説明

消臭性吸水性樹脂組成物

【課題】 おむつ内の吸水層やペット用排尿処理用品の尿中に含まれる尿素を分解してアンモニアやメチルアミンなどを発生させる細菌類の繁殖を抑える消臭性に優れた消臭性吸水性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 高吸水性樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とからなることを特徴とする消臭性吸水性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用製品、特に使い捨ておむつやペット用排尿処理用品に使用することができる消臭性に優れた吸水性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使い捨ておむつは、乳幼児用および大人用を問わず、布おむつに代わって素晴らしい吸収性能および取り扱いの便利さのため急速な伸びを示しており、今後もその普及の拡大とともにその需要はますます増加するものと見られている。使い捨ておむつは一般に水透過性表面シートと水不透過性裏面シートと、これらのシートの間に設けられた吸水層からなっている。そして吸水層としては、パルプや高吸水性重合体などが用いられている。
【0003】
従来から使い捨ておむつに対しては、漏れないこと、スキンケアおよび使い易さの3つの要素が要求されており、最近市場に出回っている使い捨ておむつは、何れも概ねこれらの要素を充足している。しかしながら、現状は尿排泄物の消臭機能に関しては何れの製品も未だ充分とは言えない。一般的に乳幼児の尿排泄物の臭気は、それほど強いものではないが、大人、特におむつを必要とする人は病態であり、薬物投与状態にあることが多く、さらに介護上の問題から非衛生的な状態になりやすく、尿排泄物は悪臭が発生しやすくなっており、消臭性に優れた使い捨ておむつの必要性が高まっている。
【0004】
悪臭の発生原因としては、皮膚常在菌などが産生する尿素分解酵素などにより、尿中に含まれる尿素などがアンモニアやメチルアミンなどに分解され、それらが悪臭の原因となっていると考えられている。従って、使い捨ておむつを使用した際の尿排泄物由来の悪臭を防止するためには、おむつ内の吸水層での細菌類の繁殖を防止する必要がある。この問題点を解決する方法として、例えば、吸水性有機重合体中に抗菌剤として、塩化ベンザルコニウムおよび/またはグルコン酸クロルヘキシジンを含有させる方法(特許文献1参照)やシリコーン第4級アンモニウム塩化合物を含有させる方法(特許文献2参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの抗菌剤は、尿中に含まれる尿素などをアンモニアやメチルアミンなどに分解する酵素(ウレアーゼ)を産生する細菌類に対しては殆ど効果がないため、必ずしも満足のいく消臭効果が得られない。
【特許文献1】特公平04−17058号公報
【特許文献2】特開平06−245954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、おむつ内の吸水層やペット用排尿処理用品の尿中に含まれる尿素を分解してアンモニアやメチルアミンなどを発生させる細菌類の繁殖を抑える消臭性に優れた消臭性吸水性樹脂組成物を提供することである。
【0007】
本発明者らは、尿中に含まれる尿素など由来の悪臭原因物質を発生させる細菌類に対して優れた効果を発揮する抗菌性物質について鋭意検索を行った結果、或る種のビス第4級アンモニウム化合物が、ウレアーゼを産生する皮膚常在菌などの細菌類に対して優れた効果を示し、しかもグラム陽性およびグラム陰性細菌に対しても広い抗菌スペクトルを示し、尿排泄物由来の悪臭の発生の防止に顕著な効果を奏することを見い出し本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記の構成からなる。
1.高吸水性樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とからなることを特徴とする消臭性吸水性樹脂組成物。

(但し、上記一般式において、R1およびR4は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
【0009】
2.前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である前記1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物。
【0010】
3.前記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物である前記1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物。




【0011】
4.高吸水性樹脂100質量部あたり一般式(1)で表される化合物を0.001〜10質量部含有する前記1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物。
5.前記1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする使い捨ておむつまたはペット用排尿処理用品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、おむつ内の吸水層やペット用排尿処理用品の尿中に含まれる尿素を分解してアンモニアやメチルアミンなどを発生させる細菌類の繁殖を抑える消臭性に優れた消臭性吸水性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明に用いられる前記一般式(1)で表される化合物のなかで好ましい化合物は、前記一般式(1)において、R1およびR4が、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5が、水素原子であり、R3が、テトラメチレン基であり、R6が、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zが塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である化合物であり、特に好ましい化合物は前記式(1)〜(4)の化合物である。前記一般式(1)で表される化合物は、単独でも混合物としても使用できる。
【0014】
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(a)

で表されるピリジン化合物と、下記一般式(b)

で表されるジオール類とを、強塩基の存在下に反応させることにより、下記一般式(c)

で表されるピリジン化合物を製し、該化合物と下記一般式(d)

で表されるピリジン化合物とを強塩基の存在下に反応させることにより下記一般式(e)

で表されるピリジン化合物を製し、該化合物と下記一般式(f)

で表されるハロゲン化合物若しくはスルホン酸エステル化合物とを反応させることによって得られる。
(但し、上記一般式(a)〜(f)において、AおよびBは塩基の作用により脱離基として機能し、アルキルカチオンを生成し得る置換基であり、XおよびYは無機、若しくは有機のプロトン酸の対アニオンであり、mおよびnは0〜1であり、R1〜R7、Zは前記と同意義である。)上記一般式(1)で表される化合物は、優れた殺菌効果を有する。
【0015】
一方、本発明に従い前記一般式(1)で表される化合物が配合される高吸水性樹脂としては、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの衛生生理用品において通常使用されているものが同様に使用可能であり、例えば、ケン化デンプン−ポリアクリロニトリルグラフト共重合体などのデンプン−アクリロニトリル系吸水性樹脂;グラフトセルロース、架橋グラフトセルロース、アクリル酸アミド、架橋ポリアクリル酸などのポリアクリル酸系吸水性樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、架橋ポリエチレンオキシド、デンプングラフトポリ酢酸ビニル、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体などのデンプン−アクリル酸系吸水性樹脂;アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体ケン化物、アクリル酸−酢酸ビニル共重合体ケン化物、架橋ポリビニルアルコール系吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体系吸水性樹脂、スルホン酸(塩)基含有吸水性樹脂などが挙げられ、これらの樹脂は、一般に、自重の数百倍から数千倍の水を吸収する能力を有するものが好ましい。
【0016】
これらの樹脂はそれぞれ単独で用いてもよくまたは複数種を組合わせて使用することもできる。また、これらの樹脂の形態は特に制限されるものではなく、最終製品の用途などに応じて、例えば、粉末状、顆粒状、シート状、繊維状などの形態であることができ、さらに、芯材にアクリル繊維を組み込んだ2層構造の吸水性繊維(東洋紡績(株)製、「ランシールF」など)の形態のものであってもよい。
【0017】
これらの高吸水性樹脂中への前記一般式(1)で表される化合物の配合は、それ自体既知の方法で行うことができ、例えば、(1)高吸水性樹脂粉末に所定量の一般式(1)で表される化合物を含有する水溶液を添加および吸収させた後、乾燥する方法;(2)高吸水性樹脂の製造過程における任意の段階で、所定量の一般式(1)で表される化合物を粉末または溶液の状態で添加する方法;(3)高吸水性樹脂粉を所定量の一般式(1)で表される化合物の粉末と混合する方法などにより行うことができるが、一般式(1)で表される化合物の均一分散のためには、上記(1)または(2)の方法が好適である。
【0018】
高吸水性樹脂に対する一般式(1)で表される化合物の添加量は、厳密に制限されるものではなく、用いる一般式(1)で表される化合物の種類などに応じて変えることができるが、一般には、樹脂100質量部あたり0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜2質量部の範囲内とすることができる。
【0019】
上記の如くして一般式(1)で表される化合物が配合された高吸水性樹脂は、衛生用製品用の吸水性樹脂として、特に使い捨ておむつに使用することにより、尿排泄物由来の悪臭の発生が効果的に防止された衛生的な使い捨ておむつを提供することができる。すなわち、水透過性表面シートと水不透過性裏面シートと、これらシート間に設けられた吸水層とからなる使い捨ておむつにおいて、吸水層に従来使われている高吸水性樹脂に代えて、本発明の消臭性吸水性樹脂組成物を使用してなる使い捨ておむつは、尿中に含まれる尿素などを分解してアンモニアやメチルアミンなどを発生させる細菌類の繁殖が抑制されて、尿素などの分解による悪臭の発生が阻止され、しかも大腸菌やカンジタ菌などの雑菌の繁殖も抑制されて、雑菌に起因する非衛生的な状態の改善も期待される。
【0020】
また、本発明の一般式(1)で表される化合物が配合された消臭性吸水性樹脂組成物は、ペット用排尿処理用品に使用することによって、優れた消臭効果を期待することができる。
【0021】
各家庭で何らかのペットを飼うことが多いが、特に屋内で飼う場合はペットの排泄物の処理並びにその悪臭に悩まされることが多い。ペット用の排尿処理用品として良く使われているものに猫砂がある。猫砂は一般的にはごく普通の砂を用いて排泄物を浸透保持し、使った後は洗浄、乾燥して再利用されるが、その手間が大変であり、また、取り替える間隔が長くなれば悪臭の発生や雑菌の発生により不衛生になるなどの欠点があった。最近、この問題を解決するために、高吸水性樹脂を用いた猫砂や、さらにはこれに抗菌剤や消臭剤を添加した猫砂が販売されるようになってきたが、悪臭発生の防止には思うように効果が上がっていないのが現状である。飼い主は家族同様に飼っているペットの臭いなので多少の我慢或いは慣れのために臭いが気にならない場合もあるが、外からの訪問客は不快な臭いに悩まされる場合が多々ある。
【0022】
本発明の消臭性吸水性樹脂組成物は、後記実施例で実証されている通り、尿の分解による悪臭の発生および雑菌の発生を他の抗菌剤に比べて効果的に防止することができる。従って、本発明の消臭性吸水性樹脂組成物はペットの排泄物による悪臭防止、衛生環境の維持、ペット用排尿処理用品の取り替え頻度の低減などに大きく貢献することができる。
【0023】
次に本発明で使用する前記一般式(1)で表される化合物の合成例を挙げる。合成例1(前記化合物(1)の合成)
[下記構造式で示される化合物(1−1)の合成]

DMF(ジメチルホルムアミド)75mlに1,4−ブタンジオール8.24g(91.43mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド10.3g(91.79mmol)を添加し、室温で1.5時間撹拌した。このスラリー液に−8〜−3℃で3−クロロメチルピリジン塩酸塩1.0g(6.10mmol)およびカリウムtert−ブトキシド0.68g(6.06mmol)を交互に添加し、これを15回繰り返し、全量で3−クロロメチルピリジン塩酸塩15.0g(91.45mmol)およびカリウムtert−ブトキシド10.2g(90.9mmol)を添加した。
【0024】
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、3−クロロメチルピリジンのピークが確認されたので、3−クロロメチルピリジンのピークが消失するまで、カリウムtert−ブトキシドを5℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは1.13g(10.07mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF30mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去して油状の粗生成物(化合物(1−1))17.1gを得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(1−1)の面積%は76.0%であった。
【0025】
前記化合物(1−1)の粗生成物を水30mlに溶解し、トルエンで洗浄した。その後、水層に食塩6gを加え、ジクロロメタン20ml×2で抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、溶媒を留去し、油状の前記化合物(1−1)9.21g(収率(1,4−ブタンジオールより):57.2%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、面積%は99.4%であった。(1H−NMR(CDCl3):δ1.67−1.75(4H,m,−(C22−)、δ2.35(1H,s,O)、δ3.52−3.56(2H,t,J=6.0Hz,C2)、δ3.64−3.68(2H,t,J=6.0Hz,C2)、δ4.52(2H,s,C2)、δ7.27−7.31(1H,m,arom)、δ7.66−7.70(1H,m,arom)、δ8.52−8.56(2H,m,arom ×2)、MS(APCl):m/z=182[M+H]+
【0026】
HPLC(条件1)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:B=70:30(一定)
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
【0027】
[下記構造式で示される化合物(1−2)の合成]

DMF25mlに前記化合物(1−1)5.0g(27.59mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド3.1g(27.63mmol)を添加した。このスラリーに5〜6℃で3−クロロメチルピリジン塩酸塩0.5g(3.05mmol)およびカリウムtert−ブトキシド0.34g(3.03mmol)を交互に添加し、これを9回繰り返し、全量で3−クロロメチルピリジン塩酸塩4.5g(27.43mmol)およびカリウムtert−ブトキシド3.06g(27.27mmol)を添加した。添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、3−クロロメチルピリジンおよび前記化合物(1−1)のピークが確認されたので、3−クロロメチルピリジンのピークおよび前記化合物(1−1)のピークが消失するまで、カリウムtert−ブトキシドを5℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは0.62g(5.53mmol)であった。
【0028】
反応混合物を固液分離し、ケークをDMF30mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去した。この濃縮残液にジクロロメタン20mlを添加し、溶解液を飽和食塩水で洗浄後、溶媒を留去し、油状物5.8gを得た。この粗生成物0.5gについてシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム−メタノール)で精製を行い、油状の前記化合物(1−2)0.3gを得た。(1H−NMR:δ1.70−1.74(4H,m,−(C22−)、δ3.50−3.54(4H,m,C2×2)、δ4.51(4H,s,C2×2)、δ7.25−7.29(2H,dd,J=4.9Hz,7.9Hz,arom×2)、δ7.65−7.69(2H,dt,J=1.7Hz,7.9Hz,arom×2)、δ8.52−8.57(4H,dd,J=1.7Hz,4.9Hz,arom×4)、MS(APCl):m/z=273[M+H]+
【0029】
[化合物(1)の合成]

前記化合物(1−2)5.0g(18.36mmol)にオクチルブロマイド35.5g(183.8mmol)を加え、70〜80℃で20時間反応を行った。反応混合物をHPLC(条件2)で分析すると、前記化合物(1−2)のピークは消失していた。反応混合物より上層のオクチルブロマイド層を分離し、下層油状物をアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液に注加した。混合物を冷却し、析出結晶を0℃でろ過、減圧乾燥を行い、灰白色結晶9.7g(粗収率(前記化合物(1−2)より):85%)を得た。
【0030】
得られた結晶2gについてアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液で再結晶を行い、微灰白色結晶の化合物(1)1.6gを得た。(融点:52〜53℃、1H−NMR(d6−DMSO):δ0.82−0.89(6H,t,J=5.3Hz,C3×2)、δ1.25−1.34(20H,m,−(C25−×2)、δ1.77−1.80(4H,m,−(C22−×2)、δ2.04−2.09(4H,t,J=7.0Hz,C2×2)、δ3.70−3.72(4H,t,J=5.9Hz,C2×2)、δ4.67−4.71(4H,t,J=7.0Hz,C2×2)、δ4.84(4H,s,C2×2)、δ8.11−8.15(2H,dd,J=6.0Hz,8.0Hz,arom×2)、δ8.56−8.59(2H,d,J=8.0Hz,arom×2)、δ8.69−8.92(4H,dd,J=6.0Hz,13.1Hz,arom×4)、MS(ESI):m/z=579[M−Br]+)。
【0031】
HPLC(条件2)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:70%(12min保持)→(10min)→A:50%(14min保持)→A:70%
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
【0032】
合成例2(前記化合物(2)の合成)
[下記構造式で示される化合物(2−1)の合成:3−クロロメチルピリジン塩酸塩から4−クロロメチルピリジン塩酸塩に代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]

DMF75mlに1,4−ブタンジオール8.24g(91.43mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド10.3g(91.79mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。このスラリーに−10〜−5℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩1.5g(9.14mmol)、カリウムtert−ブトキシド1.03g(9.18mmol)を交互に添加し、これを10回繰り返した。
【0033】
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、4−クロロメチルピリジンのピークが確認されたので、4−クロロメチルピリジンのピークが消失するまでカリウムtert−ブトキシドを10℃以下で添加した。追加したカリウムtert−ブトキシドは1.03g(9.18mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF20mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去し油状の粗生成物17.0gを得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(2−1)の面積%は63.0%であった。
【0034】
粗生成物を水30mlに溶解し、トルエンで洗浄した。その後、水層に食塩6gを加え、ジクロロメタン20ml×2で抽出し、無水硫酸マグネシウムで脱水後、溶媒を留去し、油状の前記化合物(2−1)9.21g(収率(1,4−ブタンジオールより):57.2%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件1)で分析すると、面積%は99.4%であった。(1H−NMR(CDCl3):δ1.65−1.80(4H,m,−(C22−)、δ2.4(1H,s,O)、δ3.54−3.58(2H,t,J=5.9Hz,C2)、δ3.66−3.70(2H,t,J=5.9Hz,C2)、δ4.53(2H,s,C2)、δ7.24−7.26(2H,dd,J=1.5Hz,4.5Hz,arom×2)、δ8.55−8.57(2H,dd,J=1.5Hz,4.5Hz,arom×2)、MS(APCl):m/z=182[M+H]+
【0035】
[下記構造式で示される化合物(2−2)の合成:3−クロロメチルピリジン塩酸塩から4−クロロメチルピリジン塩酸塩に代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]

DMF49mlに1,4−ブタンジオール2.7g(30.0mmol)を加え、氷冷下カリウムtert−ブトキシド3.4g(30.0mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。このスラリーに−5〜−3℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩0.98g(6mmol)、カリウムtert−ブトキシド0.68g(6mmol)を交互に添加し、これを5回繰り返した。これ以降の添加は、−5〜−2℃で4−クロロメチルピリジン塩酸塩0.98g(6mmol)、カリウムtert−ブトキシド1.36g(12mmol)を交互に添加し、これを5回繰り返し、全量で4−クロロメチルピリジン塩酸塩9.8g(60mmol)、カリウムtert−ブトキシド10.2g(90mmol)を添加した。
【0036】
添加終了後、反応混合物をHPLC(条件1)で分析すると、4−クロロメチルピリジンおよび前記化合物(2−1)のピークが確認されたので、4−クロロメチルピリジンのピークおよび前記化合物(2−1)のピークが消失するまで、4−クロロメチルピリジン塩酸塩とカリウムtert−ブトキシドを10℃以下で添加した。追加した4−クロロメチルピリジン塩酸塩は2.0g(12mmol)、カリウムtert−ブトキシドは2.6g(24mmol)であった。反応混合物を固液分離し、ケークをDMF20mlで洗浄、ろ洗液からDMFを減圧下に留去した。
【0037】
この濃縮残液に酢酸エチル50mlを添加し、溶解液を水で洗浄後、溶媒を留去し、黄色結晶の前記化合物(2−2)を得た。該化合物の結晶をHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(2−2)の面積%は70.5%であった。得られた粗生成物5g(18mmol)をイソプロピルアルコール23.3gで再結晶を行い、白色結晶の前記化合物(2−2)2.7gを得た。(融点:98.6〜100.2℃、1H−NMR(CDCl3):δ1.75−1.79(4H,m,−(C22−)、δ3.53−3.57(4H,m,C2×2)、δ4.52(4H,s,C2×2)、δ7.23−7.27(4H,dd,J=0.8Hz,6.0Hz,arom×4)、δ8.55−8.57(4H,dd,J=1.6Hz,6.0Hz,arom×4)、MS(APCl):m/z=273[M+H]+
【0038】
[下記構造式の化合物(2)の合成:前記化合物(2−2)を4−クロロメチルピリジン塩酸塩から誘導したものに代え、反応条件を以下の通りにした他は合成例1と同様]

前記化合物(2−2)2.0g(7.34mmol)にオクチルブロマイド21.3g(110.3mmol)を加え、70〜80℃で53時間反応を行った。反応混合物をHPLC(条件2)で分析すると、前記化合物(2−2)のピークは消失していた。反応混合物からオクチルブロマイドを減圧下で留去し、油状の前記化合物(2)5.2g(粗収率:107.7%)を得た。得られたオイルをHPLC(条件2)で分析すると、化合物(2)のピークの面積%は81.3%であった。
【0039】
合成例3(前記化合物(3)の合成)

前記化合物(1−2)5.0g(18.36mmol)にデシルブロマイド40.6g(183.8mmol)を加え、70〜80℃で20時間反応を行った。
【0040】
反応混合物をHPLC(条件3)で分析すると、前記化合物(1−2)のピークは消失していた。反応混合物より上層のデシルブロマイド層を分離し、下層油状物をアセトニトリル−酢酸エチル=1:3(v/v)混液に注加した。混合物を冷却し、析出結晶を0℃でろ過、減圧乾燥を行い、灰白色結晶11.6g(粗収率(前記化合物(1−2)より):88.5%)を得た。該化合物の結晶をHPLC(条件1)で分析すると、前記化合物(3)の面積%は98.4%であった。融点およびNMR分析値は以下の通りであった。
(融点:76.8〜79.2℃、1H−NMR(CD3OD):δ0.9(6H、t、C3×2)、δ1.29〜1.40(28H、m、(C27×2)、δ1.77〜1.84(4H、m、C2×2)、δ2.00〜2.05(4H、t、C2×2)、δ3.69〜3.70(4H、t、C2×2)、δ4.64〜4.68(4H、t、C2×2)、δ4.77(4H、s、C2×2)、δ8.07〜8.11(2H、dd、J=、arom×2)、δ8.55〜8.57(2H、d、arom×2)、δ8.93〜8.94(2H、d、arom×2)、δ9.02(2H、s、arom×2)
【0041】
HPLC(条件3)
・カラム:Inertsil ODS-3(GL Sciences)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.5%酢酸アンモニウム水溶液、B−アセトニトリル A:60%(5min保持)→(10min)→A:30%(30min保持)→A:60%
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:10μL
【0042】
合成例4(前記化合物(4)の合成)
合成例3におけるデシルブロマイドに代えて当モル量のドデシルブロマイドを用いた以外は合成例3と同様にして下記構造式で表される化合物(4)13.0g(粗収率:91.5%)を得た。得られた化合物(4)をHPLC(条件4)で分析すると、化合物(4)のピークの面積%は97.5%であった。また、融点およびNMR分析値は以下の通りであった。

【0043】
(融点:90.0〜91.4℃、1H−NMR(CD3OD):δ0.89(6H、t、C3×2)、δ1.26〜1.39(36H、m、(C29×2)、δ1.79〜1.82(4H、m、C2×2)、δ1.84〜2.05(4H、m、C2×2)、δ3.67〜3.70(4H、t、C2×2)、δ4.65〜4.68(4H、t、C2×2)、δ4.77(4H、s、C2×2)、δ8.07〜8.11(2H、dd、arom×2)、δ8.55〜8.57(2H、d、arom×2)、δ8.93〜8.94(2H、d、arom×2)、δ9.02(2H、s、arom×2)
【0044】
HPLC(条件4)
・カラム:CAPCELL PAK C18 SG120(資生堂)4.6mmφ×250mm
・カラム温度:15℃付近の一定温度
・移動相:A−0.1Mリン酸二水素カリウム(0.05%燐酸)水溶液、B−80%アセトニトリル水溶液 A:B=30:70
・流量:1.0ml/min
・検出器:UV254nm
・注入量:20μL
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
高吸水性樹脂の粉末(三菱化学(株)製「アクアパールZS45」)1gに、濃度が500、100または10ppmの前記化合物(1)〜(4)または塩化ベンザルコニウムの水溶液をそれぞれ10g吸収させた後、130℃で乾燥することにより、抗菌剤を含有する消臭性吸水性樹脂組成物(以下、「抗菌SAP」という)を得た。このようにして得られた抗菌SAP1gをそれぞれ滅菌シャーレに入れ、定常期状態の菌液10mlを接種し、37℃で24時間静置した。その後、ゲル状になった樹脂溶液1gを採取し、9mlの滅菌生理食塩水液に加え激しく混和後、その上澄の生菌数の測定を寒天平板培養法で行なった。なお、菌としてMRSA(Staphylococcus aureus JCl)および大腸菌(Escherichia coli K12 W3110)の2種を使用した。結果を表1に示す。
【0046】

上記表1に示す結果によれば、前記化合物(1)〜(4)は抗菌剤として高吸水性樹脂中で充分に機能し得ることがわかる。
【0047】
実施例2
実施例1と同様にして得られた前記化合物(1)〜(4)または塩化ベンザルコニウム入り抗菌SAP1gをそれぞれ試験管に添加し、さらに人尿10mlと尿素分解酵素産生菌であるProteus mirabilis IFO 3849の菌液1ml(約106個/ml)を添加した後、37℃で保存し、6時間後および24時間後の試験管中のアンモニアの濃度をニオイセンサー(ポータブル型ニオイセンサーXP−329、新コスモス電機(株)製)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0048】

上記表2に示す結果によれば、前記化合物(1)〜(4)入り抗菌SAPは、アンモニアが検出されず、消臭力が特に優れていることがわかる。
【0049】
参考例1
前記化合物(1)〜(4)の最小発育阻止濃度(MIC)すなわち静菌力を測定し、塩化ベンザルコニウムの静菌力と比較した。最小発育阻止濃度(MIC)の測定は、一般的なブロス希釈法に従い、ニュウトリエントブロスを用いて、菌懸濁濃度106cell/mlとなるように調整した定常期状態の菌液を段階希釈した抗菌剤溶液と混合し、37℃で24時間静置培養後、増殖の有無によりMIC値を決定した。なお、供試菌として、グラム陰性菌8種およびグラム陽性菌4種を用いた。結果を表3に示す。
【0050】

【0051】
上記表3から明らかなように、前記化合物(1)〜(4)は大腸菌を含むグラム陰性菌8種およびMRSAを含むグラム陽性菌4種のいずれの細菌に対しても、同等の強い静菌力を示し、塩化ベンザルコニウムよりも広い静菌スペクトルを有する。また、尿素などをアンモニアやメチルアミンなどに分解する酵素(ウレアーゼ)を産生する細菌であるProteus mirabilis IFO 3849に対する各抗菌剤の静菌力に着目すれば、塩化ベンザルコニウムの静菌力に比べて、前記化合物は約10〜100倍もの強い静菌力を示す。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、おむつ内の吸水層やペット用排尿処理用品の尿中に含まれる尿素を分解してアンモニアやメチルアミンなどを発生させる細菌類の繁殖を抑える消臭性に優れた消臭性吸水性樹脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性樹脂と、下記一般式(1)で表される化合物とからなることを特徴とする消臭性吸水性樹脂組成物。

(但し、上記一般式において、R1およびR4は、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐の同一または異なるアルキレン基であり、R2およびR5は、水素原子、同一または異なるハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基であり、R3は、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキレン基であり、R6は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、R1およびR4は、ピリジン環の3または4位置に結合しているメチレン基であり、R2およびR5は、水素原子であり、R3は、テトラメチレン基であり、R6は、オクチル基、デシル基およびドデシル基から選ばれる基であり、Zは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子若しくはOSO27基(R7は、低級アルキル基若しくは置換或いは無置換のフェニル基である)である請求項1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物は、下記式(1)〜(4)で表される少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物。




【請求項4】
高吸水性樹脂100質量部あたり一般式(1)で表される化合物を0.001〜10質量部含有する請求項1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の消臭性吸水性樹脂組成物を用いてなることを特徴とする使い捨ておむつまたはペット用排尿処理用品。

【公開番号】特開2006−22218(P2006−22218A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201727(P2004−201727)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(501046958)
【出願人】(595137941)タマ化学工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】