説明

液体供給装置および印刷装置

【課題】キャリッジの負荷変動を抑制して均一な移動速度でキャリッジを移動させながら液体をヘッドに供給することを可能し、スループット及びヘッドによる液体処理精度の向上を図り、さらには装置の小型化を図ることができる液体供給装置および印刷装置を提供する。
【解決手段】インク供給装置50は、偶数のポンプ51a,51bが設けられ、キャリッジ23の一方向移動時に一方のポンプ51aのカム55Aがタンクバネ66aの付勢力に抗してポンプタンク52aを収縮させるとともに他方のポンプ51bのカム55Bがタンクバネ66bの付勢力でポンプタンク52bを伸長させ、キャリッジ23の逆方向移動時にカム55Aがタンクバネ66aの付勢力でポンプタンク52aを伸長させるとともにカム55Bがタンクバネ66bの付勢力に抗してポンプタンク52bを収縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインタンクの液体をポンプタンクを介してヘッドに供給する液体供給装置および印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記液体供給装置の一例として、パソコン等に接続されるプリンタに組み込まれて、印刷ヘッドに液体としてのインクを供給する装置が挙げられる。このような液体供給装置では、インクカートリッジを配置した位置や流路の抵抗によっては印刷ヘッドのみでインクをインクカートリッジから吸い上げるのは困難な場合が多い。そのため、インクカートリッジを加圧して印刷ヘッドまでインクを供給する加圧機構を搭載したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の加圧機構は構造が複雑であり、しかも大きな設置スペースが必要になるため、簡易化及び小型化のために、キャリッジの往復移動の駆動力を利用してインクをサブタンクに供給するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献2に記載のインク供給装置は、往復移動されるキャリッジと、このキャリッジに設けられたインクジェット記録ヘッドへ供給されるインクを貯留したインクカートリッジと、インクジェット記録ヘッドによる印刷で消費されるインクを保持しておくインク保持部とを備え、キャリッジの所定位置への移動によって圧縮されてインク保持部へインクを送り出すとともに、キャリッジの所定位置から外れた位置への移動によって復元してインクカートリッジからインクを引き込むインクポンプ部が設けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−270133号公報
【特許文献2】特開2007−160639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のキャリッジの往復移動を利用する方式のインク供給装置では、インク供給のためにキャリッジを印刷領域外の所定位置に移動させるようになっている。これは、インク供給は印刷中に行うのが効率的であるものの、キャリッジの駆動力を利用することから、印刷中にインク供給を行うと、インクポンプ部の伸縮でキャリッジの負荷が変動し、キャリッジの移動速度がばらついて印刷画質に影響を与えてしまうためである。このことから、スループットの低下や、キャリッジの移動距離増大による大型化が避けられない状況にある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、キャリッジの負荷変動を抑制して均一な移動速度でキャリッジを移動させながら液体をヘッドに供給することを可能し、スループット及びヘッドによる液体処理精度の向上を図り、さらには装置の小型化を図ることができる液体供給装置および印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することのできる本発明に係る液体供給装置は、
液体が貯留されたメインタンクと、
前記メインタンクから液体を引き込むポンプタンクと、
前記ポンプタンクから液体が供給されるヘッドと、
前記ヘッドが搭載されるとともに往復移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジの往復移動により前記ポンプタンクの容積を変化させてメインタンクからの液体を引き込むかまたは前記ヘッドに液体を供給させるカムと、を有する液体供給装置であって、
前記ポンプタンクが偶数設けられるとともに前記カムが逆位相に一対設けられ、
前記キャリッジの一方向移動時に、一方の前記カムによって一方の半数の前記ポンプタンクの容積が減少されるとともに他方の前記カムによって他方の半数の前記ポンプタンクの容積が増大され、
前記キャリッジの逆方向移動時に、一方の前記カムによって一方の半数の前記ポンプタンクの容積が増大されるとともに他方の前記カムによって他方の半数の前記ポンプタンクの容積が減少されることを特徴とする。
【0009】
この構成の液体供給装置によれば、キャリッジの一方向移動時に一方の半数のポンプタンクの容積が減少されるとともに他方の半数のポンプタンクの容積が増大され、キャリッジの逆方向移動時に一方の半数のポンプタンクの容積が増大されるとともに他方の半数のポンプタンクの容積が減少されるため、キャリッジへの負荷を一方向移動時と逆方向移動時とで均一化できるとともに、移動時の負荷を平均化できる。したがって、キャリッジの負荷変動を抑制することができ、キャリッジの移動速度を均一化できる。それにより、ヘッドによる液体処理も均一化が図れ、処理の高精度化を図ることができる。また、ヘッドによる液体処理中にポンプタンクの容積を変化させてメインタンクからの液体を引き込んだりヘッドに液体を供給させたりすることができるため、スループットの向上を図ることができる。
【0010】
本発明に係る液体供給装置において、前記カムは、前記キャリッジの往復移動範囲のうち少なくとも前記ヘッドによる液体の吐出範囲全体に設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成の液体供給装置によれば、ヘッドによる液体の吐出時にポンプタンクの容積変化が行われ、液体をヘッドに供給させるためにキャリッジをヘッドによる液体の吐出範囲外の位置に移動させる必要がない。そのため、ヘッドによる液体の吐出範囲外に別個のポンプ機構や加圧機構を設ける必要がなくなり、装置の小型化を図ることができる。
【0012】
前記課題を解決することのできる本発明に係る印刷装置は、
搬送される媒体に対してヘッドからインクを吐出して印刷処理を行う印刷装置であって、
前記ヘッドへインクを供給する装置として、上記本発明に係る液体供給装置の何れかを備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成の印刷装置によれば、キャリッジの負荷変動を抑制してキャリッジの移動速度を均一化した状態で印刷処理を行いつつ、印刷時のキャリッジ移動により、インクをメインタンクからポンプタンクに確実に補給することができるとともに、ポンプタンクからヘッドへ確実にインクを供給することができる。したがって、スループットの向上を図るとともに媒体への印刷品質の向上を図ることができる。
さらに、キャリッジの往復移動範囲外に加圧ユニットを追加する必要がないので、印刷装置の小型化を図ることができる。また、ポンプタンクへのインクの補給が確実に行われるため、ポンプタンクの容量を小さくすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る液体供給装置および印刷装置の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図11は本発明に係る一実施形態の液体供給装置によってインク供給機構が構成されたインクジェットプリンタを示す図であり、図1はインクジェットプリンタの外観斜視図、図2はインクジェットプリンタのプリンタカバーを開いた状態の斜視図、図3はインクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図、図4はインクジェットプリンタのインクカートリッジからキャリッジ上のインクジェットヘッドまでの部品の接続構造を示す部分斜視図、図5はインクカートリッジからキャリッジ上のインクジェットヘッドまでの構成を別の向きから見た部分斜視図、図6は本実施形態のインク供給装置の概略平面図、図7は本実施形態のインク供給装置の概略側面図、図8は本実施形態のインク供給装置の概略正面図、図9は自己封止ユニットの構造を示す断面図、図10は比較例のキャリッジ負荷を示す特性線図、図11は本実施形態のインク供給装置を用いた場合のキャリッジ負荷を示す特性線図である。
【0015】
まず、本実施形態の印刷装置であるインクジェットプリンタの構造について説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、複数種のカラーインクを使用してロール紙にカラー印刷するものであり、プリンタ本体を覆うプリンタケース2の前面には、ロール紙カバー5及びインクカートリッジカバー7が開閉自在に設けられている。更に、プリンタケース2の前面には、電源スイッチ3と共にフィードスイッチやインジケータ等も配置されている。
【0016】
ロール紙カバー5を開くと、図2に示すように、印刷される媒体であるロール紙11を収容した用紙収容部13が開放状態になって、ロール紙11の交換が可能になる。
また、インクカートリッジカバー7を開くと、カートリッジ装着部15が開放状態になり、カートリッジ装着部15へのインクカートリッジ(メインタンク)17の着脱が可能になる。
【0017】
この場合、インクカートリッジカバー7を開く動作に連動して、カートリッジ装着部15の前方にインクカートリッジ17が所定距離だけ引き出される構成になっている。
【0018】
プリンタケース2内の用紙収容部13の上方には、図3及び図4に示すように、インクジェットヘッド(ヘッド)21を搭載したキャリッジ23が設けられている。キャリッジ23は、ロール紙11の幅方向に沿って延在するガイド部材25によって用紙幅方向に移動自在に支持されると共に、ロール紙11の幅方向に延在する無端ベルト26aと無端ベルト26aを駆動するキャリッジモータ26bとによって、プラテン28の上方をロール紙11の幅方向に往復移動可能になっている。
【0019】
図示のように、カートリッジ装着部15の上方が、往復移動するキャリッジ23の待機位置(ホームポジション)となっている。そして、この待機位置の下方には、キャリッジ23の下面に露出するインクジェットヘッド21のインクノズルを覆うキャップ27と、キャップ27を介してインクジェットヘッド21の各インクノズル内のインクを吸引廃棄するインク吸引機構29とが設けられている。
【0020】
インクカートリッジ17は、図3に示すカートリッジケース18内に複数個の図4に示すカラーインクパック19を収容したものである。インクカートリッジ17内の各インクパック19は、インクカートリッジ17をカートリッジ装着部15に装着した際に、カートリッジ装着部15側に設けられたインク供給針がインクパック19のインク供給口に差込接続される。カートリッジ装着部15のインク供給針には、図5にも示すように、プリンタケース2内に固定されたインク流路31が接続され、このインク流路31には、各色に分けられた可撓性のインク供給チューブ33の一端が接続されている。
【0021】
インク供給チューブ33の他端は、図4に示すように、キャリッジ23に接続されている。これにより、各インクパック19のインクは、カートリッジ装着部15のインク供給針から、インク流路31、インク供給チューブ33を経て、キャリッジ23に供給されるようになっている。
【0022】
次に、インク供給チューブ33に接続され、インクジェットヘッド21にインクを供給するインク供給装置(液体供給装置)50について説明する。
【0023】
図6に示すように、キャリッジ23には、4色分つまり偶数のポンプ51a〜51dを構成する4つの容積可変のポンプタンク52a〜52dと、同じく4色分の容量可変のサブタンク53a〜53dとが搭載されている。一組の二色分のポンプ51a,51bを構成するポンプタンク52a,52bがキャリッジ23の往復移動方向(矢印X方向)の位置を合わせて隣接配置されており、これらポンプタンク52a,52bにそれぞれ個別に連通するサブタンク53a,53bが、これらのポンプタンク52a,52bとキャリッジ23の移動方向の位置を合わせて、対応するポンプタンク52a,52bの外側に配置されている。また、他の一組の二色分のポンプ51c,51dを構成するポンプタンク52c,52d及びサブタンク53c,53dが、ポンプタンク52a,52b及びサブタンク53a,53bとはキャリッジ23の往復移動方向の位置を異ならせて同様に配置されている。なお、一組の二色分のポンプ51a,51bと他の一組の二色分のポンプ51c,51dとは略同様の構造となっている。
【0024】
一方側のポンプ51a,51cを構成するポンプタンク52a,52cとサブタンク53a,53cとの間における上方には、カム55Bがキャリッジ23の移動方向に沿って配置されている。他方側のポンプ51b,51dを構成するポンプタンク52b,52dとサブタンク53b,53dとの間における上方には、カム55Aがキャリッジ23の移動方向に沿って配置されている。
【0025】
一方側のポンプ51a,51cのポンプタンク52a,52cとカム55Bとの間には、ポンプ51aを構成するアーム56a及びポンプ51cを構成するアーム56cがそれぞれ回動可能に支持されている。これらアーム56a,56cはカム55Aの方向に延出して、ともにカムAの下側のカム面に当接する。アーム56aには、その中間位置からポンプタンク52aの方向に延出する作動片部57aが、アーム56cにも、同様にポンプタンク52cの方向に延出する作動片部57cが設けられている。
【0026】
他方側のポンプ51b,51dのポンプタンク52b,52dとカム55Aとの間には、ポンプ51bを構成するアーム56b及びポンプ51dを構成するアーム56dがそれぞれ回動可能に支持されている。これらアーム56b,56dはカム55Bの方向に延出して、ともにカムBの下側のカム面に当接する。アーム56bには、その中間位置からポンプタンク52bの方向に延出する作動片部57bが、アーム56dにも、同様にポンプタンク52dの方向に延出する作動片部57dが設けられている。
【0027】
図7に示すように、一方側のポンプ51aのポンプタンク52aは流路59aを介してインクカートリッジ17の対応色のカラーインクパック19(図4参照)に連通しており、このポンプタンク52aは、流路60aを介してサブタンク53aに連通し、サブタンク53aは流路61aを介して自己封止ユニット36に連通している。ポンプタンク52aとインクカートリッジ17とを連通させる流路59aには、逆止弁39が設けられており、この流路59aにおいて、逆止弁39によってインクカートリッジ17側からポンプタンク52a側へのみインクが流れるようになっている。また、ポンプタンク52aとサブタンク53aとの間の流路60aにも逆止弁40が設けられており、ポンプタンク52a側からサブタンク53a側へのみインクが流れるようになっている。
【0028】
他方側のポンプ51bのポンプタンク52bも、流路59bを介してインクカートリッジ17に、流路60bを介してサブタンク53bに連通し、サブタンク53bは流路61bを介して自己封止ユニット36に連通している。流路59bにも、インクカートリッジ17側からポンプタンク52b側へのみインクを流す逆止弁39が設けられており、また、ポンプタンク52bとサブタンク53bとの間の流路60bにも、ポンプタンク52b側からサブタンク53b側へのみインクを流す逆止弁40が設けられている。
【0029】
ポンプタンク52a,52bは、伸縮することにより容積可変に構成されており、ポンプタンク52a内には、これを伸長方向(容積を増大させる方向)に付勢するタンクバネ66aが、ポンプタンク52b内にも同様のタンクバネ66bが設けられている。また、ポンプタンク52aの外側にはタンクバネ66aと直列方向にリミットバネ67aが、ポンプタンク52bの外側にもタンクバネ66bと直列方向にリミットバネ67bが設けられている。リミットバネ66aの先端に保持された当接板68aがアーム56aの作動片部57aに、リミットバネ67bの先端に保持された当接板68bがアーム56bの作動片部57bに当接する。
【0030】
よって、アーム56aが当接するカム55Aの下側の図8に示すカム面69Aの高さ位置に応じて作動片部57aの高さ位置が変わり、作動片部57aの高さ位置が低くなるとポンプタンク52aはタンクバネ66aの付勢力に抗して収縮して容積を減少させる。他方、作動片部57aの高さ位置が高くなるとポンプタンク52aはタンクバネ66aの付勢力で伸長し容積を増大させる。つまり、カム55Aはタンクバネ66aと協働してポンプタンク52aを伸縮させる。同様に、アーム56bが当接するカム55Bの下側のカム面69Bの高さ位置に応じて作動片部57bの高さ位置が変わることになり、その結果、カム55Bもタンクバネ66bと協働してポンプタンク52bを伸縮させる。他のポンプ51c,51dも同様である。
【0031】
図8に示すように、一方側のポンプ51a,51cのアーム56a,56cを当接させるカム55Aのカム面69Aは、キャリッジ23の一の移動方向(図8右方向)に沿って直線的に高さ位置が低くなるように傾斜しており、他方側のポンプ51b,51dのアーム56b,56dを当接させるカム55Bのカム面69Bは、キャリッジ23の一の移動方向に沿って直線的に高さ位置が高くなるように逆に傾斜している。これらカム55A,55Bは、カム面69A,69Bの傾斜角度が同じであって傾斜方向のみが逆となっており、鏡面対称の形状となっている。
【0032】
よって、キャリッジ23の一方向移動時には、一方の半数のポンプ51a,51cのカム55Aが、図8に示すように高さ位置が徐々に低くなることで、アーム56a,56cを下方向に揺動させる。これにより、ポンプ51aは、作動片部57aがポンプタンク52aをタンクバネ66aの付勢力に抗して収縮させ、ポンプタンク52aを縮小させることになり、ポンプタンク52a内にあったインクをサブタンク53aに供給する。ポンプ51cも同様に作動してポンプタンク52c内にあったインクをサブタンク53cに供給する。
【0033】
また、上記と同じキャリッジ23の一方向移動時に、他方の半数のポンプ51b,51dのカム55Bは、図8に示すように、逆に高さ位置が徐々に高くなる。これにより、ポンプ51bは、タンクバネ66b及びリミットバネ67bの付勢力でアーム56bを上方向に揺動させて、ポンプタンク52bを伸長させ、ポンプタンク52bを拡大させることになり、インクカートリッジ17からインクをポンプタンク52b内に吸引する。ポンプ51dも同様に作動してインクカートリッジ17からインクをポンプタンク52d内に吸引する。
【0034】
他方、キャリッジ23の逆方向移動時には、一方の半数のポンプ51a,51cのカム55Aが、図8に示すように高さ位置が徐々に高くなる。これにより、ポンプ51aは、タンクバネ66a及びリミットバネ67aの付勢力でアーム56aを上方向に揺動させて、ポンプタンク52aを伸長させ、ポンプタンク52aを拡大させることになり、インクカートリッジ17からインクをポンプタンク52a内に吸引する。ポンプ51cも同様に作動してインクカートリッジ17からインクをポンプタンク52c内に吸引する。
【0035】
また、上記と同じキャリッジ23の逆方向移動時に、他方の半数のポンプ51b,51dのカム55Bが、図8に示すように高さ位置が徐々に低くなることで、アーム56b,56dを下方向に揺動させる。これにより、ポンプ51bは、作動片部57bがポンプタンク52bをタンクバネ66bの付勢力に抗して収縮させ、ポンプタンク52bを縮小させることになり、ポンプタンク52b内にあったインクをサブタンク53bに供給する。ポンプ51dも同様に作動してポンプタンク52d内にあったインクをサブタンク53dに供給する。
【0036】
つまり、キャリッジ23の一方向移動時に、一方側の半数のポンプ51a,51cがポンプタンク52a,52cからサブタンク53a,53cにインクを供給するとともに、他方側の半数のポンプ51b,51dがポンプタンク52b,52dにインクを吸引することになる。また、キャリッジ23の逆方向移動時に、一方側の半数のポンプ51a,51cがポンプタンク52a,52cにインクを吸引するとともに、他方側の半数のポンプ51b,51dがポンプタンク52b,52dからサブタンク53b,53dにインクを供給することになる。
【0037】
よって、キャリッジ23が印刷のために往復移動すると、このキャリッジ23の駆動力によってポンプ51a〜51dがインクを吸引及び吐出することになる。なお、カム55A,55Bは、少なくとも上記したインクジェットヘッド21の印刷範囲全体に対して形成されている。つまり、インクジェットヘッド21が印刷を行う際には、必ず、一方側の半数のポンプ51a,51cと他方側の半数のポンプ51b,51dとが逆位相のポンプ動作を行うようになっている。
【0038】
図9に示すように、自己封止ユニット36は、ユニット本体81に、供給路82、中間路83及び排出路84が形成されている。そして、供給路82に形成された供給口82aに、流路51の下流側端部が接続され、排出路84に形成された排出口84aに、インクジェットヘッド21が接続されている。
供給路82と中間路83とを区画する壁部85には、流入口85aが形成されており、この流入口85aにて供給路82内のインクが中間路83内へ流入される。また、中間路83と排出路84とを区画する壁部86には、連通口86aが形成されており、この連通口86aにて中間路83内のインクが排出路84内へ流入される。
【0039】
中間路83内には、壁部86に支点部87が形成されており、この支点部87には、揺動棒91が揺動可能に支持されている。この揺動棒91には、その一端部に、壁部85側へ向かって屈曲する作動棒部92が一体に形成されており、この作動棒部92の先端には、壁部85に当接して流入口85aを閉鎖する閉鎖板93が形成されている。また、この閉鎖板93と壁部86との間には、圧縮バネ94が設けられ、この圧縮バネ94の付勢力によって閉鎖板93が壁部85側へ向かって付勢されている。また、揺動棒91の他端部には、壁部86側へ屈曲され、この壁部86の連通口86aに挿通された押圧棒部95が形成されている。
【0040】
また、ユニット本体81の排出路84側の側壁81aには、開口部96が形成されている。この開口部96には、その開口縁部に、液密性及び可撓性を有するフィルム97が液密的に連結されている。このフィルム97の排出路84側における中央部分には、押圧板98が固定されている。そして、この押圧板98に、揺動棒91の押圧棒部95の先端部が当接されている。また、押圧板98と壁部86との間には圧縮バネ99が取り付けられており、この圧縮バネ99の付勢力によって押圧板98が外側へ押し出されている。そして、この自己封止ユニット36では、閉鎖板93が、圧縮バネ94及び閉鎖板93に作用する圧力によって壁部85に押し付けられ、流入口85aが閉鎖される。
【0041】
そして、自己封止ユニット36では、フィルム97によって覆われた部分の容積の減少にともない押圧板98によって揺動棒91の押圧棒部95が押圧されると、揺動棒91が支点部87による連結箇所を中心として揺動することにより、閉鎖板93が壁部85から離間する。これにより、供給路82から流入口85aを通って中間路83及び排出路84へインクが流れ込み、インクジェットヘッド21へ供給される。
【0042】
そして、この自己封止ユニット36をインクジェットヘッド21の上流側に設けることにより、例えば、キャリッジ23の加減速などによって供給側におけるインクの圧力変動が発生したとしても、この圧力変動のインクジェットヘッド21への伝達が自己封止ユニット36によって遮断される。
これにより、圧力変動が伝達されることによるインクジェットヘッド21での意図しないインクの吐出、インクだれあるいは吐出不良による印刷のドット抜けなどの不具合が防止される。
【0043】
以上に述べた本実施形態のインク供給装置50によれば、キャリッジ23の一方向移動時に一方の半数のポンプ51a,51cのカム55Aがポンプタンク52a,52cを収縮させるとともに他方の半数のポンプ51b,51dのカム55Bがポンプタンク52b,52dを伸長させることになり、キャリッジ23の逆方向移動時に一方のカム55Aがポンプタンク52a,52cを伸長させるとともに他方のカム55Bがポンプタンク52b,52dを収縮させることになるため、キャリッジ23への負荷が一方向移動時と逆方向移動時とで均一化できることになる。つまり、図10に比較例を示すように、例えば、一つのポンプを一つのカムで吸引及び供給させたとき、図10中符号Aで示す吸引側のキャリッジ負荷は高く、図10中符号Bで示す供給側のキャリッジ負荷は低くなり、しかも、それぞれのキャリッジ負荷が移動方向に沿って変動し、これにより、印刷の品質に影響を及ぼすことになる。これに対して、本実施形態のインク供給装置50によれば、図11に示すように、吸引側と供給側とでキャリッジ負荷が均一化されるとともに平均化させて同一直線となり、キャリッジ負荷の変動が抑制されることになる。
【0044】
したがって、キャリッジ23の移動速度を均一化して印刷の品質を確保した上で、印刷中に常にインクをサブタンク53a〜53dに供給することができることになり、印刷作業中に別にインク供給動作を行う必要がないため、印刷処理のスループットを向上することができる。また、インクジェットヘッド21による印刷範囲外に別個のポンプ機構や加圧機構を設ける必要がなくなり、装置の小型化を図ることができる。
また、サブタンク53a〜53dに蓄えるインクの量が少量(少なくともキャリッジ23の往復分のインク量)で良いため、サブタンク53a〜53dの小型化が図れ、ヘッドの吸引クリーニング時に排出されるインク量も低減できる。さらに、インクジェットヘッド21の印刷領域中にカム55A,55B等を配置すれば良いため、キャリッジ23を印刷範囲外の位置に移動させる必要がなく、プリンタサイズの小型化が図れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る印刷装置の一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェットプリンタのプリンタカバーを開いた状態の斜視図である。
【図3】図1に示したインクジェットプリンタからプリンタケースを取り外した状態の斜視図である。
【図4】図1に示したインクジェットプリンタのインクカートリッジからキャリッジ上のインクジェットヘッドまでの部品の接続構造を示す部分斜視図である。
【図5】図1に示したインクカートリッジからキャリッジ上のインクジェットヘッドまでの構成を別の向きから見た部分斜視図である。
【図6】図1に示したインクジェットプリンタのインク供給装置を示す概略構成図である。
【図7】図6に示したインク供給装置の側面図である。
【図8】図6に示したインク供給装置の正面図である。
【図9】図1に示したインクジェットプリンタの自己封止ユニットの構造を示す断面図である。
【図10】比較例のキャリッジ負荷を示す特性線図である。
【図11】本実施形態のインク供給装置を用いた場合のキャリッジ負荷を示す特性線図である。
【符号の説明】
【0046】
1…インクジェットプリンタ(印刷装置)、17…インクカートリッジ(メインタンク)、21…インクジェットヘッド(ヘッド)、23…キャリッジ、50…インク供給装置(液体供給装置)、52a〜52d…ポンプタンク、55A,55B…カム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が貯留されたメインタンクと、
前記メインタンクから液体を引き込むポンプタンクと、
前記ポンプタンクから液体が供給されるヘッドと、
前記ヘッドが搭載されるとともに往復移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジの往復移動により前記ポンプタンクの容積を変化させてメインタンクからの液体を引き込むかまたは前記ヘッドに液体を供給させるカムと、を有する液体供給装置であって、
前記ポンプタンクが偶数設けられるとともに前記カムが逆位相に一対設けられ、
前記キャリッジの一方向移動時に、一方の前記カムによって一方の半数の前記ポンプタンクの容積が減少されるとともに他方の前記カムによって他方の半数の前記ポンプタンクの容積が増大され、
前記キャリッジの逆方向移動時に、一方の前記カムによって一方の半数の前記ポンプタンクの容積が増大されるとともに他方の前記カムによって他方の半数の前記ポンプタンクの容積が減少されることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体供給装置において、
前記カムは、前記キャリッジの往復移動範囲のうち少なくとも前記ヘッドによる液体の吐出範囲全体に設けられていることを特徴とする液体供給装置。
【請求項3】
搬送される媒体に対してヘッドからインクを吐出して印刷処理を行う印刷装置であって、
前記ヘッドへインクを供給する装置として、請求項1または2に記載の液体供給装置を備えていることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−143068(P2009−143068A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321416(P2007−321416)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】