘッド等が挙げられる。また、本発明の消火薬剤は、閉鎖型スプリンクラーヘッド、開放型スプリンクラーヘッドのような噴霧ヘッドやミストヘッドにおいても好適に用いることができる。勿論、適用濃度に希釈した希釈液のみを空中に放出し、しかる後空中で空気と混合し泡とする、ノンアスピレートノズルでも好適に用いることができる。
【0047】
本発明の消火薬剤は、種々の放射方法で使用することができることより、これまで従来の消火薬剤に比して広範囲の用途における使用に供することができる。具体的な用途例としては、公設消防機関が保有する化学消防車、原液搬送車への配備が可能なことは勿論であり、加えて原油タンクや危険物施設を所有する石油基地や工場関係、空港施設、危険物が積載される港湾施設および船舶、ガソリンスタンド、地下駐車場、ビル、トンネル、橋梁等が挙げられる。また、本発明に係る消火薬剤は従来の消火薬剤に比べて浸透力が向上していることから、危険物火災以外の一般火災、例えば家屋等の木材火災、タイヤ等のゴム、及びプラスチック火災に対しても好適に使用することができる。
【0048】
また、本発明の消火薬剤は重炭酸ソーダ、重炭酸カリ、重炭酸マグネシウム、硫酸アンモン、リン酸アンモン、炭酸カルシウムなどを成分とする粉末消火剤、蛋白泡消火薬剤、合成界面泡消火薬剤等と併用することができる。
【実施例】
【0049】
次に実施例により本発明をさらに詳しく説明する。以下の実施例および比較例で、組成部数は全て重量部を、希釈率%は全て容量パーセントを、表す。またISO−7203(I−A)による評価(評価基準1)の一覧に示した。
【0050】
後述する実施例と比較例では、前記評価基準1において、消火時間が8分以内であったものを○、消火時間が8分を経過しても消火できなかったものを×と表示する。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1
市販の消火薬剤(泡第60−1号)の有効成分の60部と、炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤で置き換えた消火薬剤40部(オキシエチレンの繰り返し単位15のポリオキシエチレン・2−ナフチルエーテル3部と水37部)を用いて、ISO−7203(I−A)による評価(評価基準1)で、消火した時間を調べた。火災を完全に消火する事が出来るまで消火時間は3分17秒であった。判定(○)
【0053】
比較例−1
市販の消火薬剤(泡第60−1号)を用いて、ISO−7203(I−A)による評価(評価基準1)で、消火した時間を調べた。放射開始から8分間では、火災を完全に消火できなかった。判定(×)
【0054】
実施例2
オキシエチレンの繰り返し単位18のポリオキシエチレン・2ナフチルエーテルサルフェートナトリウム塩6部、前記構造式(5−9)で表されるフッ素系界面活性剤5部、エチレングリコール10部、ブチルジグリコール20部、ヘキシルカルビトール5部、水54部からなる消火薬剤を調製し、実施例1と同様に消火試験を行った。火災を完全に消火する事が出来るまで消火時間は1分43秒であった。判定(○)
【0055】
実施例3
オキシエチレンの繰り返し単位15のポリオキシエチレン・2−ナフチルエーテル3部、ポリオキシエチレンの繰り返し単位18のポリオキシエチレン・2ナフチルエーテルサルフェートナトリウム塩3部、前記構造式(5−10)で表されるフッ素系界面活性剤5部、エチレングリコール10部、ブチルジグリコール20部、ヘキシルカルビトール5部、水54部からなる消火薬剤を調製し、実施例1と同様に消火試験を行った。火災を完全に消火する事が出来るまで消火時間は1分18秒であった。判定(○)
【0056】
実施例4
オキシエチレンの繰り返し単位15のポリオキシエチレン・2−ナフチルエーテル3部、オキシエチレンの繰り返し単位18のポリオキシエチレン・2ナフチルエーテルサルフェートナトリウム塩3部、前記構造式(5−10)で表されるフッ素系界面活性剤6部、エチレングリコール5部、ブチルジグリコール5部、水79部からなる消火薬剤を調製し、実施例1と同様に消火試験を行った。火災を完全に消火する事が出来るまで消火時間は1分46秒であった。判定(○)
【0057】
実施例5
オキシエチレンの繰り返し単位15のポリオキシエチレン・2−ナフチルエーテル3部、オキシエチレンの繰り返し単位18のポリオキシエチレン・2ナフチルエーテルサルフェートナトリウム塩3部、前記構造式(5−10)で表されるフッ素系界面活性剤5部、エチレングリコール7.5部、ブチルジグリコール7.5部、ヘキシルカルビトール5部、水79部からなる消火薬剤を調製し、実施例1と同様に消火試験を行った。火災を完全に消火する事が出来るまで消火時間は1分18秒であった。判定(○)
【0058】
比較例2
前記構造式(5−9)で表されるフッ素系界面活性剤5部、エチレングリコール10部、ブチルジグリコール20部、ヘキシルカルビトール5部、オキシエチレンの繰り返し単位20のポリオキシエチレンノニルフェノール6部、水54部からなる消火薬剤を調製し、実施例1と同様に消火試験を行った。放射開始から8分間では、火災を完全に消火できなかった。判定(×)
下記に、実施例と比較例の判定結果をしめす。
【0059】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素を含有する界面活性剤を必須成分とすることを特徴とする消火薬剤。
【請求項2】
前記炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素がナフタレン骨格を含有するものである請求項1記載の消火薬剤。
【請求項3】
炭素数9〜14の芳香族縮合多環炭化水素が、ナフタレンまたはナフタレン−ホルムアルデヒド重縮合物である請求項2記載の消火薬剤。
【請求項4】
前記ナフタレン骨格を含有する界面活性剤が、炭素数2〜4のアルキレン基を有するポリオキシアルキレン骨格及び/またはスルホン酸塩構造を有する界面活性剤である請求項2又は3記載の消火薬剤。
【請求項5】
前記スルホン酸塩が、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアルカリ土類金属塩からなる群からなる1種以上の塩である請求項3記載の消火薬剤。
【請求項6】
前記ナフタレン骨格を含有する界面活性剤が一般式(1)及び/又は一般式(2)で表されるナフタレン骨格含有化合物を含有する請求項3記載の消火薬剤。
【化1】

(前記式(1)中のR11〜R18は、、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、下記一般式(3)を表し、R11〜R18の内の少なくとも1つは一般式(3−1)または一般式(3−2)で表される構造を有する。また、前記式(2)中のR21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、下記一般式(3−3)を表し、R11〜R18の内の少なくとも1つは一般式(3)で表される構造を有する。)
【化2】

(式(3−1)〜(3−3)中のp、qは、それぞれ独立に、5〜30の繰り返し単位数を表す。)
【請求項7】
前記ナフタレン骨格含有化合物が一般式(1)である請求項2記載の消火薬剤。
【請求項8】
更に、フッ素系界面活性剤を含有する請求項1〜7の何れか1つに記載の消火薬剤。

【公開番号】特開2007−252731(P2007−252731A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82720(P2006−82720)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】