説明

消色装置

【課題】リライタブルプリンタ等に搭載され用紙の昇温、熱源の低温化、消費電力の削減、立ち上げ時間の短縮に有効な消色装置を提供する。
【解決手段】上下の熱輻射ヒータ36の熱輻射面は用紙搬送経路25に平行する平行部分45−1と用紙搬送経路25の下流側方向に用紙搬送経路25から徐々に離れる傾斜部分45−2とで形成されている。平行部分45−1は用紙に対し適温の加熱をe点まで維持し、その適温を傾斜部分45−2はf点まで維持する。上下の消色光源39の消色光41は熱輻射ヒータ36の傾斜部分45−2の傾斜開始部に対応する用紙搬送経路25のg点に上流側照射領域を設定され、下流側照射領域はh点に設定される。各点の位置関係は上流側からg点、e点、h点、f点の順になるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消色装置に係わり、更に詳しくは例えばリライタブルプリンタ等に搭載され用紙の昇温、熱源の低温化、消費電力の削減、立ち上げ時間の短縮に有効な消色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の一環として紙資源の節減が叫ばれている。画像形成装置等の紙資源の節減と再利用では、片面印刷した用紙の裏面の有効活用などは既に社会一般になされている。また、使用済み用紙を回収し用紙の原料とし、再生紙として再度用いることも一般に行われている。
【0003】
しかし片面印刷の用紙の再利用では、再使用の回数が通常1回に限られてしまう。また、原料として再利用する際には回収自体にエネルギーとコストがかかり、原料として加工する際にもエネルギーが掛かってしまう。
【0004】
そこで、オフィス内において用紙を複数回使用できるようにする取組みが種々為されている。トナー像により一度画像が形成された用紙を紙資源として再利用するには、トナーにより形成された用紙上の画像を物理的に除去または光で消色して再利用可能な用紙とすることが考えられている。
【0005】
画像を物理的に除去して用紙を再利用するためには、用紙の画像形成面にトナーを除去する処理液を塗布し、加熱してトナーを溶解させて画像を除去する方法や、用紙の画像形成面を研摩してトナー画像を削り落とす方法などがあるが、これらの方法は、手数がかかると共に、再利用する用紙に損傷が発生し易いため問題がある。
【0006】
また、例えば、光を用いる消色方法としては、最初に用紙に画像を形成するに際し、近赤外線吸収色素および消色剤を含む消色性トナーによりOA用紙に画像を記録し、この画像を近赤外線等の特殊な光源による光照射によって消色して用紙の再利用を図るという着想は既に論文で公開されている。(例えば、非特許文献1参照。)
【0007】
この非特許文献1の方法において、近赤外線吸収色素は照射された近赤外線を吸収して励起し、消色剤と反応して無色化する。但し、色材がトナー化されていることもあって、トナー結着剤樹脂中の色素は近赤外線を吸収しても常温においてはほとんど消色反応が見られない。
【0008】
このため、熱を加えて反応を加速してから無色化するという消色作用に有効な一般的な方法が行われている。例えば、画像形成時の定着装置と消色時の消色装置を共通にし、トナー画像の消色には事前にトナー像を加熱しておいてから消色光を照射すると消色作用が有効に働くという一般に行われている技術に基づいて、画像形成時に用いる定着装置の熱ローラ対を、消色時の加熱器として兼用し定着装置内において熱ローラ対の下流側に消色光照射用の光源を配置した構成が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−049634号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】細田喜一著、「機能性色素のトナーへの応用」電子写真学会誌、第31号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に示される従来技術では、加熱ローラにより加熱されたトナー像に消色光が照射されるまでにトナー像の温度が下がって消色効果が薄れるという問題に加えて、加熱ローラ面にトナー像がオフセットするという問題も解決すべき課題として残されている。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、例えばリライタブルプリンタ等に搭載可能であり、トナーのオフセットを防止し、用紙の昇温、熱源の低温化、消費電力の削減、立ち上げ時間の短縮に有効な消色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、先ず第1の発明の消色装置は、用紙の両面に印字された消色性トナー像を消色すべく上記用紙の搬送経路の上下にそれぞれ配置された上記用紙の上記消色性トナー像の印字面を加熱する上部熱輻射ヒータ及び下部熱輻射ヒータと、加熱された上記用紙の上記消色性トナー像の上記印字面に消色光を照射する上部消色光源及び下部消色光源と、を備え、上記上部熱輻射ヒータ及び上記下部熱輻射ヒータは、それぞれ、熱輻射面が、上記搬送経路の上流側で上記搬送経路に平行する部分と該平行する部分から上記搬送経路の下流側方向に上記搬送経路から徐々に離れる傾斜部分とが連続して成り、上記上部消色光源及び下部消色光源は、上記上部熱輻射ヒータ及び上記下部熱輻射ヒータの熱輻射面が上記搬送経路から徐々に離れる傾斜部分の傾斜開始部に対応する上記搬送経路の面に、上記消色光の上流側照射領域を設定されるように構成される。
【0014】
次に第2の発明の消色装置は、用紙の両面に印字された消色性トナー像を消色すべく上記用紙の搬送経路の上下にそれぞれ配置された上記用紙の上記消色性トナー像の印字面を加熱する上部熱輻射ヒータ部及び下部熱輻射ヒータ部と、加熱された上記用紙の上記消色性トナー像の上記印字面に消色光を照射する上部消色光源及び下部消色光源と、を備え、上記上部熱輻射ヒータ部及び上記下部熱輻射ヒータ部は、それぞれ、熱輻射面が上記搬送経路の上流側から下流側方向に上記搬送経路から徐々に離れるように傾斜して配置されたヒータと、該ヒータの上記熱輻射面の上流側端部と上記搬送経路との間に介装されて上記ヒータの上記熱輻射面の端部の熱を伝導して上記搬送経路に搬入される上記用紙を予熱する熱伝導補助ローラと、から成り、上記上部消色光源及び下部消色光源は、上記上部熱輻射ヒータ部及び上記下部熱輻射ヒータ部の上記熱伝導補助ローラに近接する下流側に位置する上記搬送経路の面に、上記消色光の上流側照射領域を設定されるように構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、例えばリライタブルプリンタ等に搭載可能であり、用紙の昇温、熱源の低温化、消費電力の削減、立ち上げ時間の短縮に有効な消色装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る消色装置を備えたカラー画像形成装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【図2】実施例1に係る消色装置の用紙搬送経路において用紙の両側端部を挟持して搬送する両側端搬送装置を示す斜視図である。
【図3】実施例1に係る消色装置の用紙搬送経路の平面図である。
【図4】(a)は実施例1に係る消色装置の基本的内部構成を示す側面図、(b)はその平面図である。
【図5】実施例2に係る消色装置の実施例1に示した基本的構成において部分的に生じる不具合を改善した内部構成を示す側面図である。
【図6】実施例3に係る消色装置の熱源に更に改良を加えた内部構成を示す側面図である。
【図7】実施例4に係る消色装置の熱源に加えた改良の他の例を示す内部構成の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。尚、以下で説明する消色性トナーは、特には詳述しないが、近赤外線吸収色素および消色剤を樹脂に混練し、平均粒径が9μmになるように作成したものである。
【0018】
ただし、この消色性トナーにより印字した印字媒体(以下、用紙ともいう)に常温において近赤外線を照射してもほとんど消色反応が見られない。用紙を加熱し、消色性トナーが溶融している状態に近赤外線を照射したとき、消色反応が観察されるようになる。
【0019】
したがって、消色装置には用紙を加熱する要素と近赤外線を照射する要素の2つの要素を備えている必要がある。しかし、この近赤外線吸収色素を含む消色性トナーのプリンタ等は市販されていないので、以下、試作した消色装置を通常のプリンタに組み込んで行った実験により確認した内容を説明する。
【0020】
実験によれば、用紙を加熱する装置と近赤外線を照射する装置を検討した結果、熱源としてヒータの輻射熱を使って用紙を加熱すること、及び消色用近赤外線光源としてLED光を用いることが適しているという結論に至った。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る消色装置を備えたカラー画像形成装置の内部構成を模式的に示す断面図である。図1に示す画像形成装置(以下、単にプリンタという)1は、消色用の熱源となる熱輻射ヒータと消色光を照射する光源とトナーオフセット防止機構とを有する消色装置を備えている。
【0022】
このプリンタ1は、本体装置筐体2の内部中央において、水平方向に延在する無端状の転写ベルト3を備えている。転写ベルト3は、不図示の張設機構によって張設されながら、駆動ローラ4と従動ローラ5に掛け渡され、駆動ローラ4により駆動されて、図の矢印aで示す反時計回り方向に循環移動する。
【0023】
転写ベルト3の上循環移動面の上方には、4個の画像形成ユニット6(6r(k)、6y、6c、6m)が配設されている。画像形成ユニット6rは、現像器7内に消色性トナーを収容した消色性トナー画像形成用の画像形成ユニットであり、現像器7内に黒トナーを収容した不図示の黒色画像形成用の画像形成ユニット6kとユーザの任意によって交換可能である。
【0024】
画像形成ユニット6yは、現像器7内にイエロートナーを収容したイエロー色画像形成用の画像形成ユニットであり、画像形成ユニット6cは、現像器7内にシアントナーを収容したシアン色画像形成用の画像形成ユニットであり、画像形成ユニット6mは、現像器7内にマゼンタトナーを収容したマゼンタ色画像形成用の画像形成ユニットである。
【0025】
4個の画像形成ユニット6については、現像器7内に収容されているトナーの種類を除くと、いずれも同一の構造であるので、以下、画像形成ユニット6rを取り上げて、その構造を簡単に説明する。
【0026】
画像形成ユニット6には、転写ベルト3の上循環移動面に接する感光体ドラム8が配設されている。感光体ドラム8には、その周面を取り巻くように近接して、図示を省略したクリーナ、初期化帯電器、光書込ヘッドに続いて、現像器7の下部開口部に保持された現像ローラ9等が配置されている。
【0027】
上記の現像ローラ9は、現像器7に収容されている黒トナー又は消色性トナー(以下、消色性トナーのみについて説明する)の薄層を表面に担持し、光書込ヘッドによって感光体ドラム8の周面上に形成されている静電潜像に消色性トナーの画像を現像する。
【0028】
感光体ドラム8の下部には、転写ベルト3を介して不図示の一次転写ローラが圧接して、そこに一次転写部を形成している。一次転写ローラには、不図示のバイアス電源からバイアス電圧を供給される。
【0029】
一次転写ローラは一次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加して、感光体ドラム8の周面上に現像されている消色性トナーの画像を転写ベルト3に転写する。
【0030】
転写ベルト3の図に示す右端部が掛け渡されている従動ローラ5には、転写ベルト3を介して二次転写ローラ11が圧接し、ここに二次転写部を形成している。二次転写ローラ11には、不図示のバイアス電源からバイアス電圧が供給される。
【0031】
二次転写ローラ11は二次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加し、転写ベルト3に一次転写されている消色性トナーの画像を、図の下方から上方に矢印b又は矢印cで示すように搬送され更に画像形成搬送路12に沿って搬送されてくる記録媒体に転写する。
【0032】
上記の矢印cで示すように搬送される記録媒体14は、上部給紙カセット15に積載されて収容され、不図示の給紙ローラ等により最上部の一枚ごとに取り出され、矢印cに示すように給紙搬送路に送出され、更に画像形成搬送路12を搬送されて、上記の二次転写部を通過しながら消色性トナーの画像を転写される。
【0033】
消色性トナーの画像を転写されながら二次転写部を通過した記録媒体14は、定着搬送路16に沿って定着部17へと搬送される。定着部17の加熱ローラ18と押圧ローラ19は、記録媒体14を挟持し、熱と圧力を加えながら搬送する。
【0034】
これにより、記録媒体14は、二次転写されている消色性トナーの画像を紙面に定着され、加熱ローラ18と押圧ローラ19により更に搬送されて、本体装置筐体2の上面に形成されている排紙トレー21に排紙される。
【0035】
一方、上記の矢印bで示すように搬送される用紙22は、既に紙面に消色性トナー像を形成されている用紙であり、下部給紙カセット23から一枚ごとに取り出されて矢印dに示すように給紙搬送路に送出される。
【0036】
そして、この場合は、用紙22は、消色装置24に搬入される。消色装置24には用紙搬送経路25の上流側(図の左方)と下流側(図の右方)に、それぞれ搬送ローラ・コロ体26(26a、26b)配置されている。
【0037】
2組の搬送ローラ・コロ体26は、消色装置24に搬入された用紙22を用紙搬送経路25に沿って上流側から下流側へ搬送する。2組の搬送ローラ・コロ体26の間に形成されている用紙搬送経路25には後述する消色ユニットが配置されている。
【0038】
図2は、上記の用紙搬送経路25において用紙22の両側端部を挟持して搬送する両側端搬送装置を示す斜視図である。尚、同図には用紙搬送方向上流側の搬送ローラ・コロ体26aと下流側の搬送ローラ・コロ体26bの図示を省略している。
【0039】
図2に示すように、用紙搬送経路25の両側には、駆動ローラ27と従動ローラ28に掛け渡され、内部中央に押さえローラ29を有する無端状の細ベルト31が上下二段に配置された両側端搬送装置32が配置されている。この両側端搬送装置32は、同図に示すように用紙22に対し、用紙22の両側端部を挟持して図の矢印d方向に搬送する。
【0040】
これにより用紙22の両端部が熱により丸まったり、その先端部が下方に垂れ下がって用紙搬送経路25から外れるような不具合を防止することができる。
【0041】
図3は、上記の消色装置24の用紙搬送経路25の平面図である。搬送ローラ・コロ体26a、26b及び両側端搬送装置32によって矢印d方向に搬送される用紙22の上下には、それぞれ、図3に示す6本のヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)が張設されている(図では上方のワイヤを実線、下方のワイヤを破線で示している)。
【0042】
これらのヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)は、それぞれワイヤ保持部34(34a、34b)に保持されている。これらヒータ接触防止ワイヤ33とワイヤ保持部34は、ヒータ接触防止装置35として消色装置24内に固定して配置されている。
【0043】
このヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)は、用紙22が後述する熱輻射ヒータに接触するのを防止するとともに、用紙22の丸まりを上下から押さえて、用紙22が両側端搬送装置32から脱落するのを防止している。
【0044】
このように、図1に示した消色装置24は、用紙22の丸まりや垂れ下がりを防止しながら搬送ローラ・コロ体26aから搬送ローラ・コロ体26bまで、斜めに張られたヒータ接触防止ワイヤ33によって用紙22を案内する。
【0045】
ヒータ接触防止ワイヤ33は、用紙22の搬送方向に対して斜めに張設されていると共に広い間隔で配置されているので、熱輻射ヒータからの消色用輻射加熱と、これも後述するLED光源からの消色用の照射光を遮ることは全く無いといって良い。
【0046】
尚、消色装置24が片面のみの消色構造であると、下部給紙カセット23に用紙22を収容する際、消色する画像面を上面向き又は下面向きのいずれか決められた向きに設定して収容しなければならないので使い勝手が悪くなる。本例では、両面を同時に消色することができるので使い勝手が良い。
【0047】
また、両面を消色する方法としては、両面印刷機構を備えた一般的なプリンタと同様に片面を消色し、用紙を反転させて、裏面を消色する方法が考えられるが、片面の消色性トナー画像に消色に必要な熱を一度加え後に、反対面の消色性トナー画像の消色を行うと、消色性能が低下することがある。
【0048】
すなわち、最初の片面を消色する時に裏面側の画像も加熱され、両面印刷機構で用紙22を反転させて搬送中に裏面側の画像が冷やされ、続けて裏面側を消色する時に消色性能が低下することが経験的に判明している。また、更には、表裏の消色処理を2度にわたって行うことになるので、消色時間が長くなるという不便がある。
【0049】
本例では、両面を同時に消色できるので、消色性能の低下も起こらず、良い消色性能が維持され、また、表裏の消色処理を2度にわたって行う場合よりも消色時間が1/2以下に短縮される。
【0050】
なお、片面の消色の場合でも、表裏両面から加熱すると、片面加熱の場合の用紙裏面からの熱漏洩によるエネルギー損失がなく効率よく加熱することが出来る。また、熱輻射ヒータの設定温度を下げることが出来るため消費電力を低減させる効果が期待できる。
【0051】
図4(a)は、消色装置24の用紙搬送機構によって構成される用紙搬送経路25の上下に配置される本例の消色ユニットの基本構成を示す図であり、同図(b)はその平面図である。
【0052】
なお、図4(a),(b)には、図3に示した構成と同一の構成部分には図3と同一の番号を付与して示している。また、図4(a),(b)には、ヒータ接触防止機構35と、用紙両側端搬送装置32の図示を省略している。
【0053】
図4(a),(b)に示すように、消色装置24は、用紙搬送経路25の上下に、それぞれ、熱輻射ヒータ36(36a、36b)と消色光源39(39a、39b)から成る消色ユニット40を備えている。
【0054】
熱輻射ヒータ36はセラミックヒータである。この熱輻射ヒータ36は、用紙搬送経路25を挟んで用紙搬送経路25上流側において用紙搬送経路25の上下に配置される。そして、用紙搬送経路25への熱輻射効率を良くするために、用紙搬送経路25に平行に配置される。
【0055】
消色光源39は光源37(37a、37b)とレンズ38(38a、38b)から成る。本例の光源38には、省電力型の光源としてLEDを用いる。LEDとしては、中心波長が850nm、半値幅50nm以上の波長分布の光を発光するLEDが好ましい。
【0056】
このLEDを用紙の通過方向と直交する方向に15個並べ(図4(b)では簡明に5個のみ示している)、これらのLEDの前に焦点距離30mmのレンズ38を並べて消色光源40を構成し、その照射光41が用紙幅Pwの全体に当たるように配列する。
【0057】
熱輻射ヒータ36で加熱中の用紙に消色光41を照射するために、つまり上下の熱輻射ヒータ36の間に消色光41を照射するために、消色光源40は、用紙搬送経路25に対して消色光41を斜めに照射するように配置される。
【0058】
また、光源37と用紙搬送経路25との間に配置されるレンズ38は、光源37の消色光41を用紙進行方向に対して集光して消色光41を効果的に照射出来るように、リニアフレネルレンズが使用されている。
【0059】
上記の構成において、各部の寸法及び配置関係は、熱輻射ヒータ36の幅寸法Hwを60mm、熱輻射ヒータ36と用紙搬送経路25との間の距離Dを20mmとし、用紙の搬送速度を15mm/secとする。
【0060】
ところで、消色光源39の消色光41が消色性トナー画像に対して効果的な消色を得るためには、用紙つまり消色性トナー画像に適温が必要である。この用紙の適温は約200℃程度である。そのための熱輻射ヒータ36に対する温度設定は、上記の配置関係においては、320℃の温度設定が必要となる。
【0061】
また、消色性トナー画像の消色剤の破壊を防いで効果的に消色性トナー画像の消色を行うには、用紙(以下、用紙=消色性トナー画像)の温度が消色に適した温度に達する前に用紙に消色光41を当て、消色光41が当たる範囲では、用紙が適温を維持している状態が効率的である。
【0062】
すなわち、用紙搬送経路25を搬送中の用紙の温度が適温に達する点をe点、用紙の温度が適温から外れる点をf点とし、消色光41の照射面42の上流側をg点、下流側をh点としたとき、これらの関係は、図4(b)に示すように、用紙搬送経路25の上流側(図の左方)からg点、e点、h点、f点の順になることが望ましい。
【0063】
上述した各部の寸法及び配置構成の場合、熱輻射ヒータ36の左端面iからe点までの距離jは、約30mmとなり、熱輻射ヒータ36の左端面iからf点までの距離kは、約80mmとなる。
【0064】
しかし、この構成では、図4(a)に示すように、消色光源39からの消色光41の上述した照射面42の上流側のg点に対応する部分が、熱輻射ヒータ36の下流側の端部に遮られて用紙搬送経路25に届かなくなる。これでは効率的な消色作用が得られない。
【0065】
この不具合を解消するために熱輻射ヒータ36と用紙搬送経路25との間の距離Dを大きくした場合、熱輻射ヒータ36の設定温度を大幅に高く設定する必要があり、これは現実的でない。
【実施例2】
【0066】
このように消色装置24の基本構成において、熱輻射ヒータ36を用紙搬送経路25に平行に配置した場合に消色光41の照射において部分的に生じる不具合を改善した例を実施例2として以下に説明する。
【0067】
図5は、実施例2に係る消色装置24の内部構成を示す側面図である。なお、本例の場合も図1に示した消色装置24の外観を含むプリンタ1本体装置の構成、図2又は図3に示した用紙両側端搬送装置32、及びヒータ接触防止機構35の構成は、実施例1の場合と同一である
【0068】
本例の消色装置24の内部構成において、図5に示すように、消色ユニット43は、熱輻射ヒータ36が用紙搬送経路25に対して、用紙搬送方向上流側が上に持ち上がった配置で斜めに配設されている。
【0069】
この状態で、熱輻射ヒータ36の上流側端部から用紙搬送経路25までの距離Eは20mm、熱輻射ヒータ36の下流側端部から用紙搬送経路25までの距離Fは30mmに設定されている。
【0070】
これで上述した用紙搬送経路25と照射面42の関係において、各要部の関係点が上流側からg点、e点、h点、f点の順になるように設定でき、消色光41の照射を妨げずに、効果的な消色を行うことができた。
【0071】
ところで、この場合の熱輻射ヒータ36の温度設定は、400℃から450℃程度が必要となる。安全性、消費電力の削減、立上げ時間の短縮の観点からは、熱輻射ヒータ36の設定温度を下げ、熱輻射ヒータ36の平行配置と同等以下の温度設定にすることが懸案となる。
【実施例3】
【0072】
図6は、実施例3に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。本例も図1に示した消色装置24の外観を含むプリンタ1本体装置の構成、図2又は図3に示した用紙両側端搬送装置32、及びヒータ接触防止機構35の構成は、実施例1の場合と同一である。本例では、熱源に更なる改良が加えられている。
【0073】
すなわち、図6に示すように、本例の消色ユニット44において、上下の熱輻射ヒータ36は、それぞれ、熱輻射面が、用紙搬送経路25の上流側で用紙搬送経路25に平行する平行部分45−1と、この平行部分45−1から用紙搬送経路25の下流側方向に用紙搬送経路25から徐々に離れる傾斜部分45−2とが連続して形成されている。
【0074】
これら上下の熱輻射ヒータ36は、いわば、くの字形に曲げた形状で、それぞれ、くの字の一方の直線が水平になるように左右に回転した形で配置されている。
【0075】
そして、上下の消色光源39から照射される消色光41は、それぞれ、熱輻射ヒータ36の熱輻射面が用紙搬送経路25から徐々に離れる傾斜部分45−2の傾斜開始部に対応する用紙搬送経路25の面(上記のg点)に上流側照射領域を設定されている。
【0076】
本例の熱輻射ヒータ36は、平行部分45−1では、全体が平行配置の図4の熱輻射ヒータ36と同等の設定温度によって用紙に対する適温の加熱を図6のe点まで維持する。
【0077】
そして、傾斜部分45−2では、図6のf点まで用紙に対する適温を保持するように熱輻射する。これで図4(b)に示した用紙搬送経路25と照射面42の関係において、各要部の関係点が上流側からg点、e点、h点、f点の順になることを実現でき、消色光41の照射を妨げずに、効果的な消色を行うことができた。
【実施例4】
【0078】
図7は、実施例4に係る消色装置の内部構成を示す側面図である。本例では図1に示した消色装置24の外観を含むプリンタ1本体装置の構成、図2に示した用紙両側端搬送装置32の構成は、実施例1の場合と同一である。なお、図3に示したヒータ接触防止機構35は用いないので除去している。
【0079】
本例では、熱源に加えた改良点の図6とは異なる他の例を示している。すなわち、図7に示すように、本例の消色装置24における消色ユニット46は、熱輻射ヒータ48と熱伝導補助ローラ49とで熱輻射ヒータ部51を構成している。
【0080】
熱輻射ヒータ48は、熱輻射面47が用紙搬送経路25の上流側から下流側方向に用紙搬送経路25から徐々に離れるように傾斜して配置されている。この熱輻射ヒータ48は図5に示した熱輻射ヒータ36と同様のヒータである。
【0081】
熱伝導補助ローラ49は、熱輻射ヒータ48の熱輻射面47の上流側端部47−1と用紙搬送経路25との間に介装されている。この熱伝導補助ローラ49は、熱輻射ヒータ36に近接するように設けられている。
【0082】
熱伝導補助ローラ49は、芯金52の周囲に、弾力性と耐熱性を備えた材料、例えばグラスウール、多孔質シリコンゴム等を使用した弾性耐熱ロール53を設け、その外周には熱伝導率の高い金属膜を用い、その更に外側には、画像のオフセットを防止する為のテフロン(登録商標)チューブを設けている。
【0083】
熱伝導補助ローラ49は、熱輻射ヒータ36により加熱され、用紙とは熱効率の良い接触方式により用紙を加熱するように構成されている。熱伝導補助ローラ49により消色の適温近くまで加熱された用紙は、その後、熱輻射ヒータ36によってe点までの適温加熱を維持され、e点から更にf点まで適温を維持するように加熱される。
【0084】
上下の消色光源39(39a、39b)の構成及び配置は図6の場合と同一である。本例の場合も、上下の消色光源39から照射される消色光41の上流側照射領域のg点は、熱伝導補助ローラ49に近接して下流側に位置し且つe点よりも上流側に位置する用紙搬送経路25に設定されている。
【0085】
このように、本例の構成においても、各要部の関係点が上流側からg点、e点、h点、f点の順になるように設定でき、消色光41の照射を妨げずに、効果的な消色を行うことができた。
【0086】
このように、上述した実施例3では、くの字に曲げた熱源を使用し、実施例4では、熱伝導補助ローラを使用して、用紙への加熱でトナー像が消色光照射の適温に達した時点で加熱中の用紙に消色光の照射が行わるので、消色性トナー画像への効果的な加熱と光照射の関係を確保できる。
【0087】
したがって、用紙への昇温効果を上げることができるので、熱源の輻射熱放射に無駄がなくなり、熱源の設定温度を下げることができる。これにより、安全性、消費電力の削減、立上げ時間の短縮ができるという効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えばリライタブルプリンタ等に搭載され用紙の昇温、熱源の低温化、消費電力の削減、立ち上げ時間の短縮に有効な消色装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 消色機能付画像形成装置(プリンタ)
2 本体装置筐体
3 転写ベルト
4 駆動ローラ
5 従動ローラ
6(6r(6k)、6y、6c、6m) 画像形成ユニット
7 現像器
8 感光体ドラム
9 現像ローラ
11 二次転写ローラ
12 画像形成搬送路
14 用紙
15 上部給紙カセット
16 定着搬送路
17 定着部
18 加熱ローラ
19 押圧ローラ
21 排紙トレー
22 用紙
23 下部給紙カセット
24 消色装置
25 用紙搬送経路
26(26a、26b) 用紙搬送ローラ対
27 駆動ローラ
28 従動ローラ
29 押さえローラ
31 細ベルト
32 用紙両側端搬送装置
33(33a、33b) ヒータ接触防止ワイヤ
34(34a、34b) ワイヤ保持部
35 ヒータ接触防止機構
36(36a、36b) 熱輻射ヒータ
37(37a、37b) 光源
38(38a、38b) レンズ
39(39a、39b) 消色光源
40 消色ユニット
41 消色光
42 照射面
43、44 消色ユニット
45−1 平行部分
45−2 傾斜部分
46 消色ユニット
47 熱輻射面
47−1 上流側端部
48 熱輻射ヒータ
49 熱伝導補助ローラ
51 熱輻射ヒータ部
52 芯金
53 弾性耐熱ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の両面に印字された消色性トナー像を消色すべく前記用紙の搬送経路の上下にそれぞれ配置された前記用紙の前記消色性トナー像の印字面を加熱する上部熱輻射ヒータ及び下部熱輻射ヒータと、
加熱された前記用紙の前記消色性トナー像の前記印字面に消色光を照射する上部消色光源及び下部消色光源と、
を備え、
前記上部熱輻射ヒータ及び前記下部熱輻射ヒータは、それぞれ、熱輻射面が、前記搬送経路の上流側で前記搬送経路に平行する部分と該平行する部分から前記搬送経路の下流側方向に前記搬送経路から徐々に離れる傾斜部分とが連続して成り、
前記上部消色光源及び下部消色光源は、前記上部熱輻射ヒータ及び前記下部熱輻射ヒータの熱輻射面が前記搬送経路から徐々に離れる傾斜部分の傾斜開始部に対応する前記搬送経路の面に、前記消色光の上流側照射領域を設定される、
ことを特徴とする消色装置。
【請求項2】
用紙の両面に印字された消色性トナー像を消色すべく前記用紙の搬送経路の上下にそれぞれ配置された前記用紙の前記消色性トナー像の印字面を加熱する上部熱輻射ヒータ部及び下部熱輻射ヒータ部と、
加熱された前記用紙の前記消色性トナー像の前記印字面に消色光を照射する上部消色光源及び下部消色光源と、
を備え、
前記上部熱輻射ヒータ部及び前記下部熱輻射ヒータ部は、それぞれ、熱輻射面が前記搬送経路の上流側から下流側方向に前記搬送経路から徐々に離れるように傾斜して配置されたヒータと、該ヒータの前記熱輻射面の上流側端部と前記搬送経路との間に介装されて前記ヒータの前記熱輻射面の端部の熱を伝導して前記搬送経路に搬入される前記用紙を予熱する熱伝導補助ローラと、から成り、
前記上部消色光源及び下部消色光源は、前記上部熱輻射ヒータ部及び前記下部熱輻射ヒータ部の前記熱伝導補助ローラに近接する下流側に位置する前記搬送経路の面に、前記消色光の上流側照射領域を設定される、
ことを特徴とする消色装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−113229(P2012−113229A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263867(P2010−263867)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】