説明

液体収容容器、水素製造装置及び燃料電池システム

【課題】あらゆる方向に傾いても安定して液体を供給できる液体収容容器、並びにこれを用いた水素製造装置及び燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の液体収容容器は、容器本体21と、蓋体10と、蓋体10を貫通して容器本体21の中心近傍まで延びた不撓管6aと、一端が不撓管6aに連結され、他端に導入口14を有する可撓管5aとを有し、液体を不撓管6a、可撓管5aを通じて導入口14から容器本体21内に導入する液体導入管11と、浮力により導入口14を液面上に浮かせる浮き13と、蓋体10を貫通して容器本体21の中心近傍まで延びた不撓管6bと、一端が不撓管6bに連結され、他端に吸水口8を有する第2可撓管5bとを有し、容器本体21内の液体を吸水口8から吸い込み、可撓管5b、不撓管6bを通じて外部に排出する液体排出管12と、重力により吸水口8を液体中に浸漬させる錘7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料、水などの液体を収容する液体収容容器、並びにこれを用いた水素製造装置及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、室温から100℃以下までの低温で動作し、迅速な起動停止、高出力密度化が可能であるなどの特徴を有するため、民生用コージェネレーションや自動車用などの移動体用発電器、携帯用電源として期待されている。
【0003】
一般的に、固体高分子型燃料電池は、電解質層としての水素イオン伝導性高分子電解質膜と、その両面に配された触媒層と、さらにその両面に配されたガス拡散層とからなる多孔質の電極基材で構成された電極・電解質一体化物(MEA:Membrane electrode assembly)を有している。
【0004】
固体高分子型燃料電池に用いる燃料としては、水素、エタノールなどが提案され、種々開発が行われているが、高エネルギー密度化が可能な点で、水素を燃料とする固体高分子型燃料電池が期待されている。
【0005】
固体高分子型燃料電池の燃料として用いられる水素を製造する方法としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、亜鉛などの水素発生物質を含む水素発生材料と水とを化学反応させて水素を発生させる方法が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、水素発生材料を収容する水素発生材料収容容器に水を供給し、水素発生材料収容容器において水素発生材料と水とを反応させて水素を発生させ、発生した水素を水素発生材料収容容器に設けられた水素排出管を通じて燃料電池に供給する水素製造装置が記載されている。ところが、水収容容器が傾いて、水供給管の吸水口が水面上に位置することとなった場合、水供給管内に空気が入り、水素発生物質収容容器に水を安定に供給できないことがある。この場合、水素発生量が低下し、安定した発電を行うことができない虞がある。しかし、このような問題に対する対応策について特許文献1には何ら提案されていない。
【0007】
これに対し、例えば、特許文献2では、燃料などの液体を貯蔵するタンク内から外部へ供給する可撓性の供給管の先端部に錘と浮きから成る液中浸漬手段を設け、タンク内の液面の上下変化や傾斜が生じても、供給管の先端部を液体中に浸漬させて液体を供給できる方法が提案されている。また、タンク本体と供給管との結合部周辺を蛇腹構造とすることで、タンク内の液体量が少なくなった場合に、それに追従して蛇腹部分を変化させて供給管の先端部を下降させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−105926号公報
【特許文献2】特開2007−335144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に記載の方法では、タンク内の液体量が特に少ない状態でタンクが上下逆さまになった場合、供給管内に空気が入り、安定した供給ができない虞がある。また、タンクの傾きに関わらず、タンク内に液体を回収する方法については何ら提案されていない。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、あらゆる方向に傾いても、安定して液体を供給できる液体収容容器、並びにこれを用いた水素製造装置及び燃料電池システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体収容容器は、液体を収容可能な容器本体と、上記容器本体を密閉するための蓋体と、上記蓋体を貫通して上記容器本体の中心近傍まで延びた第1不撓管と、一端が上記第1不撓管に連結され、他端に導入口を有する第1可撓管と、を有し、液体を上記第1不撓管、上記第1可撓管を通じて上記導入口から上記容器本体内に導入する液体導入管と、浮力により上記導入口を液面上に浮かせる浮きと、上記蓋体を貫通して上記容器本体の中心近傍まで延びた第2不撓管と、一端が上記第2不撓管に連結され、他端に吸水口を有する第2可撓管とを有し、上記容器本体内の液体を上記吸水口から吸い込み、上記第2可撓管、上記第2不撓管を通じて外部に排出する液体排出管と、重力により上記吸水口を液体中に浸漬させる錘と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の水素製造装置は、水との反応により水素を発生する水素発生材料に水を供給して水素を製造する水素製造装置において、気体と液体とを含む気液混合流体を、重力差によって気体と液体に分離する気液分離容器と、水素発生材料に供給する水を収容する、上記本発明の液体収容容器とを備え、水素発生材料と水との反応により発生した水素を含む気体中に含まれる液体成分は、上記気液分離容器によって分離され、上記液体収容容器に収容されることを特徴とする。
【0013】
本発明の燃料電池システムは、上記本発明の水素製造装置と、上記水素製造装置で製造された水素を燃料とする燃料電池とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、あらゆる方向に傾いても、安定して液体を供給できる液体収容容器、並びに、これを用いた水素製造装置及び燃料電池システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液体収容容器の一例を示す概略透視図である。
【図2】本発明の液体収容容器の他の例を示す概略透視図である。
【図3】本発明の液体収容容器の他の例を示す概略透視図である。
【図4】本発明の液体収容容器を備えた水素製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の液体収容容器を備えた水素製造装置の他の例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の水素製造装置に用いられる気液分離容器の一例を示す概略透視図である。
【図7】本発明の水素製造装置に用いられる気液分離容器の他の例を示す概略透視図である。
【図8】本発明の燃料電池システムに用い得る燃料電池の一例を示す断面概略図である。
【図9】図1に示す液体収容容器を異なる4方向に傾けた場合の、内部の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の液体収容容器は、液体を収容可能な容器本体と、上記容器本体を密閉するための蓋体と、上記蓋体を貫通して上記容器本体の中心近傍まで延びた第1不撓管と、一端が上記第1不撓管に連結され、他端に導入口を有する第1可撓管と、を有し、液体を上記第1不撓管、上記第1可撓管を通じて上記導入口から上記容器本体内に導入する液体導入管と、浮力により上記導入口を液面上に浮かせる浮きと、上記蓋体を貫通して上記容器本体の中心近傍まで延びた第2不撓管と、一端が上記第2不撓管に連結され、他端に吸水口を有する第2可撓管とを有し、上記容器本体内の液体を上記吸水口から吸い込み、上記第2可撓管、上記第2不撓管を通じて外部に排出する液体排出管と、重力により上記吸水口を液体中に浸漬させる錘と、を備えたことを特徴とする。これにより、あらゆる方向に傾いても、安定して液体を供給できる。また、液体導入管及び液体排出管は、容器本体の中心近傍まで不撓管で構成されているため、上記液体供給管と上記液体回収管の双方の絡まりを防止できる。
【0017】
本発明の水素製造装置は、水との反応により水素を発生する水素発生材料に水を供給して水素を製造する水素製造装置において、気体と液体とを含む気液混合流体を、重力差によって気体と液体に分離する気液分離容器と、水素発生材料に供給する水を収容する、上記本発明の液体収容容器とを備え、水素発生材料と水との反応により発生した水素を含む気体中に含まれる液体成分は、上記気液分離容器によって分離され、上記液体収容容器に収容されることを特徴とする。これにより、あらゆる方向に傾いても、安定して水素を製造することができる。そのため、本発明の水素製造装置は、燃料電池用の燃料源として利用できる。また、気液分離容器で分離した液体は、装置本体の傾き方向によらず、水素発生材料に供給される水として液体収容容器に収容されるため、水の利用効率を高めることができる。
【0018】
本発明の燃料電池システムは、上記本発明の水素製造装置と、上記水素製造装置で製造された水素を燃料とする燃料電池とを備えることを特徴とする。これにより、燃料電池システムの傾き方向によらず安定して水素を燃料電池に供給できるとともに、気液分離容器や液体収容容器からの逆流によって燃料電池に液体が混入することによる燃料電池の出力低下などの発生を防止できる。その結果、方向自在に燃料電池を安定に発電させることができる。
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態1では、本発明の液体収容容器の一例について説明する。図1は、本実施形態の液体収容容器を示す概略透視図である。
【0021】
図1に示す本実施形態の液体収容容器1は、上部に開口部(符号は付していない)を有し、液体を収容可能な容器本体21と、容器本体21の開口部を開閉させることにより、容器本体21を密閉可能な蓋体10と、液体を容器本体21内に導入する液体導入管11と、容器本体21内の液体を外部に排出する液体排出管12と、を有する角柱状の容器である。
【0022】
液体導入管11は、蓋体10を貫通して容器本体21の中心近傍まで延びた不撓管6aと、一端(末端)が不撓管6aに連結され、他端(先端)に導入口14を有する可撓管5aとからなり、外部にある液体は、不撓管6a、可撓管5aを通じて導入口14から容器本体21内に導入される。可撓管5aの先端近傍には、浮力により導入口14を液面上に浮かせる浮き13が設けられ、この浮き13には、導入口14を液面よりも高い位置に保持するための浮き用錘15が設けられている。これにより、導入口14は、液面よりも上に配置されるため、導入口14内に水4が逆流するのを防止できる。図1において、不撓管6a、6bの一部に接続管20が設けられている。この接続管20は、不撓性でも可撓性でも良い。不撓管6a、6bが重力方向下向きに曲がることによって、先端に錘7が設けられた後述する可撓管5bの折れを抑制することができる。
【0023】
液体排出管12は、蓋体10を貫通して容器本体21の中心近傍まで延びた不撓管6bと、一端(末端)が不撓管6bに連結され、他端(先端)に吸水口8を有する可撓管5bとからなり、容器本体21内の液体は、吸水口8から吸い込まれ、可撓管5b、不撓管6bを通じて外部に排出される。可撓管5bの先端には、重力により吸水口8を液体中に浸漬させるための錘7が設けられている。これにより、吸水口8は、錘7の作用により液体収容容器1内で重力方向に移動し、液体収容容器1がどのような方向に傾いたとしても容器内の液体と接触可能な状態となるため、液体収容容器1の傾き方向に関わらず、液体収容容器1内の液体を吸水口8から吸い込み外部に排出できる。
【0024】
上記液体排出管12及び上記液体導入管11は共に、容器本体21の中心近傍まで不撓管で構成されているため、互いに絡まるのを抑制できる。
【0025】
不撓管6aと可撓管5aの接続部、及び、不撓管6bと可撓管5bの接続部にはそれぞれ、3個の節部16が一定間隔で設けられている。これにより、可撓管5a、5bの折れ曲がる角度を緩和できる。
【0026】
不撓管6a、6bは、固定バンド9で固定されている。これにより、不撓管の強度を保持することに加え、ばらけることを抑制でき、可撓管同士がより絡まりにくくなる。
【0027】
液体収容容器1としては、不撓性を有し、耐熱性及び耐薬品性に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、硬質ポリプロピレン製のもの、アクリル樹脂製のもの、アルミニウム製のものなどが好適に用いられる。液体収容容器1が不撓性を有することで、液体収容容器1内の液体を外部に排出したときに、液体収容容器1の内圧が低下し、これに伴い吸引力が生じて外部から液体導入管11を通じて液体を導入することができる。液体収容容器1が可撓性材料からなる場合、液体収容容器1の内圧の低下に伴い、容器が撓み、外部から液体導入管11を通じて液体を効率的に導入することができないため、液体収容容器1は不撓性材料からなることが望ましい。液体収容容器1の形状としては、ここでは角柱状としたが、他に円柱状及び球状などの容器を採用できる。
【0028】
可撓管5a、5bとしては、中空でかつ可撓性を有するものであれば特に制限されないが、耐熱性及び耐薬品性などに優れたフロンチューブや、シリコンチューブが好適に用いられる。
【0029】
不撓管6a、6bとしては、耐熱性及び耐薬品性に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、硬質シリコン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、四フッ化エチレン、ポリサルフォンなどの樹脂製チューブ、SUS製パイプなどの金属パイプが好適に用いられる。
【0030】
錘7としては、耐薬品性に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、メッキを施した鉛製のものや、ステンレススチール製のものが好適に用いられる。また、錘7の重量は、例えば、捕集する液体が水である場合、その比重(d=1.0)以上であって、可撓管5bの浮力を差し引いた重量よりも大きければ特に制限されないが、錘の応答性から、比重(d≧10)以上が好ましい。錘7の大きさは、方向自在性を確保するため、壁面や配管に当たらない程度の大きさであれば特に問題にならないが、液体収容容器全体積の10%未満であることが好ましい。
【0031】
固定バンド9としては、腐食しにくいものであれば特に限定されないが、例えば容器と同じ材質のものを用いることができる。
【0032】
浮き13としては、内部に空気を保持できるものであれば特に限定されないが、耐熱性や耐薬品性などに優れたポリプロピレン製のものや、フッ素樹脂製のものなどが好適に用いられる。また、浮き13の外径は、浮力が得られる大きさであれば特に限定されないが、外径が10mm〜30mmの小型の浮きが望ましい。これは、小型の方が、液体収容容器1の内容積を最大限に使用することができるためである。
【0033】
浮き用錘15としては、錘7と同様に耐薬品性に優れたものであれば特に限定されず、例えば、メッキを施した鉛製のものや、ステンレススチール製の錘が好適に用いられる。
【0034】
節部16としては、中空であれば特に限定されないが、耐熱性及び耐薬品性などに優れたフロンチューブや、シリコンチューブが好適に用いられる。また、節部16の幅は、可撓管5a、5bの内径よりも大きければ特に限定されないが、2mm〜10mmの範囲が望ましい。また、節部16の個数は、可撓管5a、5bの折れ曲がりが防止できるのであれば特に限定されないが、2個〜5個が好ましい。
【0035】
ここで、不撓管6a、6bの内部側端部を液体収容容器1の中心近傍に配置する理由について説明する。不撓管6a、6bの内部側端部が液体収容容器1の中心近傍に配置されている場合、可撓管5a、5bの長さは、図1に示す容器が傾いていない状態(通常の状態)において、液体収容容器1の中心近傍から液体収容容器1の内部側底面に達する長さとなる。この場合、容器が上下逆さまになったとしても、可撓管5aの先端部を液面上に浮かせることで、逆流させることなく液体を導入することができ、また、可撓管5bの先端部は容器の底部に届くため、液体を排出可能である。しかし、不撓管6a、6bの内部側端部を液体収容容器1の中心近傍より上側に配置した場合、可撓管5a、5bの長さが長くなるため、互いに絡まりやすくなる。一方、不撓管6a、6bの内部側端部を液体収容容器1の中心近傍より下側に配置した場合、可撓管5a、5bの長さが短くなるため、容器内の貯留水量が多い状態で容器が上下逆さまになると、可撓管5aの先端部にある導入口14を液面上に浮かせることができなくなったり、容器内の貯留水量が少ない状態で容器が上下逆さまになると、可撓管5bの先端部にある吸水口8が容器の底部に届かず、水を排出できなくなったりする。よって、不撓管6a、6bの内部側端部は液体収容容器1の中心近傍に配置するのが望ましい。
【0036】
本実施形態の液体収容容器1の動作について図1及び図9を用いて説明する。図9は、図1に示す液体収容容器1を異なる4方向に傾けた場合の模式図であり、図9Aは通常の状態(傾いていない状態)、図9Bは左に90度傾いた状態、図9Cは右に90度傾いた状態、図9Dは上下逆さまになった状態を示している。
【0037】
図9Aに示すように液体収容容器1が通常の状態の場合、液体収容容器1内に収容されている水4は、錘7の作用によって容器底部に位置する吸水口8から吸引されて可撓管5b、不撓管6bを通じて外部に排出される。このとき、液体収容容器1の内圧が低下し、これに伴い液体導入管11の容器外部から容器内部側へ吸引する力が生じる。この吸引力を用いて外部の水が、液体導入管11の不撓管6a、可撓管5aを通じて導入口14から容器本体21内に導入される。
【0038】
一方、図9B〜Dに示すように液体収容容器1を傾けた場合、吸水口8は、錘7の作用によって常に容器底部に移動し、導入口14は、浮き13の作用によって常に液面上に位置している。そのため、図9B〜Dのように傾いた状態でも、吸水口8から水4を吸い込んで外部に排出できる。つまり、液体収容容器1の傾きに関わらず、安定して液体を供給可能である。また、浮き13の浮き用錘15によって導入口14は常に液面に対して上向き配置されるため、液体収容容器1内の水4が導入口14内に侵入するのを防ぐことができる。
【0039】
(実施形態2)
本実施形態2では、本発明の液体収容容器の他の例について説明する。図2は、本実施形態の液体収容容器を示す概略透視図である。図2において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
本実施形態の液体収容容器2は、図2に示すように、容器本体22の形状が略円柱状であること以外は、上記実施形態1と同じ構成である。容器本体22の形状を略円柱状としたことにより、上記実施形態1のような角柱状の容器1に比べて角部が少ないため、液体収容容器2が傾いたとしても吸水口8が液体に浸漬しやすくなり、より安定して液体を排出することができる。
【0041】
(実施形態3)
本実施形態3では、本発明の液体収容容器の他の例について説明する。図3は、本実施形態の液体収容容器を示す概略透視図である。図3において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
本実施形態の液体収容容器3は、図3に示すように、容器本体21の底面部に給水用蓋体17を設置したこと、蓋体10に安全弁18を設置したこと、液体導入管11と液体排出管12の双方に着脱機構として例えばコネクタ19を設置したこと以外は、上記実施形態1と同じ構成である。
【0043】
上記実施形態1の場合、給水の際、蓋体10を取り外すとともに、蓋体10に取り付けられている液体導入管11及び液体排出管12を全て外部に取り出す必要があり、給水作業を繰り返すうちに液体導入管11、液体排出管12や、これらに設けられている浮き13、錘7が損傷する虞がある。また、給水の終了後、蓋体10を容器本体21に取り付ける際には、取り出した液体導入管11、液体排出管12、浮き13、錘7を容器本体21内に収容しなければならず、手間がかかる。これに対し、本実施形態では、給水用蓋体17を容器本体21の下部に別途設置することで、蓋体10を取り外さなくても容器本体21内に給水することが可能となるため、上記のような問題を解決でき、長期に亘り安定に使用することができる。
【0044】
安全弁18は、液体収容容器3の内圧が安全領域を越えると外部に開放する逆止弁であり、一般的に用いられる安全弁を用いることができる。安全弁18の開弁圧は、液体収容容器3の大きさによるが、50kPaから200kPaの範囲が好適に用いられる。安全弁18としては、通常、水素を含め、内圧上昇時に外部にガスが排出される機構であれば特に限定されないが、減圧弁、安全弁、逃がし弁(チェックバルブ)などの、一定の圧力変動以上で自然にガスが排出される構造を有する圧力制御弁などが好適に用いられる。また、上記例示の弁を電気的に駆動可能な電磁弁とすることで、電気的に制御することもできる。
【0045】
コネクタ19は、液体導入管11及び液体排出管12の容器本体21外側に設けられている。このコネクタ19によって、液体導入管11の先に接続される例えば気液分離容器や、液体排出管12の先に接続される例えば水素発生材料収容容器から、液体収容容器3ごと切り離すことができる。例えば、液体収容容器3を燃料電池システムのカートリッジとして用いる場合、液体収容容器3内の水が減少すると、コネクタ19によって簡便に燃料電池システムから取り外し、新しく所定量の水4が収容された液体収容容器3と取り替えることができるため、液体の補充場所まで燃料電池システムを持ち出さなくても良くなり、簡便に液体を補充することができる。コネクタ19としては、耐熱性、耐薬品性及び強度に優れたものであれば特に限定されないが、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、四フッ化エチレン、ポリサルフォンなどの樹脂製のものが好適に用いられる。
【0046】
(実施形態4)
本実施形態4では、本発明の液体収容容器を含む水素製造装置の一例を説明する。図4は、本実施形態の水素製造装置を示す概略構成図である。図4において、図1と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、図4における液体収容容器1は、図1を簡略化して表したものである。
【0047】
図4に示す本実施形態の水素製造装置100aは、水との反応により水素を発生する水素発生材料504を収容する水素発生材料収容容器503と、水4が収容されている液体収容容器1と、液体収容容器1内の水4を水素発生材料収容容器503に輸送する輸送部としての例えばポンプ301と、気液混合流体を気体と液体に分離する気液分離容器101と、気液分離容器101により気液混合流体から分離された液体を液体収容容器1に回収するための三方バルブ401とを備え、水素発生材料504と水4とを発熱反応させることにより水素を製造し、この水素を、例えば、水素を燃料として用いる燃料電池700に供給する。なお、液体収容容器1については上記実施形態1で説明したので、その詳細な説明を省略する。
【0048】
本実施形態における気液分離容器101は、気液混合流体を導入する導入管105、気液混合流体から分離された液体を排出する2つの排液管102、気液混合流体から分離された気体を排出する排気管106を有する半球状の容器である。図4において、2つの排液管102のうち、一方は、配管205を介して液体収容容器1に連結され、他方は、配管207、三方バルブ401、ポンプ301、配管201を介して液体収容容器1に連結されている。導入管105は、配管203を介して水素発生材料収容容器503に連結されている。排気管106は、配管204を介して燃料電池700に連結されている。
【0049】
ここで、本発明の水素製造装置が気液分離容器を備える理由について説明する。水素発生材料収容容器503内では、水素発生材料504と水4とが反応して水素が発生し、発生した水素は、水素発生材料収容容器503に設けられた水素排出路(図4では、配管203及び配管204)から排出され、例えば燃料電池700に供給される。ところが、水素発生材料504と反応しなかった水や水蒸気などの水分が、水素と共に水素排出路を通じて燃料電池700に供給され、燃料電池700の出力低下などの不具合が生じる場合がある。これに対し、本発明では、水素排出路の途中(図4では、配管203と配管204との間)に気液分離容器を設け、配管204から排出される水素を含む気体中の液体成分量を削減することができ、これにより、水分が供給されることによる燃料電池700の不具合を防止できる。
【0050】
気液分離容器としては、耐熱性及び耐腐食性に優れ、容器が変形しない不撓性材料からなるものであれば特に限定されないが、水や水素が漏れない材質や、50kPa程度の減圧及び加圧などの内圧変動に耐えうる構造がより好ましい。具体的な容器の材質としては、水及び水素を透過しにくく、かつ120℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、アクリル樹脂、硬質のポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂を用いることができる。また、容器の形状としては、ここでは半球状としたが、他に角柱状、円柱状、球状などが採用できる。
【0051】
以下に、本実施形態の気液分離容器101の詳細な構成について図6を用いて説明する。図6は、本実施形態における気液分離容器101の内部の様子を示す概略透視図である。
【0052】
図6において、各排液管102は、気液分離容器101の上面に配置され、気液分離容器101の内部から外部に延伸されたものである。この排液管102は、気液分離容器101の内部側に第1開口部(符号は付していない)を有し、液体を気液分離容器101の内部から外部に排出する。各排液管102の第1開口部にはそれぞれ、可撓性を有する吸水管103の末端部が接続されており、吸水管103の先端部には錘104が設けられている。吸水管103は錘104の作用により曲がり、吸水管103の吸水口109は気液分離容器101内で重力方向に移動し、気液分離容器101がどのような方向に傾いても気液分離容器101内に貯留する液体と接触可能な状態となる。これにより、気液分離容器101の傾きに関わらず、気液分離容器101内に貯留する液体を吸い込んで排出できる。
【0053】
また、2つの吸水管103は、互いに絡まないように固定バンド110で固定されている。これにより、吸水管103の曲がる角度を制限し、吸水管103同士の絡みつきや、吸水管103と排液管102または吸気管107との絡みつきを抑制可能である。なお、上記絡みつきを抑制する効果は、固定バンド110に限定されるものではなく、複数の吸水管103を接続する他の機構によっても得ることができる。例えば、錘104が複数の吸水管103を固定する役割を兼ねるものであれば、固定バンド110の設置を省略でき、固定バンド110が外れるなどの問題を回避することもできる。
【0054】
導入管105は、気液分離容器101の上面に配置され、気液分離容器101の内部から外部へ延伸されたものである。この導入管105は、気液分離容器101の内部側に第2開口部(符号は付していない)を有し、気液混合流体を気液分離容器101の外部から内部に導入する。
【0055】
排気管106は、気液分離容器101の上面に配置され、気液分離容器101の内部から外部へ延伸されたものである。この排気管106は、気液分離容器101の内部側に第3開口部(符号は付していない)を有し、気体を気液分離容器101の内部から外部に排出する。この排気管106の第3開口部には吸気管107の末端部が接続されており、吸気管107の先端部は気液分離容器101の中心部に配置されており、先端部の開口部である吸気口108から気液分離容器101内の気体を吸い込み排気管106内へ輸送する。これにより、気液分離容器101内に貯留する液体の液面が吸気口108にまで達しない限り、気液分離容器101がどのような方向に傾いても、吸気口108が気液分離容器101内の液体と接触するのを回避し、排気管106方向への液体の侵入を抑制できる。なお、図6において、排気管106と吸気管107は、区分不可能なように一体的に形成されている。
【0056】
排液管102、導入管105及び排気管106としては、耐熱性、耐薬品性及び強度に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、PTFE、硬質シリコン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、四フッ化エチレン、ポリサルフォンなどの樹脂製チューブ、SUS製パイプなどの金属パイプが好適に用いられる。
【0057】
吸水管103としては、中空でかつ可撓性を有するものであれば特に限定されないが、耐熱性及び耐薬品性などに優れたフロンチューブや、シリコンチューブが好適に用いられる。
【0058】
錘104としては、耐薬品性に優れたものであれば特に限定されないが、例えば、メッキを施した鉛製のものや、ステンレススチール製のものが好適に用いられる。また、錘104の重量は、例えば、捕集する液体が水である場合、その比重(d=1.0)以上であって、吸水管103の浮力を差し引いた重量よりも大きければ特に限定されないが、錘の応答性から、比重(d≧10)以上が好ましい。錘104の大きさは、方向自在性を確保するため、壁面や配管に当たらない程度の大きさであれば、特に問題にならないが、気液分離容器101全体積の10%未満であることが好ましい。
【0059】
吸気管107としては、耐熱性及び耐薬品性に優れたものであれば、特に限定されないが、PTFEチューブや、硬質シリコンチューブなどが好適に用いられる。吸気管107の形状は、気液分離容器101の中心に吸気口108を配置できる形状であれば特に限定されないが、錘104によりあらゆる方向に移動する吸水管103と絡まないように配置することがより好ましい。
【0060】
固定バンド110としては、腐食しにくいものであれば特に限定されないが、例えば容器と同じ材質のものを用いることができる。
【0061】
このような構成の気液分離容器101内に気液混合流体が導入されると、気液混合流体中の液体は、排液管102の方向に排出され、気液混合流体中の気体は、排気管106の方向に排出される。例えば、気液混合流体が水と水素を含むものである場合、導入管105から気液分離容器101内に導入された気液混合流体中の水は、気液分離容器101がどのような方向に傾いたとしても、気液分離容器101内において重力方向下向きに溜まる。そして、この貯留水は、錘104の作用により重力方向に曲がった吸水管103の吸水口109から吸い込まれ、吸水管103を経て排液管102方向に排出される。このときの排水の動力源は、例えば、排液管102の流路上にポンプを経由し、送液する場合や、また液体収容容器から水素発生材料収容容器へ送液するポンプの作用によって、気液分離容器101の外部に排液させることができる。一方、気液混合流体中の水素は、気液分離容器101の中心に設置した吸気口108より吸い込まれ、吸気管107を経て、排気管106方向に排出される。この排出された水素を、燃料電池の水素源にすることができる。
【0062】
以上で図6を用いた気液分離容器101の説明を終わり、図4の説明に戻る。
【0063】
図4において、水素発生材料収容容器503は、水素を発生させる水素発生材料504を収納可能であれば、その材質や形状は特に限定されないが、水や水素が漏れない材質や形状が好ましい。具体的な容器の材質としては、水及び水素を透過しにくく、かつ120℃程度に加熱しても容器が破損しない材質が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄などの金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂を用いることができる。また、容器の形状としては、角柱状、円柱状などが採用できる。
【0064】
水素発生材料収容容器503及び液体収容容器1は、脱着式とすることができる。例えば、水素発生材料収容容器503の水供給管(符号は付していない)及び水素排出管(符号は付していない)、液体収容容器1の液体導入管11及び液体排出管12のそれぞれに、上記実施形態3で説明したコネクタ19(図3)を設け、水素発生材料収容容器503内の水素発生材料504が消費されつくしたり、液体収容容器1内の水がなくなったりした場合に、コネクタ19によってこれら水素発生材料収容容器503及び液体収容容器1を取り外し、所定量の水素発生材料504が充填された水素発生材料収容容器503、及び所定量の水が充填された液体収容容器1と取り替えることで、再び水素を製造することができる。
【0065】
液体収容容器1に収容する水は、中性の水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液など、少なくとも水を含む液体であればよく、使用する水素発生材料504との反応性などに応じて好適なものを選択すればよい。
【0066】
水素発生材料収容容器503に収容される水素発生材料504としては、水と反応して水素を発生させる水素発生物質を含むものであれば特に制限はないが、水と120℃以下の低温で反応して水素を発生し得る水素発生物質を含むことが望ましい。
【0067】
水素発生物質としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウムといった金属や、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、及びマグネシウムの中の一種以上の元素を主体とする合金、さらには、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムといった金属水素化物などが好適に使用できる。上記合金を用いる場合、主体となる元素以外の金属成分は特に限定されない。主体となる元素とは、合金全体に対して50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含有されている元素のことを意味する。なお、水素発生物質としては、上記例示のものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
水素発生材料504は、水と反応して発熱する発熱物質(水素発生物質以外の物質)をさらに含むことが好ましい。この場合、低温(例えば5℃程度)の水を供給しても、上記発熱物質の発熱によって反応系内の温度を高めて、迅速な水素発生が可能となる。水と反応して発熱する発熱物質としては、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウムなど、水との反応により水酸化物となるか、あるいは、水和することにより発熱するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、塩化物、硫酸化合物などが挙げられる。
【0069】
次に、本実施形態の水素製造装置100aの動作について図4を用いて説明する。
【0070】
液体収容容器1に収容されている水4は、ポンプ301を駆動させることによって、配管201及び配管202を通じて水素発生材料収容容器503に輸送される。液体収容容器1は上述したように方向自在性を有するため、水素製造装置100aがどのような方向に傾いても安定して水4を供給可能であり、これにより、安定して水素を製造できる。
【0071】
水素発生材料収容容器503内では、水素発生材料504と水4とが反応して水素が発生し、この水素は配管203に排出される。水素と共に水蒸気が配管203に排出された場合、水蒸気は配管203内で冷却されて水となり、水と水素との気液混合流体が気液分離容器101の導入管105に導入されることになる。気液分離容器101内では、上記気液混合流体は、重力差により、水素を含む気体と、水とに分離される。
【0072】
分離された水素を含む気体は、排気管106及び配管204を通じて燃料電池700に供給される。気液分離容器101は上述したように方向自在性を有するため、水素製造装置がどのような方向に傾いても気液分離を行うことができ、燃料電池700に安定して水素を供給可能であるとともに、水分が供給されることにより燃料電池700に不具合が生じるのを回避できる。
【0073】
一方、分離された水は、以下のようにして液体収容容器1に回収され、水素発生材料収容容器503に供給される水4として再利用される。これにより、水の利用効率を高めることができる。さらに、水素製造用の水を収容している液体収容容器1を回収容器としても利用するため、気液分離容器101で分離された水を回収するための回収容器を別途備える必要がなく、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0074】
以下に、気液分離容器101内で分離された水を液体収容容器1に回収する機構について詳述する。
【0075】
ポンプ301を用いて液体収容容器1内の水4を水素発生材料収容容器503に一定割合で供給している間は、液体収容容器1の容器が不撓性の材料でかつ密閉構造であるため、容器内部の圧力が減圧状態になる。この減圧状態を補償するように、液体収容容器1に接続された他の配管205内において、気液分離容器101の排液管102側から液体収容容器1側の方向に吸引力が生じる。この現象を利用することにより、気液分離容器101内の貯留水を、液体収容容器1に回収することができる。そのため、配管205の途中に、気液分離容器101内の水を液体収容容器501へ輸送するポンプを設ける必要がなく、省電力化できる。
【0076】
一方、燃料電池700の発電終了時など水素を製造する必要がない場合は、ポンプ301の駆動を停止して水素発生材料収容容器503への水供給を停止するが、水供給を停止してもしばらくの間は、水素発生材料収容容器503内に残留する水4と水素発生材料503が反応して水素が発生し、これに伴い水が生じ、この水が気液分離容器101内に溜まる。そのため、上記水供給の停止後一定時間、気液分離容器101内から水を回収する必要がある。そこで、本実施形態では、三方バルブ401を配管207と配管201が通じる方向に切り替え、ポンプ301を、液体収容容器1から水素発生材料収容容器503へ送液する方向とは逆向きに動作させることによって、気液分離容器101内に溜まった水を配管207、三方バルブ401、ポンプ301、配管201を通じて液体収容容器1に回収する。上述したように、気液分離容器101及び液体収容容器1はどちらも方向自在性を有しているため、水素製造装置がどの方向に傾いたとしても気液分離容器101内の水を逆流させることなく回収することができる。さらに、液体収容容器1へ回収した水の体積分に相当する気体(空気)が、液体収容容器1から配管205、配管204を経て燃料電池700に送られる。この場合、液体収容容器1の浮き13によって液体導入管11の先端部にある導入口14(図1)は液面上にあるため、液体収容容器1内の水4が導入口14(図1)内に侵入して配管205を通じて気液分離容器101へ誤って送液されることを防止できる。また、液体収容容器1及び気液分離容器101の内圧も高くならないため、安全である。
【0077】
(実施形態5)
本実施形態5では、本発明の液体収容容器を含む水素製造装置の他の例について説明する。図5は、本実施形態の水素製造装置を示す概略構成図である。図5において、図3及び図4と同一構成要素については同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、図5における液体収容容器3は、図3を簡略化して表したものである。上記実施形態4と異なる点は、上記実施形態1の液体収容容器1に代えて、上記実施形態3の液体収容容器3を備えた点、図6に示す気液分離容器101に代えて、図7に示す気液分離容器111を備えた点、三方バルブ401を設けず、ポンプ302を設けた点である。
【0078】
図5に示す本実施形態の水素製造装置100bは、水との反応により水素を発生する水素発生材料504を収容する水素発生材料収容容器503と、水4が収容されている液体収容容器3と、液体収容容器3内の水4を水素発生材料収容容器503に輸送する輸送部としての例えばポンプ301と、気液混合流体を気体と液体に分離する気液分離容器111と、気液分離容器111により気液混合流体から分離された液体を液体収容容器3に輸送する輸送部としての例えばポンプ302とを備え、水素発生材料504と水4とを発熱反応させることにより水素を製造し、この水素を、例えば、水素を燃料として用いる燃料電池700に供給する。なお、液体収容容器3については上記実施形態3で説明したので、その詳細な説明を省略する。
【0079】
本実施形態における気液分離容器111は、図7に示す構成を有するものであり、排液管102及び吸水管103が一つであること、固定バンド110が無いこと以外は、図6に示す気液分離容器101と同じ構成である。各構成については上記実施形態4で説明したので、ここでは省略する。図5において、排液管102は、配管205、ポンプ302、配管206を介して液体収容容器3に連結され、導入管105は、配管203を介して水素発生材料収容容器503に連結され、排気管106は、配管204を介して燃料電池700に連結されている。
【0080】
次に、本実施形態の水素製造装置100bの動作について説明する。なお、水素の製造、及び、気液分離についての動作は、上記実施形態4と同じであるため、ここではその説明を省略する。上記実施形態4と異なる点は、気液分離容器111内の貯留水を回収する機構であり、以下に詳述する。
【0081】
本実施形態では、ポンプ301による液体収容容器3から水素発生材料収容容器503への水供給の実行中あるいは停止中に関わらず、気液分離容器111内の貯留水は、ポンプ302によって液体収容容器3内へ輸送される。ポンプ302を用いることで、液体収容容器3から気液分離容器111への水の逆流を防止することができる。
【0082】
また、本実施形態では、常に、液体収容容器3の内圧が一定圧以上にならないように安全弁18を用いて制御している。特に、水素発生材料収容容器503への水供給を停止中にポンプ302を駆動させて気液分離容器111内の水を回収する場合、液体収容容器3の内圧が上昇するため、安全弁18を用いて内圧の上昇を抑えることができる。
【0083】
(実施形態6)
本実施形態6では、本発明の燃料電池システムの一例について説明する。
【0084】
本実施形態の燃料電池システムは、上記実施形態4または5の水素製造装置と、該水素製造装置により製造された水素を用いて発電する燃料電池とを備えている。これにより、燃料電池システムの傾き方向によらず安定して水素を燃料電池に供給できるとともに、気液分離容器や液体収容容器からの逆流によって燃料電池に液体が混入することによる燃料電池の出力低下などの発生を防止できる。その結果、方向自在に燃料電池を安定に発電させることができる。
【0085】
ここで、燃料電池の一例について図8を用いて説明する。図8は、本発明の燃料電池システムに用い得る燃料電池の一例を示す断面概略図である。
【0086】
図8に示す本実施形態における燃料電池700は、電気的に直列に接続された複数の膜電極接合体(MEA)710を有し、水素を燃料源として発電するものである。なお、図8では、3つのMEA710が組み合わさって一つの燃料電池700を構成している状態を示しているが、これは一例であり、一単位としての燃料電池におけるMEAの数は3つに限定されず、また、複数のMEAから構成される一単位の燃料電池を、複数接続して全体を一つの燃料電池とすることもできる。
【0087】
図8において、燃料電池700は、正極拡散層711及び正極触媒層712からなる正極と、固体高分子電解質膜713と、負極拡散層715及び負極触媒層714からなる負極とが、順次積層されてなるMEA710を3個有する。ここでは、3個のMEA710は平面状に配置されている。
【0088】
各MEA710の正極側には、正極集電プレート724、正極絶縁プレート722及び正極パネルプレート720が順次配置されている。また、各MEA710の負極側には、負極集電プレート726、負極絶縁プレート723及び負極パネルプレート721が順次配置されている。そして、全てのMEA710が、正極パネルプレート720と負極パネルプレート721とに挟持されて一体化している。また、図8では明らかにしていないが、隣り合うMEA710同士は、正極集電プレート724と負極集電プレート726との電気的接続によって、直列に接続されている。
【0089】
正極集電プレート724、正極絶縁プレート722及び正極パネルプレート720には、燃料電池700外の酸素を正極に導入するための酸素導入孔が複数設けられている。そして、正極集電プレート724の酸素導入孔、正極絶縁プレート722の酸素導入孔及び正極パネルプレート720の酸素導入孔により、正極パネルプレート720の外表面からMEA710の正極拡散層711にまで到達する複数の正極開口部730が形成され、これら正極開口部730から、燃料電池外の酸素(空気)が拡散により正極拡散層711に供給される。
【0090】
負極集電プレート726、負極絶縁プレート723及び負極パネルプレート721には、燃料タンク部729内の燃料を負極に導入するための燃料導入孔が複数設けられている。そして、負極集電プレート726の燃料導入孔、負極絶縁プレート723の燃料導入孔及び負極パネルプレート721の燃料導入孔により、負極パネルプレー721の燃料タンク部729側表面からMEA710の負極拡散層715にまで到達する複数の負極開口部731が形成され、これら負極開口部731から、燃料タンク部729内の燃料(水素)が負極拡散層715に供給される。
【0091】
正極パネルプレート720と負極パネルプレート721(更には燃料タンク部729)は、ボルト732とナット733によって固定されている。図8中、728a及び728bはシール部である。
【0092】
正極拡散層711及び負極拡散層715は、多孔性の電子伝導性材料などから構成され、例えば、撥水処理を施した多孔質炭素シートなどが用いられる。なお、正極拡散層711や負極拡散層715の触媒層側には、更なる撥水性向上及び触媒層との接触向上を目的として、フッ素樹脂粒子[PTFE樹脂粒子など]を含む炭素粉末のペーストが塗布されている場合もある。
【0093】
正極触媒層712は、正極拡散層711を介して拡散してきた酸素を還元する機能を有する。正極触媒層712は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有する。また、必要に応じて、樹脂バインダを更に含有していてもよい。
【0094】
正極触媒層712で用いられる触媒としては、酸素を還元できるものであれば特に制限はないが、例えば、白金微粒子が挙げられる。上記触媒は、鉄、ニッケル、コバルト、錫、ルテニウム及び金よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素と白金との合金で構成される微粒子などであってもよい。
【0095】
触媒の担体である炭素粉末としては、例えば、BET比表面積が10〜2000m2/gであり、平均粒子径が20〜100nmのカーボンブラックなどが用いられる。炭素粉末への上記触媒の担持は、例えば、コロイド法などで行うことができる。炭素粉末と触媒との含有比率としては、例えば、炭素粉末100質量部に対して、触媒が5〜400質量部であることが好ましい。このような含有比率であれば、十分な触媒活性を有する正極触媒層が構成できるからである。例えば、炭素粉末上に触媒を析出させる方法(例えば、コロイド法)で触媒担持炭素粉末が作製される場合には、炭素粉末と触媒とが上記の含有比率であれば、触媒の径が大きくなりすぎず、十分な触媒活性が得られるからである。
【0096】
正極触媒層712に含まれるプロトン伝導性材料としては、特に制限はないが、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂などのスルホン酸基を有する樹脂を用いることができる。ポリパーフルオロスルホン酸樹脂としては、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。
【0097】
正極触媒層712におけるプロトン伝導性材料の含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、2〜200質量部であることが好ましい。プロトン伝導性材料が上記の量で含有されていれば、正極触媒層において十分なプロトン伝導性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0098】
正極触媒層712に係るバインダとしては、特に制限はないが、例えば、PTFE、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(E/TFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などのフッ素樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、アイオノマー、ブチルゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体及びエチレン・アクリル酸共重合体などの非フッ素樹脂などを用いることができる。
【0099】
正極触媒層712におけるバインダの含有量は、触媒担持炭素粉末100質量部に対して、0.01〜100質量部であることが好ましい。バインダが上記の量で含有されていれば、正極触媒層について十分な結着性が得られ、電気抵抗値が大きくなりすぎず、電池性能の良好な燃料電池を得ることができるからである。
【0100】
負極触媒層714は、負極拡散層715を介して拡散してきた水素などの燃料を酸化する機能を有している。負極触媒層714は、例えば、触媒を担持した炭素粉末(触媒担持炭素粉末)と、プロトン伝導性材料とを含有している。必要に応じて、樹脂などのバインダを更に含有していてもよい。
【0101】
負極触媒層714に係る触媒は、水素などの燃料を酸化できれば特に制限はなく、例えば、正極触媒層712に係る触媒として例示した上記の各触媒を用いることができる。負極触媒層714に係る上記炭素粉末、プロトン伝導性材料、及びバインダについても、正極触媒層712に係る炭素粉末、プロトン伝導性材料、及びバインダとして例示した上記の各材料を用いることができる。
【0102】
固体高分子電解質膜713は、プロトンを輸送可能であり、かつ電子伝導性は示さない材料で構成された膜であれば、特に制限はない。固体高分子電解質膜713を構成し得る材料としては、例えば、ポリパーフルオロスルホン酸樹脂、具体的には、デュポン社製の「ナフィオン(登録商標)」、旭硝子社製の「フレミオン(登録商標)」、旭化成工業社製の「アシプレックス(商品名)」などが挙げられる。その他、スルホン化ポリエーテルスルホン酸樹脂、スルホン化ポリイミド樹脂、硫酸ドープポリベンズイミダゾールなども、固体高分子電解質膜713の材料として用いることができる。
【0103】
なお、図8では示していないが、燃料電池の有するMEAは、正極と負極とを、例えば、抵抗及びスイッチを介してリード体などで接続するなどして、導通可能なように形成されていることが好ましい。この場合、燃料電池による発電の終了時に、上記のスイッチを入れるなどしてMEAに係る正極と負極とを短絡させて、燃料電池内に残留する水素を消費できる。そのため、燃料電池による発電の終了時に燃料電池内に残留する水素による燃料電池の劣化を抑制できる。
【0104】
燃料電池に係るMEAにおいて、正極と負極とを、上記のように抵抗を介して導通可能なように構成する場合、かかる抵抗としては、例えば、燃料電池システムに係る燃料電池の停止後、MEAの正極−負極間の電圧が0.1V以下となるのに要する時間が1分以内となるような抵抗値を有するものを用いればよく、抵抗を用いなくても、このような時間でMEAの正極−負極間の電圧を上記のように下げることができるのであれば、抵抗を用いずにスイッチのみを介してリード体などで接続して、導通可能としてもよい。
【実施例】
【0105】
下記実施例に基づいて本発明の液体収容容器の効果について詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。
【0106】
(実施例1)
図1に示す液体収容容器1を、図9に示すように異なる方向に傾けた。液体収容容器1をいずれの方向に傾けても、安定に外部へ液体を液体供給管12から供給することができ、また液体回収管11より液体が漏れ出すことはなかった。液体収容容器1としては、不撓性を有する高密度ポリエチレン製で、直径が50mmの円柱状容器を用いた。
【0107】
これは、不撓管6bが液体収容容器1の中心部付近まで張り出していることと、可撓管5bと不撓管6bの接続部分に設置した節部16の作用によって、例えば図9Dに示すように、錘7の作用により可撓管5bが重力方向に大きく曲がった状態であっても、液体排出管12に接続された可撓管5bは、節部16によって折れ曲がり角度が緩和され、完全に折れ曲がることなく液体を供給することができる。一方、浮き13の作用によって導入口14は常に液面上にあるため、液体収容容器1が傾いても、液体収容容器1内の水が液体導入管11を通じて容器外に漏洩するのを抑制できたと考えられる。このように、本発明の液体収容容器1は、どの方向に傾けても、安定して液体を供給することができることから、方向自在性を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の液体収容容器は、あらゆる方向に傾いても安定して液体を供給することのできる容器として様々な分野で利用可能である。本発明の水素製造装置は、例えば、燃料電池用の燃料源として利用可能である。本発明の水素製造装置を用いた燃料電池システムは、特に方向自在性と小型化が要求されるポータブル電源に適している。
【符号の説明】
【0109】
1、2、3 液体収容容器
4 水
5a、5b 可撓管
6a、6b 不撓管
7 錘
8 吸水口
9 固定バンド
10 蓋体
11 液体導入管
12 液体排出管
13 浮き
14 導入口
15 浮き用錘
16 節部
17 給水用蓋体
18 安全弁
19 コネクタ
20 接続管
100 水素製造装置
101、111 気液分離容器
102 排液管
103 吸水管
104 錘
105 導入管
106 排気管
107 吸気管
108 吸気口
109 吸水口
110 固定バンド
201、202、203、204、205、206、207 配管
301、302 ポンプ
401 三方バルブ
503 水素発生材料収容容器
504 水素発生材料
700 燃料電池
710 電極・電解質一体化物(MEA)
711 正極拡散層
712 正極触媒層
713 固体高分子電解質膜
714 負極触媒層
715 負極拡散層
720 正極パネルプレート
721 負極パネルプレート
722 正極絶縁プレート
723 負極絶縁プレート
724 正極集電プレート
726 負極集電プレート
728a、728b シール部
729 燃料タンク部
730 正極開口部
731 負極開口部
732 ボルト
733 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な容器本体と、
前記容器本体を密閉するための蓋体と、
前記蓋体を貫通して前記容器本体の中心近傍まで延びた第1不撓管と、一端が前記第1不撓管に連結され、他端に導入口を有する第1可撓管と、を含み、液体を前記第1不撓管、前記第1可撓管を通じて前記導入口から前記容器本体内に導入する液体導入管と、
浮力により前記導入口を液面上に浮かせる浮きと、
前記蓋体を貫通して前記容器本体の中心近傍まで延びた第2不撓管と、一端が前記第2不撓管に連結され、他端に吸水口を有する第2可撓管とを含み、前記容器本体内の液体を前記吸水口から吸い込み、前記第2可撓管、前記第2不撓管を通じて外部に排出する液体排出管と、
重力により前記吸水口を液体中に浸漬させる錘と、を含むことを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
前記第1不撓管と前記第1可撓管との接続部、及び前記第2不撓管と前記第2可撓管との接続部には、複数の節部が一定間隔で設けられている請求項1に記載の液体収容容器。
【請求項3】
前記液体導入管及び前記液体排出管に着脱機構が設けられた請求項1または2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記液体導入管の前記第1不撓管及び前記液体排出管の前記第2不撓管が互いに絡まないように固定されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体収容容器。
【請求項5】
水との反応により水素を発生する水素発生材料に水を供給して水素を製造する水素製造装置において、
気体と液体とを含む気液混合流体を、重力差によって気体と液体に分離する気液分離容器と、
水素発生材料に供給する水を収容する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液体収容容器とを含み、
水素発生材料と水との反応により発生した水素を含む気体中に含まれる液体成分は、前記気液分離容器によって分離され、前記液体収容容器に収容されることを特徴とする水素製造装置。
【請求項6】
前記気液分離容器は、
気液混合流体を前記気液分離容器の外部から内部に導入する導入管と、
前記気液混合流体から分離された気体を前記気液分離容器の内部から外部に排出する排気管と、
前記気液混合流体から分離された液体を前記気液分離容器の内部から外部に排出する排液管と、
前記排気管に連結され、前記気液混合流体から分離された気体を吸い込むための吸気口を有する吸気管と、
前記排液管に連結され、前記気液混合流体から分離された液体を吸い込むための吸水口を有する吸水管とを含み、
前記吸気管の前記吸気口は、前記気液分離容器の中央部に配置され、
前記吸水管の前記吸水口の近傍には、前記吸水管の前記吸水口を前記気液分離容器内で重力方向に移動させる錘が設けられている請求項5に記載の水素製造装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の水素製造装置と、前記水素製造装置で製造された水素を燃料とする燃料電池とを含むことを特徴とする燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−36023(P2012−36023A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175530(P2010−175530)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】