説明

液体中での電極の構築

液体領域を含む側壁周りに、電気信号によって通電する一次コイルを貫通した導磁性材料のコアを設けることによって、液体領域中で電極を構築する効果を実現する方法および装置であって、液体領域の、導磁性コアの両側にあるそれぞれの部分が、液体を含む流路によって接続され、これらの流路および液体によって、選択された電気抵抗を生成する、方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に電界を加えることによって液体を処理するための、液体中での電極の構築に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる処理は、液体中で化学的工程、物理的工程、または生物学的工程に影響を及ぼす、例えば促進する、または阻止する目的で必要となることがある。従来、1つの電極、または複数の電極を、液体を含むタンク内、またはそうした液体が流れるパイプもしくは導管内の、処理すべき液体中に、単に配置している。電極は、当然ながら導電性でなければならず、通常は金属、または炭素などの物質でできている。金属電極は、使用中に消耗すべきでない場合には、多くの場合、耐反応性金属、例えばプラチナ製でなければならないが、かかる材料を使用していても、電極と液体との間で何らかの化学的作用、または電気化学作用が予想され得、こうした作用は望ましくない。液体中での電極の使用に伴うさらなる問題として、電気ケーブルを用いて電極との電気接続を確立する必要があり、パイプの場合、漏れを防止する形でパイプ壁を貫通しなければならず、また、使用中に消耗することのない適切な電極材料を選択しなければならないという上述の問題も含まれる。物理的電極は、流れに直角に挿入すると、流れに抵抗が生じることになるので、流れに直角に挿入することができない。流れに沿って電極を配置すると、効果が低減する。
【発明の概要】
【0003】
本発明によれば、液体領域を含む側壁(lateral wall)の周りに、電気信号によって通電する一次コイルを貫通した導磁性材料のコアを設けることによって、液体領域中で電極を構築する効果を実現する方法および装置であって、液体領域の、導磁性コアの両側にあるそれぞれの部分が、液体を含む流路によって接続され、これらの流路および液体によって、選択された電気抵抗を生成する、方法および装置が提供される。
【0004】
好ましくは、選択された電気抵抗は、流路内の液体によって生成される。
【0005】
流路および/または流路内の液体によって生成される電気抵抗は、調節可能とすることができる。
【0006】
本発明によれば、処理される液体は、導磁性材料のコア内に配置することによって電界が加わり、この導磁性材料のコアは、そのコアに設けられた一次コイルに誘導的に結合されている。事実上、導磁性材料のコアに取り囲まれたパイプ内の液体の場合、液体は、流れに直角な2つの電極を有し、これらの電極は、電圧源を成し、かつ、液体内で構築された電極間の抵抗に依存して、電流が電極間を流れるという意味において、従来の物理的電極と等価である。これらの電極は、パイプ長手方向に間隔を置いて配置され、磁性コアのパイプ長手方向における寸法によって決まる間隔だけ互いに隔離されている。
【0007】
液体中で事実上構築された電極間を流れる電流は、接続流路によって生じる電気抵抗を調節することによって制御することができ、この接続流路は、その流路内の液体と共に、電極間の導電路となる。導電性でない流路の場合、例えばプラスチック材料で作成されたパイプでは、電気抵抗は、そのパイプに含まれた液体によって生成され、その抵抗は、流路の長さおよび/または断面積を変更することによって調節することができる。調節可能な制限装置(restriction)、例えば流量制御弁を流路内に設けてもよい。
【0008】
それ自体が導電性の材料で形成された流路の場合、導電性がより低い、または導電性でない一片の材料を流路内に設け、それによって電極が確実に短絡しないようにすることができる。
【0009】
導磁性材料のコアに設けられた一次コイルには、液体中に電極を構築する目的に合わせて、任意の所望の波形および/または周波数の電気信号を供給することができる。
【0010】
流路内の液体によって生成される電気抵抗を制御または調節することができる別の方策は、流路の壁周りに、さらなるコア、および電気によって通電する一次コイルを設けることである。事実上、上記によって、流路内の液体中にさらなる電極が構築され、第1のコアおよび一次コイルによって構築された上述の第1の電極の作用に反する、または作用を増す電圧源となる。あるいは、流路内の液体中に制御電極を物理的に配設することも可能であるが、本発明は、液体中の物理的電極を不要とすることを利点の1つとして有するので、一般に、制御電極を導入することは望まれない。
【0011】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明を例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】水管(water pipe)に適用された本発明の概略図である。
【図2】図1に概略的に示した装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、図面を参照すると、処理すべき導電性液体、例えば水を搬送するパイプまたは導管が、10で示されている。このパイプは、導磁性材料、例えば適切なフェライト材料、または変圧器コア(transformer core)と同様に、渦電流損失(eddy current loss)を低減させるために複数の「軟」鉄が互いに絶縁された積層体でできた環状コア12の中央を貫通して延びている。図2で分かるように、コア(core)12は、要素12a、12bなどの複数の比較的短い個々の要素またはアセンブリを備えることができ、これらをボルトなどの固定具によって接合して、磁気的に連続したコアを構築している。図1には、コア12が貫通して延びる一次コイル14のみが示され、この一次コイル14には、適切な信号発生器(図示せず)から電気信号が供給され、電気信号は、任意の所望の波形、例えば連続パルス、および任意の所望の周波数のものでよい。
【0014】
コア12の両側には、T片16、18がそれぞれあり、そこに連結された、全体を20で示す配管によって、コア12の両側の領域間でパイプ10を接続する、図1の22で示す流路が構築されている。流路22を構築する配管20は、好ましくは、非導電性、例えば適切なプラスチック材料製のもの、またはそこに一片の非導電性材料を組み込んでもよく、したがって、流路22内の液体によって、パイプ10内の、コア12の両側にある液体領域間の電気抵抗が決まることになる。
【0015】
使用時には、コア12がパイプ10内の液体に作用することによって、パイプ内に、従来の電極をパイプ内のコア12の両側に配置した場合に生じたであろう状態が構築される。この作用を、図1の破線で示す。流路22および/または流路内の液体によって生成される抵抗によって、電極間を流れる電流が決まり、この電流は、電極を設けた目的に合わせて調節することができる。
【0016】
流路または好ましくは流路内の液体によって電気抵抗を生成する方法について、上記で説明している。別のコア、および一次コイルを、流路22周りに配設することができ、この一次コイルには、コア12によって構築される電極の作用を制御するような形で通電することができる。
【0017】
本明細書および特許請求の範囲において使用されるとき、用語「備える(comprise)」および「備えている(comprising)」、ならびにその変化形は、特定の特徴、ステップ、または実体物が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または構成要素の存在を排除するものとして解釈すべきではない。
【0018】
特定の形態で、または開示の機能を実施する手段として示した前述の説明、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示の特徴、あるいは、開示の結果を適切に得るための方法または工程を、別々に、またはかかる特徴の任意の組合せで利用して、本発明を様々な形態で実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁内の液体領域中で電極を構築する方法であって、前記液体を含む前記側壁を、電気信号によって通電する一次コイルを貫通した導磁性材料のコアによって取り囲むステップを含み、前記液体領域の、前記導磁性コアの両側にあるそれぞれの部分が、前記液体を含む流路によって接続され、選択された電気抵抗を生成する、方法。
【請求項2】
前記流路および/または前記流路内の前記液体によって生成される前記電気抵抗を調節して、所望の電極電流/電圧を実現するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流路の一部内の前記液体の断面積を変更することによって、前記電気抵抗を調節する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
側壁内の液体領域中で電極を構築する装置であって、電気信号によって通電する一次コイル(14)を貫通した導磁性材料のコア(12)であって、前記液体領域を取り囲む、導磁性材料のコア(12)と、前記液体領域の、前記導磁性コアの両側にある部分を接続し、前記電極間で選択された電気抵抗を生成する流路(22)とを備える、装置。
【請求項5】
前記流路および/または前記流路内の前記液体によって生成される前記電気抵抗が、調節可能である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記流路内の前記液体によって生成される前記抵抗を調節するために、前記流路の一部内の前記液体の断面積が調節可能である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記調節が、流量制御弁によって行われる、請求項7に記載の装置。
【請求項8】
添付の図面を参照しながら上記で実質的に説明し、かつ/または添付の図面に実質的に示した方法または装置。
【請求項9】
本明細書および/または添付の図面で説明した任意の新規な特徴、または新規な特徴の組合せ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−523310(P2012−523310A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504083(P2012−504083)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050595
【国際公開番号】WO2010/116180
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(507303169)ハイドロパス、ホウルディングス、リミティド (4)
【Fターム(参考)】