説明

消火設備における自動ガス抜きノズル

【課題】配管内に溜めたガスを自動的に外部に排出し、圧力異常上昇による不慮事故等の発生を防ぐことができ、消火設備に排気するための開閉弁を設けなくてもよい。
【課題手段】
消火設備100において、メイン配管50は自動ガス抜きノズル61と連通して、上記自動ガス抜きノズル61はシリコンシート61dと焼結材料エレメント61cのフィルタを有し、上記シリコンシート61dは、水を透過せずガスを透過することができ、上記焼結材料エレメント61cは、水を通過することができるとともに、上記シリコンシート61dを固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場、ビル内またはトンネル内に設置されるスプリンクラ、消火栓等の消火設備における配管の漏洩防止に関する内容である。
【背景技術】
【0002】
従来の消火設備は、通常にポンプ等加圧送液装置で加圧し、工場やビルの各階に設置したスプリンクラや消火栓などの消火装置に、あるいは高速道路トンネルの所定間隔で設置した泡消火栓などの消火装置に、消火配管を介して消火液を満たしている。火災が発生すると、火災感知器やスプリンクラヘッドが火災の発生を検出して、所定のスプリンクラのノズルを開にして消火液を散布したり、消防ホースを消火栓に接続し消火栓の弁を開にして消火ノズルから消火液を噴射したりして、消火を行うようになっている。
【0003】
消火配管として使われている配管は、通常は内面に亜鉛でメッキされている。亜鉛は消火装置に常時加圧されている消火液に接触して、長期間のうちに亜鉛イオンは消火液中の水のヒドロキシイオン(OH-)と化学反応を起し、水酸化亜鉛を生成するとともに、水素ガスを発生している。
【特許文献1】特開2002―355330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消火配管内に水素のような生成ガスを発生すると、長い間に管内の圧力が次第に上昇し、その結果消火設備の密閉性に悪影響を与え、消火液の漏洩事故等のトラブルを発生させる恐れがある。所定の圧力を超えると弁が開放し、圧力が下がると弁が再び閉鎖する排気弁のような装置を設けて、上記の問題が解決できるではないかと考えられるが、本件の場合には、排気弁が開放すると消火液も排出されてしまうことから、排気弁の方法はあまり有効ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係わる消火設備における自動ガス抜きノズルは、上述の問題を解決するためになされたもので、消火液が配管内に常時充満され、火災が発生した際、上記消火液が加圧送液装置によって加圧され、消火ノズルを介して火源に散布する消火設備において、上記配管は自動ガス抜きノズルと連通して、上記自動ガス抜きノズルは、シリコンシートと焼結材料エレメントのフィルタを有することを特徴とする。
【0006】
また、上記シリコンシートは、水を透過せずガスを透過することができることを特徴とする。
【0007】
また、上記焼結材料エレメントは、水を通過することができるとともに、上記シリコンシートを固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消火液が配管内に常時充満され、火災が発生した際、上記消火液が加圧送液装置によって加圧され、消火ノズルを介して火源に散布する消火設備において、上記配管は自動ガス抜きノズルと連通して、上記自動ガス抜きノズルは、シリコンシートと焼結材料エレメントのフィルタを有することを特徴とするため、配管内に溜めた生成ガスは自動的に当該ガス抜きノズルのフィルタを介して外部に排出され、圧力異常上昇による不慮事故等の発生を防ぐことができ、また消火設備に排気するための開閉弁を設けなくてもよい。
【0009】
また、上記シリコンシートは、水を透過せずガスを透過することができることを特徴とするため、配管内に溜めた生成ガスを排出しても、消火液が排出されない。したがって消火液が配管から外部へ漏れることなく、消火設備の密閉性を保つことができる。
【0010】
また、上記焼結材料エレメントは、水を通過することができるとともに、上記シリコンシートを固定することを特徴とするため、焼結材料エレメントがシリコンシートを補強し、配管本来の耐圧強度を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明を利用する消火設備の系統図の一例を図1に示し、自動ガス抜きノズルの取り付けを図2に示し、そして自動ガス抜きノズルの構造を図3に示して、以下にそれらの構成を簡単に説明する。
【0012】
図1に示されるように、消火設備100は、加圧送水装置としてのポンプ11、モータ12と、水源13と、建物の縦方向に貫通するメイン配管50と、そのメイン配管50から各階ごとに分岐する枝配管51と、枝配管51ごとに設けられる制御弁16および流水検知装置17と、各階に設置される消火栓20およびスプリンクラヘッド30と、屋上RFに設ける高架水槽18と、から構成されている。また、電気系統として、流水検知信号を制御する受信機15と、加圧送水装置をコントロールする制御盤14とから構成されている。この消火設備100は、消火活動に備えるために、常時にメイン配管50や枝配管51に充水している。
【0013】
なお、屋上RFの高架水槽18の横に、ガス抜き装置60がメイン配管50に取付けられている。
【0014】
図2は上記ガス抜き装置60の取り付け様子を示している。該ガス抜き装置60は自動ガス抜きノズル61とガス溜チャンバー62とで構成され、ガス溜チャンバー62は、例えば溶接でメイン配管50と連通するようにしている。
【0015】
図3は、自動ガス抜きノズル61の詳細構造の断面図である。図に示すように、該自動ガス抜きノズル61は、本体61aと、キャップ61bと、シリコンシートを挟持する2つの焼結材料エレメント61c、すなわち焼結材料エレメント一次側61c1と焼結材料エレメント二次側61c2と、水を透過せずガスのみを透過する性質を持つシリコンシート61dと、密閉用Oリング61eと、スライドワッシャ61fとで構成されている。
【0016】
焼結材料エレメント61cの材質は、金属或いはセラミックスの粉末で焼結した多孔性を有するのもで、水を濾過できるおよびメイン配管50の所定耐圧強度を保てばよいとする。
【0017】
また、シリコンシート61dは、水分子を透過せずガス分子を透過できるようなシリコンゴム膜を採用し、例えば、水素ガスの透過率=6.5×10-8(cc・cm)/(sec・cm2・cmHg)のシリコンゴム膜を使い、ゴム膜の厚さを0.2cm、透過面積を30cm2、水素ガスの圧力を1気圧(76cmHg)、1日(86400sec)経過の条件で試算すると、約64cc(64ml)の水素ガスを透過することができる。
【0018】
次に、上記自動ガス抜きノズルの作用を簡単に説明する。
【0019】
消火設備100のメイン配管50または枝配管51は、亜鉛メッキの配管を使われて、常時に消火用水を満たしている。長期間のうちに、亜鉛イオンと水のヒドロキシイオン(OH-)の間に化学反応を起し、水酸化亜鉛と水素ガスが生成する。消火設備100は閉鎖的なシステムなので、この生成ガスが時間の経過につれメイン配管50または枝配管51に溜まり、次第に管内の圧力が高くようになる。
【0020】
この場合、ガスが水より軽いので、生成ガスが配管50を通して上方の上昇し、ついに屋上RF側のガス抜き装置60に到達して、ガス溜チャンバー62に溜めている。続いてこの溜めた生成ガスが、焼結材料エレメントの一次側61c1、シリコンシート61d、焼結材料エレメントの二次側61c2の順で透過して、外部(大気)に放出する。生成ガスがシリコンシート61dを透過するとき、当該シリコンシートの特性で水が透過することができないので、生成ガスの中に水が混ぜられてもシリコンシートに遮断され、水が外部に排出されることはない。よって、メイン配管51や枝配管51中に生成ガスがなくなり、消火用水しかない正常な状態に戻る。
【0021】
ここで、配管内の生成ガスを容易に外部に抜き出させるため、この自動ガス抜きノズルを消火設備の上部に取付けることを望ましい。本実施例は該自動ガス抜きノズル61を屋上RFにあるメイン配管50に設置したが、このことを限らずに、生成ガスが溜めやすい場所、例えば枝配管51の上部に設置して、枝配管51に溜めた生成ガスを抜き出すようにすることができる。
【0022】
上記実施形態1における消火設備100において、メイン配管50は自動ガス抜きノズル61と連通して、上記自動ガス抜きノズル61は、シリコンシート61dと焼結材料エレメント61cのフィルタを有することを特徴とし、また、上記シリコンシート61dは、水を透過せずガスを透過することができることを特徴とし、さらに、上記焼結材料エレメント61cは、水を通過することができるとともに、上記シリコンシート61dを固定することを特徴とする自動ガス抜きノズルである。
【0023】
このような自動ガス抜きノズル61を用いることにより、配管50等への充水当初にできやすい空気溜を排気して完全に充水することもできる。また、水と混合する薬剤がガスを発生する性質を有していても、異常圧力となる恐れがなく、安心してその薬剤を使うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る消火設備の系統図
【図2】自動ガス抜きノズルの取り付け様子
【図3】自動ガス抜きノズルの断面構造
【符号の説明】
【0025】
20 消火栓
30 スプリンクラヘッド
50 メイン配管
51 枝配管
60 ガス抜き装置
61 自動ガス抜きノズル
61a 本体
61b キャップ
61c 焼結材料エレメント
61d シリコンシート
100 消火設備












【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火液が配管内に常時充満され、火災が発生した際、上記消火液が加圧送液装置によって加圧され、消火ノズルを介して火源に散布する消火設備において、
上記配管は自動ガス抜きノズルと連通して、
上記自動ガス抜きノズルは、シリコンシートと焼結材料エレメントのフィルタを有することを特徴とする消火設備における自動ガス抜きノズル。
【請求項2】
上記シリコンシートは、水を透過せずガスを透過することができることを特徴とする請求項1記載の消火設備における自動ガス抜きノズル。
【請求項3】
上記焼結材料エレメントは、水を透過することができるとともに、上記シリコンシートを固定することを特徴とする請求項1または2記載の消火設備における自動ガス抜きノズル。















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−247237(P2006−247237A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70473(P2005−70473)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】