説明

液体吐出ヘッド

【課題】インクの乾燥を防止しつつ装置の幅を抑制する。
【解決手段】ヘッド2の吐出面を保護する保存キャップ150とヘッド2から排出されたインクを受ける廃液トレイ110とが設けられている。また、保存キャップ150を鉛直方向及び副走査方向のそれぞれに移動させるキャップ移動機構160と、廃液トレイ110を鉛直方向及び副走査方向のそれぞれに移動させるトレイ移動機構120とが設けられている。画像を形成する際、廃液トレイ110と保存キャップ150は、いずれも副走査方向に関してヘッド2の外側に退避する。これらの退避位置は、互いに上下に重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドが設けられた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出する吐出口が形成された吐出面を有する記録ヘッドにおいて、吐出口内のインクが乾燥すると、インクの吐出特性が変化するおそれがある。そこで、吐出口内のインクの乾燥に対処するための手段として、吐出面に当接して吐出口全体を覆うキャップを設け、吐出面を保護させることがある。また、別の手段として、吐出口から吐出されたインクを受ける部材を設け、乾燥したインクを吐出口からその部材に排出させることがある。特許文献1では、吐出口内のインクを乾燥から保護するキャップと吐出させたインクを受ける部材とを設けている。これによって、吐出口からインクを吐出させないときには、吐出口からのインクを受ける部材とは異なるキャップを用いて吐出面を保護することで、吐出口内のインクが乾燥するのをより有効に防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−334961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、吐出口内のインクを乾燥から保護するキャップと吐出させたインクを受ける部材とを印刷記録媒体を搬送する平面上に並列に並べている。したがって、特許文献1の装置は、印刷記録媒体を搬送する平面における装置の幅が比較的大きくならざるを得ない。
【0005】
本発明の目的は、インクの乾燥を防止しつつ装置の幅を抑制した記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、インクを吐出する吐出口が開口した吐出面を有する記録ヘッドと、前記吐出口からのインクの吐出方向に交差する一方向に沿って前記吐出面に対向する位置へと記録媒体を搬送する搬送手段と、前記吐出面において前記吐出口が開口した領域全体を覆う被覆位置と、前記一方向に関して前記吐出口からのインクの吐出領域より外側に退避した第1の退避位置との間で移動可能なキャップ部材と、前記被覆位置と前記第1の退避位置との間で前記キャップ部材を移動させるキャップ部材移動手段と、前記吐出面に対向し前記吐出口から吐出されたインクを受けるインク受け位置と、前記吐出口からのインクの吐出領域より前記一方向に関して外側に退避した第2の退避位置との間で移動可能なインク受け部材と、前記インク受け位置と前記第2の退避位置との間で前記インク受け部材を移動させるインク受け部材移動手段とを備えている。そして、前記第1及び第2の退避位置は、前記キャップ部材と前記インク受け部材がインクの吐出方向に並ぶ位置にあり、かつ、インクの吐出方向から見て前記キャップ部材と前記インク受け部材が重複する位置にある。
【0007】
本発明の記録装置によると、キャップの退避位置及びインク受け部材の退避位置が、記録媒体の搬送方向(一方向)に関して吐出領域より外側に設定されていると共に、これらの部材がインクの吐出方向に並び、インクの吐出方向から見て重複するように設定されている。したがって、これらの部材の両方を一方向に並べる場合と比べて、装置の幅を比較的小さくすることができる。
【0008】
また、本発明においては、前記キャップ部材移動手段が、前記記録ヘッドの長手方向に関する前記キャップ部材の端部を支持する第1の支持部材と、前記第1の支持部材を前記一方向及びインクの吐出方向のそれぞれに移動させる第1の移動機構とを含んでおり、前記インク受け部材移動手段が、前記記録ヘッドの長手方向に関する前記インク受け部材の端部を支持する第2の支持部材と、前記第2の支持部材を前記一方向及びインクの吐出方向のそれぞれに移動させる第2の移動機構とを含んでいることが好ましい。これによると、キャップ部材やインク受け部材を移動させる移動手段が具体的に実現する。
【0009】
また、本発明においては、前記キャップ部材及び前記インク受け部材が前記第1及び第2の退避位置にある際に、前記キャップ部材の前記吐出面への対向面が前記インク受け部材に対向することが好ましい。これによると、キャップ部材及びインク受け部材がいずれも退避した際、キャップ部材における吐出面への対向面がインク受け部材に対向するため、キャップ部材内に異物が侵入しにくくなる。
【0010】
また、本発明においては、前記一方向に関して配列された複数の前記記録ヘッドを備えており、前記複数の記録ヘッドのそれぞれに、一組の前記キャップ部材及びインク受け部材が設けられており、前記一方向に関して、前記記録ヘッド間の領域には、その領域に隣接する2つの前記記録ヘッドのいずれか一方に対応する一組の前記キャップ部材及びインク受け部材が退避する前記第1及び第2の退避位置が設けられていることが好ましい。これによると、記録媒体の搬送方向に関して記録ヘッド同士の間に各記録ヘッドのキャップ部材及びインク受け部材が退避する。このため、記録媒体の搬送方向に関して記録ヘッドと退避位置とが交互に並んで配置されるので、記録ヘッド、キャップ部材及びインク受け部材が搬送方向に関してコンパクトに配置され、装置の大きさが抑制される。また、2つの退避位置をインク吐出方向に関して重ねることにより記録ヘッド間の距離を小さくできる。このため、製造ばらつきや熱膨張等により、記録ヘッド間の距離が設計値よりずれたとしても、記録ヘッド間の距離が小さくされているのですれ量を少なくでき、結果として記録ヘッド間のインク吐出位置のずれを抑制でき、吐出されたインクによって形成される画像の劣化を抑制することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記キャップ部材の少なくともいずれかが、他の前記キャップ部材に対して独立に移動することが好ましい。これによると、キャップ部材が独立して移動することにより、そのキャップ部材に対応する記録ヘッドのみを駆動する際、他の記録ヘッドをキャップ部材で保護したまま駆動することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記第1の退避位置が、前記搬送手段による記録媒体の搬送方向に関して前記被覆位置より上流側にあることが好ましい。記録媒体が搬送途中にキャップ部材やインク受け部材の搬送方向上流側の部分に衝突して詰まった場合、仮にキャップ部材で吐出面を保護するためキャップ部材を搬送方向の下流側から上流側へと移動すると、詰まった記録媒体を搬送方向上流側の記録ヘッドで挟むことになり、さらに記録媒体の詰まりを悪化するおそれがある。一方、上記の構成によると、キャップ部材に吐出面を保護させる際、キャップ部材が上流側から下流側へと移動するので、記録媒体の詰まりを悪化させるおそれが低減できる。
【0013】
また、本発明においては、前記キャップ部材は、前記インク受け位置にある前記インク受け部材に対し、前記吐出面とは反対側の表面に対向する対向位置に移動することが可能であり、前記インク受け部材が前記インク受け位置にあり且つ前記キャップ部材が前記対向位置にあるときに、前記記録ヘッドからインクを吐出させてもよい。これによると、吐出口からのインクをインク受け部材に受けさせる際、キャップ部材をインク受け部材に対して吐出面とは反対側に配置するので、吐出口からのインクがキャップ部材を汚染するのが抑制される。
【0014】
また、本発明においては、前記インク受け部材が前記インク受け位置にあり且つ前記キャップ部材が前記第1の退避位置にあるときに、前記記録ヘッドからインクを吐出させてもよい。これによると、吐出口からのインクをインク受け部材に受けさせる際、キャップ部材を退避位置に配置するので、記録ヘッドの横から搬送手段の方へとインクが飛散するのをキャップ部材によって防止できる。
【0015】
また、本発明においては、前記吐出面に当接しつつ前記一方向に直交する方向に前記吐出面に沿って移動して前記吐出面を払拭するワイパブレードをさらに備えており、前記ワイパブレードが、前記吐出面を払拭しない時に、前記一方向に直交する方向に関して前記吐出領域の外側で、かつ、前記一方向に関して前記吐出領域に重複する第3の退避位置を取ってもよい。これによると、一方向に直交する方向に関して吐出領域の外側で一方向に関して吐出領域に重複する位置にワイパブレードが退避するため、搬送方向に関して退避する場合と比べて、装置の搬送方向の幅が大きくなりにくい。
【0016】
また、本発明においては、前記吐出面に当接しつつ前記吐出面に沿って移動して前記吐出面を払拭するワイパブレードをさらに備えており、前記ワイパブレードが、前記吐出面を払拭しない時に、前記第1及び第2の退避位置にある前記キャップ部材及びインク受け部材と前記一方向に重複する位置であり且つ前記吐出領域の外側の位置である第4の退避位置を取ってもよい。これによると、ワイパブレードが、退避したキャップ部材やインク受け部材と重複する位置に退避するので、装置の幅が大きくなりにくい。
【0017】
また、本発明においては、前記インク受け部材が受けたインクを吸引する吸引手段をさらに備えており、前記インク受け部材が前記第2の退避位置にある時に、前記吸引手段が、前記インク受け部材が受けたインクを吸引することが好ましい。インク受け部材が退避してからインクを吸引するので、インク受け部材がインク受け位置にいるときにインクを吸引する場合と比べて、記録媒体に向けてインクを吐出可能な状態に記録ヘッドを早く復帰させることができる。
【0018】
また、本発明においては、前記第1及び第2の退避位置が、前記キャップ部材、インク受け部材及び搬送手段がインクの吐出方向に並ぶ位置にあることが好ましい。これによると、キャップ部材及びインク受け部材が搬送手段と重なる位置に配置されるので、装置の幅を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの内部構成を概略的に示す模式図である。
【図2】図1のメンテナンスユニットの斜視図である。
【図3】本実施形態の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】図2を主走査方向に沿って見た図であって、画像形成時、吐出面保護時及びインク排出時のそれぞれにおける、ヘッド、廃液トレイ、保存キャップ及び搬送ベルトの位置関係を示す概略図である。
【図5】図2を主走査方向に沿って見た図であって、ワイパブレードによって吐出面を払拭する際の各部の位置関係を示す概略図である。
【図6】本実施形態に係る第1の変形例の構成を示す図4に対応する図である。
【図7】第1の変形例において保存キャップ及び廃液トレイの配置を変えた場合の図である。
【図8】本実施形態に係る第2の変形例の構成を示す図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタの内部構成を示す模式図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は直方体形状の筐体1aを有している。筐体1a内には、4色のインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド2(本発明における記録ヘッド;以下、ヘッド2とする)、搬送機構16(本発明における搬送手段)、及びメンテナンスユニット100が配置されている。メンテナンスユニット100はヘッド2の近傍に設置されており、ヘッド2をメンテナンスするメンテナンス処理を実行する。
【0022】
筐体1aの天板内面には、ヘッド2や搬送機構16等の動作を制御する制御部99が取り付けられている。天板の上部には、排紙部15が設けられており、ヘッド2から吐出されたインクにより画像が形成された用紙Pが排出される。搬送機構16の下方には、筐体1aに対して着脱可能な給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bの下方には、筐体1aに対して着脱可能なインクタンクユニット1cが配置されている。
【0023】
インクジェットプリンタ1の内部には、図1に示す太矢印に沿って用紙搬送経路が形成されており、用紙Pが給紙ユニット1bから排紙部15に向けて搬送される。
給紙ユニット1bは、給紙トレイ11と、給紙ローラ12とを有している。給紙トレイ11は、上方に向かって開口した箱形状を有しており、複数枚の用紙Pが積層された状態で収納される。給紙ローラ12は、給紙トレイ11の最も上方にある用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pは、ガイド13a、13bによりガイドされ且つ送りローラ対14によって挟持されつつ搬送機構16へと送られる。
【0024】
搬送機構16は、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6、7の間に架け渡されるように巻回されたエンドレスのベルトである。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されており、搬送ベルト8にテンションを付加している。ベルトローラ6、7及びテンションローラ10はフレーム21によって支持されている。
【0025】
プラテン18は、搬送ベルト8の内側領域に配置され、ヘッド2と対向する位置において、搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、その軸に搬送モータからギア等を介して駆動力が与えられることで、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行することによって、図1中時計回りに回転する。
【0026】
搬送ベルト8の外周面8aは、シリコーン処理が施されることによって粘着性を有している。ベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されながら用紙搬送方向(図1中右方であって副走査方向)へと搬送される。
【0027】
フレーム21は、副走査方向に関して両側から昇降機構19によって支持されている。昇降機構19は、フレーム21を鉛直方向に沿って移動可能に支持しており、フレーム21を駆動する駆動モータを有している。昇降機構19は、駆動モータからの駆動力をギア等を介してフレーム21に作用させ、フレーム21を鉛直方向に往復移動させる。フレーム21が移動すると、フレーム21に支持されているベルトローラ6、7及びテンションローラ10が連動し、鉛直方向に移動する。
【0028】
ベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a、29bによりガイドされ、且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送される。そして用紙Pは、筐体1aの上部に形成された排出口22から、筐体1aの天板上面に設けられた排紙部15へと排出される。
【0029】
4つのヘッド2は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している(図2参照)。これらのヘッド2は、用紙Pの搬送方向に沿って配列されて筐体1aに固定されている。つまり、このプリンタ1はライン式のプリンタであり、搬送方向と主走査方向とは互いに直交する関係にある。
【0030】
各ヘッド2の下面は、インクを吐出する複数の吐出口が形成され、吐出面2aを形成している(図4(a)参照)。4つのインクタンク17には互いに異なる色のインクが貯留されている。インクタンク17からヘッド2へと、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが供給される。搬送機構16によって搬送された用紙Pが、4つのヘッド2のすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面に向けて吐出面2aから各色のインクが順に吐出される。これにより、用紙Pの上面、すなわち、印刷面に所望のカラー画像が形成される。
【0031】
以下、メンテナンスユニット100について図2、図4及び図5を参照しつつ説明する。図2に示すように、メンテナンスユニット100は、4つのヘッド2に対応して設けられた4つの廃液トレイ110と4つの保存キャップ150とを有している。廃液トレイ110はヘッド2から吐出されたインクを受ける部材(本発明におけるインク受け部材)であり、保存キャップ150はヘッド2の吐出面2aを被覆して保護する部材(本発明におけるキャップ部材)である。このように、インクを受ける部材とは別に吐出面2aを被覆して保護する部材を設けているが、これらを共通の部材とすると、部材内に受けたインクが乾燥してインクの成分が吸湿成分となり、吐出面2aを被覆している間に吐出口内のインクが乾燥しやすくなるおそれがある。そこで、インクを受ける部材と吐出面2aを被覆して保護する部材とを別に設けることで、吐出面2aを被覆する部材の方にはインクを受けないようにしている。
【0032】
廃液トレイ110は主走査方向に沿って長尺であり、副走査方向に関してヘッド2の幅よりも僅かに大きい間隔で互いに等間隔且つ水平に配列されている。廃液トレイ110は、底板111と底板111の上面から上方へと突出した側板112とを有している。側板112は平面視において、主走査方向に長尺な長方形の四辺に沿って延びており、ヘッド2の吐出面2aにおける吐出口が形成された領域を取り囲むことができるように形成されている。側板112の上端には、図4(a)に示すように、上方に向かって突出する突起113が形成されている。突起113は側板112の上端の全領域に亘って形成されている。また、突起113は、ゴムなどの弾性材料から構成されている。底板111の上面には、図2に示すように吸引口114が開口している。吸引口114は、図示しない吸引ユニットとインクチューブ等を介して接続されている。吸引ユニットは、廃液トレイ110内に蓄積したインクを吸引口114から吸引する。
【0033】
メンテナンスユニット100は、4つの廃液トレイ110を移動させるトレイ移動機構120(本発明における第2の移動機構)を有している。トレイ移動機構120は、ピニオンギア123、ラックギア127、フレーム122、ピニオンギア124及びラックギア128を有している。廃液トレイ110は、主走査方向に関して2枚のフレーム121(本発明における第2の支持部材)に挟持されている。フレーム121は、副走査方向に延び且つ鉛直方向に沿った平板状の部材である。その副走査方向に関する端部は上方に突出しており、そこにピニオンギア123が設けられている。ピニオンギア123はフレーム121に固定された駆動モータの軸に固定されている。フレーム121においてピニオンギア123とは反対側の端部には突起125が設けられている。突起125は、もう1方のフレーム121とは反対側に向かって突出している。
【0034】
フレーム121の外側には、フレーム121及び4つの廃液トレイ110の周囲を水平方向の三方から取り囲むフレーム122が設けられている。フレーム122は鉛直方向に関して移動可能に筐体1aに支持されている。フレーム122の内側表面には、フレーム121側のピニオンギア123と噛み合うラックギア127が固定されている。ピニオンギア123は、回転するとラックギア127と噛み合いながらラックギア127に対して副走査方向に沿って移動する。したがって、駆動モータがピニオンギア123を回転させると、フレーム121とこれに固定された廃液トレイ110とは、フレーム122に対して副走査方向に関して往復移動する。
【0035】
また、フレーム122の内側表面には、フレーム121側の突起125と嵌まり合うガイド溝126が形成されている。ガイド溝126は副走査方向に沿って延びており、副走査方向に沿って移動するよう突起125を案内する。なお、ピニオンギア123及びラックギア127の組み合わせと突起125及びガイド溝126の組み合わせとは、いずれも2枚のフレーム121のそれぞれに同様に設けられている。
【0036】
フレーム122の外側表面にはピニオンギア124が設けられている。ピニオンギア124は、主走査方向に関してフレーム122の一端に設けられており、フレーム122に固定された駆動モータの軸に固定されている。筐体1aにはピニオンギア124と噛み合うラックギア128が固定されている。ピニオンギア124は、回転するとラックギア128と噛み合いながらラックギア128に対して鉛直方向に移動する。したがって、駆動モータがピニオンギア124を回転させることで、フレーム122とこれに支持されたフレーム121及び廃液トレイ110を鉛直方向に往復移動させることができる。
【0037】
保存キャップ150は主走査方向に沿って長尺であり、副走査方向に関して互いに等間隔に配列されている。保存キャップ150同士の間隔は廃液トレイ110同士の間隔と同じである。保存キャップ150は、底板151と底板151の上面から上方へと突出した突起152とを有している。突起152は平面視において、主走査方向に長尺な長方形の四辺に沿って延びており、ヘッド2の吐出面2aにおける吐出口が形成された領域を取り囲むことができるように形成されている。また、突起152は、ゴムなどの弾性材料から構成されている。保存キャップ150は2枚のフレーム161(本発明における第1の支持部材)に主走査方向に関して両側から挟持されている。
【0038】
トレイ移動機構120の下方には、保存キャップ150を移動させるキャップ移動機構160(本発明における第1の移動機構)が設けられている。キャップ移動機構160は、フレーム161に設けられたピニオンギア163、ピニオンギア163と噛み合うラックギア167、ラックギア167が固定されたフレーム162、及び、フレーム162に設けられラックギア128と噛み合うラックギア164を有している。また、フレーム161にはピニオンギア163を回転させる駆動モータが固定され、フレーム162にはピニオンギア163を回転させる駆動モータが固定されている。これらの各部はトレイ移動機構120の各部と同様に構成されており、キャップ移動機構160はトレイ移動機構120と同様に機能して保存キャップ150を鉛直方向又は副走査方向に往復移動させる。
【0039】
メンテナンスユニット100は、4つのヘッド2に対応して設けられた4つのワイパユニット170を有している。ワイパユニット170は、主走査方向に沿って延びるレール171と、レール171に沿って移動するワイパ台173と、ワイパ台173の上面に固定されたワイパブレード174とを有している。レール171は、各ヘッド2の斜め上方において主走査方向にヘッド2を跨ぐように敷設されている。
【0040】
ワイパブレード174は副走査方向に関してヘッド2の吐出面2aとほぼ同じ幅を有する平板状の部材であり、ワイパ台173から上方に向かって突出している。ワイパ台173は鉛直方向に沿って延びる懸垂板172の下端に固定されており、副走査方向に関してヘッド2と同じ位置に、ワイパブレード174の上端がほぼ吐出面2aと同じ高さとなるように配置されている。懸垂板172の上端はレール171に沿って移動可能にレール171に支持されている。ワイパユニット170は、懸垂板172をレール171に沿って移動させる駆動モータを有している。懸垂板172をレール171に沿って移動させることにより、ワイパブレード174の上端を吐出面2aに当接させつつ、吐出面2aの一端から他端まで移動させることができる。これによって、吐出面2aにおいて吐出口が形成された領域の全体が払拭される。
【0041】
図3に示すように、制御部99はヘッド2、搬送機構16、昇降機構19及びメンテナンスユニット100の動作を制御する。制御部99は、ヘッド2及び搬送機構16を制御することにより、用紙P上に画像を形成させる。また、制御部99は、ヘッド2、昇降機構19、並びにメンテナンスユニット100のトレイ移動機構120、キャップ移動機構160及びワイパユニット170を制御してヘッド2のメンテナンス処理を実行する。メンテナンス処理には、保存キャップ150でヘッド2の吐出面2aを保護する処理、ヘッド2から廃液トレイ110へとインクを吐出させる処理、及び、ワイパブレード174に吐出面2aを払拭させる処理が含まれている。以下、これらの処理について図4及び図5を参照しつつ説明する。なお、図4及び図5においてはトレイ移動機構120、キャップ移動機構160、ワイパユニット170などの図示を適宜省略している。
【0042】
図4(a)に示すように、用紙P上に画像が形成される際は、廃液トレイ110と保存キャップ150が、副走査方向に関してヘッド2の外側に、平面視においてちょうど互いに重なり合うように配置されている。廃液トレイ110同士及び保存キャップ150同士は互いに同じ間隔でヘッド2の幅より大きく離隔しているため、これらの間にはちょうどヘッド2が収まる幅の空間が形成される。そして、この空間にヘッド2がそれぞれ配置されている。廃液トレイ110と保存キャップ150の組のそれぞれは、用紙Pの搬送方向(副走査方向と同方向)に関して、その組に対応するヘッド2の上流側に隣接して配置されている。このときの廃液トレイ110と保存キャップ150の位置が、本発明における第1及び第2の退避位置に対応する。このとき、保存キャップ150は廃液トレイ110の下方に配置され、その上面が廃液トレイ110に対向するため、画像形成の際に飛散したインクやその他の異物が保存キャップ150内に侵入しにくい。また、ヘッド2の吐出面2aは搬送ベルト8の上面からわずかに上方に配置され、搬送ベルト8上の用紙Pに向かってインクを吐出するようになっている。
【0043】
画像形成が終了した後、吐出面2aを保護する状態に移行する際は、制御部99が昇降機構19を制御し、図4(b)に示すように吐出面2aと搬送ベルト8とが保存キャップ150の厚みより大きく離隔するように搬送機構16を降下させる。そして、制御部99がキャップ移動機構160を制御し、保存キャップ150を図4(a)の位置からヘッド2より低い位置に降下させると共に、ヘッド2の下方の位置へと副走査方向に移動させる。副走査方向に関しては、図4(a)の位置から用紙Pの搬送方向において下流側に移動させる。その後、保存キャップ150を上昇させることによって、図4(b)に示すように、平面視において吐出面2aの吐出口が形成された領域を取り囲むように保存キャップ150の突起152を吐出面2aに当接させる。突起152は弾性材料によって構成されているため、吐出面2aとの密着性が高い。したがって、保存キャップ150とヘッド2の間には、吐出面2a、突起152の内表面、及び底板151の上面によって画定された密閉空間が形成される。全ての吐出口はこの空間内に開口することとなり、保存キャップ150によって被覆されて保護される。このときの保存キャップ150の位置が本発明における被覆位置に対応する。再び画像を形成する際は、上記とは逆の工程で保存キャップ150及び搬送機構16が移動される。
【0044】
乾燥したインクを吐出口から吐出させる際は、制御部99が昇降機構19に搬送機構16を移動させ、図4(c)に示すように保存キャップ150及び廃液トレイ110の合計の厚みよりも吐出面2aから大きく離隔するように搬送ベルト8を配置させる。そして、制御部99がトレイ移動機構120及びキャップ移動機構160を制御し、廃液トレイ110や保存キャップ150を鉛直方向に移動させると共に副走査方向に移動させる。廃液トレイ110や保存キャップ150が図4(a)の退避位置にあるときは、これらを用紙Pの搬送方向において下流側へと移動させる。これによって、図4(c)に示すように、廃液トレイ110の突起113を吐出面2aに当接させると共に、保存キャップ150を廃液トレイ110の下方に配置させ、保存キャップ150の上面を廃液トレイ110の下面に対向させる。保存キャップ150がこのように配置されることにより、吐出口からインクが吐出された際、飛び散ったインクが保存キャップ150内に侵入するのが抑制される。
【0045】
また、廃液トレイ110の突起113は、平面視において吐出面2aの吐出口が形成された領域を取り囲むように吐出面2aに当接する。突起113は弾性材料によって構成されているため、吐出面2aとの密着性が高い。したがって、廃液トレイ110とヘッド2の間には、吐出面2a、側板112及び突起113の内表面、並びに底板111の上面によって画定された密閉空間が形成され、全ての吐出口がこの空間内に開口することとなる。このときの廃液トレイ110の位置が本発明におけるインク受け位置に対応する。この状態で乾燥したインクが吐出口から吐出されると、インクは廃液トレイ110へと排出される。このように、本実施形態ではインクを排出させる際、廃液トレイ110を吐出面2aに密着させた状態にするため、インクを排出する間に吐出口内のインクが乾燥するのも適切に抑制している。インクの排出が終了すると、上記とは逆の工程で廃液トレイ110、保存キャップ150及び搬送機構16が移動され、画像を形成する状態に戻される。廃液トレイ110が図4(a)の退避位置に戻ると、廃液トレイ110内に受けられたインクが吸引ユニットにより吸引される。
【0046】
なお、廃液トレイ110にインクを排出する際は、図4(d)のように、保存キャップ150を副走査方向に関してヘッド2の外側に配置させてもよい。これによると、飛び散ったインクが搬送ベルト8へと向かうのを保存キャップ150が遮るため、搬送ベルト8がインクで汚染されるのが抑制される。
【0047】
ワイパブレード174に吐出面2aを払拭させる際は、制御部99が昇降機構19を制御し、図5に示すように、保存キャップ150及び廃液トレイ110の合計の厚みよりも吐出面2aから大きく離隔するように搬送ベルト8を配置させる。さらに、トレイ移動機構120及びキャップ移動機構160を制御して、フレーム122の上端をワイパユニット170よりも下方に配置させる。これにより、ヘッド2とフレーム122の間をワイパブレード174が通過できるような空間が確保される。一方、ワイパブレード174は、画像を形成している際には、図2に示すように、主走査方向に関してヘッド2の外側に退避している。この位置が、本発明における第3の退避位置に対応する。制御部99はワイパユニット170を制御し、ワイパブレード174を図2の位置から主走査方向に移動させて吐出面2aを払拭させる。吐出面2aの全領域をワイパブレード174に払拭させると、ワイパブレード174を図2の位置に戻す。その後、画像を形成する場合は、トレイ移動機構120及びキャップ移動機構160を制御して、廃液トレイ110、保存キャップ150及び搬送ベルト8を図4(a)の状態に戻す。
【0048】
以上説明した本実施形態によると、廃液トレイ110と保存キャップ150がヘッド2からの退避位置において、図4(a)に示すように、平面視でちょうど重なり合うように配置される。このため、これらが副走査方向に並んでいる場合と比べ、副走査方向に関する装置の幅を小さくすることが可能となっている。本実施形態では搬送機構16と廃液トレイ110及び保存キャップ150とが平面視で重なっているため、特に装置をコンパクトに構成することができる。なお、本実施形態では、廃液トレイ110と保存キャップ150が退避位置において平面視でほぼぴったり重なり合うように配置されているが、本発明はこれに限られない。例えば副走査方向に関して一部のみが重なるように配置されていてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、用紙Pの搬送方向に関してヘッド2同士の間又はヘッド2の隣りに保存キャップ150及び廃液トレイ110が退避する。このため、用紙Pの搬送方向に関してヘッド2と退避位置とが交互に並んで配置されるので、ヘッド2、保存キャップ150及び廃液トレイ110が搬送方向に関してコンパクトに配置され、装置の幅が抑制される。また、保存キャップ150及び廃液トレイ110の退避位置を上下に重ねることによりヘッド2間の距離を小さくできる。このため、製造ばらつきや熱膨張等によりヘッド2間の距離が設計値よりずれたとしても、ヘッド間の距離がもともと小さくされているのでずれ量を少なくでき、結果としてヘッド2間のインク吐出位置のずれを抑制でき、吐出されたインクによって形成される画像の劣化を抑制することができる。
【0050】
ところで、搬送機構16が用紙Pを搬送する際、用紙Pが搬送途中に保存キャップ150や廃液トレイ110の搬送方向上流側の部分に衝突して詰まる場合がある。この場合、仮に保存キャップ150や廃液トレイ110が搬送方向の下流側から上流側へと移動するように構成されていると、詰まった用紙Pを搬送方向上流側のヘッド2で挟むことになり、さらに用紙Pの詰まりを悪化させるおそれがある。これに対して本実施形態によると、保存キャップ150や廃液トレイ110が上流側から下流側へと移動するように構成されているので、用紙Pが搬送方向上流側のヘッド2ではさまれることがない。特に、本実施形態では搬送機構16をヘッド2から下方へと離隔させ、用紙Pがつまった領域の周辺を広げてから保存キャップ150等を下流側へと移動させるため、用紙Pがつまった状態を解消させやすい。
【0051】
また、本実施形態では、廃液トレイ110が退避してからインクを吸引する。したがって、廃液トレイ110がヘッド2の下方にいるときにインクを吸引してから廃液トレイ110が移動する場合と比べて、速やかに廃液トレイ110がインクの吐出領域から退避するので、画像形成が可能な状態に早く復帰することができる。なお、本実施形態では、廃液トレイ110が図4(a)に示す退避位置へと退避してから廃液トレイ110に蓄積されたインクを吸引させているが、廃液トレイ110が退避位置へと移動し始めた後であればいつでもインクの吸引を開始させてもよい。例えば廃液トレイ110が退避位置へと移動する最中にインクの吸引を開始させた場合にも、廃液トレイ110がヘッド2の下方にいるときにインクを吸引する場合と比べて、装置を画像形成が可能な状態に早く復帰させることができる。また、インクの排出が終了すると速やかに廃液トレイ110を退避位置へと移動させ始めると共に、廃液トレイ110の移動が開始された直後にインクの吸引を開始させることにより、インクが乾く前に吸引させることが可能である。
【0052】
さらに、本実施形態では、ワイパブレード174が主走査方向に関してインクの吐出領域から退避する。このため、副走査方向に関して退避する場合と比べて、装置の副走査歩行に関する幅が大きくなりにくい。
【0053】
以下、上述の実施形態の第1の変形例について図6を参照しつつ説明する。以下においては主に第1の変形例と上述の実施形態との相違点についてのみ説明する。また、上述の実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜その説明や図示を省略する。
【0054】
第1の変形例は、図6(a)に示すように、用紙Pの搬送方向に関して下流側の3つの廃液トレイ110がフレーム221に固定されており、最も上流側の廃液トレイ110とは独立に移動可能なように構成されている。また、保存キャップ150においても、下流側の3つがフレーム261に固定され、最も上流側のものとは独立に移動可能なように構成されている。フレーム221及び261は、副走査方向に移動可能に筐体1aに支持されており、上述のフレーム121、ピニオンギア123及びラックギア127と同様の構成を有する移動機構により駆動される。最も上流側の廃液トレイ110及び保存キャップ150は、フレーム221や261を移動させる移動機構とは別に設けられた同様の移動機構により副走査方向に移動する。
【0055】
さらに、第1の変形例には、下流側の3つのヘッド2を昇降させる昇降機構と、最も上流側のヘッド2を昇降させる昇降機構とがそれぞれ設けられている。これらの昇降機構は、例えばヘッド2を支持するフレームと、このフレームにギアを介して駆動力を伝達する駆動モータとによって構成される。本変形例では、ヘッド2を昇降させるこのような昇降機構が設けられるため、上述の昇降機構19のような搬送機構16を昇降させる機構を設ける必要がないが、昇降機構19とヘッド2を移動させる機構とが併設されてもよい。
【0056】
以上の構成により、第1の変形例は、最も上流側のヘッド2のみを使用して画像形成する際、図6(b)に示すように下流側のヘッド2の吐出面2aを保存キャップ150で被覆して保護しておくことができる。例えば、最も上流のヘッド2がブラックのインクに対応し、その他のヘッド2がシアン、マゼンタ及びイエローのインクに対応する場合、ブラックのみを使用して画像を形成する際に、図6(b)のように使用できる。
【0057】
また、どのヘッド2においても画像形成を行わない際や廃液トレイ110にインクを排出する際は、全てのヘッド2を上昇させると共に、全ての廃液トレイ110や全ての保存キャップ150を副走査方向に沿ってヘッド2の下方に移動させる。これにより、例えば図6(c)に示すように、全てのヘッド2の吐出面2aを保存キャップ150によって保護させることができる。
【0058】
なお、第1の変形例において、図7に示すように、廃液トレイ110と保存キャップ150の上下を逆にして配置することもできる。図7の構成例において第1の変形例との違いは廃液トレイ110と保存キャップ150の配置のみであり、その他の構成は第1の変形例と同様である。図7(a)は、かかる場合において4つのヘッド2を使用して画像形成する場合を示し、図7(b)は、最も上流側のヘッド2のみを使用して画像形成するときの例を示している。
【0059】
以下、上述の実施形態の第2の変形例について図8を参照しつつ説明する。以下においては主に第2の変形例と上述の実施形態との相違点についてのみ説明する。また、上述の実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜その説明や図示を省略する。
【0060】
第2の変形例には、4つのヘッド2を同時に昇降させる昇降機構が設けられている。また、4つの廃液トレイ110を副走査方向に同時に移動させる移動機構と、4つの保存キャップ150を副走査方向に同時に移動させる移動機構とが設けられている。さらに、第2の変形例には、4つのワイパユニット170を副走査方向に同時に移動させる移動機構も設けられている。
【0061】
以上の構成により第2の変形例では、用紙Pに画像を形成する際、図8(a)に示すように、廃液トレイ110及び保存キャップ150のみならず、ワイパユニット170も、平面視において互いに重なる位置に退避する。この位置が、本発明における第4の退避位置に対応する。これにより、ヘッド2、保存キャップ150及び廃液トレイ110と共に、ワイパユニット170もコンパクトに配置されるため、装置の幅が抑制される。
【0062】
一方、ヘッド2のメンテナンス処理を実行する際は、ヘッド2を所定の高さに上昇させると共に、廃液トレイ110や保存キャップ150、ワイパユニット170を副走査方向に移動させることにより、これらをヘッド2の下方へと配置させることができる。例えば、ワイパユニット170によりヘッド2の吐出面2aを払拭させる際は、ヘッド2を図8(a)の位置から上昇させ、図8(b)に示すように吐出面2aをワイパブレード174の上端の高さに配置させる。そして、ワイパブレード174を副走査方向にヘッド2の下方まで移動させた後、主走査方向に移動させることにより、吐出面2aを払拭させる。吐出面2aの払拭が終了すると、ワイパブレード174及びヘッド2を上記とは逆の工程で移動させ、図8(a)の状態に復帰させる。
【0063】
<その他の変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0064】
例えば、上述の実施形態では、インクを排出させる際に廃液トレイ110を吐出面2aに密着させる構成を採用しているが、吐出面2aに当接せず、吐出面2aの下方でインクを受ける構成としてもよい。この場合、突起113を設けなくてもよい。
【0065】
また、本実施形態では、各部材を移動させる機構としてラックギア及びピニオンギアを組み合わせた構成を採用しているが、移動手段としてその他の構成を用いてもよい。例えば、搬送機構16のようにベルトとベルトを駆動するベルトローラとを組み合わせた構成としてもよい。この場合、移動させる対象となる部材とベルトとを固定し、移動させたい方向に沿ってベルトを配置すればよい。
【符号の説明】
【0066】
1 インクジェットプリンタ(プリンタ)
1a 筐体
2 インクジェットヘッド(ヘッド)
2a 吐出面
19 昇降機構
99 制御部
100 メンテナンスユニット
110 廃液トレイ
120 トレイ移動機構
150 保存キャップ
160 キャップ移動機構
174 ワイパブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する吐出口が開口した吐出面を有する記録ヘッドと、
前記吐出口からのインクの吐出方向に交差する一方向に沿って前記吐出面に対向する位置へと記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記吐出面において前記吐出口が開口した領域全体を覆う被覆位置と、前記一方向に関して前記吐出口からのインクの吐出領域より外側に退避した第1の退避位置との間で移動可能なキャップ部材と、
前記被覆位置と前記第1の退避位置との間で前記キャップ部材を移動させるキャップ部材移動手段と、
前記吐出面に対向し前記吐出口から吐出されたインクを受けるインク受け位置と、前記吐出口からのインクの吐出領域より前記一方向に関して外側に退避した第2の退避位置との間で移動可能なインク受け部材と、
前記インク受け位置と前記第2の退避位置との間で前記インク受け部材を移動させるインク受け部材移動手段とを備えており、
前記第1及び第2の退避位置は、前記キャップ部材と前記インク受け部材がインクの吐出方向に並ぶ位置にあり、かつ、インクの吐出方向から見て前記キャップ部材と前記インク受け部材が重複する位置にあることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記キャップ部材移動手段が、前記記録ヘッドの長手方向に関する前記キャップ部材の端部を支持する第1の支持部材と、前記第1の支持部材を前記一方向及びインクの吐出方向のそれぞれに移動させる第1の移動機構とを含んでおり、
前記インク受け部材移動手段が、前記記録ヘッドの長手方向に関する前記インク受け部材の端部を支持する第2の支持部材と、前記第2の支持部材を前記一方向及びインクの吐出方向のそれぞれに移動させる第2の移動機構とを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記キャップ部材及び前記インク受け部材が前記第1及び第2の退避位置にある際に、前記キャップ部材の前記吐出面への対向面が前記インク受け部材に対向することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記一方向に関して配列された複数の前記記録ヘッドを備えており、
前記複数の記録ヘッドのそれぞれに、一組の前記キャップ部材及びインク受け部材が設けられており、
前記一方向に関して、前記記録ヘッド間の領域には、その領域に隣接する2つの前記記録ヘッドのいずれか一方に対応する一組の前記キャップ部材及びインク受け部材が退避する前記第1及び第2の退避位置が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記キャップ部材の少なくともいずれかが、他の前記キャップ部材に対して独立に移動することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1の退避位置が、前記搬送手段による記録媒体の搬送方向に関して前記被覆位置より上流側にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項7】
前記キャップ部材は、前記インク受け位置にある前記インク受け部材に対し、前記吐出面とは反対側の表面に対向する対向位置に移動することが可能であり、
前記インク受け部材が前記インク受け位置にあり且つ前記キャップ部材が前記対向位置にあるときに、前記記録ヘッドからインクを吐出させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記インク受け部材が前記インク受け位置にあり且つ前記キャップ部材が前記第1の退避位置にあるときに、前記記録ヘッドからインクを吐出させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記吐出面に当接しつつ前記一方向に直交する方向に前記吐出面に沿って移動して前記吐出面を払拭するワイパブレードをさらに備えており、
前記ワイパブレードが、前記吐出面を払拭しない時に、前記一方向に直交する方向に関して前記吐出領域の外側で、かつ、前記一方向に関して前記吐出領域に重複する第3の退避位置を取ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記吐出面に当接しつつ前記吐出面に沿って移動して前記吐出面を払拭するワイパブレードをさらに備えており、
前記ワイパブレードが、前記吐出面を払拭しない時に、前記第1及び第2の退避位置にある前記キャップ部材及びインク受け部材と前記一方向に重複する位置であり且つ前記吐出領域の外側の位置である第4の退避位置を取ることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記インク受け部材が受けたインクを吸引する吸引手段をさらに備えており、
前記インク受け部材が前記第2の退避位置にある時に、前記吸引手段が、前記インク受け部材が受けたインクを吸引することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記第1及び第2の退避位置が、前記キャップ部材、インク受け部材及び搬送手段がインクの吐出方向に並ぶ位置にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−73154(P2011−73154A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223941(P2009−223941)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】