説明

液体吐出装置及びこれの吐出空間の封止方法

【課題】液体が空間に残存しにくくする。
【解決手段】プリンタは、ヘッド1と、キャップ機構40と、ワイパユニットと、これらを制御する制御装置とを含んでいる。制御装置は、吐出空間S1が外部空間S2から封止された封止状態とする際に、キャップ機構40及びワイパユニットを制御して、リップ部材42を第2当接位置に移動させる接近動作を行った後、対向部材10の表面10aを払拭する第2ワイピング動作を行う。この後、制御装置は、キャップ機構40を制御して、リップ部材42を第1当接位置に移動させて、キャッピング動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出装置及びこれの吐出空間の封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッドの周囲に設けられたキャップ部材を搬送ベルトに密着させることによって、記録ヘッドのノズル面をキャップ部材及び搬送ベルトによってキャッピングするインクジェット記録装置について記載されている。このインクジェット記録装置において、キャップ部材は、記録ヘッドを囲む環状の側板と、外周端が側板の上端に、内周端が記録ヘッドの外側面に固着された可撓性シートとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−85959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のインクジェット記録装置において、側板と記録ヘッドとの位置関係によっては、シートが変形してシートと記録ヘッドの外側面との間、あるいはシートと側板との間に狭い空間が形成されることになる。そして、印刷動作やパージ動作が行われたときに、記録ヘッドから排出されたインクが、例えば、これら狭い空間に捕獲されることがある。このインクは時間が経過すると乾燥して増粘する。そして、この状態でキャッピングが行われると、増粘インクによって吐出口近傍のインクから水分が吸収される。このため、吐出口近傍のインクが乾燥して吐出口の目詰まりが生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、液体が空間に残存しにくくすることが可能な液体吐出装置及びこれの吐出空間の封止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する吐出口が形成された吐出面、及び、外側に向かって突出した突出部を介して前記吐出面につながる側面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを前記側面に沿って取り囲む環状のリップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、前記リップ部材が前記対向部材の表面に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材の前記表面から離隔する離隔位置の間において、前記リップ部材を移動させるリップ移動機構、及び、前記リップ部材に接続した一端と、前記吐出面を下にして前記突出部の上方で前記側面に密着した密着部とを有し、前記リップ部材が前記離隔位置から前記当接位置に近づくにつれて弾性変形して、前記密着部から前記突出部に至る前記側面に近づくダイアフラムを有するキャップ手段と、前記対向部材の前記表面を払拭する払拭動作を行う払拭手段と、前記吐出空間が外部空間から封止された封止状態とする際に、前記リップ部材を前記離隔位置から前記当接位置に近づくように移動させて前記ダイアフラムを前記側面に近づける接近動作を行った後、前記払拭動作を行ってから、前記リップ部材が前記当接位置にあって、前記対向部材とともに前記吐出空間を前記外部空間から封止された前記封止状態とする封止動作を行うように、前記キャップ手段及び前記払拭手段を制御する制御手段とを備えている。
【0007】
本発明の液体吐出装置の吐出空間の封止方法は、液体を吐出する吐出口が形成された吐出面、及び、外側に向かって突出した突出部を介して前記吐出面につながる側面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを前記側面に沿って取り囲む環状のリップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、前記リップ部材が前記対向部材の表面に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材の前記表面から離隔する離隔位置の間において、前記リップ部材を移動させるリップ移動機構、及び、前記リップ部材に接続した一端と、前記吐出面を下にして前記突出部の上方で前記側面に密着した密着部とを有し、前記リップ部材が前記離隔位置から前記当接位置に近づくにつれて弾性変形して、前記密着部から前記突出部に至る前記側面に近づくダイアフラムを有するキャップ手段と、前記対向部材の前記表面を払拭する払拭動作を行う払拭手段とを備えた液体吐出装置の前記吐出空間を外部空間から封止する封止方法において、前記リップ部材を前記離隔位置から前記当接位置に近づくように移動させて前記ダイアフラムを前記側面に近づける接近ステップと、前記接近ステップを行った後、前記払拭動作を行う払拭ステップと、前記払拭ステップを行った後、前記リップ部材を前記当接位置に移動させて、前記対向部材と共に前記吐出空間を封止する封止ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体吐出装置によると、液体吐出ヘッドの側面(密着部から突出部にある側面)、突出部、ダイアフラムによって囲まれた空間を小さくして、当該空間に残存した液体を排除する接近動作、払拭動作が行われてから封止動作によって封止状態が構成される。このため、封止状態において、空間に液体が残存しにくくなるので、吐出口近傍の液体が乾燥しにくくなる。
本発明の液体吐出装置の吐出空間の封止方法によると、液体吐出ヘッドの側面(密着部から突出部にある側面)、突出部、ダイアフラムによって囲まれた空間を小さくして、当該空間に残存した液体を排出する接近ステップが行われてから封止ステップが行われる。このため、封止状態において、空間に液体が残存しにくくなるので、吐出口近傍の液体が乾燥しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタに含まれるヘッドのヘッド本体及びカバーを示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図4】図3に示すIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図4の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
【図6】キャップ機構及びヘッドの部分断面図であり、(a)はリップ部材が離隔位置にある状況を示し、(b)はリップ部材が第1当接位置にある状況を示し、(c)はリップ部材が第2当接位置にある状態を示す。
【図7】キャップ機構、支持機構及び対向部材の動作を説明するための動作状況図である。
【図8】図1に示す制御装置の機能ブロック図である。
【図9】図1のプリンタの制御装置が実行するメンテナンス動作に関する一連の動作フローを示すフローチャート図である。
【図10】第1及び第2ワイピング動作を説明するための動作状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
【0012】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部1cから排紙部31に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの搬送経路への給紙が行われる。空間Cからは、空間Aのインクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)1に対してインクが供給される。
【0013】
空間Aには、ブラックインクを吐出するインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)、搬送機構8、キャップ機構(キャップ手段)40、用紙センサ32、ヘッド昇降機構33(図8参照)、ワイパユニット36(図10参照)、及び、制御装置100等が配置されている。
【0014】
ヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有し、駆動信号に基づいて画像を形成する。ヘッド1は、ヘッドホルダ13を介して筐体101aに支持されている。ヘッドホルダ13は、ヘッド1の下面とプラテン6a,6bとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド1を保持している。ヘッド1は、ヘッド本体3(図2参照)に加えて、リザーバユニット12(図6参照)、フレキシブルプリント配線基板(FPC)、制御基板等が積層された積層体である。上流側流路部材としてのリザーバユニット12には、リザーバを含む上流側インク流路(ともに不図示)が形成されており、カートリッジ4からインクが供給される。リザーバは、インクを一時的に貯留する。
【0015】
下流側流路部材としての流路ユニット11は、アクチュエータユニット21と共にヘッド本体3を構成し、リザーバユニット12のインクが供給される。流路ユニット11の下面は、複数の吐出口108aが形成された吐出面1aで、供給されたインクが吐出される。なお、ヘッド1は、後に詳述する。
【0016】
制御基板は、制御装置100からの信号を調整して出力する。出力信号は、FPC上のドライバICで駆動信号に変換され、さらにヘッド本体3に含まれるアクチュエータユニット21に出力される。アクチュエータユニット21が駆動されると、吐出口108からインクが吐出されることになる。
【0017】
ヘッドホルダ13には、ヘッド1に加えて、キャップ機構40を構成するキャップ41が取り付けられている。キャップ41は、ヘッド1に配設された環状部材であって、平面視でヘッド1を内包する。キャップ41の構成、動作、機能等は、後に詳述する。
【0018】
搬送機構8は、用紙Pをガイドする2つのガイド部9a,9bと、支持機構5とを含み、用紙搬送経路を構成する。2つのガイド部9a,9bは、支持機構5(2つのプラテン6a,6b)を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部9aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有し、給紙ユニット1cとプラテン6a,6bとを繋ぐ。そして、ガイド部9aは、画像形成用の用紙Pをプラテン6a,6bに向けて搬送する。搬送方向下流側のガイド部9bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有し、プラテン6a,6bと排紙部31とを繋ぐ。画像形成後の用紙Pが、排紙部31に向けて搬送される。
【0019】
支持機構5は、画像形成に際して、搬送される用紙Pを下から支える。支持機構5は、2つのプラテン6a,6bと、これらを回動させる駆動モータ(不図示)とを有する。2つのプラテン6a,6bは、搬送方向にこの順で配置され、主走査方向に回動軸7a,7bを持つ。上流側のプラテン6aは、上流端に回動中心がある。下流側のプラテン6bは、下流端に回動中心がある。2つのプラテン6a,6bは、制御装置100の制御により、駆動モータが駆動されることで、支持面形成位置と開放位置との間を回動する。支持面形成位置では、図1に示すように、2つのプラテン6a,6bの先端が突き合わされて、全体として平面状の支持面5aを構成する。開放位置では、図7(b)に示すように、2つのプラテン6a,6bが、90°回動されて下方に垂れ下がり、上面同士を平行に対向する。これにより、ヘッド1(吐出面1a)が空間を介して対向部材10と直接対向する。なお、2つのプラテン6a,6bは、通常は、支持面形成位置に配置され、メンテナンス時に、開放位置に配置される。
【0020】
用紙センサ32は、送りローラ対24の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、ヘッド1と搬送機構5との駆動の同期に用いられ、所望の解像度と速度で画像が形成されることになる。
【0021】
ヘッド昇降機構33は、ヘッドホルダ13の昇降により、ヘッド1を印刷位置と退避位置の間で移動する。印刷位置では、図1に示すように、ヘッド1が移動範囲の下端に位置し、支持面形成位置のプラテン6a,6bと印刷に適した間隔で対向する。退避位置(図10(c)参照)では、ヘッド1が移動範囲の上端に位置し、プラテン6a,6bから大きく離隔する。ワイピング位置(図10(b)参照)は、印刷位置と退避位置との間にある。ワイピング位置及び退避位置では、ヘッド1と対向部材10との間の空間を、後述するワイパ36a,36bが移動可能である。
【0022】
ワイパユニット36は、図10に示すように、吐出面1a及び対向部材10の表面10aを主走査方向に払拭する。そのため、ワイパユニット36は、2つのワイパ36a,36bを有し、これを支持する基部36c及びワイパ移動機構27を含む。ワイパ36aは、基部36cの上面側に立設され、吐出面1aを払拭する(第1ワイピング動作)。ワイパ36bは、基部36cの下面側に立設され、表面10aを払拭する(第2ワイピング動作)。ワイパ移動機構27は、一対のガイド28と駆動モータ(図示せず)とから構成される。駆動モータが駆動されると、基部36cがガイド28に沿って往復移動する。図10(a)に示すように、ヘッド1の左側端部近傍が、基部36cの待機位置である。いずれのワイピング動作でも、ワイパ36a,36bは、図中右方に移動して面を払拭する。基部36cの待機位置への帰還は、ヘッド1が退避位置に、対向部材10が第4位置(後述)に移動するのを待って行われる。
【0023】
空間Bには、給紙部1cが配置されている。給紙部1cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち、給紙トレイ20が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ20には、複数の用紙Pが収納可能である。給紙ローラ21は、給紙トレイ20内で最も上方の用紙Pを送り出す。
【0024】
ここで、副走査方向とは、用紙Pが送りローラ対23〜25によって搬送される搬送方向D(図1中矢印D方向)と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0025】
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4が筐体101aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジ4は、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ38(図8参照)を介して接続されている。なお、ポンプ38は、ヘッド1にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ時や液体の初期導入時)に駆動される。これ以外は停止状態にあり、ポンプ38はヘッド1へのインク供給を妨げない。
【0026】
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ101各部の動作を制御して、プリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像形成動作を制御する。記録指令を受けると、制御装置100は、給紙部1c、ガイド部9a,9b(搬送機構8)を駆動する。給紙トレイ20から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部9aによりガイドされ支持面5a上に送られる。用紙Pは、ヘッド1の真下を副走査方向(搬送方向D)に通過する際に、制御装置100の制御により、吐出面1aからインクが吐出され、用紙P上に所望の画像が形成される。なお、インクの吐出タイミングは、用紙センサ32からの検知信号により決められる。そして、画像が形成された用紙Pは、下流側ガイド部9bによりガイドされて、筐体101aの上部から排紙部31に排出される。
【0027】
制御装置100は、ヘッド1の液体吐出特性の回復・維持を行うメンテナンス動作を制御する。メンテナンス動作には、パージやフラッシング動作、吐出面1aの第1ワイピング(払拭)動作、対向部材10の第2ワイピング動作、及び、キャッピング動作等が含まれる。
【0028】
パージ動作では、ポンプ38が駆動されて、すべての吐出口108からインクが強制的に排出される。このとき、アクチュエータは駆動されない。フラッシング動作では、アクチュエータが駆動されて、吐出口108からインクが吐出される。フラッシング動作は、フラッシングデータ(画像データと異なるデータ)に基づいて行われる。
【0029】
第1ワイピング動作は、パージ動作後に行われ、吐出面1a上の残留したインクなどの異物が取り除かれる。第2ワイピング動作は、パージ動作、フラッシング動作後、及び、キャッピング動作における接近動作(後述する)の後に行われ、表面10aの残留インクなどの異物が取り除かれる。
【0030】
キャッピング動作では、図6(b)に示すように、キャップ41により吐出空間(吐出面1a(吐出口108)と対向する空間)S1が外部空間S2から隔離される。吐出口108内のインクは、水分の発散する経路が閉じられることになり、乾燥による増粘が抑制される。なお、キャッピング動作は、例えば、プリンタ1の停止時や休止時に行われる。
【0031】
次に、図2〜図6を参照して、ヘッド本体3について説明する。図3では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0032】
ヘッド本体3は、図2に示すように、流路ユニット11の上面に4つのアクチュエータユニット21が固定された積層体である。流路ユニット11の内部にはインク流路が形成され、アクチュエータユニット21はこの流路内のインクに吐出エネルギーを付与する。
【0033】
流路ユニット11は、図4に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130を積層した積層体である。インク流路は、上流側の共通インク流路と下流側の個別インク流路132とから構成される。共通インク流路は、マニホールド流路105及びこれから分岐した副マニホールド流路105aからなる。上面のインク供給口105bは、マニホールド流路105の一端である。個別インク流路132は、副マニホールド流路105aの出口から、アパーチャ112及び圧力室110を経て、下面(吐出面1a)の吐出口108に至る。吐出口108は、吐出面1aにおいて、主走査方向に600dpiに相当する間隔で配列している。
【0034】
ヘッド1は、カバー33を有している。カバー33は、図2に示すように、ヘッド本体3の周囲を取り囲む環状部材である。カバー33は、全周に亘って同一断面形状を有し、図6に示すように、流路ユニット11及びリザーバユニット12の両側面に跨って取り付けられている。カバー33は、取付部34と鍔部35とを有する。取付部34は、吐出面1aに垂直な取付面を有し、ヘッド1の側面に固定される。鍔部35は、外側に向かって水平に延びた突出部であって、取付部34の下端に接続する。鍔部35の下面は、吐出面1aよりもプラテン6a,6bから離隔して、用紙Pの搬送を妨げない。さらに、取付部34には、鉛直方向の途中部位から鍔部35の先端に向かって傾斜した傾斜面(側面)34aが形成されている。これにより、後述のダイアフラム44が傾斜面34aと接触しやすい。接近動作においては、両者33,44で囲む空間S3を効果的に小さくすることが可能となり、当該空間S3からインクを排出しやすくなる。
【0035】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図2に示すように、4つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は副走査方向に沿って重なっている。
【0036】
図5に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックスであり、3枚の圧電層161〜163から構成されている。最上層の圧電層161は、上面に複数の個別電極135が形成され、厚み方向に分極されている。圧電層162の上面全体には、圧電層161に挟まれて、共通電極134が形成されている。両電極134,135間に分極方向の電界が生じると、間の圧電層161が面方向に縮む。圧電層162,163は、自発的に変形しないので、圧電層161との間に歪み差が生じる。これにより、個別電極135と圧力室110とに挟まれた部分が、圧力室110に向かって突出(ユニモルフ変形)する。圧力室110内のインクは加圧され、インク滴として吐出口108から吐出される。
【0037】
このように、アクチュエータユニット21には、個別電極135毎にアクチュエータが作り込まれており、独立してインクに吐出エネルギーを付与する。ここで、共通電極134は、常にグランド電位にある。また、駆動信号は、個別電極135の個別ランド136に供給される。個別ランド136には、FPCが接続されている。
【0038】
本実施形態では、インクの吐出に際して、引き打ち法が採用されている。個別電極135は、予め所定の電位にあり、アクチュエータはユニモルフ変形している。駆動信号が供給されると、個別電極135は、一旦共通電極134と同電位となり、所定時間後に所定電位に復帰する。同電位となるタイミングで、アクチュエータがユニモルフ変形を解消して圧力室110にインクが吸い込まれ、電位の復帰タイミングで、再びユニモルフ変形してインク滴が吐出される。
【0039】
次に、図6及び図7を参照し、ヘッドホルダ13及びキャップ機構40の構成について説明する。
【0040】
ヘッドホルダ13は、金属等からなる枠状フレームであり、ヘッド1の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ13には、キャップ41が取り付けられている。キャップ41は、吐出空間S1を外部空間S2から閉ざす。ここで、ヘッドホルダ13とヘッド1との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ13とキャップ41との当接部は、全周に亘って接着剤で固定されている。
【0041】
キャップ機構40は、キャップ41、キャップ41を昇降させるキャップ昇降機構48、対向部材10、対向部材10を昇降させる対向部材昇降機構49(図8参照)を含む。キャップ41は、ヘッド1とともにカバー33及び吐出空間S1を内包可能で主走査方向に長い。キャップ41は、図6に示すように、リップ部材42、及び、ダイアフラム44を含む。
【0042】
リップ部材42は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1を囲んでいる。つまり、リップ部材42は、カバー33の外側に配置されている。リップ部材42は、図6に示すように、基部42x、及び、基部42xの下面から突出した突出部42aを含む。このうち、突出部42aは、断面が三角形である。基部42xの上面には、凹部42bが形成されており、後述の可動体43の下端と嵌合している。
【0043】
ダイアフラム44も、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1を囲んでいる。より具体的には、ダイアフラム44は、可撓性を有した薄膜部材であって、外周端(一端)がリップ部材42の内周面に接続されている。リップ部材42とダイアフラム44とは一体である。また、ダイアフラム44の内周端は、密着部44aである。密着部44aは、外側側面が薄膜部の基部であり、内側側面がヘッド1の側面に密着し、上面がヘッドホルダ13の下面に密着し、下面がカバー33の上端面に密着している。このうち、上面が、ヘッドホルダ13に接着剤で固定されている。
【0044】
キャップ昇降機構(リップ移動機構)48は、可動体43、複数のギア45、昇降モータ(不図示)を有している。可動体43は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、ヘッド1の外周を取り囲んでいる。可動体43は、複数のギア45と接続されている。制御装置100による制御の下、昇降モータが駆動されると、ギア45が回転して可動体43が昇降する。基部42xも、共に昇降する。これにより、突出部42aの先端と吐出面1aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
【0045】
リップ部材42は、可動体43の昇降に伴って、その先端(突出部42a)が対向部材10の表面10aに当接する当接位置(図6(b)及び図6(c)に示す位置)と、表面10aから離隔した離隔位置(図6(a)に示す位置)とを選択的に取る。当接位置には、第1当接位置と第2当接位置とがあり、インク吐出方向に関して吐出面1aよりも前方に突出部42aが位置する。突出部42aと吐出面1aとの離隔距離は、第2当接位置の方が大きい。この離隔距離に対応して、対向部材10は、第1当接位置では第1位置(後述)にあり、第2当接位置では第2位置(後述)にある。いずれの位置でも、突出部42aと対向部材10とが当接して、吐出空間S1は外部空間S2に対して封止されることになる。また、離隔位置では、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された非封止状態となっている。
【0046】
リップ部材42は、第2当接位置にあるとき、最も下方に移動する。このときのダイアフラム44の外周端と内周端との直線距離は、ダイアフラム44の両端間の長さよりも若干短いだけである。このため、ダイアフラム44は、図6(c)に示すように、カバー33の側面(傾斜面34a)全体にわたって接触する。一方、リップ部材42が離隔位置及び第1当接位置にあるときは、図6(a)及び図6(b)に示すように、ダイアフラム44には、屈曲部44bが生じている。屈曲部44bは、カバー33の上側側面との間に空間S3を作る。空間S3は、離隔位置では外部と連通し、第1当接位置ではほぼ密閉されている。実際、両当接位置においては、鍔部35の先端が、リップ部材42の内周面と接触する。
【0047】
対向部材10は、平面視において、リップ部材42よりも一回り大きい矩形平面形状を有するガラス板である。表面10aは、リップ部材42の表面よりも親水性が高い。これにより、リップ部材42と対向部材10とが当接したときに、リップ部材42から対向部材10へのインク移動が容易に生じる。なお、対向部材10は、親水性に同様の差があれば、ガラス以外の材質から構成されていてもよく、特に限定するものではない。
【0048】
対向部材昇降機構49は、対向部材10を昇降させ、対向部材10が第1位置から第4位置の間で移動する。第1位置は、図7(b)に示すように、対向部材10が最も吐出面1aに近づく位置であって、リップ部材42の第1当接位置と対応し、キャッピング動作に関連する。ここでは、表面10aと吐出面1aとの離隔距離を、印刷中の支持面5aと吐出面1aとの離隔距離と同じに設定してある。第2位置は、図7(c)に示すように、表面10aと吐出面1aとの離隔距離が第1位置よりも大きく、リップ部材42の第2当接位置と対応し、近接動作(後述)に関連する。第3位置では、この離隔距離が第2位置よりも大きく、ヘッド1の退避位置に対応し、ワイパ36bによる第2ワイピング動作に関連する。第4位置では、この離隔距離が第3位置よりも大きく、ヘッド1のワイピング位置に対応し、ワイパ36aによる第1ワイピング動作に関連する。なお、第3位置及び第4位置は、図中2点差線で示されている。また、第4位置は、印刷中における対向部材10の配置位置でもある。
【0049】
次に、図8を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図8に示すように、制御装置100は、搬送制御部141と、画像データ記憶部142と、ヘッド制御部143と、メンテナンス制御部150とを有している。
【0050】
搬送制御部141は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部1c、及び、ガイド部9a,9bの各動作を制御する。画像データ記憶部142は、外部装置からの記録指令に含まれる画像データ(インク吐出データ)を記憶する。
【0051】
ヘッド制御部143は、画像形成において、用紙Pに対してインクを吐出するようヘッド1を制御する。画像形成は、ヘッド制御部143が、画像データ記憶部142に記憶された画像データに基づいて、ヘッド1からのインク吐出を制御する。ヘッド1の制御は、用紙Pの搬送と同期して行われ、用紙Pの先端検出信号に基づく。画像データに基づく制御の開始は、先端が検出されてから、所定時間後である。このとき、用紙Pの印刷領域の先端が、最も上流にある吐出口108の直下に到達する。なお、画像形成には、フラッシングデータに基づくドット形成も含まれる。これは、画像形成中の吐出特性維持動作であって、メニスカス振動を伴う場合もある。
【0052】
メンテナンス制御部150は、パージ動作、フラッシング動作、第1ワイピング動作、第2ワイピング動作、及び、キャッピング動作等のメンテナンス動作において、支持機構5、ヘッド昇降機構33、ワイパユニット36、キャップ昇降機構48、対向部材昇降機構49、及び、ポンプ38を制御する。なお、フラッシング動作においては、ヘッド制御部143を介して、ヘッド1を制御する。
【0053】
次に、メンテナンス動作の一例として、パージ動作について、図9を参照しつつ、以下に説明する。
【0054】
まず、制御装置100が、パージ指令を受信する(F1)。このとき、プラテン6a,6bは支持面形成位置にあり、対向部材10は第4位置にあり、ヘッド1は印刷位置にあり、リップ部材42は離隔位置にある。メンテナンス制御部150は、支持機構5を制御して、図7に示すように、プラテン6a,6bを開放位置に回動させる。その後、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49を制御して、図10(a)に示すように、対向部材10を第3位置(第2の位置)に移動させる(F2)。
【0055】
次に、メンテナンス制御部150は、ポンプ38を制御し、図10(a)に示すように、ヘッド1のパージ動作を行う(F3)。パージ動作では、ポンプ38によって、カートリッジ4内の所定量のインクがヘッド1に強制的に送液される。吐出口108からは、対向部材10に向けてインクが排出される。
【0056】
次に、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御してヘッド1をワイピング位置に移動させ、対向部材昇降機構49を制御して対向部材10を第4位置に移動させる。この後、メンテナンス制御部150は、ワイパユニット36(ワイパ移動機構27)を制御して、図10(b)に示すように、吐出面1aをワイパ36aで払拭する(F4:第1ワイピング動作)。払拭後は、メンテナンス制御部150が、ヘッド昇降機構33及びワイパユニット36を制御して、ヘッド1を退避位置に移動させ、基部36c(ワイパ36a,36b)を待機位置に戻す。
【0057】
次に、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49を制御して、対向部材10を第3位置に移動させる。ヘッド1は、退避位置のままである。この後、メンテナンス制御部150は、ワイパユニット36(ワイパ移動機構27)を制御して、図10(c)に示すように、表面10aをワイパ36bで払拭する(F5:第2ワイピング動作)。この払拭動作で、パージにより排出されたインクが除去される。そして、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49及びワイパユニット36を制御して、対向部材10を第4位置に移動させ、基部36c(ワイパ36a,36b)を待機位置に戻す。この後、メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御して、ヘッド1を印刷位置に移動させる。
【0058】
続けて、制御装置100は、キャッピング指令を受信する(F6)。このとき、プラテン6a,6bは開放位置にあり、対向部材10は第4位置にあり、ヘッド1は印刷位置にあり、リップ部材42は離隔位置にある。ここで、メンテナンス制御部150は、接近動作を実行(F7)してから第2ワイピング動作を実行(F8)し、この後に、キャッピング動作を実行する(F9)ところに特徴がある。
【0059】
ステップF7の接近動作は、空間S3の容積を極力小さくする動作である。ステップF7においては、メンテナンス制御部150が、対向部材昇降機構49を制御して、対向部材10を第2位置に移動させる。そして、メンテナンス制御部150は、キャップ昇降機構48を制御し、図7(c)に示すように、リップ部材42を第2当接位置に移動させる。すると、ダイアフラム44は、屈曲部44bが変形を解きながら、カバー33への接触範囲を広げる。広がりは、リップ部材42の移動とともに、密着部44の基端から鍔部35の先端に至る。リップ部材42の移動中、鍔部35の先端はリップ部材42に摺動するが、摺動部分を介したインクの排出は、妨げられない。第2当接位置にあっては、空間S3の容積はほとんど無く、内部に留まるインクも極微量である。また、突出部42aは表面10aに当接しており、空間S3から押し出されたインクは、リップ部材42を介して表面10aへと伝わる。表面10aは、リップ部材42よりも親水性が高く、インクの表面10a側への移動が促進される。このように、接近動作は、キャップ41による封止空間からの残留インク除去動作の一部であって、閉空間S3からのインク排出動作である。空間S3の最小化と表面の親水性の違いにより、インクの排出と表面10aへの受け渡しが確実に行われる。このとき、リップ部材42が、カバー33より親水性が高ければ、より確実にインクが移動することになる。
【0060】
ステップF8の第2ワイピング動作では、空間S3の残留インクが除去される。ステップF8においては、メンテナンス制御部150が、対向部材昇降機構49及びキャップ昇降機構48を制御して、対向部材10を第3位置に移動させるとともに(移動ステップ)、リップ部材42を離隔位置に戻す。この後、メンテナンス制御部150が、ヘッド昇降機構33及びワイパユニット36を制御し、ヘッド1を退避位置に移動させ、表面10aをワイパ36bで払拭する(第2ワイピング動作:払拭ステップ)。そして、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49及びワイパユニット36を制御して、対向部材10を第4位置に移動させ、基部36c(ワイパ36a,36b)を待機位置に戻す。メンテナンス制御部150は、ヘッド昇降機構33を制御して、ヘッド1を印刷位置に移動させる。
【0061】
ステップF9においては、メンテナンス制御部150が、対向部材昇降機構49を制御して、対向部材10を第1位置に移動させる。そして、メンテナンス制御部150は、キャップ昇降機構48を制御し、図7(b)に示すように、リップ部材42を第1当接位置に移動させる。こうして、吐出空間S1は、残留インクが除去された封止状態となる(キャッピング動作:封止ステップ)。このとき、リップ部材42の離隔位置から第1当接位置への移動距離が、第2当接位置に移動するときよりも短い。これにより、ダイアフラム44は、カバー33と部分的に接触するだけである。このため、キャッピング動作において、ダイアフラム44にカバー(側面)33からの反力(ダイアフラム44全体がカバー33に接触する場合に、カバー33からダイアフラム44に対して生じるダイアフラム44を上方に持ち上げる力)が弱い分、リップ部材42と対向部材10との密着を確実に行うことが可能となる。こうして、パージ動作後のキャッピング動作が完了する。
【0062】
なお、パージ動作及びキャッピング動作が単独で行われてもよい。また、パージ動作に代えてフラッシング動作が行われてもよい。この場合、対向部材10の表面10aにヘッド1からインク滴が吐出され、その後、表面10aからインク滴を除去する第2ワイピング動作が行われればよい。
【0063】
以上のように、本実施形態のプリンタ1によると、空間S3を小さくして、当該空間S3に残存したインクを排出する接近動作、対向部材10からインクを払拭する第2ワイピング動作が行われてからキャッピング動作によって封止状態が構成される。このため、封止状態において、吐出空間S1に連通する空間S3内にインクが残存しにくくなるので、吐出口近傍のインクが乾燥しにくくなる。
【0064】
ヘッド1の側面を構成するカバー33が、主走査方向に延びた一対の長尺部33aを有していることで、ここに作られた空間S3から効果的に液体を排出することが可能となる。
【0065】
変形例として、ワイパユニットがワイパ36aを有していなくてもよい。つまり、ワイパユニットは、対向部材10の表面10aを払拭可能であればよい。このとき、ヘッド1が印刷位置に配置されている状態で、対向部材10の表面10aを払拭可能な位置に、ワイパユニットを設ければよい。こうすることで、接近動作の後であって払拭動作(第2ワイピング動作)を行う前に、対向部材10を第3位置(第2の位置)に移動させればよい。これにより、ヘッド1の位置が変わらないため、吐出面1aと用紙Pとの印刷時における位置関係を崩すことがなくなる。よって、画像品質を維持することが可能となる。
【0066】
別の変形例として、接近動作において、リップ部材42と対向部材10とを当接させなくてもよい。この場合は、対向部材10を第3又は第4位置に配置させておく。また、別の変形例として、接近動作において、リップ部材42を第2当接位置よりも離隔位置に近い位置(例えば、第1当接位置)に移動させてもよい。つまり、接近動作とキャッピング動作におけるリップ部材42の移動距離を同じにしてもよい。これにおいても、空間S3が小さくなり、空間S3からインクが排出される。この場合、対向部材10を移動させる対向部材昇降機構49が設けられていなくてもよい。
【0067】
以上の変形例においても、上述の実施形態と同様に、封止状態において、吐出空間S1に連通する空間S3内にインクが残存しにくくなるので、吐出口近傍のインクが乾燥しにくくなる。
【0068】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、リップ部材42と鍔部35とが当接していない状態で接近動作が行われてもよい。また、カバー33が、一対の長尺部33aだけから構成されていてもよい。この場合、空間S3の主走査方向に長尺な部分から、インクが排出される。また、ヘッド1は、平面視で、長方形以外の多角形、円形の輪郭を有していてもよい。
【0069】
上述のメンテナンス動作では、キャッピング指令(F6)を受けた後、接近動作(F7)及び2回目の第2ワイピング動作(F8)を経て、キャッピング動作(F9)に至る。ステップF7及びステップF8の存在は、残留インク量を常に最小に留めるという点で有効であるが、時間を要する。そこで、空間S3内のインクの蓄積量に応じて、2つのステップF7、F8の実行要否を決めても良い。インクの蓄積には、パージ時のインク排出量が関与する。例えば、装置の使用履歴(画像の平均デューティ、画像形成枚数、休止時間等、及びこれらいくつかの指標の組合せ)から予測される吐出特性劣化に対応して、インク排出量が決められている。インク排出量が多いと、インクの蓄積が生じやすい。したがって、このようなパージ後に、2つのステップF7、F8を組み込めば効果的である。
【0070】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 インクジェットヘッド(液体吐出ヘッド)
1a 吐出面
10 対向部材
11 流路ユニット(流路部材)
12 リザーバユニット(流路部材)
33カバー
34a 傾斜面
35 鍔部(突出部)
36 ワイパユニット(払拭手段)
40 キャップ機構(キャップ手段)
42 リップ部材
44 ダイアフラム
44a 密着部
48 キャップ昇降機構(リップ移動機構)
49 対向部材昇降機構(対向部材移動機構)
100 制御装置(制御手段)
101 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
108 吐出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口が形成された吐出面、及び、外側に向かって突出した突出部を介して前記吐出面につながる側面を有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを前記側面に沿って取り囲む環状のリップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、前記リップ部材が前記対向部材の表面に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材の前記表面から離隔する離隔位置の間において、前記リップ部材を移動させるリップ移動機構、及び、前記リップ部材に接続した一端と、前記吐出面を下にして前記突出部の上方で前記側面に密着した密着部とを有し、前記リップ部材が前記離隔位置から前記当接位置に近づくにつれて弾性変形して、前記密着部から前記突出部に至る前記側面に近づくダイアフラムを有するキャップ手段と、
前記対向部材の前記表面を払拭する払拭動作を行う払拭手段と、
前記吐出空間が外部空間から封止された封止状態とする際に、前記リップ部材を前記離隔位置から前記当接位置に近づくように移動させて前記ダイアフラムを前記側面に近づける接近動作を行った後、前記払拭動作を行ってから、前記リップ部材が前記当接位置にあって、前記対向部材とともに前記吐出空間を前記外部空間から封止された前記封止状態とする封止動作を行うように、前記キャップ手段及び前記払拭手段を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記接近動作は、前記リップ部材の内面に前記突出部の先端が当接した状態で、前記ダイアフラムが前記側面に近づけられることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記接近動作を行う際に、前記封止動作を行うように、前記キャップ手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記対向部材の前記表面は、前記リップ部材の表面よりも親水性が高いことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記キャップ手段は、前記リップ部材が前記当接位置にあるときに当該リップ部材と当接する第1の位置と、前記リップ部材の移動方向に関して前記第1の位置よりも前記吐出面から離隔した第2の位置との間において、前記対向部材を移動させる対向部材移動機構をさらに有しており、
前記制御手段は、前記接近動作の後であって前記払拭動作を行う前に、前記対向部材を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させるように、前記キャップ手段を制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記接近動作において、前記リップ部材が前記当接位置にあるとき、前記ダイアフラムは、弾性変形をして前記密着部から前記突出部に至る前記側面に接触して配置されることを特徴とする請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記リップ部材について、前記接近動作における前記離隔位置と前記当接位置との離隔距離は、前記払拭動作の後に行われる前記封止動作における前記離隔距離よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体吐出ヘッドの前記側面は、前記密着部から前記突出部に近づくに連れて外側に広がるように傾斜していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドは、平面視で、一方向に長い矩形状の輪郭を有する、前記吐出口に繋がる液体流路が形成された流路部材と、前記流路部材と前記リップ部材との間に配置され前記側面を構成するカバーとを有しており、
前記カバーは、前記一方向に沿って延在し、少なくとも前記一方向と直交する方向に関して前記流路部材を挟む位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
液体を吐出する吐出口が形成された吐出面、及び、外側に向かって突出した突出部を介して前記吐出面につながる側面を有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを前記側面に沿って取り囲む環状のリップ部材、前記吐出面と対向する吐出空間を挟んで前記吐出面に対向する対向部材、前記リップ部材が前記対向部材の表面に当接する当接位置及び前記リップ部材が前記対向部材の前記表面から離隔する離隔位置の間において、前記リップ部材を移動させるリップ移動機構、及び、前記リップ部材に接続した一端と、前記吐出面を下にして前記突出部の上方で前記側面に密着した密着部とを有し、前記リップ部材が前記離隔位置から前記当接位置に近づくにつれて弾性変形して、前記密着部から前記突出部に至る前記側面に近づくダイアフラムを有するキャップ手段と、前記対向部材の前記表面を払拭する払拭動作を行う払拭手段とを備えた液体吐出装置の前記吐出空間を外部空間から封止する封止方法において、
前記リップ部材を前記離隔位置から前記当接位置に近づくように移動させて前記ダイアフラムを前記側面に近づける接近ステップと、
前記接近ステップを行った後、前記払拭動作を行う払拭ステップと、
前記払拭ステップを行った後、前記リップ部材を前記当接位置に移動させて、前記対向部材と共に前記吐出空間を封止する封止ステップとを備えていることを特徴とする液体吐出装置の吐出空間の封止方法。
【請求項11】
前記対向部材の前記表面は、前記リップ部材の表面よりも親水性が高く、
前記接近ステップにおいて、前記リップ部材を前記当接位置に移動させることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置の吐出空間の封止方法。
【請求項12】
前記キャップ手段は、前記リップ部材が前記当接位置にあるときに当該リップ部材と当接する第1の位置と、前記リップ部材の移動方向に関して前記第1の位置よりも前記吐出面から離隔した第2の位置との間において、前記対向部材を移動させる対向部材移動機構をさらに有しており、
前記接近ステップの後であって前記払拭ステップを行う前に、前記対向部材を前記第1の位置から前記第2の位置に移動させる移動ステップをさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置の吐出空間の封止方法。
【請求項13】
前記接近ステップにおいて、前記リップ部材が前記当接位置にあるとき、前記ダイアフラムは、弾性変形をして前記密着部から前記突出部に至る前記側面に接触して配置され、前記リップ部材の前記離隔位置から前記当接位置までの移動距離は、前記封止ステップにおける前記移動距離よりも大きいことを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置の吐出空間の封止方法。










【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86298(P2013−86298A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226785(P2011−226785)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】