説明

液体の収容容器、及びその収容容器を使用した塗装装置

【課題】 容器内に収容した空気との接触を嫌う液体を、当該容器内に可及的に空気を侵入させることなく排出できる収容容器と、その収容容器を使用した塗装装置を提供することである。
【解決手段】 柔軟な樹脂材より、袋状で変形自在な内側容器1を成形する。また、硬質な樹脂材等より、変形不能で、内側容器1を収容して密閉可能であるとともに、圧縮空気Aが導入される外側容器2を成形する。水性塗料Pを収容した内側容器1を外側容器2に収容し、内側容器1内の水性塗料Pを吸い上げて噴霧する。同時に、外側容器2内に圧縮空気Aを導入し、内側容器1を押圧する。これにより、内側容器1を変形させ、水性塗料Pの減少に伴って形成される空気領域Qを押し狭めて、水性塗料Pと空気との接触を可及的に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器、及びその収容容器を使用した塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば水性塗料を運搬したり保管したりする場合、水性塗料を所定の容器に収容している。水性塗料を収容可能な容器として、例えば特許文献1に開示されるものが存している。水性塗料を容器に収容したとき、水性塗料の液面が空気と接触していると、その部分が硬化して「皮張り」と称する膜が形成されてしまう。皮張りが形成された水性塗料を使用すると、塗膜の厚みが不均一になり、的確な塗装作業を行うことが困難になるばかりでなく、塗膜の乾燥が遅くなったり、塗装ガンの流路に塗料が詰まってしまったりするという不具合が発生し易い。
【0003】
上記した不具合を回避するため、特許文献2に開示される技術が存している。この技術では、容器に内装させた遮蔽部材を水性塗料の液面に接触させておき、使用に伴う水性塗料の減少に追随させて遮蔽部材を降下させるというものである。しかし、この技術では容器と遮蔽部材とに一定の強度が必要であるため、容器を折り畳んで小さくすることは困難である。この結果、塗料の量に拘わらず、容器の大きさ分の保管スペースを必要とする。また、容器と遮蔽部材との2つの部材を必要とするため、製造コストが高くなってしまう。
【0004】
また、特許文献3に開示される技術では、水性塗料が収容された容器に不活性ガスを充填することにより、水性塗料の液面が空気と接触することを防止している。この技術では、常に不活性ガスを用意しておかなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−48364号公報
【特許文献2】特開2001−301832号公報
【特許文献3】特開平5−4681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑み、容器内に収容した空気との接触を嫌う液体を、当該容器内に可及的に空気を侵入させることなく排出できる収容容器と、その収容容器を使用した塗装装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための液体の収容容器は、
空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器であって、
容積を自在に変化できる柔軟な袋状で、前記液体を排出するポンプユニットに連結される液体排出口が設けられた内側容器と、
容積が不変で、前記内側容器を収容した状態で密閉可能であり、該内側容器を収容して密閉した状態で内部に圧力流体が導入される外側容器と、を備え、
前記内側容器に収容した液体が排出されるのに伴って該内側容器の内部に形成される空気領域を前記外側容器に導入される圧力流体で押し狭めて、前記内側容器に可及的に空気を侵入させないようにして前記内側容器から液体が排出されるようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る液体の収容容器は、上記したように構成されていて、液体を収容する柔軟な袋状の内側容器と、内側容器を密閉状態で収容する外側容器とを備えている。そして、外側容器に、内側容器を押圧するための圧力流体が導入される。液体が排出されるのに伴い、内側容器内に空気領域が形成される。この空気領域は、内側容器が圧力流体によって押圧されることにより押し狭められる。このため、液体と空気との接触面積が小さくなり、液体に「皮張り」が発生しにくくなる。この結果、水性塗料のように空気との接触を嫌う液体であっても、皮張りを発生させることなく使用したり、保存したりすることができる。
【0009】
前記外側容器にその内部と外部とを連通する流体導入口を設けられ、この流体導入口に連結される流体導入手段によって前記外側容器の内部に圧力流体が導入される。この圧力流体は、例えば空気や水である。このため、安価であり、またそれらの入手も容易である。
【0010】
前記外側容器には、その内部を、前記内側容器が収容される内側容器収容室と、圧力流体が収容される流体室とに仕切る仕切り板が設けられ、
前記仕切り板は前記外側容器の内部を移動可能であり、
前記外側容器の流体室に導入された圧力流体が前記仕切り板を押圧し、該仕切り板を移動させることによって前記内側容器の空気領域を押し狭めるようにしてもよい。
【0011】
仕切り板が、内側容器の1つの側面壁部全体を押圧することによって内側容器内の空気領域を減少させる。これにより、内側容器内の空気領域が効果的に押し狭められる。そして、この仕切り板における前記内側容器の側面壁部との対向面を、上端部から下端部にかけて厚みが連続的に厚くなる傾斜面とすることもできる。
【0012】
前記外側容器は、一面に前記内側容器を収容するための開口を有する箱状の外側容器本体部と、前記外側容器本体部の開口を覆蓋する蓋体とを備え、
前記蓋体には前記内側容器の液体排出口に連結される連結部が形成され、
前記蓋体が前記外側容器本体部の開口を覆蓋した状態で、前記蓋体と前記外側容器本体部との接続面が気密状態となり、
前記蓋体の連結部が前記内側容器の液体排出口を連結した状態で、前記蓋体と前記液体排出口との接続面が気密状態となる。
【0013】
これにより、外側容器に内側容器を収容することが容易になる。
【0014】
前記蓋体に、前記外側容器本体部の開口を覆蓋した状態で該外側容器本体部と一体となる固定具を設けることができる。
【0015】
これにより、外側容器本体部と蓋体とが一体にロックされる。
【0016】
前記外側容器の流体導入口を開閉するためのバルブが取り付けられている場合、
前記バルブを閉じることにより、前記外側容器に圧力流体が導入された状態で保持することができる。
【0017】
バルブを閉じることにより、外側容器に圧力流体が導入された状態(即ち、圧力流体が内側容器を押圧した状態)が保持される。このため、外側容器と流体導入手段とを分離させても、内側容器に空気領域を生じさせない状態で液体を保存することができる。
【0018】
そして、上記課題を解決するための本発明は、
上記した液体の収容容器と、
前記収容容器を構成する内側容器の液体排出口に連結され、前記内側容器に収容された液体を加圧して排出するポンプユニットと、
前記収容容器を構成する外側容器に連結され、その内部に圧力流体を導入する流体導入手段と、
前記ポンプユニットに連結され、このポンプユニットによって加圧されて送出される液体を被塗装物に噴霧する噴霧手段と、
を備えることを特徴とする塗装装置である。
【0019】
更に、上記課題を解決するための本発明は、
上記した液体の収容容器と、
前記収容容器を構成する内側容器の液体排出口に連結され、前記内側容器に収容された液体を排出するポンプユニットと、
前記収容容器を構成する外側容器の流体導入口と前記噴霧手段とに連結され、その内部に圧力流体を導入する流体導入手段と、
前記ポンプユニットに連結され、このポンプユニットによって送出される液体を被塗装物に噴霧する噴霧手段と、
を備えることを特徴とする塗装装置である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】エアレス方式の塗装装置201の概略全体図である。
【図2】第1実施例の収容容器101の分解斜視図である。
【図3】収容容器101の空気領域Qが押し狭められる状態の作用説明図である。
【図4】エア方式の塗装装置202の概略全体図である。
【図5】(a)は第2実施例の収容容器102の正面断面図、(b)は同じく作用説明図である。
【図6】(a)は第3実施例の収容容器103の正面断面図、(b)は同じく作用説明図である。
【図7】(a)は第4実施例の収容容器104の正面断面図、(b)は同じく作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0022】
本発明において、図1はエアレス方式の塗装装置201の概略全体図、図2は第1実施例の収容容器101の分解斜視図である。
【実施例1】
【0023】
最初に、第1実施例の収容容器101について説明する。図1及び図2に示されるように、第1実施例の収容容器101は、空気との接触を嫌う液体(本実施例の場合、水性塗料P)を収容する内側容器1と、内側容器1を収容可能であるとともに、例えば空気や水等の圧力流体(本実施例の場合、空気A)が内部に導入される外側容器2とを備えている。ここで、本明細書における「圧力流体」とは、内側容器1に形成される空気領域Qの内圧よりも大きな圧力を有する流体をいう。
【0024】
最初に、本実施例の収容容器101を構成する内側容器1について説明する。図1及び図2に示されるように、内側容器1は柔軟な樹脂製のシート(例えば、ポリエチレンシート)を折り曲げてなり、膨出状態(水性塗料Pを満杯に収容した状態)で略立方体形状の袋状となる。内側容器1の上面部1aのほぼ中央部に、水性塗料Pを注入するための塗料注入口3が設けられている。この塗料注入口3は、キャップ4を締め込むことにより閉塞される。キャップ4の裏面部にはパッキン(図示せず)が装着されていて、キャップ4を締め込むことにより、内側容器1の内部を気密状態とすることができる。
【0025】
また、内側容器1の上面部1aで、塗料注入口3の側方部分には、水性塗料Pの塗料排出口5が設けられている。内側容器1の内部には、塗料排出口5と接続する吸込みホース6が延設されていて、この吸込みホース6の長さは、膨出して立方体形状となったときの内側容器1の高さよりも少し長い。このため、吸込みホース6の先端部は、常に内側容器1の底面部に接触していて、内側容器1に収容された水性塗料Pをすべて吸い込むことができる。
【0026】
内側容器1の塗料排出口5は、内側容器1の上面部1aよりも外側に突出していて、この突出部分にワンタッチ式のコネクタの雄部7が取り付けられている。このコネクタにより、後述するコネクタの雌部8に差し込むだけで両者(雄部7と雌部8)を連結して連通させることができるとともに、簡単な操作で両者を分離することができる。しかも、分離させた状態で、コネクタの雄部7から水性塗料Pが漏れることはなく、内側容器1の内部が気密状態に保持される。また、塗料排出口5における内側容器1の上面部1aからの突出長は、キャップ4の高さよりも長くなっている。このため、コネクタの雄部7と雌部8とを連結する際に、キャップ4が外側容器2の蓋体10(後述)と干渉するおそれはない。
【0027】
内側容器1は、柔軟な樹脂製シートよりなる。このため、外部から押圧することにより、容易にその全体形状を変形させることができる。
【0028】
次に、本実施例の収容容器101を構成する外側容器2について説明する。図1及び図2に示されるように、外側容器2は変形不能な部材(例えば、硬質な樹脂材や金属材)よりなり、上面が開口した箱状の外側容器本体部9と、その開口を覆蓋する蓋体10とを備えている。外側容器本体部9の内側高さは、膨出して立方体形状となった内側容器1の高さよりも高い。このため、外側容器8に内側容器1を収容すると、その上面部1aが、外側容器本体部9の上縁部9aよりも少し下方に配置される。また、外側容器本体部9の上縁部8aには、その全周に亘ってシール部材11が取り付けられている。
【0029】
外側容器本体部9の側面壁部には、その外部から内部に圧力流体(本実施例の場合、圧縮空気A)を導入するための空気導入口12が設けられている。空気導入口12は、外側容器本体部9の側面壁部から外側に突出していて、その突出部分にバルブ13が取り付けられている。バルブ13を開くことにより、空気導入口12が連通状態となり、バルブ13を閉じる(締める)ことにより非連通状態となる。
【0030】
外側容器2を構成する蓋体10は、外側容器本体部9の上面開口を覆蓋可能な蓋形状であり、その周縁部から垂下するスカート部14が全周に亘って設けられている。スカート部14の内周面は、外側容器本体部9の外周面よりも僅かに大きな相似形状であり、蓋体10で外側容器本体部9の上面開口を覆ったときに、スカート部14の内周面が外側容器本体部9の外周面の上部を僅かな隙間でもって覆う。そして、各スカート部14における横方向のほぼ中央部には、外側容器本体部9と蓋体10とを連結して固定するための固定具が取り付けられている。本実施例の固定具はパッチン錠であり、蓋体10のスカート部14にパッチン錠の錠本体部15aが固着され、外側容器本体部9の上面部に、パッチン錠の引掛け部15bが固着されている。外側容器本体部9に蓋体10を覆蓋し、各パッチン錠の錠本体部15aを引掛け部15bに引っ掛けてロックすると、蓋体10によって外側容器本体部9の上縁部9aに取り付けられたシール部材11が押圧される。これにより、外側容器本体部9と蓋体10との隙間が気密状態となり、外側容器2を密閉状態で保持することができる。
【0031】
蓋体10の上面部で、外側容器本体部9に収容された内側容器1の塗料排出口5と対応する部分には、内側容器1の塗料排出口5を連結する連結口16が設けられている。この連結口16の下端部には、前述したワンタッチ式のコネクタの雌部8が取り付けられている。また、連結口16における蓋体10からの突出部分にバルブ17が取り付けられている。バルブ17を開くことにより、連結口16が連通状態となり、バルブ17を閉じる(締める)ことにより非連通状態となる。
【0032】
次に、本実施例の収容容器101を使用した塗装装置201について説明する。塗装装置201は、エアレス方式のものである。エアレス方式とは、塗料に7〜14MPaの高圧を直接的に加えて塗料を微粒化し、その塗料を噴霧する技術である。後述するエアスプレー方式のように、エアで塗料を微粒化して塗装する場合と比較して塗料の飛散が少なく、塗装効率が良好であるという利点がある。図1に示されるように、塗装装置201は、内側容器1と外側容器2とを備える収容容器101と、外側容器2の外側容器本体部9の空気導入口12にホース18を介して連結されるエアコンプレッサ19と、外側容器2の蓋体10の連結口16にホース18を介して連結され、水性塗料Pを直接的に加圧するポンプユニット20と、ホース18を介してポンプユニット20と連結される塗装ガン21とを備えている。なお、図1においては、ポンプユニット20を作動させるために接続されるエアコンプレッサの図示を省略している。
【0033】
塗装装置201の作用について説明する。外側容器2の外側容器本体部9に水性塗料Pを収容した内側容器1を収容する。このとき、内側容器1は、一方の側面壁部(外側容器本体部9の空気導入口12と対向する側面壁部と反対側の側面壁部)を外側容器本体部9の内壁面に近接させるとともに、他方の側面壁部(外側容器本体部9の空気導入口12と対向する側面壁部)を外側容器本体部9の内壁面から少し離れて収容される。水性塗料Pが収容された内側容器1の塗料排出口5は、ワンタッチ式コネクタの雄部7の機能により、非連通状態で保持されるため、水性塗料Pが漏れるおそれはない。
【0034】
内側容器1を収容した外側容器本体部9の上面開口に、蓋体10を覆蓋する。このとき、内側容器1の塗料排出口5に取り付けられたワンタッチ式コネクタの雄部7と、蓋体10の連結口16に取り付けられたその雌部8とを連結する。このコネクタの雄部7と雌部8とはワンタッチで連結されるため、その作業は容易である。蓋体10を外側容器本体部9に覆蓋した状態で、各スカート部14に取り付けられたパッチン錠の錠本体部15aが、外側容器本体部9の側面壁部に取り付けられたパッチン錠の引掛け部15bの部分に配置される。パッチン錠の錠本体部15aを引掛け部15bに引っ掛ける。これにより、蓋体10が外側容器本体部9と一体に取り付けられる。また、このとき、蓋体10がシール部材11を押圧するため、各バルブ13,17を閉じることにより、外側容器2の内部が密閉状態に配置される。
【0035】
エアコンプレッサ19を作動させるとともに、外側容器本体部9の空気導入口12に取り付けられたバルブ13を開き、外側容器2の内部に圧縮空気Aを送り込む。この圧縮空気Aは、内側容器1の外周面を押圧する。その状態を、図1において矢印で示す。
【0036】
ポンプユニット20を作動させるとともに、蓋体10の連結口16に取り付けられたバルブ17を開き、内側容器1に収容されている水性塗料Pを吸い上げる。同時に、吸い上げられた水性塗料Pを加圧する。作業者が塗装ガン21の引金21aを操作すると、ポンプユニット20によって加圧された水性塗料Pが噴霧される。
【0037】
水性塗料Pが噴霧されるのに伴い、内側容器1に収容されている水性塗料Pが減少する。そして、内側容器1の内部に空気領域Qが形成されようとする。しかし、圧縮空気Aは、空気領域Qの内圧よりも大きな圧力を有している。しかも、内側容器1は変形自在である。このため、図3に示されるように、圧縮空気Aが内側容器1を押圧すると、内側容器1の空気領域Qが押し狭められる。このため、内側容器1に収容されている水性塗料Pの液面が空気に接触することが可及的に防止される。これにより、水性塗料Pに皮張り等の不具合が発生しにくくなる。
【0038】
塗装が終了し、内側容器1に水性塗料Pが残っている場合について説明する。外側容器2の外側容器本体部9の空気導入口12に取り付けられたバルブ13と、同じく蓋体10の連結口16に取り付けられたバルブ17を閉じる。これにより、収容容器101からエアコンプレッサ19とポンプユニット20とを取り外しても、収容容器101内は気密状態で、かつ圧縮空気Aが内側容器1を押圧し、空気領域Qが押し狭められた状態で保持される。また、外側容器1の蓋体10を取り外すときに、内側容器1と蓋体10とをワンタッチで分離させることができる。しかも、蓋体10と分離した内側容器1は、その内部と外部とが気密状態で保持される。
【0039】
蓋体10を取り外すと、内側容器1に圧縮空気Aは作用しなくなる。しかし、内側容器1は変形自在であるため、キャップ4を緩めて内側容器1を押しつぶしながら内側容器1内の空気を抜くことにより、内側容器1内の空気領域Qを小さくすることができる。この状態でキャップ4を締め込んで保管する。これにより、保管中の水性塗料Pに皮張り等が生じにくくなる。
【0040】
上記した塗装装置201は、水性塗料Pを直接に加圧して噴霧するエアレス方式である。しかし、図4に示されるエア方式の塗装装置202のように、塗装ガン21にもエアコンプレッサ19からのエアを供給して噴霧してもよい。この場合のポンプユニット20は、水性塗料Pを塗装ガン21に送り込むだけの機能でよいため、低圧のもので済む。
【実施例2】
【0041】
上記した実施例の塗装装置201,202における収容容器101では、エアコンプレッサ19から供給される圧縮空気Aにより、直接に内側容器1の外周面を押圧している。しかし、図5の(a),(b)に示される第2実施例の収容容器102のように、外側容器本体部9の内部を、内側容器収容室22と空気室23とに仕切る仕切り板24を配置してもよい。この仕切り板24は、外側容器本体部9内を水平移動可能である。この実施例の収容容器102の場合、エアコンプレッサ19から供給される圧縮空気Aが仕切り板24を押圧する。そして、仕切り板24が、対向する内側容器1の側面壁部を押圧し、空気領域Qを押し狭める。第2実施例の収容容器102の場合、仕切り板24が内側容器1の側面部の全体をほぼ均等に押圧しているため、内側容器1は、その上方に設けられている空間部(内側容器1と外側容器2の蓋体10との間の空間部)に向かう形で変形する。このため、仕切り板24が内側容器1の1つの側面壁部を押圧したときに、内側容器1の空間部Qが押し狭められて変形するように内側容器1を形成することで、水性塗料Pと空気との接触を効果的に防止することができる。
【実施例3】
【0042】
更に、図6の(a),(b)に示される第3実施例の収容容器103のように、仕切り板25における押圧面25aを傾斜面としてもよい。これにより、仕切り板25が、内側容器1を持ち上げるように変形させて空気領域Qを押し狭めるため、変形状態における空気領域Qを最も小さくすることができる。
【0043】
本明細書では、空気との接触を嫌う液体として水性塗料Pの場合を説明した。しかし、これ以外の液体であっても構わない。また、内側容器1を押圧する圧力流体として、圧縮空気Aの場合を説明した。しかし、圧縮空気A以外の圧力流体(例えば、水)であっても構わない。
【実施例4】
【0044】
上記した各実施例の収容容器101〜103を構成する外側容器2の蓋体10は、外側容器本体部9から分離可能であり、4個のパッチン錠によって外側容器本体部9と一体に連結される。しかし、図7の(a)に示される第4実施例の収容容器104の蓋体26のように、蓋体26と外側容器本体部9とを蝶番27で連結してもよい。
【0045】
上記した各実施例の収容容器101〜103は、内側容器1の塗料排出口5を、内側容器1の上面1aの中央部よりも側方に設けている。そして、内側容器1を外側容器本体部9に収容したときに、内側容器1において塗料排出口5が設けられている側の側面壁部を、外側容器本体部9の内壁面に近接させている。これにより、水性塗料Pの排出に伴って形成される空気領域Qが一方側において大きくなり、これを圧縮空気Aによって効果的に押し狭めることができる。しかし、第4実施例の収容容器104のように、内側容器1の塗料排出口5をその上面1aのほぼ中央部に設け、この内側容器1を外側容器本体部9の平面視におけるほぼ中央部に収容してもよい。
【0046】
更に、蓋体26におけるワンタッチ式のコネクタの雌部28を、伸縮可能な蛇腹状としたり、ホース状としてたるませたりすることもできる。これにより、図7の(b)に示されるように、圧縮空気Aが内側容器1の空気領域Qを押し狭めるときに、内側容器1の上面部1aの全体が押し狭められ、水性塗料Pと空気との接触をより効果的に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の液体の収容容器は、例えば水性塗料のように空気との接触を嫌う液体を収容し、保管する場合に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0048】
101〜104 収容容器
201,202 塗装装置
1 内側容器
2 外側容器
5 塗料排出口(液体排出口)
9 外側容器本体部
10,26 蓋体
12 空気導入口(流体導入口)
13 バルブ
15a 錠本体部(固定具)
15b 引掛け部(固定具)
16 連結口(連結部)
19 エアコンプレッサ(流体導入手段)
20 ポンプユニット
22 内側容器収容室
23 空気室(流体室)
24,25 仕切り板
A 圧縮空気(圧力流体)
P 水性塗料(液体)
Q 空気領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気との接触を嫌う液体を収容し、該液体を排出するときに容器内に可及的に空気を侵入させずに排出する収容容器であって、
容積を自在に変化できる柔軟な袋状で、前記液体を排出するポンプユニットに連結される液体排出口が設けられた内側容器と、
容積が不変で、前記内側容器を収容した状態で密閉可能であり、該内側容器を収容して密閉した状態で内部に圧力流体が導入される外側容器と、を備え、
前記内側容器に収容した液体が排出されるのに伴って該内側容器の内部に形成される空気領域を前記外側容器に導入される圧力流体で押し狭めて、前記内側容器に可及的に空気を侵入させないようにして前記内側容器から液体が排出されるようにしたことを特徴とする液体の収容容器。
【請求項2】
前記外側容器にその内部と外部とを連通する流体導入口が設けられ、この流体導入口に連結される流体導入手段によって前記外側容器の内部に圧力流体が導入されることを特徴とする請求項1に記載の液体の収容容器。
【請求項3】
前記外側容器には、その内部を、前記内側容器が収容される内側容器収容室と、圧力流体が収容される流体室とに仕切る仕切り板が設けられ、
前記仕切り板は前記外側容器の内部を移動可能であり、
前記外側容器の流体室に導入された圧力流体が前記仕切り板を押圧し、該仕切り板を移動させることによって前記内側容器の空気領域を押し狭めることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体の収容容器。
【請求項4】
前記仕切り板における前記内側容器の側面壁部との対向面は、上端部から下端部にかけて厚みが連続的に厚くなる傾斜面となっていることを特徴とする請求項3に記載の液体の収容容器。
【請求項5】
前記外側容器は、一面に前記内側容器を収容するための開口を有する箱状の外側容器本体部と、前記外側容器本体部の開口を覆蓋する蓋体とを備え、
前記蓋体には前記内側容器の液体排出口に連結される連結部が形成され、
前記蓋体が前記外側容器本体部の開口を覆蓋した状態で、前記蓋体と前記外側容器本体部との接続面が気密状態となり、
前記蓋体の連結部が前記内側容器の液体排出口を連結した状態で、前記蓋体と前記液体排出口との接続面が気密状態となることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体の収容容器。
【請求項6】
前記蓋体には、前記外側容器本体部の開口を覆蓋した状態で該外側容器本体部と一体となる固定具が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の液体の収容容器。
【請求項7】
前記外側容器の流体導入口を開閉するためのバルブが取り付けられ、
前記バルブを閉じることにより、前記外側容器に圧力流体が導入された状態で保持されることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1項に記載の液体の収容容器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液体の収容容器と、
前記収容容器を構成する内側容器の液体排出口に連結され、前記内側容器に収容された液体を加圧して排出するポンプユニットと、
前記収容容器を構成する外側容器に連結され、その内部に圧力流体を導入する流体導入手段と、
前記ポンプユニットに連結され、このポンプユニットによって加圧されて送出される液体を被塗装物に噴霧する噴霧手段と、
を備えることを特徴とする塗装装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液体の収容容器と、
前記収容容器を構成する内側容器の液体排出口に連結され、前記内側容器に収容された液体を排出するポンプユニットと、
前記収容容器を構成する外側容器の流体導入口と前記噴霧手段とに連結され、その内部に圧力流体を導入する流体導入手段と、
前記ポンプユニットに連結され、このポンプユニットによって送出される液体を被塗装物に噴霧する噴霧手段と、
を備えることを特徴とする塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247878(P2010−247878A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101336(P2009−101336)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(504193734)
【Fターム(参考)】