説明

液体吐出装置、制御装置、及びプログラム

【課題】吐出面への記録媒体の接触に伴う強制吐出において、液体の浪費を軽減する。
【解決手段】センサが吐出面への用紙の接触を検知した場合(S1:YES)、プリンタの制御装置は、吐出面に接触した用紙に対する記録動作を強制的に終了し(S2,S3)、当該用紙のうち吐出面に接触した領域に形成されている画像に関して、インクや前処理液の吐出デューティを検出する(S4)。その後制御装置は、強制吐出を含むメンテナンスを行う(S6)。この強制吐出において、制御装置1pは、S4で検出した吐出デューティに応じて、吐出されるインクや前処理液の量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置、これを制御する制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一例であるインクジェット式プリンタにおいて、1又は複数のヘッドから、互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出させる技術が知られている。例えば特許文献1に記載のプリンタは、インクを吐出するヘッドと、インクとは異なる特性を持つ前処理液を吐出するヘッドとを含む。前処理液としては、インク中の顔料色素を凝集させて、インクの濃度を向上させる機能を持つもの等がある。互いに異なる特性を持つ液体として、前処理液とインク、互いに色が異なるインク、インクと後処理液、等が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−157153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録媒体のうち液体が付着した領域が、当該液体とは異なる特性を持つ液体を吐出するヘッドの吐出面に接触すると、当該吐出面において、インクと処理液(前処理液や後処理液)との反応による凝集、異なる色のインクによる混色等が生じ得る。凝集は、吐出口の詰まりを生じさせ、吐出性能悪化の要因となる。混色は、記録品質の低下を招く。そこで、凝集や混色を防止するため、吐出面への記録媒体の接触が検知された場合、記録指令に基づく動作を停止し、当該吐出面に形成された吐出口から液体を強制的に吐出させる強制吐出等の、メンテナンスを行うことが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記メンテナンスを行う場合に、吐出面への液体の付着度合いに関わらず、強制吐出において吐出させる液体の量を一定にすると、必要以上の量の液体が使用されることがあり、液体の浪費に繋がる。
【0006】
本発明の目的は、吐出面への記録媒体の接触に伴う強制吐出において、液体の浪費を軽減することが可能な、液体吐出装置、制御装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1観点によると、複数の吐出口が開口した吐出面を有し、前記吐出口から記録媒体に対して互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出する、1以上のヘッドと、前記吐出面への記録媒体の接触を検知するセンサと、前記センサが前記接触を検知した場合、当該記録媒体のうち前記吐出面に接触した領域に形成されている画像に関して、液体の吐出デューティを検出する吐出デューティ検出手段と、前記センサが前記接触を検知した場合、記録指令に基づく動作を停止し、前記吐出口から液体を吐出させる強制吐出を含むメンテナンスを行うメンテナンス手段と、を備え、前記メンテナンス手段は、前記吐出デューティ検出手段が検出した吐出デューティに応じて、前記強制吐出において吐出される液体の量を調整することを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【0008】
本発明の第2観点によると、複数の吐出口が開口した吐出面を有し、前記吐出口から記録媒体に対して互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出する、1以上のヘッドと、前記吐出面への記録媒体の接触を検知するセンサと、を含む液体吐出装置に用いられる制御装置であって、前記センサが前記接触を検知した場合、当該記録媒体のうち前記吐出面に接触した領域に形成されている画像に関して、液体の吐出デューティを検出する吐出デューティ検出手段と、前記センサが前記接触を検知した場合、記録指令に基づく動作を停止し、前記吐出口から液体を吐出させる強制吐出を含むメンテナンスを行うメンテナンス手段と、を備え、前記メンテナンス手段は、前記吐出デューティ検出手段が検出した吐出デューティに応じて、前記強制吐出において吐出される液体の量を調整することを特徴とする制御装置が提供される。
【0009】
本発明の第3観点によると、複数の吐出口が開口した吐出面を有し、前記吐出口から記録媒体に対して互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出する、1以上のヘッドと、前記吐出面への記録媒体の接触を検知するセンサと、を含む液体吐出装置を、前記センサが前記接触を検知した場合、当該記録媒体のうち前記吐出面に接触した領域に形成されている画像に関して、液体の吐出デューティを検出する吐出デューティ検出手段、及び、前記センサが前記接触を検知した場合、記録指令に基づく動作を停止し、前記吐出口から液体を吐出させる強制吐出を含むメンテナンスを行うメンテナンス手段、として機能させるプログラムであって、前記メンテナンス手段は、前記吐出デューティ検出手段が検出した吐出デューティに応じて、前記強制吐出において吐出される液体の量を調整することを特徴とするプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、吐出面への記録媒体の接触に伴う強制吐出において、メンテナンス手段が吐出デューティに応じて液体の量を調整することで、液体の浪費を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の液体吐出装置の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】プリンタに含まれるインクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】インクジェットヘッドの縦断面図である。
【図6】(a)は、センサを示す平面図である。(b)は、強接触センサを示す部分側断面図である。(c)は、弱接触センサを示す部分側断面図である。(d)は、センサが接触を検知した状態(吐出面に用紙が接触しようとしている状態)を示す部分側断面図である。
【図7】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図8】プリンタの制御装置が実行する、吐出面への用紙の接触検知に係るルーチンを示すフロー図である。
【図9】用紙のうち吐出面に接触した領域を特定する方法を説明するための概略平面図である。
【図10】メンテナンスを行うときに参照されるテーブルである。
【図11】本発明の液体吐出装置の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタにおける、ヘッド及びセンサの配置、並びに、用紙のうち吐出面に接触した領域を特定する方法を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
先ず、図1を参照し、本発明の液体吐出装置の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0014】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A及びBには、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成されている。空間Cには、処理液供給源としてのカートリッジ41、及び、インク供給源としての4つのカートリッジ39が収容されている。
【0015】
空間Aには、プレコートヘッド40、4つのヘッド10、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット(後述)等が配置されている。空間Aの上部には、プリンタ1各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る制御装置1pが配置されている。
【0016】
制御装置1pは、PC等の外部装置から送信された記録指令に基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインクや前処理液の吐出動作等を制御する。
【0017】
前処理液は、例えば、少なくとも濃度向上作用(用紙Pに吐出されたインクの濃度を向上させる作用)、インクの滲みや裏抜け(用紙Pの表面に着弾したインクが用紙Pの層を貫通して裏面に滲み出す現象)の防止作用、インクの発色性や速乾性を向上させる作用、インク着弾後の用紙Pの皺やカールを抑制する作用等のいずれかを有する。前処理液の材料は、カチオン系高分子やマグネシウム塩等の多価金属塩を含有する液体等、適宜に選択可能である。
【0018】
各ヘッド10,40は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式のヘッドである。ヘッド10,40は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドフレーム3を介して筐体1aに支持されている。画像記録に際して、4つのヘッド10の下面(吐出面10a)からはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクが吐出される。また、状況に応じて、プレコートヘッド40の下面(吐出面40a)から前処理液が吐出される。ヘッド10,40のより具体的な構成については後に詳述する。
【0019】
搬送ユニット21は、ベルトローラ6,7及び両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。
【0020】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ121(図7参照)の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、上流側ガイド部(後述)から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して下流側ガイド部(後述)へと導く。プラテン9は、プレコートヘッド40及び4つのヘッド10の、計5つのヘッドに対向配置され、搬送ベルト8の上側ループを内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド10,40の吐出面10a,40aとの間に、画像記録に適した所定の間隙が形成される。
【0021】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送ユニット21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21と排紙部31とを繋ぐ。
【0022】
空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有し、給紙トレイ23が筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納する。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0023】
上述したように、空間A及びBに、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。記録指令に基づいて、制御装置1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ125(図7参照)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ127(図7参照)、搬送モータ121(図7参照)等を駆動する。給紙トレイ23から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド10,40の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出面10aからインク(また、状況に応じて、吐出面40aから前処理液)が吐出され、用紙P上にカラー画像が記録される。インクや前処理液の吐出動作は、用紙Pの先端を検知する用紙センサ32からの検知信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0024】
ここで、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0025】
空間Cには、カートリッジユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジユニット1cは、トレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された5つのカートリッジ39,41を有する。カートリッジ39はインク、カートリッジ41は前処理液をそれぞれ貯留しており、これらはチューブ(図示せず)を介して対応するヘッド10,40にインク又は前処理液を供給する。
【0026】
次いで、ヘッド10,40の構成について説明する。ヘッド10,40は互いに同じ構成を有するため、以下、図2〜図5を参照してインクジェットヘッド10の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0027】
図5に示すように、ヘッド10は、流路ユニット12、アクチュエータユニット17、リザーバユニット11、及び基板64が積層した積層体である。このうち、アクチュエータユニット17、リザーバユニット11、及び基板64が、流路ユニット12の上面12xとカバー65とにより形成される空間に収容されている。当該空間内において、FPC(平型柔軟基板)50が、アクチュエータユニット17と基板64とを電気的に接続している。FPC50には、ドライバIC57が実装されている。
【0028】
カバー65は、図5に示すように、トップカバー65a及びアルミ製のサイドカバー65bを含む。カバー65は、下方に開口する箱であり、流路ユニット12の上面12xに固定されている。ドライバIC57は、弾性部材(例えばスポンジ)58に付勢されて、サイドカバー65bの内面に当接し、カバー65bと熱的に結合している。なお、弾性部材58は、リザーバユニット11の側面に固定されている。
【0029】
リザーバユニット11は、4枚の金属プレート11a〜11dを互いに接着した積層体である。リザーバユニット11の内部には、液体溜りのリザーバ72を含む流路が形成されている。当該流路の一端はチューブ等を介してカートリッジ39(プレコートヘッド40の場合はカートリッジ41)に接続し、他端は流路ユニット12に接続している。プレート11dの下面には、図5に示すように、凹凸が形成されており、凹部の下面と上面12xとの間に空間が形成されている。当該空間内では、アクチュエータユニット17が、FPC50の上方に若干の間隙を残して上面12xに固定されている。一方、凸部の先端面(上面12xとの接合面)には、リザーバ72に繋がる流出流路73が開口している。
【0030】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図4参照)を互いに接着した積層体である。図2に示すように、流路ユニット12の上面12xには、開口12yが形成されており、それぞれ流出流路73の開口73aに接続している。流路ユニット12の内部には、上面12xの開口12yから下面の吐出口14aに繋がる流路が形成されている。当該流路は、図2、図3、及び図4に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を経て吐出口14aに至る個別流路14を含む。
【0031】
個別流路14は、吐出口14a毎に形成されており、図4に示すように、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15、及び、上面12xに開口した圧力室16を含む。圧力室16は、図3に示すように、それぞれ略菱形形状であり、マトリクス状に配置されて、平面視で略台形領域を占める8の圧力室群を構成している。吐出口14aも、圧力室16と同様、吐出面10aでマトリクス状に配置されて、8の吐出口群を構成している。平面視で、1つの圧力室群が1つの吐出口群に重なっている。
【0032】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、圧力室群(吐出口群)の占める台形領域上に配置されている。アクチュエータユニット17は、圧力室16毎(吐出口14a毎)に選択的に駆動可能な多数の圧電型アクチュエータを有する。
図示を省略するが、アクチュエータユニット17は、対応する圧力室群に跨る台形の平面形状の圧電層、及び、厚み方向に関して圧電層を挟む電極(個別電極及び共通電極)を含む。個別電極は、圧力室16毎に設けられており、それぞれ圧電型アクチュエータを構成している。ここでは、個別電極が、最も上方の圧電層の表面に形成されている。
【0033】
FPC50は、アクチュエータユニット17毎に設けられており、個別電極に対応する多数の配線及び端子を有する。各配線は、ドライバIC57の出力端子と接続されている。FPC50は、制御装置1p(図1参照)による制御の下、基板64で調整されたデータをドライバIC57に伝達し、ドライバIC57で生成された駆動信号を各個別電極に伝達する。駆動信号は、各個別電極に対し、選択的に印加される。
【0034】
各ヘッド10,40には、吐出面10a,40aへの用紙Pの接触を検知するセンサユニット80が設けられている。
以下、図6を参照し、センサユニット80の構成について説明する。なお、以下はヘッド10に設けられたセンサユニット80についての説明であるが、ヘッド40に設けられたセンサユニット80も同様の構成である。
【0035】
センサユニット80は、図6(a)に示すように、4のセンサセット80a,80b,80c,80dを含む。各センサセット80a〜80dは、強接触センサ81及び弱接触センサ82と、これらセンサ81,82のそれぞれに設けられた導通チェッカ89(図6(b),(c)参照)とを含む。
【0036】
センサセット80a〜80dは、吐出面10aを画定する辺のうち、搬送方向(吐出面10aに対する用紙Pの相対移動方向)上流側の辺(図6(a)の紙面下側にある主走査方向に沿った辺)10sの近傍に、当該辺10sに沿って配置されている。センサセット80a〜80dは、それぞれ2のアクチュエータユニット17に対応し、互いに等間隔で配置されている。各センサセット80a〜80dは、主走査方向に関して2のアクチュエータユニット17の中央であって、副走査方向にアクチュエータユニット17同士が重なった領域と対向する。
図6(a)及び図2に示すように、ヘッド10の画像形成領域が、2つのアクチュエータユニット17及びセンサセット80a〜80dの配置に対応して、4の領域Wa〜Wdに区分される。後述のように、センサセット80a〜80dの検知結果は、それぞれが対応する2のアクチュエータユニット17に関連したメンテナンスの内容に反映される。
【0037】
各センサセット80a〜80dは、1組のセンサ81,82の検知結果によって、吐出面10aへの用紙Pの接触の強度を検知することができる。図6(a)に示すように、1組のセンサ81,82は、主走査方向に若干の間隙を介して互いに隣接している。
【0038】
センサ81,82は共に、図6(b),(c)に示すように、上側電極83a、下側電極83b、両電極83a,83b間に挟持された弾性を有する絶縁体84、及び、当接部材85を含む。このうち、上側電極83aは、ヘッド10と所定の位置関係にあり、ヘッド10に直接固定されている。上側電極83aは、搬送方向上流側に向けて、略水平に支持されている。絶縁体84は、平板状の弾性体片であって、上側電極83aの搬送方向上流側端部の下面に固定されている。絶縁体84の下面には、下側電極83bの上流側端部の上面が固定されている。下側電極83bは、上側電極83aと平行に(即ち略水平に)延在している。下側電極83bの下流側端部は自由端であって、上下に変位自在である(即ち、下側電極83bは一種の弾性部材として働く)。当接部材85は、下側電極83bの下面に固定されている。図6(d)に示すように、用紙Pが当接部材85に当接すると、用紙Pからの押圧力によって、下側電極83b(当接部材85)が変位する。
【0039】
図6(d)のように接触検知が行われるときを除き、上側電極83a及び下側電極83bは鉛直方向に互いに離隔している。下側電極83bは、その副走査方向中央よりも搬送方向下流側の部分に、上方に突出する凸部83pを有する。センサ81,82の違いは、凸部83pの突出量にある。突出量は、センサ82よりもセンサ81の方が小さい。そのため、下側電極83bが上側電極83aに接触(導通)するまでの自由なストロークx1,x2は、センサ82よりもセンサ81の方が大きい(x1>x2)。なお、他の部材は、共通である。
【0040】
当接部材85は、センサ81,82の構成部材の中で最も下方に位置し、搬送方向上流側の下部に傾斜面85sを持つ。傾斜面85sは、搬送中の用紙Pに対向する面であって、搬送方向下流側に向けて用紙Pに近づく方向に傾斜している。
【0041】
導通チェッカ89は、対応するセンサ81,82に含まれる各電極83a,83bと電気的に接続している。導通チェッカ89は、電極83a,83b同士の接触状態(導通の有無)を検出し、導通が検出された場合は制御装置1pに検出信号を送信する。
【0042】
例えば図6(d)に示すように、搬送される用紙Pに部分的な隆起が生じている場合、この隆起部Psが当接部材85に当接することがある。隆起部Psは、先ず傾斜面85sに当接し、さらに搬送方向に移動する。このとき、当接部材85が隆起部Psから上向きの押圧力を受ける。当接部材85は上方に移動し、下側電極83bの搬送方向下流側部分も上方に移動する。そして凸部83pの先端が上側電極83aに接触したときに、導通チェッカ89により導通が検出される。
【0043】
センサ81,82の下側電極83bはいずれも、弾性部材であり、押圧力によって変位量が変わる。隆起部Psの隆起が大きければ、それが及ぼす押圧力も大きいと想定され、下側電極83bは大きく変位する。
センサ82は、自由なストロークx2が比較的小さく、弱い押圧力でも凸部83pが上側電極83aに接触する。このとき搬送が停止しても、用紙Pは吐出面10aの一部に弱い押圧力で摺接していると推定される。
センサ81は、自由なストロークx1が比較的大きく、強い押圧力によって凸部83pが上側電極83aに接触する。このとき、センサ82の下側電極83bも、センサ81の下側電極83bの変位に追従して、凸部83pを扁平に変形させつつ、上側電極83aに接触する。このとき搬送が停止しても、用紙Pは吐出面10aの一部に強い押圧力で摺接していると推定される。
なお、センサ81,82共に、凸部83pが上側電極83aに接触するとき、図6(d)のように、当接部材85の下面85bが吐出面10aと略同じ高さとなる。これにより、導通検出後、用紙Pの隆起部Psは傾斜面85s及び下面85bに沿って、吐出面10aへと円滑に誘導される。
【0044】
次いで、図7を参照し、プリンタ1の電気的構成について説明する。
【0045】
制御装置1pは、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)101に加えて、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )104、I/F(Interface)105、I/O(Input/Output Port)106等を有する。ROM102には、CPU101が実行するプログラム(図8に示すルーチンを含む。)、各種固定データ(図10に示すテーブルを含む。)等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。ASIC104では、画像データの書き換え、並び替え等(信号処理や画像処理)が行われる。I/F105は、外部装置とのデータ送受信を行う。I/O106は、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。
【0046】
制御装置1pは、各モータ121,125,127、用紙センサ32、各ヘッド10,40の基板64、及び、センサユニット80の各導通チェッカ89(1のセンサユニット80について、各センサセット80a〜80dに含まれる2つのセンサ81,82にそれぞれ対応する、計8つの導通チェッカ89)に接続されている。
【0047】
次いで、図8を参照し、制御装置1pが実行する、吐出面10a,40aへの用紙Pの接触検知に係る制御内容について説明する。
制御装置1pは、記録指令を受信した後、当該記録指令に基づくプリンタ1各部の制御を行う間、図8のルーチンを繰り返し実行する。
【0048】
先ず、制御装置1pは、導通チェッカ89からの検出信号に基づいて、吐出面10a,40aへの用紙Pの接触の有無を判断する(S1)。制御装置1pは、いずれかの導通チェッカ89からの検出信号を受信した場合、吐出面10a,40aに用紙Pが接触した(S1:YES)と判断する。
なお、図6(d)に示すように、導通チェッカ89から検出信号が送信されるタイミングでは、未だ吐出面10a,40aに用紙Pが接触していない場合があるが、この場合でも接触(S1:YES)と判断される。
【0049】
接触(S1:YES)と判断した場合、制御装置1pは、記録指令に基づく動作(用紙Pの搬送動作、新たな用紙Pの供給動作、インク及び前処理液の吐出動作等)を停止させる(S2)。S2の後、制御装置1pは、プリンタ1の表示装置に用紙Pの接触に係る警告を表示し、用紙Pの排除を促す(S3)。
【0050】
S3の後、制御装置1pは、当該用紙Pのうち吐出面10a,40aに接触した領域に形成されていた画像に関して、インクや前処理液の吐出デューティを検出する(S4)。このとき制御装置1pは、先ず、用紙Pのうち吐出面10a,40aに接触した領域Z(図9参照)を特定し、その後、RAM103に記憶されている画像データに基づいて、領域Zに形成されている画像の、インクや前処理液の吐出デューティを検出する。
【0051】
ここで、領域Zの特定方法の一例を説明する。
本例では、図9に示すような矩形状の領域Zを特定する。領域Zは、中心Oの位置、幅W、及び長さLで特定される。中心Oは、副走査方向に関して、”接触”を検知したセンサセット80a〜80dの位置と重なる。幅Wは、当該センサセット80a〜80dが対応する領域Wa〜Wdの幅と同じである。また、中心Oと用紙Pの先端Ptとの距離Dは、用紙Pの搬送速度(搬送ベルト8の走行速度)Vと、用紙センサ32が先端Ptを検知した時点から接触検知が行われた時点(導通チェッカ89が導通を検出した時点)までの時間Tとに基づいて算出される。長さLは、例えば接触時間に応じて可変であり、適宜に設定してよい。本実施形態において、長さLは、吐出面10a,40aの幅と同じである。
【0052】
S4で検出される吐出デューティは、当該ヘッド10,40よりも搬送方向上流側にあるヘッド10,40から領域Zに対して吐出されたインクや前処理液の総吐出デューティである。吐出デューティは、接触が検知されたヘッド10,40に関して、搬送方向上流側にある全てのヘッド10,40について検出される。このとき、搬送方向最も上流側にあるプレコートヘッド40について検出される吐出デューティは常に0%である。また、4つのインクジェットヘッド10についてそれぞれ検出される吐出デューティは、搬送方向上流側から下流側のヘッドに向けて順に100%、200%、300%、400%が上限値となる。
【0053】
S4の後、制御装置1pは、詰まった用紙Pが排除されたか否かを判断する(S5)。ここで制御装置1pは、プリンタ1がいつでも画像形成(記録)を開始できる状態で、全てのセンサセット80a〜80dが”非接触”の検知信号を出力すれば、用紙Pが排除された(S5:YES)と判断する。用紙Pが排除されていない場合(S5:NO)、制御装置1pは処理をS1に戻す。用紙Pが排除されている場合(S5:YES)、制御装置1pは処理をS6に進める。
【0054】
S6において、制御装置1pは、S4で検出した総吐出デューティに基づいて、対応するヘッド10,40のメンテナンスを行う。プレコートヘッド40については、メンテナンス内容がセンサ81,82の検知結果に基づいて決定される。
メンテナンスは、基本的に、液体(インクや前処理液)の強制吐出、及び、吐出面10a,40aのワイピングを含む。ワイピングでは、弾性体のワイパで吐出面10a,40aが払拭される。
【0055】
強制吐出には、パージ及びフラッシングがある。
パージは、ヘッド10,40内の流路をポンプで加圧又は吸引することにより、吐出口14aから液体を強制的に吐出する動作をいう。パージには、ポンプからの圧力の大きさに応じて、3種類の強度のパージ(小パージ・中パージ・大パージ)がある。
フラッシングは、フラッシングデータに基づいて全ての圧電型アクチュエータを駆動することにより、吐出口14aから液体を強制的に吐出する動作をいう。フラッシングには、単位時間当たりの吐出回数に応じて、3種類の強度のフラッシング(弱フラッシング・中フラッシング・強フラッシング)がある。
本実施形態において、強制吐出には、小パージ・中パージ・大パージ・小フラッシング・中フラッシング・大フラッシングの、6種類がある。(なお、小・中・大は、各吐出面10a,40aから吐出されるインク又は前処理液の総量に対応する。)
【0056】
S6において、制御装置1pは、図10に示すテーブルを参照し、S4で検出した吐出デューティ、及び、接触強度に応じて、ヘッド10,40毎に、上記6種類の強制吐出のいずれを行うかを決定する。
ここで、接触強度は、S1で強接触センサ81及び弱接触センサ82のいずれが接触検知を行ったかによって、決定される。
【0057】
例えば、搬送方向上流側から3番目のヘッド(マゼンタヘッド)10において、用紙Pの接触(接触強度=弱)が検知された場合について説明する。
上述の領域Zに関して、マゼンタヘッド10よりも搬送方向上流側の2つのヘッド10,40からの総吐出デューティd(%)が0≦d<75であれば、弱フラッシングがマゼンタヘッド10に施される。同様に、図10に示すテーブルに従って、75≦d<150であれば中フラッシング、150≦d<225であれば強フラッシングが、マゼンタヘッド10に施される。
また、搬送方向上流側から3番目のヘッド(マゼンタヘッド)10において、用紙Pの接触(接触強度=強)が検知された場合は、同じ総吐出デューティの区分に対して、小パージ、中パージ、大パージのそれぞれが、マゼンタヘッド10に施される。
【0058】
またS6において、制御装置1pは、フラッシングを行う場合、対応するヘッド10,40の全吐出口14aからインクや前処理液を吐出させるのではなく、接触を検知したセンサセット80a〜80dに対応する吐出口群を選択し、当該吐出口群に含まれる吐出口14aをフラッシングの対象としてもよい。
例えば、センサセット80bが用紙Pの接触を検知した場合、対応するヘッド10,40の領域Wbに属する吐出口群を選択する。そして領域Wbに属する2つのアクチュエータユニット17を駆動し、領域Wbに属する吐出口群の吐出口14aからインクや前処理液を吐出させる。
【0059】
上記のような強制吐出が終了した後、制御装置1pは、ワイピングを行い、メンテナンスを終了する。
【0060】
S6の後、制御装置1pは、記録動作を再開する(S7)。即ち、S1で接触が検知されたときに行っていた記録に係る画像データに基づいて、新たな用紙Pの供給・搬送、インクや前処理液の吐出動作等を行う。
S7の後、制御装置1pは、当該ルーチンを終了する。
【0061】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1、制御装置1p、及びプログラムによると、吐出面10a,40aへの用紙Pの接触に伴う強制吐出において、吐出デューティに応じて、吐出されるインクや前処理液の量が調整される(図10参照)。これにより、インクや前処理液の浪費を軽減することができる。
【0062】
制御装置1pは、全吐出口14aではなく、吐出面10a,40aのうち用紙Pとの接触を検知したセンサセット80a〜80dに対応して吐出口14aを選択し、当該吐出口14aについて、フラッシングを行う。このように選択的に強制吐出を行うことで、インクや前処理液の浪費をより確実に軽減することができる。
【0063】
また本実施形態の制御装置1pは、上記のような選択的な強制吐出を行うにあたって、吐出口群を選択し、当該吐出口群に対応するアクチュエータユニット17を駆動する。これにより、選択的な強制吐出を比較的容易に行うことができる。
【0064】
センサセット80a〜80dは、ライン式のヘッド10,40において、吐出面10a,40aを画定する辺のうち、搬送方向上流側の辺10sの近傍に、当該辺10sに沿って互いに離隔して配置されている(図6(a)参照)。このようにセンサセット80a〜80dを搬送方向上流側の辺10sに配置したことで、接触検知をより正確に行うことができる。また、4つのセンサセット80a〜80dを辺10sに沿って互いに離隔して配置したことで、各センサセット80a〜80dの検知結果に応じて、より正確に吐出デューティを検出することができる。ひいては、上記のような選択的な強制吐出をより効果的に行うことができる。
【0065】
各センサセット80a〜80dが強接触センサ81及び弱接触センサ82からなり(図6(a)〜(c)参照)、制御装置1pが、吐出面10a,40aへの用紙Pの接触の強度に応じて、強制吐出において吐出される液体の量を調整する(図10参照)。したがって、より適切なメンテナンスを行うことができ、インクや前処理液の浪費をより一層効果的に軽減することができる。
【0066】
センサ81,82の当接部材85は、下部に傾斜面85sを有する。これにより、搬送中の用紙Pが傾斜面85sに当接した場合、当該傾斜面85sに沿って、吐出面10a,40aへと誘導される。したがって、センサ81,82による検知がより正確になる。また、センサ81,82に接触した用紙Pは、センサ81,82に対する押圧力が弱ければ吐出面10a,40aに円滑に誘導されることから、ジャムが生じ難い。
【0067】
続いて、図11を参照し、本発明の液体吐出装置の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタについて説明する。
第2実施形態に係るプリンタは、ヘッド以外については、第1実施形態に係るプリンタ1と略同じ構成を有する。以下、第1実施形態と同じ構成要素については同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0068】
第2実施形態に係るプリンタは、ライン式ではなく、シリアル式のインクジェットヘッド210を有する。ヘッド210は、キャリッジに支持されつつ走査方向(用紙Pの幅方向であり、搬送方向に直交する方向)に往復移動可能であり、往復移動しながら用紙Pに対してインクを吐出する。ヘッド210は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのヘッドを組み合わせたものであってもよいし、ブラックのインクのみを吐出するものであってもよい。もちろん、ヘッド210は、インクを吐出する1又は複数のヘッドに、前処理液を吐出するヘッドを組み合わせたものであってもよい。或いは、第2実施形態に係るプリンタに、インクを吐出するヘッド210に加えて、前処理液を吐出する別のヘッドを設けてもよい。
【0069】
ヘッド210には、吐出面への用紙Pの接触を検知するセンサ280が設けられている。センサ280は、吐出面を画定する辺のうち走査方向に直交する2つの辺の一方に設けられている。センサ280の構成は、第1実施形態のセンサセット80aと同じであってよい。
【0070】
本実施形態における領域Zの特定方法の一例を説明する。
本例では、図11に示すような幅W・長さLの矩形状の領域Zを想定する。領域Zの中心Oは、用紙Pの一方の側端Puからの距離Dと、接触検知が行われた時点での搬送方向に関するヘッド210の位置とに基づいて、決定される。一方の側端Puは、用紙Pの2つの側端のうち、接触検知の前にヘッド210が通過した側端である(図11では、ヘッド210が紙面右側から左側に移動する際に接触検知を行った場合を示す)。距離Dは、ヘッド210の移動速度Vと、ヘッド210が側端Puを通過した時点から接触検知が行われた時点までの時間Tとに基づいて算出される。幅Wは、例えば接触時間に応じて可変であり、適宜に設定してよい。長さLは、ヘッド210の吐出面の搬送方向に関する長さと同じにしてよい。
【0071】
本実施形態においても、制御装置1pは、吐出面への用紙Pの接触に伴う強制吐出において、第1実施形態と同様に、吐出デューティを検出し(S4)、吐出デューティや接触強度に応じて、強制吐出(S6)で吐出されるインクや前処理液の量を調整する。これにより、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態はヘッドの構成が第1実施形態と異なるため、図10とは異なるテーブルを参照して調整を行ってよい。
【0072】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0073】
アクチュエータユニットは、圧電式に限定されず、サーマル式、静電式等であってもよい。
アクチュエータユニットの数は、上述の実施形態では1のヘッドにつき8つであるが、4つでもよく、任意である。また、アクチュエータユニットの形状は、台形に限定されず、矩形等であってもよい。
さらに、アクチュエータユニットは、それぞれ圧力室に対向し且つ互いに離隔した複数のアクチュエータから構成されてもよい。
【0074】
吐出口群は、主走査方向に千鳥状に配列されることに限定されず、主走査方向に1列に配列されてもよく、その配列の形態は特に限定されない。
また、吐出口は複数の吐出口群を構成しなくてもよい(例えば吐出口は、吐出面に一様に分散して配置されてもよい)。
【0075】
センサの構成は、上述の実施形態のような一対の電極を用いたものに限定されず、任意に変更可能である。
センサの数は、特に限定されず、ヘッド毎に1つずつ(例えば主走査方向中央に1つだけ)設けられてもよい。
液体吐出装置に含まれるヘッドのうち一部のヘッドにのみセンサを設けてもよい。
センサは、3段階以上の接触強度を検知してもよく、また、接触の強度を検知しなくてもよい(第1実施形態のうち強接触センサ81及び弱接触センサ82の一方のみを有してよい)。
センサにおける記録媒体に対向する面は、傾斜していなくてもよい。
【0076】
メンテナンス手段は、接触強度によらず、吐出デューティのみに応じて強制吐出に係る液体の量を調整してもよい。
S6では、S1で用紙接触を検知したセンサが設けられたヘッドのみについて、又は、当該ヘッド及びこれ以外の任意のヘッド(例えば、当該ヘッドとこれよりも搬送方向上流側の全てのヘッド、又は、当該ヘッドを含む全てのヘッド)について、メンテナンスを行ってよい。
図10は単なる例示であり、吐出デューティに応じて様々なテーブルを設定してよい。例えば、上述の実施形態によると、プレコートヘッド40については、これよりも搬送方向上流側に他のヘッドが設けられていないため、ヘッドからの影響はないが、用紙Pの接触強度に応じて吐出面40aへの異物の付着状態が異なることに鑑みて、強制吐出(小パージ又は弱フラッシング)を行うようにしている。しかしながら、用紙Pの種類によっては、吐出面40aへの異物付着量が少ないことに鑑みて、プレコートヘッド40については強制吐出を行わなくてもよい。
上述の実施形態において、メンテナンス手段は、強制吐出のみならずワイピングを行うが、ワイピングを行わずに強制吐出のみを行ってもよい。
記録媒体のうち吐出面に接触した領域の特定方法は、上述の方法に限定されず、任意である。
【0077】
メンテナンス手段は、吐出デューティに応じて、強制吐出に係る、各吐出口からの吐出量、及び、吐出面に含まれる全吐出口からの吐出総量の、いずれか一方又は両方を調整してよい。
【0078】
本発明に係る液体吐出装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。
本発明においてヘッドから吐出される2種類以上の液体は、処理液(前処理液や後処理液)を含むことに限定されず、互いに色が異なるインクのみを含んでもよい。また、2種類以上の液体は、インク以外の液体のみを含んでもよい。
本発明に係る液体吐出装置に含まれるヘッドの数は、1以上であればよい(例えば、1のヘッドが2つの区分された液体流路を有し、各流路に互いに特性の異なる液体が収容される構成であってもよい)。
記録媒体は、記録可能な任意の媒体であってよく、例えば布等であってもよい。
【0079】
本発明に係るプログラムは、DVD−ROM、CD−ROM、MO等のリムーバブル型記録媒体やハードディスク等の固定型記録媒体に記録して配布可能である他、有線又は無線の電気通信手段によってインターネット等の通信ネットワークを介して配布可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 インクジェット式プリンタ(液体吐出装置)
1p 制御装置(吐出デューティ検出手段,メンテナンス手段)
10 インクジェットヘッド(ヘッド)
10a 吐出面
14a 吐出口
17 アクチュエータユニット
40 プレコートヘッド(ヘッド)
40a 吐出面
80a,80b,80c,80d センサセット
81 強接触センサ
82 弱接触センサ
P 用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出口が開口した吐出面を有し、前記吐出口から記録媒体に対して互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出する、1以上のヘッドと、
前記吐出面への記録媒体の接触を検知するセンサと、
前記センサが前記接触を検知した場合、当該記録媒体のうち前記吐出面に接触した領域に形成されている画像に関して、液体の吐出デューティを検出する吐出デューティ検出手段と、
前記センサが前記接触を検知した場合、記録指令に基づく動作を停止し、前記吐出口から液体を吐出させる強制吐出を含むメンテナンスを行うメンテナンス手段と、を備え、
前記メンテナンス手段は、前記吐出デューティ検出手段が検出した吐出デューティに応じて、前記強制吐出において吐出される液体の量を調整することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記メンテナンス手段は、当該吐出面のうち記録媒体と接触した領域に形成されている吐出口を選択し、当該吐出口について前記強制吐出を行うことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記複数の吐出口は、それぞれが1以上の前記吐出口を含む複数の吐出口群を構成し、
前記ヘッドは、前記吐出口群のそれぞれに対応して、前記吐出口から吐出する吐出エネルギーを液体に付与する複数のアクチュエータユニットを有し、
前記メンテナンス手段は、前記吐出口群の1以上を選択し、当該吐出口群に含まれる吐出口について前記強制吐出を行うことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に長尺な前記吐出面をそれぞれ有し、互いに異なる特性を持つ液体を吐出する、複数のライン式の前記ヘッドを備え、
複数の前記センサが、少なくとも前記複数のヘッドのうち前記搬送方向最も上流側に配置されたヘッドを除くヘッドの、前記吐出面を画定する辺のうち前記搬送方向上流側の辺の近傍に、当該辺に沿って互いに離隔して配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記センサが、前記吐出面への記録媒体の接触、及び、当該接触の強度を検知し、
前記メンテナンス手段は、前記センサが検知した接触の強度に応じて、前記強制吐出において吐出される液体の量を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記センサは、前記吐出面を画定する辺のうち、当該吐出面に対する記録媒体の相対移動方向上流側の辺の近傍に配置されており、且つ、相対移動中の記録媒体に対向する面が、前記相対移動方向下流側に向けて当該記録媒体に近づく方向に傾斜していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
複数の吐出口が開口した吐出面を有し、前記吐出口から記録媒体に対して互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出する、1以上のヘッドと、前記吐出面への記録媒体の接触を検知するセンサと、を含む液体吐出装置に用いられる制御装置であって、
前記センサが前記接触を検知した場合、当該記録媒体のうち前記吐出面に接触した領域に形成されている画像に関して、液体の吐出デューティを検出する吐出デューティ検出手段と、
前記センサが前記接触を検知した場合、記録指令に基づく動作を停止し、前記吐出口から液体を吐出させる強制吐出を含むメンテナンスを行うメンテナンス手段と、を備え、
前記メンテナンス手段は、前記吐出デューティ検出手段が検出した吐出デューティに応じて、前記強制吐出において吐出される液体の量を調整することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
複数の吐出口が開口した吐出面を有し、前記吐出口から記録媒体に対して互いに異なる特性を持つ2種類以上の液体を吐出する、1以上のヘッドと、前記吐出面への記録媒体の接触を検知するセンサと、を含む液体吐出装置を、
前記センサが前記接触を検知した場合、当該記録媒体のうち前記吐出面に接触した領域に形成されている画像に関して、液体の吐出デューティを検出する吐出デューティ検出手段、及び、
前記センサが前記接触を検知した場合、記録指令に基づく動作を停止し、前記吐出口から液体を吐出させる強制吐出を含むメンテナンスを行うメンテナンス手段、
として機能させるプログラムであって、
前記メンテナンス手段は、前記吐出デューティ検出手段が検出した吐出デューティに応じて、前記強制吐出において吐出される液体の量を調整することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−76259(P2012−76259A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221023(P2010−221023)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】