説明

消炎鎮痛成分低吸着包材

【課題】優れた積層ラミネート強度を有し、かつ内容物である消炎鎮痛貼付剤の消炎鎮痛成分の包材への吸着量を抑制することが出来る消炎鎮痛成分低吸着包材を提供することが課題である。
【解決手段】少なくとも表面にアルミニウム箔を含む基材のアルミニウム箔上に少なくともアンカーコート層とシーラント層がこの順序で設けられてなる積層フィルムからなる包材において、前記基材のアルミニウム箔面と、押し出しラミネートにより形成されるポリオレフィン樹脂からなるシーラント層間のアンカーコート剤としてポリオレフィン系のエマルジョンを用いたことを特徴とする消炎鎮痛成分低吸着包材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にアルミニウム箔を含む基材のアルミニウム箔上にアンカーコート層とシーラント層がこの順序で設けられてなる積層体に関し、それらの基材に対して優れたラミネート強度を有し、かつ内容物である消炎鎮痛貼付剤の消炎鎮痛成分の吸着量を抑制することが出来る消炎鎮痛成分低吸着包材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品の包装材において、内容物成分中のとりわけ有効成分やコストが高い微量成分が、熱溶着層に吸着、又は収着される現象が従来から課題となっている。その為にこれらの食品や医薬品は、包装材に吸着、収着される量も見越して過剰に内容物成分を含有させ、包装材への有効成分吸着、収着後でも安定的に効果、効能を発現するように作られている。
【0003】
近年は特許文献1にも記載されているように、包装材としてポリエチレンテレフタレート樹脂(非結晶性PET)や、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)などが用いられており、PANは吸着性という観点からは、あらゆる成分に対して大きな効果がみられ、実際に医薬品包装材に用いられている。
【0004】
図5は従来の一般的な消炎鎮痛貼付剤用包材に用いる積層フィルムの一例の断面略図である。ここでは、図5を参照してアルミニウム箔を含む積層フィルムの一例の構成を説明する。
図は上方を包材の外側表面とし下方を内側表面とした方向での積層フィルムの断面略図である。四角形にカットした表裏二枚の積層フィルムを内側表面同士を重ねて両側端部および底部の三方をヒートシールし、内容物を封入した後に残った一方をヒートシールして密封するのが通常である。
【0005】
図5に示した積層フィルム(103)の層構成は通常、樹脂フィルム等からなる基材(1)の片面に印刷インキ層(6)、もしくは印刷インキ層(7)を設けた後、基材(1)の内側にアルミニウム箔(3)を接着樹脂層(2)として低密度ポリエチレン樹脂の押し出しによるエクストルーダーラミネート等により積層して作成した基材のアルミニウム箔面とポリエチレン等のポリオレフィン樹脂からなるシーラント層(5)をアンカーコート層(4)としてポリウレタン系接着剤を介してもしくは介さないで貼着した構成となっている。
【0006】
この場合の基材(1)としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、セロファン、紙がよく用いられる。これらの基材に必要に応じて絵柄や文字などを印刷した印刷インキ層(6)、(7)を備える場合もある。
一般的には紙などの不透明な基材へ印刷する場合には基材表面に印刷インキ層(6)として、透明なフィルム基材へ印刷する場合には裏面に印刷インキ層(7)として配置する。
【0007】
基材(1)としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる場合には、厚みは12μmから16μmが一般的である。紙の場合は坪量50g/mから100g/mの上質紙及び純白ロール紙が一般的である。
【0008】
アルミニウム箔(3)は一般的には6μmから9μm厚みの軟質アルミニウム箔を用いる。
アルミニウム箔(3)と基材(1)の貼りあわせは、通常、エクストルーダーによって製膜して得られた厚み10μmから20μmの低密度ポリエチレン層を介して行なう。
【0009】
アンカーコート層(4)は省略する場合もあるが通常はポリウレタン系接着剤が1.0g/mから3.0g/m程度塗工されている。
シーラント層(5)はエクストルーダーにて製膜して得られた20μmから30μmの厚みの低密度ポリエチレン樹脂層が代表的であり袋状に形成する際にヒートシールのためのシーラントとして機能する層である。
【0010】
以上示した従来の一般的な包材の場合にはバリア性の向上のために、積層構成中にアルミニウム箔を含む構成がよく用いられている。このようなアルミニウム箔を含むバリア性の高い構成の場合には,消炎鎮痛貼付剤を充填して長期保存すると、包材中のアルミニウム箔とシーラント層間のラミネート強度が劣化して剥がれてしまうという別の問題もあった。
この問題はとくにアルミニウム箔とシーラント層間にアンカーコート層を施していない場合に顕著であった。
【0011】
上記のラミネート強度の劣化の問題はアルミニウム箔とシーラント層間にアンカーコート層を設けることによって改善が可能である。アンカーコート層としてポリウレタン系接着剤を用いることによって改善することが出来る一例が特許文献2、特許文献3には提案されている。
【0012】
特許文献2には、ポリエステル、ナイロンまたはポリプロピレンのいずれかからなる基材の上に少なくとも接着層とシーラント層がこの順序で設けられていて、接着層がイソシアネート化合物からなることを特徴とする積層体が提案されている。
【0013】
特許文献3には、ポリエステル、ナイロンまたはポリプロピレンのいずれかからなる基材の上に少なくとも接着層とシーラント層がこの順序で設けられていて、接着層がポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールのいずれかからなる主剤とイソシアネート化合物からなる硬化剤とからなり、その割合が、1:99〜15:85であることを特徴とする積層体が提案されている。
【0014】
しかしながら、ポリウレタン系接着剤を用いるこれらの方法ではラミネート強度の劣化は改善できるものの、これによって、消炎鎮痛成分であるロキソプロフェンナトリウム、ケトプロフェン、フルルビプロフェンなどが貼付剤から包材へ移行(吸着)しやすくなってしまうという問題が発生する。
【0015】
また、吸着性の少ないPAN(ポリアクリロニトリル)樹脂フィルムをシーラント層に用いた場合は消炎鎮痛成分の包材への吸着量を低減する効果は高いが、調達コストが比較的高いため結果的に包材製造にかかるコストが大幅に上がってしまうという問題が浮上してくる。
【0016】
上記のような事情から、消炎鎮痛貼付材に用いる包材においては、貼付剤の消炎鎮痛成分の包材への吸着量を抑制することが出来るアンカーコート層及びシーラント層を備えた包材であって、かつ経時によるラミネート強度の劣化の少ない消炎鎮痛成分低吸着包材が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平8−143453号公報
【特許文献2】特開2005−335374号公報
【特許文献3】特開2006−187908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は以上のような従来技術の問題を解決するために成されたものであり、優れた積層ラミネート強度を有し、かつ内容物である消炎鎮痛貼付剤の消炎鎮痛成分の包材への吸着量を抑制することが出来る消炎鎮痛成分低吸着包材を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために成された本発明の請求項1の発明は、少なくとも表面にアルミニウム箔を含む基材層のアルミニウム箔上にアンカー層とシーラント層がこの順序で設けられてなる積層フィルムからなる包材において、前記基材のアルミニウム箔面と、押し出しラミネートにより形成されるポリオレフィン樹脂からなるシーラント層間のアンカーコート層がポリオレフィン系のエマルジョンを用いて形成されたアンカーコート層であることを特徴とする消炎鎮痛成分低吸着包材である。
【0020】
また、上記課題を解決するために成された本発明の請求項2の発明は、前記アンカーコート層の乾燥後塗布量が0.2g/mから1.0g/mの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の消炎鎮痛成分低吸着包材である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材によれば、表面にアルミニウム箔を含む基材層(アルミニウム箔単体でも可)のアルミニウム箔上にアンカーコート層とシーラント層がこの順序で設けられてなる積層フィルムからなる包材において、基材層のアルミニウム箔面と、押し出しラミネートにより形成されるポリオレフィン樹脂からなるシーラント層間のアンカーコート層がポリオレフィン系のエマルジョンを用いて形成されたアンカーコート層であることによって、優れた積層ラミネート強度を有し、かつ内容物である消炎鎮痛貼付剤の消炎鎮痛成分の包材への吸着量を抑制することが出来る消炎鎮痛成分低吸着包材を提供することが出来る。
【0022】
本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材に用いる積層フィルムを構成する基材層中にバリア性の高いアルミニウム箔を含む基材を用いることによって、内容物である消炎鎮痛貼付剤の変質を防止することとその成分の外気中への拡散を防止することが出来る。
【0023】
基材層のアルミニウム箔面と、押し出しラミネートにより形成されるポリオレフィン樹脂からなるシーラント層間にアンカーコート層を設けたことによって、アルミニウム箔とシーラント層を直接積層する場合よりも優れた積層ラミネート強度を有し経時劣化も少ない積層フィルムとすることが可能となった。
【0024】
アンカーコート層がポリオレフィン系のエマルジョンを用いて形成されたアンカーコート層であることによって、ポリウレタン系のアンカーコート層を用いた場合に比べて、内容物である消炎鎮痛貼付剤の消炎鎮痛成分の包材への吸着量を約半分に抑制することが可能になった。
【0025】
この効果はアンカーコート剤の変更のみによってもたらされるもので他の工程や材質の追加変更は不要である。
したがって、従来品と同等のコストおよび材質構成のままで消炎鎮痛成分の吸着量を抑えた包材を提供することが出来る。
【0026】
本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材にあっては、アルミニウム箔とシーラント層間に形成されるアンカーコート層の乾燥後塗布量は、包材の物性、コスト、生産時の加工性を考慮すると0.2g/mから1.0g/mの範囲であることが望ましい。
【0027】
アンカーコート層の乾燥後塗布量が0.2g/m未満の場合はアルミニウム箔とシーラント層間で十分なラミネート強度が得られない場合があり、1.0g/mを超える場合にはコスト過多となるだけではなく生産性の低下を招く場合がある。
また、過剰な塗布量は消炎鎮痛成分の吸着量の増加を招き、吸着量抑制という目的の達成が出来なくなってしまう場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材に用いる積層フィルムの一例の断面略図である。
【図2】本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材に用いる積層フィルムの他の一例の断面略図である。
【図3】従来の消炎鎮痛貼付剤用包材に用いる積層フィルムの他の一例の断面略図である。
【図4】従来の消炎鎮痛貼付剤用包材に用いる積層フィルムの他の一例の断面略図である。
【図5】従来の一般的な消炎鎮痛貼付剤用包材に用いる積層フィルムの一例の断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明を実施するための形態の例について必要に応じて図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材に用いる積層フィルム(10)の断面図の一例である。
【0030】
基材層(11)は、アルミニウム箔(3)単体もしくはアルミニウム箔(3)を含む積層基材である。基材層(11)がアルミニウム箔(3)を含むラミネート基材の時は基材層(11)の少なくとも片面にアルミニウム箔が配置されている。
【0031】
基材層(11)はたとえばエクストルーダーラミネート、ドライラミネート、ノンソルベントラミネートなどの公知のラミネート方法で、樹脂フィルム、セロハン、紙などの基材(1)とアルミニウム箔(3)を貼り合わせたものである。
【0032】
図1には基材層(11)を構成するすべての層は示していないが、基材層の積層数や厚みには特に制限はなく、コストや包材の機能性などを考慮すると積層数は3層から4層、厚みは30μmから60μm程度で十分である。
基材(1)は通常、表面または裏面に印刷可能なフィルムであって必要なバリア性を有していれば特に制限はなく、印刷不要の場合も勿論あり得る。
【0033】
本発明に用いる基材層(11)を構成する基材(1)としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドなどのプラスチックの延伸または未延伸のフィルムや、各種プラスチックフィルムにポリビニルアルコールを塗工したり、アルミニウムなどの金属や酸化珪素などの金属酸化物の薄膜を蒸着した加工フィルム、さらにはアルミニウム箔箔などが適用できる。
【0034】
それらの一方の面にコロナ処理などの表面処理がなされていてその上にアンカーコート層が安定的に形成できるようになっていれば、いずれのタイプのフィルムでも基材として
使用可能である。
また、その厚みに関しても特に限定されるものではないが通常は6μm〜25μmの範囲の延伸フィルムがよく用いられる。
【0035】
基材(1)の表面に必要に応じて設けられる印刷インキ層は周知のインキを用いてグラビア印刷等の方法で施すことが出来る、絵柄や商品情報などを含む層である。
基材(1)としてポリオレフィン樹脂を用いる場合にはインキの密着を良くするために通常はコロナ処理等の易接着処理を表面に行う。
【0036】
接着樹脂層(2)は基材(1)とアルミニウム箔(3)の接着に用いる熱可塑性樹脂層であってこれらの熱可塑性樹脂層には、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が使用出来、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより押出し法により設けられる。
接着樹脂層(2)の厚みは特に限定はないが通常3μm〜70μmの範囲の厚みが用いられる。
【0037】
アンカーコート層(4)はたとえばグラビアコーティングなどの公知の方法で、基材層(11)のアルミニウム箔(3)にポリオレフィン系エマルジョンを塗布した後に加熱乾燥させて得た被膜である。
【0038】
アンカーコート層(4)の乾燥後塗布量は包材の物性、コスト、生産時の加工性を考慮すると0.2g/mから1.0g/mの範囲であることが望ましく、0.2g/m未満の場合はアルミニウム箔とシーラント層間で十分なラミネート強度が得られない場合があり、1.0g/mを超える場合にはコスト過多となるだけではなく生産性の低下を招く場合がある。
また、塗布量が多い場合には消炎鎮痛成分の吸着量が多くなってしまう場合がある。
【0039】
シーラント層(5)はポリオレフィン樹脂を通常エクストルーダーラミネートで製膜し、アンカーコート層(4)を設けた基材層(11)とラミネートする。
シーラント層(5)に用いるポリオレフィン樹脂は単一素材でもよいが、密度、融点、分子量などが異なる複数の素材を積層させてもよい。
【0040】
アンカーコート層(4)上に設けられるシーラント層(5)は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などからなる層である。
具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチ
レン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより設けられる。
これらの構成材料には、各種添加剤(酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、各種フィラーなど)が添加されていてもよい。シーラント層(5)の厚みは特に限定はない。
【0041】
本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材を用いた消炎鎮痛貼付剤用包材はたとえば次のようにして製造することができる。
エクストルーダーラミネート工程にて、基材(1)としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)にポリブタジエン系アンカーコート剤をグラビアコーティングにて乾燥後塗布量が0.1g/m以上となるように塗布、乾燥させてアンカーコート層(8)を形成し、アンカーコート層面に低密度ポリエチレン樹脂を接着樹脂層(2)として厚み15μmとなるように押し出し、厚み7μmのアルミニウム箔(3)と貼り合せて積層して基材層(11)とする。
【0042】
次にエクストルーダー工程にて、基材層(11)のアルミニウム箔箔面にポリオレフィンエマルジョンをグラビアコーティングで塗布し、80℃の熱風を3秒間当てて乾燥させて乾燥後塗布量が0.2g/m以上のアンカーコート層(4)を形成し、その面にシーラント層(5)としてエクストルーダーラミネート用低密度ポリエチレン樹脂を厚み30μmとなるように押出して貼り合せ、図2に示した構成の積層フィルム(100)とする。
【0043】
このように作成した積層フィルム(100)を表裏に用いて、表裏フィルムのシーラント層(5)面同士を重ねて側端部および底部の三方の端部をヒートシールし、消炎鎮痛貼付剤を充填してから残りの端部をシールして消炎鎮痛貼付剤用包材を用いた包装体を製造する。
シール部分のラミネート強度の測定と消炎鎮痛成分の吸着量の分析はこの包装体を指定環境で経時保存したものを用いて必要なタイミングで行なう。
【実施例】
【0044】
以下図面を参照しながら本発明の実施形態の例について説明する。
図2は本発明の消炎鎮痛貼付剤用包材に用いる積層フィルムの一例の断面略図であり、図3は従来の消炎鎮痛貼付剤用包材に用いる積層フィルムの一例の断面略図であり、図4は従来の消炎鎮痛貼付剤用包材に用いる積層フィルムの他の一例の断面略図である。
ここではいずれも基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたドライラミネート構成の場合の例を取り上げた。
【0045】
<実施例1>
エクストルーダーラミネート工程にて、基材(1)として東洋紡績株式会社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「E5100」(厚み12μm)にポリブタジエン系アンカーコート剤を乾燥後塗布量が0.1g/mとなるように塗布、乾燥させたアンカーコート層(8)面に低密度ポリエチレン樹脂を接着樹脂層(2)として厚み15μmとなるように押し出し、住軽アルミ箔株式会社製8021規格アルミニウム箔「BESPA」(厚み7μm)(3)と貼り合せて積層した基材層(11)を得た。
【0046】
次にエクストルーダー工程にて、基材層(11)のアルミニウム箔面にポリオレフィンエマルジョンとして、ユニチカ株式会社製「アローベースSB1200」をグラビアコーティングで塗布し、80℃の熱風を約2秒から3秒間当てて乾燥させて乾燥後塗布量が0.3g/mのアンカーコート層(4)を形成し、その面にシーラント層(5)として日本ポリエチレン株式会社製のエクストルーダーラミネート用低密度ポリエチレン樹脂「ノバテックLD LC600A」を厚み30μmとなるように押出して貼り合せ、図2に示した構成の積層フィルム(100)を得た。
【0047】
<比較例1>
基材層(11)のアルミニウム箔面にポリオレフィンエマルジョンをグラビアコーティングで塗布し、80℃の熱風を当てて乾燥させてアンカーコート層(4)を形成する工程を省略したこと以外は、実施例1の場合と同様にして図3に示した構成の積層フィルム(101)を得た。
【0048】
<比較例2>
基材層(11)のアルミニウム箔面に塗布するアンカーコート層(4)のアンカーコート剤をポリオレフィンエマルジョンからポリウレタン系接着剤に代えた以外は、実施例1の場合と同様にして図4に示した構成の積層フィルム(102)を得た。
【0049】
実施例1、比較例1、2で作成した積層フィルムを表裏に用いて、シーラント層面を重ねて三方端部をヒートシールし、消炎鎮痛貼付剤を充填してから残りの端部をシールしてシール部分のラミネート強度の測定と消炎鎮痛成分(ロキソプロフェンナトリウム)の吸着量の分析を行なった。
この時、消炎鎮痛貼付剤としてリードケミカル社製「ロキソニンテープ50mg」を用いた。
【0050】
ラミネート強度の耐内容物性の測定と消炎鎮痛成分の吸着量の分析は、内容物充填直前、内容物充填から2週間後、内容物充填から1ヶ月後、内容物充填から3ヶ月後のタイミングで実施した。保存条件は、40℃75%RHである。
結果は表1(ラミネート強度 アルミ箔/シーラント層間)および表2(ロキソプロフェンナトリウム吸着量)に示した。
【表1】

【表2】

【0051】
シーラント層とアルミニウム箔の間にアンカーコート層を備えていない比較例1の積層フィルム(101)はシーラント層とアルミニウム箔の間にアンカーコート層を備えている実施例1の積層フィルム(100)、比較例2の積層フィルム(102)に比べて、初期においてもラミネート強度が弱く、内容物充填後の経時によってさらに低下する。
【0052】
シーラント層とアルミニウム箔の間にアンカーコート層としてポリウレタン系接着剤を使用した比較例2の積層フィルム(102)は実施例1の積層フィルム(100)、比較例1の積層フィルム(101)に比べてロキソプロフェンナトリウム吸着量が多くなる結果となった。
【0053】
アンカーコート層としてポリオレフィンエマルジョンを塗工液に用いた実施例1の積層フィルム(100)は比較例1の積層フィルム(101)に比べてロキソプロフェンナトリウム吸着量はほとんど変わらず、経時での増加も見られなかった。
【0054】
アンカーコート層としてポリオレフィンエマルジョンを使用した本発明の消炎鎮痛貼付剤包材に用いる積層フィルムはラミネート強度の耐内容物性を有し、ロキソプロフェンナ
トリウムの包材への吸着量もポリウレタン系接着剤を使用した場合と比べて低い結果となった。
【0055】
実施例1におけるアンカーコート層としてのポリオレフィンエマルジョン「アローベースSB1200」の乾燥後塗布量を0.1g/m、0.5g/m、0.7g/mとした他は実施例1と同様にして積層フィルムを作成してアルミ箔/シーラント層間のラミネート強度を測定した。結果は表3に示した。
【表3】

【0056】
これによればポリオレフィンエマルジョン「アローベースSB1200」の乾燥後塗布量が0.1g/m、だと初期からラミネート強度が弱く、さらに耐内容物性も弱く、経時で強度低下が見られる。ポリオレフィンエマルジョン「アローベースSB1200」の乾燥後塗布量が0.3g/mから0.7g/mとの時は経時での強度低下も見られず良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の消炎鎮痛成分低吸着包材は、従来同等コストおよび材質構成のまま消炎鎮痛成分の吸着量を抑えた包材を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
100…積層フィルム
101…積層フィルム
102…積層フィルム
103…積層フィルム
10…積層フィルム
1…基材
2…接着樹脂層
3…アルミニウム箔
4…アンカーコート層
5…シーラント層
6…印刷インキ層
7…印刷インキ層
8…ポリブタジエン系アンカーコート剤によるアンカーコート層
11…基材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面にアルミニウム箔を含む基材層のアルミニウム箔上にアンカーコート層とシーラント層がこの順序で設けられてなる積層フィルムからなる包材において、前記基材のアルミニウム箔面と、押し出しラミネートにより形成されるポリオレフィン樹脂からなるシーラント層間のアンカーコート層がポリオレフィン系のエマルジョンを用いて形成されたアンカーコート層であることを特徴とする消炎鎮痛成分低吸着包材。
【請求項2】
前記アンカーコート層の乾燥後塗布量が0.2g/mから1.0g/mの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の消炎鎮痛成分低吸着包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−66644(P2013−66644A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208721(P2011−208721)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】