液体収納容器および記録装置
【課題】内部に収納する顔料インクなどの液体に、それを効率よく攪拌するための流れを積極的に生じさせることができる液体収納容器、および、そのような液体容器を用いて高品位な画像を記録可能な記録装置を提供すること。
【解決手段】インクタンクのインク収納室内に、質量が異なる2つの撹拌部材T2015A,T2015Bを備える。それらの撹拌部材T2015A,T2015Bは、矢印X1およびX2方向の慣性力により移動してインクを攪拌し、その際に、それらの移動の開始時期および移動速度が異なることにより、矢印F5,F6,F7,F8方向のインクの流れを積極的に生じさせる。
【解決手段】インクタンクのインク収納室内に、質量が異なる2つの撹拌部材T2015A,T2015Bを備える。それらの撹拌部材T2015A,T2015Bは、矢印X1およびX2方向の慣性力により移動してインクを攪拌し、その際に、それらの移動の開始時期および移動速度が異なることにより、矢印F5,F6,F7,F8方向のインクの流れを積極的に生じさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの種々の液体を収納すると共に、その液体の成分を均一化するための機能をもつ液体収納容器に関し、特に、インクジェット記録装置に用いられる顔料インク収納用のインクタンクとして好適な液体収納容器に関するものである。さらに本発明は、そのような液体収納容器を用いることが可能な記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置としては、顔料インクを用いて記録を行うものが知られている。その顔料インクは、それを収納するインクタンクから、インクを吐出可能なインクジェット記録装置に供給される。顔料インクとは、色素として顔料を用い、その顔料をインク溶媒に分散させたものである。
【0003】
顔料インクを用いて画像が記録された記録媒体は、耐光性および耐水性に優れているという利点をもつ。しかしながら、顔料インクは、顔料自体が粒子としてインク溶媒中に分散しているため、その顔料インクを収納するインクタンク(液体収納容器)が長時間放置された場合には、その顔料インク中の顔料が溶媒中において沈降する。例えば、インクタンクが備えられた記録装置を長時間休止させたまま放置した場合には、そのインクタンクの底面に顔料粒子が沈降し、インクタンク内の上部側の顔料インクは顔料濃度が薄く、その下部側顔料インクは顔料濃度が濃くなって、濃度勾配が発生する。この状態のインクタンクから顔料インクを供給して画像を記録した場合には、供給される顔料インクの顔料濃度が不均一となって、記録画像に濃度むらが生じるおそれがある。顔料濃度が極端に高い顔料インクが記録ヘッドに供給された場合には、凝集した顔料が記録ヘッドの流路部分を詰まって、記録ヘッドからのインクの吐出が不能となるおそれがある。
【0004】
インクタンク内における顔料インクの顔料濃度を均一化して、それを均質化するための方法として、特許文献1には、インクタンク内に撹拌部材を備える構成が提案されている。そのインクタンクは、いわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置におけるキャリッジ上に搭載されるものであり、記録動作時には、キャリッジと共に往復移動される。そのインクタンク内に備わる撹拌部材は、キャリッジと共にインクタンクが往復移動するときに働く慣性力を利用して、インクタンク内の顔料インクを攪拌するように動作する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−066520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにキャリッジの往復移動に伴う慣性力を利用して撹拌部材が攪拌動作する場合、撹拌部材が比較的動作しやすいキャリッジの移動方向に関しては、顔料インクの攪拌が促進される。しかし、キャリッジの移動方向と直交する方向に関しては、撹拌部材が比較的動作しにくいため、顔料インクの攪拌はあまり期待できない。
【0007】
また通常、シリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置におけるインクタンクは、キャリッジの移動方向に並ぶように、そのキャリッジ上に複数搭載される。そのためインクタンクは、キャリッジの移動方向における幅が比較的小さく設定され、キャリッジの移動方向と交差する方向における幅が比較的大きく設定されている。したがって、キャリッジの移動方向と交差する方向に関しては、インクタンクの幅が比較的大きいために顔料インクの対流が生じにくい。
【0008】
本発明の目的は、内部に収納する顔料インクなどの液体に、それを効率よく攪拌するための流れを積極的に生じさせることができる液体収納容器、および、そのような液体容器を用いて高品位な画像を記録可能な記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体収納容器は、液体を収納可能な収納室と、前記収納室内の液体を外部に供給可能な供給口と、前記収納室内に備えられて慣性力によって移動可能な撹拌部材と、を備えた液体収納容器において、前記撹拌部材を複数備え、前記複数の撹拌部材の少なくとも2つは、慣性力によって移動するときの移動形態が異なるものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の記録装置は、液体のインクを収納するインクタンクと、前記インクタンクから供給されるインクを記録媒体に付与可能な記録ヘッドと、を搭載可能なキャリッジを備え、前記キャリッジの往復移動を伴って記録媒体上に画像を記録する記録装置において、前記キャリッジは、前記インクタンクとして請求項1から8のいずれかに記載の液体収納容器を搭載可能であり、かつ前記複数の撹拌部材を移動させるように往復移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動形態が異なる少なくとも2つの撹拌部材を収納室内に備えることにより、それらの撹拌部材が慣性力によって移動する際に、それらの撹拌部材の配備位置の相互間において、液体の流れを積極的に生じさせることができる。この結果、その積極的な液体の流れにより、液体の攪拌効率を簡便かつ低コストで格段に高めることができる。その積極的な液体の流れの方向は、撹拌部材の配備位置に応じて最適に設定することができる。
【0012】
また、液体のインクを収納した場合には、そのインクを効率よく攪拌して均質化することができ、その結果、その均質化されたインクを用いて高品位の画像を記録することができる。例えば、液体の顔料インクを収納した場合には、顔料粒子の沈降に起因する記録品位の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
本実施形態における液体収納容器は、シリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置に用いられる顔料インク収納用のインクタンクとしての適用例である。
【0015】
本例のインクタンクが搭載されるインクジェット記録装置は、いわゆるノンインパクト記録方式の記録装置である。この記録方式は、高速記録および様々な記録媒体に対する記録が可能であり、また記録時における騒音がほとんど生じないため、プリンタ、ワードプロセッサ、ファクシミリ、および複写機等において記録機構を担う装置に広く採用されている。
【0016】
図11は、本例のインクジェット記録装置の斜視図であり、その記録装置は、主に、装置本体M1000、給送部M3022、および排出トレイM1004から構成される。装置本体M1000の内部は、図12に示すように、シャーシM3019と各記録動作機構等から構成されている。主走査方向(矢印X方向)に移動可能なキャリッジM4001には、画像の記録位置に搬送された記録媒体に対して所望の記録を行うための記録ヘッドカートリッジ(不図示)が着脱自在に搭載される。記録媒体は、画像の記録位置において、主走査方向と交差する副走査方向(矢印Y方向)に搬送させる。記録ヘッドカートリッジは、記録ヘッドと、その記録ヘッドに対して着脱自在のインクタンクT2000(図1参照)と、を含む。記録ヘッドは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いて、インク滴を吐出させる構成となっている。発熱抵抗体を有する電気熱変換素子(ヒータ)を用いた場合には、その電気熱変換素子の発熱によってインクを加熱し、そのときのインクの膜沸騰の作用により、インク滴を吐出口より吐出させることができる。
【0017】
記録媒体に画像を記録する際には、記録走査と、記録媒体の搬送動作と、が順次繰り返される。記録走査においては、記録ヘッドカートリッジがキャリッジM4001と共に主走査方向に移動しつつ、記録ヘッドからインクを吐出する。記録媒体の搬送動作においては、記録媒体が副走査方向に所定量搬送させる。
【0018】
図1は、記録ヘッドと共に記録ヘッドカートリッジを構成するインクタンクT2000の斜視図である。本例のインクタンクT2000は、容器本体T2017と蓋部材T2018とを含み、それらの内部に顔料インクを収納するための収納室が形成されている。インクタンクT2000の底面には、内部に収納したインクを記録ヘッドに供給するためのインク供給口T2002が形成されている。
【0019】
図2は、インクタンクT2000の分解斜視図であり、容器本体T2017には、ばね部材T2005、板部材T2022、可撓性フィルムT2004、メニスカス部材T2020、押え板T2021、および攪拌部材T2015が備えられている。図3は、撹拌部材T2015が取り付けられた容器本体T2017の斜視図である。
【0020】
容器本体T2017は、例えば、ポリプロピレンによって形成されており、容器本体T2017の底部のインク供給口T2002にはメニスカス形成部材T2020が備えられている。また、ニスカス形成部材T2020の外側におけるインク供給口T2002には、押え部材T2021が取り付けられている。メニスカス形成部材T2020は、例えば、ポリプロピレンの繊維材料から形成されて毛細管力を有する毛管部材、あるいは、その毛管部材とフィルター部材(孔径10〜50μM程度)とを組み合わせたものである。メニスカス形成部材T2020は、インク流路T2019によって、後述する容器本体T2017の内部のインク収納室に連通されており、インク収納室に外部から気泡が侵入しないようにインクのメニスカスを形成する。
【0021】
容器本体T2017は、その開口周縁部T2016に可撓性フィルムT2004の周部が溶着されることにより、顔料インクi5000(図6参照)を収納するためのインク収納室T2001(図6参照)を形成する。可撓性フィルムT2004は、例えば、ポリプロピレンの薄膜を含むフィルム部材(厚み20〜100μM程度)である。可撓性フィルムT2004は、板部材T2022を介してばね部材T2005により外方に付勢され、これにより、インク収納室T2001には負圧が発生している。ばね部材T2005と板部材T2022は、例えば、ステンレス材料により形成されている。容器本体T2017の開口部には蓋部材T2018が取り付けられ、その蓋部材T2018は、インク収納室T2001の外方に向かって凸型となる可撓性フィルムT2004を保護する。蓋部材T2018には、大気連通部(不図示)が設けられており、容器本体T2017内におけるインク収納室T2001の外側が大気圧とされている。
【0022】
インク収納室T2001内のインクが記録ヘッドへの供給によって消費されると、ばね部材T2005が縮みと、可撓性フィルムT2004の撓みを伴って、インク収納室T2001の容積が減少する。板部材T2022には、後述の支持部材との干渉を避けるための開口T2027が設けられている。これにより、板部材T2022が容器本体T2017の内壁に接触するまで、インク収納室T2001内のインクを消費することが可能となっている。
【0023】
次に、本例のインクタンクにおけるインクの攪拌機構について説明する。
【0024】
インク収納室T2001内には、インクを攪拌するための攪拌機構が備えられている。本例の攪拌機構は、容器本体T2017の内壁に設けられた支持部材T2023と、攪拌部材T2015と、から構成されており、支持部材T2023は、攪拌部材T2015の一端側を支持している。支持部材T2023には、キャリッジM4001が移動する主走査方向に平行な軸部と、抜け止め部T2024と、が形成されている。本例のように容器本体T2017が樹脂材料によって形成される場合には、その容器本体T2017と一体成形されるボスとして、支持部材T2023を形成してもよい。この場合には、そのボスの先端部を熱加工により広げることにより、先端に抜け止め部T2024を有するリベット状に形成することができる。また支持部材T2023は、図5に示すように、ヘッド部を有するねじ部材であってもよい。そのねじ部材の先端のねじ部を容器本体T2017に埋め込むことにより、そのヘッド部を抜け止め部T2024として機能させることができる。
【0025】
攪拌部材T2015は、例えば、図4(a)あるいは図4(b)のように構成することができる。図6(a)の攪拌部材T2015は、その一端側に、支持部材T2023と係合する凹部T2025が形成された板部材である。図6(b)の攪拌部材T2015は、一端側に、支持部材T2023と係合する穴T2026が形成された板部材である。これらの攪拌部材T2023(1),T2023(2)は、例えば、ステンレス材料により形成されている。
【0026】
支持部材T2023は、攪拌部材T2015の厚みに方向において、その移動を許容する隙間を形成するように抜け止め部T2024が設けられている。また、支持部材T2023の軸部分は、攪拌部材T2015の凹部T2025または穴T2026に対して余裕をもって係合しており、それらの間には隙間が形成されている。2本の支持部材T2023は、2箇所の凹部T2025の間に位置する撹拌部材T2015の部分、または2箇所の穴T2026の間に位置する撹拌部材T2015の部分を挟むようにして、攪拌部材T2015を支持することになる。
【0027】
本例においては、2本の支持部材T2023を主走査方向に沿うように水平に設けて、それらを互いに平行としている。これにより、攪拌部材T2015が主走査方向に沿って回動する際に、その撹拌部材T2015と支持部材T2023との係合部分に回動中心軸が定まり、その軸を中心とする撹拌部材T2915の回動によって、インクが効果的に攪拌される。仮に、支持部材T2023が1本の棒状のものであった場合には、攪拌部材T2015が点によって支持されるため、その支持点を中心とする攪拌部材T2015の全方向の回動が自由となる。そのため、攪拌部材T2015を主走査方向に沿って回動させるための回動軸が定まらない。その結果、撹拌部材T2015に対して主走査方向の慣性力が働いたときに、攪拌部材T2015は、インクの抵抗を受けにくい角度の姿勢となって回動することになり、インクを充分に攪拌することが難しくなる。
【0028】
このように攪拌部材T2015は、その一端側が支持部材T2023によって容器本体T2017に支持され、その支持部材T2023の軸線方向に沿って直線的に移動自在であり、かつ支持部材T2023との係合部分を中心として主走査方向に回動自在である。
【0029】
図6(a)〜(d)は、攪拌部材T2015の基本動作を説明する断面図であり、図1のVI−VIに沿う断面図である。図7(a)〜(d)は、攪拌部材T2015の基本動作を説明する斜視図である。これらの図における撹拌部材T2015は、図4(a)の構成のものであり、図4(b)の構成のものも同様に動作する。
【0030】
図6(a)および図7(a)は、いずれも攪拌部材T2015の第1の状態を示している。キャリッジM4001の主走査方向の往復移動に伴って、インクタンクT2000が矢印X1の方向に移動したときには、これらの図のように、インク収納室T2001内の攪拌部材T2015は、慣性力により容器本体T2017の内壁側に押し付けられる。
【0031】
図6(b)および図7(b)は、攪拌部材T2015の第2の状態を示している。キャリッジM4001は、画像の記録幅の範囲にて往復移動するため、その記録幅に対応する位置において停止した後、その移動方向が矢印X1方向から矢印X2方向に変化する。その際の慣性力により、攪拌部材T2015の自由端側は、図6(b)および図7(b)のように、支持部材T2023を中心として、主走査方向に沿う矢印D1方向に回動する。その回動は、攪拌部材T2015の凹部T2025と支持部材T2023の軸部との間の隙間の範囲内にて、許容される。攪拌部材T2015の自由端側が容器本体T2017から離れると、それらの間には、矢印F1のようにインクi5000が流れ込む。
【0032】
図6(c)および図7(c)は、攪拌部材T2015の第3の状態を示している。インクタンクT2000がキャリッジM4001と共に矢印C2方向にさらに移動すると、攪拌部材T2015の支持部材側の端部も慣性力により移動し始め、支持部材T2023の軸部に沿って攪拌部材T2015全体が矢印E1の方向に移動する。そして、図6(c)および図7(c)のように、攪拌部材T2015の支持部材側の端部が容器本体の内壁から離れて、その支持部材側の端部が抜け止め部T2024に突き当たると、攪拌部材T2015の自由端側は、さらに矢印D2方向に回動する。インクi5000は、さらに矢印F2のように攪拌部材T2015の上側にまで流れ込む。
【0033】
図6(d)および図7(d)は、攪拌部材T2015の第4の状態を示している。キャリッジM4001は、記録幅に対応する位置において停止した後、その移動方向が矢印X2方向から矢印X1方向に変化する。その際の慣性力により、攪拌部材T2015の自由端側がまず最初に動き出し、図6(d)および図7(d)のように、その自由端側が支持部材T2023を中心として矢印D3方向に回動して、容器本体T2017の内壁に接触する。それから、攪拌部材T2015の支持部材側が支持部材T2023の軸部に沿って矢印E2方向に移動する。攪拌部材T2015が容器本体T2017の内壁に近づくと、それらの間に介在していたインクi5000は矢印F3方向に移動する。
【0034】
攪拌部材T2015の第4の状態の次は、図6(a)および図7(a)に示す第1の状態に戻り、インクi5000は矢印F4方向に移動する。このように攪拌部材T2015は、キャリッジM4001の往復移動に伴って、第1、第2、第3、および第4の状態を繰り返す。
【0035】
攪拌部材T2015は、このように、キャリッジM4001の往復移動に伴って発生する慣性力を利用して動作し、インクi5000を攪拌する。その攪拌動作においては、攪拌部材T2015と支持部材T2023との間にて摩擦抵抗が発生するため、常に、攪拌部材T2015の自由端側を先行して動かし、それから、その支持部材側を動かすことができる。このような動作がポンプ効果を生み出して、インク収納室内のインクi5000を積極的に上下に循環させることになる。また、大きく動く攪拌部材T2015の自由端側が鉛直方向の下側に位置するため、インク収納室の下側に沈降したインク中の顔料成分を攪拌しやすくなる。その結果、前述のポンプ効果と相俟ってインク収納室内全体のインクを効率よく攪拌して、顔料成分の濃度を確実に均一化することができる。
【0036】
本実施形態においては、このような基本動作をする撹拌部材T2015がインク収納室内に2つ備えられている。但し、本例における2つの撹拌部材T2015は、それらの動作が若干異なるように設定されている。
【0037】
図8(a)〜(e)は、2つの攪拌部材T2015の動作を説明する要部の斜視図である。本例では、2つの攪拌部材T2015の相互間にて、それぞれの移動に伴う慣性力と、インクi5000から受ける抵抗と、の比が異なるように、一方の攪拌部材の厚みを他方の約2倍とした。以下においては、2つの撹拌部材T2015の内、厚くて重い一方側を撹拌部材T2015Aとし、また薄くて軽い他方側を攪拌部材T2015Bとする。これらの撹拌部材T2015A,2015Bは、図8中の左右のいずれに配置してもよい。また、撹拌部材T2015A,2015Bの重さを異ならせるためには、本例のように、それらを同一材料として厚みを異ならせる他、比重の異なる材料を用いてもよい。
【0038】
図9は、それら2つの攪拌部材T2015の動作タイミングを説明するために、それらの自由端の変位の時間変化を示す模式図である。曲線Aは、重い撹拌部材T2015Aの自由端の変位特性曲線、曲線Bは、軽い撹拌部材T2015Bの自由端の変位特性曲線である。
【0039】
図8(a)は、攪拌部材T2015A、T2015Bの第1の状態(図6(a)参照)を示し、このとき、それらの自由端は図9の期間A中の状態にある。すなわち、キャリッジM4001と共にインクタンクT2000が矢印X1方向に移動し、攪拌部材T2015A,T2015Bは、いずれも慣性力により容器本体T2017の内壁側に押し付けられた状態にある。
【0040】
図8(b)は、攪拌部材T2015A、T2015Bが第1の状態(図6(a)参照)から第3の状態(図6(c)参照)に至る途中の状態を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Aの状態にある。前述したように、キャリッジM4001は記録幅に対応する位置において移動方向が反転し、インクタンクT2000は、そのキャリッジM4001と共に矢印X2方向の移動を始める。その際の慣性力により、攪拌部材T2015A、T2015Bの自由端側は、図6(b)のように、支持部材T2023との係合部を中心として矢印D1方向に回動を始める。つまり、攪拌部材T2015A、T2015Bは第2の状態となる。
【0041】
その際、重い撹拌部材T2015Aに対しては比較的大きな慣性力が働くため、その自由端はインクの抵抗に抗して比較的高速に回動する。一方、軽い撹拌部材T2015Bに働く慣性力は比較的小さいため、その自由端は比較的低速に回動する。そのため、図9中の時点Aにおいて、重い攪拌部材T2015Aが図6(b)の第2の状態を経て図6(c)の第3の状態に至る直前まで移行したとしても、軽い攪拌部材T2015Bは依然として図6(b)の第2の状態にある。このように、攪拌部材T2015A、T2015Bの動作に差が生じ、先に動く重い攪拌部材T2015Aの自由端側から、軽い攪拌部材T2015Bの自由端側に向かって、図8(b)中矢印F5方向のインクの流れが生じる。
【0042】
図8(c)は、攪拌部材T2015A、T2015Bの第3の状態(図6(c)参照)を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Cの状態にある。重い攪拌部材T2015Aは、軽い撹拌部材T2015Bよりも先に第3の状態となり、その後に、軽い撹拌部材T2015Bが第3の状態となる。つまり撹拌部材T2015Bは、攪拌部材T2015Aが第3の状態に至って停止してからも移動することになる。その際の攪拌部材T2015Bの移動により、攪拌部材T2015Bの自由端側から攪拌部材T2015Aの自由端側に向かって、図8(b)中の矢印F5方向とは逆の図8(c)中矢印F6方向に、インクの流れが生じる。
【0043】
図8(d)は、攪拌部材T2015A、T2015Bが第3の状態(図6(c)参照)から第4の状態(図6(d)参照)に至る途中の状態を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Dの状態にある。前述したように、キャリッジM4001は記録幅に対応する位置において移動方向が反転し、インクタンクT2000は、そのキャリッジM4001と共に矢印X1方向の移動を始める。その際の慣性力により、攪拌部材T2015A、T2015Bの自由端側は、図6(d)のように矢印D3方向に回動を始める。
【0044】
その際、重い撹拌部材T2015Aに対しては比較的大きな慣性力が働くため、その自由端はインクの抵抗に抗して比較的高速に回動する。一方、軽い撹拌部材T2015Bに働く慣性力は比較的小さいため、その自由端は比較的低速に回動する。そのため、重い攪拌部材T2015Aは比較的短時間で第4の状態に至り、一方、軽い攪拌部材T2015Bは、少し遅れてから第4の状態に至る。このように、攪拌部材T2015A、T2015Bの動作に差が生じ、先に動く重い攪拌部材T2015Aの自由端側から、軽い攪拌部材T2015Bの自由端側に向かって、図8(c)中矢印F7方向のインクの流れが生じる。
【0045】
図8(e)は、重い撹拌部材T2015Aが先に第4の状態に至ってから、軽い撹拌部材T2015Bが第4の状態に至る過程の状態を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Eの状態にある。重い攪拌部材T2015Aは、軽い撹拌部材T2015Bよりも先に第4の状態となり、その後に、軽い撹拌部材T2015Bが第4の状態となる。つまり撹拌部材T2015Bは、攪拌部材T2015Aが第4の状態に至って停止してからも移動することになる。その際の攪拌部材T2015Bの移動により、攪拌部材T2015Bの自由端側から攪拌部材T2015Aの自由端側に向かって、図8(d)中の矢印F7方向とは逆の図8(e)中矢印F8方向に、インクの流れが生じる。
【0046】
このように本実施形態においては、キャリッジの往復移動により発生する慣性力を利用して、撹拌部材がインクの攪拌動作を行なう。さらに、2つの攪拌部材の重さを異ならせて、それら働く慣性力を異ならせることにより、それらの攪拌動作に時間的な差を生じさせる。そして、その攪拌動作の時間差を利用することにより、キャリッジの移動方向だけではなく、キャリッジの移動方向と交差する方向にも積極的にインクの流れを生じさせて、攪拌効果を格段に向上させることができる。
【0047】
本例においては、2つの撹拌部材の攪拌動作に時間的な差を生じさせるために、それらに働く慣性力を異ならせ上、それらの撹拌部材が攪拌動作時にインクから受ける抵抗力をほぼ同一とするように、それらの攪拌面(攪拌方向を向く面)を同一とした。つまり、2つの撹拌部材の慣性モーメントをIa,Ib、それらの攪拌面の面積をSとしたときに、それらの比のIa/SとIb/Sを異ならせることにより、それらの撹拌部材の攪拌動作に時間的な差を生じさせた。また、2つの撹拌部材の質量を異ならせて、それらの質量Ma,Maと面積SとのMa/SとMb/Sとを異ならせることにより、それらの撹拌部材が支持部材に沿って直線的に移動する際に、それらの移動タイミングを異ならせることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態におけるインクタンクの要部の斜視図である。
【0049】
本例のインクタンクは、重さと大きさがほぼ等しい2つの攪拌部材2015C,2015Dを備えている。これらの攪拌部材2015C,2015Dの慣性モーメントはほぼ等しい。一方の撹拌部材T2015Cの攪拌面は平面であり、他方の撹拌部材T2015Dの攪拌面は、波状に形成されて表面積が増やされている。したがって、撹拌部材T2015Dが攪拌動作する際にインクから受ける抵抗は、撹拌部材T2015Cよりも大きくなる。そのため、撹拌部材T2015C,2015Dの攪拌面の面積をSa,Sbとし、それらの慣性モーメントをIとしたときには、I/SaとI/Sbとが異なる。また、撹拌部材T2015C,2015Dの質量をMとしたときには、M/SaとM/Sbとが異なる。
【0050】
本例においては、キャリッジの移動によって、平板上の攪拌部材T2015Cが先に動作し、波板状の攪拌部材T2015Dが遅れて動作することになる。この結果、前述した実施形態と同様に、それらの攪拌動作の時間的な差により、攪拌部材の並び方向、つまりキャリッジの移動方向と交差する図8中の矢印F5,F6,F7,F8方向に積極的なインクの流れが生じる。したがって、前述した実施形態と同様に、2つの攪拌部材の並び方向にインクの対流を発生させることにより、インクの攪拌効率を格段に向上させることができる。本例においては、2つの撹拌部材の重量を同等にして、それらの表面積を変化させるために、それらの表面形状を異ならせている。しかし、それらの撹拌部材の表面積を異ならせる方法は、それらの輪郭形状を異ならせる等、任意である。
【0051】
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、2つの撹拌部材の攪拌動作のタイミングをずらすために、それらの慣性モーメントと攪拌面の面積との比を異ならせたり、あるいは、それらの質量と攪拌面の面積との比を異ならせた。しかし、それらの撹拌部材は、移動開始の時期、移動速度、移動方向、移動距離、または移動軌跡などの少なくとも1つの違いによって、移動形態が異なるものであればよい。また、このように移動形態を異ならせるためには、撹拌部材の移動距離や移動軌跡を異ならせるように規制するストッパやガイド機構、あるいは撹拌部材に異なる移動抵抗を付与する機構などを用いることができる。より具体的には、一方の撹拌部材の移動距離を比較的長く、他方を比較的短く規制するストッパ、または、一方の撹拌部材の移動軌跡を直線的、他方を曲線的に規制するガイド機構を用いることができる。また、一方の撹拌部材は回転を伴って移動させ、他方は回転を伴わずに移動させるガイド機構などを用いることもできる。
【0052】
要は、2つの撹拌部材の移動形態が異ならせて、一方の撹拌部材の位置から他方の撹拌部材の位置に向かって、インクの流れを生じさせることができればよい。
【0053】
また、インク収納室内に3つ以上の撹拌部材を備えてもよく、また、そのインク収納室の構成も任意であり、何ら上述した実施形態の構成に特定されない。また本発明は、インクを収納するインクタンクの他、種々の液体を収納する収納容器としても広く適用することができる。また本発明は、記録媒体にインクを付与可能な種々の記録ヘッドを用いる記録装置に対して、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクタンクの斜視図である。
【図2】図1のインクタンクの分解斜視図である。
【図3】図1のインクタンクの内部を説明するための要部の斜視図である。
【図4】(a)は、図2における撹拌部材の正面図、(b)は、その撹拌部材の変形例を説明するための正面図である。
【図5】図2における支持部材の変形例を説明するための正面図である。
【図6】(a)から(d)は、図2における2つの撹拌部材の内の一方の動作を説明するためのインクタンクの断面図である。
【図7】(a)から(d)は、図2における2つの撹拌部材の内の一方の動作を説明するための要部の拡大斜視図である。
【図8】(a)から(e)は、図2における2つの撹拌部材の動作を説明するためのインクタンクの要部の斜視図である。
【図9】図2における2つの攪拌部材の動作の違いを説明するための動作の特性曲線図である。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるインクタンクの要部の斜視図である。
【図11】本発明のインクタンクを適用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。
【図12】図11のインクジェット記録装置の内部構成を説明するための要部の斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
M4001 キャリッジ
T2000 インクタンク
T2001 インク収納室
T2015 攪拌部材
T2015A,2015B,2015C,2015D 攪拌部材
T2017 容器本体
T2018 蓋部材
T2023 支持部材
T2024 抜け止め部
i5000 顔料インク(液体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクなどの種々の液体を収納すると共に、その液体の成分を均一化するための機能をもつ液体収納容器に関し、特に、インクジェット記録装置に用いられる顔料インク収納用のインクタンクとして好適な液体収納容器に関するものである。さらに本発明は、そのような液体収納容器を用いることが可能な記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置としては、顔料インクを用いて記録を行うものが知られている。その顔料インクは、それを収納するインクタンクから、インクを吐出可能なインクジェット記録装置に供給される。顔料インクとは、色素として顔料を用い、その顔料をインク溶媒に分散させたものである。
【0003】
顔料インクを用いて画像が記録された記録媒体は、耐光性および耐水性に優れているという利点をもつ。しかしながら、顔料インクは、顔料自体が粒子としてインク溶媒中に分散しているため、その顔料インクを収納するインクタンク(液体収納容器)が長時間放置された場合には、その顔料インク中の顔料が溶媒中において沈降する。例えば、インクタンクが備えられた記録装置を長時間休止させたまま放置した場合には、そのインクタンクの底面に顔料粒子が沈降し、インクタンク内の上部側の顔料インクは顔料濃度が薄く、その下部側顔料インクは顔料濃度が濃くなって、濃度勾配が発生する。この状態のインクタンクから顔料インクを供給して画像を記録した場合には、供給される顔料インクの顔料濃度が不均一となって、記録画像に濃度むらが生じるおそれがある。顔料濃度が極端に高い顔料インクが記録ヘッドに供給された場合には、凝集した顔料が記録ヘッドの流路部分を詰まって、記録ヘッドからのインクの吐出が不能となるおそれがある。
【0004】
インクタンク内における顔料インクの顔料濃度を均一化して、それを均質化するための方法として、特許文献1には、インクタンク内に撹拌部材を備える構成が提案されている。そのインクタンクは、いわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置におけるキャリッジ上に搭載されるものであり、記録動作時には、キャリッジと共に往復移動される。そのインクタンク内に備わる撹拌部材は、キャリッジと共にインクタンクが往復移動するときに働く慣性力を利用して、インクタンク内の顔料インクを攪拌するように動作する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−066520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようにキャリッジの往復移動に伴う慣性力を利用して撹拌部材が攪拌動作する場合、撹拌部材が比較的動作しやすいキャリッジの移動方向に関しては、顔料インクの攪拌が促進される。しかし、キャリッジの移動方向と直交する方向に関しては、撹拌部材が比較的動作しにくいため、顔料インクの攪拌はあまり期待できない。
【0007】
また通常、シリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置におけるインクタンクは、キャリッジの移動方向に並ぶように、そのキャリッジ上に複数搭載される。そのためインクタンクは、キャリッジの移動方向における幅が比較的小さく設定され、キャリッジの移動方向と交差する方向における幅が比較的大きく設定されている。したがって、キャリッジの移動方向と交差する方向に関しては、インクタンクの幅が比較的大きいために顔料インクの対流が生じにくい。
【0008】
本発明の目的は、内部に収納する顔料インクなどの液体に、それを効率よく攪拌するための流れを積極的に生じさせることができる液体収納容器、および、そのような液体容器を用いて高品位な画像を記録可能な記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体収納容器は、液体を収納可能な収納室と、前記収納室内の液体を外部に供給可能な供給口と、前記収納室内に備えられて慣性力によって移動可能な撹拌部材と、を備えた液体収納容器において、前記撹拌部材を複数備え、前記複数の撹拌部材の少なくとも2つは、慣性力によって移動するときの移動形態が異なるものであることを特徴とする。
【0010】
本発明の記録装置は、液体のインクを収納するインクタンクと、前記インクタンクから供給されるインクを記録媒体に付与可能な記録ヘッドと、を搭載可能なキャリッジを備え、前記キャリッジの往復移動を伴って記録媒体上に画像を記録する記録装置において、前記キャリッジは、前記インクタンクとして請求項1から8のいずれかに記載の液体収納容器を搭載可能であり、かつ前記複数の撹拌部材を移動させるように往復移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動形態が異なる少なくとも2つの撹拌部材を収納室内に備えることにより、それらの撹拌部材が慣性力によって移動する際に、それらの撹拌部材の配備位置の相互間において、液体の流れを積極的に生じさせることができる。この結果、その積極的な液体の流れにより、液体の攪拌効率を簡便かつ低コストで格段に高めることができる。その積極的な液体の流れの方向は、撹拌部材の配備位置に応じて最適に設定することができる。
【0012】
また、液体のインクを収納した場合には、そのインクを効率よく攪拌して均質化することができ、その結果、その均質化されたインクを用いて高品位の画像を記録することができる。例えば、液体の顔料インクを収納した場合には、顔料粒子の沈降に起因する記録品位の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
本実施形態における液体収納容器は、シリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置に用いられる顔料インク収納用のインクタンクとしての適用例である。
【0015】
本例のインクタンクが搭載されるインクジェット記録装置は、いわゆるノンインパクト記録方式の記録装置である。この記録方式は、高速記録および様々な記録媒体に対する記録が可能であり、また記録時における騒音がほとんど生じないため、プリンタ、ワードプロセッサ、ファクシミリ、および複写機等において記録機構を担う装置に広く採用されている。
【0016】
図11は、本例のインクジェット記録装置の斜視図であり、その記録装置は、主に、装置本体M1000、給送部M3022、および排出トレイM1004から構成される。装置本体M1000の内部は、図12に示すように、シャーシM3019と各記録動作機構等から構成されている。主走査方向(矢印X方向)に移動可能なキャリッジM4001には、画像の記録位置に搬送された記録媒体に対して所望の記録を行うための記録ヘッドカートリッジ(不図示)が着脱自在に搭載される。記録媒体は、画像の記録位置において、主走査方向と交差する副走査方向(矢印Y方向)に搬送させる。記録ヘッドカートリッジは、記録ヘッドと、その記録ヘッドに対して着脱自在のインクタンクT2000(図1参照)と、を含む。記録ヘッドは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いて、インク滴を吐出させる構成となっている。発熱抵抗体を有する電気熱変換素子(ヒータ)を用いた場合には、その電気熱変換素子の発熱によってインクを加熱し、そのときのインクの膜沸騰の作用により、インク滴を吐出口より吐出させることができる。
【0017】
記録媒体に画像を記録する際には、記録走査と、記録媒体の搬送動作と、が順次繰り返される。記録走査においては、記録ヘッドカートリッジがキャリッジM4001と共に主走査方向に移動しつつ、記録ヘッドからインクを吐出する。記録媒体の搬送動作においては、記録媒体が副走査方向に所定量搬送させる。
【0018】
図1は、記録ヘッドと共に記録ヘッドカートリッジを構成するインクタンクT2000の斜視図である。本例のインクタンクT2000は、容器本体T2017と蓋部材T2018とを含み、それらの内部に顔料インクを収納するための収納室が形成されている。インクタンクT2000の底面には、内部に収納したインクを記録ヘッドに供給するためのインク供給口T2002が形成されている。
【0019】
図2は、インクタンクT2000の分解斜視図であり、容器本体T2017には、ばね部材T2005、板部材T2022、可撓性フィルムT2004、メニスカス部材T2020、押え板T2021、および攪拌部材T2015が備えられている。図3は、撹拌部材T2015が取り付けられた容器本体T2017の斜視図である。
【0020】
容器本体T2017は、例えば、ポリプロピレンによって形成されており、容器本体T2017の底部のインク供給口T2002にはメニスカス形成部材T2020が備えられている。また、ニスカス形成部材T2020の外側におけるインク供給口T2002には、押え部材T2021が取り付けられている。メニスカス形成部材T2020は、例えば、ポリプロピレンの繊維材料から形成されて毛細管力を有する毛管部材、あるいは、その毛管部材とフィルター部材(孔径10〜50μM程度)とを組み合わせたものである。メニスカス形成部材T2020は、インク流路T2019によって、後述する容器本体T2017の内部のインク収納室に連通されており、インク収納室に外部から気泡が侵入しないようにインクのメニスカスを形成する。
【0021】
容器本体T2017は、その開口周縁部T2016に可撓性フィルムT2004の周部が溶着されることにより、顔料インクi5000(図6参照)を収納するためのインク収納室T2001(図6参照)を形成する。可撓性フィルムT2004は、例えば、ポリプロピレンの薄膜を含むフィルム部材(厚み20〜100μM程度)である。可撓性フィルムT2004は、板部材T2022を介してばね部材T2005により外方に付勢され、これにより、インク収納室T2001には負圧が発生している。ばね部材T2005と板部材T2022は、例えば、ステンレス材料により形成されている。容器本体T2017の開口部には蓋部材T2018が取り付けられ、その蓋部材T2018は、インク収納室T2001の外方に向かって凸型となる可撓性フィルムT2004を保護する。蓋部材T2018には、大気連通部(不図示)が設けられており、容器本体T2017内におけるインク収納室T2001の外側が大気圧とされている。
【0022】
インク収納室T2001内のインクが記録ヘッドへの供給によって消費されると、ばね部材T2005が縮みと、可撓性フィルムT2004の撓みを伴って、インク収納室T2001の容積が減少する。板部材T2022には、後述の支持部材との干渉を避けるための開口T2027が設けられている。これにより、板部材T2022が容器本体T2017の内壁に接触するまで、インク収納室T2001内のインクを消費することが可能となっている。
【0023】
次に、本例のインクタンクにおけるインクの攪拌機構について説明する。
【0024】
インク収納室T2001内には、インクを攪拌するための攪拌機構が備えられている。本例の攪拌機構は、容器本体T2017の内壁に設けられた支持部材T2023と、攪拌部材T2015と、から構成されており、支持部材T2023は、攪拌部材T2015の一端側を支持している。支持部材T2023には、キャリッジM4001が移動する主走査方向に平行な軸部と、抜け止め部T2024と、が形成されている。本例のように容器本体T2017が樹脂材料によって形成される場合には、その容器本体T2017と一体成形されるボスとして、支持部材T2023を形成してもよい。この場合には、そのボスの先端部を熱加工により広げることにより、先端に抜け止め部T2024を有するリベット状に形成することができる。また支持部材T2023は、図5に示すように、ヘッド部を有するねじ部材であってもよい。そのねじ部材の先端のねじ部を容器本体T2017に埋め込むことにより、そのヘッド部を抜け止め部T2024として機能させることができる。
【0025】
攪拌部材T2015は、例えば、図4(a)あるいは図4(b)のように構成することができる。図6(a)の攪拌部材T2015は、その一端側に、支持部材T2023と係合する凹部T2025が形成された板部材である。図6(b)の攪拌部材T2015は、一端側に、支持部材T2023と係合する穴T2026が形成された板部材である。これらの攪拌部材T2023(1),T2023(2)は、例えば、ステンレス材料により形成されている。
【0026】
支持部材T2023は、攪拌部材T2015の厚みに方向において、その移動を許容する隙間を形成するように抜け止め部T2024が設けられている。また、支持部材T2023の軸部分は、攪拌部材T2015の凹部T2025または穴T2026に対して余裕をもって係合しており、それらの間には隙間が形成されている。2本の支持部材T2023は、2箇所の凹部T2025の間に位置する撹拌部材T2015の部分、または2箇所の穴T2026の間に位置する撹拌部材T2015の部分を挟むようにして、攪拌部材T2015を支持することになる。
【0027】
本例においては、2本の支持部材T2023を主走査方向に沿うように水平に設けて、それらを互いに平行としている。これにより、攪拌部材T2015が主走査方向に沿って回動する際に、その撹拌部材T2015と支持部材T2023との係合部分に回動中心軸が定まり、その軸を中心とする撹拌部材T2915の回動によって、インクが効果的に攪拌される。仮に、支持部材T2023が1本の棒状のものであった場合には、攪拌部材T2015が点によって支持されるため、その支持点を中心とする攪拌部材T2015の全方向の回動が自由となる。そのため、攪拌部材T2015を主走査方向に沿って回動させるための回動軸が定まらない。その結果、撹拌部材T2015に対して主走査方向の慣性力が働いたときに、攪拌部材T2015は、インクの抵抗を受けにくい角度の姿勢となって回動することになり、インクを充分に攪拌することが難しくなる。
【0028】
このように攪拌部材T2015は、その一端側が支持部材T2023によって容器本体T2017に支持され、その支持部材T2023の軸線方向に沿って直線的に移動自在であり、かつ支持部材T2023との係合部分を中心として主走査方向に回動自在である。
【0029】
図6(a)〜(d)は、攪拌部材T2015の基本動作を説明する断面図であり、図1のVI−VIに沿う断面図である。図7(a)〜(d)は、攪拌部材T2015の基本動作を説明する斜視図である。これらの図における撹拌部材T2015は、図4(a)の構成のものであり、図4(b)の構成のものも同様に動作する。
【0030】
図6(a)および図7(a)は、いずれも攪拌部材T2015の第1の状態を示している。キャリッジM4001の主走査方向の往復移動に伴って、インクタンクT2000が矢印X1の方向に移動したときには、これらの図のように、インク収納室T2001内の攪拌部材T2015は、慣性力により容器本体T2017の内壁側に押し付けられる。
【0031】
図6(b)および図7(b)は、攪拌部材T2015の第2の状態を示している。キャリッジM4001は、画像の記録幅の範囲にて往復移動するため、その記録幅に対応する位置において停止した後、その移動方向が矢印X1方向から矢印X2方向に変化する。その際の慣性力により、攪拌部材T2015の自由端側は、図6(b)および図7(b)のように、支持部材T2023を中心として、主走査方向に沿う矢印D1方向に回動する。その回動は、攪拌部材T2015の凹部T2025と支持部材T2023の軸部との間の隙間の範囲内にて、許容される。攪拌部材T2015の自由端側が容器本体T2017から離れると、それらの間には、矢印F1のようにインクi5000が流れ込む。
【0032】
図6(c)および図7(c)は、攪拌部材T2015の第3の状態を示している。インクタンクT2000がキャリッジM4001と共に矢印C2方向にさらに移動すると、攪拌部材T2015の支持部材側の端部も慣性力により移動し始め、支持部材T2023の軸部に沿って攪拌部材T2015全体が矢印E1の方向に移動する。そして、図6(c)および図7(c)のように、攪拌部材T2015の支持部材側の端部が容器本体の内壁から離れて、その支持部材側の端部が抜け止め部T2024に突き当たると、攪拌部材T2015の自由端側は、さらに矢印D2方向に回動する。インクi5000は、さらに矢印F2のように攪拌部材T2015の上側にまで流れ込む。
【0033】
図6(d)および図7(d)は、攪拌部材T2015の第4の状態を示している。キャリッジM4001は、記録幅に対応する位置において停止した後、その移動方向が矢印X2方向から矢印X1方向に変化する。その際の慣性力により、攪拌部材T2015の自由端側がまず最初に動き出し、図6(d)および図7(d)のように、その自由端側が支持部材T2023を中心として矢印D3方向に回動して、容器本体T2017の内壁に接触する。それから、攪拌部材T2015の支持部材側が支持部材T2023の軸部に沿って矢印E2方向に移動する。攪拌部材T2015が容器本体T2017の内壁に近づくと、それらの間に介在していたインクi5000は矢印F3方向に移動する。
【0034】
攪拌部材T2015の第4の状態の次は、図6(a)および図7(a)に示す第1の状態に戻り、インクi5000は矢印F4方向に移動する。このように攪拌部材T2015は、キャリッジM4001の往復移動に伴って、第1、第2、第3、および第4の状態を繰り返す。
【0035】
攪拌部材T2015は、このように、キャリッジM4001の往復移動に伴って発生する慣性力を利用して動作し、インクi5000を攪拌する。その攪拌動作においては、攪拌部材T2015と支持部材T2023との間にて摩擦抵抗が発生するため、常に、攪拌部材T2015の自由端側を先行して動かし、それから、その支持部材側を動かすことができる。このような動作がポンプ効果を生み出して、インク収納室内のインクi5000を積極的に上下に循環させることになる。また、大きく動く攪拌部材T2015の自由端側が鉛直方向の下側に位置するため、インク収納室の下側に沈降したインク中の顔料成分を攪拌しやすくなる。その結果、前述のポンプ効果と相俟ってインク収納室内全体のインクを効率よく攪拌して、顔料成分の濃度を確実に均一化することができる。
【0036】
本実施形態においては、このような基本動作をする撹拌部材T2015がインク収納室内に2つ備えられている。但し、本例における2つの撹拌部材T2015は、それらの動作が若干異なるように設定されている。
【0037】
図8(a)〜(e)は、2つの攪拌部材T2015の動作を説明する要部の斜視図である。本例では、2つの攪拌部材T2015の相互間にて、それぞれの移動に伴う慣性力と、インクi5000から受ける抵抗と、の比が異なるように、一方の攪拌部材の厚みを他方の約2倍とした。以下においては、2つの撹拌部材T2015の内、厚くて重い一方側を撹拌部材T2015Aとし、また薄くて軽い他方側を攪拌部材T2015Bとする。これらの撹拌部材T2015A,2015Bは、図8中の左右のいずれに配置してもよい。また、撹拌部材T2015A,2015Bの重さを異ならせるためには、本例のように、それらを同一材料として厚みを異ならせる他、比重の異なる材料を用いてもよい。
【0038】
図9は、それら2つの攪拌部材T2015の動作タイミングを説明するために、それらの自由端の変位の時間変化を示す模式図である。曲線Aは、重い撹拌部材T2015Aの自由端の変位特性曲線、曲線Bは、軽い撹拌部材T2015Bの自由端の変位特性曲線である。
【0039】
図8(a)は、攪拌部材T2015A、T2015Bの第1の状態(図6(a)参照)を示し、このとき、それらの自由端は図9の期間A中の状態にある。すなわち、キャリッジM4001と共にインクタンクT2000が矢印X1方向に移動し、攪拌部材T2015A,T2015Bは、いずれも慣性力により容器本体T2017の内壁側に押し付けられた状態にある。
【0040】
図8(b)は、攪拌部材T2015A、T2015Bが第1の状態(図6(a)参照)から第3の状態(図6(c)参照)に至る途中の状態を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Aの状態にある。前述したように、キャリッジM4001は記録幅に対応する位置において移動方向が反転し、インクタンクT2000は、そのキャリッジM4001と共に矢印X2方向の移動を始める。その際の慣性力により、攪拌部材T2015A、T2015Bの自由端側は、図6(b)のように、支持部材T2023との係合部を中心として矢印D1方向に回動を始める。つまり、攪拌部材T2015A、T2015Bは第2の状態となる。
【0041】
その際、重い撹拌部材T2015Aに対しては比較的大きな慣性力が働くため、その自由端はインクの抵抗に抗して比較的高速に回動する。一方、軽い撹拌部材T2015Bに働く慣性力は比較的小さいため、その自由端は比較的低速に回動する。そのため、図9中の時点Aにおいて、重い攪拌部材T2015Aが図6(b)の第2の状態を経て図6(c)の第3の状態に至る直前まで移行したとしても、軽い攪拌部材T2015Bは依然として図6(b)の第2の状態にある。このように、攪拌部材T2015A、T2015Bの動作に差が生じ、先に動く重い攪拌部材T2015Aの自由端側から、軽い攪拌部材T2015Bの自由端側に向かって、図8(b)中矢印F5方向のインクの流れが生じる。
【0042】
図8(c)は、攪拌部材T2015A、T2015Bの第3の状態(図6(c)参照)を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Cの状態にある。重い攪拌部材T2015Aは、軽い撹拌部材T2015Bよりも先に第3の状態となり、その後に、軽い撹拌部材T2015Bが第3の状態となる。つまり撹拌部材T2015Bは、攪拌部材T2015Aが第3の状態に至って停止してからも移動することになる。その際の攪拌部材T2015Bの移動により、攪拌部材T2015Bの自由端側から攪拌部材T2015Aの自由端側に向かって、図8(b)中の矢印F5方向とは逆の図8(c)中矢印F6方向に、インクの流れが生じる。
【0043】
図8(d)は、攪拌部材T2015A、T2015Bが第3の状態(図6(c)参照)から第4の状態(図6(d)参照)に至る途中の状態を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Dの状態にある。前述したように、キャリッジM4001は記録幅に対応する位置において移動方向が反転し、インクタンクT2000は、そのキャリッジM4001と共に矢印X1方向の移動を始める。その際の慣性力により、攪拌部材T2015A、T2015Bの自由端側は、図6(d)のように矢印D3方向に回動を始める。
【0044】
その際、重い撹拌部材T2015Aに対しては比較的大きな慣性力が働くため、その自由端はインクの抵抗に抗して比較的高速に回動する。一方、軽い撹拌部材T2015Bに働く慣性力は比較的小さいため、その自由端は比較的低速に回動する。そのため、重い攪拌部材T2015Aは比較的短時間で第4の状態に至り、一方、軽い攪拌部材T2015Bは、少し遅れてから第4の状態に至る。このように、攪拌部材T2015A、T2015Bの動作に差が生じ、先に動く重い攪拌部材T2015Aの自由端側から、軽い攪拌部材T2015Bの自由端側に向かって、図8(c)中矢印F7方向のインクの流れが生じる。
【0045】
図8(e)は、重い撹拌部材T2015Aが先に第4の状態に至ってから、軽い撹拌部材T2015Bが第4の状態に至る過程の状態を示し、このとき、それらの自由端は図9中の時点Eの状態にある。重い攪拌部材T2015Aは、軽い撹拌部材T2015Bよりも先に第4の状態となり、その後に、軽い撹拌部材T2015Bが第4の状態となる。つまり撹拌部材T2015Bは、攪拌部材T2015Aが第4の状態に至って停止してからも移動することになる。その際の攪拌部材T2015Bの移動により、攪拌部材T2015Bの自由端側から攪拌部材T2015Aの自由端側に向かって、図8(d)中の矢印F7方向とは逆の図8(e)中矢印F8方向に、インクの流れが生じる。
【0046】
このように本実施形態においては、キャリッジの往復移動により発生する慣性力を利用して、撹拌部材がインクの攪拌動作を行なう。さらに、2つの攪拌部材の重さを異ならせて、それら働く慣性力を異ならせることにより、それらの攪拌動作に時間的な差を生じさせる。そして、その攪拌動作の時間差を利用することにより、キャリッジの移動方向だけではなく、キャリッジの移動方向と交差する方向にも積極的にインクの流れを生じさせて、攪拌効果を格段に向上させることができる。
【0047】
本例においては、2つの撹拌部材の攪拌動作に時間的な差を生じさせるために、それらに働く慣性力を異ならせ上、それらの撹拌部材が攪拌動作時にインクから受ける抵抗力をほぼ同一とするように、それらの攪拌面(攪拌方向を向く面)を同一とした。つまり、2つの撹拌部材の慣性モーメントをIa,Ib、それらの攪拌面の面積をSとしたときに、それらの比のIa/SとIb/Sを異ならせることにより、それらの撹拌部材の攪拌動作に時間的な差を生じさせた。また、2つの撹拌部材の質量を異ならせて、それらの質量Ma,Maと面積SとのMa/SとMb/Sとを異ならせることにより、それらの撹拌部材が支持部材に沿って直線的に移動する際に、それらの移動タイミングを異ならせることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態におけるインクタンクの要部の斜視図である。
【0049】
本例のインクタンクは、重さと大きさがほぼ等しい2つの攪拌部材2015C,2015Dを備えている。これらの攪拌部材2015C,2015Dの慣性モーメントはほぼ等しい。一方の撹拌部材T2015Cの攪拌面は平面であり、他方の撹拌部材T2015Dの攪拌面は、波状に形成されて表面積が増やされている。したがって、撹拌部材T2015Dが攪拌動作する際にインクから受ける抵抗は、撹拌部材T2015Cよりも大きくなる。そのため、撹拌部材T2015C,2015Dの攪拌面の面積をSa,Sbとし、それらの慣性モーメントをIとしたときには、I/SaとI/Sbとが異なる。また、撹拌部材T2015C,2015Dの質量をMとしたときには、M/SaとM/Sbとが異なる。
【0050】
本例においては、キャリッジの移動によって、平板上の攪拌部材T2015Cが先に動作し、波板状の攪拌部材T2015Dが遅れて動作することになる。この結果、前述した実施形態と同様に、それらの攪拌動作の時間的な差により、攪拌部材の並び方向、つまりキャリッジの移動方向と交差する図8中の矢印F5,F6,F7,F8方向に積極的なインクの流れが生じる。したがって、前述した実施形態と同様に、2つの攪拌部材の並び方向にインクの対流を発生させることにより、インクの攪拌効率を格段に向上させることができる。本例においては、2つの撹拌部材の重量を同等にして、それらの表面積を変化させるために、それらの表面形状を異ならせている。しかし、それらの撹拌部材の表面積を異ならせる方法は、それらの輪郭形状を異ならせる等、任意である。
【0051】
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、2つの撹拌部材の攪拌動作のタイミングをずらすために、それらの慣性モーメントと攪拌面の面積との比を異ならせたり、あるいは、それらの質量と攪拌面の面積との比を異ならせた。しかし、それらの撹拌部材は、移動開始の時期、移動速度、移動方向、移動距離、または移動軌跡などの少なくとも1つの違いによって、移動形態が異なるものであればよい。また、このように移動形態を異ならせるためには、撹拌部材の移動距離や移動軌跡を異ならせるように規制するストッパやガイド機構、あるいは撹拌部材に異なる移動抵抗を付与する機構などを用いることができる。より具体的には、一方の撹拌部材の移動距離を比較的長く、他方を比較的短く規制するストッパ、または、一方の撹拌部材の移動軌跡を直線的、他方を曲線的に規制するガイド機構を用いることができる。また、一方の撹拌部材は回転を伴って移動させ、他方は回転を伴わずに移動させるガイド機構などを用いることもできる。
【0052】
要は、2つの撹拌部材の移動形態が異ならせて、一方の撹拌部材の位置から他方の撹拌部材の位置に向かって、インクの流れを生じさせることができればよい。
【0053】
また、インク収納室内に3つ以上の撹拌部材を備えてもよく、また、そのインク収納室の構成も任意であり、何ら上述した実施形態の構成に特定されない。また本発明は、インクを収納するインクタンクの他、種々の液体を収納する収納容器としても広く適用することができる。また本発明は、記録媒体にインクを付与可能な種々の記録ヘッドを用いる記録装置に対して、広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクタンクの斜視図である。
【図2】図1のインクタンクの分解斜視図である。
【図3】図1のインクタンクの内部を説明するための要部の斜視図である。
【図4】(a)は、図2における撹拌部材の正面図、(b)は、その撹拌部材の変形例を説明するための正面図である。
【図5】図2における支持部材の変形例を説明するための正面図である。
【図6】(a)から(d)は、図2における2つの撹拌部材の内の一方の動作を説明するためのインクタンクの断面図である。
【図7】(a)から(d)は、図2における2つの撹拌部材の内の一方の動作を説明するための要部の拡大斜視図である。
【図8】(a)から(e)は、図2における2つの撹拌部材の動作を説明するためのインクタンクの要部の斜視図である。
【図9】図2における2つの攪拌部材の動作の違いを説明するための動作の特性曲線図である。
【図10】本発明の第2の実施形態におけるインクタンクの要部の斜視図である。
【図11】本発明のインクタンクを適用可能なインクジェット記録装置の斜視図である。
【図12】図11のインクジェット記録装置の内部構成を説明するための要部の斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
M4001 キャリッジ
T2000 インクタンク
T2001 インク収納室
T2015 攪拌部材
T2015A,2015B,2015C,2015D 攪拌部材
T2017 容器本体
T2018 蓋部材
T2023 支持部材
T2024 抜け止め部
i5000 顔料インク(液体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収納可能な収納室と、前記収納室内の液体を外部に供給可能な供給口と、前記収納室内に備えられて慣性力によって移動可能な撹拌部材と、を備えた液体収納容器において、
前記撹拌部材を複数備え、
前記複数の撹拌部材の少なくとも2つは、慣性力によって移動するときの移動形態が異なるものである
ことを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記少なくとも2つの撹拌部材の移動形態は、移動開始の時期、移動速度、移動方向、移動距離、および移動軌跡の内の少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記少なくとも2つの撹拌部材は、慣性モーメントと、前記慣性力が働く方向を向く攪拌面の面積と、の比が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記少なくとも2つの撹拌部材は、質量と、前記慣性力が働く方向を向く攪拌面の面積と、の比が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記複数の撹拌部材は、前記液体収納容器の使用時の移動に伴う慣性力によって移動することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記複数の撹拌部材は、前記液体収納容器の使用時の移動方向と交差する方向に並んで配置されることを特徴とする請求項5に記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記収納室は液体のインクを収納可能であり、
前記供給口は、記録媒体にインクを付与可能な記録ヘッドに対して、前記収納室内のインクを供給可能であり、
前記複数の撹拌部材は、前記液体収納容器が前記記録ヘッドと共に往復移動可能な記録装置のキャリッジに搭載されて使用されるときに、前記キャリッジの往復移動に伴う慣性力によって移動する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記インクは、顔料成分を含むインクであることを特徴とする請求項7に記載の液体収納容器。
【請求項9】
液体のインクを収納するインクタンクと、前記インクタンクから供給されるインクを記録媒体に付与可能な記録ヘッドと、を搭載可能なキャリッジを備え、前記キャリッジの往復移動を伴って記録媒体上に画像を記録する記録装置において、
前記キャリッジは、前記インクタンクとして請求項1から8のいずれかに記載の液体収納容器を搭載可能であり、かつ前記複数の撹拌部材を移動させるように往復移動する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
前記記録ヘッドは、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【請求項1】
液体を収納可能な収納室と、前記収納室内の液体を外部に供給可能な供給口と、前記収納室内に備えられて慣性力によって移動可能な撹拌部材と、を備えた液体収納容器において、
前記撹拌部材を複数備え、
前記複数の撹拌部材の少なくとも2つは、慣性力によって移動するときの移動形態が異なるものである
ことを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記少なくとも2つの撹拌部材の移動形態は、移動開始の時期、移動速度、移動方向、移動距離、および移動軌跡の内の少なくとも1つが異なることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記少なくとも2つの撹拌部材は、慣性モーメントと、前記慣性力が働く方向を向く攪拌面の面積と、の比が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記少なくとも2つの撹拌部材は、質量と、前記慣性力が働く方向を向く攪拌面の面積と、の比が異なることを特徴とする請求項1または2に記載の液体収納容器。
【請求項5】
前記複数の撹拌部材は、前記液体収納容器の使用時の移動に伴う慣性力によって移動することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項6】
前記複数の撹拌部材は、前記液体収納容器の使用時の移動方向と交差する方向に並んで配置されることを特徴とする請求項5に記載の液体収納容器。
【請求項7】
前記収納室は液体のインクを収納可能であり、
前記供給口は、記録媒体にインクを付与可能な記録ヘッドに対して、前記収納室内のインクを供給可能であり、
前記複数の撹拌部材は、前記液体収納容器が前記記録ヘッドと共に往復移動可能な記録装置のキャリッジに搭載されて使用されるときに、前記キャリッジの往復移動に伴う慣性力によって移動する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体収納容器。
【請求項8】
前記インクは、顔料成分を含むインクであることを特徴とする請求項7に記載の液体収納容器。
【請求項9】
液体のインクを収納するインクタンクと、前記インクタンクから供給されるインクを記録媒体に付与可能な記録ヘッドと、を搭載可能なキャリッジを備え、前記キャリッジの往復移動を伴って記録媒体上に画像を記録する記録装置において、
前記キャリッジは、前記インクタンクとして請求項1から8のいずれかに記載の液体収納容器を搭載可能であり、かつ前記複数の撹拌部材を移動させるように往復移動する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
前記記録ヘッドは、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項9に記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−301859(P2007−301859A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133048(P2006−133048)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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