説明

液体口腔用組成物

【課題】有効成分の口腔内残留性に優れた液体口腔組成物の提供。
【解決手段】塩化セチルピリジニウム及び/又はビタミン類0.005〜0.5重量%と非アニオン性水溶性高分子0.01〜1.0重量%配合し、かつ組成物の粘度を10〜500mPa・sになるように調製した液体口腔用組成物該液体口腔用組成物の非アニオン性水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロースであり、ビタミン類が、ピリドキシン類および/またはビタミンEエステルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体口腔用組成物に関し、更に詳しくは、塩化セチルピリジニウムおよびビタミン類の口腔内残留性に優れた液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕および歯周炎の原因として歯垢(プラーク)の付着があり、従来から、口腔衛生においてはその除去や付着予防、すなわち歯垢付着予防(プラークコントロール)に重点を置いてきたが、最近では歯茎における十分な血流量の確保も重要であるといわれている。一方、食文化の変化や偏食に加え、食事時間の不定期化、持続的な間食習慣など、口腔内の衛生環境を良い状態に維持する上で好ましくない生活を送る人や、抵抗力が低下する高齢者、生活習慣病、特に糖尿病患者などの増加に伴い、歯周病の慢性化に悩みを有する人が増えている。これらの状況に対応し、口腔疾患の症状緩和や予防に対する、簡便でかつ有効的な商品の提供が望まれている。従来からプラークコントロールの方法として、ブラッシングすなわち歯ブラシで機械的に歯垢を除去する方法や殺菌剤を用いることにより口腔内細菌を殺菌する化学的プラークコントロールの方法が一般的に行なわれてきた。しかし、歯ブラシによる歯垢の完全な除去は困難であり、特に奥歯周辺や歯間部、歯周ポケットにおける清掃は不十分な人が多い。また、殺菌剤を用いた殺菌は、一般的にはそれらの成分を含有した液体口腔用組成物を使用することが多いが、その使用方法としては口中に含んで漱ぐものが多く、その方法では歯面や歯茎などに対する薬効成分の残留性の限界があるために、口腔疾患を予防や症状緩和するだけの十分な殺菌効果得ることは困難であった。そのため、殺菌剤の濃度を上げたり、処理時間を長くするなどの工夫の必要があるが、安全性、経済性、殺菌効率などの面から、必ずしも満足できるものはなく、これらの課題点を解決する商品の提供が望まれていた。これらの要望に対して、機械的プラークコントロールにおいては、歯ブラシのブラシ毛の植毛パターンの工夫や植毛ヘッド部の厚さを薄くまたコンパクトにすることにより、口腔内での操作性、刷掃性を向上させ解決しようとする提案がなされているが、口腔内の細部における清掃や細菌除去は物理的な作用だけでは困難であった。また、化学的プラークコントロールにおいては、殺菌力を向上させるために、プラークなどの微生物の集合体や塊への殺菌の浸透を向上させることで解決しようとする試みが提案されている。例えば、特開平6−321744号公報には、ノニオン系界面活性剤及び多価アルコールによってアントラニール酸系抗炎症剤のプラークへの浸透が促進されることが提案されているが、塩化セチルピリジニウウムや塩酸クロルヘキシジンなどのカチオン性殺菌剤に、通常使用される浸透促進剤、特にノニオン系界面活性剤を加えると、多くの場合ノニオン系界面活性剤によって形成されたミセル中に殺菌剤が取り込まれるため、逆に殺菌活性が低下してしまい十分な問題の解決に至ってなかった。また、特公平3―47245号公報には、カチオン性殺菌剤とノニオン系界面活性剤とを併用してなる口腔用組成物にチモールなどを配合することによって、殺菌剤の失活を効果的に防止する方法、特開平7−165546号公報には、ノニオン系界面活性剤に特定のカチオン界面活性剤を配合すると、ミセル表面をカチオン性に制御した混合ミセルが形成されるため、静電気的な反発力により、塩化セチルピリジニウムのミセル中への取り込みを防ぐ方法、さらに、特開平8−259428号公報にシクロデキストリン類の配合によって、ノニオン系界面活性剤によるカチオン性殺菌剤の殺菌効果の低下が抑制できる方法が提案されている。しかし上記公報のいずれにも、塩化セチルピリジニウムやビタミン類の口腔内残留性を向上させることでプラークコントロールや歯茎の状態を改善させる技術については一切記載されていない。
【0003】
【特許文献1】特開平6−321744号公報
【特許文献2】特公平3―47245号公報
【特許文献3】特開平7−165546号公報
【特許文献4】特開平8−259428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来の問題点に鑑み、歯面や歯茎に対して効果を十分に発揮できるだけの塩化セチルピリジニウムやビタミン類を残留させることで十分なプラークコントロールや歯茎の血流量増加などを実現し、口腔内衛生環境を維持・向上させるための液体口腔用組成物を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねたところ、塩化セチルピリジニウム及び/又はビタミン類0.005〜0.5重量%と非アニオン性水溶性高分子0.01〜1.0重量%配合し、かつ組成物の粘度を10〜500mPa・sになるように調製した液体口腔用組成物において優れた塩化セチルピリジニウム等の残留性が得られることが判明し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0006】
すなわち、本発明は、
項1 塩化セチルピリジニウム及び/又はビタミン類0.005〜0.5重量%と非アニオン性水溶性高分子0.01〜1.0重量%配合し、かつ組成物の粘度が10〜500mPa・sであることを特徴とする液体口腔用組成物。
項2 非アニオン性水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の液体口腔用組成物。項3 ビタミン類が、ピリドキシン類および/またはビタミンEエステルであることを特徴とする請求項3に記載の液体口腔用組成物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、塩化セチルピリジニウム及び/又はビタミン類0.005〜0.5重量%と非アニオン性水溶性高分子0.01〜1.0重量%配合し、かつ組成物の粘度を10〜500mPaに調製した液体口腔用組成物を提供するものである。 本発明の非アニオン性水溶性高分子は、特に限定されるものではなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、結晶セルロース、セルロース粉末、α化デンプン、デキストリン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、酢酸ビニルと(メタ)アクリル酸アルキルの共重合体のケン化物、ピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドン/ ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体などが挙げられる。中でも、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0008】
本発明で用いられる非アニオン性水溶性高分子の配合量は、組成物全体の0.01〜1.0重量%であり、好ましくは、0.1〜0.5重量%である。配合量が0.01重量%より少ないと、残留性効果を十分に得られず、また1.0重量%を超えて配合すると、経時的に粘度低下や沈殿など変化が起こり、好ましくない。
【0009】
本発明で用いられるヒドロキシエチルセルロースは、セルロースから誘導される水溶性ノニオン性の長鎖重合体である。性質は、各セルロース分子中のグルコース単位当たりの酸化エチレンの平均付加モル数と共に変わる。この平均付加モル数が1.3モル以上のものが水溶性となり、本発明の実施に対しては1.5モル以上が適している。本発明に好適なヒドロキシエチルセルロースは、例えば、SE−400,500,550,600,850,900(ダイセル化学工業株式会社製)であり、商業的に入手できる。
【0010】
本発明で用いるビタミン類は、水溶性ビタミン、油溶性ビタミンのいずれであってもよく、例えば、水溶性ビタミンにあっては、チアミン、チアミン1リン酸、チアミン2リン酸、チアミン3リン酸などのビタミンB1類、リボフラビン類、ピリドキシン及びその塩、ピリドキサール、ピリドキサミン、それらの5'位でのリン酸エステル型、塩酸ピリドキシンやピリドキシンの糖誘導体などのピリドキシン類、ビタミンB12類、葉酸、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、ビタミンCなど、また油溶性ビタミンにあっては、ビタミンA、カロチノイド、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類、トコフェロール、コハク酸トコフェロール、トコフェロールニコチン酸エステルなどのビタミンEエステルなどのビタミンE類、ビタミンKなどが挙げられる。
【0011】
中でも、ピリドキシン類とコハク酸トコフェロールやトコフェロールニコチン酸エステルなどのビタミンEエステルが好ましく、更には塩酸ピリドキシンとトコフェロールニコチン酸エステルが好ましい。
【0012】
本発明の液体口腔用組成物は、25℃における粘度が10〜500mPa・sが好ましい。粘度の測定はBL型粘度計を用いて測定した。
【0013】
本発明の液体口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の成分を適宜配合することができる。例えば、ノニオン界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン付加係数が8〜10、アルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系またはポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
【0014】
両性イオン界面活性剤としては、Nーラウリルジアミノエチルグリシン、NーミリスチルジエチルグリシンなどのNーアルキルジアミノエチルグリシン、NーアルキルーNーカルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウムがあげられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0015】
香味剤として、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油などの香料を、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%程度の割合で配合することができる。
【0016】
また、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ−メトキシシンナミックアルデヒドなどの甘味剤を、組成物全量に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の割合で配合することができる。
【0017】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチットなどを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。配合量は、通常、組成物全量に対して3〜70重量%である。
【0018】
なお、本発明の液体口腔用組成物には、塩化セチルピリジニウム及びビタミン類以外の薬効成分を配合する事ができる。塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウムなどのカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの非イオン性殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン塩類、グリチルレチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイドなどを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0019】
次に、実施例を用いて更に詳しく説明する。
【実施例】
【0020】
塩化セチルピリジニウム、ピリドキシン塩酸塩及びトコフェロールニコチン酸エステルの口腔内残留性試験口腔内の残留性を下記の方法に従って測定した。表1に示した実施例と比較例を試験液として用い、夫々の10mlを予め清浄にした口腔内に、常法により適用した後に、吐き出した液に含まれる塩化セチルピリジニウムを液体クロマトグラフ法により定量し、口中残量を求めた。ピリドキシン塩酸塩及びトコフェロールニコチン酸エステルも同様に試験した。結果を表1及び図1〜3に示す。
【表1】

(図1)

(図2)

(図3)

【0021】
表1に示すように、実施例1、2、及び3における夫々の残留性は、比較例1、2及び3に較べて優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化セチルピリジニウム及び/又はビタミン類0.005〜0.5重量%と非アニオン性水溶性高分子0.01〜1.0重量%配合し、かつ組成物の粘度が10〜500mPa・sであることを特徴とする液体口腔用組成物。
【請求項2】
非アニオン性水溶性高分子がヒドロキシエチルセルロースであることを特徴とする請求項1に記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
ビタミン類が、ピリドキシン類および/またはビタミンEエステルであることを特徴とする請求項3に記載の液体口腔用組成物

【公開番号】特開2008−120753(P2008−120753A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308478(P2006−308478)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】