説明

液体吐出ヘッド、液体吐出装置及びインクジェット印刷装置

【課題】簡単な駆動制御系により、大きな液滴を高い周波数で吐出することが可能な液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】吐出口(51,52)を有する圧力室(53,54)と、圧力室(53,54)に液体を供給する供給流路(60,62)と、圧力室(53,54)に対応して設けられた吐出エネルギー発生手段(65,66)と、を備えた吐出要素(41,42)が複数配置され、各吐出要素(41,42)から吐出させた液(76)で被描画媒体上の同一画素が記録される。組になった各吐出要素(41,42)の吐出動作特性は同等であり、各吐出エネルギー発生手段(65,66)は、共通の信号線(73)に接続され、同一の駆動信号が同時に印加される。圧力室(53,54)はジョイント流路(55)を介して接続され、複数の吐出口(51,52)は、当該ヘッド(40)と被描画媒体の相対移動方向に並んで配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッドに係り、特に、インクジェット方式によって液滴を吐出するヘッドの構造及びそのヘッドを用いた液体吐出装置並びにインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高解像度の画像を高速に印刷することを目的として、2つのインク噴射部からそれぞれ噴射したインク滴を飛翔中に衝突させ、その合一滴を記録媒体上に着弾させる構成が開示されている。これら2つのインク噴射部は、互いに別々の(独立に)圧力室と圧電アクチュエータを備えており、各噴射部の噴射タイミングと噴射インク液滴数が制御される。特許文献2にも、特許文献1と同様の技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献3、4にはノズルに連通したチャンバー(圧力室)内のインクを循環させるヘッド構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−35271号公報
【特許文献2】特開平6−071902号公報
【特許文献3】特表2003−505281号公報
【特許文献4】特開2008−23793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2は、複数の圧力室の各ノズルからそれぞれ液滴を吐出して1画素を描画する方法を開示する。しかし、これら従来の構成は、圧力室毎に個別のアクチュエータを備え、これらを独立に駆動制御しているため、アクチュエータの駆動制御系が複雑になり、コストが高く、また、高密度化に障害となる。
【0006】
特許文献3は、長時間の吐出安定性を確保するためのインク循環に関する技術を開示するが、当該文献では複数の圧力室の各ノズルから別々に吐出した液滴によって記録媒体上の1画素を描画するようなヘッド構成への適用は考慮されていない。
【0007】
特許文献4は、吐出方向の制御(飛翔偏向)を主目的とした技術であり、複数の圧力室は異なる共振周波を有し、駆動パルス幅を変化させて偏向を行う。特許文献4においても、特許文献1、2と同様に、各圧力室に一体に設けられたアクチュエータを駆動するための制御系が複雑である。特許文献4は、単純な制御系で大きなインク滴を吐出しようとする技術を提供するものではない。また、複数のノズルから吐出した液滴によって1画素を形成する構成においては、ヘッドの製造バラツキによる吐出方向ズレが懸念されるが、これを抑えるための構成について開示がない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な駆動制御系により、大きな液滴を高い周波数で吐出することが可能な液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。また、かかるヘッドの実現において、駆動回路規模が複雑になることを防ぎ、インクの供給及び循環の流路構造が複雑になることを防ぐことを目的とする。さらに、このようなヘッド構成において、製造バラツキによる吐出方向精度の低下を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、液体が充填される圧力室と、前記圧力室に前記液体を供給するための供給流路と、前記圧力室に対応して設けられた吐出エネルギー発生手段と、前記吐出エネルギー発生手段の駆動によって発生させた吐出力により前記圧力室内の液を外部に吐出させるための吐出口と、を有する吐出要素が複数配置されて一組の記録素子単位が構成され、当該組になった前記複数の吐出要素の各吐出口から吐出させた液を被描画媒体上の同一画素に付着させて描画を行う液体吐出ヘッドにおいて、前記組になった各吐出要素の吐出動作特性は同等であり、これら組になった各吐出要素に対応して設けられた各吐出エネルギー発生手段は、共通の信号線に接続され、当該各吐出エネルギー発生手段に対して、前記共通の信号線を介して同一の駆動信号が同時に印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特性の揃った複数の吐出要素から吐出される複数滴を集合させて大きな吐出体積を得ることができ、被描画媒体上に大きな被覆面積のドットを形成できる。また、各吐出要素で実現される吐出周波数での吐出が可能であり、大きな吐出体積を高周波数で吐出することができる。さらに、各吐出要素を駆動する信号線は共通化されており、制御系は単純な構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来のインクジェットヘッドの構成を示す模式図
【図2】吐出体積を増加させるためのヘッド構造を検討した模式図
【図3】本発明の実施形形態に係るインクジェットヘッドの構成を示す模式図
【図4】図3に示した吐出要素の対を備えたインクジェットヘッドの断面図
【図5】組になった2つの吐出要素の配置例を模式的に示した平面図
【図6】3つ以上の吐出要素を組にした構成例を示す平面図
【図7】吐出要素の吐出口の形状例を示した図
【図8】吐出口の他の形状例を示す図
【図9】複数の吐出要素の各吐出口につながる単一のノズル部を形成する例を示した図
【図10】吐出要素ごとにノズル部を有する構成の断面図
【図11】複数の吐出要素の各吐出口につながる単一のノズル部を有する構成の断面図
【図12】組になった吐出要素のうち1つが不吐になった場合の説明図
【図13】組になった圧力室の隔壁を可動壁とする構成例の説明図
【図14】図13に示した可動壁の構成例を示す拡大図
【図15】駆動波形の一例を示す波形図
【図16】本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成図
【図17】インクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。ここではピエゾ(圧電)アクチュエータを用いたインクジェットヘッドを例に説明するが、本発明は、吐出エネルギー発生素子として、静電アクチュエータを用いたインクジェトヘッド、発熱素子(ヒータ)を用いたインクジェットヘッドなど、各種のヘッドに適用できる。また、ドロップオンデマンド型ヘッド、コンティニュアス型ヘッドのいずれの形態にも適用可能である。特に、ピエゾアクチュエータ用いたインクジェットヘッドのように、インクの共振を利用して吐出する方式のヘッドにおいて好適である。
【0013】
<従来の構成と技術課題の整理>
本発明の実施形態を説明する前に、まず、従来のインクジェットヘッドの構成を説明し、その技術的課題を整理する。
【0014】
図1はピエゾアクチュエータを用いた従来型のインクジェットヘッドの構成を模式的に示した図である。図を簡易にするため、図1では、インクが流れる流路部分については、流路の外形を図示して、1画素の記録を担う1つの吐出要素の構成を単純化して示した。図1に示した吐出要素10は、インク吐出口としてのノズル12、インクを蓄える圧力室(チャンバー)14、圧力室14内のインクに吐出力を発生させるピエゾアクチュエータ16、圧力室14にインクを供給するためのインク流入口(インレット)18、供給流路20、圧力室14内のインクを循環させるための循環流路22、及びインク流出口(アウトレット)24を有する。ピエゾアクチュエータ16の上部電極は配線電極32及び信号線33を介して図示せぬ駆動回路(ASIC)に接続されている。
【0015】
インク流入口18は図示せぬ流路を介してインクタンク(不図示)に接続されており、インク流入口18から流入したインクは、供給流路20を介して圧力室14に充填される。駆動回路(不図示)から信号線33を介してピエゾアクチュエータ16に駆動電圧が印加されることにより、ピエゾアクチュエータ16が変位し、圧力室14の容積が変化することによって、ノズル12からインク滴36が吐出される。なお、主滴であるインク滴36の後方に、メニスカスから分離した副滴(サテライト)38が発生している。
【0016】
圧力室14には循環流路22が接続されており、圧力室14内のインク(吐出に使用されなかったインク)は循環流路22を通ってインク流出口24から出て行く。インク流出口24は図示せぬ流路を介して回収タンク(不図示)に接続され、インク循環経路が形成されている。このように圧力室14内のインクを循環させることで、常にフレッシュなインクを供給でき、インクの増粘を防止できる。これにより、長時間の安定した吐出が可能である。
【0017】
インク流入口18とインク流出口24の流路間には適度な圧力差が設けられており、非吐出時には、供給流路20から圧力室14内にインクが入り、循環流路22へと抜けるように、インクがゆっくりと流れる。この循環系の圧力差でインクが流れる速度は、吐出動作時(印刷時)にインクを打滴するスピード(吐出サイクル)に対して十分に遅く、インクを吐出するスピート(ノズルから出ていく液)の方が速い。したがって、連続吐出動作時には、インク流出口24へと向かうインクの流れが遅くなって、最終的には圧力室14の両側から、すなわち、循環流路22からも圧力室14内にインクが流入するようになる。このように、循環流路22は、吐出動作時にインク供給流路としても機能する。
【0018】
図1のような構成で設計パラメータを最適化することにより、例えば、3pL(ピコリットル)の液滴を150kHzの周波数で安定に吐出させることが可能である。ただし、ヘッド設計の最適化は、現状において、このあたりが限界に近い。例えば、上記の2倍の液滴体積である6pLを150kHzの周波数で吐出するためには、単純には、ピエゾアクチュエータの変位が2倍必要であり、非常に高い駆動電圧を印加する必要があるため、実現が難しい。
【0019】
また、仮に、6pLの液滴を吐出できたとしても、滴速が速くなり、例えば、3pLと同じノズルを用いると、2倍の滴速になってしまい、液のミストが発生しやすくなり、安定に吐出させることが難しくなる。その一方、ノズル径を大きくすると滴速を遅くすることができるが、圧力室の共振周波数が低くなるため、150kHzでの吐出ができなくなる。
【0020】
一般に、ピエゾアクチュエータを用いたインクジェットヘッドでは、圧力室の共振を利用してインクを吐出しているため、高い周波数で液を吐出するには、圧力室の共振周波数が吐出周波数に比例して高い必要がある。
【0021】
さらに、ノズル径が大きいと、液を吐出した後のリフィル能力が落ちるため、連続吐出が困難になる。液のリフィルは、ノズルに形成されたメニスカス液面の表面張力によって励起される振動によって行われ、この振動はメニスカスが小さい方が高い周波数になる。つまり、ノズル径が小さいほどメニスカスの振動周期が短くなり、リフィルも速い。逆に、ノズル径が大きいとメニスカスの振動周期が長くなり、リフィルが遅くなる。
【0022】
このように、1つの吐出要素で大きな液滴を高い周波数で連続的に安定に吐出しようとすると、ヘッドの設計パラメータに相反するものがあることから、所望の性能が得にくいという問題がある。
【0023】
<液滴体積を増加させるヘッド設計の検討>
圧力室の固有振動数(共振周波数)を高い値に保ちつつ、大滴を吐出する構成を検討した。圧力室、及びノズル等の寸法は、3pLを150kHzで吐出可能なインクジェットヘッド(図1)の設計を元に、吐出体積6pLを実現し、出来るだけ高い共振周波数にし、さらに、インクのリフィルが間に合うようにし、かつ、吐出に際し不要な振動を抑えるように必要な部分を変更する。もし、この形状を元に、6pLを3pLと同等の滴速で吐出しようとすると、図2に示すようなヘッド構成となる。図2中、図1と同一又は類似の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0024】
すなわち、図2に示した吐出素子10’は、図1の例と比較して、ピエゾアクチュエータ16による排除体積を大きくするため、圧力室14を広げ(図1と比較して約2倍)、ピエゾアクチュエータ16を大面積化した(図1と比較して約2倍の面積)。また、ノズル径を大きくし、滴速を図1の3pLの場合と同等にした。その他、供給流路20及び循環流路22のサイズ(流路断面積や長さ)を変えて、流路の抵抗、イナータンスを変更して、共振周波数を高くし、インクのリフィル速度を速くし、吐出後の不要な振動を早く制定させるためにダンピングが適切に掛かるようにしてそれぞれのバランスを取った。
【0025】
しかしながら、図2の設計では、既述のとおり、圧力室の共振周波数が低く、図1の例と同等の150kHzでは吐出できない。また、液のリフィルも間に合わない。
【0026】
その他、駆動電圧を高めて吐出液滴の体積を大きくするには、それだけ高性能なピエゾ材料が必要であり、必ずしも容易に実現できるとは限らない。さらに、印加する駆動電圧が高いと、ピエゾアクチュエータの寿命が短くなるという問題もある。
【0027】
<本発明の実施形態>
そこで、本発明の実施形態では、前述した圧力室の共振点を高く保ち、かつ、吐出液滴の体積を大きくするために、同一画素を複数の吐出要素(図3では2つの吐出要素)で描画する構成が採用されている。
【0028】
図3は本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドの構成を示した模式図である。図3に示したインクジェットヘッド40は、特性の等しい複数の吐出要素41、42を一組にして、これら組になった吐出要素41、42からの吐出液で被描画媒体上の同一画素の記録を行う。符号41で示した第1吐出要素と符号42で示した第2吐出要素の組が画素の記録を担う記録素子単位となる。
【0029】
第1吐出要素41は、第1ノズル(「吐出口」に相当)51、第1圧力室53、第1供給流路60、第1ピエゾアクチュエータ65から構成される。第2吐出要素42は、第1吐出要素41と対称性のある同様の構造であり、第2ノズル(「吐出口」に相当)52、第2圧力室54、第2供給流路62、第2ピエゾアクチュエータ66から構成される。
【0030】
なお、第2供給流路62は、循環流路としても機能するため、符号62を「循環流路」と記載する場合がある。
【0031】
第1ノズル51を有する第1圧力室53と、第2ノズル52を有する第2圧力室54とがジョイント流路55を介して連通した流路構造となっている。第1圧力室53には第1供給流路60が接続され、第2圧力室54には第2供給流路(循環流路)62が接続されている。このように、本例のインクジェットヘッド40における記録素子単位は、ジョイント流路55を中心に対称性のある流路構造となっている。
【0032】
インク流入口58から導入されたインクは、第1供給流路60を通って第1圧力室53に入り、第1圧力室53からジョイント流路55を通って第2圧力室54に流入する。また、第2圧力室54内のインクは第2供給流路(循環流路)62を通ってインク流出口64から外へ出て行く。なお、連続吐出時には、インク流出口64、第2供給流路62がそれぞれインクの供給口(流入口)、供給流路として機能し、インク流出口64から第2供給流路62を通って第2圧力室54内にインクが供給される。
【0033】
ジョイント流路55を介して連結された第1圧力室53及び第2圧力室54には、それぞれ吐出エネルギー発生素子としての第1ピエゾアクチュエータ65、第2ピエゾアクチュエータ66が設けられている。第1圧力室53に対応して設けられた第1ピエゾアクチュエータ65の上部電極と、第2圧力室54に対応して設けられた第2ピエゾアクチュエータ66の上部電極とは、配線電極71、72及び信号線73を介して互いに接続されており(同電位に接続)、これらは共通の信号線73を介して図示せぬ駆動回路に接続されている。
【0034】
つまり、第1圧力室53及び第2圧力室54に設けられた2ノズル(51,52)の駆動は共通の信号線(符号73)で同時に行う。第1ノズル51と第2ノズル52は近接して配置されており、また、各ノズル(51,52)は、平面視で各圧力室(53,54)の中心からずれた端の位置にあるため、液滴の吐出方向が鉛直方向から斜め方向に偏る。図3の構成の場合、第1ノズル51は第1圧力室53の左端に設けられているため、第1ノズル51の吐出液滴は左に偏向する。第2ノズル52は第2圧力室54の右端に設けられているため、第2ノズル52の吐出液滴は右に偏向する。
【0035】
第1ノズル51から吐出された液滴と第2ノズル52から吐出された液滴は互いに近づく方向に偏り、さらに、第1ノズル51と第2ノズル52の間隔は、これら2滴は吐出後間もなく合一して、その後記録媒体上で1画素のドットを形成するように設定されている。なお、符号77,78は、副滴(サテライト)である。図3では、飛翔中に2滴が合一して合一滴76が形成される様子が示されているが、用紙(被描画媒体)に到達するとほぼ同時に2滴が接するか、もしくは、用紙上で2滴を少なくとも部分的に重ねるように打滴してもよい。2滴が接するか、部分的に重なるように打滴すると、すぐさま、2滴は、インクの表面張力によってひとつに纏まるように動き、描画されるドットは円に近くなる。使用するインクの表面張力の大きさにもよるが、表面張力が35mN/m程度のインクの例では、ひとつに纏まったインクにより描画されたドットの、直交する2方向の直径の比は1:1.1〜1.2程度になった。
【0036】
本例のインクジェットヘッド40の場合、同一画素の記録を担う組になった2つのノズル(51,52)の並び方向は、用紙の搬送方向(「相対移動方向」に相当)と平行になっている。この様にすると、各ノズル(51,52)の吐出液滴の偏向方向(吐出曲がり方向)が用紙搬送方向とほぼ並行になる配置形態であるため、飛翔曲がりによる筋ムラが発生し難い。この理由は、次の様に説明できる。まず、用紙搬送方向と垂直な方向の隣の画素との間隔の誤差が大きいとムラとして視認されやすい。これは、後述する実施形態(図16,図17)のように、ワンパスで描画するインクジェットで顕著である。一方、各吐出要素(41,42)間で、製造誤差による吐出速度、吐出体積に差があって、合一した2滴が理想的な状態よりもずれて用紙に到達した場合、このずれは、用紙の搬送方向とほぼ並行になるので、用紙搬送方向と垂直な方向の隣の画素との間隔の誤差は小さく、筋ムラになりにくい。
【0037】
図3の実施形態では、1画素を描画する吐出要素(41,42)を2つ設け、これら各吐出要素(41,42)の2ノズル(51,52)からそれぞれ3pLの液滴を吐出して2滴を合一させて、その合一滴76により1画素のドットを形成する。2ノズル(51,52)が同時に吐出する特徴を活かし、第1圧力室53と第2圧力室54とをジョイント流路55で繋ぎ、流路構造を簡略化している。第1圧力室53と第2圧力室54は連通し、互いに近接して配置されているが、2ノズル(51,52)は同時に吐出するため、クロストーク(流体的な相互干渉)の問題は無視できる。これは、第1圧力室53と第2圧力室5の第1ピエゾアクチュエータ65、第2ピエゾアクチュエータ66を同時に同じだけ駆動することによりそれぞれの圧力室に発生した圧力波やインクの流れが他方の圧力室に伝わって起きるクロストークや、各ピエゾアクチュエータを駆動することにより生じる、第1圧力室53と第2圧力室54との間の隔壁を変形させようとする力は、後述するように吐出要素(41,42)が幾何学的に対称な構成をしているため、互いに影響することなく、クロストークとはならないためである。
【0038】
また、本実施形態は、圧力室(53,54)内のインクを循環させる流路系(インク循環系)となっているが、流路構造はジョイント流路55を軸に左右対称のため、第1ピエゾアクチュエータ65、第2ピエゾアクチュエータ66を同時に同じだけ駆動した場合に限り、流体力学的には、各圧力室(53,54)はインク循環流路を持たないインク供給流路のみの圧力室と同等となる。この理由は、次の通りである。まず、第1ピエゾアクチュエータ65、第2ピエゾアクチュエータ66を同時に同じだけ駆動した場合に発生する圧力波やインクの流れは、ジョイント流路55の中央に、各圧力室(53,54)から同時に到達して衝突する。インクの流れは、左右から等しいだけ流れ込もうとするので、ジョイント流路55の中央で速度0となる。また、圧力波は、ジョイント流路55の中央を鏡対称面として各圧力室(53,54)から他方の圧力室に対称に伝搬する。この状態は、ジョイント流路55の中央に無限大の剛性を持つ壁があるのと同じことである。よって、各圧力室(53,54)はインク循環流路を持たない、つまり、ジョイント流路55の中央を終端とした、インク供給流路のみの圧力室と同等となる。
【0039】
つまり、本実施形態の構成では、吐出時には、2つの圧力室(53,54)を同時に加圧するため、ジョイント流路55と、圧力室間の仕切壁(隔壁)は、それぞれのピエゾアクチュエータ(65,66)からの圧力を左右方向から同時に受ける。等しい大きさの圧力を左右方向から同時に受けることで、この仕切壁及びジョイント流路55の部分の剛性は無限大とみなせる。
【0040】
したがって、図1の設計例と同等の共振周波数、インクリフィル性能を実現するためには、図1のインクジェットヘッド設計と比較して、図3の第1供給流路60、第2供給流路(循環流路)62それぞれが、図1の供給流路20と循環流路22を合わせた供給路抵抗、イナータンスと近くなるように、第1供給流路60、第2供給流路(循環流路)62の太さ、長さを設計する。ここで、流路の断面積をS、長さをlとすると、抵抗R、イナータンスLは次の式で表せる。
【0041】
R∝l/S ・・・(式1)
L∝l/S ・・・(式2)
よって、図1のように、供給流路20と循環流路22の寸法が等しい場合、供給流路20と循環流路22を合わせた供給路抵抗、イナータンスは、それぞれ単体の場合の1/2、2倍であるので、式1、式2から連立方程式を解くと、図3の第1供給流路60、第2供給流路(循環流路)62それぞれの断面積を4倍、長さを8倍とすると、第1供給流路60、第2供給流路(循環流路)62それぞれの供給路抵抗、イナータンスは、供給流路20と循環流路22を合わせた供給路抵抗、イナータンスと等しくなる。
【0042】
<インク循環動作の説明>
図3に示した流路設計におけるインク循環動作は以下のようになる。非吐出時には、第1供給流路60から一方の圧力室(図3の右側に示した第1圧力室53)にインクがゆっくり流れ込み、ジョイント流路55を通って他方の圧力室(図3の左側に示した第2圧力室54)に流れ、さらに第2供給流路(循環流路)62から出ていく。このインク流量は、インクの組成によって適正値は異なるが、例えば、本例で用いる水性インクの場合、各ノズルあたり、数百〜数千pL/秒で、ノズル近くのインクの増粘現象を抑制する効果がある。
【0043】
吐出動作時において、インク吐出後の各圧力室へのインク充填は、それぞれの圧力室(53,54)につながった供給流路(60、62)から行われる。つまり、第2圧力室54につながっている第2供給流路62は、吐出動作時にはインク供給流路として機能する。吐出動作を停止させると、再び第1供給流路60→第1圧力室53→ジョイント流路55→第2圧力室54→第2供給流路(循環流路)62という経路でインクが循環する。
【0044】
各圧力室(53,54)に供給流路(60,62)が接続されている部分と、ジョイント流路55が接続されている部分は、その圧力室(53,54)の平面視における略対角位置に設けられており、圧力室(53,54)内に淀みが発生し難い流路構造となっている。なお、本例では平面視で矩形の圧力室を採用しているため、対角位置に流路の接続部を設けたが、円形、楕円形、多角形などの形状の場合は、壁間距離が最も遠く離れた位置
に供給流路、ジョイント流路の接続部を設ける態様が好ましい。
【0045】
<リフィル効率を高める効果について>
図3に示した実施形態の構成では、図1で説明した3pL用の小口径ノズルを各圧力室(53,54)にそれぞれ1つ、合計2つ設けているので(図3中の符号51、52)、図2で説明した6pL用の大口径ノズルを1つ設ける構成と比較して、メニスカスの大きさが小さくなるため、メニスカス表面張力が大きくなり、リフィル共振周期が短くなってともに向上し、インクリフィル性能が上がる。
【0046】
図3に示したヘッドは、インク循環系の流路構造となっているが、吐出動作時においては、ジョイント流路55を介した圧力室(53,54)間の液体移動を無視することができ、前述した「インク供給流路のみの圧力室設計」とみなせる特徴を持つ。これにより、吐出のための共振系の設計、及びリフィル振動系の設計が比較的容易になり、かつ、性能を高めることが出来て有利である。つまり、共振周波数は高いままで、リフィル抵抗を減らす事ができ、高い周波数で連続吐出を行った場合でもインクを確実にリフィルできる。
【0047】
<断面図による説明>
図4は、図3に示した2つの吐出要素41、42の対を備えたインクジェットヘッドの断面図である。第1圧力室53は第1供給流路60を介して供給側の共通液室(供給共通流路)84に接続されている。同様に、第2圧力室54は第2供給流路62を介して循環側の共通液室(循環共通流路)86に接続されている。このような流路構造は、シリコン(Si)をエッチングして、流路部となる溝、孔等を形成することよって作製可能である。
【0048】
本例のインクジェットヘッドによれば、吐出時には、第1ピエゾアクチュエータ65、第2ピエゾアクチュエータ66が同時に駆動され、第1ノズル51、及び第2ノズル52から液滴が吐出される。これら2滴は合一して用紙上で1画素のドットを形成する。吐出後は第1供給流路60を介して第1圧力室53にインクがリフィルされるとともに、第2供給流路62を介して第2圧力室54にインクがリフィルされる。
【0049】
図3及び図4では、2つの吐出要素41、42を組にした構成を説明したが、本発明の実施に際しては、同一画素の形成を担う組を構成する吐出要素の数は2つに限定されない。3つ以上でも設計可能であり、2以上適宜の数の圧力室で1組を構成することができる。1画素の記録を行う吐出液の体積は、組になった圧力室の数に比例して大きくなる。
【0050】
(組になった圧力室の配置形態について)
図5は、組になった2つの吐出要素の配置例を模式的に示した平面図である。図5中、図3の構成と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0051】
図5(a)の構成は、横方向の中心線X、縦方向の中心線Yを対称軸として上下左右に鏡対称形の配置となっている。図5(b)は、横方向の中心線Xを対称軸として鏡対称形であり、図5(c)は、ジョイント流路55を中心として回転対称形となっている。
【0052】
図6は、3つ以上の吐出要素を組にした構成の例である。図6において、符号40_jは第j吐出要素を表し(j=1,2,3,4)、51_jは第jノズル、53_jは第j圧力室、55_jは第jジョイント流路、60_jは第j供給流路を表す。
【0053】
図6(a)は、3つの吐出要素を回転対称形に配置したものである。各圧力室53_j(j=1〜3)に設けられている供給流路60_jのうち、1又は2本が循環流路として兼用される。
【0054】
図6(b)は、4つの吐出要素を回転対称形に配置したものである。図6(c)は、4つの吐出要素を横方向の中心線X、縦方向の中心線Yを対称軸して上下左右に鏡対称形に配置したものである。なお、図6(b)、(c)において、4つの圧力室をジョイント流路55で環状につなげているが、例えば、ジョイント流路55_2、55_4を省略し、2つずつを直列に接続する構成も可能である。
【0055】
(ノズル開口の形状について)
図7は組になった吐出要素(図3の符号41,42)の吐出口の形状例を示した図である。図7(a)に示すように、それぞれのノズル(51,52)は、円形の開口であってもよいし、図7(b)のように半円形の構成とし、2つのノズル(51,52)が対となって略円形を形成する構成でもよい。
【0056】
ノズル形状は、円形に限らない。例えば、図8(a)のように正方形、図8(b)のように長円形、図8(c)のように楕円形などでもよい。また、図8(a)〜(c)に示した各形状の縦方向に沿う中心線で左右に2等分した分割形状のノズル形状とし、一方を第1ノズル51、他方を第2ノズル52のノズル形状とする形態も可能である。
【0057】
(単一ノズルについて)
また、図9に示すように、第1吐出要素41の吐出口(第1ノズル51)と第2吐出要素42の吐出口(第2ノズル52)とにまたがる単一のノズル部90を形成する形態も可能である。ノズル部90の内部に、隔壁92が配置され、当該隔壁92を挟んで第1ノズル51と第2ノズル52が形成される。
【0058】
図10に示すように、第1圧力室53と第2圧力室54について個別の吐出口(第1ノズル51,第2ノズル52)を形成し、それぞれの吐出口にメニスカス95,96を形成する構成の他、図11に示すように、単一のノズル部90に単一のメニスカス97を形成する形態も考えられる。
【0059】
図11に示す構成の場合、2つの圧力室(53,54)の隔壁92の直下に、2つの吐出口(第1ノズル51,第2ノズル52)につながる細長い開口のノズル部90が設けられる。このような、単一のノズル部90を形成することにより、各吐出口から押し出された液がノズル部90で合一するため、合一滴としてノズル部90から吐出される。
【0060】
なお、液を合体させて真っ直ぐに飛ばすために、ノズル部90は吐出方向に平行な直線状の流路とすることが好ましい。
【0061】
また、図10で述べた構成においても、各吐出要素41、42の吐出方向精度を高めるために、各圧力室(53,54)から液滴の出口(吐出口の先端)までの間に吐出方向に平行な直線状の流路(図10において、符号51A,52Aとして記載)を設ける形態が好ましい。
【0062】
(本実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、同一画素を形成する複数の吐出要素を1系統の電気配線で駆動し、高い駆動周波数で大きな液滴体積を吐出するインクジェットヘッドを提供することができる。
【0063】
なお、単に吐出要素を増やしたのでは、インクジェットヘッドの構造が複雑になったり、これを駆動するための電気回路の規模が大きくなってしまったりして、製造が難しくなり、コストが上がり、信頼性も低下することになる。
【0064】
この点、本実施形態によれば、各組の吐出要素41,42を同一の駆動信号で駆動する構成が採用され、同じ組に属する複数の吐出要素41,42のアクチュエータ近傍まで単一の配線(信号線73)で駆動信号を導くことができるので、制御系の構成や配線を簡略化できる。
【0065】
また、長時間の安定な吐出を実現するために、ノズル近傍までの液を常時循環させるようにインク循環流路を設けている。各吐出要素に対し、個別にインク循環流路を設ける構成の場合、吐出要素を増やすと循環流路も供給流路も増えてインクジェットヘッドの構造が複雑になってしまう。この点、本実施形態では、組になった吐出要素間でジョイント流路55を介して液を循環させることで、循環流路と供給流路を吐出要素数の半分で済ませている。
【0066】
本実施形態では、万一、1組の吐出要素のうちの1つのノズルが詰まって、インクを吐出できなくなっても、組になっている残りのノズルから吐出することができ、完全な不吐出(ドットの記録不能)に陥り難い(図12参照)。また、図12に示したように、詰まっているノズル(図12において、符号52)の方のアクチュエータ(符号66)が加圧したインクは、ジョイント流路55を通って、他方のノズル(詰まっていないノズル)の吐出量を増やす効果があるので、両方正常な場合の吐出体積よりは少ないが、それに近い量のインクを吐出することができる。
【0067】
なお、組になった一方のノズルが吐出しない場合、他のノズルから吐出される液滴の飛翔方向は、吐出しない方のノズル側に少し曲がるが、本実施形態で、この飛翔曲がり方向を用紙(印刷媒体)とインクジェットヘッドの相対移動方向としているため、用紙上での筋ムラは目立ちにくいという効果がある。
【0068】
上述した実施形態では、組になったノズルからの吐出滴は、印刷媒体に届くまでの間に合一して、1つのドットを形成する例を述べたが、飛翔中に液滴を合体させる態様に限らず、印刷媒体上で各液滴のドット同士の少なくとも一部が重なるようにしても良い。
【0069】
なお、着弾前に滴が合一する場合は、複数の滴の運動量が合成された方向に飛翔するので、吐出方向精度は平均的に向上する。
【0070】
印刷媒体上でドット同士が重なる場合は、各滴の方向精度はそれぞれの誤差を持っているが、本発明を適用した構成によれば、組になるノズルからは必ず同時に吐出されるので、複数滴のドットにより記録された1画素は誤差が平均化され、画素としての位置精度は平均的に向上する。また、インクジェット方式のプリントヘッドによって、印刷媒体の相対的移動方向に平行な線を描画する場合、画素間の隙間が出来たり、隙間の程度が異なったりする筋ムラが問題になりやすいが、本発明を適用した構成では、複数ノズルからの滴で1本の線を描画するので、この隙間も平均化され、筋ムラの程度が良化する。
【0071】
また、個々の圧力室を駆動するアクチュエータについて、圧電体を用いた構成では、個々の圧力室を駆動するアクチュエータの圧電体は個別に分離されている。これにより、圧力室間のクロストークを低減できる。
【0072】
なお、上記圧電体について、同じ組の各吐出要素の圧電体は分離しない構成でもよい。このようにすると、圧電体の端面部分が露出される面積が減り、経時劣化によるショートの発生確率を下げる事ができ、寿命上有利である。
【0073】
<製造バラツキの影響を抑制する構成について>
図3等で詳述した本発明の実施形態に係る構成では、液滴の吐出方向を精度良く、意図した方向にするために、各吐出要素の特性、精度が揃っていることが望ましい。ここでいう特性とは吐出要素全体の共振周波数、圧力室の寸法、ノズルの寸法、形状、アクチュエータの変位体積(排除体積)、インク供給路の寸法である。これらが誤差を持っていると、各吐出要素のノズルから吐出される液滴の速度、体積、吐出タイミングがずれて、液滴の体積がずれるのみならず、吐出方向がずれることになる。
【0074】
そこで、以下に示す実施形態(図13)では、特にアクチュエータの変位体積誤差の影響を低減するために、各吐出要素41、42の圧力室53、54を区画する隔壁92の少なくとも一部が、アクチュエータの吐出時の圧力によって変形しうるように柔らかく構成されている。図13中、図3等で示した構成例と同一又は類似する要素には同一の符号を付した。
【0075】
図13のように2つの圧力室(53,54)の間に柔軟に変形可能な隔壁(可動壁)92を設けることにより、2つの圧力室(53,54)において排除体積(圧力)差が発生した際に、排除体積の大きい方から小さい方へ、隔壁92が変形し、排除体積差を吸収する。この構成では、隔壁92の左右両面の圧力が釣り合ったところで変位がとまる。従来の一般的なインクジェットヘッドの設計(例えば、図1、図2)では圧力室の壁が柔らかいと、アクチュエータの発生圧力をロスするため問題であるが、本発明を適用した構成では、各吐出要素の特性が同一であれば、隔壁の両面の圧力も等しく、隔壁は変位せず、アクチュエータの発生圧力のロスもない。そして、製造バラツキなどにより、各吐出要素の特性が異なっていると、その差を吸収する方向に隔壁92が変位し、2つの圧力室(53,54)の液滴吐出状態を揃えることが出来るので、吐出方向精度を高めることが出来る。
【0076】
図14は隔壁92の一例を示す拡大図である。この隔壁92は、柔軟な変形を可能とするために、ひだ状(蛇腹状)の曲面部92A,92Bを有している。
【0077】
(可動壁の製造方法の例について)
図13、図14に示した可動壁(隔壁92)を具備するインクジェットヘッドは、例えば、シリコン(Si)をエッチングして作成される。その際、当該隔壁92を可動させる構造とするために、壁部92C及び蛇腹状の曲面部92A、92Bは、当該隔壁92の上下に存在する圧力室の床及び天井部分と、僅かな隙間を持って作られる。この隙間は、エッチングにより容易に作ることができる。
【0078】
圧力室の床、天井はそれぞれ、ノズルプレート、振動板となるが、これらと圧力室の側壁は熱拡散接合で組み立てられている。前述の隙間がある隔壁92の部分は、接合されていないので、可動する壁が作成できる。
【0079】
(描画記録時の駆動波形について)
図15は、描画記録時にアクチュエータに印加される駆動信号の電圧波形(駆動波形)の一例を示す波形図である。ここでは、説明を簡単にするために、いわゆる引き−押し(pull-push)型の駆動波形を例示する。ただし、本発明の実施に際しては、駆動波形の形態は特に限定されず、引き押し引き(pull-push-pull)波形その他の各種の駆動波形を用いることができる。
【0080】
図15に示した駆動波形は、圧力室の容積を定常状態に維持する基準電位Vを出力する第1信号要素310aと、この定常状態から圧力室を広げる方向にアクチュエータを駆動する第2信号要素(引き波形部)310bと、圧力室を広げた状態で維持する第3信号要素310cと、圧力室を押し縮める方向にアクチュエータを駆動する第4信号要素(押し波形部)310dと、サテライト部の液を押し出す方向にアクチュエータを駆動するための第5信号要素310eと、第5信号要素310eで圧力室を縮めた状態を維持する第6信号要素310fと、圧力室を定常状態に戻る第7信号要素310gと、を有している。第4信号要素310dの後に続く第5信号要素310e〜第7信号要素gの波形部分は、主滴が押し出された後にサテライト部の液がノズル付近を通過する際に、液を押し出す方向にアクチュエータを駆動する波形要素となっている。これにより、サテライトの吐出速度が速まり、主滴の飛翔中に副滴(サテライト)が衝突して、合一滴を形成する。
【0081】
<インクジェット印刷装置の構成例について>
上述した本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドを用いたインクジェット印刷装置の例について説明する。
【0082】
図16は、本発明の実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成例を示す全体構成図である。本例のインクジェット印刷装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部(プレコート部)114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122から構成されている。インクジェット印刷装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(「被描画媒体」に相当、以下、便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成するシングルパス方式のインクジェット印刷装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0083】
(給紙部)
給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されており、給紙部112の給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。本例では、記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0084】
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0085】
処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム(「プレコート胴」とも言う)154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体124を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
【0086】
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラ(計量ローラ)と、該アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
【0087】
本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0088】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
【0089】
(描画部)
描画部116は、描画ドラム(「描画胴」或いは「ジェッティング胴」とも言う)170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
【0090】
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列(2次元配列ノズル)が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0091】
各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yには、対応する色インクのカセットが取り付けられる。インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、描画ドラム170の外周面に保持された記録媒体124の記録面に向かってインク滴が吐出される。
【0092】
これにより、予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。インクと処理液の反応の一例として、本実施形態では、処理液に酸を含有させPHダウンにより顔料分散を破壊し凝集するメカニズムを用い、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。こうして、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
【0093】
各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yの打滴タイミングは、描画ドラム170に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図16中不図示、図17の符号294)に同期させる。このエンコーダの検出信号に基づいて吐出トリガー信号(画素トリガー)が発せされる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。また、予め描画ドラム170のフレなどによる速度変動を学習し、エンコーダで得られた打滴タイミングを補正して、描画ドラム170のフレ、回転軸の精度、描画ドラム170の外周面の速度に依存せずに打滴ムラを低減させることができる。
【0094】
さらに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのノズル面の清掃、増粘インク排出などのメンテナンス動作は、ヘッドユニットを描画ドラム170から退避させて実施するとよい。
【0095】
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0096】
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
【0097】
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図16に示すように、乾燥ドラム(「乾燥胴」とも言う)176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0098】
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。各温風噴出しノズル182から記録媒体124に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ180の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
【0099】
乾燥ドラム176の外周面に、記録媒体124の記録面が外側を向くように(即ち、記録媒体124の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)記録媒体124を保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体124のシワや浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
【0100】
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
【0101】
(定着部)
定着部120は、定着ドラム(「定着胴」とも言う)184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0102】
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
【0103】
ハロゲンヒータ186は、所定の温度(例えば、180℃)に制御される。これにより、記録媒体124の予備加熱が行われる。
【0104】
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0105】
また、定着ローラ188は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体124を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体124の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0106】
なお、図16の実施形態では、定着ローラ188を1つだけ設けた構成となっているが、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性に応じて、複数段設けた構成でもよい。
【0107】
一方、インラインセンサ190は、記録媒体124に記録された画像(テストパターンなども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための読取手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0108】
上記の如く構成された定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。
【0109】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、紫外線(UV)露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット印刷装置100は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ188)の代わりに、記録媒体124上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0110】
(排紙部)
図16に示すように、定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
【0111】
また、図16には示されていないが、本例のインクジェット印刷装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0112】
<制御系の説明>
図17は、インクジェット印刷装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット印刷装置100は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、プリント制御部274、ヘッドドライバ278、モータドライバ280、ヒータドライバ282、処理液付与制御部284、乾燥制御部286、定着制御部288、メモリ290、ROM292、エンコーダ294等を備えている。
【0113】
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ350から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース270にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ350から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット印刷装置100に取り込まれ、一旦メモリ290に記憶される。
【0114】
メモリ290は、通信インターフェース270を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ290は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0115】
システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット印刷装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ272は、通信インターフェース270、プリント制御部274、モータドライバ280、ヒータドライバ282、処理液付与制御部284等の各部を制御し、ホストコンピュータ350との間の通信制御、メモリ290の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ296やヒータ298を制御する制御信号を生成する。
【0116】
ROM292にはシステムコントローラ272のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM292は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ290は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0117】
モータドライバ280は、システムコントローラ272からの指示にしたがってモータ296を駆動するドライバである。図17では、装置内の各部に配置される様々なモータを代表して符号296で図示している。例えば、図17に示すモータ296には、図16の給紙胴152,処理液ドラム154、描画ドラム170、乾燥ドラム176、定着ドラム184、渡し胴194などの回転を駆動するモータ、描画ドラム170の吸引孔から負圧吸引するためのポンプの駆動モータ、インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのヘッドユニットを、描画ドラム170外のメンテナンスエリアに移動させる退避機構のモータ、などが含まれている。
【0118】
ヒータドライバ282は、システムコントローラ272からの指示にしたがって、ヒータ298を駆動するドライバである。図17では、装置内の各部に配置される様々なヒータを代表して符号298で図示している。例えば、図17に示すヒータ298には、給紙部112において記録媒体124を予め適温に加熱しておくための不図示のプレヒータ、などが含まれている。
【0119】
プリント制御部274は、システムコントローラ272の制御にしたがい、メモリ290内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ278に供給する制御部である。
【0120】
ドットデータは、一般に多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット印刷装置100で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0121】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0122】
プリント制御部274において所要の信号処理が施され、得られたドットデータに基づいて、ヘッドドライバ278を介してヘッド250のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0123】
プリント制御部274には画像バッファメモリ(不図示)が備えられており、プリント制御部274における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリに一時的に格納される。また、プリント制御部274とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0124】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース270を介して外部から入力され、メモリ290に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ290に記憶される。インクジェット印刷装置100では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ290に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ272を介してプリント制御部274に送られ、該プリント制御部274において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部274は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部274で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ(不図示)に蓄えられる。
【0125】
ヘッドドライバ278は、プリント制御部274から与えられる印字データ(即ち、画像バッファメモリに記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド250の各ノズルに対応するアクチュエータを駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ278にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0126】
ヘッドドライバ278から出力された駆動信号がヘッド250に加えられることによって、該当するノズルからインクが吐出される。記録媒体124を所定の速度で搬送しながらヘッド250からのインク吐出を制御することにより、記録媒体124上に画像が形成される。なお、本例に示すインクジェット印刷装置100は、ヘッド250(ヘッドモジュール)の各ピエゾアクチュエータに対して、モジュール単位で共通の駆動電力波形信号を印加し、各ピエゾアクチュエータの吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータの個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータに対応するノズル251からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0127】
処理液付与制御部284は、システムコントローラ272からの指示にしたがい、処理液塗布装置156(図16参照)の動作を制御する。乾燥制御部286は、システムコントローラ272からの指示にしたがい、溶媒乾燥装置178(図16参照)の動作を制御する。
【0128】
定着制御部288は、システムコントローラ272からの指示にしたがい、定着部120のハロゲンヒータ186や定着ローラ188(図16参照)から成る定着加圧部299の動作を制御する。
【0129】
インラインセンサ190は、図16で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体124に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をシステムコントローラ272及びプリント制御部274に提供する。
【0130】
プリント制御部274は、インラインセンサ190から得られる情報に基づいてヘッド250に対する各種補正(不吐出補正や濃度補正など)を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0131】
〔変形例〕
上記実施形態では、記録媒体124に直接インク滴を打滴して画像を形成する方式(直接記録方式)のインクジェット印刷装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、一旦、中間転写体上に画像(一次画像)を形成し、その画像を転写部において記録紙に対して転写することで最終的な画像形成を行う中間転写型の画像形成装置についても本発明を適用することができる。
【0132】
また、上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット印刷装置(1回の副走査によって画像を完成させるシングルパス方式の画像形成装置)を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット印刷装置についても本発明を適用できる。
【0133】
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体(被描画媒体)に対してヘッドを移動させる構成も可能である。
【0134】
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット印刷装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステムに広く適用できる。
【0135】
<付記>
本明細書は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0136】
(発明1):発明1に係る液体吐出ヘッドは、液体が充填される圧力室と、前記圧力室に前記液体を供給するための供給流路と、前記圧力室に対応して設けられた吐出エネルギー発生手段と、前記吐出エネルギー発生手段の駆動によって発生させた吐出力により前記圧力室内の液を外部に吐出させるための吐出口と、を有する吐出要素が複数配置されて一組の記録素子単位が構成され、当該組になった前記複数の吐出要素の各吐出口から吐出させた液を被描画媒体上の同一画素に付着させて描画を行う液体吐出ヘッドにおいて、前記組になった各吐出要素の吐出動作特性は同等であり、これら組になった各吐出要素に対応して設けられた各吐出エネルギー発生手段は、共通の信号線に接続され、当該各吐出エネルギー発生手段に対して、前記共通の信号線を介して同一の駆動信号が同時に印加されることを特徴とする。
【0137】
本発明によれば、特性の揃った複数の吐出要素によって、同一画素の記録(画素位置へのドットの形成)が行われる。この同一画素を記録する組になった複数の吐出要素を共通の駆動信号で同時に駆動し、各吐出要素から液を押し出す。これにより、これら複数の吐出要素から吐出した液の集合体によって、被覆面積の大きなドットを形成することができる。組になった吐出要素から吐出される液滴の合計体積(組単位での吐出液滴体積)を大きくできる一方で、各吐出要素は比較的小さい圧力室サイズで設計でき、高い周波数で吐出を行うことが可能である。
【0138】
「吐出エネルギー発生手段」として、圧電体を用いる態様(ピエゾジェット方式)や、静電アクチュータを用いる態様、サーマルジェット方式における発熱素子(ヒータ)を用いる態様などがある。
【0139】
特性が「同等」とは、設計上「同等」にするという意味であり、製造誤差やバラツキの範囲で多少の差異が生じることは、「同等」の範囲である。実際の加工精度や製造上のバラツキに起因して吐出要素間で厳密な「同等性」が確保できていなくても、設計思想において、吐出要素間に明確な差異を生じさせることが意図されておらず、また、実質的にも「同等」として取り扱うことに問題がない程度の範囲の差異であれば「同等」と解釈する。
【0140】
なお、本発明は描画すべき画像のデータに応じて、吐出エネルギー発生手段の駆動を制御するドロップオンデマンド(DOD)方式の液体吐出ヘッドへの適用が特に有益である。
【0141】
(発明2):発明2に係る液体吐出ヘッドは、発明1において、前記組になった複数の吐出要素の各圧力室に対し、同じ組成の液体が供給されることを特徴とする。
【0142】
同じ組成の液体(例えば、同一色のインクなど、同一特性の液体)を複数の吐出要素から吐出することにより、同一画素の記録を行う形態への適用が好ましい。
【0143】
(発明3):発明3に係る液体吐出ヘッドは、発明1又は2において、前記吐出エネルギー発生手段として、前記圧力室の容積を変化させるアクチュエータが用いられ、前記組になった複数の吐出要素の各圧力室に設けられた前記各アクチュエータの排除体積が互いに等しいことを特徴とする。
【0144】
組になった複数の吐出要素における各吐出エネルギー発生手段は、互いに同等の吐出エネルギーを発生させるものであることが好ましい。
【0145】
(発明4):発明4に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至3のいずれか1項において、前記組になった複数の吐出要素は、各圧力室の共振周波数が等しいことを特徴とする。
【0146】
圧力室の共振周波数は、液体の流路系、液体(音響要素)、アクチュエータの寸法、材料、物性値等から定まる振動系全体の固有振動の周波数(ヘルムホルツ共振周波数)である。
【0147】
(発明5):発明5に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至4のいずれか1項において、前記組になった複数の吐出要素の圧力室間を連通させるジョイント流路を備えていることを特徴とする。
【0148】
ジョイント流路を介して圧力室間の液体移動を可能とする。かかる構成により、組になった吐出要素間で液体を循環させることが可能であり、循環流路と供給流路の本数を削減することが可能である。
【0149】
(発明6):発明6に係る液体吐出ヘッドは、発明5において、前記圧力室に前記供給流路が接続されている部分と、該圧力室に前記ジョイント流路が接続されている部分は、当該圧力室の平面視における略対角位置、又は最も遠く離れた位置に設けられていることを特徴とする。
【0150】
かかる態様によれば、圧力室内に淀みが発生し難く、圧力室内の液を効率的に循環させることができる。
【0151】
(発明7):発明7に係る液体吐出ヘッドは、発明5又は6において、前記組になった複数の吐出要素の各圧力室に接続されている供給流路のうち、少なくとも1つは、非吐出動作時に圧力室内の液体を循環させるための循環流路として用いられることを特徴とする。
【0152】
非吐出動作時には供給流路から循環流路へと液体を移動させ、各圧力室の液体を循環させる構成が好ましい。吐出時には、循環流路側から圧力室に液体が供給され、供給流路として機能する。
【0153】
(発明8):発明8に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至7のいずれか1項において、前記組になった複数の吐出要素における2つの吐出要素の吐出口は、描画動作時における前記被描画媒体と当該液体吐出ヘッドの相対的な移動方向に沿って並んで配置されていることを特徴とする。
【0154】
かかる態様によれば、被描画媒体とヘッドの相対移動方向と同じ方向に飛翔曲がりが発生しても、筋ムラ(白筋や筋状の濃度ムラ)として視認されにくい。
【0155】
(発明9):発明9に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至8のいずれか1項において、前記吐出口は、円形、楕円形、半円形、楕円の短軸で切断した半楕円形、又は四角形であることを特徴とする。
【0156】
吐出口の開口形状としては、発明9に例示したように、様々な形態が可能である。
【0157】
(発明10):発明10に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至9のいずれか1項において、前記組になった複数の吐出要素における各吐出口にそれぞれメニスカスが形成されることを特徴とする。
【0158】
各吐出口から押し出された液滴は、飛翔中に合体(合一)し、又は被描画媒体上で合一
し、1画素のドットを形成する。
【0159】
(発明11):発明11に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至9のいずれか1項において、前記組になった複数の吐出要素に対して単一のノズル部が形成され、当該組になった複数の吐出要素における各吐出口が前記ノズル部の内側に収容され、これら複数の吐出口から出た液滴が前記ノズル部で合一し、前記ノズル部から合一滴として吐出されることを特徴とする。
【0160】
かかる態様によれば、各吐出要素の吐出口のところまでは流路が別々に構成されているが、ノズル部のところで1つのノズル孔にまとめられている。これにより、ノズル部の出口からは各吐出口から押し出された液が一体となって(合体して)吐出される。
【0161】
(発明12):発明12に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至11のいずれか1項において、前記組になった複数の吐出要素における各吐出口から押し出された液は、前記被描画媒体に到達するまでの間に合一し、被描画媒体上に着弾することを特徴とする。
【0162】
着弾前に液滴を合体させる場合と、被描画媒体上に着弾してから液滴同士を合体させる場合とでは、液量としては同じであるが、被描画媒体上に形成されるドットの大きさ(被覆面積)は異なる。着弾前に液滴を合体させ、合一滴として被描画媒体上に付着させることにより、被描画媒体上で合体させる場合と比較して、より大きな被覆面積のドットを形成することができる。
【0163】
(発明13):発明13に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至12のいずれか1項において、前記組になった吐出要素は2つであり、これら2つの吐出要素が鏡対称、又は回転対称な形態で配設されていることを特徴とする。
【0164】
対称的な構造により、各吐出要素の吐出性能(吐出動作特性)を揃えることができる。
【0165】
(発明14):発明14に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至12のいずれか1項において、前記組になった吐出要素は3以上であり、これら複数の吐出要素が回転対称な形態で配設されていることを特徴とする。
【0166】
(発明15):発明15に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至12のいずれか1項において、前記組になった吐出要素は4以上の偶数であり、これら複数の吐出要素は、回転対称な形態で配設した吐出要素と、鏡対称な形態で配設した吐出要素から構成されることを特徴とする。
【0167】
(発明16):発明16に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至15のいずれか1項において、前記組になった吐出要素同士は、各圧力室間を仕切る壁部材の少なくとも一部が前記吐出エネルギー発生手段の発生する吐出力によって変形し得ることを特徴とする。
【0168】
かかる態様によれば、組になった吐出要素について、製造誤差等により、吐出要素間で吐出力差(圧力差)が発生した際、壁部材が変形して圧力差を吸収する。この構成は、当該壁部材を挟んで両面の圧力が釣り合ったところで変位がとまり、吐出要素間の吐出性能を揃えることができる。これにより、吐出方向精度が向上する。
【0169】
(発明17):発明17に係る液体吐出ヘッドは、発明16において、前記壁部材の変形する部分の一部に、ひだ状の曲面部が設けられていることを特徴とする。
【0170】
例えば、壁部材の一部が蛇腹のように折り畳まれた曲面部を有する構成を採用することにより、吐出時の圧力差によって柔軟に変形する隔壁を実現できる。
【0171】
(発明18):発明18に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至17のいずれか1項において、前記吐出エネルギー発生手段は、圧電体を用いたアクチュエータであり、各吐出要素に対応した前記アクチュエータの圧電体は、圧力室毎に個々に分離されていることを特徴とする。
【0172】
かかる態様によれば、圧力室間のクロストークを低減できる。
【0173】
(発明19):発明19に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至17のいずれか1項において、前記吐出エネルギー発生手段は、圧電体を用いたアクチュエータであり、各吐出要素に対応した前記アクチュエータの圧電体は、少なくとも、同じ組の各吐出要素間で一体的につながっていることを特徴とする。
【0174】
かかる態様によれば、発明18の構成と比較して、圧電体の端面部分が露出される面積が減り、経時劣化による絶縁破壊の発生確率が下がる。これにより、長寿命の点で有利である。また、製造の際に、圧電体をパターニングする加工工数が減り、製造工程の簡略化が可能である。
【0175】
(発明20):発明20に係る液体吐出ヘッドは、発明1乃至17のいずれか1項において、前記各圧力室及び前記各供給流路を含む流路部分は、シリコンを加工して形成されていることを特徴とする。
【0176】
かかる態様によれば、半導体製造技術を利用して高精度の微細加工が可能である。
【0177】
(発明21):発明21に係る液体吐出装置は、発明1乃至20のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、前記吐出エネルギー発生手段に印加する前記駆動信号を生成し、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する駆動制御回路と、を備えた液体吐出装置であって、前記駆動信号の波形は、吐出動作によって先に押し出された主滴と、その後方部の副滴とが飛翔中に合一するように、主滴の滴速よりも副滴の速度を速める駆動波形となっていることを特徴とする。
【0178】
かかる構成によれば、主滴の後方に発生する副滴(サテライト)の滴速を速めることにより、副滴は先行する主滴に追いついて合体する。この合一滴によって、被描画媒体上に大きなドットが形成される。
【0179】
(発明22):発明22に係る液体吐出装置は、発明21において、前記駆動波形は、副滴としてメニスカスから分離する液が前記吐出口付近を通過する際に、当該液を押し出す方向に前記吐出エネルギー発生手段を駆動する波形要素を有していることを特徴とする。
【0180】
サテライト(副滴)が吐出口から出ようとしているタイミングで、吐出エネルギー発生手段で更に加圧することで、副滴の滴速をアップさせることができる。これにより、副滴が確実に主滴と合一する。
【0181】
(発明23):発明23に係るインクジェット印刷装置は、発明1乃至20のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド、又は請求項21若しくは22に記載の液体吐出装置を用いたことを特徴とする。
【0182】
インクジェット印刷装置に用いるプリントヘッド(記録ヘッド)の構成例として、複数個のヘッドモジュールを繋ぎ合わせて、被描画媒体の全幅以上の長さにわたる複数の吐出口(ノズル)を配列させたノズル列を有するフルライン型ヘッドを用いることができる。このようなフルライン型のヘッドは、通常、被描画媒体(用紙)の相対的な送り方向(相対的搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0183】
「被描画媒体」は、ヘッドの吐出口から吐出される液滴の付着を受ける媒体(印字媒体、被画像形成媒体、被記録媒体、受像媒体、被吐出媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、中間転写媒体、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
【0184】
被描画媒体とヘッドを相対的に移動させる搬送手段は、停止した(固定された)ヘッドに対して被描画媒体を搬送する態様、停止した被描画媒体に対してヘッドを移動させる態様、或いは、ヘッドと被描画媒体の両方を移動させる態様の何れをも含む。なお、インクジェット方式のプリントヘッドを用いてカラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別にヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出可能な構成としてもよい。
【符号の説明】
【0185】
40…インクジェットヘッド、41…第1吐出要素、42…第2吐出要素、51…第1ノズル、52…第2ノズル、53…第1圧力室、54…第2圧力室、55…ジョイント流路、60…第1供給流路、62…第2供給流路、65…第1ピエゾアクチュエータ、66…第2ピエゾアクチュエータ、73…信号線、78…インク滴、77,78…サテライト、92…隔壁、92A,92B…曲面部、100…インクジェット印刷装置、124…記録媒体、170…描画ドラム、172M,172K,172C,172Y…インクジェットヘッド、190…インラインセンサ、250…ヘッド、251…ノズル、272…システムコントローラ、274…プリント制御部、294…エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が充填される圧力室と、前記圧力室に前記液体を供給するための供給流路と、前記圧力室に対応して設けられた吐出エネルギー発生手段と、前記吐出エネルギー発生手段の駆動によって発生させた吐出力により前記圧力室内の液を外部に吐出させるための吐出口と、を有する吐出要素が複数配置されて一組の記録素子単位が構成され、当該組になった前記複数の吐出要素の各吐出口から吐出させた液を被描画媒体上の同一画素に付着させて描画を行う液体吐出ヘッドにおいて、
前記組になった各吐出要素の吐出動作特性は同等であり、
これら組になった各吐出要素に対応して設けられた各吐出エネルギー発生手段は、共通の信号線に接続され、当該各吐出エネルギー発生手段に対して、前記共通の信号線を介して同一の駆動信号が同時に印加されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1において、
前記組になった複数の吐出要素の各圧力室に対し、同じ組成の液体が供給されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記吐出エネルギー発生手段として、前記圧力室の容積を変化させるアクチュエータが用いられ、前記組になった複数の吐出要素の各圧力室に設けられた前記各アクチュエータの排除体積が互いに等しいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記組になった複数の吐出要素は、各圧力室の共振周波数が等しいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記組になった複数の吐出要素の圧力室間を連通させるジョイント流路を備えていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項5において、
前記圧力室に前記供給流路が接続されている部分と、該圧力室に前記ジョイント流路が接続されている部分は、当該圧力室の平面視における略対角位置、又は最も遠く離れた位置に設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記組になった複数の吐出要素の各圧力室に接続されている供給流路のうち、少なくとも1つは、非吐出動作時に圧力室内の液体を循環させるための循環流路として用いられることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項において、
前記組になった複数の吐出要素における2つの吐出要素の吐出口は、描画動作時における前記被描画媒体と当該液体吐出ヘッドの相対的な移動方向に沿って並んで配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項において、
前記吐出口は、円形、楕円形、半円形、楕円の短軸で切断した半楕円形、又は四角形であることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項において、
前記組になった複数の吐出要素における各吐出口にそれぞれメニスカスが形成されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項において、
前記組になった複数の吐出要素に対して単一のノズル部が形成され、当該組になった複数の吐出要素における各吐出口が前記ノズル部の内側に収容され、これら複数の吐出口から出た液滴が前記ノズル部で合一し、前記ノズル部から合一滴として吐出されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項において、
前記組になった複数の吐出要素における各吐出口から押し出された液は、前記被描画媒体に到達するまでの間に合一し、被描画媒体上に着弾することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項において、
前記組になった吐出要素は2つであり、これら2つの吐出要素が鏡対称、又は回転対称な形態で配設されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項において、
前記組になった吐出要素は3以上であり、これら複数の吐出要素が回転対称な形態で配設されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項15】
請求項1乃至12のいずれか1項において、
前記組になった吐出要素は4以上の偶数であり、これら複数の吐出要素は、回転対称な形態で配設した吐出要素と、鏡対称な形態で配設した吐出要素から構成されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項において、
前記組になった吐出要素同士は、各圧力室間を仕切る壁部材の少なくとも一部が前記吐出エネルギー発生手段の発生する吐出力によって変形し得ることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項17】
請求項16において、
前記壁部材の変形する部分の一部に、ひだ状の曲面部が設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項において、
前記吐出エネルギー発生手段は、圧電体を用いたアクチュエータであり、各吐出要素に対応した前記アクチュエータの圧電体は、圧力室毎に個々に分離されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項19】
請求項1乃至17のいずれか1項において、
前記吐出エネルギー発生手段は、圧電体を用いたアクチュエータであり、各吐出要素に対応した前記アクチュエータの圧電体は、少なくとも、同じ組の各吐出要素間で一体的につながっていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項20】
請求項1乃至17のいずれか1項において、
前記各圧力室及び前記各供給流路を含む流路部分は、シリコンを加工して形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記吐出エネルギー発生手段に印加する前記駆動信号を生成し、前記液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する駆動制御回路と、を備えた液体吐出装置であって、
前記駆動信号の波形は、吐出動作によって先に押し出された主滴と、その後方部の副滴とが飛翔中に合一するように、主滴の滴速よりも副滴の速度を速める駆動波形となっていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項22】
請求項21において、
前記駆動波形は、副滴としてメニスカスから分離する液が前記吐出口付近を通過する際に、当該液を押し出す方向に前記吐出エネルギー発生手段を駆動する波形要素を有していることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項23】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド、又は請求項21若しくは22に記載の液体吐出装置を用いたことを特徴とするインクジェット印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−11585(P2012−11585A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147888(P2010−147888)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】