説明

液体の品質分析方法及び液体の品質分析装置

【課題】 例えば分析しようとする液体が船舶の燃料油である場合は、燃料油が船舶のエンジンに使用するのに適しているか否かを、燃料油の全量を船舶に積み込むまでに、船舶内で判定することを可能にする液体の品質分析装置を提供すること。
【解決手段】 分析される燃料油の密度を測定する密度測定部18と、分析される液体を50℃に加熱することができる加熱部21と、加熱部21によって50℃に加熱された燃料油の粘度を測定する粘度測定部19と、密度測定部18によって得られた液体の密度測定値、及び粘度測定部19によって測定して得られた液体の粘度測定値に基づいて更に得られた15℃における密度、及び50℃における動粘度を使用してCCAI値を算出すると共に、これら15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を出力する演算表示部17とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば特に船舶等の燃料油、並びに潤滑油、作動油、電解液、混合溶液、及びスラリ等の液体の品質を分析することができる液体の品質分析方法及び液体の品質分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、船舶用の燃料油は、船舶が寄港した寄港地で積み込むことが行われている。そして、その積み込もうとしている燃料油が適切な品質を有しているか否かは、地上の分析機関によって行なわれている。そして、船舶に積み込まれる燃料油を分析するときは、燃料油を船舶に積み込むときに採取することとしており、これによって、その採取された燃料油と、船舶に積み込まれる燃料油との同一性を確保できる。
【0003】
しかし、燃料油を船舶に積み込むときに、分析する燃料油を採取することとすると、その採取した燃料油を地上の分析機関に送付したときから、分析機関が燃料油を分析してその分析した燃料油が適切な品質であるか否かを判定し、その判定結果が船舶の乗組員に連絡されるまでの時間として、船舶が出港するまでの比較的短い時間しか与えられないことがある。
【0004】
そのために、採取した燃料油を、出港するまでに品質判定ができず、出航後、粗悪油(不適切な品質の燃料油)と判定された場合には、寄港地まで引き返し、良質燃料油(適切な品質の燃料油)に積み替えることが行われるので、大変な労力とコストが掛かってしまう。
【0005】
そこで、船舶上で、燃料油を簡単に分析することができる燃料油の分析方法が特許公報に開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この燃料油の分析方法は、まず、燃料油を船舶に積み込む際に燃料油を採取して、その採取した燃料油を、船舶上で希釈剤と混合する。そして、濾過後に乾燥させて、作業者が濾紙上の微粒子を、顕微鏡を用いて数えるものである。
【0006】
しかし、このように作業者が濾紙上の微粒子を、顕微鏡を用いて数える燃料油の分析方法では、作業者による微粒子の計数誤差があるので、判定結果の信頼性が低いと言える。更に、この燃料油の分析方法のみでは、当該燃料油を使用できるか否かの判定はできない。
【0007】
また、従来の燃料油の分析方法の他の例として、油中懸濁物検知装置がある(例えば、特許文献2参照。)。この、油中懸濁物検知装置を使用する手順は、まず、燃料油を船舶に積み込む際に燃料油を採取して、その採取した燃料油を、船舶上で濾過し、その濾過に使用したフィルタを対電極間にセットする。そして、対電極間にアーク放電を発生させて、フィルタ内の微粒子を溶融、発光させる。次に、Al、Siに基づく発光強度に基づいて、FCC触媒粒子を検出器で検出する。
【0008】
しかし、この油中懸濁物検知装置は、嵩が大きく、手で持って移動するのが難しく、装置が高価である。更に、この油中懸濁物検知装置のみでは、当該燃料油を使用できるか否かの判定はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−30815号公報
【特許文献2】特開11−153541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、石油精製方法が変更されており、船舶のエンジンに使用される燃料油の成分が変化している。これによって、船舶が出航するまでに、燃料油の品質が良質燃料油(適切な品質の燃料油)であるか、又は粗悪燃料油(不適切な品質の燃料油)であるかを判定できないことがあるので、粗悪燃料油だった場合には、エンジン損傷等のトラブルが発生し、大きな問題となっている。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、例えば分析しようとする液体が船舶の燃料油である場合は、燃料油が船舶のエンジンに使用するのに適しているか否かを、燃料油の全量を船舶に積み込むまでに、船舶内で判定することを可能とする液体の品質分析方法及び液体の品質分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明に係る液体の品質分析方法は、分析される液体の15℃における密度、及び50℃における動粘度を取得する密度、粘度の取得工程と、取得した前記15℃における密度、及び前記50℃における動粘度を使用してCCAI値を取得するCCAI値の取得工程と、前記15℃における密度、前記50℃における動粘度、及び前記CCAI値を出力する出力工程とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
第1の発明に係る液体の品質分析方法によると、15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を取得して、これらの各値を出力部が出力することができ、例えば表示部に表示させることができる。よって、作業者は、例えば表示部に表示されているこれらの各値を目で見て認識して、これらの各値が、各値に対して予め決められている閾値以下であるか否かを判定して、それぞれの各値がそれぞれと対応する各閾値以下であると判定したときは、その分析された液体が許容されるものであると判定することができる。
【0014】
第2の発明に係る液体の品質分析方法は、第1の発明の液体の品質分析方法において、分析される液体を加熱燃焼処理して液体に含まれる微粒子を残渣として取得する加熱燃焼工程と、前記加熱燃焼行程で取得された前記微粒子の第1重量を測定する第1重量測定工程とを更に備えるものである。
【0015】
第2の発明に係る液体の品質分析方法によると、分析される液体を加熱燃焼処理して液体に含まれる微粒子を残渣として取得して、この取得された微粒子の第1重量を測定することができる。
【0016】
これによって、例えば分析しようとする液体に含まれている低分子成分、及び高分子成分のそれぞれの割合を分析することができる。つまり、例えば燃料油を所定の温度で加熱燃焼させることによって、その温度に対応する低分子成分を燃焼させることができ、その燃焼後の残渣重量(第1重量)を測定することで、液体に含まれる高分子成分の割合を分析することができる。
【0017】
よって、作業者は、この第1重量の割合が、当該第1重量に対して予め決められている閾値以下であるか否かを判定して、第1重量の割合が閾値以下であると判定したときは、その分析された燃料油が許容されるものであると判定することができる。
【0018】
第3の発明に係る液体の品質分析方法は、第1又は第2の発明の液体の品質分析方法において、分析される液体に溶媒を添加して得られた混合液を、濾過して残った微粒子を乾燥させて残渣として取得する不溶解微粒子取得工程と、前記不溶解微粒子取得工程で取得された前記微粒子の第2重量を測定する第2重量測定工程とを備えるものである。
【0019】
第3の発明に係る液体の品質分析方法によると、分析される液体に溶媒を添加して得られた混合液を、濾過して残った微粒子を乾燥させて残渣として取得して、この取得された微粒子の第2重量を測定することができる。
【0020】
これによって、例えば分析しようとする液体に含まれている低分子成分、及び高分子成分のそれぞれの割合を分析することができる。つまり、例えば燃料油に所定の溶媒を添加すると、600℃付近で燃焼する成分のなかで、C/H比の大きい高分子成分が不溶解微粒子となり、この不溶解微粒子を残渣重量(第2重量)として測定することができる。このようにして、液体に含まれる当該不溶解微粒子の割合を分析することができる。
【0021】
よって、作業者は、この第2重量の割合が、当該第2重量に対して予め決められている閾値以下であるか否かを判定して、第2重量の割合が閾値以下であると判定したときは、その分析された燃料油が許容されるものであると判定することができる。
【0022】
第4の発明に係る液体の品質分析方法は、第1乃至第3のいずれかの発明の液体の品質分析方法において、分析される液体に含まれる硫黄の重量割合を測定する硫黄重量割合測定工程を備えるものである。
【0023】
第4の発明に係る液体の品質分析方法によると、分析される液体に含まれる硫黄の重量割合を測定することができる。これによって、分析しようとする液体に含まれている硫黄の割合割合を分析することができる。
【0024】
第5の発明に係る液体の品質分析装置は、分析される液体の密度を測定する密度測定部と、分析される液体を50℃に加熱することができる加熱部と、当該加熱部によって50℃に加熱された液体の粘度を測定する粘度測定部と、前記密度測定部によって得られた液体の密度測定値、及び前記粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値に基づいて、15℃における密度、及び50℃における動粘度を算出する演算部と、前記15℃における密度、及び前記50℃における動粘度を出力する出力部とを備えることを特徴とするものである。
【0025】
第5の発明に係る液体の品質分析装置によると、密度測定部は、分析される液体の密度を測定することができる。そして、加熱部は、分析される液体を50℃に加熱することができ、そして、この加熱部によって50℃に加熱された液体の粘度を粘度測定部によって測定することができる。そして、演算部は、これら密度測定部によって測定して得られた液体の密度測定値、及び粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値に基づいて、15℃における密度、及び50℃における動粘度を算出することができる。更に、これら算出された15℃における密度、及び50℃における動粘度を、出力部が出力することができ、これらの各値を例えば表示部に表示させることができる。
【0026】
よって、作業者は、例えば表示部に表示されているこれらの各値を目で見て認識して、これらの各値が、各値に対して予め決められている各閾値以下であるか否かを判定して、それぞれの各値がそれぞれと対応する各閾値以下であると判定したときは、その分析された液体が許容されるものであると判定することができる。
【0027】
第6の発明に係る液体の品質分析装置は、分析される液体の密度を測定する密度測定部と、分析される液体を50℃に加熱することができる加熱部と、当該加熱部によって50℃に加熱された液体の粘度を測定する粘度測定部と、前記密度測定部によって得られた液体の密度測定値、及び前記粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値に基づいて更に得られた15℃における密度、及び50℃における動粘度を使用してCCAI値を算出する演算部と、前記15℃における密度、前記50℃における動粘度、及び前記CCAI値を出力する出力部とを備えることを特徴とするものである。
【0028】
第6の発明に係る液体の品質分析装置によると、密度測定部、加熱部、及び粘度測定部は、第5の発明に係る液体の品質分析装置のものと同様に作用する。
【0029】
そして、演算部は、密度測定部によって得られた液体の密度測定値、及び粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値に基づいて更に得られた15℃における密度、及び50℃における動粘度を使用してCCAI値を算出することができる。そして、出力部は、15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を出力することができる。
【0030】
よって、作業者は、例えば表示部に表示されているこれらの各値を目で見て認識して、これらの各値が、各値に対して予め決められている各閾値以下であるか否かを判定して、それぞれの各値がそれぞれと対応する各閾値以下であると判定したときは、その分析された液体が許容されるものであると判定することができる。
【0031】
なお、例えば演算部は、密度測定部によって得られた液体の密度測定値、及び粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値を使用して、15℃及び50℃における密度、並びに50℃における粘度を算出し、これらの各値を使用してCCAI値を算出することができる。
【0032】
また、例えば作業者が、密度測定部によって得られた液体の密度測定値、及び粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値を使用して換算表から、15℃及び50℃における密度、並びに50℃における粘度を認識し、これらの各値を演算部に入力し、演算部は、これらの各値を使用してCCAI値を算出することができる。
【0033】
第7の発明に係る液体の品質分析装置は、分析される液体を加熱燃焼処理して液体に含まれる微粒子を残渣として取得することができる微粒子分析装置において、分析される液体を内側に収容することができる本体ケースと、前記本体ケース内に配置され、分析される液体を収容するための試料容器と、この本体ケースに設けられ、分析される液体を加熱燃焼させるための加熱部と、液体を燃焼させるための空気を前記本体ケース内に供給するための空気供給ポンプと、前記本体ケース内の温度を測定するための温度センサと、前記温度センサによる測定温度に基づいて、前記加熱部を制御して前記本体ケース内の温度が所定温度範囲内となるように制御する温度制御部と、前記本体ケースに断熱材が設けられ、この断熱材の前記試料容器に面する側の内面を被覆する金属製の被覆体とを備えることを特徴とするものである。
【0034】
第7の発明に係る液体の品質分析装置を使用して液体を分析するときは、分析しようとする液体(例えば燃料油)を試料容器に入れて、この試料容器を本体ケース内に入れる。そして、空気供給ポンプを作動させて、空気を本体ケース内に供給する状態を継続する。そして、加熱部を作動させて、試料容器内の液体を加熱燃焼させる。この際、温度制御部は、温度センサによる測定温度に基づいて、加熱部を制御して本体ケース内の温度が所定温度範囲内となるように制御することができる。このようにして、分析される液体を加熱燃焼処理して液体に含まれる微粒子を残渣として取得することができる。
【0035】
次に、作業者は、第2の発明に係る液体の品質分析方法の作用で説明したことと同様にして、この取得した微粒子の第1重量を測定して、例えば分析しようとする液体に含まれている低分子成分、及び高分子成分のそれぞれの割合を分析することができる。
【0036】
よって、作業者は、この第1重量の割合が、当該第1重量に対して予め決められている閾値以下であるか否かを判定して、第1重量の割合が閾値以下であると判定したときは、その分析された液体(燃料油)が許容されるものであると判定することができる。
【0037】
そして、本体ケースに断熱材が設けられているので、本体ケース内の温度制御を安定して行うことができる。また、この断熱材の試料容器に面する側の内面を金属製の被覆体で被覆しているので、断熱材が燃焼ガスによって劣化することを防止できる。
【0038】
第8の発明に係る液体の品質分析装置は、第7の発明の液体の品質分析装置において、前記試料容器内の液体の重量を測定することができる第1重量測定部と、前記温度センサによって測定された前記本体ケース内の温度、及び前記第1重量測定部によって測定された液体の重量を記録するための温度重量記録部とを更に備えるものである。
【0039】
第8の発明に係る液体の品質分析装置によると、試料容器内の液体の重量を、第1重量測定部によって測定することができる。そして、温度重量記録部は、温度センサによって測定された本体ケース内の温度、及び第1重量測定部によって測定された液体の重量を記録することができる。
【0040】
従って、例えば加熱燃焼温度を上昇させながら、液体が燃焼してその重量が減少していく過程を、温度重量記録部が記録することができるので、作業者は、燃焼温度と共に、所望の低分子成分が燃焼して焼失していく状態、及び高分子成分が燃焼せずに残渣として残留していることを記録を見て認識することができる。
【0041】
第9の発明に係る液体の品質分析装置は、分析される液体に溶媒を添加して得られた混合液を、濾過して残った不溶解微粒子を乾燥させて、この乾燥した不溶解微粒子を取得することができる微粒子分析装置において、混合液を濾過するための濾過部と、混合液を濾過部に透過させるように働く吸引力を発生する真空ポンプと、濾過部に残った不溶解微粒子を乾燥させるための熱風発生部とを備えることを特徴とするものである。
【0042】
第9の発明に係る液体の品質分析装置を使用して液体を分析するときは、分析しようとする液体に溶媒を添加して得られた混合液を、濾過部で濾過する。この混合液を濾過するときに、混合液を濾過部に透過させるように働く吸引力を真空ポンプが発生しているので、混合液を短時間で濾過することができる。そして、濾過して残った不溶解微粒子を、熱風発生部によって乾燥させることができる。このようにして、分析される液体に含まれる不溶解微粒子を残渣として取得することができる。
【0043】
次に、作業者は、第3の発明に係る液体の品質分析方法の作用で説明したことと同様にして、この取得した不溶解微粒子の第2重量を測定して、例えば分析しようとする液体(例えば燃料油)に含まれている600℃付近で燃焼する成分のなかで、C/H比の大きい高分子成分の割合を分析することができる。
【0044】
よって、作業者は、この第2重量の割合が、当該第2重量に対して予め決められている閾値以下であるか否かを判定して、第2重量の割合が閾値以下であると判定したときは、その分析された液体(例えば燃料油)が許容されるものであると判定することができる。
【0045】
第10の発明に係る液体の品質分析装置は、分析される液体に含まれる硫黄の重量割合を測定する液体の品質分析装置において、分析される液体を収容するためのものであって、縦方向、横方向、及び高さ方向の各寸法が10〜50mmである底部を有する試料容器と、前記試料容器の外側から前記容器の底部を介して前記試料容器内の液体にX線を照射する略50ワットのX線管球と、前記試料容器を収納することができ、前記試料容器内の液体に含まれる硫黄の重量割合を前記X線管球によって測定することができる測定位置と、前記試料容器を収納及び取り出すことができる非測定位置とに移動可能に設けられている試料容器収納庫と、前記試料容器内の液体中に含まれる硫黄の重量割合と対応するX線量を測定するための比例計数管と、前記比例計数管の出力する硫黄重量割合に対して、測定温度及び測定圧力に基づく誤差を補正して補正済み硫黄重量割合を出力する温度圧力補正部とを備えることを特徴とするものである。
【0046】
第10の発明に係る液体の品質分析装置を使用して液体に含まれる硫黄の重量割合を分析するときは、分析しようとする液体(例えば燃料油)を試料容器に入れる。そして、試料容器の外側からその底部を介して試料容器内の液体に、X線管球から出射されるX線を照射させる。次に、比例計数管は、硫黄の重量割合と対応するX線量を検出して試料容器内の液体中に含まれる硫黄の重量割合を測定することができる。そしてこの比例計数管の出力する硫黄重量割合に対して、温度圧力補正部は、測定温度及び測定圧力に基づく誤差を補正して補正済み硫黄重量割合を出力することができる。
【0047】
このようにして、分析される液体に含まれる硫黄の重量割合を測定することができる。これによって、作業者は、分析しようとする液体に含まれている硫黄の重量割合を分析することができる。
【0048】
よって、作業者は、この硫黄重量割合が、予め決められている閾値以下であるか否かを判定して、硫黄重量割合が所定の閾値以下であると判定したときは、その分析された液体(例えば燃料油)が許容されるものであると判定することができる。
【0049】
また、試料容器の縦方向、横方向、及び高さ方向の各寸法を10〜50mmとすると共に、X線管球を略50ワットとしたのは、この液体の品質分析装置を小型化して持ち運ぶことができるようにするためである。
【0050】
そして、試料容器を収納することができる試料容器収納庫を設け、更に、この試料容器収納庫が、試料容器内の液体に含まれる硫黄の重量割合をX線管球によって測定することができる測定位置と、非測定位置とに移動可能に設けたのは、分析される液体が試料容器からこぼれた場合でも、液体がX線管球に対して、汚す等の悪影響を与えないようにするためである。
【0051】
第11の発明に係る液体の品質分析装置は、第5又は第6の発明の液体の品質分析装置と、第7、第9、及び第10のいずれかの発明の液体の品質分析装置のうちの1又2以上の液体の品質分析装置とを備えることを特徴とするものである。
【0052】
第11の発明に係る液体の品質分析装置は、第5又は第6の発明の液体の品質分析装置と、第7、9、及び10のいずれかの発明の液体の品質分析装置のうちの1又2以上の液体の品質分析装置とを使用して、燃料油等の液体を分析することができる。これによって、液体の品質を高精度に分析することができるので、作業者は、その液体の適否について、信頼性の高い判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る液体の品質分析方法、及び液体の品質分析装置において、15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を出力することができる構成としたものでは、分析しようとする液体が例えば燃料油である場合は、燃料油の代表的な基本物性としてのこれら15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を認識することができる。
【0054】
従って、作業者は、密度、動粘度、及びCCAI値がそれぞれと対応する各閾値以下であると判定したときは、その分析された燃料油が許容されるものであると簡単に判定することができる。
【0055】
これによって、例えば燃料油が船舶のエンジンに使用するのに適しているか否かを、燃料油の全量を船舶に積み込むまでに、船舶内で判定することができる。よって、船舶に積み込んだ燃料油が粗悪燃料油だった場合に起こるエンジン損傷等のトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0056】
そして、液体の品質分析装置において、15℃における密度、及び50℃における動粘度を出力することができる構成とすると、液体が燃料油以外の例えば潤滑油、作動油、電解液、混合溶液、及びスラリ等の液体の品質を分析することができ、作業者は、その分析結果を認識して、その分析した液体の良否を簡単に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の第1実施形態に係る液体の第1品質分析装置を示す概略部分断面正面図である。
【図2】同第1実施形態に係る液体の第2品質分析装置を示す概略部分断面正面図である。
【図3】同第1実施形態に係る液体の第2品質分析装置を説明するための図であり、燃料油の温度と発熱量との関係を示す図である。
【図4】同第1実施形態に係る液体の第2品質分析装置を説明するための図であり、燃料油の温度と重量との関係を示す図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る液体の第2品質分析装置を示す概略部分断面正面図である。
【図6】同第1実施形態に係る液体の第3品質分析装置を示す概略部分断面正面図である。
【図7】同第1実施形態に係る液体の第4品質分析装置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係る液体の品質分析装置の第1実施形態を、図1〜図7(図5を除く。)を参照して説明する。この発明に係る液体の品質分析装置11は、例えば船舶の燃料油、並びに潤滑油、作動油、電解液、混合溶液、及びスラリ等の液体(流動体を含む)の品質を分析することができるものである。この実施形態では、分析しようとする液体が燃料油であり、この燃料油が船舶の燃料油(C重油)として使用するのに適切なものであるか否かを判定するために分析するものとして説明する。
【0059】
この実施形態の液体の品質分析装置11は、図1に示す液体の第1品質分析装置12と、図2に示す液体の第2品質分析装置13と、図6に示す液体の第3品質分析装置14と、図7に示す液体の第4品質分析装置15とを備えている。
【0060】
作業者は、これら4台の第1〜第4品質分析装置12〜15を使用して、分析しようとする燃料油(試料)が、船舶のエンジンに使用するのに適しているか否かを、例えば燃料油の全量を船舶に積み込むまでの短時間の間に、例えば船舶内で簡単に判定することを可能にすることができる。
【0061】
この図1に示す液体の第1品質分析装置12による分析時間は、例えば15分以内であり、図2に示す液体の第2品質分析装置13による分析時間は、例えば30分以内である。そして、図6に示す液体の第3品質分析装置14による分析時間は、例えば30分以内であり、図7に示す液体の第4品質分析装置15による分析時間は、例えば10分以内である。
【0062】
ただし、第1〜第4品質分析装置12〜15を使用しての分析作業は、並行して行うことができるので、合計の分析作業は、例えば60分以内で行うことができる。
【0063】
次に、図1〜図7に示す4台の第1〜第4品質分析装置12〜15による測定及び分析項目、並びに測定及び分析の技術的意義を説明する。
【0064】
図1に示す液体の第1品質分析装置12は、燃料油の一次判定に使用することができ、その測定項目は、分析しようとする燃料油の密度、動粘度、及びCCAI値である。これら密度、動粘度、及びCCAI値は、燃料油の代表的な基本物性を示すものであり、作業者は、燃料油の良否、つまり、船舶用エンジンに使用するのに許容できるものであるか否かの概略的な判定を行うことができる。
【0065】
例えば15℃における燃料油の密度が所定の密度閾値よりも大きい場合は、高分子成分量、残留FCC触媒量が多い場合であり、流動性が悪くなり、ポンプや配管等が詰まり易くなる。そして、15℃における燃料油の密度が小さい場合は、低分子成分量が多く、急激な燃焼を起こす原因となる。
【0066】
そして、50℃における動粘度が所定の動粘度閾値よりも大きい場合は、ポンプや配管等が詰まり易くなる。また、CCAI値は、燃焼性を示す指標となるものであり、大きくなるほど燃焼し難くなる。従って、作業者は、測定や計算によって得られた密度、動粘度のそれぞれの各値が、それぞれと対応する各閾値以下であると判定したときは、その分析された燃料油が、船舶用エンジンに使用するのに許容されるものであると判定することができる。
【0067】
図2に示す液体の第2品質分析装置13は、燃料油の二次判定に使用することができ、その分析項目は、分析しようとする燃料油を加熱燃焼させた後に残渣として取得される微粒子の第1重量である。この第1重量を使用して、燃料油に含まれる高分子成分の重量割合(又は低分子成分の重量割合)を認識することができる。
【0068】
この低分子成分の重量割合が小さい粗悪燃料油の場合は、着火性が悪く、連続した燃焼を実現し難い。つまり、このような粗悪燃料油は、高分子成分の重量割合が大きいものである。よって、この第2品質分析装置13を使用すると、作業者は、燃料油の適否を高い信頼性で判定することができる。
【0069】
図3は、良質燃料油及び粗悪燃料油のそれぞれを、電気ヒータ等の加熱部16を使用して加熱燃焼させて、一定速度で温度を上昇させていくときに、それぞれの油の各温度における発熱量を示す図である。図3に示す400℃付近は、低分子成分の燃焼による発熱を示し、600℃付近は高分子成分の燃焼による発熱を示している。
【0070】
この実施形態の第2品質分析装置13では、分析しようとする燃料油を、例えば425±25℃で加熱燃焼処理しているので、低分子成分は、この燃焼により焼失し、高分子成分が燃焼せずに微粒子の残渣となる。この高分子成分の微粒子の残渣重量(第1重量)を使用して、燃料油に含まれる高分子成分の重量割合(又は低分子成分の重量割合)を認識することができる。
【0071】
図4は、良質燃料油及び粗悪燃料油のそれぞれを、電気ヒータ等の加熱部16を使用して加熱燃焼させて、一定速度で温度を上昇させていくときに、それぞれの油の各温度における重量を示す図である。図4に示す400℃付近の変曲点までの重量減は、低分子成分の燃焼による重量減を示し、400℃付近の変曲点から600℃付近の変曲点までの重量減は、高分子成分の燃焼による重量減を示している。
【0072】
この実施形態の第2品質分析装置13では、上記のように、分析しようとする燃料油を、例えば425±25℃で加熱燃焼処理しているので、低分子成分は、この燃焼により焼失し、高分子成分が燃焼せずに微粒子の残渣となる。この高分子成分の微粒子の残渣重量(第1重量)を使用して、燃料油に含まれる高分子成分の重量割合(又は低分子成分の重量割合)を認識することができる。
【0073】
図6に示す液体の第3品質分析装置14は、燃料油の三次判定に使用することができ、その分析項目は、分析しようとする燃料油に溶媒を添加して濾過した後に残渣として取得される微粒子の第2重量である。この第2重量を使用して、燃料油に含まれる高分子成分の重量割合(又は低分子成分の重量割合)を認識することができる。
【0074】
この残渣として取得される微粒子の高分子成分は、600℃付近で燃焼する成分のなかで、C/H(炭素/水素)比の大きい高分子成分である。この高分子成分の重量割合が大きい場合は、連続した燃焼を実現し難くなる。この三次判定方法は、二次判定方法と組み合わせることによって、作業者は、燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適しているか否を高い信頼性で判定することができる。
【0075】
図7に示す液体の第4品質分析装置15は、燃料油の四次判定に使用することができ、その分析項目は、分析しようとする燃料油に含まれる硫黄の重量割合である。
【0076】
燃料油に含まれる硫黄の重量割合が大きいと、排ガスに含まれる硫黄が多くなり環境を悪化させる。更に、エンジン部品の腐食が大きくなり、トラブルが増加する要因となる。しかし、燃料油に含まれる硫黄の重量割合が小さ過ぎると、摺動性が悪くなり、エンジン部品の摩耗が進み易く、トラブルの原因となる。
【0077】
次に、図1〜図7を参照して、第1〜第4品質分析装置12〜15を説明する。これら第1〜第4品質分析装置12〜15は、それぞれが別々のボックスに収容され、持ち運びできるようになっている。
【0078】
図1に示す液体の第1品質分析装置12は、分析しようとする燃料油(試料)の15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を演算表示部17に表示することができるものである。作業者は、演算表示部17に表示されているこれらの数値が、それぞれと対応して予め決められた所定の閾値よりも以下であるか否かを判断することによって、試料としての燃料油が、燃焼性を含む代表的な基本物性を満たして否かを判定することができる。
【0079】
ただし、CCAI値は、下記の(1式)によって算出される。
CCAI=D−140.7log(log(V+0.85))−80.6(1式)
なお、Dは、15℃密度(Kg/m)、Vは、50℃動粘度(cSt)である。
【0080】
図1に示す液体の第1品質分析装置12は、密度測定部18と、加熱部と、粘度測定部19と、演算表示部17とを備えている。そして、これら密度測定部18、加熱部16、粘度測定部19、及び演算表示部17は、同一の基台20上に取り付けられ、一体に構成されている。
【0081】
密度測定部18は、浮子式あるいは振動式のものであって、分析される燃料油の密度を測定することができるものである。そして、測定して得られた密度測定値は、演算表示部17に出力される。
【0082】
この分析される燃料油は、試料容器22に収容される。この試料容器22は、例えば使い捨てとする場合は、紙製容器を使用し、内面をアルミシート、又はポリエチレンシートで内張したものとすることができる。そして、この試料容器22を再使用可能とする場合は、プラスチック製、金属製、又はガラス製とすることができる。
【0083】
加熱部21は、電気ヒータであり、図1に示す粘度測定部19に設けられている。加熱部21は、この粘度測定部19によって測定される燃料油を、50℃に設定された温度となるように加熱することができるものである。この加熱される燃料油は、耐熱性の金属製試料容器23に収容される。ただし、燃料油を加熱する温度は、作業者が演算表示部17を操作することによって、所定の温度範囲内で設定することができるようになっている。
【0084】
粘度測定部19は、振動式のものであって、加熱部21によって50℃(設定値)に加熱された燃料油の粘度を測定することができるものである。そして、測定して得られた粘度測定値は、演算表示部17に出力される。
【0085】
演算表示部17は、中央演算処理装置(CPU)を備え、予め記憶部に記憶されているプログラムに従って、各種の演算を行うことができる。そして、演算表示部17は、密度測定部18によって得られた例えば船内温度(当該燃料油の温度)における燃料油の密度測定値、及び粘度測定部19によって測定して得られた50℃における燃料油の粘度測定値に基づいて、15℃及び50℃における密度、及び50℃における動粘度を算出することができる。
【0086】
更に、演算表示部17は、これら算出して得られた15℃における密度、及び50℃における動粘度を使用してCCAI値を算出することができる。
【0087】
ここで、この15℃における密度は、密度測定部18によって得られた密度測定値と、その密度測定値が測定されたときの燃料油の船内温度とに基づいて、演算表示部17によって算出される。
【0088】
そして、50℃における動粘度は、50℃における燃料油の粘度測定値を、50℃における燃料油の密度で除算することによって、演算表示部17によって算出される。そして、この50℃における燃料油の密度は、船内温度における燃料油の密度測定値から算出される。また、船内温度は、この第1品質分析装置12に設けられている温度計で測定されて、演算表示部17に自動的に又は作業者によって入力される。
【0089】
また、演算表示部17は、この演算表示部17が演算して得られた15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を出力して表示することができる。
【0090】
次に、上記のように構成された図1に示す液体の第1品質分析装置12及び液体の品質分析方法を使用して、燃料油の15℃における密度、50℃における動粘度、及びCCAI値を取得する手順を説明し、作業者が、燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適しているか否を判定する方法を説明する。
【0091】
なお、この燃料油の密度、動粘度、及びCCAI値の各測定項目の測定を行なうタイミング、及びこの燃料油が適切であるか否かの判定を行なうタイミングは、船舶が寄港後、地上の燃料油タンクより燃料油を採取し、又は船舶に燃料油の積み込みを開始した時に燃料油を採取して、短時間に燃料油の上記各測定項目の測定を行い、燃料油を積み込む前、積み込みの初期段階、或いは一部の積み込み段階で、作業者が、燃料油が適切であるか否かの判定を行なう。
【0092】
まず、作業者は、船舶内に保管していた例えば片手で持ち運び可能なボックスより、第1品質分析装置12をデスク上に取り出す。次に、作業者は、採取油の一部(分析しようとする燃料油)を2つの各試料容器22、23に入れて、一方の試料容器22を図1に示す密度測定部18に装着する。そして、この密度測定部18を使用して、試料容器22内の燃料油の船内温度(当該燃料油の温度)における密度を測定する。この測定によって得られた船内温度における密度測定値は、演算表示部17に出力される。
【0093】
また、作業者は、他方の試料容器23を図1に示す粘度測定部19に装着する。そして、この粘度測定部19を使用して、試料容器23内の燃料油の粘度を測定する。ただし、この試料容器23内の燃料油は、粘度測定部19が備えている加熱部21によって50℃に加熱されている。よって、この粘度測定部19によって、燃料油の50℃における粘度を測定することができ、この測定によって得られた50℃における粘度測定値は、演算表示部17に出力される。
【0094】
次に、演算表示部17は、予めインプットされているソフトウェア(密度の温度換算は、JIS K 2249付表II表1Bに基づくソフトウェアで行なわれる。)で、船内温度における密度測定値、及び50℃における粘度測定値に基づいて、当該燃料油の15℃及び50℃における密度、50℃における動粘度(粘度/密度)、CCAI値を算出する。そして、これら当該燃料油の15℃の密度、50℃の動粘度、及びCCAI値を演算表示部17に表示することができる。
【0095】
よって、作業者は、例えば演算表示部17に表示されているこれらの各値を目で見て認識して、これらの各測定値及び演算値が、各値に対して予め決められている所定の各閾値以下であるか否かを判定して、それぞれの各値がそれぞれと対応する各閾値以下であると判定したときは、その分析された燃料油が許容されるもの(良質燃料油)であると判定することができる。
【0096】
例えば燃料油の15℃の密度、50℃の動粘度、及びCCAI値が、以下の場合は、その分析された燃料油が許容されるもの(良質燃料油)であると判定する。
【0097】
密度:980Kg/m以下(15℃)、動粘度:400cSt以下(50℃)、CCAI値:850以下。
【0098】
これによって、例えば燃料油が船舶のエンジンに使用するのに適しているか否かを、例えば燃料油の全量を船舶に積み込むまでに、船舶内で判定することができる。よって、船舶に積み込んだ燃料油が粗悪燃料油だった場合に起こるエンジン損傷等のトラブルの発生を未然に防止することができる。
【0099】
ただし、上記実施形態では、演算表示部17が、密度測定部18によって得られた液体の密度測定値、及び粘度測定部19によって測定して得られた液体の粘度測定値を使用して、15℃及び50℃における密度、並びに50℃における粘度を算出し、これらの各値を使用してCCAI値を算出したが、これに代えて、作業者が、密度測定部18によって得られた液体の密度測定値、及び粘度測定部19によって測定して得られた液体の粘度測定値を使用して所定の換算表から、15℃及び50℃における密度、並びに50℃における粘度を認識し、これらの各値を演算表示部17に入力し、演算表示部17が、これらの各値を使用してCCAI値を算出するようにしてもよい。
【0100】
図2に示す液体の第2品質分析装置13は、分析しようとする燃料油(試料)を425±25℃で加熱燃焼処理して、試料の残渣を取得することができるものである。この残渣重量(第1重量)を測定することによって、燃料油のアスファルト成分の中で、高分子成分と、残留FCC触媒(主成分がAl、Si)との合計重量(第1重量)G1を測定することができる。作業者は、この第1重量G1が、予め決められた所定の設定第1重量GS1よりも以下であときは、燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適切であると判定することができる。この計測合計重量G1が、所定の設定合計重量GS1よりも大きいときは、その燃料油を使用した場合は、着火性が悪く、連続した燃焼を実現し難い。
【0101】
この図2に示す液体の第2品質分析装置13は、本体ケース25、加熱部16、空気供給ポンプ26、温度センサ27、温度表示制御部28、及び断熱材29を備えている。
【0102】
本体ケース25は、例えば片手で持ち運び可能であって、分析される燃料油を内側に収容することができるものであり、この本体ケース25内で、分析される燃料油を加熱して燃焼させるようになっている。そして、この本体ケース25内には、耐熱性の試料容器30が配置されており、この試料容器30内には、分析される燃料油が収容される。
【0103】
加熱部16は、例えば電気ヒータであり、本体ケース25内に設けられ、この加熱部16によって分析される燃料油を加熱燃焼させることができる。
【0104】
空気供給ポンプ26は、燃料油を燃焼させるための空気を本体ケース25内に供給するためのものである。この空気供給ポンプ26は、その空気吐出口26aに空気供給管31が接続し、この空気供給管31の先端部が本体ケース25の内側空間に開口している。そして、本体ケース25には、燃焼ガスの出口33が形成されている。また、空気供給管31の途中には、本体ケース25内への空気の供給量を測定するための流量計32が設けられている。
【0105】
温度センサ27は、図2に示すように、本体ケース25に設けられ、本体ケース25内の温度を測定することができるものである。温度センサ27は、測定して得られた温度測定値を温度表示制御部28に出力するようになっている。
【0106】
温度表示制御部28は、温度センサ27によって得られた温度測定値に基づいて、前記加熱部16及び空気供給ポンプ26を制御して、本体ケース25内の温度が所定温度範囲内となるように制御することができるものである。この本体ケース25内の温度は、作業者が温度表示制御部28を操作して設定できるようになっており、本体ケース25内の温度が例えば425±25℃の範囲で、±2℃精度で15分以内に到達するように設定されている。更に、温度表示制御部28は、温度センサ27によって得られた温度測定値を表示することができる。
【0107】
断熱材29は、図2に示すように、本体ケース25の内面の全体を覆うように設けられている。そして、この断熱材29の試料容器30に面する側の内面は、金属製の被覆体34によって被覆されている。
【0108】
本体ケース25は、このように断熱材29が設けられているので、本体ケース25内の温度制御を安定して行うことができる。また、この断熱材29の試料容器30に面する側の内面を金属製の被覆体34で被覆しているので、断熱材29が燃焼ガスによって劣化することを防止できる。
【0109】
そして、図2に示すように、燃料油の加熱燃焼後の残渣を急速に冷却させるために、金属製の被覆体34と断熱材29との間の隙間(冷却空気の通路60)に空気を供給するための冷却ファン58が本体ケース25の背部に設けられている。更に、冷却空気を排出するための冷却空気排気口59が本体ケース25の前上部に設けられている。
【0110】
また、図2に示すように、本体ケース25の開口部25aは、扉35で開閉自在に閉じられており、この扉35は、クランプ36で閉位置に取り付けられている。
【0111】
次に、上記のように構成された図2に示す液体の第2品質分析装置13及び液体の品質分析方法を使用して、分析される燃料油を加熱燃焼処理して、燃料油に含まれる微粒子を残渣として取得し、そしてその残渣重量(第1重量)を測定し、更に、作業者が、燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適しているか否を判定する方法を説明する。なお、この第2品質分析装置13を使用しての燃料油の分析は、第1品質分析装置12を使用しての燃料油の分析と並行して行うことができる。
【0112】
まず、作業者は、採取油の一部(分析しようとする燃料油)を試料容器30に入れて、この試料容器30を図2に示す本体ケース25内に配置する。そして、空気供給ポンプ26を作動させて、空気を本体ケース25内に供給する状態を継続する。そして、加熱部16を作動させて、試料容器30内の燃料油を加熱燃焼させる。この際、温度表示制御部28は、温度センサ27による測定温度に基づいて、加熱部16を制御して本体ケース25内の温度が所定温度範囲(例えば425±25℃の範囲で、±2℃の精度)内となるように制御することができる。このようにして、分析される燃料油を加熱燃焼処理して燃料油に含まれる微粒子を残渣として取得することができる。
【0113】
次に、作業者は、この取得した微粒子の重量(第1重量)を、別に用意した重量計量機(図示せず)で測定する。この第1重量は、燃料油のアスファルト成分の中での高分子成分の重量と、残留FCC触媒の合計重量である。これによって、分析しようとする燃料油に含まれている高分子成分、及び低分子成分のそれぞれの重量割合を分析することができる。
【0114】
よって、作業者は、この第1重量の割合が、当該第1重量に対して予め決められている閾値(例えば60%)以下であるか否かを判定して、第1重量の割合が閾値(例えば60%)以下であると判定したときは、その分析された燃料油が許容されるもの(良質燃料油)であると判定することができる。
【0115】
なお、分析しようとする燃料油を加熱燃焼させて、その燃焼後の残渣を本体ケース25から短時間の間に取り出すために、本体ケース25内温度を、所定温度まで急速に上昇させてその所定温度で所定時間保持し、しかる後に、急速に低下するようにしている。ここで、本体ケース25内温度が急速に低下するのは、加熱部16の電源がOFFとなっており、空気供給ポンプ26及び冷却ファン58が作動しているからである。
【0116】
また、例えば所定温度(約425℃)までの加熱時間は5〜15分程度であり、所定温度での保持時間は0.5〜5分程度に設定してある。この保持時間を、この時間範囲とすることによって、燃料油の揮発分の蒸発の影響を小さくすることができ、好ましい。また、所定温度は、400℃未満であると、低分子成分の燃焼、分解が不十分となり、450℃以上であると、燃焼を阻害する高分子成分の分解が進行して残渣として取得することができないので、425±25℃が好ましい。加熱時の雰囲気は空気が好ましく、燃焼を良くし、燃焼ガスを排出すために、100〜500ml/分の流量で流通させることが好ましい。
【0117】
図6に示す液体の第3品質分析装置14は、例えば片手で持ち運び可能なボックスに収納され、分析される燃料油に溶媒を添加して得られた混合液を、濾過して残った不溶解微粒子を乾燥させて、この乾燥した不溶解微粒子を取得することができるものである。
【0118】
この不溶解微粒子の重量を測定することによって、高分子成分であって、C/H比が大きい成分の量と、残留FCC触媒のとの合計重量(第2重量)G2を測定することができる。作業者は、この第2重量G2が、予め決められた所定の設定第2重量GS2よりも以下であるときは、燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適していると判定することができる。この計測合計重量G2が、所定の設定合計重量GS2よりも大きいときは、その燃料油を使用した場合は、着火性が悪く、連続した燃焼を実現し難い。
【0119】
この図6に示す液体の第3品質分析装置14は、濾過部38、真空ポンプ39、及び熱風発生部40を備えている。
【0120】
濾過部38は、分析される燃料油に溶媒を添加して得られた混合液を濾過するためのものである。この濾過部38は、漏斗状部38aを有し、この漏斗状部38a内に濾材38bが略水平に配置されている。
【0121】
真空ポンプ39は、その混合液を濾過部38に透過させるように働く吸引力を発生するためのものである。この真空ポンプ39は、その吸込み口39aが濾液採取容器41の側壁に装着され、この濾液採取容器41内の空気を排出して、圧力を低下させることができるように取り付けられている。そして、この濾液採取容器41の上部開口部には、漏斗状部38aの下端管部42が挿入されている。そして、濾液採取容器41の上部開口部と、下端管部42との隙間は、ゴム栓43で密封されている。
【0122】
熱風発生部40は、濾過部38の濾材38b上に残った不溶解微粒子を乾燥させるためのものである。この熱風発生部40は、その送風口40aが濾過部38の濾材38bの上面に対向して配置され、この熱風発生部40で発生した熱風を、濾材38bの上面に吹き付けて濾材38bの上面を乾燥させることができるように設けられている。
【0123】
また、図6に示すように、この第3品質分析装置14には、熱風発生部40で発生した熱風の温度を表示する温度表示部44、濾液採取容器41内の圧力を表示する圧力表示部45、並びに、これら熱風発生部40、真空ポンプ39等を制御するための制御部(図示せず)や操作部(図示せず)が設けられている。
【0124】
次に、上記のように構成された図6に示す液体の第3品質分析装置14及び液体の品質分析方法を使用して、分析される燃料油に含まれる不溶解微粒子の重量(第2重量)を測定し、更に、作業者が、燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適しているか否かを判定する方法を説明する。なお、この第3品質分析装置14を使用しての燃料油の分析は、第1及び第2品質分析装置12、13を使用しての燃料油の分析と並行して行うことができる。
【0125】
まず、作業者は、採取油の一部(分析しようとする燃料油)を試料容器(図示せず)に入れて、更に、この試料容器内の燃料油に溶媒を添加して混合液を作成する。次に、この混合液を濾過部38で濾過する。この混合液を濾過するときに、混合液を濾過部38に透過させるように働く吸引力を真空ポンプ39が発生しているので、混合液を短時間で濾過することができる。しかる後に、濾過して残った不溶解微粒子を、熱風発生部40によって乾燥させる。このようにして、分析される燃料油に含まれる不溶解微粒子を残渣として取得することができる。
【0126】
次に、作業者は、この取得した不溶解微粒子の重量(第2重量)を、別に用意した重量計量機(図示せず)で測定する。この船舶用エンジンに使用するのに適しているは、図3及び図4に示すように、燃料油に含まれている600℃付近で燃焼する成分のなかで、C/H比の大きい高分子成分の重量である。これによって、分析しようとする燃料油に含まれているC/H比の大きい高分子成分の重量割合を分析することができる。
【0127】
よって、作業者は、この第2重量の割合が、当該第2重量に対して予め決められている所定の閾値(例えば5.0%)以下であるか否かを判定して、第2重量の割合が閾値(例えば5.0%)以下であると判定したときは、その分析された燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適しているもの(良質燃料油)であると判定することができる。
【0128】
なお、この実施形態で使用される溶媒は、例えばトルエン、テトラリン、リモネン等のテルペン系炭化水素の単独の溶剤、又はこれらのうちの2以上の溶媒を混合して作成した混合溶媒である。
【0129】
そして、混合溶媒を使用する場合、トルエン100重量部に対してテトラリン(登録商標)又はリモネン等のテルペン系炭化水素の添加量を10〜30重量部とすると、燃料油の燃焼不良を引き起こす成分(アスファルト成分)の残渣量(不溶解微粒子量)と相関がよく、好ましい。また、燃料油50重量部に対して、溶媒100〜300重量部が、燃料油の燃焼不良を引き起こさない成分を溶解するのに適している。よって、不溶解微粒子を取得するのに適している。
【0130】
ところで、熱風発生部40が発生する熱風の温度は、約105℃が適切であり、この温度よりも高くすると、C/H比の大きい高分子成分が揮発するので、第2重量に対する計量誤差の原因となる。
【0131】
図7の平面図に示す液体の第4品質分析装置15は、分析される燃料油に含まれる硫黄の重量割合を測定することができるものである。
【0132】
作業者は、この測定して得られた硫黄の重量割合が、予め決められた所定の閾値よりも以下であときは、その燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適していると判定することができる。そして、この硫黄の重量割合が、所定の閾値よりも大きいときは、その燃料油を使用した場合は、硫黄量が排ガスに多く含まれることになり、環境を悪化させるし、エンジン部品の腐食の進行を早める。
【0133】
この図7の平面図に示す液体の第4品質分析装置15は、試料容器47、X線管球(図示せず)、比例計数管(図示せず)、温度圧力補正部(図示せず)、及び試料容器収納庫51を備えている。
【0134】
試料容器47は、分析される燃料油を収容するためのものであって、例えば底部を有する円筒形の容器であり、内径が10〜50mm、高さが10〜50mmである。
【0135】
この試料容器を使い捨てとする場合は、紙容器を使用し、この紙容器の内面全体を被覆シート48で被覆したものとする。この被覆シート48を使用する目的は、試料容器47内に入れられた燃料油がこの紙製の試料容器47を浸透して漏れないようにするためである。
【0136】
この被覆シート48として、例えばアルミシートやポリエチレンシートを使用することができるが、紙容器の底部の上面を被覆する被覆シート48として、例えば厚みが5〜20μmの透明に形成された透明ポリエチレンシートを使用することが好ましい。この透明ポリエチレンシートの厚みを5〜20μmとしたのは、5μm以上とすることによって、破れ難くすることができる。そして、20μm以下とすると共に、透明とすることによって、X線の透過を良好にすることができる。
【0137】
また、試料容器を再使用可能にする場合は、プラスチック製、金属製、ガラス製とすることができる。
【0138】
X線管球は、試料容器47の下側からその底部、及び底部の上面を被覆する被覆シート48を介して試料容器内の燃料油にX線を照射することができる略50ワットのX線管球である。
【0139】
比例計数管は、試料容器47内の燃料油中に含まれる硫黄の重量割合と対応するX線量を測定することができるものである。
【0140】
温度圧力補正部は、比例計数管の出力する硫黄の重量割合に対して、測定温度及び測定圧力に基づく誤差を補正して補正済み硫黄重量割合を出力することができるものである。
【0141】
また、図7に示すように、この第4品質分析装置15には、温度圧力補正部が出力する補正済み硫黄重量割合を表示する硫黄重量割合表示部49、この第4品質分析装置15を操作するための操作部50、及び試料容器47を装着するための試料容器収納庫51が設けられている。
【0142】
そして、図7に示すように、この試料容器収納庫51は、試料容器47内の液体に含まれる硫黄の重量割合をX線管球によって測定することができる測定位置(図7に示す実線で示す位置)と、非測定位置(図7に示す二点鎖線で示す位置)とに移動可能に設けてある。そして、試料容器収納庫51が非測定位置にあるときは、試料容器47をこの試料容器収納庫51に対して、収納したり取り出すことができる。また、試料容器47を試料容器収納庫51に収納して硫黄の重量割合を測定する構成したのは、分析される燃料油が試料容器47からこぼれた場合でも、燃料油がX線管球に対して、汚す等の悪影響を与えないようにするためである。
【0143】
次に、上記のように構成された図7に示す液体の第4品質分析装置15及び液体の品質分析方法を使用して、分析される燃料油に含まれる硫黄重量割合を測定し、更に、作業者が、この燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適しているか否かを判定する方法を説明する。なお、この第4品質分析装置15を使用しての燃料油の分析は、第1〜第3品質分析装置12〜14を使用しての燃料油の分析と並行して行うことができる。
【0144】
まず、作業者は、採取油の一部(分析しようとする燃料油)を試料容器47に入れる。そして、作業者は、この試料容器47を、図7に二点差線で示す試料容器収納庫51(この試料容器収納庫51は、非測定位置(露出位置)に移動している。)に装着し、次に、この試料容器収納庫51を、実線で示す測定位置(収容位置)に移動させる。しかる後に、作業者は、操作部50を操作して、その試料容器47の下側からその底部及び被覆シート48を介して試料容器47内の燃料油に、X線管球から出射されるX線を照射させる。次に、比例計数管は、硫黄の重量割合と対応するX線量(X線強度)を検出して試料容器47内の燃料油中に含まれる硫黄の重量割合を測定することができる。そしてこの比例計数管の出力する硫黄重量割合に対して、温度圧力補正部は、測定温度及び測定圧力に基づく誤差を補正して補正済み硫黄重量割合を出力することができる。この硫黄重量割合は、硫黄重量割合表示部49に表示される。
【0145】
このようにして、分析される燃料油に含まれる硫黄の重量割合を測定することができる。これによって、作業者は、分析しようとする燃料油に含まれている硫黄の重量割合を分析することができる。
【0146】
よって、作業者は、この硫黄の重量割合が、予め決められている所定の閾値(例えば0.1〜4.5%の範囲内のいずれかの値)以下であるか否かを判定して、硫黄の重量割合が所定の閾値以下であると判定したときは、その分析された燃料油が船舶用エンジンに使用するのに適しているもの(良質燃料油)であると判定することができる。
【0147】
また、この実施形態において、試料容器47の縦方向、横方向、及び高さ方向の各寸法を10〜50mmとしたのは、硫黄の重量割合を正確に測定することができる量の試料としての燃料油を確保すると共に、この第4品質分析装置15を小型化して持ち運ぶことができるようにするためである。
【0148】
更に、X線管球を略50ワットとしたのは、50ワット未満では、硫黄の重量割合の計量精度が許容範囲内となり、100ワット以上とすると、コスト高、及びこの第4品質分析装置15が大型となるからである。
【0149】
そして、硫黄の重量割合が適切であるか否かを判定するための閾値を、0.1〜4.5%の範囲内のいずれかの値としたのは、エンジンの排気ガス中に含まれる硫黄の重量割合(重量%)の規制値が、規制年度、規制海域に応じて国際海事機関(IMO)で採択された内容によって変更されるからである。
【0150】
次に、この発明に係る第2品質分析装置の第2実施形態を、図5を参照して説明する。この図5に示す第2実施形態の第2品質分析装置53と、図2に示す第1実施形態の第2品質分析装置13とが相違するところは、図2に示す第1実施形態では、分析しようとする燃料油を加熱燃焼させて、その残渣を取得できるようにしたのに対して、図5に示す第2実施形態では、図2に示す第1実施形態と同様にして残渣を取得することができ、更に、その残渣の重量を、第1重量測定部54によって自動的に計量し、その測定重量値を、温度重量記録部55によって記録できるようにしたところである。
【0151】
これ以外は、図2に示す第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0152】
この第1重量測定部54は、図5に示すように、試料容器30内に収容されている燃料油(この燃料油の燃焼後に残留する微粒子を含む。)の重量(第1重量)を自動的に計量することができるものであり、例えばロードセルで構成されている。
【0153】
この第1重量測定部54は、図5に示すように、本体ケース25上に設けられ、この第1重量測定部54の先端部にワイヤ56を介して試料容器30が吊り下げられている。このワイヤ56は、本体ケース25及び断熱材29に挿通して設けられている挿通管57内を挿通しており、ワイヤ56が、本体ケース25及び断熱材29との間で摩擦抵抗が生じないようにしている。これによって、残渣重量(第1重量)の計量誤差が生じないようにしている。
【0154】
温度重量記録部55は、温度センサ27によって測定された本体ケース25内の温度、及び第1重量測定部54によって測定された燃料油の重量を記録することができるものである。
【0155】
この図5に示す第2実施形態によると、試料容器30内の燃料油の重量を、第1重量測定部54によって逐次測定することができる。そして、温度重量記録部55は、温度センサ27によって測定された本体ケース25内の温度、及び第1重量測定部54によって測定された燃料油(この燃料油の燃焼後に残留する微粒子を含む。)の重量(第1重量)を記録することができる。
【0156】
従って、例えば図4に示すように、加熱燃焼温度を400℃付近まで上昇させながら、燃料油が燃焼してその重量が減少していく過程を、温度重量記録部55が記録紙に記録することができるので、作業者は、燃焼温度と共に、所望の低分子成分が燃焼して焼失していく状態、及び高分子成分が燃焼せずに残渣として残留していることを、記録紙の記録を見て認識することができる。
【0157】
また、この第2品質分析装置53が備える温度表示制御部28は、温度センサ27によって得られた温度測定値、及び第1重量測定部54によって得られた第1重量を表示することができる。
【0158】
次に、上記第1〜第4品質分析装置12〜15を使用して、燃料油を分析して判定した第1〜第4判定例を説明する。
(第1判定例)
第1判定例は、図1に示す液体の第1品質分析装置12を使用して判定を行なう例である。
【0159】
まず、C重油Aの約200mlを地上タンクより採取し、船舶内に運んだ。そのうち約50mlを100mlのガラス容器(試料容器22)に入れ、重量40.00gのガラス製浮子を燃料油に宙づり状態に浸漬し、浸漬時の重量を天秤(図示せず)で測定した(密度測定部18)。次に、ガラス製容器(試料容器23)を、外側にヒータ(加熱部21)が巻かれた金属容器の内側に入れ、50℃に加温後、振動式粘度計(粘度測定部19)で粘度を測定した。それらのデータより、データ処理機(演算表示部17)では、15℃密度が971Kg/m、50℃動粘度が205cSt、CCAI値が839と表示され、C重油Aは良質燃料油と判断した。
(第2判定例)
第2判定例は、図1に示す液体の第1品質分析装置12、図5に示す液体の第2品質分析装置53、及び図7に示す液体の第4品質分析装置15を使用して判定を行なう例である。
【0160】
C重油Bを地上タンクより、船舶に少量積み込む際に約200mlを輸送管より採取し、船舶内に運んだ。そのうち約50mlを100mlの金属製容器(試料容器22)に入れ、振動式密度計を挿入して密度を測定した(密度測定部18)。次に、金属製試料容器23を外側にヒータ(加熱部21)が巻かれた金属製容器の内側に入れ、50℃に加温後、振動式粘度計(粘度測定部19)で粘度を測定した。次いで、それらのデータより、データ処理機(演算表示部17)では、15℃密度が965Kg/m、50℃動粘度が244cSt、CCAI値が831と表示された(図1の第1品質分析装置12)。
【0161】
次に、採取容器より、10.00gを容器(磁器である試料容器30)に入れ、空気を300ml/分の流量で流通させながら25℃/分で昇温し、ロードセル(第1重量計測部54)で重量を連続して測定した。300℃での重量は5.20gで、400℃での重量は3.80gで、425℃での重量は3.51gであった。その後、100℃以下で試料容器30を取り出し、残渣重量(第1重量)を別の重量計量機で計測すると3.50gであり、微粒子の重量割合を35%とした(温度表示制御部)(図5の第2品質分析装置13)。
【0162】
更に、採取容器より、約10gを底部が10μmの透明ポリエチレン製シートで被覆された紙製の容器(試料容器47)に入れ、蛍光X線装置(X線管球)にセットし、硫黄の重量割合を測定すると(比例計数管)、3.10%と表示された(硫黄重量割合表示部)(図7の第4品質分析装置15)。以上より、C重油Bは良質と判定した。
(第3判定例)
第3判定例は、図1に示す液体の第1品質分析装置12、及び図6に示す液体の第3品質分析装置14を使用して判定を行なう例である。
【0163】
C重油Bを地上タンクより、船舶に少量積み込む際に約200mlを輸送管より採取し、船舶内に運んだ。そのうち約50mlを100mlのガラス容器(試料容器22)に入れ、重量40.00gのガラス製浮子を燃料油に宙づり状態に浸漬し、浸漬時の重量を天秤で測定した(密度測定部18)。次に、ガラス製容器(試料容器23)を外側にヒータ(加熱部21)が巻かれた金属容器の内側に入れ、50℃に加温後、振動式粘度計(粘度測定部19)で粘度を測定した。それらのデータより、データ処理機(演算表示部17)では、15℃密度が965Kg/m、50℃動粘度が244cSt、CCAI値が831と表示された。(図1の第1品質分析装置12)
次に、採取容器より、25.00gを100ml容器に入れ、トリエン45ml、リモネン5mlを加え、蓋をして、手で3分間振盪後、その混合液を濾過し(濾過部38)、105℃で乾燥後(熱風発生部40)(図6の第3品質分析装置14)、濾紙上の残渣重量(第2重量)を測定すると1.02gであり、微粒子の重量割合を4.08%とした。以上より、C重油Bは良質と判定した。
(第4判定例)
第4判定例は、図1に示す液体の第1品質分析装置12、及び図2に示す液体の第2品質分析装置13を使用して判定を行なう例である。
【0164】
C重油Cを地上タンクより、船舶に少量積み込む際に約200mlを輸送管より採取し、船舶内に運んだ。そのうち約50mlを100mlのガラス容器(試料容器22)に入れ、振動式密度計を挿入して密度を測定した(密度測定部18)。次に、ガラス製容器(試料容器23)を外側にヒータ(加熱部21)が巻かれた金属容器の内側に入れ、50℃に加温後、振動式粘度計(粘度測定部19)で粘度を測定した。それらのデータより、データ処理機(演算表示部17)では、15℃密度が992Kg/m、50℃動粘度が307cSt、CCAI値が855と表示された(図1の第1品質分析装置12)。
【0165】
次に、採取容器より、10.00gを皿(磁器である試料容器30)に入れ、415℃で1分間加熱処理後(図2の第2品質分析装置13)、残渣重量(第1重量)を計測すると6.70gであり、微粒子の重量割合を67%とした。以上より、C重油Cは粗悪燃料油と判定した。
【0166】
ただし、上記実施形態の図1に示す流体の第1品質分析装置12では、燃料油の密度、粘度、及びCCAI値を測定したり演算で算出したが、これに代えて、分析しようとする液体が、燃料油以外の例えば潤滑油、作動油、電解液、混合溶液、及びスラリ等の液体(流動体を含む)である場合は、そのような液体の密度、及び粘度を測定し、CCAI値の演算を行なうことを省略してもよい。これによっても、それら液体の代表的な基本物性の品質を認識することができ、作業者は、液体の良否、つまり許容できるものであるか否かの概略的な判定を行うことができる。
【0167】
そして、上記各実施形態では、作業者が、液体が適切であるか否かを判定したが、これに代えて、第1〜第4品質分析装置12〜15に判定部を設けて、この判定部が、その得られたデータに基づいてその判定を行う構成とし、例えばその判定結果を、判定結果と対応する赤色、黄色、緑色等のランプ等で表示部に表示したり、文字等で表示部に表示するようにしてもよい。
【0168】
また、上記各実施形態では、この第1〜第4品質分析装置12〜15を船舶内で使用する例を挙げて説明したが、これ以外の例えば地上で使用することもできる。
【0169】
更に、図5に示す流体の第2品質分析装置53では、燃料油の燃焼後の残渣重量(第1重量)を温度表示制御部28が表示するようにしたが、この残渣重量(第1重量)に加えて、試料である燃料油における残渣重量の重量割合も表示するようにしてもよい。
【0170】
そして、図2及び図5に示す液体の第2品質分析装置13、53では、冷却ファン58を設けたが、この冷却ファン58を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0171】
以上のように、本発明に係る液体の品質分析方法及び液体の品質分析装置は、例えば分析しようとする液体が船舶の燃料油である場合は、燃料油が船舶のエンジンに使用するのに適しているか否かを、燃料油の全量を船舶に積み込むまでに、船舶内で判定することを可能にする優れた効果を有し、このような液体の品質分析方法及び液体の品質分析装置に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0172】
11 液体の品質分析装置
12 液体の第1品質分析装置
13 液体の第2品質分析装置
14 液体の第3品質分析装置
15 液体の第4品質分析装置
16 液体の第2品質分析装置の加熱部
17 演算表示部
18 密度測定部
19 粘度測定部
20 基台
21 液体の第1品質分析装置の加熱部
22、23 試料容器
25 本体ケース
25a 本体ケースの開口部
26 空気供給ポンプ
26a 空気吐出口
27 温度センサ
28 温度表示制御部
29 断熱材
30 試料容器
31 空気供給管
32 流量計
33 燃焼ガスの出口
34 被覆体
35 扉
36 クランプ
38 濾過部
38a 漏斗状部
38b 濾材
39 真空ポンプ
39a 吸込み口
40 熱風発生部
40a 送風口
41 濾液採取容器
42 下端管部
43 ゴム栓
44 温度表示部
45 圧力表示部
47 試料容器
48 被覆シート
49 硫黄重量割合表示部
50 操作部
51 試料容器収納庫
53 第2品質分析装置
54 第1重量測定部
55 温度重量記録部
56 ワイヤ
57 挿通管
58 冷却ファン
59 冷却空気排出口
60 冷却空気の通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析される液体の15℃における密度、及び50℃における動粘度を取得する密度、粘度の取得工程と、
取得した前記15℃における密度、及び前記50℃における動粘度を使用してCCAI値を取得するCCAI値の取得工程と、
前記15℃における密度、前記50℃における動粘度、及び前記CCAI値を出力する出力工程とを備えることを特徴とする液体の品質分析方法。
【請求項2】
分析される液体を加熱燃焼処理して液体に含まれる微粒子を残渣として取得する加熱燃焼工程と、
前記加熱燃焼行程で取得された前記微粒子の第1重量を測定する第1重量測定工程とを更に備えることを特徴とする請求項1記載の液体の品質分析方法。
【請求項3】
分析される液体に溶媒を添加して得られた混合液を、濾過して残った微粒子を乾燥させて残渣として取得する不溶解微粒子取得工程と、
前記不溶解微粒子取得工程で取得された前記微粒子の第2重量を測定する第2重量測定工程とを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の液体の品質分析方法。
【請求項4】
分析される液体に含まれる硫黄の重量割合を測定する硫黄重量割合測定工程を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液体の品質分析方法。
【請求項5】
分析される液体の密度を測定する密度測定部と、
分析される液体を50℃に加熱することができる加熱部と、
当該加熱部によって50℃に加熱された液体の粘度を測定する粘度測定部と、
前記密度測定部によって得られた液体の密度測定値、及び前記粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値に基づいて、15℃における密度、及び50℃における動粘度を算出する演算部と、
前記15℃における密度、及び前記50℃における動粘度を出力する出力部とを備えることを特徴とする液体の品質分析装置。
【請求項6】
分析される液体の密度を測定する密度測定部と、
分析される液体を50℃に加熱することができる加熱部と、
当該加熱部によって50℃に加熱された液体の粘度を測定する粘度測定部と、
前記密度測定部によって得られた液体の密度測定値、及び前記粘度測定部によって測定して得られた液体の粘度測定値に基づいて更に得られた15℃における密度、及び50℃における動粘度を使用してCCAI値を算出する演算部と、
前記15℃における密度、前記50℃における動粘度、及び前記CCAI値を出力する出力部とを備えることを特徴とする液体の品質分析装置。
【請求項7】
分析される液体を加熱燃焼処理して液体に含まれる微粒子を残渣として取得することができる微粒子分析装置において、
分析される液体を内側に収容することができる本体ケースと、
前記本体ケース内に配置され、分析される液体を収容するための試料容器と、
この本体ケースに設けられ、分析される液体を加熱燃焼させるための加熱部と、
液体を燃焼させるための空気を前記本体ケース内に供給するための空気供給ポンプと、
前記本体ケース内の温度を測定するための温度センサと、
前記温度センサによる測定温度に基づいて、前記加熱部を制御して前記本体ケース内の温度が所定温度範囲内となるように制御する温度制御部と、
前記本体ケースに断熱材が設けられ、この断熱材の前記試料容器に面する側の内面を被覆する金属製の被覆体とを備えることを特徴とする液体の品質分析装置。
【請求項8】
前記試料容器内の液体の重量を測定することができる第1重量測定部と、
前記温度センサによって測定された前記本体ケース内の温度、及び前記第1重量測定部によって測定された液体の重量を記録するための温度重量記録部とを更に備えることを特徴とする請求項7記載の液体の品質分析装置。
【請求項9】
分析される液体に溶媒を添加して得られた混合液を、濾過して残った不溶解微粒子を乾燥させて、この乾燥した不溶解微粒子を取得することができる微粒子分析装置において、
混合液を濾過するための濾過部と、
混合液を濾過部に透過させるように働く吸引力を発生する真空ポンプと、
濾過部に残った不溶解微粒子を乾燥させるための熱風発生部とを備えることを特徴とする液体の品質分析装置。
【請求項10】
分析される液体に含まれる硫黄の重量割合を測定する液体の品質分析装置において、
分析される液体を収容するためのものであって、縦方向、横方向、及び高さ方向の各寸法が10〜50mmである底部を有する試料容器と、
前記試料容器の外側から前記容器の底部を介して前記試料容器内の液体にX線を照射する略50ワットのX線管球と、
前記試料容器を収納することができ、前記試料容器内の液体に含まれる硫黄の重量割合を前記X線管球によって測定することができる測定位置と、前記試料容器を収納及び取り出すことができる非測定位置とに移動可能に設けられている試料容器収納庫と、
前記試料容器内の液体中に含まれる硫黄の重量割合と対応するX線量を測定するための比例計数管と、
前記比例計数管の出力する硫黄重量割合に対して、測定温度及び測定圧力に基づく誤差を補正して補正済み硫黄重量割合を出力する温度圧力補正部とを備えることを特徴とする液体の品質分析装置。
【請求項11】
請求項5又は6記載の液体の品質分析装置と、
請求項7、9、及び10のいずれかに記載の液体の品質分析装置のうちの1又2以上の液体の品質分析装置とを備えることを特徴とする液体の品質分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−112362(P2011−112362A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265990(P2009−265990)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(509323901)シップパートナーズ株式会社 (1)
【出願人】(399020522)川重テクノロジー株式会社 (6)
【Fターム(参考)】