説明

液体収容容器

【課題】部品の増加を招くことなく液体収容部に貯留している液体の攪拌を実現することができると共に、液体の攪拌に際して部品の衝突による騒音の発生もない良好な液体収容容器を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ13は、印字ヘッドと伴に往復動するキャリッジに搭載されて、液体収容部32内のインク37を印字ヘッドに供給する。液体収容部32は、キャリッジの往復動方向に対向する側壁32a,32bが、キャリッジの往復動方向に対して傾斜した傾斜面35,36を有する構成とされ、キャリッジの往復動時に傾斜面35,36によりインク37を流動・攪拌させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドと伴に往復動するキャリッジに搭載されて、液体収容部内の液体を前記液体噴射ヘッドに供給する液体収容容器に関し、例えば、インクジェット式記録装置のキャリッジに装着されて、内部に収容したインクを印字ヘッドに供給するインクカートリッジ等に好適な液体収容容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として挙げられるインクジェット式記録装置は、インクカートリッジ(液体収容容器)に貯留するインク(液体)を印字ヘッド(液体噴射ヘッド)へ送り込み、この印字ヘッドにより用紙等の被記録体にインクを付着させ、所望の印刷を行うものである。
【0003】
上述したインクジェット式記録装置に用いられるインクの種類には、染料系と顔料系があり、顔料系インクは溶媒中に顔料等の分散粒子を均一に分散させて混合されたものである。
このような顔料系インクは、長期間にわたって印刷が行われず、インク収容部(液体収容部)内においてインクが循環しない状態に置かれると、溶媒と分散粒子との比重差で分散粒子が沈降する性質がある。
【0004】
そして、インクジェット式記録装置に装着されたインクカートリッジのインク収容部内で、分散粒子の沈降が進むと、インクカートリッジから装置に供給するインク濃度の変動により印刷不良や、印字ヘッドの目詰まり等の問題が発生する可能性がある。
そこで、顔料系インクを貯留するインクカートリッジでは、インク収容部内での分散粒子の沈降を防止するために、貯留しているインクを攪拌する工夫が必要となる。
【0005】
従来、印字ヘッドと伴に往復動するキャリッジに搭載されるタイプのインクカートリッジは、インク収容部を区画形成する側壁がキャリッジの往復動方向に略直交する形態に形成されており、キャリッジの往復動時に作用する慣性力だけでは、貯留しているインクを十分に攪拌させることができない。
そこで、インク収容部に貯留しているインクを攪拌する機構として、インク収容部内のインクを強制的に流動させるポンプユニットをインクカートリッジに接続した構成のもの(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、或いは、キャリッジの往復移動時の慣性によりインク収容部内を移動する攪拌移動体を備えた構成のもの(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−8465号公報
【特許文献2】特開2002−19137号公報
【特許文献3】特開2005−66520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、インク収容部に貯留しているインクを攪拌する為にポンプユニットを使用する攪拌機構では、部品の増加等により液体噴射装置の大型化やコストアップを招くという問題が生じた。
また、キャリッジの往復移動時の慣性によりインク収容部内を移動する攪拌移動体を使用した攪拌機構では、攪拌移動体がインク収容部の側壁等に衝突することにより騒音が発生し、インクジェット式記録装置における動作音の増大を招くという問題が生じた。更に、インク収容部内に装填する攪拌移動体が必要となるので、部品点数が増加する。
【0008】
従って、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、部品の増加を招くことなく液体収容部に貯留している液体の攪拌を実現することができると共に、液体の攪拌に際して部品の衝突による騒音の発生もない良好な液体収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、液体噴射ヘッドと伴に往復動するキャリッジに搭載されて、液体収容部内の液体を前記液体噴射ヘッドに供給する液体収容容器であって、
前記液体収容部は、前記キャリッジの往復動方向に対向する少なくとも一方の側壁が、前記キャリッジの往復動方向に対して傾斜し、且つ前記液体収容部に収容された液体の上清部分と沈降部分の境に対して交差する傾斜面を有することを特徴とする液体収容容器により達成される。
【0010】
上記構成によれば、液体収容部内に貯留された液体は、キャリッジの往復動に伴って作用する慣性で液体収容部を区画形成している側壁に向かって流動した際、側壁に設けられた傾斜面との衝突で該傾斜面の傾斜角に沿う流動方向の転換が生じ、この流動方向の転換によって、液体収容部内の液体を攪拌する対流が生じる。そして、液体収容部内の液体の上清部分と沈降部分の境が、傾斜面との衝突による対流により確実に攪拌されることになり、液体収容部に貯留された液体内の分散粒子の沈降を効率よく解消できるようになる。
即ち、傾斜面を有した側壁自体が、液体収容部内の液体を攪拌する攪拌機構としての機能を果たすため、攪拌用として特別にポンプユニットや攪拌移動体等を装備する必要がない。
従って、部品の増加を招くことなく液体収容部に貯留している液体の攪拌を実現することができ、しかも、攪拌移動体を用いないので、液体の攪拌に際して部品の衝突による騒音の発生もない。
【0011】
また、本発明の上記目的は、液体噴射ヘッドと伴に往復動するキャリッジに搭載されて、液体収容部内の液体を前記液体噴射ヘッドに供給する液体収容容器であって、
前記液体収容部は、前記キャリッジの往復動方向に対向する両側壁が、前記キャリッジの往復動方向に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする液体収容容器により達成される。
尚、上記構成の液体収容容器において、前記傾斜面が、前記両側壁に平行に形成されることが望ましい。
【0012】
上記構成によれば、液体収容部内に貯留された液体は、キャリッジの往復動に伴って作用する慣性で液体収容部を区画形成している両側壁に向かって流動した際、両側壁に設けられた各傾斜面との衝突で該傾斜面の傾斜角に沿う流動方向の転換が生じ、この流動方向の転換によって、液体収容部内の液体を攪拌する対流が生じる。そして、液体が各傾斜面との衝突により生じる対流・攪拌作用を、キャリッジの往動時および復動時の何れにおいても、同等に得ることができ、攪拌効率が向上する。
尚、前記傾斜面が前記両側壁に平行に形成される場合には、前記傾斜面が液体収容部内に設けられたことによる液体収容量の減少を抑制することができる。
【0013】
即ち、傾斜面を有した両側壁自体が、液体収容部内の液体を攪拌する攪拌機構としての機能を果たすため、攪拌用として特別にポンプユニットや攪拌移動体等を装備する必要がない。
従って、部品の増加を招くことなく液体収容部に貯留している液体の攪拌を実現することができ、しかも、攪拌移動体を用いないので、液体の攪拌に際して部品の衝突による騒音の発生もない。
【0014】
尚、上記構成の液体収容容器において、前記傾斜面が、前記液体収容部の底壁に連続して設けられることが望ましい。
このような構成によれば、液体収容部に収容された液体の沈降部分は、底壁付近から上清部分との境部分までの間における何れの位置でも、傾斜面との衝突により傾斜面に沿う対流を起こすことができる。
そこで、境部分から離れた底壁付近の沈降部分も確実に上清部分と攪拌することができる。従って、沈降部分の全域を速やかに上清部分と攪拌して、効率的に沈降を解消することが可能になる。
【0015】
また、上記構成の液体収容容器において、前記キャリッジの往復動方向における前記液体収容部の幅が、前記液体収容部の高さよりも小さいことが望ましい。
このような構成によれば、傾斜面の高さ方向の領域を大きく設定し、液体が傾斜面に衝突する時の対流・攪拌力を増大させることができるので、大きな攪拌作用を得ることが可能になる。
【0016】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容部内に、大気開放された空気が収容されることが望ましい。
このような構成によれば、傾斜面へ衝突した液体が対流を起こし易くなり、対流による攪拌作用が十分に得られるようになる。
【0017】
また、上記構成の液体収容容器において、前記液体収容部内の液体が、顔料インクであることが望ましい。
このような構成によれば、時間の経過により沈降し易い顔料インクであっても、効果的に攪拌することができ、液体噴射ヘッドに供給される液体の濃度のバラツキを抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液体収容容器によれば、部品増加を招くことなく液体収容部に貯留している液体の攪拌を実現することができると共に、液体の攪拌に際して部品の衝突による騒音の発生もない。
従って、部品の増加等による液体噴射装置の大型化やコストアップを防止しつつ、液体噴射装置に供給する液体の濃度変化を防止することができると共に、動作音の増大を防止することができる良好な液体収容容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る液体収容容器を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る液体収容容器を搭載したインクジェット式記録装置の概略構成を示す全体斜視図、図2は図1に示した液体収容容器の正面斜視図、図3は図1に示した液体収容容器の背面斜視図、図4は図3に示した液体収容容器のA−A断面図であり、(a)はキャリッジが静止している状態の断面図、(b)はキャリッジが矢印B方向に移動している状態の断面図、(c)はキャリッジが矢印C方向に移動している状態の断面図である。
【0020】
図1に示したように、本実施形態のインクジェット式記録装置(液体噴射装置)1は、記録用紙2を用紙搬送方向Yに送る紙送りモータ3と、プラテン4と、印字ヘッド(液体噴射ヘッド)5を搭載したキャリッジ6と、キャリッジ6を用紙幅方向Xに往復移動させるキャリッジモータ7とを備えている。
【0021】
キャリッジ6は、キャリッジモータ7に駆動される牽引ベルト11によって牽引され、ガイドレール12に沿って移動する。キャリッジ6には、印字ヘッド5のほかに、印字ヘッド5に供給されるブラックインク(液体)を収容した液体収容容器としてのブラック用のインクカートリッジ13と、印字ヘッド5に供給されるカラーインク(液体)を収容した液体収容容器としてのカラー用のインクカートリッジ14とが搭載されている。
【0022】
キャリッジ6のホームポジション(図1の右側の位置)には、停止時に印字ヘッド5のノズル面を密閉するためのキャッピング装置15が設けられている。印刷ジョブが終了して、キャリッジ6がこのキャッピング装置15の上まで到達すると、図示しない機構によってキャッピング装置15が自動的に上昇して、印字ヘッド5のノズル面を密閉する。このキャッピングにより、ノズル内のインクの乾燥が防止される。
【0023】
次に、液体収容部内のインクを攪拌する為のインクカートリッジの攪拌構造について説明する。
なお、図1に示したブラック用のインクカートリッジ13及びカラー用のインクカートリッジ14は、液体収容部がいずれも略同一構造であるので、ここではブラック用のインクカートリッジ13を例にとって説明する。
【0024】
図2及び図3に示した矢印Xは、インクジェット式記録装置1のキャリッジ6の往復動方向を示している。
本発明に係る液体収容容器であるブラック用のインクカートリッジ13は、インクを貯留する液体収容部を有したカートリッジ本体21の外面に、液体収容部に連通したインク供給部23、記憶手段25、係合レバー27が装備されている。
【0025】
インク供給部23は、カートリッジ本体21の下面に装備されており、当該インクカートリッジ13がキャリッジ6に装着された際に、キャリッジ6に装備されたインク供給針が挿入される。その結果、カートリッジ本体21の液体収容部内のインクが、印字ヘッド5へ供給可能になる。
記憶手段25は、インクの種類や消費履歴等のデータを保存する記憶回路である。また、係合レバー27は、キャリッジ側の係合部と係合することで、カートリッジ本体21をキャリッジ6に固定する。
【0026】
インクカートリッジ13のカートリッジ本体21には、図4に示すように、上下2段に、液体収容部31,32が形成されている。
上側の液体収容部31は不図示の連絡流路及び流量制御手段を介してインク供給部23に連通させられており、液体収容部31に貯留されているインクがインク供給部23を介して印字ヘッド5に供給される。
下側の液体収容部32は、不図示の連絡流路により上側の液体収容部31に連通しており、液体収容部31での消費量に応じて、液体収容部31へインクを補充する。
【0027】
本実施形態のインクカートリッジ13は、所謂大気開放型のカートリッジであり、下側の液体収容部32にはカートリッジ本体21の壁部に貫通形成された不図示の大気連通孔が接続され、液体収容部内のインク消費に応じて、大気開放された空気34が液体収容部32に収容(導入)される。
【0028】
そして、本実施形態のインクカートリッジ13の場合、図4(a)に示すように、液体収容部32は、前記キャリッジ6の往復動方向Xに対向する一対の側壁32a,32bが、キャリッジ6の往復動方向に対して傾斜した傾斜面35,36を有している。
また、それぞれの傾斜面35,36は、液体収容部32に収容されたインク37の上清部分37aと沈降部分37bの境37cに対して交差するように設けられている。更に、各傾斜面35,36は、液体収容部32の底壁32cに連続して設けられている。
【0029】
また、本実施形態の各傾斜面35,36は、前記キャリッジ6の往復動方向Xに対向する一対の側壁32a,32bに、互いに平行に形成されている。
そして、キャリッジ6の往復動方向Xにおける前記液体収容部32の幅wが、前記液体収容部32の高さhよりも小さく設定されている。
【0030】
以上に説明した本実施形態のインクカートリッジ13では、液体収容部32内に貯留されたインク37は、図4(b)及び図4(c)に示すように、キャリッジ6が往路(矢印B方向)を移動するとき、及び復路(矢印C方向)を戻るときのいずれにおいても、キャリッジ6の往復動に伴って作用する慣性で液体収容部32を区画形成している側壁32a,32bに向かって流動した際、側壁32a,32bに設けられた傾斜面35,36との衝突で、傾斜面35,36の傾斜角に沿う流動方向の転換が生じる。そこで、この流動方向の転換によって、液体収容部32内のインク37には攪拌する対流が生じる。
【0031】
ここで、キャリッジ6の往復動方向に対向する一対の側壁41a,41bが略垂直に形成された従来のインクカートリッジ42の場合は、図5に示すように、キャリッジ6の往復動に伴って作用する慣性で液体収容部41内のインク液44が側壁41a,41bに衝突しても、衝突自体で運動エネルギーの大半を消費してしまい、液体収容部41内のインク液44には大きな対流ができない。
【0032】
これに対して、本実施形態のインクカートリッジ13では、図6に示すように、キャリッジ6の往復動に伴って作用する慣性でキャリッジ6の移動方向と逆側に移動するインク37の上清部分37a及び沈降部分37bは、傾斜面35,36に衝突した際に、衝突自体で消費される運動エネルギーが小さくて済み、流動方向を転換して勢いの良い対流を作るため、液体収容部32内のインク液37は対流による攪拌が可能になる。
即ち、傾斜面35,36を有した側壁32a,32b自体が、液体収容部32内におけるインク37中の分散粒子の沈降を解消する攪拌機構としての機能を果たすため、攪拌用として特別にポンプユニットや攪拌移動体等を装備する必要がない。
【0033】
従って、部品の増加を招くことなく液体収容部32に貯留しているインク37の攪拌を実現することができ、しかも、攪拌移動体を用いないため、インク37の攪拌に際して部品の衝突による騒音の発生もない。
即ち、部品の増加等によるインクジェット式記録装置1の大型化やコストアップを防止しつつ印字ヘッド5に供給するインク37の濃度変化を防止することができ、さらに、動作音の増大を防止することもできる。そこで、インク37が時間の経過により沈降し易い顔料インクであっても、効果的に攪拌することができ、インクジェット式記録装置1に供給されるインク37の濃度のバラツキを抑えることができる。
【0034】
また、本実施形態のインクカートリッジ13の場合は、側壁32a,32bに設けられる傾斜面35,36が、液体収容部32に収容されたインク37の上清部分37aと沈降部分37bの境37cに対して交差するように形成されている。
そこで、液体収容部32内のインク37の上清部分37aと沈降部分37bの境37cが、傾斜面35,36との衝突による対流により確実に攪拌されることになり、液体収容部32に貯留されたインク37内の分散粒子の沈降を効率よく解消できるようになる。
【0035】
さらに本実施形態の場合は、傾斜面35,36が、液体収容部32の底壁32cに連続して設けられているため、液体収容部32に収容されたインク37の沈降部分37bは、底壁32c付近から上清部分37aとの境37c部分までの間における何れの位置でも、傾斜面35,36との衝突により傾斜面35,36に沿う対流を起こすことができる。
そこで、境37c部分から離れた底壁32c付近の沈降部分37bも確実に上清部分37aと攪拌することができる。従って、沈降部分37bの全域を速やかに上清部分37aと攪拌して、効率的に沈降を解消することが可能になる。
【0036】
また、本実施形態のインクカートリッジ13の場合、傾斜面35,36が、前記キャリッジ6の往復動方向Xに対向する一対の側壁32a,32bに、互いに平行に形成されている。
そこで、インク37が傾斜面35,36との衝突により生じる対流・攪拌作用を、キャリッジ6の往動時および復動時の何れにおいても、同等に得ることができ、攪拌効率が向上する。また、傾斜面35,36が、両側壁32a,32bに平行に形成されているので、傾斜面35,36が液体収容部32内に設けられたことによる液体収容量の減少を抑制することができる。
【0037】
さらに、本実施形態のインクカートリッジ13の場合、キャリッジ6の往復動方向Xにおける液体収容部32の幅wが、液体収容部32の高さhよりも小さく設定されている。
そこで、傾斜面35,36の高さ方向の領域を大きく設定し、インク37が傾斜面35,36に衝突する時の対流・攪拌力を増大させることができるので、大きな攪拌作用を得ることが可能になる。
【0038】
また、本実施形態のインクカートリッジ13の場合、大気開放された液体収容部32内には空気34が収容されるため、液体収容部が気密構造にされるタイプのインクカートリッジと比較すると、傾斜面35,36へ衝突したインク37が対流を起こし易くなり、対流による攪拌作用が十分に得られるようになる。
【0039】
なお、上記実施形態のインクカートリッジ13では、キャリッジ6の往復動方向Xに対向する一対の側壁32a,32bのそれぞれに、キャリッジ6の往復動方向Xに対して傾斜する傾斜面35,36を平行に設けるようにしたが、本発明の液体収容容器はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうることは云うまでもない。
【0040】
図7は、本発明の他の実施形態に係る液体収容容器の拡大断面図である。尚、本実施形態における液体収容容器としてのインクカートリッジの基本構成は、上記実施形態のインクカートリッジ13と略同様の構成である。
例えば、図7(a)に示したインクカートリッジの場合、液体収容部132は、前記キャリッジ6の往復動方向Xに対向する一対の側壁132a,132bが、キャリッジ6の往復動方向に対して傾斜した傾斜面135,136を有している。そして、それぞれの傾斜面135,136は、互いに逆向きの傾斜で略V字形状の収容部断面を形成しており、液体収容部132に収容されたインク37の上清部分37aと沈降部分37bの境37cに対して交差するように設けられている。
【0041】
また、図7(b)に示したインクカートリッジの場合、液体収容部232は、前記キャリッジ6の往復動方向Xに対向する一対の側壁232a,232bにおける一方の側壁232aにだけ、キャリッジ6の往復動方向に対して傾斜する傾斜面235を有している。そして、傾斜面235は、液体収容部232に収容されたインク37の上清部分37aと沈降部分37bの境37cに対して交差するように設けられている。
【0042】
更に、図7(c)に示したインクカートリッジの場合、液体収容部332は、前記キャリッジ6の往復動方向Xに対向する一対の側壁332a,332bが、キャリッジ6の往復動方向に対して傾斜した傾斜面335,336を有している。そして、それぞれの傾斜面335,336は、互いに平行に形成されている。
但し、本実施形態の互いに平行な傾斜面335,336は、図4に示した上記実施形態のインクカートリッジ13における平行な傾斜面35,36と異なり、キャリッジ6の往復動方向Xにおけるカートリッジの幅が、図5に示した従来のインクカートリッジ42の幅と同等に形成されている。この場合、キャリッジのカートリッジ装着部は従来と同様の構成で良く、インクジェット式記録装置を改造する必要がない。
【0043】
また、本発明の液体収容容器に係る液体収容部の少なくとも一方の側壁に形成される傾斜面の角度や形状は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の形態を採りうることは云うまでもない。例えば、本発明に係る傾斜面は、上記実施形態における平坦面に限らず、球面や湾曲面等の曲面に構成することもできる。
【0044】
更に、本発明の液体収容容器が搭載される液体噴射装置は、上記実施形態に示したインクジェット式記録装置1に限らない。
溶媒中に分散粒子が存在する液体を噴射する液体噴射ヘッドが、往復動するキャリッジ上に備えられ、前記キャリッジに前記液体を貯留した液体収容容器が装備される各種の液体噴射装置に適用可能である。
具体例としては、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体収容容器を搭載したインクジェット式記録装置の概略構成を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示した液体収容容器の正面斜視図である。
【図3】図1に示した液体収容容器の背面斜視図である。
【図4】図3に示した液体収容容器のA−A断面図であり、(a)はキャリッジが静止している状態の断面図、(b)はキャリッジが矢印B方向に移動している状態の断面図、(c)はキャリッジが矢印C方向に移動している状態の断面図である。
【図5】従来の液体収容容器の要部断面図であり、(a)はキャリッジが静止している状態の断面図、(b)はキャリッジが矢印D方向に移動している状態の断面図、(c)はキャリッジが矢印E方向に移動している状態の断面図である。
【図6】図4に示した液体収容容器に貯留された液体の挙動を示す断面図であり、(a)はキャリッジが静止している状態の断面図、(b)はキャリッジが矢印F方向に移動している状態の断面図、(c)はキャリッジが矢印G方向に移動している状態の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る液体収容部の傾斜面の変形例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、5…印字ヘッド(液体噴射ヘッド)、6…キャリッジ、13…インクカートリッジ(液体収容容器)、21…カートリッジ本体、23…インク供給部、31,32…液体収容部、32a,32b…側壁、35,36…傾斜面、37…インク(液体)、37a…上清部分、37b…沈降部分、37c…境

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドと伴に往復動するキャリッジに搭載されて、液体収容部内の液体を前記液体噴射ヘッドに供給する液体収容容器であって、
前記液体収容部は、前記キャリッジの往復動方向に対向する少なくとも一方の側壁が、前記キャリッジの往復動方向に対して傾斜し、且つ前記液体収容部に収容された液体の上清部分と沈降部分の境に対して交差する傾斜面を有することを特徴とする液体収容容器。
【請求項2】
液体噴射ヘッドと伴に往復動するキャリッジに搭載されて、液体収容部内の液体を前記液体噴射ヘッドに供給する液体収容容器であって、
前記液体収容部は、前記キャリッジの往復動方向に対向する両側壁が、前記キャリッジの往復動方向に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする液体収容容器。
【請求項3】
前記傾斜面が、前記両側壁に平行に形成されることを特徴とする請求項2に記載の液体収容容器。
【請求項4】
前記傾斜面が、前記液体収容部の底壁に連続して設けられることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項5】
前記キャリッジの往復動方向における前記液体収容部の幅が、前記液体収容部の高さよりも小さいことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記液体収容部内に、大気開放された空気が収容されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記液体収容部内の液体が、顔料インクであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−130813(P2007−130813A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324022(P2005−324022)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】