説明

液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】気泡排出性を確保しつつ、十分な圧力変動抑制効果を得ることが難しい。
【解決手段】共通液室10は、ノズル配列方向において、平面形状で長方形状に形成され、流路部材23を構成する流路板2の液室長手方向端部はそのまま共通液室10内に臨み、振動板部材3の液室長手方向端部は流路板2の液室長手方向端部に対して共通液室10と反対側の方向に後退した位置にあり、流路板2の液室6の共通液室10側端部の一部を開口することで、液室6の入口側、すなわち、液体供給経路7の共通液室10側は、液室6内における液体の流れ方向に沿う方向(X方向)に開口する水平開口部7aと、液室6内における液体の流れ方向に沿う方向と直交する方向(Y方向)に開口する垂直開口部7bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置、例えばインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドにあっては、多数のノズルを同時に駆動したときの個別流路の圧力変動が共通流路に伝播して、共通流路から個別流路に逆伝播することによって滴吐出特性が不安定になる。また、液体吐出ヘッド内に気泡が混入した場合にも滴吐出不良が生じる。
【0004】
従来、共通流路内での圧力変動を減衰させるものとして、例えば、液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズル板と、ノズルに連なって通じる複数の個別流路を形成する流路板と、複数の個別流路に液体を供給する共通流路を形成する共通流路部材と、流路板と共通流路部材との間に設けられた振動板部材とを備えて、個別流路と共通流路とは、振動板部材を挟んで反対側に配置され、振動板部材で個別流路の壁面を形成する変形可能な振動領域と共通流路の壁面の一部を形成する変形可能なダンパ領域とを形成したものが知られている(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−313761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなヘッドにあっては、気泡排出性を確保しつつ、十分な圧力変動抑制効果を得ることが難しいという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、気泡排出性を確保しつつ共通流路内での十分な圧力変動抑制を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズル板と、
前記ノズルに連なって通じる複数の個別流路を形成する流路部材と、
前記複数の個別流路に液体を供給する共通流路を形成する共通流路部材と、を備え、
前記個別流路の入口側は、前記個別流路内における液体の流れ方向に沿う方向と前記液体の流れ方向と直交する方向の少なくとも2方向で、前記共通流路に対して直接開口している
構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、個別流路の入口側は、個別流路内における液体の流れ方向に沿う方向と液体の流れ方向と直交する方向の少なくとも2方向で共通流路に対して直接開口している構成としたので、共通流路から個別流路への十分な供給経路が確保されて気泡排出性を確保しつつ、共通流路内での充分な圧力変動抑制を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)の断面説明図である。
【図3】同ヘッドの液室短手方向(ノズル配列方向)の要部断面説明図である。
【図4】同ヘッドの共通流路と個別流路のつなぎ部分の拡大斜視説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
【図7】本発明に係る画像形成装置の一例の機構部を説明する概略側面説明図である。
【図8】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの外観斜視説明図、図2は図1のA−A線に沿う液室長手方向(ノズル配列方向と直交する方向)の断面説明図、図3は同ヘッドの液室短手方向(ノズル配列方向)の要部断面説明図、図4は同ヘッドの共通流路と個別流路のつなぎ部分の拡大斜視説明図である。
【0012】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板(液室基板)2と、振動板部材3とを積層接合し、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ100と、このヘッドのフレームを構成する共通液室部材20とを備えている。ここでは、流路板2と振動板部材3とで流路部材23を構成している。
【0013】
ノズル板1、流路板2及び振動板部材3によって、液滴を吐出する複数のノズル4に連なって通じる個別流路の一部を構成する複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。以下、「液室」という。)6と、液室6に液体を供給する同じく個別流路の一部を構成する液室6に液体を供給する液体供給路7を形成している。
【0014】
そして、共通液室部材20の共通流路としての共通液室10から液体供給路7を経て液室6に液体を供給する。
【0015】
ここで、ノズル板1は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造したものを用いている。これに限らず、その他の金属部材、樹脂部材、樹脂層と金属層の積層部材などを用いることができる。ノズル板1には、各液室6に対応して例えば直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路板2と接着剤接合している。また、このノズル板1の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0016】
流路板2は、シリコン基板をエッチングして、あるいは、SUS基板などの金属板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいはプレスなどの機械加工をすることで、液室6、液体供給路7などの溝部や開口をそれぞれ形成している。
【0017】
振動板部材3は、流路板2の液室6を形成する溝部に対して壁面を形成する壁面部材を兼ねている。この振動板部材3は、各液室6に対応してその壁面の一部を形成する各振動領域(ダイアフラム部)3aを有している。
【0018】
そして、この振動板部材3の液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域3aを変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ100を配置している。
【0019】
この圧電アクチュエータ100は、ベース部材13上に接着剤接合した複数の積層型圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材12に対して所要数の圧電柱12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0020】
なお、圧電部材12の圧電柱12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動圧電柱(駆動柱)12A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電柱を非駆動圧電柱(非駆動柱)12Bとして区別している。
【0021】
そして、駆動圧電柱12Aの上端面(接合面)を振動板部材3の振動領域3aに接合している。この圧電部材12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、駆動圧電柱12Aの外部電極に駆動信号を与えるための可撓性を有する給電部材(配線部材)としてのフレキシブル配線基板としてのFPC15が接続されている。
【0022】
共通液室部材20は、例えばエポキシ系樹脂或いは熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイト等で射出成形により形成している。そして、この共通液室部材20は、ノズル板1の周縁部と振動板部材3の端部に段違いで接着剤にて接合している。
【0023】
ここで、個別流路としての液室6が共通流路である共通液室10に連なって通じる部分について図4も参照して説明する。
【0024】
共通液室10は、ノズル配列方向において、平面形状で長方形状に形成している。流路部材23を構成する流路板2の液室長手方向端部はそのまま共通液室10内に臨んでいる。また、振動板部材3の液室長手方向端部は流路板2の液室長手方向端部に対して共通液室10と反対側の方向、すなわちノズル4側へ後退した位置にあり、流路板2の液室6の共通液室10側端部の一部を液室長手方向と直交する方向に開口している。
【0025】
これにより、液室6の入口側、すなわち、液体供給路7の共通液室10側は、液室6内における液体の流れ方向に沿う方向(X方向)に開口する水平開口部7aと、液室6内における液体の流れ方向に沿う方向と直交する方向(Y方向)に開口する垂直開口部7bが形成される。
【0026】
つまり、液室6の入口側は、液室6内における液体の流れ方向に沿う方向(X方向)と液体の流れ方向と直交する方向(Y方向)の少なくとも2方向で共通液室10に直接開口する。
【0027】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって駆動柱12Aが収縮し、振動板部材3の液室壁面を形成する振動領域3aが下降して液室6の容積が膨張することで、液室6内に液体が流入し、その後駆動柱12Aに印加する電圧を上げて駆動柱12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域3aをノズル4方向に変形させて液室6の容積を収縮させることにより、液室6内のインクが加圧され、ノズル4から液滴が吐出(噴射)される。
【0028】
そして、駆動柱12Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材3の振動領域3aが初期位置に復元し、液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から液室6内に液体が充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0029】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0030】
この液滴吐出動作を行ったとき、液室6内で生じた圧力波が液体供給路7を通じて共通液室10に伝播して行く。そして、共通液室10に各液室6から伝播する圧力波は、液体供給路7の水平開口部7aと垂直開口部7bから、共通液室10に対して水平方向及び垂直方向に、効率良く、かつ、広い範囲で伝播される。
【0031】
このとき、水平開口部7a或いは垂直開口部7bを持たない従来の構成と比較して、十分に効率的な圧力波拡散を行うことができるため、共通液室10内において、より大きな圧力減衰効果を得ることできる。これにより、ヘッドの小型化も可能になる。
【0032】
また、水平開口部7aと垂直開口部7bで作られる個別液室分離壁7cは、各液室6から発生した圧力波を共通液室10全体へ拡散しつつ液室6間の相互干渉も防止することになる。つまり、液体の流れ方向と直交する方向は、液室6の配列方向とも直交する方向であり、液室6の入口側開口である開口部7a、7bの形成された領域の個別流路間には隔壁(分離壁7c)を形成した構成とすることで、液室間の相互干渉を防止している。
【0033】
この場合、液体供給路7の共通液室10側では、垂直開口部7bを形成する部分では、液室間隔壁(液体供給路間隔壁)をなくすることもできるが、個別液室分離壁7cを設けることで、相互干渉(ある液室の駆動によって他の液室に圧力変動を生じる現象)をより効果的に抑制することができる。
【0034】
また、共通液室10の容量を大きくし、共通液室部材20を弾性力を有する樹脂フレームとすることで、これらのダンピング効果(振動吸収効果))との組み合わせにより、より圧力減衰をアシストする効果が高まり、各液室で発生した滴吐出による急激な圧力変動をより効率よく減衰することができ、一層の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0035】
また、振動板部材3の共通液室10側端面を、共通液室部材20の振動板部材3との接合部20aの共通液室10側端面と同じ面とするか、上記実施形態のように共通液室10側に突出る構造とし、液室6の入口側端部で水平開口部7aと垂直開口部7bを有する構成とすることで、気泡が上方向(垂直方向)、横方向(水平方向)に抜けやすくなり、液室6内の残留気泡の滞留を低減し、気泡排出性を向上させることができる。
【0036】
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図5を参照して説明する。なお、図5は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【0037】
本実施形態では、共通液室10内に、供給される液体から異物を除去するフィルタ部材30を、弾性変位が可能な弾性部材31にて保持して設けている。
【0038】
フィルタ部材30と弾性部材31は同一部材でもよく、一部品として一体型に形成することもできる。例えば、Niを用いた電鋳法、ポリエチレンやポリウレタン或いはNBR合成ゴムを発泡処理やセル剤抽出処理により生成するセル径が制御された連通多孔質体で形成することができる。弾性部材31は、セル径が限りなく小さく、フィルタ部材30はフィルタリング機能と吐出抵抗を満足する10μm程度のセル径とすることが好ましい。
【0039】
これにより、液室6の入口側である液体供給路7の水平開口部7aと垂直開口部7bから共通液室10に伝播した圧力波による共通液室10内に圧力変動をより効果的に吸収することができ、より大きな圧力変動減衰効果を得ることができる。
【0040】
次に、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドについて図6を参照して説明する。なお、図6は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【0041】
本実施形態では、共通液室10の壁面の一部を小さい面積でも大きな弾性変形が得られる弾性係数の大きな樹脂ダンパフィルム42で形成している。そして、ダンパフィルム42の共通液室10と反対側には、流路板2の一部で、ダンパ室となる空間43を形成するマニホールド部44を形成している。
【0042】
これにより、共通液室10内に圧力波が伝播したときに、ダンパフィルム42が弾性変形することで、圧力変動を減衰することができる。このように、ダンパ部を設けることで、共通液室10の大容量化が困難な場合でも圧力変動減衰効果を得ることができ、圧力変動に対するダンピング効果を安定させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、流路部材を構成している個別流路の壁面を形成する壁面部材が振動板部材である圧電型ヘッドで説明しているが、発熱抵抗体を設けた基板を壁面部材とするサーマル型ヘッドでも、その他静電型ヘッドであっても、同様に本発明を適用することができる。
【0044】
また、上述した液体吐出ヘッドとこの液体吐出ヘッドに液体を供給するタンクを一体化することでヘッド一体型液体カートリッジ(カートリッジ一体型ヘッド)を得ることができる。
【0045】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図7及び図8を参照して説明する。なお、図7は同装置の機構部の側面説明図、図8は同機構部の要部平面説明図である。
【0046】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0047】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0048】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、一方の記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方の記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0049】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0050】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0051】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0052】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0053】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0054】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0055】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0056】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0057】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0058】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0059】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0060】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0061】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0062】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0063】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0064】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0065】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 ノズル板
2 流路板
3 振動板部材
3a 振動領域
4 ノズル
6 液室(個別流路、圧力室)
7 液体供給路
7a 水平開口部
7b 垂直開口部
10 共通液室
12 圧電部材
12A、12B 圧電柱
20 共通液室部材
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズル板と、
前記ノズルに連なって通じる複数の個別流路を形成する流路部材と、
前記複数の個別流路に液体を供給する共通流路を形成する共通流路部材と、を備え、
前記個別流路の入口側は、前記個別流路内における液体の流れ方向に沿う方向と前記液体の流れ方向と直交する方向の少なくとも2方向で、前記共通流路に対して直接開口している
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記液体の流れ方向と直交する方向は、個別流路の配列方向とも直交する方向であり、前記開口の形成された領域の個別流路間には隔壁が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記流路部材は、前記個別流路となる溝部を形成する流路板と、前記溝部の開口側を塞ぐ壁面部材とで構成され、
前記液体の流れ方向上流側の端部において前記壁面部材の端部は、前記流路板の端部よりもノズル側へ後退していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記壁面部材の前記液体の流れ方向上流側の端部は、前記共通流路部材に接合され、前記共通液室の壁面と同じか前記共通液室内に突出している
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−63556(P2013−63556A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202960(P2011−202960)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】