説明

液体吐出装置

【課題】吐出空間に面する空気排出口への液体の流出を抑制し、加湿機能の低下を抑制することが可能な液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】吐出空間S1内の空気を排出する空気排出口30は、吐出空間S1が封止されているときに、吐出口14aから排出されるインクが付着する被吐出領域81以外の位置に開口されている。そして、被吐出領域81と空気排出口30との間に、被吐出領域81に排出されたインクが空気排出口30へ流出するのを抑制する規制板59が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置は、インク等の液体を吐出する吐出口が開口した吐出面を有するヘッドを備えている。この吐出口から液体が吐出されない状況が長時間続くと、吐出口近傍の液体が蒸発して粘性が増加し、吐出口の目詰まりが生じ得る。この吐出口の目詰まりを抑制するための技術として、例えば、下記特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された技術では、凹状のキャップ(キャッピング部)によって吐出面を覆うことで、外部空間から隔てられた吐出空間を形成する。そして、キャップの底面に空気導入口及び空気排出口が形成された空気流路を有する空調装置(加湿手段)により、加湿した空気を空気導入口から吐出空間内に供給し、且つ吐出空間内の空気を空気排出口から排出することで吐出空間内の空気を加湿している。これにより、吐出口近傍の液体の蒸発が抑制されるので、吐出口の目詰まりが生じるのを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−212138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、吐出空間に面するキャップや吐出面に液体が付着した状態で、加湿手段により吐出空間内の空気を空気排出口から排出しているため、この吐出空間内の空気の排出に伴い液体が空気排出口に流出し、この流出した液体により空気排出口が閉塞又は加湿手段自体の機能低下が起こり、その結果、液体吐出装置の加湿機能の低下が生じ得る。
【0006】
そこで、本発明の目的は、吐出空間に面する空気排出口への液体の流出を抑制し、加湿機能の低下を抑制することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、記録媒体に画像を形成する液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態とを取り得るキャップ手段と、前記キャップ手段に開口された空気導入口及び空気排出口と、空気を加湿して前記空気導入口から前記吐出空間内に供給し、且つ、前記吐出空間内の空気を前記空気排出口から前記吐出空間外へ排出する加湿手段とを備えた液体吐出装置であって、前記空気排出口は、前記キャップ手段が前記封止状態のときに、前記吐出口から排出される液体が付着する被吐出領域以外の位置に開口され、前記被吐出領域又は前記被吐出領域と前記空気排出口との間に、前記被吐出領域に排出された液体が前記空気排出口へ流出するのを抑制する抑制手段が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、吐出領域に付着した液体は、抑制手段により、被吐出領域外に流出することが抑制されているので、液体が空気排出口へ流出して当該空気排出口が閉塞することを抑制することができ、その結果、液体吐出装置の加湿機能の低下を抑制することができる。
【0009】
また、本発明の液体吐出装置においては、前記空気導入口及び前記空気排出口に一端及び他端が連通された循環流路を更に備えており、前記加湿手段が前記循環流路に配置され、前記加湿手段は前記空気排出口から前記循環流路を介して回収した前記吐出空間内の空気を加湿し、前記循環流路を介して当該加湿された空気を前記空気導入口から前記吐出空間内に供給してもよい。上記の構成によれば、吐出空間と加湿手段との間で空気が循環されるので、比較的高い湿度の空気を再利用して加湿を行うことにより加湿源の消費低減を図ることができる。
【0010】
また、本発明の液体吐出装置において、前記空気導入口は、前記被吐出領域以外の位置に開口されており、前記抑制手段により、前記被吐出領域に排出された液体が前記空気導入口へ流出するのが抑制されていてもよい。上記の構成によれば、被吐出領域に付着した液体が空気導入口へ流出して当該空気導入口が閉塞することを抑制することができるので、その結果、液体吐出装置の加湿機能の低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明の液体吐出装置において、前記キャップ手段は前記吐出面と対向する対向部材を有しており、前記抑制手段は、前記被吐出領域を囲むように前記対向部材に設けられた環状包囲手段であってもよい。上記の構成によれば、被吐出領域に付着した液体は、環状包囲手段により、被吐出領域外に流出することが抑制されているので、液体が空気排出口へ流出して当該空気排出口が閉塞することを抑制することができ、その結果、液体吐出装置の加湿機能の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の液体吐出装置において、前記キャップ手段は前記吐出面と対向する対向部材を有しており、前記キャップ手段は、前記対向部材、及び当該対向部材に支持され、前記封止状態のときに、先端が前記吐出面と当接される環状部材が一体として形成された凹状部材を有していてもよい。上記の構成によれば、キャップ手段の構造を簡素化することができる。
【0013】
また、本発明の液体吐出装置において、前記抑制手段は、前記被吐出領域に設けられ、当該被吐出領域に付着した液体を保持可能なインク吸収体であってもよい。上記の構成によれば、インク吸収体が被吐出領域に付着された液体を保持するので、被吐出領域に付着した液体が空気排出口へ流出して空気排出口が閉塞することを抑制することができ、その結果、液体吐出装置の加湿機能の低下を抑制することができる。
【0014】
また、本発明の液体吐出装置において、前記抑制手段は、前記被吐出領域に付着した液体を除去する液体除去手段を備えていてもよい。上記の構成によれば、被吐出領域に付着した液体を除去することで、被吐出領域に付着した液体が空気排出口へ流出することをさらに抑制することができる。
【0015】
また、本発明の液体吐出装置において、前記液体除去手段は、前記被吐出領域に付着した液体を、前記被吐出領域に形成された前記液体吸入口を介して前記吐出空間外へと吸引する液体吸引手段であってもよい。上記の構成によれば、吐出空間が封止されているときにおいても、被吐出領域に付着した液体を除去することができる。
【0016】
また、本発明の液体装置において、前記液体吸引手段は、前記加湿手段が前記吐出空間内の空気を前記吐出空間外へ排出する前に、前記被吐出領域に付着した液体を、前記液体吸引口を介して前記吐出空間外へ吸引してもよい。上記の構成によれば、加湿手段により吐出空間内の空気が吐出空間外へと排出されるときには、液体吸引手段により被吐出領域に付着した液体の清掃が行われているので、液体が空気排出口へと流出して空気排出口が閉塞することを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の液体装置において、前記液体吸引手段は、前記加湿手段が前記吐出空間内の空気を前記吐出空間外へ排出しているときに、前記被吐出領域に付着した液体を、前記液体吸引口を介して前記吐出空間外へ吸引してもよい。上記の構成によれば、吐出空間内の空気の排出に伴い、被吐出領域に付着した液体が空気排出口へ流出することを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の液体装置において、前記空気導入口及び前記空気排出口は、前記キャップ手段が前記封止状態のときに、前記吐出口と対向する方向から見て、この空気導入口及び空気排出口とで前記吐出口を挟む位置に形成されていてもよい。上記の構成によれば、吐出空間内の加湿を効率良く行うことができるので、吐出口付近の液体の蒸発を抑制することができ、吐出口の目詰まりが生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、吐出空間に面する空気排出口への液体の流出を抑制し、加湿機能の低下を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】図1のプリンタの液体吐出ヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニット、並びに凹状部材を示す平面図である。
【図3】図2の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った部分断面図である。
【図5】図1のプリンタの液体吐出ヘッド、凹状部材、加湿ユニット、及び液体吸引ユニットを示す概略図である。
【図6】図1のプリンタの液体吐出ヘッドの吐出面と、凹状部材との位置関係を表す概略図であり、(a)は凹状部材が当接位置にあるときの図であり、(b)は凹状部材が離隔位置にあるときの図である。
【図7】図1のプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図8】図1のプリンタの制御部が実行する加湿メンテナンス及び液体吸引メンテナンスに関する一連の動作フローを示すフローチャート図である。
【図9】本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタの、図5に対応する概略図である。
【図10】図9の支持・メンテナンスユニットの上面図である。
【図11】本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタの、図5に対応する概略図である。
【図12】本発明の第4実施形態によるインクジェットプリンタの、図5に対応する概略図である。
【図13】図12のキャップユニットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態として、液体吐出装置をインクジェットプリンタに適用し、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、図1を参照し、インクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0023】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部35が設けられている。筐体1aにより画定される空間には、後述の給紙ユニット1cから排紙部35に向けて、図1に示す太矢印に沿って、記録媒体である用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0024】
筐体1aは、ヘッド(液体吐出ヘッド)10、ヘッド10の吐出面10aと対向する位置を通過するように用紙Pを搬送する搬送機構33と、ヘッド10に対応する支持・キャップユニット50、加湿メンテナンスに用いられる加湿ユニット60(図5参照)、支持・キャップユニット50の後述の凹状部材52における対向部材53の被吐出領域81に付着した液体等を除去する液体吸引ユニット70(図5参照)、ヘッド10に供給するブラックインクを貯留するカートリッジ(図示せず)、プリンタ1の各部の動作を制御する制御部100等を収容している。
【0025】
ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。ヘッド10の下面は、多数の吐出口14a(図3及び図4参照)が開口した吐出面10aである。画像記録(画像形成)に際して、吐出口14aからブラックのインクが吐出される。また、ヘッド10は、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aと後述の支持面51aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド10を保持している。ヘッド10のより具体的な構成については後に詳述する。
【0026】
制御部100は、用紙Pに向けて吐出口14aからインクを吐出する記録モード時においては、外部装置から転送された印刷データに基づいて、プリンタ1各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作を制御する。また、制御部100は、吐出面10aの保守を行うメンテナンスモード時においては、吐出性能の回復・維持に係るメンテナンス動作を制御する。
【0027】
メンテナンス動作としては、フラッシング(画像データとは異なるフラッシングデータに基づいてヘッド10の全アクチュエータを駆動することにより一部又は全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、パージ(パージ機構8(図7参照)により、ヘッド10内のインクに圧力を付与して全吐出口14aからインクを強制的に吐出させる動作)、ワイプ(ワイパ9(図7参照)により吐出面10a上の異物(インク等)を払拭する動作)、加湿メンテナンス(ヘッド10の吐出面10aと凹状部材52により封止された吐出空間S1(図5参照)内に加湿空気を供給する動作)、液体吸引メンテナンス(被吐出領域81に付着したインクを吸引除去する動作)等を含む。パージ及びフラッシング(以下、強制吐出メンテナンスと総称す)は、吐出口14aからインクが所定時間以上吐出されていない場合に行われる(ここで、フラッシングよりもパージに係る上記所定時間を長く設定してもよい)。パージやフラッシングにより、吐出口14a内の増粘したインクや吐出口14a内に混入した気泡や粉塵がインクと共に排出される。加湿メンテナンス、及び液体吸引メンテナンスについては後に詳述する。
【0028】
搬送機構33は、給紙ユニット1c、ガイド29、送りローラ対22,26〜28、及び、レジローラ対23を有しており、給紙ユニット1cから排紙部35までの用紙搬送経路を構成している。これら給紙ユニット1c、送りローラ対22,26〜28、及び、レジローラ対23は、制御部100により制御される。
【0029】
給紙ユニット1cは、給紙トレイ(収容部)20及び給紙ローラ21を有する。このうち給紙トレイ20が筐体1aに対して副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ20は、上方に開口する箱であり、用紙Pを収容可能である。給紙ローラ21は、制御部100の制御により回転し、給紙トレイ20の最も上方にある用紙Pを送り出す。
【0030】
ここで、副走査方向とは、搬送機構33による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0031】
給紙ローラ21によって送り出された用紙Pは、ガイド29によりガイドされ、且つ送りローラ対22によって挟持されつつレジローラ対23へと送られる。レジローラ対23は、設定されたレジ掛け時間の間、送りローラ対22によって搬送されてきた用紙Pの前端を無回転状態で挟持する。これにより、用紙Pの前端がレジローラ対23に挟持された状態でその傾きが補正(用紙Pの斜行が補正)される。そして、レジ掛け時間が経過した後、レジローラ対23が回転され、斜行補正された用紙Pがヘッド10と支持・キャップユニット50との間へと送られる。
【0032】
レジローラ対23によりヘッド10と支持・キャップユニット50との間へ送られた用紙Pは、ヘッド10の真下を副走査方向に通過する際、順に吐出口14aからインクが吐出されて用紙P上にモノクロ画像が形成される。吐出口14aからのインク吐出動作は、用紙センサ37からの検出信号に基づき、制御部100による制御の下で行われる。用紙Pは、その後ガイド29によりガイドされ且つ送りローラ対26,27,28によって挟持されつつ上方に搬送され、第1筐体1a上部に形成された開口38から排紙部35へと排出される。
【0033】
次に、図2〜図4を参照し、ヘッド10の構成について説明する。なお、図3では、アクチュエータユニット17の下側にあって点線で示すべき圧力室16及びアパーチャ15を実線で示している。
【0034】
ヘッド10は、リザーバユニット11(図5参照)及び流路ユニット12(図4参照)、流路ユニット12の上面12xに固定された8つのアクチュエータユニット17(図2参照)、各アクチュエータユニット17に接合されたFPC(平型柔軟基板)19(図4参照)等を有する。リザーバユニット11には、カートリッジから供給されたインクを一時的に貯留するリザーバを含むインク流路が形成されている。流路ユニット12には、上面12xの開口12y(図2参照)から下面(吐出面10a)の各吐出口14aに至るインク流路が形成されている。アクチュエータユニット17は、吐出口14a毎の圧電型アクチュエータを有する。
【0035】
リザーバユニット11の下面には凹凸が形成されている。凸部は、流路ユニット12の上面12xにおけるアクチュエータユニット17が配置されていない領域(図2に示す開口12yを含む二点鎖線で囲まれた領域)に接着されている。凸部の先端面は、リザーバに接続し且つ流路ユニット12の各開口12yに対向する開口を有する。これにより、上記各開口を介して、リザーバ及び個別インク流路14が連通している。凹部は、流路ユニット12の上面12x、アクチュエータユニット17の表面、及びFPC19の表面と、若干の隙間を介して対向している。
【0036】
流路ユニット12は、略同一サイズの矩形状の9枚の金属プレート12a,12b,12c,12d,12e,12f,12g,12h,12i(図4参照)を互いに積層し接着することにより形成された積層体である。流路ユニット12のインク流路は、図2、図3、及び図4に示すように、開口12yを一端に有するマニホールド流路13、マニホールド流路13から分岐した副マニホールド流路13a、及び、副マニホールド流路13aの出口から圧力室16を介して吐出口14aに至る個別インク流路14を含む。個別インク流路14は、図4に示すように、吐出口14a毎に形成されており、流路抵抗調整用の絞りとして機能するアパーチャ15を含む。上面12xにおける各アクチュエータユニット17の接着領域には、圧力室16を露出させる略菱形形状の開口がマトリクス状に配置されている。下面(吐出面10a)における各アクチュエータユニット17の接着領域に対向する領域には、圧力室16と同様の配置パターンで、吐出口14aがマトリクス状に配置されている。
【0037】
アクチュエータユニット17は、図2に示すように、それぞれ台形の平面形状を有し、流路ユニット12の上面12xにおいて2列の千鳥状に配置されている。各アクチュエータユニット17は、図3に示すように、当該アクチュエータユニット17の接着領域内に形成された多数の圧力室16の開口を覆っている。図示は省略するが、アクチュエータユニット17は、多数の圧力室16に跨るように延在した複数の圧電層、及び、厚み方向に関して圧電層を挟む電極を含む。電極には、圧力室16毎に設けられた個別電極、及び、圧力室16に共通の共通電極が含まれる。個別電極は、最も上方の圧電層の表面に形成されている。
【0038】
FPC19は、アクチュエータユニット17の各電極に対応する配線を有し、その途中部にドライバIC(図示せず)が実装されている。FPC19は、一端がアクチュエータユニット17、他端がヘッド10の制御基板(リザーバユニット11上方に配置。図示せず)にそれぞれ固定されている。FPC19は、制御部100(図1参照)による制御の下、制御基板から出力された各種駆動信号をドライバICに伝達し、ドライバICが生成した信号をアクチュエータユニット17に伝達する。
【0039】
次に、支持・キャップユニット50について、図1、2、5及び6を参照しつつ説明する。
【0040】
支持・キャップユニット50は、図1に示すように、対応するヘッド10の吐出面10aに鉛直方向に対向して配置されている。支持・キャップユニット50は、主走査方向の軸を有し且つ制御部100の制御により当該軸を中心として回転可能な回転体58、回転体58の周面に固定されたプラテン51とキャップ固定部材57、キャップ固定部材57に固定された凹状部材52、及び回転体58を鉛直方向に昇降させる回転体昇降機構56(図7参照)を含む。
【0041】
プラテン51は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有し、且つ、鉛直方向に関して、キャップ固定部材57に対して対向して配置されている。プラテン51の表面は、吐出面10aに対向しつつ用紙Pを支持する支持面51aであり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。例えば支持面51aに、弱粘着性のシリコン層を形成したり、副走査方向に沿ったリブを多数形成したりすることで、支持面51a上に載置された用紙Pの浮き等が防止される。また、プラテン51は、樹脂により構成されている。
【0042】
回転体58は、制御部100の制御により、支持面51aが吐出面10aに対向し且つ後述の対向面80が吐出面10aに対向しない第1回転状態(図1参照)と、この第1回転状態から180°回転した状態であって支持面51aが吐出面10aに対向せず且つ後述の対向面80が吐出面10aに対向する第2回転状態(図5参照)とを選択的に取り得るように回転される。本実施形態においては、制御部100は、記録モード時、及び、印刷要求を待つ記録待機モード時は第1回転状態、メンテナンスモード時は第2回転状態となるように、回転体58の回転を制御する。
【0043】
回転体昇降機構56は、回転体58の軸を軸支しており、制御部100の制御により、回転体58を鉛直方向に昇降させる。この回転体58の鉛直方向の昇降に伴い、回転体58にキャップ固定部材57を介して固定された凹状部材52も昇降し、これにより、凹状部材52の吐出面10aに対する鉛直方向の相対位置が変化する。なお、回転体昇降機構56としては、例えば、ラックとピニオンやソレノイド等を用いることができる。
【0044】
凹状部材52は、図5及び6に示すように、吐出面10aに対向する対向部材53、及び対向部材53の外周縁において支持された環状部材54が一体として形成されたものであり、キャップ固定部材57に固定されている。環状部材54は、ゴムなどの弾性材料からなり、図2に示すように平面視で吐出面10aの全アクチュエータユニット17を囲む、即ち全吐出口14aを囲む環状に形成されている。
【0045】
凹状部材52は、対向面80が吐出面10aに対向しているときにおいて、回転体昇降機構56による回転体58の昇降により、環状部材54の先端54aがヘッド10の吐出面10aに当接する当接位置(図6(a)参照)と、環状部材54の先端54aがヘッド10の吐出面10aから離隔した離隔位置(図6(b)参照)とを選択的に取る。図6に示すように、凹状部材52が当接位置にあるとき、凹状部材52と吐出面10aとで、吐出面10aと対向する吐出空間S1が外部空間S2から封止される。なお、凹状部材52が離隔位置にあるときは、吐出面10aと対向する吐出空間S1は、外部空間S2に対して封止されない。本実施形態においては、上記のように、凹状部材52と回転体昇降機構56と制御部100とで、吐出空間S1を外部空間S2から封止する封止状態(凹状部材52が当接位置にある状態)と、吐出空間S1を外部空間S2に対して封止しない非封止状態(凹状部材52が離隔位置にある状態)とを取り得るキャップ手段を構成している。また、本実施形態においては、キャップ手段は、対向部材53と環状部材54とが一体に形成された凹状部材52を昇降させるだけで、封止状態と非封止状態とを取り得るので簡素な構成とされている。
【0046】
対向部材53は、ガラスや金属(例えばSUS)等の、水分を吸収しない又は吸収し難い材料から構成されている。また、対向面80は、吐出面10aと対向しているときに、吐出口14aから排出(強制吐出等)されたインクが付着(着弾)する被吐出領域81と、この被吐出領域81を囲む外周領域82とに分けられる。この外周領域82は、吐出口14aから排出されたインクが付着(着弾)しない領域であり、主走査方向において被吐出領域81を挟む一対の外周領域82a,82bと、副走査方向において被吐出領域81を挟む一対の領域(図示せず)とから主になる。
【0047】
被吐出領域81の中央部には液体吸入口74が形成されており、液体吸引メンテナンスの際に、液体吸引ユニット70により被吐出領域81に付着したインクがこの液体吸入口74を介して吐出空間S1外へと吸引される。なお、液体吸入口74は被吐出領域81の中央部以外の位置に形成されていてもよい。
【0048】
また、外周領域82a,82bにおける被吐出領域81との境界位置には、環状部材54の副走査方向両内側面を結ぶ規制板59が副走査方向に沿ってそれぞれ突設されている。これにより、被吐出領域81は環状部材54と一対の規制板59とで環状に囲まれることになる。なお、本実施形態においては、環状部材54と一対の規制板59とで、環状包囲手段が構成されている。
【0049】
また、規制板59の鉛直方向長さは、環状部材54の鉛直方向長さよりも短く設定されている(図6参照)。即ち、規制板59の先端59aの位置は、封止状態における環状部材54の先端54aの位置よりも下方に位置されている。
【0050】
対向面80の外周領域82aには、空気排出口30が開口しており、対向面80の外周領域82bには、空気導入口31が開口している。加湿メンテナンスの際においては、後述のタンク64により加湿された空気がこの空気導入口31から吐出空間S1へ供給され、吐出空間S1内の空気がこの空気排出口30から排出されることになる。
【0051】
また、上記のように空気排出口30は外周領域82aに、空気導入口31は外周領域82bに開口されているので、凹状部材52が当接位置(封止状態位置)にあるときには、吐出口14aと対向する方向から見て、この空気導入口31及び空気排出口30とで主走査方向に関して全吐出口14aを挟む位置に形成されていることになる。これにより、加湿メンテナンスの際において、吐出空間S1内の空気は、吐出面10aの主走査方向に関する一端側から他端側に向けて流動することになるので、吐出空間内の加湿を効率良く行うことができ、その結果、吐出口14a付近のインクの蒸発を抑制することができ、吐出口14aの目詰まりが生じるのを抑制することができる。
【0052】
また、被吐出領域81と空気排出口30との間、及び被吐出領域81と空気導入口31との間に、規制板59(環状包囲手段)がそれぞれ設けられているので、被吐出領域81に付着したインクが外周領域82aに開口された空気排出口30、及び外周領域82bに開口された空気排出口30に流出することを抑制することができる。
【0053】
また、対向面80の被吐出領域81は、図5に示すように、外縁から中央部に形成された液体吸入口74に向かって下方に傾斜した凹部81aが設けられており、被吐出領域81に付着したインクが液体吸入口74に向けて流れるようにされている。即ち、被吐出領域81の外縁が、被吐出領域81の液体吸入口74よりも重力方向上方に位置するようにされている。これにより、被吐出領域81に付着したインクが、外周領域82に開口された空気排出口30や空気導入口31に流出することを抑制することができ、且つ液体吸引メンテナンスの際に、被吐出領域81に付着したインクを液体吸入口74から吸引し易くすることができる。本実施形態において、被吐出領域81に設けられた凹部81aは、抑制手段に相当する。
【0054】
次に、図5を参照し、加湿ユニット60の構成について説明する。
【0055】
加湿ユニット60は、図5に示すように、循環流路としてのチューブ65〜67、循環ポンプ63、並びにタンク64を含む。チューブ65の一端は、対向面80の外周領域82aに開口した空気排出口30に連通され、他端は循環ポンプ63に連通されている。チューブ66の一端は循環ポンプ63に連通され、他端はタンク64と連通されている。また、チューブ67の一端は、対向面80の外周領域82bに開口した空気導入口31に連通され、他端はタンク64に連通されている。
【0056】
タンク64は、下部空間に水を貯留し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。チューブ66は、タンク64内の水面よりも下方に接続し、即ちタンク64の下部空間と連通している。チューブ67は、タンク64内の水面よりも上方に接続し、即ちタンク64の上部空間と連通している。循環ポンプ63は、制御部100により制御されることで、吐出空間S1とタンク64との間で空気循環を生む。これにより、空気排出口30からチューブ65、及び66を介して回収した吐出空間S1内の空気をタンク64により加湿し、この加湿した空気を、チューブ67を介して空気導入口31から吐出空間S1内へと供給することが可能となる。また吐出空間S1と循環ポンプ63及びタンク64との間で空気が循環されるので、比較的高い湿度の空気を再利用して加湿を行うことにより加湿源の消費低減を図ることができる。なお、タンク64内の水が循環ポンプ63に流れ込まないよう、チューブ66には逆止弁(図示せず)が取り付けられており、図5の黒矢印方向にのみ空気が流れるようになっている。本実施形態においては、循環ポンプ63、タンク64、及び制御部100とで加湿手段を構成する。
【0057】
次に、図5を参照し、液体吸引ユニット70の構成について説明する。
【0058】
液体吸引ユニット70は、図5に示すように、吸引用チューブ75,76、吸引ポンプ77、及び廃液タンク78を含む。吸引用チューブ75の一端は、対向面80の被吐出領域81の中央部に形成された液体吸入口74に連通され、他端は吸引ポンプ77に連通されている。吸引用チューブ76の一端は吸引ポンプ77に連通され、他端は廃液タンク78に連通されている。吸引ポンプ77は、制御部100により制御されることで、被吐出領域81に付着したインクを吸引し、液体吸入口74、及び吸引用チューブ75、76を介して廃液タンク78に排出する。本実施形態においては、液体吸引ユニット70と制御部100とで液体吸引手段を構成する。
【0059】
次に、図7を参照しつつ、制御部100についてより詳細に説明する。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御プログラムは、ROMに記憶されている。そして、この制御プログラムがCPUで実行されることにより、図7に示す制御部100を構成する各機能部が実現される。制御部100は、I/Fを介して、外部装置(プリンタ1に接続されたPC(Personal Computer)等)とのデータ送受信等を行う。
【0060】
図7に示すように、制御部100は、プリンタ1全体を制御するものであり、モード変更部131、回転体回転制御部132、回転体昇降制御部133、印刷制御部134、循環ポンプ制御部135、吸引ポンプ制御部136、強制吐出制御部137、ワイプ制御部138、及びプリンタ1の動作モードが記憶される動作モード記憶部139を有している。
【0061】
モード変更部131は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを変更する。具体的には、外部装置から印刷要求を受け付けた場合には、プリンタ1の動作モードを記録モードに変更する。また、モード変更部131は、印刷要求に伴う画像記録が完了した場合、動作モードを記録待機モードに変更する。また、印刷要求に伴う画像記録が完了した後、所定時間経過するまで印刷要求を受け付けなかった場合、動作モードをメンテナンスモードに変更する。
【0062】
回転体回転制御部132は、モード変更部131が、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録待機モードからメンテナンスモードに変更した際に、回転体58を第1回転状態から第2回転状態へと切り替える。また、回転体回転制御部132は、モード変更部131が、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードをメンテナンスモードから記録モードに変更した際には、回転体58を第2回転状態から第1回転状態へと切り替える
【0063】
回転体昇降制御部133は、回転体昇降機構56を制御することで、回転体58を昇降させる。具体的には、モード変更部131が、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録待機モードからメンテナンスモードに変更した際に、凹状部材52が離隔位置(図6(b)参照)から当接位置(図6(a)参照))まで上昇するように、回転体58を上昇させる。また、モード変更部131が、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードをメンテナンスモードから記録モードに変更した際に、凹状部材52を当接位置から離隔位置まで下降するように、回転体58を下降させる。
【0064】
印刷制御部134は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードが記録モードであるときに、外部装置から受け付けた印刷要求に係る印刷データ(ヘッド10からのインクの吐出データ)に基づいて、用紙Pに対してインクが吐出されるように、ヘッド10、及び搬送機構33を制御して、画像記録を行う。
【0065】
循環ポンプ制御部135は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードがメンテナンスモードであるときに、吐出空間S1内の空気が加湿されるように、循環ポンプ63の駆動を制御して、加湿メンテナンスを行う。
【0066】
吸引ポンプ制御部136は、循環ポンプ制御部135が循環ポンプ63を駆動させているとき(加湿メンテナンス中)等において、対向面80の被吐出領域81に付着したインクが吸引されるように、吸引ポンプ77を駆動して、液体吸引メンテナンスを行う。
【0067】
強制吐出制御部137は、モード変更部131が、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードをメンテナンスモードから記録モードに変更するとき等において、ヘッド10から対向面80の被吐出領域81に向けてインクをパージするように、パージ機構8を制御して、強制吐出メンテナンスを行う。
【0068】
ワイプ制御部138は、強制吐出制御部137による強制吐出メンテナンスが終了したときに、吐出面10a上の異物が払拭されるようにワイパ9を制御する。なお、ワイパ9は、ゴム等の弾性体からなり、副走査方向に延在する板状部材である。ワイプ制御部138は、ワイパ9を吐出面10aに接触しつつ主走査方向に移動させることで、吐出面10a上の異物(インク等)を払拭する。
【0069】
動作モード記憶部139には、記録モード、記録待機モード、及びメンテナンスモードのうちの何れかが記憶されている。
【0070】
次に、図8を参照し、加湿メンテナンス及び液体吸引メンテナンスに係るプリンタ1の一連の動作フローについて説明する。なお、この図8の動作フローの開始時における、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードは記録待機モードである。
【0071】
まず、モード変更部131が、印刷制御部134による画像記録が完了した時から所定時間経過したか否かを判断する(S1)。所定時間経過していないと判断した場合(S1:NO)には、ステップS1の処理に戻る。なお、所定時間経過する前に外部装置から印刷要求を受け付けた際には、モード変更部131は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録モードに変更し、印刷制御部134が印刷要求に伴う画像記録を行う。
【0072】
一方、所定時間経過したと判定した場合(S1:YES)には、モード変更部131は動作モード記憶部139に記憶されている動作モードをメンテナンスモードに変更する(S2)。次に、回転体回転制御部132は、回転体58が第1回転状態から第2回転状態へと移行するように、回転体58を回転させる(S3)。これにより、対向部材53の対向面80が吐出面10aと対向することになる。
【0073】
次に、回転体昇降制御部133が、回転体昇降機構56を制御して回転体58を上昇させることにより、凹状部材52を離隔位置から当接位置へと上昇させる(S4)。これにより、凹状部材52の環状部材54の先端54aが吐出面10aと当接されるので、吐出面10aと対向する吐出空間S1は、外部空間S2から封止されることになる。
【0074】
次に、吸引ポンプ制御部136が、対向部材53の被吐出領域81に付着したインクが廃液タンク78に排出されるように、吸引ポンプ77を駆動して、液体吸引メンテナンスを行う(S5)。これにより、後のステップS6の処理の加湿メンテナンスのときには、被吐出領域81に付着したインクは除去清掃されて存在を少なくされているので、加湿メンテナンス時の空気循環に伴い、インクが空気排出口30や空気導入口31へ流出して、これら空気排出口30や空気導入口31、及び循環流路(チューブ65〜67)が閉塞することを抑制することができる。
【0075】
次に、循環ポンプ制御部135が、吐出空間S1とタンク64との間で空気循環が生じるように、循環ポンプ63を駆動して、加湿メンテナンス行う(S6)。具体的には、循環ポンプ63が駆動されることにより、空気排出口30から吐出空間S1内の空気を回収する。このとき、空気排出口30から回収された空気は、チューブ65内の空間を通って循環ポンプ63に至り、さらにチューブ66内の空間を通ってタンク64に至る。当該空気は、タンク64の下部空間(即ち水面下)に供給される。そして、タンク64内の水により加湿された空気は、タンク64の上部空間から排出され、チューブ67内の空間を通って、空気導入口31から吐出空間S1内に供給される。このようにして吐出空間S1内に加湿空気が供給されることにより、吐出口14a近傍のインクの蒸発が抑制され、吐出口14aの目詰まりを防止することができる。さらに、吐出口14a近傍のインクが増粘していても、加湿空気より水分が供給されることによりインクの増粘が解消(回復)する。
【0076】
また、ステップS6の処理では、吸引ポンプ制御部136が、対向部材53の被吐出領域81に付着したインクが廃液タンク78に排出されるように、吸引ポンプ77を駆動して、液体吸引メンテナンスを行っている。これにより、加湿メンテナンス時の空気循環に伴い、被吐出領域81に付着した液体が空気排出口30や空気導入口31へ流出することをさらに抑制することができる。なお、加湿メンテナンスを行っている際の液体吸引メンテナンスにおいては、吸引ポンプ77の吸引力は、加湿ユニット60による上記空気循環を阻害することがない程度に設定されている。なお、液体吸引メンテナンスにより吐出空間S1内の圧力が過剰に下がるような場合は、タンク64の上部空間を外部空間S2(大気)と連通するなどして、吐出空間S1内の圧力が過剰に下がらないようにしてもよい。
【0077】
次に、モード変更部131が、外部装置から印刷要求を受け付けたか否かを判断する(S7)。印刷要求を受け付けていないと判断した場合(S7:NO)には、ステップS7の処理に戻る。一方、印刷要求を受け付けたと判断した場合(S7:YES)には、モード変更部131は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録モードに変更する(S8)。
【0078】
次に、循環ポンプ制御部135が循環ポンプ63の駆動を停止することで加湿メンテナンスを終了し、且つ吸引ポンプ制御部136が吸引ポンプ77の駆動を停止することで液体吸引メンテナンスを終了する(S9)。
【0079】
次に、強制吐出制御部137が、パージ機構8を制御することにより、ヘッド10から対向面80の被吐出領域81に向けてインクをパージして、強制吐出メンテナンスを行う(S10)。これにより、被吐出領域81にはインクが付着することになる。なお、ステップS11において、強制吐出制御部137はパージをする代わりに、ヘッド10を制御することによりフラッシングを行うようにされていてもよい。
【0080】
次に、吸引ポンプ制御部136が、対向部材53の被吐出領域81に付着したインクが廃液タンク78に排出されるように、吸引ポンプ77を駆動して、液体吸引メンテナンスを行う(S11)。これにより、強制吐出メンテナンスにより被吐出領域81に付着したインクは、すぐに除去清掃されるので、インクが乾燥して被吐出領域81に固着残留することを防ぐことができる。つまり、加湿メンテナンスの際に、被吐出領域81に固着残留したインクが乾燥材として機能することを抑制することができる。また、次回行われる加湿メンテナンスの際には、被吐出領域81は存在するインクが少なくされた状態なので、加湿メンテナンス時の空気循環に伴い、インクが空気排出口30や空気導入口31へ流出することをさらに抑制することができる。
【0081】
次に、回転体昇降制御部133は、回転体昇降機構56を制御して回転体58を下降させることにより、凹状部材52を当接位置から離隔位置へと下降させる(S12)。これにより、凹状部材52の環状部材54の先端54aと、吐出面10aとが離隔されるので、吐出面10aと対向する吐出空間S1は、外部空間S2に対して封止されなくなる。なお、このS12の処理では、凹状部材52を当接位置から離隔位置へと下降させた後において、ワイプ制御部138がワイパ9を制御して吐出面10a上の異物を払拭する処理も行われる。
【0082】
次に、回転体回転制御部132は、回転体58が第2回転位置状態から第1回転位置状態へと移行するように、回転体58を回転させる(S13)。これにより、プラテン51の支持面51aが吐出面10aと対向することになる。
【0083】
そして、印刷制御部134が、印刷要求に係る印刷データに基づいて、ヘッド10及び搬送機構33を制御して、用紙Pへの画像記録を行う(S14)。次に、モード変更部131が、印刷要求に伴う画像記録の完了時に、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録待機モードに変更し(S15)、ステップS1の処理に戻る。以上、プリンタ1の動作フローについて説明した。
【0084】
以上に述べたように、本実施形態では、被吐出領域81と空気排出口30との間、及び被吐出領域81と空気導入口31との間にそれぞれ突設された規制板59(環状包囲手段)、及び、被吐出領域81に設けられた凹部81aそれぞれが抑制手段を構成している。即ち、本実施形態において、プリンタ1は2つの抑制手段が設けられている。このように、本実施形態では、被吐出領域81、並びに空気排出口30及び空気導入口31それぞれと被吐出領域81との間に抑制手段を設けることにより、被吐出領域81に付着したインクが空気排出口30や空気導入口31へ流出するのを抑制することができる。その結果、インクにより空気排出口30、空気導入口31、及び循環流路(チューブ65〜67)が閉塞されること、並びにインクが循環ポンプ63やタンク64(加湿手段)へ流出して、これら循環ポンプ63やタンク64の機能低下が生じることを抑制することができるので、プリンタ1の加湿機能の低下を抑制することができる。
【0085】
また、加湿メンテナンス前(加湿手段が吐出空間S1内の空気を空気排出口30から排出する前)や、加湿メンテナンス中(加湿手段が吐出空間S1内の空気を空気排出口30から排出しているとき)に制御部100の吸引ポンプ77の駆動制御により、被吐出領域81に形成された液体吸入口74を介して、被吐出領域81に付着されたインクは吐出空間S1外へと吸引されるので、被吐出領域81に付着したインクが空気排出口30や空気導入口31へ流出するのをさらに抑制することができる。
【0086】
続いて、本発明の第2実施形態によるプリンタについて説明する。第2実施形態に係るプリンタは、キャップ手段の構成が第1実施形態と異なる。具体的には、第1実施形態では、キャップ手段は凹状部材52を昇降させることで封止状態と非封止状態とを取り得るようにされていたが、第2実施形態においてはヘッドホルダ3に設けられた環状移動体500の上下動により取り得るようにされている点で異なる。また、被吐出領域81にキャップチップ90が設けられている点でも異なる。尚、以下の説明においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0087】
本実施形態においては、図9に示すように、キャップ固定部材57には、凹状部材52の代りに、凹状部材52から環状部材54を省いた対向部材53のみが固定されている。また、支持・キャップユニット50は回転体昇降機構56の代わりに、上述したように環状移動体500を含む。
【0088】
また、対向部材53には、第1実施形態では規制板59が設けられていたが、第2実施形態においては、規制板59の代わりに被吐出領域81を囲む環状の環状規制板85が突設されている。また、対向部材53の被吐出領域81には、吸引ポンプ77によるインクの吸引を効率良く行うために板状のキャップチップ90が設けられている。なお、本実施形態においては、対向部材53は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有している。
【0089】
キャップチップ90は、対向面80の被吐出領域81に形成された複数の突起91状に固定されており、キャップチップ90と対向面80との間に空間93が形成されている。また、キャップチップ90は環状規制板85の内周側面との間において、毛細管現象が生じる程度の隙間94が形成されるように、突起91上に固定されている。
【0090】
このキャップチップ90の上面90aは、吐出面10aから排出されたインクが着弾(付着)する被吐出領域である。また、キャップチップ90の上面90aには、図10に示すように、上面90aの副走査方向に関する一端から他端まで副走査方向に沿って延在した複数の凸部(凸条)96が、主走査方向に沿って等間隔に配列されている。これにより、吸引ポンプ77によりインクの吸引を行うときに、キャップチップ90の上面90aに排出されたインクが、表面張力により凸部96の側面と上面90aとがなす角部に集められ、その集められたインクが毛細管現象によって隙間94に引き寄せられる。そして、隙間94に引き寄せられたインクが、空間93に流れ込むことになる。そのため、キャップチップ90の上面90aにインクが滞留するのを抑制することができると共に、吸引ポンプ77による吸引力を高く維持した状態で、被吐出領域81及びキャップチップ90に付着したインクを効率良く吸引することができる。
【0091】
また、キャップチップ90の上面90aの副走査方向の中央には、凸部96の延在を分断する複数の分断部97が形成されている。また、凸部96の頂部はアール形状を有している。これにより、インクが凸部96上に残存しにくくなる。なお、凸部96の頂部は、その角部が面取りされることによって、テーパ形状を有していてもよい。これにおいても、アール形状のときと同様に、インクが凸部96上に残存しにくくなる。
【0092】
また、キャップチップ90には、図10に示すように、上下面を結ぶ複数の孔98が形成されている。これにより、複数の孔98からもインクを空間93に流すことが可能となる。また、これら複数の孔98は、主走査方向に沿って配列されており、上面90aにおける開口が分断部97に配置されている。これら孔98の開口は、複数の分断部97のうち、平面視において液体吸入口74と重なる2つの分断部97を除く分断部97に配置されている。また、孔98は、液体吸入口74よりもその開口面積が小さく、液体吸入口74と鉛直方向に重なっていない。これにより、吸引ポンプ77による液体吸入口74からの吸引力が低下するのを抑制することが可能となる。
【0093】
また、キャップチップ90の上面90aの副走査方向の一端とキャップチップ90の側面との接続部分が、アール形状を有している。なお、図示していないが上面90aの他端とキャップチップ90の側面と接続部分にも同様のアール形状が形成されている。これにより、インクがキャップチップ90と環状規制板85の内周側面との間の隙間94に流れ込みやすくなる。これにおいても、上述と同様に、接続部分の角部が面取りされることによって、テーパ形状を有していてもよく、同様の効果を得ることができる。
【0094】
次にヘッドホルダ3に取り付けられた環状移動体500について説明する。環状移動体500は、弾性部材からなり、平面視でヘッド10の吐出面10aを囲む環状に形成されている。環状移動体500の下端には、断面視逆三角形状の突出部501が形成されている。
【0095】
環状移動体500は、ギア502の駆動により上下に移動可能である。当該移動によって、環状移動体500は、突出部501が吐出面10aよりも上方に位置する上昇位置と、突出部501が吐出面10aよりも下方に位置する下降位置(図9参照)とを取り得る。制御部100は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードがメンテナンスモードである場合には、環状移動体500が下降位置を取り、それ以外の時には環状移動体500が上昇位置を取るように、ギア502の駆動を制御する。
【0096】
環状移動体500が下降位置をとるときには、図9に示すように、対向面80の外周領域82に突出部501の先端501aが当接することによって吐出空間S1が外部空間S2から封止される。また環状移動体500が上昇位置をとるときには、対向面80の外周領域82から、突出部501の先端501aが離隔されており吐出空間S1が外部空間S2に対して封止されない。本実施形態においては、環状移動体500、ギア502、対向部材53、及び制御部100でキャップ手段が構成されている。
【0097】
以上に述べたように、本実施形態では、被吐出領域81と空気排出口30との間、及び被吐出領域81と空気導入口31との間に設けられた環状規制板85、及び、対向面80における被吐出領域81に設けられた凹部81aそれぞれが抑制手段を構成している。本実施形態では、これらの抑制手段により、被吐出領域81に付着したインクが空気排出口30や空気導入口31へ流出するのを抑制することができる。また、被吐出領域81にキャップチップ90が設けられているため、被吐出領域81及びキャップチップ90の上面に付着したインクを、液体吸引手段により効率良く吸引することができるので、インクが空気排出口30や空気導入口31に流出することをさらに抑制することができる。
【0098】
続いて、図11を参照して本発明の第3実施形態によるプリンタについて説明する。第3実施形態によるプリンタは、第2実施形態によるプリンタと以下の点で主に異なる。まず、第2実施形態では被吐出領域81を囲むように環状規制板85が突設されていたが、この第3実施形態では対向部材53に環状凹部86が設けられている点で第2実施形態と異なる。また、第3実施形態では、プリンタ1は、副走査方向に延在するワイパ91が設けられており、移動機構(図示せず)によって、主走査方向に移動可能となっている。このワイパ91は、液体吸引メンテナンスの際に、ワイプ制御部138の制御により、被吐出領域81に接触しつつ主走査方向に移動することで、被吐出領域81に付着したインクを環状凹部86に流し出すものである。また、第3実施形態では、液体吸入口74は被吐出領域81ではなく環状凹部86の底面86bに形成されている。またさらに、第3実施形態では、被吐出領域81に凹部81a及びキャップチップ90は設けられていない。
【0099】
本実施形態では、図11に示すように、対向部材53には、被吐出領域81を囲むように環状の環状凹部86が設けられている。液体吸引メンテナンスの際には、被吐出領域81に付着したインクは、ワイパ91の主走査方向の移動により、この環状凹部86における被吐出領域81側の内側面86aを介して環状凹部86の底面86bに流れ出す。
【0100】
環状凹部86の主走査方向両端の底面86bには、液体吸入口74がそれぞれ形成されており、底面86bに流れ出してきたインクは、この液体吸入口74を介して液体吸引ユニット70により吐出空間S1外へと吸引される。本実施形態においては、液体吸引ユニット70、ワイパ91及び制御部100で液体除去手段を構成している。
【0101】
また、環状凹部86における主走査方向両端の、対向部材53外周縁側の内側面86cには、空気排出口30及び空気導入口31がそれぞれ形成されている。なお、この空気排出口30及び空気導入口31は、環状凹部86の底面86bに流れ出したインクが付着しない高さ位置(底面86bからの高さ位置)に形成されている。
【0102】
また、ワイパ91の移動速度、及び底面86bの幅d1(環状凹部86の主走査方向に関する内側面86a、及び86c間の距離)は、ワイパ91により被吐出領域81に付着したインクを環状凹部86に流し出す際に、空気排出口30及び空気導入口31に直接インクが流出(付着)することがないように設定されている。
【0103】
以上、本実施形態では、環状凹部86及び上記液体除去手段により、被吐出領域81に付着したインクが空気排出口30や空気導入口31へ流出するのを抑制することができる。また、液体吸引メンテナンスの際には、ワイプ制御部138によるワイパ91の制御により被吐出領域81に存在するインクを少なくすることができ、且つ、液体吸引ユニット70により環状凹部86の底面86bに流れ出したインクを吐出空間S1外へと吸引することができる。従って、加湿メンテナンスの際に、被吐出領域81に付着したインクが空気排出口30や空気導入口31へ流出するのを抑制することができる。
【0104】
なお、本実施形態においては、空気排出口30及び空気導入口31は環状凹部86の内側面86cに形成されていたが、対向面80の外周領域82や外周領域82bに形成されていてもよい。また、本実施形態では、ワイパ91により被吐出領域81に付着したインクを環状凹部86に流し出していたが、その他の手段により被吐出領域81に付着したインクを環状凹部86に流し出してもよい。
【0105】
続いて、図12及び図13を参照して、本発明の第4実施形態によるプリンタについて説明する。第4実施形態に係るプリンタは、回転体58を含む支持・キャップユニット50の代わりに、回転体を含まない支持、キャップユニット550を備えている点で、第1実施形態〜第3実施形態と主に異なる。即ち第1実施形態〜第3実施形態においては、キャップ手段の構成要素である対向部材53は、記録モード時においては吐出面10aと対向せず、メンテナンスモード時においては吐出面10aと対向するようにされていたが、第4実施形態においてキャップ手段の構成要素である対向部材530は、記録モード及びメンテナンスモードの両モードとも吐出面10aと対向する点で異なる。また、第4実施形態では被吐出領域には、抑制手段として凹部81aの代わりに吸収体95が設けられている点でも異なる。なお、第4実施形態では液体吸引ユニット70を備えていない。また、以下の説明においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0106】
本実施形態では、図12及び図13に示すように、キャップユニット550は、対向部材530、対向部材530を鉛直方向において固定する固定部材531、及び固定部材531に取り付けられた環状移動体532を含む。
【0107】
対向部材530は、主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有しており、その上面は吐出面10aと対向する対向面800である。対向面800は吐出口14aから排出(強制吐出)されたインクが付着(着弾)する被吐出領域801と、この被吐出領域801を囲む外周領域802とに分けられる。この外周領域802は、吐出口14aから排出されたインクが付着(着弾)しない領域であり、主走査方向において被吐出領域801を挟む一対の外周領域802a,802bと、副走査方向において被吐出領域81を挟む一対の外周領域802c,802dとから主になる。
【0108】
図12に示すように、対向面800の外周領域802aには空気排出口30が開口されており、外周領域802bには空気導入口31が開口されている。また、対向面800の外周領域802には、この空気排出口30、空気導入口31、及び被吐出領域801を平面視において囲むように環状に開口した環状開口部805が形成されている。
【0109】
対向面の外周領域802aにおける空気排出口30と被吐出領域801とで挟まれる位置、及び外周領域802bにおける空気導入口31と被吐出領域801とで挟まれる位置には、規制板590が副走査方向に沿ってそれぞれ突設されている。なお、この規制板590の副走査方向に関する両端位置は、図12に示すように、環状開口部805の内側周縁の位置である。またさらに、対向部材530の対向面800には、図13に示すように、対向面800の副走査方向に関する一端から他端まで副走査方向に沿って延在した多数のリブ535が、主走査方向に関して一対の規制板590で挟まれている領域内において主走査方向に沿って等間隔に配列されている。なお、リブ535は、対向面800において環状開口部805が形成されている位置には、リブ535の延在を分断するスリット535aが形成されている。この多数のリブ535の上面は用紙Pを支持する支持面である。また、リブ535の上面はアール形状を有している。これにより、インクがリブ535上に残存しにくくなる。
【0110】
また、被吐出領域801における各隣り合うリブ535で画定される領域にはインク吸収体95が設けられている。インク吸収体95は、インクを保持可能な多孔質体(例えば、スポンジやウレタンや不織布など)からなる。従って、被吐出領域801に対して吐出口14aから排出されたインクは、このインク吸収体95により保持されることになるので、被吐出領域801に付着されたインクが空気排出口30や空気導入口31に流出することを抑制することができる。
【0111】
次に、固定部材531に取り付けられた環状移動体532について説明する。環状移動体532は、弾性部材からなり、平面視で対向面800に開口された環状開口部805に摺動可能に挿通する環状部材である。環状移動体532の上端には、断面視逆三角形状の突出部533が形成されている。
【0112】
環状移動体532は、ギア534の駆動により上下に移動可能である。当該移動によって、環状移動体532は、突出部533の先端533aが吐出面10aに当接する上昇位置と、突出部533の先端533aが対向面800よりも下方に位置する下降位置(図12参照)とを取り得る。制御部100は、動作モード記憶部139に記憶されている動作モードがメンテナンスモードである場合には、環状移動体532が上昇位置を取り、それ以外の時には環状移動体532が下降位置を取るように、ギア534の駆動を制御する。
【0113】
環状移動体532が上昇位置をとるときには、吐出面10aに突出部533の先端533aが当接することによって吐出空間S1が外部空間S2から封止される。なお、環状移動体532が上昇位置をとるときには、この環状移動体532の内側面と規制板590の端部は当接されている。本実施形態においては、環状移動体532と規制板590とで、環状包囲手段を構成している。
【0114】
また、環状移動体532が下降位置をとるときには、対向面800から、突出部533の先端533aが離隔されており吐出空間S1が外部空間S2に対して封止されない。本実施形態においては、対向部材530、環状移動体532、及び制御部100でキャップ手段を構成している。
【0115】
以上に述べたように、本実施形態では、被吐出領域81と空気排出口30との間、及び被吐出領域81と空気導入口31との間に設けられた規制板590(環状包囲手段)、及び被吐出領域81に設けられたインク吸収体95それぞれが抑制手段を構成している。これらの抑制手段により、被吐出領域81に付着したインクが空気排出口30や空気導入口31へ流出するのを抑制することができる。
【0116】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の各実施形態では、加湿ユニット60として、循環ポンプ63及びタンク64を含むものを例示したが、循環流路内の空気を加湿することができる限りは、その他様々な手段を用いてよい。例えば、循環ポンプ63を省略し、タンク64のみを用いて加湿を行ってもよい。また、ヒータ等の加熱手段をさらに用いたり、超音波式加湿手段を用いたり、循環流路内に、水を含ませたスポンジ等の多孔質部材や布を配置したりすることで、加湿を行ってもよい。
【0117】
また、上述の各実施形態では、加湿手段は、空気排出口30をから排出された吐出空間S1内の空気を、循環流路(チューブ65〜67)を介して回収して再利用するようにされていたが、再利用せずに外部空間S2に排出するようにされていてもよい。
【0118】
また、上述の各実施形態では、対向部材53の対向面80に空気排出口30及び空気導入口31が開口している構成であるが、この構成に限定されるものではない。例えば、対向部材53の環状部材54に空気排出口30又は空気導入口31が開口している構成であってもよい。なお、対向部材53の環状部材54に空気排出口30又は空気導入口31が開口している構成でも、対向部材53の対向面80に付着したインク等の液体が空気排出口30又は空気導入口31に流入する問題は生じ得る。
【0119】
また、抑制手段は、上述の実施の形態に限られるものではなく、被吐出領域81に排出された液体が空気排出口30や空気導入口31に流出するのを抑制するものであれば、その他様々な手段を用いてもよい。また、プリンタ1が設ける抑制手段の数は特に限定されるものではなく、1つの抑制手段のみ設けていてもよいし、任意の3つ以上の抑制手段を組み合わせて設けていてもよい。
【0120】
また、上述の実施形態では、液体除去手段は、液体吸入口74を介して、被吐出領域81に付着したインクを吐出空間外へと吸引する液体吸引手段等であったが、被吐出領域81に付着したインクを除去することができるものであれば、その他様々な手段を用いてよい。
【0121】
また、上述の実施形態では、吐出面10aと対向する吐出空間S1を、外部空間S2から封止した状態で、吸引ポンプ制御部136が、対向部材53の被吐出領域81に付着したインクが廃液タンク78に排出されるように、吸引ポンプ77を駆動して、液体吸引メンテナンスを行っているが、吐出面10aと対向する吐出空間S1を、外部空間S2から封止しない状態で、液体吸引メンテナンスを行ってもよい。
【0122】
なお、上述の第1〜第3実施形態では、モード変更部131が動作モード記憶部139に記憶されている動作モードを記録モードからメンテナンスモードに変更した際、回転体回転制御部132が、回転体58が第1回転状態から第2回転状態へと移行するように、回転体58を回転させている構成であるが、回転体58の回転中に、吐出面10aとプラテン51又は凹状部材52が衝突しないように、回転体58の回転前に、回転体昇降制御部133が、回転体昇降機構56を制御して回転体58を必要な分、下降させてもよい。
【0123】
また、上述の第1〜第3実施形態において、回転体58を含む支持・キャップユニット50ではなく、記録モードからメンテナンスモードに変更した際、プラテン51を下降させ、主走査方向に待機させていた凹状部材52をプラテン51と吐出面10aの間に移動させ、その後、凹状部材52の環状部材54の先端54aを吐出面10aと当接させる構成としてもよい。
なお、上述の第1〜第3実施形態において、回転体58が回転したとしても、加湿ユニット60における循環ポンプ63やタンク64、並びに液体吸引ユニット70における吸引ポンプ77や廃液タンク78の天地方向は、逆転しないような構成になっている。
【0124】
また。本発明は、モノクロプリンタのみならず、カラープリンタにも適用可能である。さらに本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。ヘッドは、インク以外の任意の液体を吐出してよい。また、記録装置に含まれるヘッドの数は1以上であればよい。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。
【符号の説明】
【0125】
1 インクジェットプリンタ(液体吐出装置)
30 空気排出口
31 空気導入口
52 凹状部材
53 対向部材
81 被吐出領域
59 規制板
60 加湿ユニット
70 液体吸引ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する液体を吐出するための吐出口が形成された吐出面を有する液体吐出ヘッドと、
前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から封止する封止状態と、前記吐出空間を外部空間に対して封止しない非封止状態とを取り得るキャップ手段と、
前記キャップ手段に開口された空気導入口及び空気排出口と、
空気を加湿して前記空気導入口から前記吐出空間内に供給し、且つ、前記吐出空間内の空気を前記空気排出口から前記吐出空間外へ排出する加湿手段と
を備えた液体吐出装置であって、
前記空気排出口は、前記キャップ手段が前記封止状態のときに、前記吐出口から排出される液体が付着する被吐出領域以外の位置に開口され、
前記被吐出領域又は前記被吐出領域と前記空気排出口との間に、前記被吐出領域に排出された液体が前記空気排出口へ流出するのを抑制する抑制手段が設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記空気導入口及び前記空気排出口に一端及び他端が連通された循環流路を更に備えており、
前記加湿手段が前記循環流路に配置され、前記加湿手段は前記空気排出口から前記循環流路を介して回収した前記吐出空間内の空気を加湿し、前記循環流路を介して当該加湿された空気を前記空気導入口から前記吐出空間内に供給することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記空気導入口は、前記被吐出領域以外の位置に開口されており、
前記抑制手段により、前記被吐出領域に排出された液体が前記空気導入口へ流出するのが抑制されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記キャップ手段は前記吐出面と対向する対向部材を有しており、
前記抑制手段は、前記被吐出領域を囲むように前記対向部材に設けられた環状包囲手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記キャップ手段は前記吐出面と対向する対向部材を有しており、
前記キャップ手段は、前記対向部材、及び当該対向部材に支持され、前記封止状態のときに、先端が前記吐出面と当接される環状部材が一体として形成された凹状部材を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記抑制手段は、前記被吐出領域に設けられ、当該被吐出領域に付着した液体を保持可能なインク吸収体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記抑制手段は、前記被吐出領域に付着した液体を除去する液体除去手段を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体除去手段は、前記被吐出領域に付着した液体を、前記被吐出領域に形成された前記液体吸入口を介して前記吐出空間外へと吸引する液体吸引手段であることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記液体吸引手段は、前記加湿手段が前記吐出空間内の空気を前記吐出空間外へ排出する前に、前記被吐出領域に付着した液体を、前記液体吸引口を介して前記吐出空間外へ吸引することを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体吸引手段は、前記加湿手段が前記吐出空間内の空気を前記吐出空間外へ排出しているときに、前記被吐出領域に付着した液体を、前記液体吸引口を介して前記吐出空間外へ吸引することを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記空気導入口及び前記空気排出口は、前記キャップ手段が前記封止状態のときに、前記吐出口と対向する方向から見て、この空気導入口及び空気排出口とで前記吐出口を挟む位置に形成されていることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−139904(P2012−139904A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293917(P2010−293917)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】