説明

消音器

【課題】部品点数を削減することが可能であり、構造の簡略化とコスト低減を図ることができる消音器を提供する。
【解決手段】膨張室11と、膨張室11のガス導入側の隔壁5とガス導出側の隔壁6とに連通する一連のパイプ7とを備え、パイプ7の膨張室11内の配置部分に閉塞部を構成する折曲部74、75を設け、前記閉塞部に対するガス導入側のパイプ周壁71にガスの導入口72を開口し、前記閉塞部に対するガス導出側のパイプ周壁71にガスの導出口73を開口する消音器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンの排気系等に設けられる消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンの排気系に設けられる消音器として、エンジンの排気マニホールド側に接続されるインレットパイプを膨張室に連通させ、大気に開放されるアウトレットパイプを膨張室に連通させ、膨張室にインレットパイプで排気ガスを導入して圧力変動を減衰するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−21549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記消音器は、膨張室に排気ガスを導入するインレットパイプとは別に、膨張室から排気ガスを導出するアウトレットパイプを設けるものであるため、部品点数が増加し、構造が複雑化すると共に高コストになるという問題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、部品点数を削減することが可能であり、構造の簡略化とコスト低減を図ることができる消音器及びその消音器を備える自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の消音器は、膨張室と、該膨張室のガス導入側の隔壁と該膨張室のガス導出側の隔壁とに連通する一連のパイプとを備え、該パイプの該膨張室内の配置部分に閉塞部を設け、該閉塞部に対するガス導入側の該パイプ周壁にガスの導入口を開口し、該閉塞部に対するガス導出側の該パイプ周壁にガスの導出口を開口することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の消音器は、前記閉塞部と前記閉塞部が連なる前記パイプ周壁との傾斜角度θを140°≦θ≦160°とし、前記ガスが前記閉塞部に略沿うように流通する構成とすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の消音器は、前記パイプ周壁の前記導入口に対応する領域を前記パイプ内に折り込むと共に、前記パイプ周壁の前記導出口に対応する領域を前記パイプ内に折り込むことにより、前記閉塞部を設けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動車或いは内燃機関の排気構造は、本発明の消音器を備えることを特徴とする。前記自動車には、自動四輪車以外に、自動二輪車等も含まれる。
【0010】
尚、本明細書開示の発明には、各発明や各実施形態の構成の他に、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、一連のパイプに閉塞部を設け、そのガス導入側に導入口、ガス導出側に導出口を開口するので、前記一連のパイプがインレットパイプとアウトレットパイプの双方の機能を奏し、インレットパイプとアウトレットパイプを別体で設ける必要が無い。従って、部品点数を削減することができ、構造の簡略化と製造コストの低減を図ることができる。また、別体ではなく一連のパイプを設けることにより、消音器の軽量化を図ることができ、ひいては消音器を備える車体等の軽量化を図ることができる。
【0012】
また、閉塞部或いは導入口や導出口の傾斜壁の傾斜角度θを140°≦θ≦160°とすることにより、ガスの乱流化・渦硫化の抑制、ガスの流通抵抗の低減を図ることが可能となり、パイプから膨張室へのガスの導入及び膨張室からパイプへのガスの導出を滑らかにすることができる。従って、ガスを効率良く流通させ、消音性能を高めることができ、例えばエンジンの動力性能のロスを防止することも可能となる。
【0013】
また、パイプ周壁の導入口と導出口に対応する領域をそれぞれパイプ内に折り込んで閉塞部を設けることにより、導入口と導出口の形成と閉塞部の形成を同時に行うことができ、製造工程の効率化を図ることができる。更に、別部材を用いずに閉塞部を設けることができ、構造の簡略化と製造コストの低減を一層促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の消音器の実施形態について図1〜図5に基づき説明する。
【0015】
本実施形態の消音器1は、例えば自動四輪車のエンジンの排気系に設けられるものであり、図1に示すように、楕円筒形のアウタシェル2の前端開口にエンドプレート3が気密に固定され、アウタシェル2の後端開口にエンドプレート4が気密に固定されている。エンドプレート3、4には一連の円筒形のパイプ7が貫通され、パイプ7はエンドプレート3、4で支持される。エンドプレート3から僅かに外方に突出するパイプ7はエンジンの排気系の上流側(ガスの導入側)のパイプに接続され、エンドプレート4から僅かに外方に突出するパイプ7はエンジンの排気系の下流側(ガスの導出側)のパイプに接続される。
【0016】
アウタシェル2の内部には、図2〜図4に示すように、隔壁5、6がエンドプレート3、4と略平行に設けられている。エンドプレート3と隔壁5、隔壁5と隔壁6、隔壁6とエンドプレート4はそれぞれ所定間隔を開けて配置され、パイプ7はエンドプレート3、隔壁5、6、エンドプレート4に一連で連通されている。エンドプレート3と隔壁5とアウタシェル2で囲まれる部分は共鳴室12、隔壁5と隔壁6とアウタシェル2で囲まれる部分は膨張室11、隔壁6とエンドプレート4とアウタシェル2で囲まれる部分は共鳴室13になっている。パイプ7の共鳴室12、13内に配置される部分のパイプ7の周壁71には連通孔76が形成されている。
【0017】
パイプ7の膨張室11内に配置される部分の周壁71には、図2、図4、図5に示すように、パイプ7の長手方向に沿う中央部分が凹んだ凹曲面の傾斜した形状である折曲部74、75が形成されており、折曲部74、75はパイプ7の閉塞部を構成する。折曲部74は、パイプ7の周壁71の上流側にパイプ径の半周程度に亘って切り込みを形成して、前記切込箇所から外周縁が略放物線形状になるようにパイプ7の内側に折り込んで形成されており、その先端縁741は対向するパイプ周壁71の内周面に固着されている。折曲部75は、パイプ周壁71の折曲部74と反対側の面に於いて折曲部74と点対称となる位置に同形状で設けられ、パイプ7の周壁71の下流側に半周程度に亘って切り込みを形成して、前記切込箇所から外周縁が略放物線形状になるようにパイプ7の内側に折り込んで形成されており、その先端縁751は対向するパイプ周壁71の内周面に固着されている。
【0018】
膨張室11内に於いて、折曲部74に対する上流側のパイプ周壁71は折曲部74の折り込みによって開口され、排気ガスの導入口72となる。また、折曲部75に対する下流側のパイプ周壁71は折曲部75の折り込みによって開口され、排気ガスの導出口73となる。換言すれば、折曲部74は導入口72に対応する領域をパイプ7内に折り込んで形成され、折曲部75は導出口73に対応する領域をパイプ7内に折り込んで形成されている。
【0019】
上記消音器1で排気ガスを消音する際には、排気系の上流側(エンドプレート3側)からパイプ7に排気ガスが流入し、前記流入ガスの大部分は折曲部74に向かって流れ、更に、図5の太線矢印F1の如く、パイプ周壁71及び折曲部74の略く字形に沿うように流れて滑らかに誘導され、導入口72から膨張室11内に流入する。前記流入した排気ガスは膨張室11内で急激に膨張して圧力変動を減衰される。その後、図5の太線矢印F2の如く、折曲部75及びパイプ周壁71の略く字形に沿うように流れて滑らかに誘導され、導出口73により膨張室11からパイプ7の下流側へ流出する。
【0020】
上記実施形態の消音器1は、一連のパイプ7がインレットパイプとアウトレットパイプの双方の機能を奏するので、部品点数を削減することができ、構造の簡略化、重量の軽量化、製造コストの低減を図ることができる。また、パイプ周壁71の導入口72と導出口73に対応する領域をそれぞれパイプ7内に折り込んで、パイプ7の上流側と下流側を閉塞する折曲部74、75を設けることにより、導入口72と導出口73の形成と閉塞部の形成を同時に行うことができ、製造工程の効率化を図ることができる。
【0021】
尚、折曲部74、75と折曲部74、75が連なるパイプ周壁71との傾斜角度θは、90°≦θ≦180°の範囲で適宜設定可能であるが(図5参照)、140°≦θ≦160°など150°前後とすると好適であり、前記傾斜角度θとする構成により、ガス流路を滑らかに徐変させ、流通抵抗の低減、渦流・乱流の抑制を図りつつガスを誘導することができ、パイプ7から膨張室11へのガスの流入や膨張室11からパイプ7へのガスの流出をより滑らかに効率良く行うことができる。また、上記実施形態の折曲部74、75の背面の中央部分は互いに当接しているが(図5参照)、折曲部74、75の背面が離間して近接する構成或いは折曲部74、75の背面がある程度離れた所定距離離間する構成にしてもよい。
【0022】
また、上記実施形態の消音器1では、折曲部74、75がそれぞれ周壁71と縦断面視略く字形となる構成としたが、図6に示すように、折曲部74a、75aが周壁71から導入口72に向かって弧状の経路を構成するように、折曲部74a、75aを縦断綿糸略弧状に形成してもよい。前記折曲部74a、75aにより、パイプ7から膨張室11へのガスの流入及び膨張室11からパイプ7へのガスの流出をよりスムーズにすることができる。
【0023】
また、本発明の閉塞部は、上記実施形態の折曲部74、75で構成すると好適ではあるが、一連のパイプ7のガス上流側と下流側とを膨張室11内で略閉塞可能な適宜の構成とすることが可能であり、例えば膨張室11内に於いてパイプ周壁71に導入口と導出口を形成し、前記導入口と前記導出口との間に仕切板を溶接等で固着して閉塞する構成等とすることが可能である。前記仕切板は単数とする以外に、折曲部74、75に対応する2枚の仕切板とすることも可能であり、又、前記仕切板は折曲部74、75と同形状とする以外に平板状としてもよい。また、上記実施形態の折曲部74、75の先端縁741、751は対向する内周面に固着する構成としたが、単に折り込んで固着しない構成とすることも可能である。
【0024】
また、上記実施形態の消音器1は、膨張室11を一つ有するものとしたが、本発明の消音器に於ける膨張室の個数は一つ以上であれば適宜であり、複数設けてもよい。前記膨張室を複数設ける場合、閉塞部と導入口及び導出口を設ける膨張室の個数は一つ、或いは全体の膨張室に対する任意の複数個、或いは全膨張室とすることが可能である。
【0025】
また、上記実施形態ではエンジンの排気系に消音器1を設ける場合について説明したが、本発明の消音器は消音を必要とする適宜のガス流路に設けることが可能であり、例えばエンジンの吸気系、或いはエンジンの排気再循環(EGR)の経路に設けてもよい。更に、本発明の消音器を備えるエンジンの排気系或いは吸気系等は、自動四輪車、自動二輪車など適宜の自動車に設置することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、例えば自動車のエンジンの排気系に設ける消音器として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の消音器の斜視図。
【図2】実施形態の消音器のアウタシェルを取り外した状態を示す一部切断斜視図。
【図3】実施形態の消音器のアウタシェルを取り外した状態を示す平面図。
【図4】実施形態の消音器のアウタシェルを取り外した状態を示す正面図。
【図5】図4のA−A線矢視断面図。
【図6】変形例の消音器に於ける図4のA−A線矢視に対応する断面図。
【符号の説明】
【0028】
1…消音器 11…膨張室 12、13…共鳴室 2…アウタシェル 3、4…エンドプレート 5、6…隔壁 7…パイプ 71…周壁 72…導入口 73…導出口 74、75、74a、75a…折曲部 76…連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張室と、
該膨張室のガス導入側の隔壁と該膨張室のガス導出側の隔壁とに連通する一連のパイプとを備え、
該パイプの該膨張室内の配置部分に閉塞部を設け、
該閉塞部に対するガス導入側の該パイプ周壁にガスの導入口を開口し、
該閉塞部に対するガス導出側の該パイプ周壁にガスの導出口を開口することを特徴とする消音器。
【請求項2】
前記閉塞部と前記閉塞部が連なる前記パイプ周壁との傾斜角度θを140°≦θ≦160°とし、
前記ガスが前記閉塞部に略沿うように流通する構成とすることを特徴とする請求項1記載の消音器。
【請求項3】
前記パイプ周壁の前記導入口に対応する領域を前記パイプ内に折り込むと共に、
前記パイプ周壁の前記導出口に対応する領域を前記パイプ内に折り込むことにより、前記閉塞部を設けることを特徴とする請求項1又は2記載の消音器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の消音器を備えることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−191618(P2009−191618A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29939(P2008−29939)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】