説明

液体吐出装置の洗浄装置および洗浄液容器

【課題】液体吐出装置の吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液槽と廃液槽とを有するカートリッジ形態の洗浄装置において、スペース効率を向上させる。
【解決手段】液体吐出装置の吐出ヘッド2の液体導入部に連結可能な洗浄液供給部46を持つ洗浄液槽41と、吐出ヘッド2から排出された廃液を回収する廃液槽43とを持つ洗浄液容器40を、ドッキングステーション20に取り付ける。洗浄液槽41から供給される洗浄液によって吐出ヘッド2を洗浄し、吸引手段30によって吐出ヘッド2から排出された廃液である洗浄液は、中空針33から、洗浄槽41の内部に配置された膨張可能な廃液槽43に回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者が薬剤を吸入するために用いられる肺吸引式の薬剤吐出装置などの吐出ヘッドの洗浄を行うための液体吐出装置の洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医学及び科学の進歩により、平均寿命が延びて高齢化社会となりつつある。その反面、食生活や生活環境の変化や環境汚染が進み、またウイルスや菌などによる新たな病気や感染症が見つかり、人々の健康に対する不安は増えている。特に、先進国と呼ばれる国々においては、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の患者の増加が問題となっている。
【0003】
一方、医療機関の数はこのような患者の増加に対応できるほど増えておらず、通院可能な医療機関がない地域もあるため、政策を含めた今後の対応が懸念されている。
【0004】
具体的な例を挙げて説明すると、現在増加傾向にある糖尿病の患者のうち、I型と呼ばれるインスリン依存型糖尿病の患者は、膵臓からインスリンが分泌されないため、定期的にインスリンを投与する必要がある。インスリンの投与は、現在、皮下注射によって行われているため、利用者の肉体的・精神的負担は大きい。
【0005】
このような利用者の負担を軽減するために、針が細くあまり痛みを感じないペン型の注射器も開発されている。しかし、I型糖尿病の患者は、インスリンを定期的に投与する必要がある以外は健常者と同様の生活を送っている場合が多い。したがって、ペン型であっても人前で注射を打つことには精神的に抵抗があるため、適切な時間に投与を行うのが困難となる。結果として、このような方法では利用者への適切な処置がなされない可能性があった。
【0006】
一方、利用者に吸入して薬剤を摂取させる薬剤吐出装置(液体吐出装置)により、電子カルテなどの情報データベースを活用できる利用者への処置が具現化しつつある。こうした薬剤吐出装置は、利用者のカルテ及び処方箋の情報を含む利用者個人に関する情報を格納する記憶手段と、薬剤を微小液滴として吐出して利用者に吸入させる吸入器を兼ね備えた携帯端末でもある。そして、前記処方箋の情報にしたがって利用者が薬剤を吸入できるように、吸気プロファイルに応じて吸入器を制御して薬剤を吐出させる吐出制御手段(吐出ヘッド)を有するものである。
【0007】
このような薬剤吐出装置は、薬剤の投与量や投与インターバルを処方箋にしたがって正確に管理できると共に、個々の利用者の吸気プロファイルに従った適切な吐出制御を行い、効率良く薬剤を投与することができる。これによれば、従来のように薬剤投与の際に注射器などの医療器具を使う必要がないので、専門知識がなくとも容易に操作が可能となるばかりか、注射針による利用者への苦痛もなくすことができる。
【0008】
その一方で、薬剤吐出ユニットの衛生面の確保に対処する適切な手段が求められている。
【0009】
その一つとして薬剤を吐出する吐出ヘッドの洗浄手段が挙げられる。例えば特許文献1に記載のインクジェット式記録装置を例に取ると、吐出ヘッドの洗浄を行う場合、供給流路に洗浄液供給用の導入装置を取り付け、さらに、回収流路に洗浄液を回収する回収装置を取り付けなければならなかった。このため、洗浄作業に時間を要し作業効率を低下させるおそれがあった。そのような課題を解決するために特許文献2に記載の洗浄液収容体及び液体噴射装置が提案されている。そこでは洗浄液収容体に、吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液を貯留した洗浄液槽と、その別室に吐出ヘッド洗浄後の洗浄液を回収する廃液槽を設けたことにより上記課題を解決している。
【0010】
【特許文献1】特開2004−203030号公報
【特許文献2】特開2006−264276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2において開示されている洗浄液収容体は、洗浄液槽と廃液槽とが別室であるため、常に洗浄液収容体には液体の入っていない空間が洗浄液量の略倍程度存在し、装置の大型化を招いていた。
【0012】
本発明は、吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液を供給する洗浄液槽の内部に廃液回収容器を配置することでスペース効率を向上させ、小型化を促進することができる液体吐出装置の洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の液体吐出装置の洗浄装置は、液体吐出装置の吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液を収容し、前記吐出ヘッドに連結可能である洗浄液槽を有する洗浄液容器と、前記吐出ヘッドから廃液を回収するために、前記吐出ヘッドに連結可能である流路と、前記廃液を回収するために、前記流路に連結可能である廃液回収容器と、を備えており、前記廃液回収容器は、前記洗浄液容器の前記洗浄液槽の内部に配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の洗浄液容器は、液体吐出装置の吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液を収容し、前記吐出ヘッドに連通可能である洗浄液槽を有する洗浄液容器であって、前記吐出ヘッドからの廃液を回収するための流路に連結可能である廃液回収容器が前記洗浄液槽の内部に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
廃液回収容器が洗浄液槽の内部に配置され、設置スペースを必要としないので、液体吐出装置の吐出ヘッドを洗浄するためのカートリッジ形態の洗浄液容器の小型化を促進できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1〜5は、実施例1を説明するもので、図1(a)、(b)は、肺吸入用の薬剤吐出装置(液体吐出装置)の使用待機状態を示し、(c)は吸入を行う状態を示す。構造を分かりやすく表現するため、これらの図中部分的に透視表現を用い、破線で示している。図2(a)は、薬剤吐出装置の内部の構造を示し、(b)は内部部材の交換時を示すものである。
【0018】
図1及び図2に示すように、フェイスキャップ1は、使用待機時に吐出ヘッド2を覆い、吐出口を密閉する。薬剤収容タンク3は、吐出ヘッド2に対して薬剤を供給する。
【0019】
図1(a)において、左端が薬剤の吸入口であり、利用者はマウスピース4を口の中に挿入して薬剤の吸入を行う。マウスピース4は取り外し可能とすれば洗浄することができ、また、古くなったり破損した場合に新しいものと交換することもできる。さらに、利用者個人の好みや都合に合わせて最適な形状にカスタマイズすることもできる。
【0020】
吐出を行わない時には、図1(b)に示すように、装置内部を外気から遮蔽し、ゴミや細菌の侵入を防止するための外気遮蔽部材であるホルダーキャップ10をマウスピース4と交換して取り付けてもよい。あるいは、マウスピース4の吸入口先端にシャッター(図示せず)を設けて、装置を使用しない時にはシャッターを閉じ、吐出を行う時にシャッターを開けるようにしてもよい。
【0021】
吐出ヘッド2は、複数の薬剤吐出口が設けられたインクジェット方式によって薬剤を吐出する機能を有し、ホルダー5内に装着された薬剤収容タンク3と薬剤の流路(図示せず)を介して結合されている。また、吐出ヘッド2は、制御部6、電源ユニット7、スイッチ8、ディスプレイ9等と電気的に結ばれ、制御部6は吐出ヘッド2に対して必要に応じて吐出を指示する電気信号を送る機能を持つ。
【0022】
薬剤収容タンク3は、所定量の薬剤を内包するタンクであり、タンクの内容量や薬剤の種類、製造日時のなどの情報を蓄えるメモリ(図示せず)を付帯していると、制御部6が該情報を読み取ることで、より適切な薬剤管理ができる。また、一度使用したタンク内に再度薬剤を注入して再使用されると、薬液の純度低下や細菌による汚染の可能性があるため、タンクの外壁を金属などの材料として、注入が不可能な構成としてもよい。また、タンクや薬剤自体に処方毎に異なる色をつけて、利用者が容易に識別できるようにしてもよい。
【0023】
フェイスキャップ1は、吐出ヘッド2の開放及び保護を交互に行い、保護は吐出ヘッド2の吐出口設置エリア全体を密閉するように覆うことで行う。フェイスキャップ1の保護により、吐出口に満たされた薬剤は必要な時以外は大気に直接さらされることがなくなるため、吐出口からの薬剤の蒸発を防げる。結果として、吐出口付近の薬剤の固着や吐出口内の薬剤の変質による吐出特性の変化を予防し、投薬効果の劣化を防ぐという効果が得られる。また、フェイスキャップ1による保護中はゴミや雑菌等の侵入も防ぐことができ、吸入する薬剤の汚染を防止できる。
【0024】
フェイスキャップ1は、吐出口設置エリアと接触するように取りつけられた吸収体(図示せず)を持ち、吐出口設置エリアを密閉する時に吐出口設置エリアに付着してしまった余分な薬剤やゴミ等を吸収することができる。
【0025】
利用者は薬剤収容タンク3に収められた所定の量の薬剤を使いきってしまった場合、もしくはその他の理由により薬剤収容タンク3を交換する必要にせまられたならば、薬剤収容タンク3を装置本体より取り外して交換できる。また、フェイスキャップ1も取り外し可能として、その密閉機能が低下した際には、新しいものに交換できるようにしてもよい。
【0026】
図2に示すように、薬剤収容タンク3と吐出ヘッド2とフェイスキャップ1は一体にして取り外して交換できるカートリッジ構造を有している。一体にして取り外した薬剤収容タンク3と吐出ヘッド2とフェイスキャップ1は、それら全てを一括で交換するように構成してもよいし、任意の部材のみ(例えば消耗の目立つ部材)を選んで交換できるように構成してもよい。この時、フェイスキャップ1を吐出ヘッド2と一体ユニットとして交換するならば、吐出ヘッド2とフェイスキャップ1の密着性を個々のユニットについて最適化して、交換した後のフェイスキャップ1の密閉性の低下を避けることができる。このように、吐出ヘッド2とタンク3とフェイスキャップ1のうち、いずれか1つ、もしくはいずれか2つ、もしくは3つ全てを選択的に交換できる。
【0027】
また、吐出ヘッド2及び薬剤収容タンク3が合体したユニットは取付け用のガイド(ホルダー部)11に沿って装置本体に取りつけられる。その時、吐出ヘッド2に設けられた電気信号の端子(図示せず)が装置上のコンタクトパッド12と接触するように、ガイド11が前記ユニットをコンタクトパッド12側へ押さえつけるようにする。吐出ヘッド2は、コンタクトパット12を通じて制御部6と電気的に結ばれる。
【0028】
制御部6は、全体を制御するCPUを含み、吐出ヘッド2の駆動制御を行う。このほかにも、医療データベースとの情報の交信、内部メモリ及び外部メモリ(図示せず)の読み込み・書き換え、各種情報に基づく装置の制御、ディスプレイ9への情報の表示、音声による利用者への警告などを行う。
【0029】
電源ユニット7は、着脱・充電可能なバッテリーであり、制御部6が電源電圧の監視もあわせて行う。薬剤の吐出開始スイッチ8は、薬剤吐出口からの薬剤吐出を開始するためのものである。
【0030】
遠隔通信用のアンテナ13は、制御部6と連結されている。外部メモリ用スロット14を介して、制御部6は外部メモリ(図示せず)と、利用者個人の識別データや薬剤の処方、装置の不具合の履歴などの情報をやり取りすることができる。このように、薬剤吐出装置は、利用者が携帯して所持するように構成されており、端末として所定の回線によって情報管理機関等に接続し、利用者が薬剤吸入を行うことに関与する情報の参照や更新ができる。
【0031】
ここで、本実施例で用いられている吐出ヘッド2と薬剤収容タンク3が合体したユニットであるカートリッジについて説明する。カートリッジは、熱あるいは圧電効果を利用したインクジェット方式に基づいて液状の薬剤を微小液滴として吐出する。これはプリンタなどの記録装置で実用化されている方式と基本的に同じ着脱可能なカートリッジ形態であるが、医療用として使用するために、吐出ヘッドやタンクについて記録装置とは異なる特徴をいくつか有している。
【0032】
例えば、吐出ヘッドの構成材料としては、薬剤などと反応しない金メッキされたもの、セラミック、ガラスなどを用いる。また、吐出する薬剤の種類や投与の方法(肺まで到達させる必要があるか否か等)に応じて、吐出口(ノズル)の配列や形状を異なったものとする。
【0033】
吐出の駆動制御について、熱を利用したインクジェット方式に基づいて液状の薬剤を微小液滴として吐出する場合について説明する。この方式は、駆動波形をパルス状とすることにより、吐出される液滴の数をパルスの数によって制御することが可能であるため、吐出量を正確に管理する用途に適している。
【0034】
しかしながら本実施例では、医療用として使用するために記録装置とは異なる吐出制御を行っている。すなわち、記録装置は紙などの記録媒体に上方からインクを吐出して記録を行うが、本実施例の吸入器(薬剤吐出装置)ではミストあるいはエアロゾル状となるように薬剤を吐出して利用者の吸入空気と共に薬剤を肺まで到達させる必要がある。
【0035】
このため、通常の記録装置よりも液滴のサイズをはるかに小さくし、かつこのような小さなサイズの液滴を適量だけ確実に吐出させるように制御する必要がある。その反面、吐出方向については記録装置のようにほぼ一方向とする必要はなく、様々な方向に吐出した液滴が飛翔したり液滴同士が衝突したりしてもよい。
【0036】
従って、本実施例では、空気吸入のプロファイル(パターン)に応じて駆動パラメータを変化させる。例えば、空気吸入の際、単位時間当たりの吸入量は開始時点が多く、終了直前には少なくなる。従って、吸入時間(1秒から2秒)内に複数回の吐出を行う場合、最初の吐出と最後の吐出とでは吐出速度や駆動周波数などを変化させる。また、吐出方式を変えたり主滴/副滴の割合を変えてもよい。
【0037】
図3は、本実施例の薬剤吐出装置を専用のドッキングステーション20に格納した状態を示す。
【0038】
利用者が、在宅でかつ薬剤の投与中でない時、薬剤吐出装置(液体吐出装置)は専用の周辺機器であるドッキングステーション20内に格納できる。その際、携帯して持ち歩くときに使用されるフェイスキャップ1は取り外される。その代わりにドッキングステーション20内にもホルダーキャップ10aとフェイスキャップ1aが設けられていて、そのフェイスキャップ1aにより吐出口設置エリアが密閉されるように薬剤吐出装置は格納される。フェイスキャップ1aは吸引手段30と連結されており、ドッキングステーション20は必要に応じて、薬剤吐出装置の吐出ヘッド2の吐出口から薬剤の吸引を行うことができる。また、ドッキングステーション20と薬剤吐出装置は接続端子21を介して電気的に接続され、充電ユニット22による薬剤吐出装置内の電源ユニット7の充電や薬剤吐出装置内のメモリとの情報の交換などが可能である。なお、このとき中空針33と薬剤収容タンク3は干渉しないように構成されている。
【0039】
利用者は、薬剤吐出装置を持ち歩く際には、フェイスキャップ1を吐出ヘッド2に装着しておき、所定の時間がきて薬剤投与を行うときには、フェイスキャップ1を外した状態で薬剤の吐出を行って吸入する。必要に応じてマウスピース4を装着してもよい。
【0040】
利用者は外出から帰宅したならば、なるべく早く本装置をドッキングステーション20内へ格納し、吐出口内及びその周辺の薬剤を吸引手段30で吸引して薬剤の吐出状態を正常に保つようにするのが好ましい。
【0041】
ドッキングステーション20は、吐出状態を検査する手段も兼ね備え、一定の時間間隔で吐出状態を検査し、異常吐出を検知したときに薬剤吸引が行われるようにしてもよい。もしくは、薬剤吐出装置がドッキングステーション20内にある時には、常に一定の時間間隔で薬剤吸引が行われるようにシーケンス的に制御してもよい。
【0042】
廃薬剤タンク32は、フェイスキャップ1aから吸引手段30によって吸引された薬剤を収容するためのものであり、交換可能な構成となっている。廃薬剤タンク32内に吸収体を置き、それのみを交換できるようにしてもよい。中空針33は、吸引手段30によって吸引された液体を後述する洗浄液容器40(図4参照)に連通させるためのものである。3方向弁31は、フェイスキャップ1aから吸引手段30によって吸引された液体を、廃薬剤タンク32の設けられた流路と、中空針33の設けられた流路(廃液の流路)とに適宜振り分けられるようになっている。このように吸引手段30は、薬剤吐出装置に薬剤収容タンク3が取り付けられた場合には廃薬剤タンク32側に連通し、洗浄液容器40が取り付けられた場合には、中空針33側に連結可能である。
【0043】
図4は、吐出ヘッド2を洗浄するための洗浄液容器40を、ドッキングステーション20に格納された薬剤吐出装置に取り付けた状態を示す。
【0044】
洗浄液槽41には、吐出ヘッド2内の流路を洗浄するための洗浄液45が収容されている。吸収体42は、洗浄液供給部46からの液漏れを防止するために所定の負圧を発生している。使用後の洗浄液である廃液を回収するための廃液回収容器である廃液槽43は、洗浄液槽41の内部に配置されている。また、廃液槽43は廃液の導入(回収)によってその容積が増加(膨張)するように、例えば軟質な樹脂あるいは伸縮自在なゴム材などの可撓性材料によって形成されている。未使用時には廃液槽43内の気体はある程度抜いてあり、洗浄液槽41中に占める体積が極僅かであるようになっている。このような構成とすることによって、洗浄液槽41内の洗浄液が、洗浄液容器40の中で廃液と置き換わることになり、別途廃液槽を設けるのに比べて省スペースを実現できる。さらに、廃液槽43の最大容積はフェイスキャップ1aから中空針33に至るまでの廃液流路内に存在する気体、薬剤及び洗浄液(廃液)の全てを収容できる大きさに設定されている。廃液導入部44は、中空針33が挿抜可能なゴム材(弾性部材)によって形成されている。このように、中空針33が刺されていない状態では廃液槽43は外部に対して密閉状態を保っている。さらに、洗浄液容器40は大気連通口47を有する。
【0045】
図5(a)、(b)は、洗浄液容器40の使用前と使用後の状態をそれぞれ示す。フェイスキャップ1aから中空針33に至る廃液流路内にもともと存在していた気体及び薬剤と使用後の洗浄液が廃液導入部44を通して廃液槽43に導入されると、図5(b)に示すように、廃液槽43は膨張する。
【0046】
図6は、一変形例を示すもので、ベローズによって構成した廃液回収容器である廃液槽53を有する。廃液槽53はフェイスキャップ1aから中空針33に至るまでの流路に存在していた気体、薬剤及び洗浄液(廃液)の導入によって、図6(a)に示す状態から(b)に示すように変形(膨張)する。廃液槽53の材質は廃液槽43よりも硬質なものであっても、洗浄液等の導入によって図に示すような変形が可能であれば問題ない。
【0047】
なお、洗浄液容器40は、図7に示すように薬剤吐出装置の外に取り付けて吐出ヘッド2の洗浄を行ってもよい。
【0048】
廃液槽43、53の容量は洗浄液の必要量に応じて、様々な大きさのバリエーションを持たせても構わない。
【0049】
本実施例の薬剤吐出装置の洗浄動作の流れを図8に示すフローチャートに従って説明する。ここでは洗浄液容器40を薬剤吐出装置に設置して吐出ヘッド2の洗浄を行う場合を例に説明する。まず、図3の状態から薬剤収容タンク3と洗浄液容器40を取り替える(ステップS1)。吐出ヘッド2は洗浄液導入部46において洗浄液槽41と連通する。そこからホルダー5を取り付け(取り付けなくても可)、図4に示すように薬剤吐出装置をドッキングステーション20に設置する(ステップS2)。その際、中空針33が廃液導入部44を貫通する。また、同時に接続端子21もドッキングステーション20と接続され、吐出ヘッド2はフェイスキャップ1aに密着する。フェイスキャップ1aに昇降機構があって、フェイスキャップ1aの上昇によって吐出ヘッド2と密着する構成でもよい。次に利用者が不図示の洗浄開始ボタンを押すと(ステップS3)、3方向弁31が吐出ヘッド2から中空針33に至る流路が連通するように開き(ステップS4)、吸引手段30が作動する(ステップS5)。それによって、洗浄液槽41内の洗浄液45が吐出ヘッド2内を通過することによって、洗浄が行われる。同時にフェイスキャップ1aから中空針33に至るまでの流路中に存在していた気体、薬剤及び廃液が中空針33を介して廃液槽43(または廃液槽53)に導入される。
【0050】
次に薬剤吐出装置をドッキングステーション20より取り外し(ステップS6)、先に行ったのと逆の手順で洗浄液容器40を薬剤吐出装置本体から離脱させ(ステップS7)、そのまま廃棄すればよい(ステップS8)。
【実施例2】
【0051】
本実施例は、実施例1の洗浄液容器40のさらなる小型化を実現したものであり、図9に示すように、廃液槽53の一部をゴアテックス(登録商標)等の気液分離膜54で構成している。気液分離膜54は、吐出ヘッド2の洗浄直前にフェイスキャップ1aから中空針33に至るまでの流路中に存在していた気体を透過させ、廃液槽53外に逃がす。その体積分だけ、洗浄液槽41内の洗浄液45は吸収体42に吸収される。この構成により、廃液槽53の最大容積をより小さくすることができ、洗浄液容器40の小型化がより一層促進される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1による薬剤吐出装置を示すもので、(a)はその斜視図、(b)はマウスピースの代わりにホルダーキャップを取り付けた状態を示す部分斜視図、(c)は吸入時の状態を示す部分斜視図である。
【図2】図1の薬剤吐出装置の内部を模式的に示すもので、(a)はその斜視図、(b)は吐出ヘッドと薬剤収容タンクを一体として分離した状態を示す分解斜視図である。
【図3】図1の薬剤吐出装置をドッキングステーションに設置した状態を示す図である。
【図4】ドッキングステーションにおける薬剤吐出装置に洗浄液容器を取り付けた状態を示す図である。
【図5】図4の洗浄液容器のみを示すもので、(a)は洗浄前、(b)は洗浄後の状態を示す図である。
【図6】洗浄液容器の変形例を示すもので、(a)は洗浄前、(b)は洗浄後の状態を示す図である。
【図7】洗浄液容器を薬剤吐出装置から分離して、ドッキングステーションに設置した状態を示す図である。
【図8】洗浄動作を表すフローチャートである。
【図9】実施例2による洗浄液容器のみを示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1、1a フェイスキャップ
2 吐出ヘッド
3 薬剤収容タンク
4 マウスピース
5 ホルダー
6 制御部
7 電源ユニット
8 吐出開始スイッチ
9 ディスプレイ
10、10a ホルダーキャップ
12 アンテナ
14 外部メモリ用スロット
20 ドッキングステーション
21 接続端子
22 充電ユニット
30 吸引手段
31 3方向弁
32 廃薬剤タンク
33 中空針
40 洗浄液容器
41 洗浄液槽
42 吸収体
43、53 廃液槽
44 廃液導入部
45 洗浄液
46 洗浄液供給部
47 大気連通口
54 気液分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置の吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液を収容し、前記吐出ヘッドに連結可能である洗浄液槽を有する洗浄液容器と、
前記吐出ヘッドから廃液を回収するために、前記吐出ヘッドに連結可能である流路と、
前記廃液を回収するために、前記流路に連結可能である廃液回収容器と、を備えており、
前記廃液回収容器は、前記洗浄液容器の前記洗浄液槽の内部に配置されていることを特徴とする液体吐出装置の洗浄装置。
【請求項2】
前記廃液回収容器は、前記廃液の回収によって膨張することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の洗浄装置。
【請求項3】
前記廃液回収容器は、前記洗浄液槽の内部で気体を逃がすための気液分離膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置の洗浄装置。
【請求項4】
前記廃液回収容器は、前記廃液の液漏れを防止する機構を持つ廃液導入部を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出装置の洗浄装置。
【請求項5】
前記流路を前記廃液回収容器の前記廃液導入部に連結するための中空針を有し、
前記廃液導入部の前記廃液の液漏れを防止する機構は、前記中空針が挿抜可能である弾性部材によって構成されたことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置の洗浄装置。
【請求項6】
前記流路は、前記液体吐出装置のための周辺機器に配置され、
前記洗浄液容器は、前記液体吐出装置及び前記周辺機器に着脱可能なカートリッジ形態であることを特徴とする請求項1ないし5のずれかに記載の液体吐出装置の洗浄装置。
【請求項7】
液体吐出装置の吐出ヘッドを洗浄するための洗浄液を収容し、前記吐出ヘッドに連結可能である洗浄液槽を有する洗浄液容器であって、
前記吐出ヘッドからの廃液を回収するための流路に連結可能である廃液回収容器が前記洗浄液槽の内部に配置されていることを特徴とする洗浄液容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−273663(P2009−273663A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127830(P2008−127830)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】