説明

消炎鎮痛外用剤

支持体と粘着基剤からなる貼付剤であって、粘着基剤中に少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子と非ステロイド系消炎鎮痛剤とを含有し、さらにUVA遮断剤及び/またはUVB遮断剤を前記ゴム系高分子の安定化剤として配合してなる貼付剤に関し、前記貼付剤は、粘着基剤の安定性および薬剤の皮膚浸透性に優れるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主鎖に二重結合を有するゴム系高分子、非ステロイド系消炎鎮痛剤、ならびにUVA遮断剤および/またはUVB遮断剤を基剤の安定剤として配合する、貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤は皮膚表面に貼り付けて使用するため、適用部位によっては屋外において太陽光線の照射を受ける場合がある。そのため太陽からの紫外線により分解されやすい化合物を含有する貼付剤においては、基剤中薬物が分解して本来の薬効を発現できなかったり、その光分解物が副作用を誘発したりする等の問題があった。
【0003】
このような紫外線による影響を避ける工夫として、貼付剤の基剤中または支持体中に紫外線遮断剤を添加等することが、一般的に試みられている。
たとえば、光に不安定なケトプロフェンを安定化するために、紫外線吸収剤等を基剤中に添加する外用経皮製剤や(特許文献1参照)、非ステロイド系抗炎症剤の光過敏症の抑制のために酸化チタンを添加した抗炎症皮膚外用剤(特許文献2参照)、紫外線曝露による炎症及びその結果生じる肌荒れ等を防止する皮膚外用剤(特許文献3)等が知られている。また、貼付剤の支持体に紫外線吸収・遮断剤を添加または練り込んだ貼付剤(特許文献4〜7参照)等も報告されている。
【0004】
【特許文献1】特公平5−8169号公報
【特許文献2】特開平9−169658号公報
【特許文献3】特開2000−136122号公報
【特許文献4】特開平3−76285号公報
【特許文献5】実開平5−30118号公報
【特許文献6】特開平10−265371号公報
【特許文献7】国際公開01/68061号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、非ステロイド系抗炎症鎮痛剤を含む貼付剤の開発を進める中で、非ステロイド系抗炎症鎮痛剤および主鎖に二重結合を有するゴム系高分子を粘着基剤中に含む貼付剤が、紫外線の照射等により劣化してべたつきや糸引き等が起こるという、これまでに知られていない問題点に遭遇し、かかる問題を解決するための研究を進めた。
即ち、本発明の課題は、主鎖に二重結合を有するゴム系高分子、非ステロイド系消炎鎮痛剤を粘着基剤中層に含有する貼付剤において、前記問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、主鎖に二重結合を有するゴム系高分子は、高分子単独でも紫外線に対し劣化しやすく、光安定性が悪いだけでなく、非ステロイド系抗炎症鎮痛剤と組みあわせて使用された場合、該薬剤の紫外線照射等による分解により生じるラジカルが、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体などの少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子の劣化を著しく促進させるというこれまで知られていない全く新しい知見を見いだした。
【0007】
そこで、本発明者らは、さらに研究を進めた結果、非ステロイド系抗炎症鎮痛剤の分解を効果的に抑制するUVA遮断剤および/またはUVB遮断剤を添加することによって、ラジカルの発生による二重結合を有するゴム系高分子の劣化を防止できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、支持体と粘着基剤からなる貼付剤であって、粘着基剤中に少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子、非ステロイド系消炎鎮痛剤を含有し、さらにUVA遮断剤及び/またはUVB遮断剤を二重結合を有するゴム系高分子の安定化剤として配合する、前記貼付剤に関する。
また、本発明は少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子が、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエンからなる群から選択される、前記貼付剤に関する。
さらに本発明は、非ステロイド系消炎鎮痛剤が、ケトプロフェン、チアプロフェン酸、スプロフェン、トルメチン、カルプロフェン、ベノキサプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、ベンジダミン、ナプロキセン、フェルビナク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ジフルニサール、アザプロパゾン、エトドラック、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブおよび薬学的に許容し得る塩からなる群から選択される、前記貼付剤に関する。
【0009】
本発明は、UVA遮断剤が、ジベンゾイルメタン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体からなる群から選択される、前記貼付剤に関する。
また本発明は、UVA遮断剤が、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルホン酸、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニール]プロピル]フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−ベンゾトリアゾールからなる群から選択される前記貼付剤に関する。
さらに本発明は、UVB遮断剤が、ベンゾフェノン誘導体、ケイ皮酸誘導体、カンファー誘導体、、アミノ酸系化合物、ベンゾイルピナコロン誘導体からなる群から選択される、前記貼付剤に関する。
【0010】
本発明は、粘着基剤中に配合される粘着付与剤が、ロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン酸変性ロジンエステル、テルペン樹脂、石油樹脂から選択される1種または2種以上である、前記貼付剤に関する。
又、本発明は、粘着付与在中に配合される粘着付与剤が、水添ロジンエステルおよびテルペン樹脂の組み合わせである、前記貼付剤に関する。
さらに、本発明は、UVA遮断剤及び/またはUVB遮断剤を粘着基剤中に2〜10質量%含む、前記貼付剤に関する。
更に本発明は、粘着付与剤の配合量が10〜20質量%である、前記貼付剤に関する。
さらにまた本発明は、酸化亜鉛または二酸化チタンをさらに含む、前記貼付剤に関する。
本発明の貼付剤は、少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子および非ステロイド系消炎鎮痛剤を含有する粘着基剤中に、紫外線を効果的に遮断するUVA遮断剤および/またはUVB遮断剤を前記主鎖に二重結合を有するゴム系高分子の安定剤として添加することにより、かかるゴム系高分子の劣化を防止できるため、粘着性能の低下を抑制できるものである。
また、該UVA遮断剤および/またはUVB遮断剤ならびに添加する粘着付与剤やその添加量を調整することにより、非ステロイド系消炎鎮痛剤の皮膚透過性もまた効果的に制御できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の貼付剤の好適な実施について詳細に説明する。
本発明の貼付剤は、粘着基剤中に非ステロイド系消炎鎮痛剤と少なくとも主鎖、に二重結合を有するゴム系高分子、ならびにUVA遮断剤及び/またはUVB遮断剤を二重結合を有するゴム系高分子の安定化剤として配合することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の貼付剤に用いられるUVA遮断剤は、ジベンゾイルメタン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体等であってもよい。
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ベンゾトリアゾール誘導体としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニール]プロピル]フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−ベンゾトリアゾールが、それぞれ好ましい。
本発明の貼付剤において、特に好ましいUVA遮断剤は4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタンである。
本発明の貼付剤に用いられるUVB遮断剤は、ベンゾフェノン誘導体、ケイ皮酸誘導体、カンファー誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾイルピナコロン誘導体等であって、ベンゾフェノン誘導体としては、2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸n−ヘキシルエステル、ケイ皮酸誘導体およびそのエステルとしては、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸イソステアリル等の4−ヒドロキシ−3−メトキシケイ皮酸の分枝鎖状アルキルエステル、カンファー誘導体としては、テレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルホン酸、アミノ酸系化合物としては、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2−ヘキシルエステル、ベンゾイルピナコロン誘導体としては、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−1,3−ペンタンジオンがそれぞれ好ましい。
【0013】
本発明の貼付剤における上記UVA遮断剤および/またはUVB遮断剤の配合量は特に制限されないが、製剤全量を基準として0.5〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。UVA遮断剤および/またはUVB遮断剤の配合量を上記の範囲とすることで、製剤の性能を保ちながら主鎖に二重結合を有するゴム系高分子の劣化を効果的に防止することができる。UVA遮断剤および/またはUVB遮断剤の配合量を上記配合量以上としても劣化防止効果は変わらないが、非ステロイド系消炎鎮痛剤との相互作用により非ステロイド系消炎鎮痛剤の皮膚浸透性を阻害することがあるため、上記範囲内とすることが特に好ましい。
本発明の貼付剤において、さらに酸化亜鉛、二酸化チタン、タルク、カオリン、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機化合物を含んでいても良い。前記無機化合物は0.1μm以下の微粒子として配合する場合には、UVB遮断剤として用いることができ、好ましいのは二酸化チタンである。
本発明の貼付剤は、さらに酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンを含むことができる。ジブチルヒドロキシトルエンを添加することにより、粘着基剤のベタ付き等を改善することができるものである。
【0014】
本発明の貼付剤に用いられる非ステロイド系消炎鎮痛剤として、紫外線により分解してラジカルを発生するものであれば特に制限されず、例えば、ケトプロフェン、チアプロフェン酸、スプロフェン、トルメチン、カルプロフェン、ベノキサプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、ベンジダミン、ナプロキセン、フェルビナク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ジフルニサール、アザプロパゾン、エトドラッグ、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブおよび/またはそれらの薬学的に許容できる塩が挙げられ、中でも構造中にベンゾフェノン類似骨格を有するケトプロフェン、チアプロフェン酸、スプロフェン、トルメチンが好ましく、ベンゾフェノン骨格を有するケトプロフェンが特に好ましい。このような非ステロイド系消炎鎮痛剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明の貼付剤における上記非ステロイド系消炎鎮痛剤の配合量は特に制限されないが、製剤全量を基準として0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜5質量%である。非ステロイド系消炎鎮痛剤の配合量を上記範囲とすることで、製剤安定性を図りながら消炎鎮痛効果を十分に発揮できるものである。
【0016】
本発明の貼付剤に用いる基剤としては、少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子であり、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン等が挙げられる。中でもスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子であれば、側鎖を有する高分子であってもよい。
【0017】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いた場合には、質量平均分子量が100,000〜300,000であることが好ましく、例えばクレイトンD−KX401CSまたはD−1107CU(シェル化学株式会社製)、SIS−5000またはSIS−5002(日本合成ゴム株式会社製)、クインタック3530、3421または3570C(日本ゼオン株式会社製)、ソルプレン428(フイリップペトロリアム株式会社製)が挙げられる。基剤にはこれらスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を1種または2種以上配合することができ、その配合量は、凝集力、作業性を考慮すると、基剤総量基準で好ましくは8〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは13〜30質量%の範囲である。
【0018】
本発明の貼付剤の基剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として前記した重量平均分子量を有するものを、前記した配合割合で含有すること、より好ましくはさらに粘度及び粘着力を調整することにより、皮膚への付着性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される。
【0019】
また、本発明の貼付剤の基剤として、主鎖に二重結合を有するゴム系高分子に加えて、合成ゴムあるいは天然ゴムとしてポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体等を配合してもよい。
【0020】
本発明に係る好ましい粘着基剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の主鎖に二重結合を有するゴム系高分子、ポリイソブチレン等のその他のゴム系高分子、粘着付与剤及び可塑剤を含有するものであり、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン及び粘着付与剤を所望の割合で混合した後、この混合物を可塑剤により前記の粘度になるように調整して得ることができる。本発明の貼付剤の粘着力は、主として粘着性基剤の組成を調整することにより調整することができる。
【0021】
粘着付与剤としては、軟化点が60℃〜150℃のものが好ましく、例えばロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン酸変性ロジンエステル、テルペン樹脂、石油樹脂を用いることができ、特に水添ロジンエステル、テルペン樹脂、石油樹脂が好ましく、水添ロジンエステルおよびテルペン樹脂の組み合わせが最も好ましい。具体的にはエステルガムA、AA−G、H、またはHP(荒川化学株式会社製)、ハリエスターL、S、またはP(播磨化成株式会社製)、パインクリスタルKE−100、またはKE−311(荒川化学株式会社製)、ハーコリンD(理化ハーキュレス株式会社製)、フォーラル85、または105(理化ハーキュレス株式会社製)、ステベライトエステル7、または10(理化ハーキュレス株式会社製)、ペンタリン4820、または4740(理化ハーキュレス株式会社製)、アルコンP−85、またはP−100(荒川化学株式会社製)、エスコレッツ5300(エクソン化学株式会社製)、クリアロンK、M、またはP、YSレジン PX1000、PX1150またはPX1250(ヤスハラケミカル株式会社製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を粘着性基剤に配合することができる。
粘着付与剤の配合量は、基剤総量基準で好ましくは3〜50質量%、より好ましくは5〜45質量%、さらにより好ましくは7〜40質量%であり、基剤の粘度及び粘着力が前記した範囲になるように調整される。この配合割合にすることにより、得られる基剤の粘着力、皮膚への付着性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される。また上記粘着付与剤は、非ステロイド系高消炎鎮痛剤ならびに、UVA遮断剤および/またはUVB遮断剤との併用による相互作用により、非ステロイド系消炎鎮痛剤の皮膚浸透性に影響を与えることが見いだされた。従って、UVA遮断剤および/またはUVB遮断剤の粘着基剤中での結晶析出や粘着性の低下を防止し、かつ、非ステロイド系消炎鎮痛剤の皮膚浸透性を高く保つためには、粘着付与剤の配合量を10〜20質量%とすることが特に好ましいものである。
【0022】
可塑剤としては、溶液粘度が10〜100センチストークス(40℃)のものが好ましく、例えばアーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油、オレフィン酸、流動パラフィンが挙げられ、これらを1種または2種以上粘着性基剤に配合することができる。その配合割合は基剤総量基準で好ましくは5〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらにより好ましくは15〜55質量%であり、基剤の粘度及び粘着力が前記した範囲になるように調整される。この配合割合にすることにより、得られる基剤の粘着力、皮膚への付着性、薬物の基剤中均一分散性、剥離時の痛み、角質層へのダメージ、皮膚のかぶれ及び熱安定性等が大きく改善される。
【0023】
本発明の貼付剤の粘着基剤は、従来公知の充填剤、酸化防止剤、溶解剤等を含有することができる。充填剤としては、たとえば酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、シリカ類、酸化マグネシウム、ステアリン酸金属塩類等が用いられる。酸化防止剤としては、たとえばアスコルビン酸、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル等が用いられる。溶解剤としては、たとえばオレイン酸、ベンジルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、クロタミトン、オレイルアルコール、ユーカリ油、リモネン、イソプレゴール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチルまたはその他の製油類が用いられる。また、界面活性剤、油脂、高級脂肪酸、着香剤等を必要に応じて含有することができる。更に、L−メントール、カンフル、ハッカ油、トウガラシエキス、カプサイシン、ニコチン酸ベンジル、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等の皮膚刺激剤(カウンターイリタント)を必要に応じて適宜配合することもできる。
【0024】
本発明の貼付剤は、粘着基剤が上記のような組成から構成され、それを支持する支持体を有するものであれば、その他の層やそれらを構成する成分は、特に限定されず、いずれの層から構成されるものであってもよい。 例えば、本発明の貼付剤は、支持体および粘着層の他、粘着層上に設けられる剥離ライナー層等を含むことができる。
前記支持体は、例えば、織布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、紙、アルミニウムシート等またはそれらの複合素材からなることができる。
さらに本発明の支持体は、従来技術で開示される支持体中に紫外線遮断剤を吸着等させたものであってもよい。
【0025】
次に、本発明の貼付剤の製造方法について説明する。一例として、まずスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンに、粘着付与剤及び可塑剤を加えて粘度及び粘着力を調整し、任意に充填剤及び酸化防止剤等を所定の割合で加え混合物となし、これを窒素ガス雰囲気下で加熱攪拌して溶解物とする。攪拌時の温度は100〜200℃であり、攪拌時間は30〜120分間である。次に、薬効成分を前記溶解物の攪拌時に温度が100〜200℃の範囲内で添加し、1〜30分間混合して均一な溶解物を得る。次に、この溶解物を通常の方法で直接支持体に展延した後、剥離被覆物で覆うか、あるいは一旦剥離被覆物に展延した後、支持体で覆い圧着転写させてもよい。剥離被覆物は剥離処理を施した剥離紙、セロファン、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のフィルムから適宜選択できる。
【実施例】
【0026】
製剤の製造
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS5200P:ジェイエスアール製)17質量部、ポリイソブチレン10質量部(L-100:エクソンモービル製)、石油樹脂(アルコンP-70:荒川化学工業製)13質量部、流動パラフィン(クリストールJ-352:エッソ石油製)44質量部、および合成ケイ酸アルミニウム2質量部を窒素ガス雰囲気下で加熱撹拌して溶解物を得た(工程A)。撹拌時の温度は100〜200℃であり、撹拌時間は30〜120分である。次にクロタミトン3質量部、4-tert-ブチル-4’メトキシジベンゾイルメタン(以下、BM-DBMと略記)6質量部、ケトプロフェン2質量部およびl-メントール3質量部を上記溶解物の撹拌時温度が100〜200℃の範囲内で添加し、5〜30分間混合して均一な溶解物としてのプラスター剤用基剤を得た(工程B)。該基剤を重量が70cmあたり1gとなるように、シリコン処理したポリエステルフィルムに展延した後、ポリエステル不織布で覆い圧着転写させ、所望の大きさに裁断し、本発明のテープ剤(製剤1)を得た。また上記と同様の方法により、表1に記載の処方で製剤2〜11を得た。
【0027】
【表1】

【0028】
実施例1
製剤1および製剤1の処方から4-tert-ブチル-4'メトキシジベンゾイルメタン(BM-DBM)を除いた比較例について以下の通り、薬物の光安定性試験、粘着基剤劣化試験を行なった。
(1)光安定性試験
各製剤のライナー面を上にして、直射日光が十分照射する場所へ放置し、4時間後の基剤中の薬物残存率を液体クロマトグラフィーにより測定した。結果を表2に示す。
(2)粘着基剤劣化試験
各製剤のライナー面を上にして、直射日光が十分照射する場所へ放置し、4時間後における基剤の凝集力(べたつき)について観察した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
UVA遮断剤および/またはUVB遮断剤を添加することにより、ケトプロフェンの分解を抑制できるため、ラジカル発生によるスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の分解も抑制でき、粘着基剤のベタツキ等を防止することができる。
【0031】
実施例2・・・ケトプロフェンの皮膚移行性試験(ヒト)
表1の処方に従って製造した2%ケトプロフェン(KP)製剤3cm×3cm(製剤2〜5)を、健常成人男子6名の背部に貼付した。6時間後に製剤を剥離し、製剤中に残存するケトプロフェンを抽出した後、HPLCにより定量した。製剤の初期ケトプロフェン含量から、前記残存量を減じて、ケトプロフェンの皮膚移行量を算出した。
【0032】
BM-DBMを6%含有する製剤(製剤2及び3)では、水添ロジンエステル(KE-311E)の添加量によるケトプロフェンの皮膚移行量への影響は少なかった。一方、BM-DBMを3%含有する製剤(製剤4及び5)では、水添ロジンエステルの添加量が少ない方が皮膚へのケトプロフェン移行量が多かった。また、水添ロジンエステルの添加量が同一である場合、BM-DBM3%含有製剤は、6%含有製剤に比べ、ケトプロフェンの皮膚移行量が多かった。
水添ロジンエステルは、粘着付与樹脂の中でも、ケトプロフェンの溶解性に優れた性質を有すると考えられる。
【0033】
実施例3・・・薬物の皮膚移行性試験(へアレスマウス)
表1の処方に従って製造した2%ケトプロフェン(KP)製剤3cm×3cmを、へアレスマウスより摘出した皮膚に貼付し、32℃に保ったまま6時間保存した。次に製剤を皮膚から剥離し、皮膚をホモジナイズした後、ケトプロフェン、BM-DBMを抽出・定量し、製剤1枚当りの皮膚移行量を算出した。
【0034】
BM-DBMを3%含有する製剤において、水添ロジンエステル(KE-311E)の添加量が少ない製剤が、皮膚へのケトプロフェンおよびBM-DBM移行量が多かった。水添ロジンエステルは、ケトプロフェンと同様にBM-DBMの溶解剤として作用するため、皮膚への分配比率が高まったものと考えられる。
【0035】
実施例4・・・ 製剤安定性試験
表1の処方に従って製造した2%ケトプロフェン(KP)製剤10cm×7cmを、製造時、1ヶ月および3ヶ月後に目視観察し、BM−DBMの結晶析出等を評価した。結果を表1に示す。
◎:3ヶ月後結晶析出なし、○:1ヶ月後結晶析出なし、
△:製造時結晶析出なし、×:製造時結晶析出
【0036】
実施例5・・・ 製剤貼付試験(ヒト)
表1の処方に従って製造した2%ケトプロフェン(KP)製剤10cm×7cmを、被験者30名の膝に貼付し、6時間後の製剤の付着性(付着の状態、製剤剥離後の膏体残り、製剤剥離後のベタツキおよびかゆみを総合的に評価)を所定の判定基準に基づいて評価した。結果は表1に示す。
◎:非常に良好、○:良好、△:使用可、×:不可
【0037】
製剤4~11は、全体的に良好な付着性を示した。製剤1~3は、製剤4〜11に比較すると若干付着性が劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と粘着基剤からなる貼付剤であって、粘着基剤中に少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子と非ステロイド系消炎鎮痛剤とを含有し、さらにUVA遮断剤及び/またはUVB遮断剤を前記ゴム系高分子の安定化剤として配合してなる、前記貼付剤。
【請求項2】
少なくとも主鎖に二重結合を有するゴム系高分子がスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエンからなる群から選択される、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
非ステロイド系消炎鎮痛剤が、ケトプロフェン、チアプロフェン酸、スプロフェン、トルメチン、カルプロフェン、ベノキサプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、ベンジダミン、ナプロキセン、フェルビナク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ジフルニサール、アザプロパゾン、エトドラック、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブおよび薬学的に許容し得る塩からなる群から選択される、請求項1または2に記載の貼付剤。
【請求項4】
UVA遮断剤が、ジベンゾイルメタン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項5】
UVA遮断剤が、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニール]プロピル]フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−ベンゾトリアゾールからなる群から選択される、請求項4に記載の貼付剤。
【請求項6】
UVB遮断剤が、ベンゾフェノン誘導体、ケイ皮酸誘導体、カンファー誘導体、アミノ酸系化合物、ベンゾイルピナコロン誘導体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項7】
UVA遮断剤及び/またはUVB遮断剤を粘着基剤中に2〜10質量%含む、請求項1〜6のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項8】
粘着基剤中に配合される粘着付与剤が、ロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン酸変性ロジンエステル、テルペン樹脂、石油樹脂から選択される1種または2種以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項9】
粘着付与在中に配合される粘着付与剤が、水添ロジンエステルおよびテルペン樹脂の組み合わせである、請求項8に記載の貼付剤。
【請求項10】
粘着付与剤の配合量が10〜20質量%である、請求項1〜9のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項11】
酸化亜鉛または二酸化チタンをさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載の貼付剤。

【国際公開番号】WO2005/063215
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516635(P2005−516635)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019327
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】