説明

液体供給方法および装置

【課題】容器の内部への液体の注入精度を高める。
【解決手段】液体供給装置10は負圧雰囲気に保持された電池容器に液体を供給する液体供給ポンプ20を有している。液体供給ポンプ20は液体収容タンク14に接続される一次側配管21と吐出ノズル13に接続される二次側配管22とに連通するポンプ室28を有し、ポンプ室28を収縮させると液体が吐出ノズル13から被注入物に注入される。一次側開閉弁23を閉塞する一方、二次側開閉弁24を開放させると共にポンプ室28を収縮させて液体を被注入物内に注入する注入工程のときには、吐出ノズル13に設けられた絞り部40により真空タンク11内の負圧がポンプ室28に伝達されることが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部を負圧状態とした容器内に液体を供給するために使用する液体供給技術に関する。
【背景技術】
【0002】
筒型や角型のケース等の容器の内部に液体を注入するときに、液体注入前に容器の内部を負圧にし、ついで液体を注入し、所定時間経過後に容器内部を大気圧に転じている。これによって、容器の内部に気体を残留させることなく液体を容器内に確実に充填させることができる。例えば、電解液を用いる二次電池を製造するときには、正負の電極と両電極間に配置されるセパレータとが電池容器の内部に組み込まれた状態のもとで、電池容器の内部に電解液を充填している。セパレータは微細な孔が多数形成された多孔質の薄膜層であり、この薄膜層に電解液を浸透させるには、電池容器の内部を大気圧以下の真空圧力つまり負圧状態として微細孔の内部から空気を除去しておく必要がある。
【0003】
電池容器の内部に電解液を注入するために、例えば、特許文献1に記載されるような電解液注入装置が使用されている。この電解液注入装置は、電池容器を収容する密閉チャンバーと、密閉チャンバー内に供給される電解液を貯溜するシリンダとを有しており、シリンダには電解液を吐出するためのピストンが設けられている。電池容器内に電解液を注入するには、電池容器を密閉チャンバー内に密閉収容し、真空ポンプにより密閉チャンバー内つまり電池容器内を負圧にした状態のもとで、ピストンにより電解液をシリンダ内からノズルに吐出して、ノズルから電池容器内に電解液が供給される。
【0004】
一方、特許文献2には、電池容器を収容する密閉チャンバーと電解液を収容する電解液貯溜部とを開閉バルブが設けられた配管により接続するようにした電解液注入装置が記載されている。電池容器内に電解液を注入するには、電池容器を密閉チャンバー内に密閉収容し、真空ポンプにより密閉チャンバー内つまり電池容器内を負圧にした状態のもとで開閉バルブを開放することにより、電解液貯溜部内の電解液をノズルから電池容器に供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−217566号公報
【特許文献2】特開2003−217567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される注入装置のように、密閉チャンバー内で負圧状態となった電池容器内に、シリンダ内の電解液をピストンにより注入するようにすると、シリンダ内にも負圧が伝達されることになる。このため、ピストンが負圧によって密閉チャンバー部の方向へ引かれ、ピストンは油圧ピストン軸で駆動されたストロークよりも長いストロークを移動してしまう可能性がある。つまり、電解液の吐出量は油圧ピストン軸で駆動されたストロークに対応しないので、電解液の注入量の精度を高めることができない。
【0007】
一方、特許文献2に記載される注入装置のように、電解液貯溜部内の電解液を電池容器に注入するようにすると、注入量は予め電解液貯溜部内に供給された電解液の量によって設定されることになり、電解液の注入精度を高めることができない。
【0008】
本発明の目的は、負圧雰囲気内にある容器等の被注入物の内部への液体の注入精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体供給方法は、液体を収容する液体収容タンクに接続される一次側配管と液体を被注入物に注入する吐出ノズルに接続される二次側配管とに連通するポンプ室を有し、当該ポンプ室を膨張させて前記液体収容タンク内の液体を前記ポンプ室に吸入し、前記ポンプ室を収縮させて液体を吐出ノズルから吐出するポンプ駆動部材が設けられた液体供給ポンプを用いて、負圧雰囲気に保持された被注入物に液体を供給する液体供給方法であって、前記一次側配管に設けられた一次側開閉弁により前記一次側配管の流路を開放し、前記二次側配管に設けられた二次側開閉弁により前記二次側配管の流路を閉塞した状態のもとで前記ポンプ室を膨張させて前記ポンプ室内に液体を吸入する吸入工程と、前記一次側配管の流路を前記一次側開閉弁により閉塞し、前記二次側配管の流路を前記二次側開閉弁により開放した状態のもとで、前記二次側開閉弁から前記吐出ノズルの先端までの間に設けられた絞り部により負圧が前記ポンプ室に伝達されるのを防止しながら、前記ポンプ室を収縮させて前記ポンプ室内の液体を前記吐出ノズルから被注入物に注入供給する注入工程とを有することを特徴とする。本発明の液体供給方法は、被注入物内への液体注入開始時に、前記二次側開閉弁の開放動作を前記ポンプ駆動部材の駆動開始よりも遅延させることを特徴とする。本発明の液体供給方法は、被注入物内への液体注入停止時に、前記二次側開閉弁の閉塞動作を前記ポンプ駆動部材の駆動停止よりも早めることを特徴とする。
【0010】
本発明の液体供給装置は、負圧雰囲気に保持された被注入物に液体を供給する液体供給装置であって、液体を収容する液体収容タンクに接続される一次側配管と液体を被注入物に注入する吐出ノズルに接続される二次側配管とに連通するポンプ室を有し、当該ポンプ室を膨張させて前記液体収容タンク内の液体を前記ポンプ室に吸入し、前記ポンプ室を収縮させて液体を吐出ノズルから吐出するポンプ駆動部材が設けられた液体供給ポンプと、前記一次側配管に設けられ、前記ポンプ室を膨張させる際に前記一次側配管の流路を開放する一方、前記ポンプ室を収縮させる際に前記一次側配管の流路を閉塞する一次側開閉弁と、前記二次側配管に設けられ、前記ポンプ室を膨張させる際に前記二次側配管の流路を閉塞する一方、前記ポンプ室を収縮させる際に前記二次側配管の流路を開放する二次側開閉弁と、前記二次側開閉弁から前記吐出ノズルの先端までの間に設けられ、前記ポンプ室を収縮させて液体を被注入物内に注入する過程のもとでは負圧が前記ポンプ室に伝達されるのを防止する絞り部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の液体供給装置は、被注入物内への液体注入開始時に、前記二次側開閉弁の開放動作を前記ポンプ駆動部材の駆動開始よりも遅延させることを特徴とする。本発明の液体供給装置は、被注入物内への液体注入停止時に、前記二次側開閉弁の閉塞動作を前記ポンプ駆動部材の駆動停止よりも早めることを特徴とする。本発明の液体供給装置は、前記絞り部は前記吐出ノズルの内径を調節する可変絞りであることを特徴とする。本発明の液体供給装置は、前記二次側開閉弁は空気圧によりそれぞれの流路を開閉するエアオペレイトバルブであることを特徴とする。本発明の液体供給装置は、前記絞り部は前記吐出ノズルの流路の長さを調整する可変絞りであることを特徴とする。本発明の液体供給装置は、前記二次側開閉弁は電磁弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、二次側配管のうち二次側開閉弁から吐出ノズルの先端までの間に絞り部が設けられている。負圧雰囲気内にある容器などの被注入物に、二次側開閉弁を開放状態に切り換えて液体を注入する際には、負圧が二次側配管内の流路を介してポンプ室に伝達されることが、この絞り部によって防止される。これにより、吐出ノズルからの液体の吐出量は、負圧雰囲気内の負圧により影響を受けることがなくなり、ポンプ室を収縮させるためのポンプ駆動部材の移動ストロークのみによって決まることになる。したがって、被注入物内への液体の注入量の精度を高めることができる。さらに、負圧そのものが変動しても、注入量はその影響を受けなくなるという効果を有する。
【0013】
被注入物内への液体注入開始時に、二次側開閉弁の開放動作をポンプ駆動部材の駆動開始よりも遅延させると、注入量精度をより高めることができる。また、被注入物内への液体注入停止時に、二次側開閉弁の閉塞動作をポンプ駆動部材の駆動停止よりも早めると、注入精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態である液体供給装置を示す断面図である。
【図2】液体供給装置の駆動制御回路を示すブロック図である。
【図3】図1に示す液体供給装置のポンプ吐出動作とポンプ吸入動作を示すタイムチャートである。
【図4】比較例として示す液体供給装置におけるポンプ吐出動作とポンプ吸入動作を示すタイムチャートである。
【図5】他の比較例として示す液体供給装置におけるポンプ吐出動作とポンプ吸入動作を示すタイムチャートである。
【図6】二次側開閉弁を示す断面図である。
【図7】液体供給ポンプの他の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示される液体供給装置10は、例えば、電池容器Bを被注入物としてこの中に電解液を注入するために使用される。電池容器Bは真空タンク11内の真空室11aに収容される。真空チャンバーつまり真空室11aは、真空タンク11に接続された真空ポンプ12により、所定の真空度、例えば−60〜−80kPa程度の真空度に保持される。電池容器B内には予め正負の電極部材とこれらの電極間に配置される多孔質のセパレータつまり隔離層とが組み込まれており、組み立てられたときにはセパレータの微細孔の内部には空気が入り込んでいる。電池容器Bが収容された状態のもとで真空タンク11内を大気圧以下の圧力つまり真空圧にすると、セパレータの微細孔の内部に入り込んでいる空気は、電池容器Bの内部から真空室11aの外部に排出される。電池容器Bが負圧雰囲気に保持されて内部から空気が排出された状態のもとで、吐出ノズル13から吐出される電解液Lが電池容器Bへ注入される。電池容器B内に注入される液体としての電解液Lは、液体収容タンク14内に収容されている。
【0016】
液体供給装置10は、図1に示されるように、ポンプ本体15とポンプ駆動部16とからなる液体供給ポンプ20を有している。ポンプ本体15は内部に長手方向に貫通する収容孔17が形成されたポンプケース15aを有している。ポンプケース15aの下端部には流入側のジョイント部材18が取り付けられ、上端部には流出側のジョイント部材19が取り付けられており、それぞれのジョイント部材18,19はポンプケース15aの一部を構成している。流入側のジョイント部材18にはこれに形成された流入ポート18aに連通する一次側配管21が接続され、流出側のジョイント部材19にはこれに形成された流出ポート19aに連通する二次側配管22が接続される。一次側配管21は液体収容タンク14に接続され、二次側配管22の先端には電解液Lを吐出する吐出ノズル13が設けられている。吐出ノズル13は真空タンク11の蓋部材に設けられており、真空タンク11内に電池容器Bを配置した後に蓋部材を真空タンク11に取り付けると、真空室11aは密閉状態となる。真空室11aを所定の真空度に保持した状態のもとで、吐出ノズル13から電池容器B内に電解液Lが供給される。なお、それぞれの配管21,22はホースやチューブ等により形成されている。
【0017】
一次側配管21には内部の流路を開閉する一次側開閉弁23が設けられ、二次側配管22には内部の流路を開閉する二次側開閉弁24が設けられている。それぞれの開閉弁23,24は、空気の圧力により弁体を作動するようにした空気操作弁つまりエアオペレイトバルブであり、それぞれ電磁弁25,26のパイロット流路25a,26aから供給される圧縮空気をパイロット圧として流路切換が行われる。
【0018】
ポンプケース15a内には、フッ素樹脂等の径方向に弾性変形自在の可撓性のチューブ27がポンプ部材として装着されている。このチューブ27の流入端部はポンプケース15aとジョイント部材18との間に挟み付けられ、流出端部はポンプケース15aとジョイント部材19の間に挟み付けられている。チューブ27の流入端部をポンプケース15aに溶接するようにしても良く、流出端部についても同様にポンプケース15aに溶接するようにしても良い。チューブ27によってポンプケース15aの内部は、チューブ27の内側のポンプ室28と外側の駆動室29とに仕切られている。ポンプ室28は流入ポート18aと流出ポート19aとに連通している。流出ポート19aは流入ポート18aの上方に設けられており、両方のポート18a,19aは同軸となっている。これにより、電解液内に気泡が混入されていても、その気泡がポンプ室28内に止まることが防止される。
【0019】
ポンプ駆動部16は駆動ユニット31に取り付けられる駆動部ケース16aを有しており、この駆動部ケース16aはポンプケース15aと一体となっている。駆動部ケース16aの内部には円筒形状の収容孔32が形成され、駆動部ケース16aの一端部は閉塞壁33により閉塞された閉塞端となっており、他端部には開口部34が形成されている。駆動部ケース16aの内部には、ポンプ駆動部材としての駆動ロッド35が直線往復動自在に装着されており、この駆動ロッド35は駆動ユニット31内に組み込まれた電動モータや空気圧シリンダ等からなる図示しない駆動装置により往復動される。駆動ロッド35の閉塞壁33に向かう移動を前進移動とし、閉塞壁33から離れる方向の移動を後退移動とする。
【0020】
駆動部ケース16a内にはベローズ36が装着されている。このベローズ36は、蛇腹部36aとこれの一端部に設けられた端板部36bと他端部に設けられたリング部36cとを有し、フッ素樹脂等によりこれらが一体となって成形されている。端板部36bには、駆動ロッド35の先端部に設けられた雄ねじ35aにねじ結合されるねじ孔37が形成されており、端板部36bは駆動ロッド35の先端部に固定される。一方、リング部36cは駆動部ケース16aの開口部34に形成された段部34aに当接し、駆動ユニット31と駆動部ケース16aとにより挟み付けられている。
【0021】
ベローズ36の外側と駆動部ケース16aの収容孔32の内面とにより駆動室38が区画され、この駆動室38は連通孔39によりポンプケース15a内の駆動室29に連通している。ベローズ36の内側は図示しない息付き用のブリード孔を介して外部に連通し、大気圧となっている。それぞれの駆動室29,38と連通孔39には間接媒体としての液媒体Mが封入されており、図1においては液媒体Mが点を付して示されている。
【0022】
駆動ロッド35を図1に示す後退限位置に向けて後退移動させると、駆動室38が膨張して駆動室29内の液媒体Mが連通孔39を介して駆動室38内に吸入される。これにより、駆動室29が収縮してチューブ27は径方向に膨張し、ポンプ室28が膨張することになる。ポンプ室28が膨張するときに、一次側開閉弁23を開き、二次側開閉弁24を閉じると、ポンプ室28は負圧状態となり、液体収容タンク14内の電解液Lはポンプ室28内に吸入される。
【0023】
これに対し、駆動ロッド35を前進移動させると、駆動室38が収縮して駆動室38内の液媒体Mが連通孔39を介して駆動室29に供給され、駆動室29が膨張する。これにより、チューブ27は径方向に収縮してポンプ室28が収縮することになる。ポンプ室28が収縮するときに、一次側開閉弁23を閉じ、二次側開閉弁24を開くと、ポンプ室28は吐出圧に加圧されてポンプ室28内の電解液Lは吐出ノズル13から吐出して電池容器B内に注入供給される。
【0024】
吐出ノズル13は真空室11aに開口しており、真空室11aを負圧状態とすると、吐出ノズル13の内部流路も負圧状態となる。この状態のもとで、二次側開閉弁24を開放させると、ポンプ室28内にも負圧が伝達されることになる。このように、ポンプ室28内に負圧が伝達された状態のもとで、ポンプ室28を収縮させて吐出ノズル13から電池容器B内に電解液Lを注入すると、ポンプ室28内の電解液Lが真空室11aに吸い出されることになる。このため、吐出ノズル13から吐出される電解液Lの吐出量が駆動ロッド35の吐出ストロークに対応しなくなるので、一定量の電解液Lを高精度で電池容器B内に注入することができなくなる。
【0025】
そこで、図1に示す液体供給装置10においては、吐出ノズル13の内部流路には絞り部40が設けられている。この絞り部40は、二次側配管22のうち二次側開閉弁24と流出ポート19aとの間の流路径よりも吐出ノズル13の流路径を小径にすることにより形成されている。このように、吐出ノズル13に絞り部40を設けると、二次側開閉弁24を開放させた状態のもとで、ポンプ駆動部材としての駆動ロッド35によりポンプ室28を収縮させて電解液Lを真空室11a内に吐出して電池容器B内に注入する過程においては、真空室11a内の負圧つまり真空がポンプ室28に伝達されるのが防止される。つまり、電解液Lの注入過程においては、ポンプ室28の圧力は大気圧以上の吐出圧力に保持される。これにより、ポンプ室28から吐出ノズル13に向かって吐出される電解液Lの吐出量は、ポンプ室28の収縮量に正確に対応する。この収縮量はベローズ36の伸び移動のストロークに対応し、吐出ノズル13から吐出される電解液Lの量は駆動ロッド35の移動量に正確に比例する。
【0026】
ポンプ室28を収縮させて電池容器B内に電解液を注入する注入過程の開始から終了までが全吐出過程である。その全吐出過程において真空室11a内の負圧がポンプ室28内に伝達されないようにするには、以下のように行う。つまり、電池容器B内への電解液Lの注入開始時には、二次側開閉弁24の開放動作を駆動ロッド35の駆動開始よりも遅延させることが好ましい。また、注入停止時には、二次側開閉弁24の閉塞動作を駆動ロッド35の駆動停止よりも早めることが好ましい。これにより、ポンプ室28の圧力は大気圧以上の吐出圧力に保持される。
【0027】
図1に示す液体供給装置10においては、絞り部40を吐出ノズル13の流路により形成している。しかし、絞り部40を吐出ノズル13に設けることなく、絞り部40を二次側配管22のうち二次側開閉弁24よりも下流側の部分に設けるようにしても良い。
【0028】
絞り部40を形成するには、液体である電解液Lの粘度と吐出ノズル13からの吐出流速に応じて、絞り部40の内径寸法と長さ寸法とが設定されることになる。例えば、吐出ノズル13に内径を1mmとし、長さを20mmとした流路により絞り部40を形成した場合には、電解液Lを10ml/secの流速で吐出ノズル13から吐出させることができ、同一の内径で長さを50mmとした絞り部40を形成した場合には、電解液Lを5ml/secの流速で吐出することができた。
【0029】
図1に示した絞り部40は内径が一定の固定絞りであるが、絞り部40の他の形態としては可変絞りがある。可変絞りを吐出ノズル13に設けると、液体の粘度に応じて吐出ノズル13の内径を調節することができる。可変絞りを吐出ノズル13に設けることなく、二次側配管22のうち二次側開閉弁24よりも下流側の部分に設けるようにしても良い。また、絞り部40の他の形態としては、吐出ノズル13の流路の長さを調整するようにした構造の可変絞りとすることができる。
【0030】
ポンプ室28を膨張させて液体収容タンク14内の電解液Lをポンプ室28内に供給する際には、二次側開閉弁24が閉塞されるので、ポンプ室28には負圧が伝達されない。したがって、電解液Lを電池容器B内に注入するときと相違し、駆動ロッド35の後退移動開始とほぼ同時に一次側開閉弁23を開放動作させることができる。さらに、駆動ロッド35の後退移動開始よりも早く一次側開閉弁23を開放させても良い。
【0031】
図2は液体供給装置10の駆動制御回路を示すブロック図であり、一次側と二次側の2つの電磁弁25,26と、駆動ロッド35を往復動するための電動モータ41はコントローラ42により制御されるようになっている。コントローラ42にはポンプ吐出動作と吸引動作とを指令する指令信号43が上位のコントローラから送られるようになっている。
【0032】
図3は図1に示す液体供給装置のポンプ吐出動作とポンプ吸入動作を示すタイムチャートであり、図3を参照しつつ液体供給装置10によって電池容器B内に電解液Lを注入供給する手順について説明する。
【0033】
吐出ノズル13から真空室11a内の電池容器B内に電解液Lを注入するには、真空室11a内の圧力は大気圧以下の圧力つまり真空状態に保持される。これにより、予め真空室11a内に配置された被注入物としての電池容器Bの内部は負圧雰囲気に保持された状態となり、多孔質のセパレータ内に入り込んだ空気は外部に排出される。この状態のもとで、指令信号がコントローラ42に送られると、駆動ロッド35が駆動ユニット31内に組み込まれた電動モータ等の駆動手段により前進駆動されてポンプ吐出動作が実行される。駆動手段によって駆動ロッド35が前進駆動が開始されてから、ポンプ室28から二次側配管22に向けて電解液Lが吐出される流量が一定になるまでには、若干の遅れがある。この前進駆動開始よりも遅延時間Taだけ遅れて二次側開閉弁24を開放させる。ポンプ吐出動作が行われるときには、一次側開閉弁23は閉じられた状態に保持される。
【0034】
図3に示すように、二次側開閉弁24の開放動作時を駆動ロッド35によるポンプ吐出動作開始時よりも遅延させると、ポンプ室28内の圧力は急速に上昇する。二次側開閉弁24が開放された後にはポンプ室28の圧力は低下することになるが、吐出ノズル13には絞り部40が設けられているのでポンプ室28内の圧力が負圧状態となることがなく、正圧に保持される。二次側開閉弁24が開放されてから所定の時間が経過すると、ポンプ室28内の圧力は駆動ロッド35の前進移動により設定される一定の吐出圧力になる。すなわち、絞り部40の先端側つまり真空室11a側は負圧となり、絞り部40の後端側つまり二次側配管22側はポンプ吐出圧となる。このように、絞り部40の先端側と後端側との間には圧力勾配が発生する。これが絞り部40の効果である。言い換えれば、電解液Lは吐出抵抗による圧力勾配の中を定常状態で絞り部40を流れる。
【0035】
吐出ノズル13から電池容器B内に対して一定量の電解液Lが注入された後には、二次側開閉弁24を閉塞する。この二次側開閉弁24の閉塞動作は、駆動ロッド35の駆動停止時期よりも所定の時間Tbだけ早く行われる。このように、ポンプ吐出動作の終了動作時期よりも二次側開閉弁24を早く閉じると、ポンプ吐出動作が完全に終了するまでにポンプ室28の圧力が負圧となることが防止され、正圧に保持される。
【0036】
ポンプ室28内に電解液Lを吸引注入する際には、図3に示されるように、二次側開閉弁24を閉塞した状態のもとで、一次側開閉弁23を開放するとともに駆動ロッド35を後退移動させるポンプ吸入動作を行うことになる。
【0037】
図4および図5はそれぞれ比較例として示す液体供給装置におけるポンプ吐出動作とポンプ吸入動作のタイムチャートである。
【0038】
図4は吐出ノズル13に絞り部40を設けない液体供給装置を用いて、電解液Lの吐出時に二次側開閉弁24の開放動作と駆動ロッド35によりポンプ吐出動作とをほぼ同時に開始した場合における吐出時のポンプ室28の吐出圧力の変化を示す。絞り部40を液体供給装置に設けないと、真空室11a内の負圧がポンプ室28内に伝達されることになるので、吐出ノズル13から電池容器B内への電解液Lの注入は、真空室11a内の負圧による吸い出しにより行われることになる。このため、注入量は駆動ロッド35のストロークに依存しなくなるので、高精度で電解液を注入することができない。
【0039】
図5は図1に示したように吐出ノズル13に絞り部40を設けた液体供給装置を用いているが、二次側開閉弁24の開閉動作と駆動ロッド35によるポンプ動作の開始終了とを同期させた場合における吐出時のポンプ室28の吐出圧力の変化を示す。二次側開閉弁24の開放動作とポンプ動作開始とを同時に行うと、瞬時に、真空室11aの負圧がポンプ室28内に伝達され、ポンプ室28の圧力は負圧になる。それ以降は、電解液Lが絞り部を流れ始めてそこに圧力勾配が生じるから、図示するようにポンプ室28の圧力が上昇する。電解液の流れが定常状態に至れば圧力勾配も一定となり、ポンプ室28の圧力は一定となる。
【0040】
瞬間的にポンプ室28内に負圧が伝達されると、より高精度での吐出が達成されなくなるが、図3に示すように、二次側開閉弁24の開閉タイミングとポンプ動作のタイミングとに時間差を設けることにより、ポンプ動作開始時と終了時とにおいても負圧がポンプ室28内に伝達されることなく、吐出精度をより高めることができる。
【0041】
図6は二次側開閉弁24を示す断面図であり、バルブケース45にはポンプ本体15が接続される一次側ポート46と、吐出ノズル13が接続される二次側ポート47とが形成されている。両方のポートが連通する弁室48にはダイヤフラム形の弁体49が配置されており、弁体49は二次側ポート47が開口する弁座50に接触する位置と弁座50から離れる位置とに開閉動作する。弁体49に設けられた弁軸51には、弁体49を閉じる方向にばね力が加えられ、電磁弁26のパイロット流路26aからパイロット圧が加えられるようになっており、パイロット圧が加えられるとばね力に抗して弁体49は弁座50から離れて二次側開閉弁24は開放状態となる。弁座50に開口されたポートを二次側ポート47としてこれに吐出ノズル13を接続すると、真空タンク11内の負圧により弁体49は弁座50に密着する方向の吸着力を受けることになり、二次側開閉弁24のシール性を高めることができる。しかも、ダイヤフラム形の弁体49を使用すると、開閉時の二次側ポート47内の電解液の移動を少なくすることができるので、吐出ノズル13からの吐出精度を高めることができる。
【0042】
一次側開閉弁23を二次側開閉弁24と同様のエアオペレイトバルブを用いるようにすると、一次側と二次側の開閉弁を1種類の開閉弁とすることができる。図6に示すエアオペレイトバルブを一次側開閉弁23として使用する場合には、図6に示された二次側ポート47をポンプ室28に連通させることになる。なお、それぞれの開閉弁23,24として、エアオペレイトバルブを使用することなく、流路を開閉する2ポート型であって、電気信号により開閉動作する電磁弁を使用するようにしても良い。
【0043】
図1に示す液体供給装置10においては、液体供給ポンプ20はポンプ室28が形成されたポンプ本体15とベローズ36が組み込まれたポンプ駆動部16とを備え、駆動ロッド35の軸方向往復動を間接媒体としての液媒体Mを介してポンプ室28を膨張収縮させている。摺動する部分がないので、ポンプ室28が吐出圧力にまで加圧されても外部に電解液Lや液媒体Mが漏出することがない。
【0044】
図7は液体供給ポンプの他の形態を示す断面図である。この液体供給ポンプ20aは液媒体Mを使用することなく、図7に示すように、ベローズ36により直接ポンプ室28を膨張収縮させるようにしている。ポンプケース15aは、閉塞壁52が設けられた円筒部材53により形成されており、円筒部材53の内面とベローズ36とによりポンプ室28が区画されている。駆動ロッド35によりベローズ36を伸縮させると、ポンプ室28は膨張収縮してポンプ動作を行うことになる。
【0045】
液体供給ポンプの他の形態としては、例えば、特許第4547368号公報に記載されるように、ピストンとこれが往復動自在に装着されるシリンダとを有する構造のものを使用することかできる。この形態の液体供給ポンプにおいては、ピストンがシリンダに摺動接触しているが、シール室がベローズカバーにより覆われるので、駆動室内における液媒体が外部に漏出することを防止できる。さらに他の液体供給ポンプの形態としては、例えば、特許第3554115号公報に記載されるように、ポンプ室を内部に形成するチューブの外側に、大型ベローズ部と小型ベローズ部とを有する軸方向に弾性変形自在のベローズを配置し、ベローズとチューブとの間に媒体液が封入された駆動室を形成するようにした構造のものを使用することができる。これらの液体供給ポンプはいずれも、電解液や媒体液が外部に漏出しないようにした形態であるが、ピストンを用いたシリンジタイプのものを使用することも可能である。
【0046】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。図1に示した液体供給装置は、2次電池を製造するために電池容器B内に電解液Lを注入する工程に使用されているが、負圧雰囲気に保持された容器内に液体を注入するためであれば、本発明の液体供給装置は電池容器内に電解液を注入する場合以外にも使用することができる。
【符号の説明】
【0047】
11 真空タンク
11a 真空室
12 真空ポンプ
13 吐出ノズル
14 液体収容タンク
15 ポンプ本体
16 ポンプ駆動部
18a 流入ポート
19a 流出ポート
20 液体供給ポンプ
21 一次側配管
22 二次側配管
23 一次側開閉弁
24 二次側開閉弁
25,26 電磁弁
27 チューブ
28 ポンプ室
29 駆動室
31 駆動ユニット
35 駆動ロッド(ポンプ駆動部材)
36 ベローズ
38 駆動室
40 絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容タンクに接続される一次側配管と液体を被注入物に注入する吐出ノズルに接続される二次側配管とに連通するポンプ室を有し、当該ポンプ室を膨張させて前記液体収容タンク内の液体を前記ポンプ室に吸入し、前記ポンプ室を収縮させて液体を吐出ノズルから吐出するポンプ駆動部材が設けられた液体供給ポンプを用いて、負圧雰囲気に保持された前記被注入物に液体を供給する液体供給方法であって、
前記一次側配管に設けられた一次側開閉弁により前記一次側配管の流路を開放し、前記二次側配管に設けられた二次側開閉弁により前記二次側配管の流路を閉塞した状態のもとで前記ポンプ室を膨張させて前記ポンプ室内に液体を吸入する吸入工程と、
前記一次側配管の流路を前記一次側開閉弁により閉塞し、前記二次側配管の流路を前記二次側開閉弁により開放した状態のもとで、前記二次側開閉弁から前記吐出ノズルの先端までの間に設けられた絞り部により負圧が前記ポンプ室に伝達されるのを防止しながら、前記ポンプ室を収縮させて前記ポンプ室内の液体を前記吐出ノズルから被注入物に注入供給する注入工程とを有することを特徴とする液体供給方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給方法において、被注入物内への液体注入開始時に、前記二次側開閉弁の開放動作を前記ポンプ駆動部材の駆動開始よりも遅延させることを特徴とする液体供給方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の液体供給方法において、被注入物内への液体注入停止時に、前記二次側開閉弁の閉塞動作を前記ポンプ駆動部材の駆動停止よりも早めることを特徴とする液体供給方法。
【請求項4】
負圧雰囲気に保持された被注入物に液体を供給する液体供給装置であって、
液体を収容する液体収容タンクに接続される一次側配管と液体を被注入物に注入する吐出ノズルに接続される二次側配管とに連通するポンプ室を有し、当該ポンプ室を膨張させて前記液体収容タンク内の液体を前記ポンプ室に吸入し、前記ポンプ室を収縮させて液体を吐出ノズルから吐出するポンプ駆動部材が設けられた液体供給ポンプと、
前記一次側配管に設けられ、前記ポンプ室を膨張させる際に前記一次側配管の流路を開放する一方、前記ポンプ室を収縮させる際に前記一次側配管の流路を閉塞する一次側開閉弁と、
前記二次側配管に設けられ、前記ポンプ室を膨張させる際に前記二次側配管の流路を閉塞する一方、前記ポンプ室を収縮させる際に前記二次側配管の流路を開放する二次側開閉弁と、
前記二次側開閉弁から前記吐出ノズルの先端までの間に設けられ、前記ポンプ室を収縮させて液体を被注入物内に注入する過程のもとでは負圧が前記ポンプ室に伝達されるのを防止する絞り部とを有することを特徴とする液体供給装置。
【請求項5】
請求項4記載の液体供給装置において、被注入物内への液体注入開始時に、前記二次側開閉弁の開放動作を前記ポンプ駆動部材の駆動開始よりも遅延させることを特徴とする液体供給装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の液体供給装置において、被注入物内への液体注入停止時に、前記二次側開閉弁の閉塞動作を前記ポンプ駆動部材の駆動停止よりも早めることを特徴とする液体供給装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の液体供給装置において、前記絞り部は前記吐出ノズルの内径を調節する可変絞りであることを特徴とする液体供給装置。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の液体供給装置において、前記二次側開閉弁は空気圧によりそれぞれの流路を開閉するエアオペレイトバルブであることを特徴とする液体供給装置。
【請求項9】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の液体供給装置において、前記絞り部は前記吐出ノズルの流路の長さを調整する可変絞りであることを特徴とする液体供給装置。
【請求項10】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の液体供給装置において、前記二次側開閉弁は電磁弁であることを特徴とする液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162269(P2012−162269A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21701(P2011−21701)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】