説明

液体カートリッジ

【課題】液体収容部と液体供給部との圧力差により動作する弁部材を、簡便な方法で、液
体カートリッジに取り付ける。
【解決手段】液体カートリッジ100において、弁部材900の弁蓋151側の面は液体
供給部160に導通し、弁部材900における、液体収容部111の壁面側の一部の面は
、液体収容部111に導通し、他の一部の面が、液体供給部160に導通し、液体供給部
160の圧力が液体収容部111の圧力よりも小さい場合に、弁部材900が弁蓋側15
1に押され、弁部材900の一部の面から他の一部の面にかけて液体収容部111と液体
供給部160とが導通し、弁部材900は液体収容部111の壁面よりも柔らかい樹脂に
より形成され、液体収容部111の壁面において弁部材900と接する面に、弁部材90
0の一部の面および他の一部の面を囲む外周に沿って、弁部材900に圧接する突起49
2が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧弁ユニット、液体カートリッジおよび液体カートリッジ組立方法に関す
る。特に本発明は、液体噴射装置へ装着されることにより前記液体噴射装置へ液体を供給
する液体カートリッジの差圧弁ユニット、液体カートリッジおよび液体カートリッジ組立
方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録装置において、インクを収容したインクカートリッジが、インク
ジェット式記録装置のホルダに装着されることにより、記録ヘッドへインクが供給される
。ここで、インク、インクジェット式記録装置およびインクカートリッジは、それぞれ液
体、液体噴射装置および液体カートリッジの一例である。
【0003】
インクカートリッジにおいて、例えば、インクを収容したインク収容部と、インク収容
部側と記録ヘッド側との間の圧力差に基づいて動作する弁部材と、インク収容部を大気と
接続するための大気弁とが設けられる。このインクカートリッジがインクジェット式記録
装置のホルダに装着されることにより、大気弁は、インク収容部を大気に接続する。さら
に、インクカートリッジがホルダに装着されている状態において、記録ヘッドがインクを
消費することにより弁部材に圧力差が発生し、この圧力差により弁部材の中心部が弾性変
形して、インク収容部から記録ヘッドへインクが供給される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−170558号公報(第3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記インクカートリッジにおいて、弁部材は中心部に比べて弾性変形しにくい周縁部を
有し、この周縁部が超音波溶着によりインクカートリッジに取り付けられていた。よって
、超音波溶着により生じるゴミがインクの中に混入する不具合があった。
【0006】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる差圧弁ユニット、液体カートリッ
ジおよび液体カートリッジ組立方法を提供することを目的とする。この目的は特許請求の
範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の
更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の第1の形態によると、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部内
の液体を外部に供給する液体供給部とを備えたカートリッジ本体と、前記カートリッジ本
体に形成された凹部に収容され、前記液体収容部と前記液体供給部とに所定の圧力差が生
じた場合に開弁する弁部材と、前記凹部に嵌合されるとともに、前記弁部材の外周を前記
凹部内の壁面に押圧することにより、前記弁部材を保持する弁蓋とを備え、前記凹部内の
壁面の前記弁部材と当接する面には、前記弁部材の外周に沿って前記弁部材に対して圧接
する突起が形成されている。
これにより、凹部内の壁面の突起が弁部材に圧接して弁部材がカートリッジ本体に取り
付けられるので、弁部材を超音波溶着することなく弁部材と突起とによりシールを取って
容易に取り付けることが可能になる。また、超音波溶着する必要がないので、これによっ
て発生するごみが生じず、ごみの洗浄をする必要性がなく、またインク中にごみが混入す
ることも防ぐことができる。
【0008】
上記液体カートリッジにおいて、弁蓋は、弁部材を挟んで突起と対向して配され、弁部
材と当接して弁部材を突起に押し付ける弁部材当接部を有してもよい。
これにより、当接部が確実に弁部材を突起に押し付けることができる。
【0009】
上記液体カートリッジにおいて、前記凹部が前記カートリッジ本体の壁面に形成されて
おり、前記弁蓋の弁部材が配置された面と反対側の外表面と、前記カートリッジ本体にお
ける弁蓋の外表面周囲の壁面を、前記弁蓋を前記突起に当接させる方向へ付勢する様に封
止する封止部材をさらに備えてもよい。
これにより、封止部材が弁蓋を壁面側に押し付けるので、弁蓋がより確実に壁面に取り
付けられると共に、突起と弁部材との密着性を高めることができる。
上記液体カートリッジにおいて、弁部材は、弾性材料より形成されており、突起は弁部
材を変形させながら圧接されていてもよい。これにより、超音波溶着することなく確実に
シールを取って弁部材をカートリッジ本体に取り付けることができる。
【0010】
本発明の第2の形態によると、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部内の液体
を外部に供給する液体供給部とを有するカートリッジ本体に収容され、前記液体収容部と
前記液体供給部とに所定の圧力差が生じた場合に開弁する弁部材を有する差圧弁ユニット
であって、前記圧力差に基づいて弾性変形可能で、かつ円筒形状の周縁部を有する前記弁
部材と、前記弁部材の前記周縁部の内側に挿入されることにより前記周縁部を固定する略
円筒形状の弁部材保持部を有する弁蓋と、前記弁部材と前記弁蓋との間に挟まれ、前記弁
部材を前記弁蓋から遠ざける方向へ付勢する付勢部材とを備える。
これにより、弁部材および付勢部材が弁蓋に保持されて差圧弁ユニットを形成するので
、これらの互いの位置決めが容易となる。また、付勢部材が弁部材および弁蓋に挟まれて
保持されるので、付勢部材を液体カートリッジに取り付けるための冶具が不要となる。よ
って、液体カートリッジを簡便に組み立てることができる。
【0011】
上記差圧弁ユニットにおいて、前記弁蓋は、前記弁部材保持部を囲み、前記弁部材の前
記周縁部の外径よりも大きい内径を有する略円周形状を有し、前記弁蓋が取り付けられる
前記カートリッジ本体に形成された凹部の壁面に当接する壁面当接部をさらに有してもよ
い。
これにより、凹部の壁面に弁部材が確実に保持される。さらに、弁蓋とカートリッジ本
体とが位置決めされるので、カートリッジ本体に対して弁部材も高精度に位置決めするこ
とができる。
【0012】
上記差圧弁ユニットにおいて、付勢部材はコイルバネであり、弁蓋は、コイルバネが当
接する位置において弁部材に向けて突起し、内径がコイルバネの外径と略同一の円筒形状
を有するバネ嵌合部を有し、コイルバネがバネ嵌合部の中に嵌合されることにより、コイ
ルバネが弁蓋に保持されてもよい。
これにより、コイルバネは、弁蓋に対して正確に位置決めされて、弁部材を確実に付勢
することができる。
【0013】
上記差圧弁ユニットにおいて、バネ嵌合部は、弁部材がバネ嵌合部に貼り付いた場合で
あっても、バネ嵌合部の内側と外側を液体が流動可能な切り欠きを有してもよい。
これにより、バネ嵌合部の中に液体の流路がある場合に、圧力差により弁部材が弁蓋側
に移動して弁部材がバネ嵌合部に貼り付いても、バネ嵌合部の中の流路が閉塞することを
防ぐことができる。
【0014】
上記差圧弁ユニットにおいて、バネ嵌合部は、弁部材側から切り欠かれた切り欠きを複
数有し、複数の切り欠きにより形成された複数の突片の面方向における長さは、コイルバ
ネの内径よりも大きくてもよい。
これにより、コイルバネを弁蓋のバネ嵌合部に取り付ける場合に、バネ嵌合部がコイル
バネ内に誤って入り込むことを防止することができる。
【0015】
上記差圧弁ユニットにおいて、付勢部材はコイルバネであり、弁部材は、コイルバネが
当接する位置において弁蓋に向けて突起し、コイルバネの内径よりも、外径の少なくとも
一部が大きい略円柱形状の弁蓋側凸部を有し、弁蓋側凸部がコイルバネに挿入されること
により、コイルバネが弁部材に保持されてもよい。
これにより、弁部材に対してコイルバネを正確に位置決めして保持することができる。
【0016】
上記差圧弁ユニットにおいて、付勢部材はコイルバネであり、弁部材は、コイルバネが
当接する位置において弁蓋に向けて突起し、コイルバネの外径よりも、内径の少なくとも
一部が小さい略円筒形状の弁蓋側円筒部を有し、コイルバネが弁蓋側円筒部に挿入される
ことにより、コイルバネが弁部材に保持されてもよい。
これにより、弁部材に対してコイルバネを正確に位置決めして保持することができる。
【0017】
上記差圧弁ユニットにおいて、前記弁部材は、前記付勢部材により付勢される位置と対
応して前記付勢部材の反対側に突出して設けられ、前記付勢部材により前記カートリッジ
本体に形成された凹部の壁面側へ付勢されることにより、前記液体収容部と前記液体供給
部との連通を遮断するためのシール部を有してもよい。
これにより、付勢部材からの付勢力を、シール部が直接受けて、液体収容部と液体供給
部との導通を遮断することができる。
【0018】
本発明の第3の形態によると、液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部内の液体
を外部に供給する液体供給部とを有するカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体に収
容され、前記液体収容部と前記液体供給部とに所定の圧力差が生じた場合に開弁する弁部
材を有する差圧弁ユニットとを備えた液体カートリッジの製造方法であって、前記液体収
容部と、前記液体収容部に連通し前記カートリッジ本体に形成された凹部からなる差圧弁
ユニット収容部とを有するカートリッジ本体を準備する工程と、周縁が円筒形状の周縁部
を有し前記圧力差に基づいて弾性変形可能な前記弁部材と、前記弁部材の前記周縁部の内
側に挿入され、前記周縁部を固定する略円筒形状の弁部材保持部を有する弁蓋との間に、
前記弁部材を前記弁蓋から遠ざける方向へ付勢する付勢部材を挟むことにより、差圧弁ユ
ニットを形成する工程と、前記差圧弁ユニットを前記差圧弁ユニット収容部に取り付ける
工程とを備える。
これにより、弁部材、付勢部材および弁蓋が差圧弁ユニットとして組み立てられ、その
後、差圧弁ユニットが液体カートリッジに取り付けられる。よって、付勢部材が弁部材お
よび弁蓋に挟まれて保持されるので、付勢部材を液体カートリッジに取り付けるための冶
具が不要となる。よって、液体カートリッジを簡便に組み立てることができる。
【0019】
上記液体カートリッジ製造方法において、前記凹部が前記カートリッジ本体の壁面に形
成されており、前記弁蓋の弁部材が配置された面と反対側の外表面と、前記カートリッジ
本体における弁蓋の外表面周囲の壁面を覆うように封止部材により封止する工程をさらに
備えてもよい。
これにより、封止部材が弁蓋を凹部の壁面に押し付けるので、弁蓋がより確実に取り付
けられる。
【0020】
上記液体カートリッジ製造方法において、前記差圧弁ユニット収容部の前記弁部材と接
する壁面に、前記弁部材の外周に沿って設けられた突起を有し、前記差圧弁ユニットを前
記差圧弁ユニット収容部に取り付ける工程は、前記弁部材を前記突起に押圧することによ
り、前記突起を前記弁部材に圧接させる工程を有してもよい。
これにより、差圧弁ユニット収容部の弁部材と接する壁面の突起が弁部材に圧接されて
弁部材がカートリッジ本体に取り付けられるので、弁部材を超音波溶着する必要がない。
よって、超音波溶着によるごみが生じず、インクにごみが混入することを防ぐことができ
る。
【0021】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これら
の特徴群のサブコンビネーションも又発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】インクカートリッジ100の正面斜視図である。
【図2】フィルム110が貼り付けられる前のインクカートリッジ100の背面斜視図である。
【図3】フィルム110が貼り付けられた後のインクカートリッジ100の背面斜視図である。
【図4】インクカートリッジ100の分解斜視図である。
【図5】インクカートリッジ100の分解斜視図である。
【図6】フィルム130が貼り付けられる前のインクカートリッジ100の正面図である。
【図7】フィルム130が貼り付けられた後のインクカートリッジ100の正面図である。
【図8】フィルム110が貼り付けられる前のインクカートリッジ100の背面図である。
【図9】インク供給制御手段150の分解斜視図である。
【図10(a)】インクカートリッジ100のA−A断面を示す断面図である。
【図10(b)】インク供給制御手段150の周囲を拡大した拡大断面図である。
【図11】(a)はインク供給制御手段150の閉弁状態の模式図であり、(b)はインク供給制御手段150の開弁状態の模式図である。
【図12】他の例の膜弁450を示す断面図である。
【図13(a)】他の例の膜弁900’を示す断面図である。
【図13(b)】他の例の膜弁900’を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範
囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合
わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0024】
図1は、液体噴射装置の液体噴射ヘッドに液体を供給するのに適した液体カートリッジ
の一例を、インクジェット式記録装置用のインクカートリッジ100に例を採り、その構
造を斜め上方からみた状態で示す正面斜視図である。
【0025】
なお、本発明でいう液体噴射装置とは、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッドだ
けではなく、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置の色
剤噴射ヘッドや、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成
する電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、さらにはバイオチップを製造するバイオチップ
製造装置の生体有機物噴射ヘッド及び精密ピペットしての試料噴射ヘッドなどを含む。
【0026】
図2及び図3は、図1のインクカートリッジ100を斜め下方からみた背面斜視図で、
図2は、インクカートリッジ100の表面にフィルム110が貼り付けられる前の状態を
示す図であり、図3は、インクカートリッジ100にフィルム110が貼り付けられた状
態を示す図である。さらに図4、図5は、インクカートリッジ100を構成する部材を分
解して示す組み立て斜視図である。図6及び図7は、図1のインクカートリッジ100の
正面図であり、図6は、インクカートリッジ100の開口部122にフィルム130が貼
り付けられる前の状態を示す図であり、図7は、インクカートリッジ100の開口部12
2にフィルム130が貼り付けられた状態を示す図である。なお、図7において、ハッチ
ングで示された領域にフィルム130が貼り付けられる。
【0027】
図4に示すように、インクカートリッジ100は、開口部122を有する有底の略筐体
形状のカートリッジ本体(容器本体)120、この開口部122のほぼ全面を覆うフィル
ム130、および、このフィルム130の外側を覆う蓋体140を備える。カートリッジ
本体120の内部は、後述のようにリブや壁により区画される。フィルム130は、カー
トリッジ本体120の開口部122のほぼ全面を、その内部が密閉状態となるように封止
する。蓋体140は、さらにフィルム130の外側を非密閉状態で被覆するようにカート
リッジ本体120に固定される。
【0028】
カートリッジ本体120は、インクを収容するインク収容部111と、インク収容部1
11からインク供給部160までのインク流路部と、インク収容部111を大気に連通さ
せるインク側通路、大気弁収容部及び大気側通路からなる大気連通部とを備え、例えばプ
ロピレン(PP)により一体成形されている。
【0029】
インクカートリッジ100はさらに、インク供給制御手段150と、インク供給部16
0と、記憶手段170と、係合レバー180とを有する。インク供給部160は、カート
リッジ本体120の下面に配され、インクカートリッジ100が装着されるホルダのイン
ク供給針が挿入されて、インク収容部111に収容されたインクをインクジェット式記録
装置の記録ヘッドへ供給する。記憶手段170は、取付部190にかしめられ、この取付
部190は、カートリッジ本体120の側面の下方にかしめられて取り付けられる。記憶
手段170は、インクカートリッジ100の種類の情報、インクカートリッジ100が保
持するインクの色の情報、および、インクの現存量等の情報を記憶し、表面に露出した複
数の端子171により装置本体との間でこれらの情報を受け渡す。係合レバー180は、
カートリッジ本体120における取付部190と対向する側面の上部に成形され、インク
ジェット式記録装置のホルダと係合する。
【0030】
インク供給制御手段150は、インクの消費に伴って発生するインク収容部111とイ
ンク供給部160との圧力差により、インク収容部111のインクをインク供給部160
へ供給する。インク供給制御手段150は、弾性変形可能であって、カートリッジ本体1
20の差圧弁ユニット収容部495に挿入される弁部材の一例である膜弁900と、差圧
弁ユニット収容部495を覆う弁蓋151と、膜弁900および弁蓋151の間に配され
る付勢部材の一例としてのコイルバネ907とを有する。これら膜弁900、弁蓋151
およびコイルバネ907は、本発明のインク供給制御手段150を構成する差圧弁ユニッ
トの一例である。差圧弁ユニットの組み立て方法および動作については、後述する。
【0031】
インク収容部111は、図6、7に示したように水平方向に延びる壁272により、上
部と下部とに大きく分割され、下部には連通孔242により大気と連通可能な大気側収容
部270が、また上部には大気から遮断された2つの第1インク収容部292及び第2イ
ンク収容部294からなる供給側収容部290が形成されている。供給側収容部290は
、壁272の近傍(下部領域)に連通部276を有する斜めの壁271により、第1、及
び第2インク収容部292、294の2つに分割され、また第2インク収容部294に周
りを囲まれるように配された流路部296が形成されている。流路部296は下部の連通
部278を介して、第2インク収容部294と接続されるとともに、通路298、300
及び通孔918を介してインク供給制御手段150に接続されている。
また、インク供給制御手段150の下流側は、インク供給制御手段150と連通する通
孔910、通孔910と連通する連通部302および流路321、流路321の一端に形
成され、表面側に向けて形成された通孔323、および、通孔323と一端が連通した連
通部304を介して、インク供給部160と連通するよう構成されている。
【0032】
大気側収容部270と第1インク収容部292とは垂直に延びる連通路295により連
通されていて、インク供給部160からのインクの消費に対応して大気側収容部270の
インクを第1インク収容部292に吸い上げ、ここから第2インク収容部294、流路部
296等を介してインク供給制御手段150に流れ込ませるように構成されている。イン
ク収容部111の大気側収容部270からインク供給制御手段150へは、連通部274
、第2のインク注入口162、連通路295、連通部276、278、流路部296、通
路298、300、通孔918をこの順に通ってインクが流れ込む。
【0033】
一方、大気弁部250は、大気弁254が収容される大気弁収容部である中空部232
を有し、中空部232の下方の壁面には、大気弁254の軸部264の径より若干径が大
きく大気の連通流路をも兼ねる連通孔239を有し、ここに大気弁254の軸部264が
バネ255により常時、インクカートリッジ100の底面に向かって付勢されて摺動自在
に挿入されて、インクカートリッジ100がインクジェット式記録装置のホルダに装着さ
れていない場合に大気弁254によって連通孔239を封止している。
【0034】
図8は、図1のインクカートリッジ100においてフィルム110が貼り付けられる前
の状態を示す背面図である。上述した連通孔239を境として大気と連通する側である大
気側通路は、開口212、蛇行した通路214、フィルタ収容部216、連通孔218お
よび連通部222、連通部222の底面に形成された連通孔253、連通部224により
構成されている。
詳細には、図8に示すように、カートリッジ本体120の表側に形成された迷路状に蛇
行した1本の通路214の一端は開口212として大気に開放され、他端は撥インク性と
通気性の機能を備えたフィルタ215(図4、図5)が収容されたフィルタ収容部216に
接続されている。フィルタ収容部216は、カートリッジ本体120の表側から裏側に貫
通する連通孔218と連通する。連通孔218は、カートリッジ本体120の裏側におい
て連通部222、連通部222を区画する部屋の底部に形成された連通孔253を介して
連通部224と接続している。通路214の途中には、凹部からなるチャンバ930が設
けられている。
【0035】
図2に示すように連通部224は、カートリッジ本体120の底面に凹部257として
形成され、大気弁254の作動棹である軸部264を露出させ、かつ大気弁254を収容
する中空部232との連通が可能な連通孔239と、連通部222に連通する連通孔25
3が凹部257内に形成され、凹部257の外面を第1のインク注入口161、第2のイ
ンク注入口162を封止するフィルム132により封止して形成されている。このフィル
ム132は、ホルダから突出する突起の押圧力により弾性変形可能なものが選択されてい
る。
【0036】
一方、図6に示すように上述した連通孔239を境として大気側収容部270と連通す
るインク側通路は、中空部232、通孔234a、連通室234b、連通部234c、連
通室234d、連通部236、連通室237および連通孔238、連通溝240、連通孔
242とで形成されている。詳細には、中空部232の上部の壁には通孔234aが形成
されており、この通孔234aを介して連通室234b、連通室234bの上部の壁の切
り欠きによって形成された連通部234c、連通部234cの上部に設けられた連通室2
34d、連通室234dの上部の壁の切り欠きによって形成された連通部236、下方に
連通孔238が形成された連通室237と順に連通する大気通路が形成されている。
カートリッジ本体120の裏側から表側に貫通する連通孔238は、連通孔238と連
通する連通溝240、連通溝240と連通すると共にカートリッジ本体120の表側から
裏側に貫通する連通孔242を介して大気側収容部270と連通する。
これら、大気側収容部270、供給側収容部290、大気弁部250、及び大気側通路
、インク側通路は、それぞれを区画する壁にフィルム130、110を熱溶着などの方法
で貼着することにより大気と隔離された領域となる。
【0037】
インク供給部160は、ホルダに設けられたインク供給針が挿入される挿入口26を有
するエラストマ等から形成されたシール部材12と、シール部材12の挿入口26を塞ぐ
供給弁13と、供給弁13をシール部材12に向けて付勢するコイルスプリング等からな
る付勢部材14とを有する。なお、シール部材12の挿入口26には、工場出荷時におい
て、フィルム604が貼り付けられている。
インクカートリッジ100がインクジェット式記録装置のホルダに装着されると、ホル
ダに設けられた凸部がフィルム132を介して大気弁254の軸部264を上方に押し上
げるとともに、ホルダのインク供給針がインク供給部160の供給弁13を上方に押し上
げる。これにより、連通孔239は、中空部232から連通孔242までの大気流路を大
気と連通する。また、インク供給部160における供給弁13より上流は、インク供給針
と連通する。なお、インクカートリッジ100が工場出荷後に初めてホルダに装着される
場合には、ホルダのインク供給針がインクカートリッジ100の挿入口26に貼り付けら
れたフィルム604を破いて、挿入口26に進入する。
【0038】
連通孔242が大気と連通している状態において、インクジェット式記録装置が記録を
始めると、インク供給部160からインク供給針を通して記録ヘッドへインクが供給され
る。インク供給部160からインクが供給されると、インク収容部111からインク供給
部160へは、インクが、図6に示す矢印a、通孔918の順に流れたインクが、インク
供給制御手段150を経由して図6に示す矢印b、c、dの順に流れて、インク供給部1
60に流れ込み、インク供給部160に挿入されたインク供給針に供給される。
【0039】
このインクの流れにあわせてインク収容部111においては、大気側収容部270のイ
ンクが供給側収容部290に供給される。大気側収容部270のインクの消費に伴って空
気が、図6における矢印f、底面の連通部224、および矢印gの経路をこの順に通って
、連通孔242から大気側収容部270へ流入する。インク供給部160から記録ヘッド
へインクが供給されて大気側収容部270の液面が下がるが、大気側収容部270と供給
側収容部290とを接続する流路は、大気側収容部270の最も下部に連通口があるので
、大気側収容部270の全てのインクが供給側収容部290へ移動するまで、供給側収容
部290には空気が流入しない。
【0040】
大気側収容部270のインクがすべて消費された後に、供給側収容部290の第1イン
ク収容部292および第2インク収容部294のインクがこの順に消費される。この間、
供給側収容部290と大気側収容部270とを連通する第2のインク注入口162に形成
されるインクのメニスカスによる表面張力により、供給側収容部290のインクが大気側
収容部270に逆流することが防止される。
【0041】
第1インク収容部292のインクが消費され始めると、第1インク収容部292に空気
が流入する。これにより、第1インク収容部292の液面が下がるが、第1インク収容部
292と第2インク収容部294とは、下部のみが連通部276により連通しているので
、まず、第1インク収容部292のインクが消費される。第1インク収容部292のイン
クが消費されて、液面が連通部276に到達すると、第2インク収容部294のインクが
消費されるのにあわせて、空気は第2インク収容部294にも流入する。第2インク収容
部294のインクが消費される間、連通部276にインクのメニスカスによる表面張力が
生じるため、第2インク収容部294のインクが第1インク収容部292に逆流すること
が防止される。
【0042】
上述のように大気側収容部270、第1インク収容部292および第2インク収容部2
94のインクはこの順に消費されるが、インクの液面がいずれの収容部にあっても、イン
クは、インク収容部111を上下に略二分する壁272の近傍に配された連通部278か
ら連通部300を経由して通孔918を通ってインク供給部160へ供給される。
【0043】
図9は、インク供給制御手段150の分解斜視図である。図10(a)は、図6のイン
クカートリッジ100におけるA−A断面を示す断面図である。図10(b)は、図10
(a)のインク供給制御手段150付近を拡大した部分拡大断面図である。インク供給制
御手段150を構成する膜弁900、コイルバネ907および弁蓋151が、差圧弁ユニ
ットとして、カートリッジ本体120とは別体で組み立てられる。
【0044】
膜弁900は、円筒形状を有する周縁部442と、周縁部442の近傍に配される肉厚
部444と、肉厚部444に囲まれ、弾性変形する本体部446と、本体部446の中央
、すなわち、本体部446においてコイルバネ907が当接する位置に弁蓋151に向け
て突起する弁蓋側凸部902と、差圧弁ユニット収容部495の壁面494の通孔910
に向けて突起する本体側凸部913及び屈曲部914とを有する。膜弁900は、カート
リッジ本体120よりも柔らかく、弾性を有する材料、例えばエラストマを用いて一体成
形される。弁蓋側凸部902は略円筒形状を有し、断面の外径は、弁蓋側凸部902をコ
イルバネ907に組み付ける前の状態において、コイルバネ907の内径よりも僅かに大
きい。よって、弁蓋側凸部902がコイルバネ907の一端に挿入されることにより、膜
弁900に対してコイルバネ907が正確に位置決めされ保持される。なお、弁蓋側凸部
902の断面の外径は、一部のみがコイルバネ907の内径よりも大きく、他の部分が小
さくてもよい。
【0045】
弁蓋151は、略円筒形状を有し弁部材保持部の一例である膜弁保持部422と、膜弁
保持部422の周りに配される略円筒形状の壁面当接部424と、円筒形状の中心におい
て膜弁900に向けて突起するバネ嵌合部426とを有し、例えばカートリッジ本体12
0と同じくポリプロピレン(PP)を用いて一体成形される。
【0046】
弁蓋151のバネ嵌合部426は略円筒形状を有し、その内径がコイルバネ907の外
径と略同一である。よって、コイルバネ907の一端が弁蓋151に対して正確に位置決
めされて保持される。バネ嵌合部426は、膜弁900が配される側から切り欠かれた複
数(図9に示す実施形態においては4つ)の切り欠き427を有する。この切り欠きは、
膜弁900の開弁状態において、膜弁900の弁蓋側凸部902が弁蓋151のバネ嵌合
部426に入り込む位置まで移動して貼りついた場合に、バネ嵌合部426は、その内部
と外部とをインクが流動可能な切り欠き427を有するので、バネ嵌合部426の中の流
路が閉塞することを防ぐことができる。なお、これら切り欠き427により形成された複
数の突片の面方向における長さは、コイルバネ907の内径よりも大きい。よって、コイ
ルバネ907をバネ嵌合部426の中に取り付ける場合に、バネ嵌合部426の突片がコ
イルバネ907の中に誤って入り込むことを防止することができる。
【0047】
弁蓋151における膜弁保持部422の略円筒形状の外径は、膜弁900の周縁部44
2が組み付けられる前の状態において、膜弁900の周縁部442の内径よりも僅かに大
きい。また、弁蓋151における壁面当接部424の内径は、膜弁900の周縁部442
の外径よりも大きい。よって、弁蓋151と膜弁900との間にコイルバネ907が挟ま
れた状態で、膜弁900の周縁部442が弁蓋151の膜弁保持部422と壁面当接部4
24との間に挿入されることにより、膜弁保持部422は、周縁部442を内側から広げ
る向きに付勢し、膜弁900が弁蓋151に保持される。これにより、差圧弁ユニットが
形成される。なお、弁蓋151の膜弁保持部422の外径は、膜弁900の周縁部442
が膜弁保持部422に組み込まれる前の状態において、一部のみが周縁部442の内径よ
りも大きく、他の部分が小さくてもよい。
【0048】
弁蓋151はさらに、膜弁900が取り付けられる側からフィルム110が貼られる側
まで貫通する連通部306を有する。これにより、弁蓋151が膜弁900と共にカート
リッジ本体120に取り付けられた場合に、弁蓋151と膜弁900とにより構成される
膜弁室308が、連通部306を介して連通部304およびインク供給部160と連通す
る。なお、連通部304は、通孔910のすぐ下流に配された連通部302とも連通する

【0049】
カートリッジ本体120の差圧弁ユニット収容部495の壁面494には、差圧弁ユニ
ット収容部495の側から(図10(b)における右から)みた場合に、通孔910、9
18を囲む外周に沿って円環形状の環状突起492が設けられる。環状突起492は、膜
弁900が取り付けられる方向へ突出し、図10(b)に示す断面において、膜弁900
が取り付けられる方向へ先細りする楔形状を有する。また、環状突起492よりも膜弁9
00の肉厚部444は柔らかい。よって、差圧弁ユニットが、差圧弁ユニット収容部49
5の壁面494に近い方から膜弁900および弁蓋151の順となる向きで差圧弁ユニッ
ト収容部495へ挿入されると、環状突起492の先端が膜弁900の肉厚部444に圧
接されて食い込む。これにより、壁面494、環状突起492および膜弁900により通
孔918と連通した連通路496が形成される。
【0050】
環状突起492は、膜弁900の肉厚部444を挟んで、弁蓋151の膜弁保持部42
2と対向して配される。これにより、弁蓋151の膜弁保持部422は、肉厚部444と
当接して肉厚部444を環状突起492に押し付ける。膜弁900が連通路496の周り
を確実に密封することができる。すなわち、膜弁保持部422は、本発明における弁部材
当接部としての機能も兼ねる。
【0051】
差圧弁ユニット収容部495を形成する内周壁498と弁蓋151の壁面当接部424
の外周とは略同一形状を有する。また、弁蓋151の壁面当接部424が壁面494に当
接した場合の弁蓋151の膜弁保持部422と壁面494との距離は、壁面494から環
状突起492の先端までの高さと膜弁900の肉厚部444の厚さとの和よりもわずかに
小さい。よって、弁蓋151の外側の面428が、弁蓋151の周囲におけるカートリッ
ジ本体120の壁面よりも僅かに突出する。この弁蓋151の外側の面428およびカー
トリッジ本体120の壁面を覆い、弁蓋151の外側の面を付勢するフィルム110が貼
られる。これにより、フィルム110が、弁蓋151を差圧弁ユニット収容部495側に
付勢する。よって、弁蓋151がより確実に差圧弁ユニット収容部495に取り付けられ
ると共に、環状突起492と膜弁900との密封性を高めることができる。また、超音波
溶着する必要がないので、これによって発生するごみが生じず、ごみの千畳をする必要性
がなく、またインク中にごみが混入することも防ぐことができる。また、膜弁900は弁
蓋151に保持されるので、膜弁900の外周部分を本体部よりも堅い材料にするために
2色成形をする必要もない。
【0052】
カートリッジ本体120の通孔910の周囲には、膜弁900側に突出し、膜弁900
の本体側凸部913と当接する通孔凸部910bが設けられる。これにより、インクを供
給しない場合において膜弁900の本体側凸部913が通孔凸部910bに当接して通孔
910を確実に塞ぐことができる。
【0053】
カートリッジ本体120の連通部300には、フィルタ310が配される。フィルタ3
10は、連通部300を通ってインクジェット式記録装置へ供給されるインクの中に含ま
れる異物を漉す。フィルタ310がインク供給制御手段150の直近上流に設けられるの
で、フィルタ310を通過したインクは直接、インク供給制御手段150に流れ込む。
【0054】
以上のように、膜弁900およびコイルバネ907が弁蓋151に保持されて差圧弁ユ
ニットを形成するので、コイルバネ907をカートリッジ本体120に取り付けるための
冶具が不要となり、これらを簡便に取り付けることができる。
さらに、膜弁900が弁蓋151に保持された状態で、弁蓋151と差圧弁ユニット収
容部495とが位置決めされるので、差圧弁ユニット収容部495に対して膜弁900も
高い精度で位置決めすることができる。
【0055】
図11(a)および図11(b)は、図10(a)および図10(b)に示したインク
カートリッジ100のインク供給制御手段150の構造を簡素化した模式図である。図1
1(a)および図11(b)は、それぞれ上述のインク供給制御手段150の構造を、簡
素化して、閉弁状態、及び開弁状態で示し、図10(a)および図10(b)と同一の構
成には同一の符号を付した。
【0056】
図11(a)に示すように、閉弁状態では、膜弁900の本体側凸部913がコイルバ
ネ907の付勢力により通孔910の通孔凸部910bに当接して通孔910を閉鎖して
いるので、インク収容部111のインクがインク供給部160へ流れ出すことが阻止され
ている。
【0057】
インクカートリッジ100が装着されたインクジェット式記録装置の記録ヘッドにより
、インク供給部160からインクが消費されると、インク供給部160側のインクの圧力
が低下し、連通部304、306を経由して膜弁室308の圧力が低下する。よって、膜
弁900における膜弁室308側のほぼ全面の圧力が低下する。一方、膜弁900におけ
る連通路496側の面において、連通部302を介して通孔910の近傍の圧力が低下す
るが、通孔910の周辺の圧力は低下しない。よって、膜弁900の表裏に発生した圧力
差による力が、コイルバネ907による膜弁900に与えられる付勢力よりも大きくなる
と、図11(b)に示したように、膜弁900の本体側凸部913が通孔凸部910bか
ら離れ、通孔910が開放される。これにより、インクが、連通部300、通孔918、
連通路496、連通部302、304の順に流れ、インク供給部160から記録ヘッドに
供給される(図11(b)における矢印b)。
【0058】
このとき、インクは、膜弁900の連通路496側のみを経由して流れるから、連通部
300に停滞していた気泡が引き込まれても、インクの流れに乗って記録ヘッドにそのま
ま流れ込む。よって、この気泡は、膜弁室308に入り込まない。これによりインク供給
部160側のインクの圧力変化が膜弁900に確実に作用し、インク収容部111のイン
クを記録ヘッドに確実に供給することができる。なお、記録ヘッドに気泡が流れ込んでも
、記録ヘッドに負圧を作用させてインクを強制的に排出させることにより、気泡を簡単に
排除することができる。
【0059】
また、図10(b)に示すように、通孔910は連通部302に向かって漸次、広がる
拡張部910aを有する。これにより、通孔910を通って通孔910よりも断面積の大
きい連通部302に流れ込むインクの流路抵抗が小さくなる。
一方、膜弁900に通孔を設けた場合には、膜弁900が薄く、通孔に拡張部を設ける
ことが困難なので、通孔を流れたインクの流路抵抗を下げることができない。よって、膜
弁900側に通孔を設けた場合と比べて、当実施形態は、通孔910を流れるインクの流
路抵抗を下げることができる。
【0060】
開弁状態においてインクが連通部302を介して膜弁室308およびインク供給部16
0に供給されることにより、膜弁室308と連通部300との圧力差が解消される。これ
により、コイルバネ907の付勢力で押し戻されて、膜弁900の本体側凸部913が通
孔910を閉鎖して、連通路496との間を遮断する。以上の動作を繰り返すことにより
、インク収容部111に収容されたインクがインクジェット式記録装置へ供給される。
【0061】
上記インク供給制御手段150において、膜弁900の弁蓋側凸部902は円筒形状を
有し、断面の外形はコイルバネ907の内径よりも僅かに大きい。しかしながら、弁蓋側
凸部902の構成はこれに限られない。他の例として、膜弁900が、中央部において弁
蓋151に向けて突出し、コイルバネ907の外径よりも少なくとも一部が小さい内径を
有する円筒形状の弁蓋側円筒部を有してもよい。この場合、コイルバネ907が弁蓋側円
筒部の中に挿入されることにより、コイルバネ907が膜弁900に係合する。これによ
り、膜弁900に対してコイルバネ907を正確に位置決めして係合することができる。
【0062】
図10(a)および図10(b)に示す膜弁900は、コイルバネ907と反対側に突
出する本体側凸部913により、コイルバネ907の付勢力を用いて通孔910を閉鎖す
る。しかしながら、通孔910を閉鎖する構成はこれに限られない。
【0063】
図12は、他の例の膜弁450を示す、図10(b)に対応する断面図である。図12
において図10(b)と同じ構成には同じ参照番号を付し、説明を省略する。図12に示
す膜弁450は、コイルバネ907と反対側に突出するシール部452を有する。シール
部452は、コイルバネ907により付勢される位置と対応し、かつ、通孔910を囲む
ように環状に設けられる。これにより、コイルバネ907から受ける付勢力を確実に、通
孔910を閉鎖する力として用いることができる。
【0064】
以上、本実施形態によれば、カートリッジ本体120の環状突起492が膜弁900に
圧接されるので、膜弁900をカートリッジ本体120に超音波溶着等する場合に生じる
ごみを出すことなく、膜弁900をカートリッジ本体120に取り付けることができる。
また、本実施形態によれば、膜弁900およびコイルバネ907が弁蓋151に保持され
て差圧弁ユニットを形成するので、これらの互いの位置決めが容易となる。また、コイル
バネ907が膜弁900および弁蓋151に挟まれて保持されるので、コイルバネ907
をカートリッジ本体120に取り付けるための冶具が不要となる。よって、これらを簡便
に取り付けることができる。
【0065】
また上述の実施例においては、差圧弁ユニット収容部495の壁面494における中央
部に通孔910が形成され、インク供給制御手段150の膜弁900がインク供給部16
0側の圧力に応動してこの通孔910を開閉する。しかしながら、膜弁900の形態はこ
れに限られない。
図13(a)および図13(b)は、インク供給制御手段150の膜弁の別例を示す断
面図である。図13(a)および図13(b)において、図10(b)に示すインクカー
トリッジ100と同一の構成には同一の参照番号を付し、説明を省略する。
図13(a)に示すように、差圧弁ユニット収容部495の壁面494における中央領
域以外の領域に1つの通孔918が設けられ、また中央部に凸部990が設けられる。イ
ンク供給制御手段150の膜弁900’の中央には、凸部990に弾接する連通孔992
が形成される。これにより、膜弁900における弁蓋151側の面は、インク供給部16
0と連通する膜弁室308と導通するとともに、膜弁900’における壁面494側の面
は、通孔918を通じてインク収容部111と連通する。常時は、膜弁900’がコイル
バネ907により差圧弁ユニット収容部495の凸部990に押圧されて、膜弁900’
の連通孔992が封止されている。記録ヘッドからインクが吐出される等によりインクが
消費されることによりインク供給部160側の圧力が低下した時点で、図13(b)に示
したように、膜弁900がコイルバネ907に抗して凸部990から離反し、図中の矢印
b’で示す流路に沿って膜弁900の連通孔992を介してインクが供給される。以上、
図13(a)および図13(b)に示す実施形態においても、図10(b)に示した実施
形態と同様の作用を奏する。
【0066】
上記実施例においては、カートリッジ本体120の外表面に差圧弁ユニット収容部49
5を形成した例を用いて説明したが、インク供給部160に差圧弁ユニットを収容する凹
部である差圧弁ユニット収容部を形成したカートリッジに適用することも可能である。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態
に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが
できる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、
特許請求の範囲の記載から明らかである。

【符号の説明】
【0067】
100…インクカートリッジ、111…インク収容部、150…インク供給制御手段、
151…弁蓋、160…インク供給部、494…壁面、495…差圧弁ユニット収容部、
900…膜弁、902…弁蓋側凸部、907…コイルバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容部と、
前記液体収容部内の液体を外部に供給する液体供給部とを備えたカートリッジ本体と、
前記カートリッジ本体に形成された凹部に収容され、前記液体収容部と前記液体供給部
とに所定の圧力差が生じた場合に開弁する弁部材と、前記凹部に嵌合されるとともに、前
記弁部材の外周を前記凹部内の壁面に押圧することにより、前記弁部材を保持する弁蓋と
を備え、
前記凹部内の壁面の前記弁部材と当接する面には、前記弁部材の外周に沿って前記弁部
材に対して圧接する突起が形成されている液体カートリッジ。
【請求項2】
前記弁蓋は、前記弁部材を挟んで前記突起と対向して配され、前記弁部材に当接して前
記弁部材を前記突起に押し付ける弁部材当接部を有する請求項1に記載の液体カートリッ
ジ。
【請求項3】
前記凹部が前記カートリッジ本体の壁面に形成されており、
前記弁蓋における前記弁部材が配置された面と反対側の外表面と、前記カートリッジ本体
における前記弁蓋の前記外表面周囲の壁面を、前記弁蓋を前記突起に当接させる方向へ付
勢する様に封止する封止部材をさらに備えた請求項1または2に記載の液体カートリッジ

【請求項4】
前記弁部材は、弾性材料より形成されており、前記突起は前記弁部材を変形させながら
圧接されている請求項1に記載の液体カートリッジ。
【請求項5】
液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部内の液体を外部に供給する液体供給部と
を有するカートリッジ本体に収容され、前記液体収容部と前記液体供給部とに所定の圧力
差が生じた場合に開弁する弁部材を有する差圧弁ユニットであって、
前記圧力差に基づいて弾性変形可能で、かつ円筒形状の周縁部を有する前記弁部材と、
前記弁部材の前記周縁部の内側に挿入されることにより前記周縁部を固定する略円筒形
状の弁部材保持部を有する弁蓋と、
前記弁部材と前記弁蓋との間に挟まれ、前記弁部材を前記弁蓋から遠ざける方向へ付勢
する付勢部材とを備える差圧弁ユニット。
【請求項6】
前記弁蓋は、前記弁部材保持部を囲み、前記弁部材の前記周縁部の外径よりも大きい内
径を有する略円周形状を有し、前記弁蓋が取り付けられる前記カートリッジ本体に形成さ
れた凹部の壁面に当接する壁面当接部をさらに有する請求項5に記載の差圧弁ユニット。
【請求項7】
前記付勢部材はコイルバネであり、
前記弁蓋は、前記コイルバネが当接する位置において前記弁部材に向けて突起し、内径
が前記コイルバネの外径と略同一の円筒形状を有するバネ嵌合部を有し、
前記コイルバネが前記バネ嵌合部の中に嵌合されることにより、前記コイルバネが前記
弁蓋に保持される請求項5に記載の差圧弁ユニット。
【請求項8】
前記バネ嵌合部は、前記弁部材が前記バネ嵌合部に貼り付いた場合であっても、前記バ
ネ嵌合部の内側と外側を液体が流動可能な切り欠きを有する請求項7に記載の差圧弁ユニ
ット。
【請求項9】
前記バネ嵌合部は、前記弁部材側から切り欠かれた前記切り欠きを複数有し、
複数の前記切り欠きにより形成された複数の突片の面方向における長さは、前記コイル
バネの内径よりも大きい請求項8に記載の差圧弁ユニット。
【請求項10】
前記付勢部材はコイルバネであり、
前記弁部材は、前記コイルバネが当接する位置において前記弁蓋に向けて突起し、前記
コイルバネの内径よりも、外径の少なくとも一部が大きい略円柱形状の弁蓋側凸部を有し

前記弁蓋側凸部が前記コイルバネに挿入されることにより、前記コイルバネが前記弁部
材に保持される請求項5に記載の差圧弁ユニット。
【請求項11】
前記付勢部材はコイルバネであり、
前記弁部材は、前記コイルバネが当接する位置において前記弁蓋に向けて突起し、前記
コイルバネの外径よりも、内径の少なくとも一部が小さい略円筒形状の弁蓋側円筒部を有
し、
前記コイルバネが前記弁蓋側円筒部に挿入されることにより、前記コイルバネが前記弁
部材に保持される請求項5に記載の差圧弁ユニット。
【請求項12】
前記弁部材は、前記付勢部材により付勢される位置と対応して前記付勢部材の反対側に
突出して設けられ、前記付勢部材により前記カートリッジ本体に形成された凹部の壁面側
へ付勢されることにより、前記液体収容部と前記液体供給部との連通を遮断するためのシ
ール部を有する請求項5に記載の差圧弁ユニット。
【請求項13】
請求項5から12のいずれかに記載の差圧弁ユニットを備える液体カートリッジ。
【請求項14】
液体を収容する液体収容部と、前記液体収容部内の液体を外部に供給する液体供給部と
を有するカートリッジ本体と、前記カートリッジ本体に収容され、前記液体収容部と前記
液体供給部とに所定の圧力差が生じた場合に開弁する弁部材を有する差圧弁ユニットとを
備えた液体カートリッジの製造方法であって、
前記液体収容部と、前記液体収容部に連通し前記カートリッジ本体に形成された凹部か
らなる差圧弁ユニット収容部とを有する前記カートリッジ本体を準備する工程と、
周縁が円筒形状の周縁部を有し前記圧力差に基づいて弾性変形可能な前記弁部材と、前
記弁部材の前記周縁部の内側に挿入され、前記周縁部を固定する略円筒形状の弁部材保持
部を有する弁蓋との間に、前記弁部材を前記弁蓋から遠ざける方向へ付勢する付勢部材を
挟むことにより、差圧弁ユニットを形成する工程と、
前記差圧弁ユニットを前記差圧弁ユニット収容部に取り付ける工程とを備える液体カー
トリッジ製造方法。
【請求項15】
前記凹部が前記カートリッジ本体の壁面に形成されており、前記弁蓋における前記弁部
材が配置された面と反対側の外表面と、前記カートリッジ本体における前記弁蓋の前記外
表面周囲の壁面を覆うように封止部材により封止する工程をさらに備える請求項14に記
載の液体カートリッジの製造方法。
【請求項16】
前記差圧弁ユニット収容部の前記弁部材と接する壁面に、前記弁部材の外周に沿って設
けられた突起を有し、
前記差圧弁ユニットを前記差圧弁ユニット収容部に取り付ける工程は、前記弁部材を前
記突起に押圧することにより、前記突起を前記弁部材に圧接させる工程を有する請求項1
4に記載の液体カートリッジの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【公開番号】特開2009−298156(P2009−298156A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222121(P2009−222121)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【分割の表示】特願2003−205103(P2003−205103)の分割
【原出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】