説明

液体吐出ヘッド及びこれを有する液体吐出装置

【課題】カバー部材内において管の外表面に生じた結露を吸収してカバー部材の外に放出可能にする。
【解決手段】インクジェットヘッド1は、インク流路を有する流路部材2と、インク供給口に接続されたインク供給管11aと、流路部材2との間においてドライバICなどの電子部品とともにインク供給管11aの少なくとも一部を収容する収容空間111を構成するカバー部材110と、収容空間111に配置された液体吸収部材180とを有している。カバー部材110には、カバー部材110の外に連通する貫通孔151が形成されており、液体吸収部材180は、インク供給管11aの外表面の少なくとも一部を覆うとともに、カバー部材110の外から見たときに一部が貫通孔151から露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出して記録媒体に画像を形成する液体吐出ヘッド及びこれを有する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヘッドホルダ(カバー部材)と、記録ヘッドを支持する補強フレームとの間等にポッティング剤を充填し、記録ヘッド内部にインクが侵入しないように構成された記録ヘッドユニットについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−208314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術においては、記録ヘッド内部にインクが侵入しない構成を得るために、ヘッドホルダ内が密閉空間に近い状態となっている。しかしながら、記録ヘッドにインクを供給する供給管(例えば、チューブなど)がヘッドホルダ内を通過するように配置され、この供給管内に外部よりも温度の低いインクなどの流体が流通すると、当該供給管の表面に結露が生じることがある。そして、ヘッドホルダ内において、供給管の表面に生じた結露による水滴がヘッドホルダ内に溜まる。ヘッドホルダ内はヘッドホルダ外に対して密閉空間に近い状態となっているので、この溜まった水滴がヘッドホルダ外に排出されることなく留まり、ヘッドホルダ内の電子部品に付着して当該電子部品が故障したり、ヘッドホルダ内の金属部品に付着して当該金属部品が腐食するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、カバー部材内において液体吐出ヘッドに流通する流体が流れる管の外表面に生じた結露を吸収してカバー部材の外に放出可能とする液体吐出ヘッド及びこれを有する液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出するための複数の吐出口、前記複数の吐出口に連通する液体流路、及び、前記液体流路に液体を供給するための供給口を有する流路部材と、前記供給口に接続された液体供給管と、前記流路部材に固定され、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与する吐出エネルギー付与手段と、前記吐出エネルギー付与手段に接続され、前記吐出エネルギー付与手段を駆動するための電子部品と、前記流路部材との間において前記液体供給管の少なくとも一部及び前記電子部品を収容する収容空間を構成するカバー部材と、前記収容空間に配置された液体吸収部材とを備えている。そして、前記カバー部材には、前記カバー部材の外に連通する貫通孔が形成されており、前記液体吸収部材は、前記液体供給管の外表面の少なくとも一部を覆うとともに、前記カバー部材の外から見たときに一部が前記貫通孔から露出している。
【0007】
これによると、カバー部材内の収容空間において、液体供給管の外表面に結露が生じても、液体吸収部材が当該結露を吸収し、貫通孔を介してカバー部材の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【0008】
本発明において、前記液体吸収部材が、前記貫通孔全体を覆っていることが好ましい。これにより、液体吸収部材で吸収した液体を効果的に外部に蒸発させることが可能になる。加えて、貫通孔から収容空間に異物(液体や埃など)が入りにくくなる。
【0009】
また、本発明において、前記液体吸収部材は、前記収容空間において最も下方にある前記液体供給管の部位の外表面を覆っていることが好ましい。これにより、液体供給管の外表面で結露した液体が液体供給管を伝って流路部材に付着すること及び流路部材上に流出することを防止できるので、流路部材の腐食や流路部材に固定された吐出エネルギー付与手段の故障が防止できる。
【0010】
また、本発明において、前記カバー部材の一部が、前記電子部品と熱的に結合されたヒートシンクとして設けられており、前記液体吸収部材が、前記電子部品とは離隔した状態で前記ヒートシンクに接触していることが好ましい。これにより、液体吸収部材によって吸収された液体が蒸発しやすくなる。
【0011】
また、本発明において、前記貫通孔が前記ヒートシンクに形成されていることが好ましい。これにより、液体吸収部材によって吸収された液体がより一層蒸発しやすくなる。
【0012】
また、本発明において、前記流路部材は、前記複数の吐出口を加湿するための加湿空気が噴出される噴出口、前記噴出口に連通する第1空気流路、前記第1空気流路に加湿空気を供給するための加湿空気供給口、前記噴出口より噴出された加湿空気を吸引するための吸引口、前記吸引口に連通する第2空気流路、及び、前記第2空気流路から加湿空気を排出するための加湿空気排出口を有しており、前記加湿空気供給口に接続された加湿空気供給管と、前記加湿空気排出口に接続された加湿空気排出管とをさらに備えている。そして、前記収容空間に前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部が収容され、前記液体吸収部材が、前記収容空間に収容された前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部の外表面の一部を覆っていることが好ましい。これにより、収容空間に収容された加湿空気の供給・排出管の外表面に結露が生じても、液体吸収部材に結露を吸収させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【0013】
本発明の液体吐出装置は、上述の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された液体を強制的に前記液体供給管に供給する液体供給手段と、前記液体吐出ヘッドの前記流路部材に設けられ、前記液体流路から液体を排出するための液体排出口と、前記液体排出口に接続され、前記タンクに連通する液体排出管と、前記液体排出管に設けられた開閉弁と、前記液体供給手段の駆動及び前記開閉弁を制御する制御手段を備えている。そして、前記制御手段は、前記開閉弁を開けた状態で前記液体供給手段を駆動して前記液体を、前記タンク、前記液体供給管、前記液体流路、前記液体排出管、前記タンクの順に循環させる。
【0014】
これによると、流路部材の液体流路の一部とタンクとの間において液体を循環させるために当該流路部材に液体排出管が接続された構成において、液体循環をすることにより収容空間より低温のタンク内液体が液体供給管に大量に供給され、液体供給管の外表面に結露が生じても、液体吸収部材が当該結露を吸収し、貫通孔を介してカバー部材の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【0015】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、別の観点では、液体を吐出するための複数の吐出口と、前記複数の吐出口に連通する液体流路と、前記液体流路に液体を供給するための供給口と、前記複数の吐出口を加湿するための加湿空気が噴出される噴出口と、前記噴出口に連通する第1空気流路と、前記第1空気流路に加湿空気を供給するための加湿空気供給口と、前記噴出口より噴出された加湿空気を吸引するための吸引口と、前記吸引口に連通する第2空気流路と、前記第2空気流路から加湿空気を排出するための加湿空気排出口とを有する流路部材と、前記供給口に接続された液体供給管と、前記加湿空気供給口に接続された加湿空気供給管と、前記加湿空気排出口に接続された加湿空気排出管と、前記流路部材に固定され、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与する吐出エネルギー付与手段と、前記吐出エネルギー付与手段に接続され、前記吐出エネルギー付与手段を駆動するための電子部品と、前記流路部材との間において前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部及び前記電子部品を収容する収容空間を構成するカバー部材と、前記収容空間に配置された液体吸収部材とを備えている。そして、前記カバー部材には、前記カバー部材の外に連通する貫通孔が形成されており、前記液体吸収部材は、前記収容空間に収容された前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部の外表面の一部を覆うとともに、前記カバー部材の外から見たときに一部が前記貫通孔から露出している。
【0016】
これによると、吐出口を加湿するための加湿空気を供給又は排出する際、加湿空気がカバー部材内の外気より冷たい場合に収容空間に収容された加湿空気の供給・排出管の表面に結露が生じても、液体吸収部材が当該結露を吸収し、貫通孔を介してカバー部材の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の液体吐出ヘッドによると、カバー部材内の収容空間において、液体供給管の外表面に結露が生じても、液体吸収部材が当該結露を吸収し、貫通孔を介してカバー部材の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
また、本発明の液体吐出ヘッドによると、吐出口を加湿するための加湿空気を供給又は排出する際、加湿空気がカバー部材内の外気より冷たい場合に収容空間に収容された加湿空気の供給・排出管の表面に結露が生じても、液体吸収部材が当該結露を吸収し、貫通孔を介してカバー部材の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
また、本発明の液体吐出装置によると、流路部材の液体流路の一部とタンクとの間において液体を循環させるために当該流路部材に液体排出管が接続された構成において、液体循環をすることにより収容空間より低温のタンク内液体が液体供給管に大量に供給され、液体供給管の外表面に結露が生じても、液体吸収部材が当該結露を吸収し、貫通孔を介してカバー部材の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドの概略斜視図である。
【図3】図2に示されたインクジェットヘッドの内部の構成を示す斜視図である。
【図4】図2に示すIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】インクジェットヘッドの内部流路、インク供給ユニット、及び、加湿ユニットの構成を示す概略構成図である。
【図6】(a)は図2に示すインクジェットヘッドの要部側面図であり、(b)は図2に示すインクジェットヘッドの部分断面図であり、(c)は図6(a)に示すVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図4に示すアクチュエータユニット及び流路ユニットの平面図である。
【図8】図7に示す一点鎖線で囲まれた領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
インクジェットプリンタ101は、図1に示すように、上方から下方に向かって用紙Pを搬送する搬送ユニット20と、搬送ユニット20によって搬送された用紙Pに、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインク滴をそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1と、インクジェットヘッド1にインクを供給する4つのインク供給ユニット10と、インクジェットヘッド1の吐出面2aを覆う4つキャップ31(図5には1つのキャップ31だけ示している)と、キャップ31を移動させるキャップ移動機構(不図示)と、加湿メンテナンスに用いられる加湿ユニット60と、インクジェットプリンタ101全体を制御する制御装置(制御手段)100とを有している。
【0021】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとEEPROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。制御装置100は、インクジェットプリンタ101全体を制御するものである。
【0022】
なお、本実施形態において、副走査方向とは搬送ユニット20で用紙Pを搬送するときの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは副走査方向に直交する方向であって水平面に沿った方向である。
【0023】
搬送ユニット20は、2つのベルトローラ6、7と、両ローラ6、7間に架け渡されるように巻回されたエンドレスの搬送ベルト8とを有している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、図示しない搬送モータから駆動力が与えられることで回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行するのに伴って回転する。搬送ベルト8の外周面に載置された用紙Pは、図1下方へと搬送される。
【0024】
4つのインクジェットヘッド1は、それぞれ主走査方向に沿って延在し、副走査方向に互いに平行に配置されている。すなわち、インクジェットプリンタ101は、主走査方向にインク滴が吐出される複数の吐出口108が配列されたライン式のカラーインクジェットプリンタである。各インクジェットヘッド1の下面は、複数の吐出口108が配列された吐出面2aとなっている(図4及び図8参照)。
【0025】
搬送ベルト8の上側ループの外周面と吐出面2aとが対向しつつ平行となっている。搬送ベルト8によって搬送されてきた用紙Pが4つのインクジェットヘッド1のすぐ下方を通過する際に、各インクジェットヘッド1が制御装置100によって制御され、各インクジェットヘッド1から用紙Pの上面に向けて各色のインク滴が順に吐出される。こうして、用紙P上に所望のカラー画像が形成される。
【0026】
各インク供給ユニット10は、インク供給管(液体供給管)11a及びインク排出管(液体排出管)11bを介してインクジェットヘッド1と接続されている。加湿ユニット60も、エア供給管(加湿空気供給管)11c及びエア排出管(加湿空気排出管)11dを介して各インクジェットヘッド1と接続されている。
【0027】
次に、図2〜図8を参照しつつ、インクジェットヘッド1について詳細に説明する。インクジェットヘッド1は、図2〜図4に示すように、流路部材2と、カバー部材110と、制御基板170とを有している。流路部材2は、リザーバユニット130及び流路ユニット140を有しており、内部にはインクが流通するインク流路(液体流路)及び加湿空気が流通するエア流路が形成されている。また、インクジェットヘッド1は、流路ユニット140の上面に固定された4つのアクチュエータユニット120を有している(図7参照)。
【0028】
カバー部材110は、図2及び図4に示すように、下方向に開口した略箱形形状を有するヘッドカバー115と、2つのヒートシンク150とを有しており、流路ユニット140の上方に収容空間111を構成するように配置されている。この収容空間111には、図4に示すように、リザーバユニット130、アクチュエータユニット120、及び、電子部品の一部であるドライバIC160(後述する)、制御基板170などが配置されている。
【0029】
ヘッドカバー115の上面には、図2に示すように、インク供給管11a、インク排出管11b、エア供給管11c、エア排出管11dが貫通して設けられている。つまり、これら管11a〜11dの一部が収容空間111に配置されている。そして、これら管11a〜11dが、リザーバユニット130に形成された4つの開口130a,130b,130c,130d(図3参照)と接続されている。なお、開口130aはインク供給口(液体供給口)であり、開口130bはインク排出口(液体排出口)であり、開口130cはエア供給口(加湿空気供給口)であり、開口130dはエア排出口(加湿空気排出口)である。
【0030】
また、ヘッドカバー115は、流路ユニット140の副走査方向に関する両側縁部に向かって上下方向に延びた側壁116を含んでいる。この側壁116には主走査方向に延在した矩形状の開口116aが形成されている。開口116aは、側壁116の下端から上下方向に関する中央近傍に亘って形成された切り欠きである。開口116aは、ヒートシンク150に形成された平坦突出部150aをヘッドカバー115から露出させるためのものである。
【0031】
ヒートシンク150は、アルミニウム金属からなる板部材であり、その中央には、流路ユニット140の主走査方向に延在した矩形状の平坦突出部150aが形成されている。この平坦突出部150aは、図4に示すように、副走査方向について、流路ユニット140の外側に突出している。この平坦突出部150aは、例えば、金属製の平板にプレス加工が施されることによって形成される。このように、ヒートシンク150に平坦突出部150aが形成されていることで、ヒートシンク150の剛性が高められている。
【0032】
ヒートシンク150の平坦突出部150aには、図2に示すように、厚み方向に貫通した貫通孔151が形成されている。貫通孔151は、平坦突出部150aの図2中左端部であって2本の管11a,11dと副走査方向に関して対向する位置に配置されている。なお、各ヒートシンク150に形成された貫通孔151は、後述の液体吸収部材180によってその全体が覆われて塞がれている(図6参照)。
【0033】
また、ヒートシンク150の下端部には、図4に示すように、下方に突出した突起150bが主走査方向に沿って5つ形成されている。そして、流路ユニット140の副走査方向の各端近傍に形成された5つの凹部143(図7参照)に、突起部150bがそれぞれ嵌合されている。これにより、ヒートシンク150が流路ユニット140の上面から立設される。このとき、2つのヒートシンク150が、流路ユニット140の副走査方向に関して互いに対向している。図4に示すように、ヒートシンク150の上端部においては、その外側面とヘッドカバー115の側壁116の内側面とが接している。
【0034】
そして、インクジェットヘッド1は、カバー部材110及び流路ユニット140で囲まれた収容空間111が略密閉空間となるように、各部材間の隙間がポッティング剤(ヒートシンク150と流路ユニット140との境界領域に塗布されたもののみ図示)155によって封止されている。このとき、ヒートシンク150が、流路ユニット140及びヘッドカバー115に対して密着性よく当接しているので、ポッティング剤が密閉空間内に侵入することはない。
【0035】
制御基板170は、アクチュエータユニット120を制御するものであり、図3及び図4に示すように、リザーバユニット130の上方に固定されている。制御基板170の上面には、4つのコネクタ170aが固定されている。コネクタ170aは、制御基板170上に構築された各種のプロセッサや記憶装置と電気的に接続されている。4つのコネクタ170aは、主走査方向に関して千鳥状に2列に配置されている。
【0036】
各コネクタ170aの側面には、FPC162の一端が接続されている。FPC162は可撓性のシート状の部材であり、アクチュエータユニット120と制御基板170とを電気的に接続している。FPC162の内部には、複数の配線162aが形成されている。FPC162は、図4に示すように、コネクタ170aからリザーバユニット130の側面に沿って下方へと向かい、リザーバユニット130に形成された凹部133bに通されている。この凹部133b内で、FPC162の他端が、アクチュエータユニット120に電気的に接続されている。また、FPC162上には、ドライバIC160が装着されており、配線162aと電気的に接続されている。
【0037】
ドライバIC160は、アクチュエータユニット120を駆動するICチップである。また、ドライバIC160は、図4に示すように、ヒートシンク150と対向する位置において、リザーバユニット130の側面に設けられたスポンジ161によってFPC162とともにヒートシンク150に対して付勢されている。ヒートシンク150の内面におけるドライバIC160と対向する位置に放熱シート156が貼り付けられている。そして、ドライバIC160が、放熱シート156を介してヒートシンク150に密着している。これにより、ドライバIC160とヒートシンク150とが熱的に結合されている。
【0038】
リザーバユニット130は、流路ユニット140の上面に固定されており、流路ユニット140にインクを供給する部材である。リザーバユニット130は、上リザーバ131、リザーバベース132及び下リザーバ133を有している。図5に示すように、上リザーバ131の内部には、インク流路の一部を構成するインク流入流路131a及びインク排出流路131bと、エア流路の一部を構成するエア流入流路131c及びエア排出流路131dとが形成されている。なお、図5においては、図を見やすくするため、インク供給口130a、インク排出口130b、エア供給口130c、エア排出口130dを主走査方向に並べて図示している。
【0039】
インク流入流路131aは、インク供給管11a及びインク供給口130aを介して、インク供給ユニット10からのインクが流入する流路である。インク流入流路131aは、流入したインクを一時的に貯溜するインクリザーバとしての機能を有する。インク流入流路131aの内壁面には上リザーバ131の外壁面まで貫通する穴135bが形成されている。穴135bは、可撓性を有する樹脂フィルム135aにより、上リザーバ131の外壁面側から封止されている。樹脂フィルム135aは、インク流入流路131aの内壁面の一部を形成している。樹脂フィルム135aは、インク流入流路131aにおけるインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパー機能を有する。
【0040】
また、インク流入流路131aは、フィルタ136を介してリザーバベース132に形成されたインク連通流路132aと連通している。通常印刷時においては、インク供給ユニット10からのインクは、インク流入流路131aに流入し、フィルタ136を通過して、インク連通流路132aに流れる。
【0041】
インク排出流路131bは、フィルタ136の上流側においてインク流入流路131aと連通していると共に、インク排出口130b及びインク排出管11bを介して、インク供給ユニット10に接続されている。インク排出流路131bの下方側内壁面には上リザーバ131の外壁面まで貫通する穴137bが形成されている。穴137bは、可撓性を有する樹脂フィルム137aにより、上リザーバ131の下方の外壁面側から封止されている。樹脂フィルム137aは、インク排出流路131bの内壁面の一部を形成している。樹脂フィルム137aは、インク排出流路131bのインク圧の変動に伴って変位するため、インク圧の変動を抑制するダンパー機能を有する。なお、後述のインク循環時においては、インク供給ユニット10からのインクが、インク供給口130aを介してインク流入流路131aに流入し、インク排出流路131bを通過して、インク排出口130bを介してインク供給ユニット10に還流する。
【0042】
エア流入流路131cは、エア供給管11c及びエア供給口130cを介して、加湿ユニット60から供給された加湿空気が流入する流路である。エア流入流路131cは、リザーバベース132に形成されたエア連通流路132cと連通している。エア排出流路131dは、エア排出口130d及びエア排出管11dを介して、加湿ユニット60に接続されている。エア排出流路131dは、リザーバベース132に形成されたエア連通流路132dと連通している。
【0043】
リザーバベース132の内部には、インク流路の一部を構成するインク連通流路132aと、エア流路の一部を構成する2つのエア連通流路132c,132dとが形成されている。下リザーバ133の内部には、インク流路の一部を構成する主流路133a及び当該主流路133aから分岐した10個の分岐流路133bと、エア流路の一部を構成する2つのエア連通流路133c,133dとが形成されている。主流路133aには、インク連通流路132aから流れてきたインクが流入する。分岐流路133bは、流路ユニット140の上面に形成されたインク供給口140aと連通している。エア連通流路133c,133dは、リザーバベース132に形成されたエア連通流路132c,132dと連通している。また、エア連通流路133c,133dは、流路ユニット140の上面に形成されたエア供給口140c及び排出口140dと連通している。
【0044】
このようにリザーバユニット130に形成されたインク流入流路131a、インク連通流路132a、主流路133a及び分岐流路133bを通じて、インク供給口130aから供給されたインクが流路ユニット140に流入する。インクは、流路ユニット140に到達するまでにフィルタ136を通過する。その際にインク内の異物がフィルタ136によって捕獲される。また、リザーバユニット130に形成されたエア流入流路131c、エア連通流路132c,133cを通じて、流路ユニット140側に加湿空気が供給される。一方、流路ユニット140側から吸引した空気が、リバーユニット130に形成されたエア連通流路133d,132d、エア排出流路131d、エア排出口130d及びエア排出管11dを通じて、加湿ユニット60に排出される。
【0045】
また、インクジェットヘッド1は、図6に示すように、収容空間111に設けられた液体吸収部材180を有している。液体吸収部材180は、スポンジなどの多孔質材料から構成されており、液体と接触することによって当該液体を吸収し、気体と接触することによって吸収した液体を蒸発させることが可能である。液体吸収部材180は、略直方体形状を有しており、収容空間111において、インク供給管11a、インク排出管11b、エア供給管11c、及び、エア排出管11dの下方端部(最も下方に位置する部位)の外表面全体と接触しつつ覆っている。これにより、収容空間111において、管11a〜11dの外表面で結露が生じても、液体吸収部材180で効果的に結露を吸収することができる。つまり、収容空間111において、管11a〜11dの液体吸収部材180よりも上方で結露が生じても当該結露は管11a〜11dの外表面に沿って下方に流れ、この流れてきた結露が液体吸収部材180に吸収される。このため、結露がリザーバユニット130から流路ユニット140上に流れて付着すること、及び、流路ユニット140上に流出することを防止できる。したがって、金属材料で構成された流路部材2の部位の腐食や流路ユニット140に固定されたアクチュエータユニット120及びドライバIC160などの電子部品の結露付着による故障が防止できる。また、液体吸収部材180で覆っている管11a〜11dの部位は、ちょうど開口130a〜130dとの接続部である。このため、当該接続部から微量のインクや加湿空気が漏れたとしても液体吸収部材180で効果的に吸収しカバー部材110の外に蒸発させることが可能となる。
【0046】
また、図6に示すように、液体吸収部材180の副走査方向の各側面のうち、約半分がヒートシンク150の内面と接触している。このため、ドライバIC160で発生した熱によって温められたヒートシンク150の熱によって、液体吸収部材180に吸収された液体が蒸発しやすくなる。なお、液体吸収部材180とドライバIC160とは離隔されている。さらに、液体吸収部材180は、ヒートシンク150の貫通孔151全体と対向する位置に配置されている。つまり、液体吸収部材180は、貫通孔151全体を覆って塞ぐように配置されている。これにより、カバー部材110の外から貫通孔151を見たときに、液体吸収部材180の一部が貫通孔151から露出する。このように液体吸収部材180の一部がヒートシンク150に形成された貫通孔151から露出しているので、液体吸収部材180で吸収した液体を効果的にカバー部材110の外に蒸発させることが可能となる。また、液体吸収部材180が貫通孔151全体を覆っているので、貫通孔1151から収容空間111に異物(液体や埃など)が入りにくくなる。
【0047】
変形例として、ヒートシンク150に貫通孔151を形成せず、ヘッドカバー115(側壁116)に貫通孔を形成し、当該貫通孔の少なくとも一部を覆うように液体吸収部材を配置してもよい。この場合においても、液体吸収部材がカバー部材110の外に露出されるので、液体吸収部材180で吸収した液体をカバー部材110の外に蒸発させることが可能となる。
【0048】
続いて、流路ユニット140及びアクチュエータユニット120について説明する。なお、図8では説明の都合上、アクチュエータユニット120の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0049】
流路ユニット140は、圧力室110等を含むインク流路及び加湿空気が流通するエア流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット(吐出エネルギー付与手段)21は、各圧力室110に対応した複数のユニモルフ型のアクチュエータを含んでいる。そして、制御装置100からの指令に基づいて、制御基板170及びドライバIC160が制御され、各アクチュエータにドライバIC160からの駆動信号が供給されることで、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する。こうして、各インクジェットヘッド1の吐出口108からインクが吐出される。
【0050】
流路ユニット140は、ステンレス鋼からなる複数の金属製のプレートを互いに位置合わせした積層体である。流路ユニット140の上面には、図7に示すように、リザーバユニット130の分岐流路133bに連通する計10個のインク供給口140aと、リザーバユニット130のエア連通流路133c,133dに連通するエア供給口140c及びエア排出口140dとが開口している。また、流路ユニット140の内部には、インク供給口140a及びマニホールド流路105、さらにマニホールド流路105に含まれる複数の副マニホールド流路105aのそれぞれから分岐した多数の個別インク流路が形成されている。吐出面2aには多数の吐出口108がマトリクス状に配置されている。多数の吐出口108は、アクチュエータユニット120と鉛直方向に重なる位置に配置されている。
【0051】
流路ユニット140におけるインクの流れについて説明する。図7及び図8に示すように、リザーバユニット130の分岐流路133bからインク供給口140aに供給されたインクは、マニホールド流路105の副マニホールド流路105aに分配される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路に流れ込み、圧力室110を介して吐出口108に至る。このように流路部材2には、流路ユニット140の上述のインク流路と、リザーバユニット130のインク流入流路131a、インク連通流路132a、主流路133a及び分岐流路133bとによって構成されたインク供給口130aから吐出口108に至るインク流路(液体流路)が構成されている。
【0052】
また、流路ユニット140の内部には、図5に示すように、エア供給口140cから吐出面2aに向かって鉛直方向に延在したエア供給流路141と、エア排出口140dから吐出面2aに向かって鉛直に延在したエア排出流路142とが形成されている。そして、吐出面2aには、エア供給流路141と連通したエア噴射口141aと、エア排出流路142と連通したエア吸引口142aとが形成されている。主走査方向に関して、エア噴射口141aは吐出面2aの一端部に形成されており、エア吸引口142aが吐出面2aの他端部に形成されている。そして、エア噴射口141aとエア吸引口142aとの間に多数の吐出口108が配置されている。なお、エア噴射口141a、エア吸引口142a及びすべての吐出口108は、吐出面2aにおいて、キャップ31によって覆われる位置に配置されている。
【0053】
流路ユニット140における加湿空気の流れについて説明する。加湿メンテナンスが行われる際は、図5に示すように、リザーバユニット130のエア連通流路133cからエア供給口140cに供給された加湿空気が、エア供給流路141を通ってエア噴射口141aから噴射される。このとき、吐出面2aはキャップ31によって覆われており、キャップ31と吐出面2aとで囲まれた密閉空間内に加湿空気が噴射される。こうして、当該密閉空間が湿潤状態に保たれ吐出口108近傍のインクの保湿が確保される。すなわち、吐出口108近傍のインクが増粘しにくくなる。また、密閉空間内に加湿空気が噴射されると同時に密閉空間内の空気がエア吸引口142aから吸引され、当該空気がエア排出流路142を通ってエア連通流路133dに流れる。このように流路部材2内には、エア供給口130cからエア噴射口141aに至るエア流路(第1空気流路:エア流入流路131c、エア連通流路132c,133c、エア供給流路141)と、エア吸引口142aからエア排出口140dに至るエア流路(第2空気流路:エア排出流路142、エア連通流路133d,132d、エア排出流路131d)とが設けられている。
【0054】
インク供給ユニット10について詳細に説明する。図5に示すように、インク供給ユニット10は、インク供給管11a及びインク排出管11bが接続されたサブタンク80と、サブタンク80に接続されたインク補給管81、インク供給管11aに設けられたポンプ(液体供給手段)82と、インク排出管11bに設けられたバルブ(開閉弁)83とを有している。ポンプ82及びバルブ83は、制御装置100によってその駆動が制御される。
【0055】
サブタンク80は、インクジェットヘッド1に供給されるインクを貯溜するものであり、インクタンク90に貯溜されたインクが必要に応じて図示しないポンプによりインク補給管81を介して補給される。また、サブタンク80の外壁には大気連通孔80aが形成されている。これにより、サブタンク80内の気圧が、貯溜しているインクの量にかかわらず常に大気圧となり、安定したインク供給を可能にしている。
【0056】
ポンプ82は、駆動することによって、サブタンク80のインクを、インク供給管11aを介してインク流入流路131aに強制的に供給する供給手段として機能すると共に、インク供給管11aにおいてサブタンク80に向かってインクが流れるのを防止する逆止弁として機能する。ポンプ82は、容積型ポンプである三相ダイヤフラムポンプであり、3つのダイヤフラムが互いに異なる位相で駆動することによって、インク送出時の圧力変動を抑制する構成となっている。バルブ83は、インク排出管11bにおけるインク流量を調整する調整弁である。
【0057】
インク循環動作について説明する。インク循環動作は、メンテナンス動作の一部であり、インクジェットプリンタ101が起動されたとき、待機時間が一定時間を超えたとき、及び、ユーザから指示があったときに開始される。待機時及び通常印刷時には、ポンプ82が停止していると共に、バルブ83が閉となっている。なお、ポンプ82が停止している場合であっても、印字に必要な程度の比較的小流量のインクであれば、サブタンク80のインクが、インク供給管11aを流れてリザーバユニット130に供給可能となっている。
【0058】
インク循環動作が開始されると、制御装置100が、バルブ83を開いた後に、パージポンプ82を駆動する。これにより、サブタンク80のインクが、インク供給管11aを通ってインク流入流路131aに強制的に供給される。このとき、バルブ83が開いているため、インク流入流路131aからインク排出流路131b及びインク排出管11bを通過してサブタンク80に至る経路における流路抵抗が、インク流入流路131aから各吐出口108に至る経路の流路抵抗より小さくなる。このため、インク流入流路131aに供給されたインクが、フィルタ136を通過してインク連通流路132aに流れ込むことなく、インク排出流路131b及びインク排出管11bを順に通過してサブタンク80に戻る。このインク循環動作が行われることによって、インク流入流路131a内に滞留しているエア及び異物、特にフィルタ136上に滞留しているエア及び異物が、インクと共にインク排出流路131b及びインク排出管11bを順に通過してサブタンク80にトラップされる。そして、制御装置100は、インク循環動作が所定時間行われると、ポンプ82を停止し、その後、バルブ83を閉じる。こうして、インク循環動作が終了する。
【0059】
加湿ユニット60について詳細に説明する。加湿ユニット60は、図5に示すように、エア供給管11c及びエア排出管11dが接続されたタンク61と、各エア排出管11dに設けられたポンプ62とを有している。ポンプ62は、制御装置100によってその駆動が制御される。また、タンク61には、4つのインクジェットヘッド1に接続されたすべてのエア供給管11c及びエア排出管11dが接続されている。
【0060】
タンク61は、下部空間に水を貯溜し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。エア排出管11dは、タンク61内の水面よりも下方に接続され、タンク61の下部空間と連通している。エア供給管11cは、タンク61内の水面よりも上方に接続され、タンク61の上部空間と連通している。なお、タンク61内の水がポンプ62に流れ込まないように、エア排出管11dのタンク61とポンプ62との間には図示しない逆止弁が取り付けられおり、空気がエア排出管11dからタンク61を通ってエア供給管11cに流れるようになっている。
【0061】
加湿メンテナンス動作について説明する。この加湿メンテナンス動作も、メンテナンス動作の一部であり、所定時間インク吐出動作が行われなかったとき等に行われる。
【0062】
加湿メンテナンス動作が開始されると、制御装置100が、図5に示すように、キャップ31が吐出面2aに当接する位置に各キャップ31が移動するように、図示しないキャップ移動機構を制御する。これにより、キャップ31と吐出面2aとで囲まれた空間が密閉空間となる。
【0063】
その後、制御装置100は、ポンプ62を駆動し、エア吸引口142aから密閉空間内の空気を吸引する。このとき、エア吸引口142aから吸引された空気は、エア排出流路142、エア排出口140d、エア連通流路133d,132d、エア排出流路131d、エア排出口130d及びエア排出管11dを通ってポンプ62に至り、タンク61に排出される。当該空気は、タンク61の下部空間(即ち水面下)に供給される。そして、タンク61内の水により加湿された空気は、タンク61の上部空間から排出され、エア供給管11c、エア供給口130c、エア流入流路131c、エア連通流路132c,133c、エア供給口140c及びエア供給流路141を通って、エア噴射口141aから密閉空間内に供給される。このようにしてキャップ31と吐出面2aとで囲まれた密閉空間内に加湿空気が供給されることにより、吐出口108近傍のインクの増粘が抑制され、吐出口108の目詰まりを防止することができる。さらに、吐出口108近傍のインクが増粘していても、加湿空気より水分が供給されることによりインクの増粘が解消(回復)する。
【0064】
制御装置100は、ポンプ62を所定時間駆動した後、ポンプ62の駆動を停止する。そして、制御装置100は、キャップ31と吐出面2aとが離隔する退避位置に各キャップ31が移動するように、キャップ移動機構を制御する。こうして、加湿メンテナンス動作が終了し、インクジェットヘッド1による記録動作が可能な状態となる。
【0065】
以上に述べたように、本実施形態によるインクジェットヘッド1及びプリンタ101によると、カバー部材110内の収容空間111において、インク供給管11aの外表面に結露が生じても、液体吸収部材180が当該結露を吸収し、貫通孔151を介してカバー部材110の外に蒸発させることが可能となる。このため、ドライバIC160や制御基板などの電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【0066】
また、吐出口108を加湿するための加湿メンテナンス動作において、加湿空気を供給又は排出する際、加湿空気がカバー部材110内の外気より冷たい場合に収容空間111に収容されたエア供給管11c及びエア排出管11dの表面に結露が生じても、液体吸収部材180が当該結露を吸収し、貫通孔151を介してカバー部材110の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【0067】
また、流路部材2のインク流路の一部とサブタンク80との間においてインクを循環させるために当該流路部材2にインク排出管11bが接続された構成において、インク循環動作をすることにより収容空間111より低温のサブタンク80内のインクがインク供給管11aに大量に供給され、インク供給管11a及びインク排出管11bの外表面に結露が生じても、液体吸収部材180が当該結露を吸収し、貫通孔151を介してカバー部材110の外に蒸発させることが可能となる。このため、電子部品に液体が付着して故障するのを抑制することが可能となる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、液体吸収部材は、収容空間111内におけるインク供給管11a、インク排出管11b、エア供給管11c及びエア排出管11dのうち、3以下の管の外表面の一部を覆いつつ、その一部がカバー部材110に形成された貫通孔から露出していればよい。これにおいても上述と同様な効果を得ることができる。また、上述の実施形態においては、4つの管11a〜11dの開口130a〜130dに対する接続部がちょうど収容空間111において最も下方にある位置であったが、当該接続部が最も下方の位置に配置されておらず、その途中部位が最も下方に配置されておれば、当該部位を覆うように液体吸収部材が設けられていてもよい。こうすれば、上述と同様な効果を得ることができる。
【0069】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。また、エネルギー付与手段は、前述した圧電式の他、静電式等のアクチュエータやサーマル式の発熱素子等の吐出エネルギー付与手段であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
2 流路部材
11a インク供給管(液体供給管)
11b インク排出管(液体排出管)
11c エア供給管(加湿空気供給管)
11d エア排出管(加湿空気排出管)
80 サブタンク(タンク)
82 ポンプ(液体供給手段)
83 バルブ(開閉弁)
100 制御装置(制御手段)
101 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
105 マニホールド流路(液体流路の一部)
105a 副マニホールド流路(液体流路の一部)
108 吐出口
110 カバー部材
111 収容空間
120 アクチュエータユニット(エネルギー付与手段)
130a インク供給口(液体供給口)
130b インク排出口(液体排出口)
130c エア供給口(加湿空気供給口)
130d エア排出口(加湿空気排出口)
131a インク流入流路(液体流路の一部)
131b インク排出流路(液体流路の一部)
132a インク連通流路(液体流路の一部)
133a 主流路(液体流路の一部)
133b 分岐流路(液体流路の一部)
131c エア流入流路(第1空気流路の一部)
131d エア排出流路(第2空気流路の一部)
132c,133c エア連通流路(第1空気流路の一部)
132d,133d エア連通流路(第2空気流路の一部)
141 エア供給流路(第1空気流路の一部)
141a エア噴射口(噴射口)
142 エア排出流路(第2空気流路の一部)
142a エア吸引口(吸引口)
150 ヒートシンク
151 貫通孔
160 ドライバIC(電子部品)
170 制御基板(電子部品)
180 液体吸収部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数の吐出口、前記複数の吐出口に連通する液体流路、及び、前記液体流路に液体を供給するための供給口を有する流路部材と、
前記供給口に接続された液体供給管と、
前記流路部材に固定され、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与する吐出エネルギー付与手段と、
前記吐出エネルギー付与手段に接続され、前記吐出エネルギー付与手段を駆動するための電子部品と、
前記流路部材との間において前記液体供給管の少なくとも一部及び前記電子部品を収容する収容空間を構成するカバー部材と、
前記収容空間に配置された液体吸収部材とを備えており、
前記カバー部材には、前記カバー部材の外に連通する貫通孔が形成されており、
前記液体吸収部材は、前記液体供給管の外表面の少なくとも一部を覆うとともに、前記カバー部材の外から見たときに一部が前記貫通孔から露出していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記液体吸収部材が、前記貫通孔全体を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記液体吸収部材は、前記収容空間において最も下方にある前記液体供給管の部位の外表面を覆っていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記カバー部材の一部が、前記電子部品と熱的に結合されたヒートシンクとして設けられており、
前記液体吸収部材が、前記電子部品とは離隔した状態で前記ヒートシンクに接触していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記貫通孔が前記ヒートシンクに形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記流路部材は、前記複数の吐出口を加湿するための加湿空気が噴出される噴出口、前記噴出口に連通する第1空気流路、前記第1空気流路に加湿空気を供給するための加湿空気供給口、前記噴出口より噴出された加湿空気を吸引するための吸引口、前記吸引口に連通する第2空気流路、及び、前記第2空気流路から加湿空気を排出するための加湿空気排出口を有しており、
前記加湿空気供給口に接続された加湿空気供給管と、前記加湿空気排出口に接続された加湿空気排出管とをさらに備えており、
前記収容空間に前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部が収容され、
前記液体吸収部材が、前記収容空間に収容された前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部の外表面の一部を覆っていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
液体を吐出するための複数の吐出口と、前記複数の吐出口に連通する液体流路と、前記液体流路に液体を供給するための供給口と、前記複数の吐出口を加湿するための加湿空気が噴出される噴出口と、前記噴出口に連通する第1空気流路と、前記第1空気流路に加湿空気を供給するための加湿空気供給口と、前記噴出口より噴出された加湿空気を吸引するための吸引口と、前記吸引口に連通する第2空気流路と、前記第2空気流路から加湿空気を排出するための加湿空気排出口とを有する流路部材と、
前記供給口に接続された液体供給管と、
前記加湿空気供給口に接続された加湿空気供給管と、
前記加湿空気排出口に接続された加湿空気排出管と、
前記流路部材に固定され、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための吐出エネルギーを前記液体流路内の液体に付与する吐出エネルギー付与手段と、
前記吐出エネルギー付与手段に接続され、前記吐出エネルギー付与手段を駆動するための電子部品と、
前記流路部材との間において前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部及び前記電子部品を収容する収容空間を構成するカバー部材と、
前記収容空間に配置された液体吸収部材とを備えており、
前記カバー部材には、前記カバー部材の外に連通する貫通孔が形成されており、
前記液体吸収部材は、前記収容空間に収容された前記加湿空気供給管及び前記加湿空気排出管の少なくともいずれか一方の一部の外表面の一部を覆うとともに、前記カバー部材の外から見たときに一部が前記貫通孔から露出していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された液体を強制的に前記液体供給管に供給する液体供給手段と、
前記液体吐出ヘッドの前記流路部材に設けられ、前記液体流路から液体を排出するための液体排出口と、
前記液体排出口に接続され、前記タンクに連通する液体排出管と、
前記液体排出管に設けられた開閉弁と、
前記液体供給手段の駆動及び前記開閉弁を制御する制御手段を備えており、
前記制御手段は、前記開閉弁を開けた状態で前記液体供給手段を駆動して前記液体を、前記タンク、前記液体供給管、前記液体流路、前記液体排出管、前記タンクの順に循環させることを特徴とする液体吐出装置。

























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−11561(P2012−11561A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147250(P2010−147250)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】