説明

消臭除菌剤の製造方法

【課題】本発明は、防カビに有用性を発揮する納豆菌と抗菌物質として作用する銀ゼオライトを組み合わせ、さらに雰囲気の湿度によって容易に納豆菌が活性化するように調製した消臭除菌剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の消臭除菌剤は、少なくとも防カビに有用性を発揮する納豆菌と前核生物の殺菌に対する銀ゼオライトを含み、さらに粉酢(クエン酸)、オリゴ糖または乳糖などの補剤、及び食品用タルク(滑石粉)を調製して、これらを混合してなる。原料として用いる納豆菌は、食用納豆菌または納豆菌芽胞であり、納豆菌芽胞として用いる場合は、1.0X10乃至10個/gの範囲で使用する。また、消臭除菌剤は、粉末、粉末スプレー、懸濁液、固形石鹸及び水溶液からなる群から選択されるいずれか一つの形状とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭除菌剤に関し、より詳細には、食用の納豆菌とその発芽・発育に有効な多糖類と前核微生物の抑制に有効な天然に産する物を含む化学物質とを組み合わせて、消臭と同時に周辺のカビに代表されるような人体にとって無益または有害な微生物を効率よく抑制して、消臭及び除菌を同時に達成する消臭除菌剤の製造方法及びその製造方法によって製造された消臭除菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から消臭の目的で粉酢(クエン酸)や食品用タルク(滑石粉)が利用されてきた。粉酢(クエン酸)は即効的に消臭効果を示すもので、その利用価値が多用されている。また、食品用タルク(滑石粉)も臭いを吸着することで消臭剤として用いられている。
【0003】
また、近年では、銀ゼオライトなどの銀を用いた銀系無機抗菌材を用いた消臭除菌剤が様々な分野で用いられてきている。これは、ゼオライトによる速効的な吸着の消臭と、銀イオンによる電荷移動での前核生物の殺菌を導くものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ナノテクノロジーのような科学技術の進展に伴い、銀ゼオライトに代表されるような効率的に前核微生物の増殖を抑制して、消臭効果を上げるような物質が実用に供されている。これらは例えば、ブドウ球菌のような人体にとって有害な微生物を極めて有効に発育抑制できるが、一方で、カビなどの高等微生物に対しては従来多用されてきた、例えば、銅イオンのような物質に比べ、その発育抑制効果は劣っている。つまり、銀を用いた場合、大腸菌などの細菌には有効であるが、カビなどの真菌類等高等微生物に対しては、殺菌効果を奏するどころか、かえってその繁殖を促してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2003−137731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、我々の身近な菌類として納豆菌があり、納豆菌は古くから食品として利用されている。食用の納豆菌は、体外にタンパク質分解酵素、多糖類分解酵素など菌体の周りに存在する有機物の分解や共存する微生物の増殖の抑制に有効な分泌を大量に行なう、人体に無害なバチルス・サブチルス種に属している。十分な量の納豆菌を利用すれば、納豆菌の周囲で抑制する微生物はほとんど種類を問わず有効である。
【0006】
また、納豆菌は、例えば、水道水のように次亜塩素酸由来の遊離塩素酸基と接触することにより、極めて効率よく殺菌されるため、除菌も容易である。
【0007】
したがって、本発明は上述に鑑みてなされたものであり、防カビに有用性を発揮する納豆菌と、抗菌物質の銀ゼオライトを組み合わせ、さらに雰囲気の湿度により容易に納豆菌が活性化するように調製した消臭除菌剤の製造方法およびその製造方法によって製造される消臭除菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、我々は、防カビ効果に有用性を発揮する納豆菌と抗菌物質の銀ゼオライトを組み合わせることにより、消臭と同時にカビなどの真菌類等高等微生物も含めた有効な除菌効果が確認されたことによって上記課題が解決できることを見出して、本件発明を完成させたものである。
【0009】
即ち、上記目的は、本発明による以下の手段により解決される。
【0010】
請求項1にかかる発明は、少なくとも納豆菌と銀ゼオライトを含み、雰囲気の湿度により容易に該納豆菌が活性化するように調製したことを特徴とする消臭除菌剤の製造方法によって達成される。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも納豆菌と銀ゼオライトを含み、雰囲気の湿度によって容易に納豆菌が活性化するように調製した消臭除菌剤によって、消臭と同時にカビなどの真菌類等高等微生物も含めた有効な除菌をすることができる。
【0012】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記納豆菌は、食用納豆菌または納豆菌芽胞であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、前記納豆菌を食用納豆菌または納豆菌芽胞とすることによって、消臭と同時にカビなどの真菌類等高等微生物も含めた有効な除菌をすることができる。
【0014】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の発明において、前記納豆菌芽胞は、1.0×10乃至10個/gの範囲で使用することを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、前記納豆菌芽胞を1.0×10乃至10個/gの範囲で使用することによって、消臭と同時にカビなどの真菌類等高等微生物も含めた有効な除菌をすることができる。
【0016】
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される消臭除菌剤によって達成される。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、少なくとも食用納豆菌または好ましくは1.0X10乃至10個/gの納豆菌芽胞と銀ゼオライトを含んだ消臭除菌剤とすることによって、消臭と同時にカビなどの真菌類等高等微生物も含めた有効な除菌をすることができる。
【0018】
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の発明において、前記消臭除菌剤は、粉末、粉末スプレー、懸濁液、固形石鹸及び水溶液からなる群から選択されるいずれか一つの形状であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、前記消臭除菌剤を粉末、粉末スプレー、懸濁液、固形石鹸及び水溶液からなる群から選択されるいずれか一つの形状とすることによって、消臭と同時にカビなどの真菌類等高等微生物も含めた有効な除菌が可能で、様々な使用環境で操作しやすく扱いやすい形態の消臭除菌剤とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、防カビに有用性を発揮する納豆菌と、一般的な抗菌物質として作用する銀ゼオライトを組み合わせ、さらに雰囲気の湿度によって容易に活性化するように調製した消臭除菌剤とすることにより、消臭と同時にカビも含めた効果的な除菌作用を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
【0022】
本発明の一つの態様において、消臭除菌剤の製造方法は、少なくとも防カビに有用性を発揮する納豆菌と前核生物の殺菌に対する銀ゼオライトを含み、さらに粉酢(クエン酸)、オリゴ糖または乳糖などの補剤、及び食品用タルク(滑石粉)を調製して、これらを混合してなることを特徴とする。納豆菌は食用納豆菌を用い、好ましくは、納豆菌芽胞を用いて1.0×10乃至10個/gの範囲とすることによって良好な消臭除菌効果を得ることができる。なお、本発明で使用する食用納豆菌は、市販の納豆菌を用いるために容易に入手可能である。
【0023】
ここで、各組成物について説明する。
【0024】
銀ゼオライトはそのゼオライトの吸着による速攻性の消臭と、その銀イオンによる電荷移動での前核生物を殺菌する。特に、銀ゼオライトは、銀系無機抗菌材として幅広く用いられている。ゼオライトはアルミノ珪酸塩鉱物という、一種の粘土鉱物であり、人体及び環境に対して安全な鉱物である。銀ゼオライトは、ゼオライトのイオン交換機能を利用したものであり、銀をイオン状態のまま安定的に保持したものである。銀ゼオライトの抗菌性の特徴は、図1のように、その抗菌スペクトルの広さにあるが、特に、カビなどの真菌類等高等微生物の殺菌効果は低い。
【0025】
そのために、本発明では、カビなどの高等真菌類の殺菌に対して有用な納豆菌を銀ゼオライトと組合わせることによって、細菌だけでなく、カビに対して効果を有する消臭除菌剤を提供することができる。
【0026】
納豆菌は、上述したように、食用納豆菌を用いるが、好ましくは1.0×10乃至10個/gの納豆菌芽胞を用いることがより好ましい。納豆菌は、その効果を発揮する場合、通常活性化するのに数十分程度の時間を要するが、予め、弱い非活性化状態で餌として納豆菌の栄養分となるオリゴ糖類または乳糖などの補剤を組合わせて、雰囲気の湿度により容易に活性化するように調製され、カビなどの真菌類等高等微生物の消化による殺菌が可能となる。
【0027】
また、粉酢(クエン酸)は即効的な消臭効果を有し、一般に消臭剤の一成分として用いられている物質である。食品用タルク(滑石粉)も消臭効果を有する物質であるが、吸着による消臭効果の他に、保湿による納豆菌の保護をするために用いられる。
【0028】
これらの成分をそれぞれ調製し、混合して本発明の消臭除菌剤を得る。本発明の消臭除菌剤は、通常、粉末状で提供されるが、これらを水溶または油溶して非活性化状態を達成する組成に工夫を加えた物も含まれる。例えば、粉末スプレー、油性溶剤などの懸濁液、固形石鹸、コロイド状態で液状パウダーの水溶液などであってよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明にしたがって実施した具体例を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
本発明の典型的な実施例として、本発明の消臭除菌剤の一つの製造方法を説明する。本発明の消臭除菌剤の製造方法を概略したフローチャートを図2に示す。
【0031】
銀ゼオライト
合成ゼオライトに銀イオンを固定化した粉末を使用した。なお、銀ゼオライトは既に除菌剤として多用されている物質であり、その調製方法は周知であるために、ここでは詳述しない。また、市販品(例えば、製品名ゼオラム:製造会社名東ソー)を使用し、概ね10ミクロン程度の粒子(200メッシュ以上)を使用することで、吸着機能を十分に活用できる。製造工程上、200℃以上に加熱する工程があり、無菌化される。銀ゼオライトは最終製品の含有率2.5%以上となるよう調整する。
【0032】
納豆菌
納豆菌は食用納豆菌を用いて培養する。市販されている納豆菌を用い、菌を単離し、菌種を遺伝子工学的に同定して、食用納豆菌である株を用いる。平板寒天培養により、単離された菌株を、好気性細菌を培養するアミノ源及びグルコース添加の富栄養培地を充填したフラスコに接種培養し、培養用種株を得る。種株を50L程度までのジャー培養でスケールアップし、培養後、菌種を確認した後に冷却、室温保存用のスタブ試験管に接種し、室温保存用株とし、また、蔗糖などの安定化剤を添加して、プラスチック製耐熱性容器に概ね数ミリリットルずつを分注して、製造用冷凍保存種株として保管する。製造は、冷凍保存された種株を解凍後に、室温保存されたスタブ試験管から取り出した保存用株と同時にそれぞれ平板寒天培養し、顕微鏡等で性状が同一であることを確認し、適正な製造用種株を得る。製造用種株を20〜50Lで初段培養した後、製造スケールに合わせた規模の製造を二段目として、初段培養液を数百ミリリットルから数リットルを分注して実施する。培養後、内生胞子形成のために迅速に培地条件を貧栄養化したり、培地温度を低温にしたり、増殖が困難な環境に変化させることにより内生胞子形成を開始させる。開始後、十分に内生胞子が形成された12〜24時間後に、スプレードライ法やフィルター法によって高濃度培養菌液を得る。高濃度培養菌液を121℃以上、1.2気圧以上で20分以上加圧加熱滅菌処理して生殖体を死滅させる。本処理をオートクレーブ滅菌処理という。オートクレーブ滅菌処理された高濃度培養菌液をフリーズドライして、長期生存可能な内生胞子(芽胞)形態の乾燥粉末を得る。次に、得られた乾燥粉末を回転式粉砕器等により粗粉砕し、分級器により概ね1ミリ程度以下の分級を得る。得られた分級を衝突式粉砕器等により、200〜500メッシュ程度に微粉砕し、サイクロン式分級器などにより10ミクロン程度以下の微粒子を得る。微粉砕器は例えば、アイシンナノテクノロジー社製のナノジェットマイザーなどを用いることで微粉砕作業が実現できる。得られた微粒子原末を適当に希釈して、界面活性剤と共に水に懸濁して一定濃度の菌液とし、菌数を検定する。最終的にバクテリアの発芽促進剤であるオリゴ糖類で微粒子原末をV型攪拌機などを利用して希釈して1×1011以上の納豆菌芽胞の生成物を得る。
【0033】
最終製品には納豆菌芽胞を1.0×10乃至10個/gの範囲で使用することによって、除菌消臭を実現する。1.0×10/g未満では十分に消臭せず、1.0×10個/gを超えると納豆に代表される納豆菌代謝物特有の臭気を発生し得る。
【0034】
また、納豆菌量は、その種類により、分解能と臭気発生能力とのバランス、及び、塗布量に依存して調整される。
【0035】
消臭除菌剤に納豆菌などの生菌を混合する場合、生菌による対象物の分解作用による除菌消臭の効果(C)と生菌が代謝した結果生ずる匂い物質による匂いの付加(S)が相互に影響し合う。CとSは、生菌が投入された環境に存在する栄養物(または、分解対象物)Nに依存する。C、S、及びNはそれぞれが混合物と考えられるため、それぞれ下記のように考えられる。
【0036】
【数1】

【0037】
【数2】

上式(1)、(2)のC、Sはともに菌の種類Bに依存して決まることから、
【0038】
【数3】

と表すことができる。
菌種が固定された場合、除菌消臭を目的として生菌を利用するためには、
【0039】
【数4】

上式の条件を満たすように菌の使用方法を設計する必要がある。
【0040】
(4)式は、対象となるNの特性によって、菌量を適宜調整することにより達成可能な条件である。
【0041】
ここにいう、Nの特性とは、(A)十分に菌Bが増加し得る条件、(B)菌Bは増えることは困難であるが、一定期間生殖体として維持が可能な条件、(C)菌Bは生殖体を維持できない条件の3つに大別される。
【0042】
ここで、(C)は菌Bを必要としない、つまり、Nが極めて希薄な条件であり、除菌消臭を目的とする必要がないと類推されるため除外する。
【0043】
以上によって、菌Bを選抜するためには、(4)式の時間τ経過後の左辺と右辺の比(=IB)が十分に大きければ実用上有利と結論づけられる。
【0044】
納豆菌の場合、τを24時間と仮定すると、概ね、LogIは2〜5程度となった。
【0045】
図3にある種の納豆菌についての実験結果を示す。
【0046】
この結果から、一回塗布量中に菌量は100万個以上1億個以下(塗布量グラム当たり)が最適となるが、好ましくは、概ね100万個程度(塗布量グラム当たり)、より好ましくは1000万個程度(塗布量グラム当たり)の菌を利用すれば、菌由来の匂いを気にすることなく、分解活性を効率よく利用すればよいことが分かる。
【0047】
なお、上記した塗布量グラム当たりの菌量を約20倍にした量が本発明の消臭除菌剤を製造する際に使用する菌量として好ましく、したがって、最終製品には納豆菌芽胞を1.0×10乃至10個/gの範囲で使用することが好ましい。
【0048】
補剤
補剤は、上述したように、納豆菌内生胞子の発芽に必要な糖分を納豆菌量に合わせて調整して配合する。使用する糖分は、微生物発芽促進作用で知られるオリゴ糖類または乳糖などの食品添加物等を主体とする。本実施例では補剤としてオリゴ糖を使用した。オリゴ糖は、市販品を用い、例えば、イソマルトオリゴ糖(製品名イソマルト:製造会社名日研化成)を用いる。補剤についても上述したような破砕工程を用いて調製し、概ね200メッシュ以上の微粒子化物を使用する。混合する食用微生物数の概ね10〜1,000倍程度の分子数をV型攪拌機などを用いて一様に配合することにより、微生物の発芽が促進される。
【0049】
粉酢(クエン酸)
トウモロコシやサツマイモなどの澱粉を糖分供給体とし、アルコール発酵用コウジカビなどで過剰発酵させることにより、クエン酸が得られる。これをフィルター滅菌により、無菌化処理して液体クロマトグラフィー法により、純粋なクエン酸分画を得て、水分を蒸発させることにより、粉酢の結晶水和物を得る。これを上述と同様な手法で破砕して概ね10ミクロン程度の粒子として使用する。等量の水分の元で、0.5%程度の濃度になるよう調整することにより、衣服内気候等で飽和湿度の環境で、殺菌作用を発揮すると共に緩衝的に酸性・塩基性の匂い物質を中和する。
【0050】
食品用タルク(滑石粉)
市販の滑石粉を上述と同様な手法の破砕により、概ね、10ミクロン程度の粒子を調整後、121℃、1.2気圧で加圧加熱滅菌処理を20分以上実施するか、400℃以上で感熱滅菌を1時間以上行なうことによって食品用タルクを調製した。なお、滑石粉は、容易に入手可能な一般に市販されている市販品を使用した。
【0051】
また、本発明の消臭除菌剤において、食用納豆菌以外の各成分は既知の手法によって調製してもよい。以上の処理によって得た原末を本発明の消臭除菌剤を得るために使用した。
【0052】
100gの食品用タルクに、銀ゼオライト3g、納豆菌末1,000万cfu/g、粉酢(クエン酸)を1.5g、イソマルトオリゴ糖を1.2g加えて、概ね100gの製品を得た。さらにまた、必要であれば、乾燥剤等の品質保持剤を適宜添加して調製してもよい。
【0053】
なお、追加微粒子化工程として、混合物または各成分を予め、気相中での衝突による破砕方法などで、概ね1ミクロン以下に粒子径を調製することにより、調整された製品パウダーは塗布後、吸湿して直ちに透明化させることができる。追加微粒子化工程を実施しない場合でも概ね10ミクロン程度に粒子径を調製することにより、塗布量500mg程度を十分に引き延ばせば、吸湿と拡散により、概ね数分から10分程度で粉末色は消失するため、利用者が衣服、靴等生活雑貨、及び、生活環境に使用しても違和感なく利用することが可能とされる。
【0054】
図4を参照するに、上記実施例において、銀ゼオライトの有無、納豆菌の有無によって、比較検討を行なった結果を示す。図中、(A)及び(B)の実線は銀の有無(納豆菌はともに無し)、(C)及び(D)破線は納豆菌の有無(銀はともに有り)を示す。被験者は40代男性で、皮膚(特に、脇下周辺部)に塗布し、室温27〜30℃で軽作業及び事務作業をして過ごした場合の脇下の測定結果である。塗布後24時間は、入浴などの身体を清浄にする行為を禁止して、市販香りセンサ(香りセンサFPO2:双葉エレクトロニクス社製)を用いて体臭の香質と匂い強度の測定を実施した。測定した結果、重質(常温で非揮発性、体温程度で若干揮発)の香りに対して、速攻、遅効とも効果が確認できた。また、軽質(揮発性)の香りに対しては、若干残るが、匂い強度そのものが低下しているので、ヒトの体感では匂いが感じられない程度に抑制できた。図4から分かるように、4時間以内の消臭は、銀の有無で説明できるが、24時間後は納豆菌の有る一例のみが有意な差を示した。
【0055】
上記のように、生菌を配合した場合、化粧品や医薬部外品には分類されないために、人体皮膚に塗布することが不可能であったが、食品レベルの安全性の高い成分を組合せ、納豆菌などの食用微生物を利用することで、経口安全性、すなわち、口(摂食)から排泄に到る消化管と接しても安全なことが担保されるため、使用者の安全性を担保して、皮膚に塗布しても安全に利用に供することが可能となった。
【0056】
本願発明で用いる納豆菌などの生菌を利用する最大の利点は、時間経過に対して安定的な品質の生存率の高い利用により、長時間にわたり、生分解による匂い物質分解や生菌自体が生命維持のために栄養分として皮膚や衣服等に付着するカビなどの雑菌の分解を行うことによる除菌効果が得られる。
【0057】
したがって、上記実施例から明らかなように、防カビ効果に有用性を発揮する納豆菌と銀ゼオライトの抗菌物質とを組み合わせることにより、消臭と同時にカビなどの真菌類等高等微生物も含めた有効な除菌効果を奏する消臭除菌剤を提供できる。さらに、本発明の消臭除菌剤は様々な形態とすることが可能であり、通常の粉末状だけでなく、これらを水溶または油溶して非活性化状態を達成する組成に工夫を加えた物も含まれ、例えば、粉末スプレー、油性溶剤などの懸濁液、固形石鹸、コロイド状態で液状パウダーの水溶液などとすることができる。
【0058】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】銀ゼオライトの抗菌作用を示す表である。
【図2】本発明の消臭除菌剤の製造方法を概略したフローチャートを示す図である。
【図3】納豆菌による対象物の分解活性と、その結果生ずる香りとの関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例において、銀ゼオライトの有無、納豆菌の有無によって、比較検討を行なった結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも納豆菌と銀ゼオライトを含み、雰囲気の湿度により容易に該納豆菌が活性化するように調製したことを特徴とする消臭除菌剤の製造方法。
【請求項2】
前記納豆菌は、食用納豆菌または納豆菌芽胞であることを特徴とする請求項1に記載の消臭除菌剤の製造方法。
【請求項3】
前記納豆菌芽胞は、1.0×10乃至10個/gの範囲で使用することを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造される消臭除菌剤。
【請求項5】
前記消臭除菌剤は、粉末、粉末スプレー、懸濁液、固形石鹸及び水溶液からなる群から選択されるいずれか一つの形状であることを特徴とする請求項4に記載の消臭除菌剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−13512(P2008−13512A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188022(P2006−188022)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(500349557)株式会社バイオ医療情報 (5)
【Fターム(参考)】