説明

液体吐出装置

【課題】状況に応じて貯留部の液体だけでなく循環路の液体も排出できるようにすると共に吐出ヘッドからの液体の吐出をより適正に行なえるようにする。
【解決手段】循環路60の往路口69や復路口73が印刷ヘッド24より低い位置となり、往路口69や排出路82の排出口84が復路口73より低い位置となるようにする。そして、印刷ヘッド24からインク滴を吐出する場合には、開閉弁78を開成すると共に開閉弁86を閉成し、供給ポンプ58によってメインタンク52からサブタンク53にインクを圧送すると共に循環ポンプ76によって往路口69側から印刷ヘッド24側にインクを圧送する。また、インクユニットの交換前にサブタンク53や循環路60のインクの排出が指示された場合には、開閉弁78と開閉弁86とを共に開成し、循環ポンプ76によって往路口69側から分岐点83側にインクを圧送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体吐出装置としては、インク循環用の流入口および排出口を有しインクを吐出する記録ヘッドと、インクを貯留するインクタンクと、インクタンクから供給されるインクを一時的に貯留するサブタンクと、サブタンクと記録ヘッドの流入口とを接続する供給路と記録ヘッドの流出口とサブタンクとを接続する戻し路とを含むインク循環路と、供給路に設けられたポンプと、戻し路に設けられたバルブと、記録ヘッドを非記録時にキャッピングすると共に回復時に吐出されるインクを受ける回復桶と、回復桶のインクをサブタンクに戻すためのインク回収路と、インク循環路の戻し路に接続された排出路と、排出路に設けられた排出バルブと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、インク排出処理を行なうときには、排出バルブを開状態にすることにより、サブタンク内のインクを排出路を経由して廃液容器に排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−98475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした液体吐出装置では、メインタンクやサブタンクが交換されるときなど、例えば、メインタンクやサブタンクで用いるインクが現在とは異なる色や種類のインクに変更されるときなどに、サブタンク内のインクだけでなく、循環路のインクも排出するよう望まれる場合がある。また、こうした液体吐出装置では、記録ヘッドからインクを吐出する際に、その吐出をより適正に行なえるようにすることが課題の一つとされている。
【0005】
本発明の液体吐出装置は、状況に応じて貯留部の液体だけでなく循環路の液体も排出できるようにすることや吐出ヘッドからの液体の吐出をより適正に行なえるようにすることを主目的とする。
【0006】
本発明の液体吐出装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、
吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置であって、
液体が貯留されている貯留部と、
前記吐出ヘッドを含んで構成され、一方の開口端部である往路口が前記吐出ヘッドより低く且つ前記貯留部内に配置されると共に他方の開口端部である復路口が前記吐出ヘッドより低く且つ前記貯留部内で前記往路口より高い位置に配置された循環路と、
前記循環路における前記吐出ヘッドより前記往路口側に設けられて液体を圧送可能な圧送手段と、
前記循環路における前記吐出ヘッドより前記復路口側で該循環路に連通されて開口端部である排出口が前記復路口より低い位置に配置された排出路と、
前記排出路に設けられて開閉可能な開閉弁と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の液体吐出装置では、吐出ヘッドを含んで構成され一方の開口端部である往路口が吐出ヘッドより低く且つ貯留部内に配置されると共に他方の開口端部である復路口が吐出ヘッドより低く且つ貯留部内で往路口より高い位置に配置された循環路と、循環路における吐出ヘッドより往路口側に設けられて液体を圧送可能な圧送手段と、循環路における吐出ヘッドより復路口側で循環路に連通されて開口端部である排出口が復路口より低い位置に配置された排出路と、排出路に設けられて開閉可能な開閉弁と、を備える。したがって、復路口や排出口が吐出ヘッドより低く且つ排出口が復路口より低い位置に配置されているから、開閉弁が開成している場合には、サイフォンの原理により、液体が復路口側から排出路への連通位置(以下、分岐点という)側に流れ、排出路を経由して排出口から排出される。また、貯留部や循環路の液体の排出が指示されたときなどに、開閉弁が開成された状態で往路口側から吐出ヘッド側に液体が圧送されるよう圧送手段と開閉弁とを制御することにより、液体が往路口側から分岐点側に圧送され、排出路を経由して排出口から排出される。したがって、圧送手段によって液体が往路口側から分岐点側に圧送されると共にサイフォンの原理によって液体が復路口側から分岐点側に流れることにより、貯留部の液体や循環路の液体を排出口から排出することができる。また、吐出ヘッドから液体を吐出するときには、貯留部の液体が復路口より低い位置に配置された往路口から循環路に入って印刷ヘッドを経由して復路口から貯留部に戻るよう圧送手段を制御することにより、往路口から循環路に気泡(気体)が混入するのを抑制することができ、気泡が印刷ヘッドに到達するのを抑制することができる。これにより、吐出ヘッドからの液体の吐出をより適正に行なうことができる。ここで、「圧送手段」は、ギヤポンプである、ものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明の液体吐出装置において、前記排出路は、前記循環路より大きな径に形成されてなる、ものとすることもできる。こうすれば、上述の方法によって貯留部や循環路の液体を排出口から排出する際に、圧送手段によって往路口側から排出路への連通位置(分岐点)側に圧送される液体とサイフォンの原理によって復路口側から分岐点側に流れる液体とが分岐点で合流してよりスムーズに排出路を経由して排出口から排出されるようにすることができる。
【0010】
また、本発明の液体吐出装置において、前記貯留部の交換前または交換後に前記貯留部および前記循環路の液体の排出が指示されたとき、前記開閉弁が開成された状態で前記往路口側から前記吐出ヘッド側に液体が圧送されるよう前記圧送手段と前記開閉弁とを制御する排出用制御を実行する排出用制御手段、を備える、ものとすることもできる。こうすれば、上述したように、貯留部や循環路の液体を排出口から排出することができる。この態様の本発明の液体吐出装置において、前記排出用制御手段は、前記復路口側から前記排出路との連通位置(分岐点)に流れる液体の流量と前記往路口側から前記連通位置に圧送される液体の流量とが等しくなるよう前記圧送手段を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、復路口側から分岐点に流れる液体と往路口側から分岐点に圧送される液体とがよりスムーズに排出口から排出されるようにすることができる。また、この態様の本発明の液体吐出装置において、前記貯留部を加圧する加圧手段を備え、前記排出用制御手段は、前記圧送手段と前記開閉弁との制御に加えて、前記貯留部が加圧されるよう前記加圧手段を制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、復路口から循環路に入って分岐点に流れる液体の流量を多くすることができ、貯留部のインクがより迅速に排出口から排出されるようにすることができる。
【0011】
あるいは、本発明の液体吐出装置において、前記貯留部は、液体を一時的に貯留するサブ貯留部であり、液体が貯留されているメイン貯留部と、一方の開口端部である供給源口が前記メイン貯留部内に配置されると共に他方の開口端部である供給口が前記サブ貯留部内に配置されたタンク間通路と、前記タンク間通路に設けられて液体を圧送可能な第2の圧送手段と、を備える、ものとすることもできる。この構成の場合、開閉弁が開成された状態で往路口側から吐出ヘッド側に液体が圧送されるよう圧送手段と開閉弁とを制御することにより、サブ貯留部や循環路の液体を排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】インク循環システム50の構成の概略を示す構成図。
【図3】排出処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態であるインクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、インク循環システム50の構成の概略を示す構成図である。本実施形態のインクジェットプリンター20は、図1に示すように、駆動モーター32によって紙送りローラー34を駆動してプラテン40上の図中奥側から手前側に記録紙Sを搬送する紙送り機構30と、紙送り機構30によって搬送された記録紙Sに印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構21と、プラテン40の図中右端に形成されて印刷休止時に印刷ヘッド24を覆ってキャッピングするキャッピング装置41と、装置全体をコントロールするコントローラー90と、ユーザーに各種の情報を報知するための表示部98やユーザーが各種の指示を入力する操作部99を有する操作パネル97と、を備える。
【0014】
プリンター機構21は、メカフレーム48の右側に取り付けられたキャリッジモーター42aとメカフレーム48の左側に取り付けられた従動ローラー42bとの間に架設されたキャリッジベルト44をキャリッジモーター42aで駆動することによってガイド46に沿って左右に往復動するキャリッジ22と、キャリッジ22の下部に設けられてインク滴を吐出する印刷ヘッド24と、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)のインクをそれぞれ印刷ヘッド24を経由して循環させるインク循環システム50a〜50d(以下、まとめてインク循環システム50と称することがある)と、を備える。ここで、キャリッジ22の背面には、キャリッジ22の位置を検出するリニア式エンコーダー29が配置されており、このリニア式エンコーダー29を用いてキャリッジ22のポジションが管理可能となっている。また、本実施形態では、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)のインクは、紫外線の照射によって迅速に硬化する紫外線硬化型インクを用いるものとした。
【0015】
印刷ヘッド24は、内蔵する圧電素子に電圧を印加することによって圧電素子を変形させてインクを加圧する方式によって印刷ヘッド24の下面に設けられた多数のノズルから各色のインクを吐出するものである。なお、この印刷ヘッド24は、発熱抵抗体(例えばヒーターなど)に電圧をかけインクを加熱して発生した気泡によりインクを加圧する方式を採用してもよい。また、この印刷ヘッド24には、各色のインク(紫外線硬化型インク)をインク滴として吐出するためのインク滴吐出用ノズルの他に、インクの固化を促進させるために紫外線を照射するための固化促進用ノズルが設けられており、インク吐出用ノズルから吐出されたインク滴に対して固化促進用ノズルから紫外線を照射することにより、インクを迅速に硬化させることができるようにしている。
【0016】
インク循環システム50は、図2に示すように、インクが貯留されているメインタンク52と、インクを一時的に貯留するサブタンク53と、一方の開口端部(以下、供給源口という)55がメインタンク52内に配置されると共に他方の開口端部(以下、供給口という)56がサブタンク53内に配置された供給路54と、供給路54に設けられて液体を圧送可能な供給ポンプ58と、印刷ヘッド24を含んで構成されて一方の開口端部(以下、往路口という)69と他方の開口端部(以下、復路口という)73とが共にサブタンク53内に配置された循環路60と、循環路60における印刷ヘッド24より往路口69側(以下、この部分を往路61aという)に設けられて液体を圧送可能な循環ポンプ76と、循環路60における印刷ヘッド24より復路口73側(以下、この部分を復路61bという)に設けられて開閉可能な開閉弁78と、廃液タンク80と、循環路60における印刷ヘッド24と開閉弁78との間の分岐点83で分岐して開口端部(以下、排出口という)84が廃液タンク80内に配置された排出路82と、排出路82に設けられて開閉可能な開閉弁86と、サブタンク53が大気開放されるようにしたりサブタンク53内を加圧したり可能な圧力調整装置88と、を備える。なお、本実施形態では、紫外線硬化型インクを用いるものとしたから、メインタンク52やサブタンク53,廃液タンク80,供給ポンプ58,循環ポンプ76などは、紫外線非透過材料としてステンレスなどの金属によって形成されるものとし、供給路54や循環路60などは、紫外線非透過材料として着色ポリポロピレンなどによって形成されるものとした。
【0017】
循環路60の往路口69や復路口73,排出路82の排出口84は、印刷ヘッド24や分岐点83より低い位置に配置されている。また、循環路60の往路口69と循環路60の復路口73と供給路54の供給口56とは、高い側から順に、循環路60の復路口73,供給路54の供給口56,循環路60の往路口69となるよう配置されている。さらに、排出路82は、循環路60より大きな径(例えば、断面積が循環路60の1.5倍となる径や2倍となる径など)に形成されている。
【0018】
循環路60は、循環ポンプ76や印刷ヘッド24,開閉弁78を含む中間部62と往路口69を含む往路口部68と復路口73を含む復路口部72とによって構成されており、中間部62の循環ポンプ76側のコネクター63と往路口部68のコネクター70とが接続されると共に中間部62の開閉弁78側のコネクター64と復路口部72のコネクター74とが接続されている。したがって、ユーザーは、図2のコネクター70,74より右側の部分(メインタンク52やサブタンク53,供給路54,供給ポンプ58,循環路60の往路口部68や復路口部72を含む部分、以下、インクユニットという)を交換するときには、往路口部68のコネクター70と中間部62のコネクター63との接続を解除すると共に復路口部72のコネクター74と中間部62のコネクター64との接続を解除し、交換後のインクユニットの往路口部68のコネクター70を中間部62のコネクター63に接続すると共に復路口部72のコネクター74を中間部62のコネクター64に接続すればよいから、サブタンク53から往路口部68や復路口部72を外さずにインクユニットを交換することができる。
【0019】
供給ポンプ58は、ギヤポンプとして構成されており、所定方向(例えば時計回り)に回転する(以下、これを正転方向に回転するという)ことによってメインタンク52側からサブタンク53側にインクを圧送することができると共に、所定方向とは反対方向(例えば反時計回り)に回転する(以下、これを逆転方向に回転するという)ことによってサブタンク53側からメインタンク52側にインクを圧送することができるようになっている。こうした構成とすることにより、メインタンク52側からサブタンク53側にインクを供給するための経路とサブタンク53側からメインタンク52側にインクを戻すための経路とを同一(供給路54)とすることができ、構成の簡略化を図ることができる。
【0020】
循環ポンプ76は、供給ポンプ58と同様にギヤポンプとして構成されており、所定方向(例えば時計回り)に回転する(以下、これを正転方向に回転するという)ことによって往路口69側から印刷ヘッド24側にインクを圧送することができると共に、所定方向とは反対方向(例えば反時計回り)に回転する(以下、これを逆転方向に回転するという)ことによって印刷ヘッド24側から往路口69側にインクを圧送することができるようになっている。なお、この循環ポンプ76は、駆動停止時に循環路60を閉塞しないよう構成されている。
【0021】
コントローラー90は、図1に示すように、CPU92を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムを記憶したROM93と、一時的にデータを記憶するRAM94と、外部機器との情報のやり取りを行うインターフェース(I/F)95と、図示しない入出力ポートとを備える。RAM94には、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域にユーザーPC100からI/F95を介して送られてきた印刷データが記憶される。コントローラー90には、リニア式エンコーダー29からの位置検出信号や、フォトセンサーなどとして構成されて供給路56の所定位置(例えば、供給ポンプ58より若干供給口56側など)のインクの存在を検出するインク検出センサー57からの検出信号,フォトセンサーなどとして構成されて供給路54の供給口56の位置のインクの存在を検出するインク検出センサー59からの検出信号,操作パネル97の操作部99からの操作信号などが入力ポートを介して入力される他、ユーザーPC100からの印刷ジョブなどがI/F95を介して入力される。また、コントローラー90からは、印刷ヘッド24への制御信号や、駆動モーター32やキャリッジモーター42aへの制御信号,供給ポンプ58や循環ポンプ76への制御信号,キャッピング装置41への制御信号,開閉弁78や開閉弁86への制御信号,加圧装置88への制御信号,操作パネル97の表示部98への表示制御信号などが出力ポートを介して出力される他、印刷ステータス情報などがI/F95を介してユーザーPC100に出力される。
【0022】
こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20では、印刷ヘッド24からインク滴を吐出して記録紙Sに印刷を行なう場合には、開閉弁78が開成されると共に開閉弁86が閉成された状態で供給ポンプ58および循環ポンプ76が共に正転方向に回転するよう供給ポンプ58と循環ポンプ76と開閉弁78と開閉弁86とを制御することにより、メインタンク52のインクをサブタンク53に供給し、サブタンク53のインクを往路口69側から印刷ヘッド24に供給すると共にその一部を印刷ヘッド24を経由して復路口73側からサブタンク53に戻している。本実施形態では、上述したように、循環路60の往路口69が循環路60の復路口73や供給路54の供給口56より低い位置になるようにすることにより、印刷を行なうときに、気泡(空気)が往路口69から循環路60に侵入して印刷ヘッド24に到達するのを抑制している。これにより、印刷をより適正に行なうことができる。なお、サブタンク53内に発生する気泡としては、供給路54を経由してメインタンク52からサブタンク53に圧送されたインクに含まれる気泡や、循環路60の復路口73からサブタンク53に放出されるインクに含まれる気泡などがある。
【0023】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20の動作、特に、インクユニットの交換前に、サブタンク53や循環路60のインクを廃液タンク80に排出する際の動作について説明する。図3は、コントローラー90により実行される排出処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、インクユニットの交換前などにユーザーによる操作パネル97の操作部99の操作によってサブタンク53や循環路60のインクの廃液タンク80への排出が指示されたときに実行される。なお、インクユニットの交換時としては、インクシステム50で用いられるインクを現在とは異なる色や種類のインクに変更するとき、例えば、インク循環システム50a〜50dの並び順(図1の左からの順序)をイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の順序からブラック(K),シアン(C),マゼンダ(M),イエロー(Y)の順序に変更するときや、インク循環システム50のインクを新しい色(シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)以外の色)のインクに変更するとき,インク循環システム50のインクを紫外線硬化型インクから水溶性インクや油性インクに変更するときなどが考えられる。なお、メインタンク52のインク切れの場合などには、メインタンク52だけを交換したりメインタンク52にインクを充填したりするものとしてもよいし、インクユニットとして交換するものとしてもよい。
【0024】
排出処理ルーチンが実行されると、コントローラー90は、加圧装置88によってサブタンク53内が加圧され、開閉弁78と開閉弁86とが共に開成され、循環ポンプ76が正転方向に回転するよう循環ポンプ76と開閉弁78と開閉弁86と加圧装置88とを制御する排出用制御の実行を開始し(ステップS100)、排出用制御の終了条件が成立するまでその実行を継続する(ステップS110,S120)。ここで、排出用制御の終了条件としては、サブタンク53や循環路60のインクの排出に要する時間として設定された所定時間が経過した条件や、排出口84からインクが排出されなくなった条件などを用いることができる。上述したように、循環路60の復路口73や排出路82の排出口84が印刷ヘッド24や分岐点83より低く且つ排出口84が復路口73より低い位置に配置されているため、開閉弁86が開成されると、サイフォンの原理により、インクは復路口73側から分岐点83側に流れ、さらに、排出路82を経由して排出口84から廃液タンク80に排出される。このとき、サブタンク53のインクの液面が復路口73の高さ以上の間はサブタンク53のインクが復路口73から循環路60に入って分岐点83側に流れ、サブタンク53のインクの液面が復路口73より低くなった後には空気が復路口73から循環路60に入って分岐点83側に流れる。また、循環ポンプ76の正転方向の回転により、インクが往路口69側から分岐点83側に流れ、さらに、排出路82を経由して排出口84から廃液タンク80に排出される。したがって、循環ポンプ76によってインクが往路口69側から分岐点83側に圧送されると共にサイフォンの原理によってインクが復路口73側から分岐点83側に流れて両者が分岐点83で合流して排出路82を経由して排出口84から排出されることにより、サブタンク53や循環路60のインクを廃液タンク80に排出することができる。しかも、本実施形態では、排出路82を循環路60より大きな径に形成することにより、往路口69側から分岐点83側に圧送されるインクと復路口73側から分岐点83側に流れるインクとが分岐点83で合流してよりスムーズに排出路82を経由して排出口84から廃液タンク80に排出されるようにすることができ、また、加圧装置88によってサブタンク53を加圧することにより、復路口73側から分岐点83側に流れるインクの流量を多くすることができ、サブタンク53のインクがより迅速に廃液タンク80に排出されるようにすることができる。また、本実施形態では、循環ポンプ76については、復路口73側から分岐点83側に流れるインクの流量である逆方向流量と往路口69側から分岐点83側に圧送されるインクの流量である正方向流量とが略等しくなる釣合回転数で循環ポンプ76が正転方向に回転するよう制御するものとした。これにより、復路口73側から分岐点83側に流れるインクと往路口69から分岐点83側に圧送されるインクと分岐点83で合流してよりスムーズに排出路82を経由して排出口84から排出されるようにすることができる。なお、逆方向流量は、例えば、復路61bにおける開閉弁78より復路口73側に流量センサーなどを取り付けて検出するものとしたり、サブタンク53のインクの液面を検出する液面センサーやサブタンク53内の圧力を検出する圧力センサーなどをサブタンク53に取り付けてこれらの検出値に基づいて推定するものとしたりすることができる。また、釣合回転数は、循環ポンプ76の回転数と正方向流量との関係に対して逆方向流量を正方向流量として適用するなどとして設定することができる。
【0025】
こうして排出用制御の実行を終了すると、その旨を示す情報としての排出終了情報を操作パネル97の表示部98に表示して(ステップS130)、排出処理ルーチンを終了する。この表示を確認したユーザーは、往路口部68のコネクター70と中間部62のコネクター63との接続を解除すると共に復路口部72のコネクター74と中間部62のコネクター64との接続を解除し、交換後のインクユニットの往路口部68のコネクター70を中間部62のコネクター63に接続すると共に復路口部72のコネクター74を中間部62のコネクター64に接続すればよい。したがって、インクユニットの交換を容易に行なうことができる。
【0026】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の印刷ヘッド24が本発明の「吐出ヘッド」に相当し、サブタンク53が「貯留部」に相当し、循環路60が「循環路」に相当し、循環ポンプ76が「圧送手段」に相当し、排出路82が「排出路」に相当し、開閉弁86が「開閉弁」に相当する。
【0027】
以上説明した本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、循環路60の往路口69や復路口73が印刷ヘッド24より低い位置となると共に排出路82の排出口84が循環路60の復路口73より低い位置となるようにして、インクユニットの交換前にサブタンク53や循環路60のインクの廃液タンク80への排出が指示されたときに、開閉弁78と開閉弁86とが共に開成された状態で往路口69側から分岐点83側にインクが圧送されるよう循環ポンプ76と開閉弁78と開閉弁86とを制御することにより、循環ポンプ76によって往路口69側から分岐点83側に圧送されるインクとサイフォンの原理によって復路口73側から分岐点83側に流れるインクとが分岐点83で合流して排出路82を経由して排出口84から排出されるから、サブタンク53や循環路60のインクを廃液タンク80に排出することができる。しかも、本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、排出路82を循環路60より大きな径で形成したり、インクの排出時に加圧装置88によってサブタンク53を加圧したり、インクの排出時に復路口73側から分岐点83側に流れるインクの流量である逆方向流量と往路口69側から分岐点83に圧送されるインクの流量である正方向流路とが略等しくなる回転数で循環ポンプ76が正転方向に回転するよう循環ポンプ76を制御したりすることにより、サブタンク53や循環路60のインクをよりスムーズで迅速に廃液タンク80に排出することができる。
【0028】
また、本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、循環路60の往路口69が復路口73より低い位置となるようにして、印刷ヘッド24からインク滴を吐出して記録紙Sに印刷を行なう場合には、開閉弁78が開成されると共に開閉弁86が閉成された状態で供給ポンプ58および循環ポンプ76が共に正転方向に回転するよう供給ポンプ58と循環ポンプ76と開閉弁78と開閉弁86とを制御することにより、メインタンク52のインクをサブタンク53に供給し、サブタンク53のインクを往路口69側から印刷ヘッド24に供給すると共にその一部を印刷ヘッド24を経由して復路口73側からサブタンク53に戻すから、気泡(空気)が往路口69から循環路60に侵入して印刷ヘッド24に到達するのを抑制することができる。
【0029】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0030】
上述した実施形態では、インクユニットの交換前に、排出用制御を実行してサブタンク53や循環路60のインクを廃液タンク80に排出するものとしたが、インクユニットの交換後に、排出用制御を実行してサブタンク53や循環路60のインクを廃液タンク80に排出するものとしてもよいし、これら以外のとき、例えば、前回のシステム停止からインクの増粘が想定される所定時間以上経過してからシステム起動したときなどに排出用制御を実行してサブタンク53や循環路60のインクを廃液タンク80に排出するものとしてもよい。
【0031】
上述した実施形態では、排出路82は、循環路60より大きな径に形成されるものとしたが、同一の径に形成されるものとしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、排出用制御として、復路口73側から分岐点83に流れるインクの流量と往路口69側から分岐点83に圧送されるインクの流量とが略等しくなる釣合回転数で循環ポンプ76が正転方向に回転するよう循環ポンプ76を制御するものとしたが、予め定められた所定回転数で正転方向に回転するよう循環ポンプ76を制御するものなどとしてもよい。ここで、所定回転数は、印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行なうときと同一の回転数としてもよいし、それよりも高い回転数としてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、排出用制御として、加圧装置88によってサブタンク53を加圧するものとしたが、サブタンク53を加圧しない(大気開放されている状態を保持する)ものとしてもよい。この場合、加圧装置88を備えず、サブタンク53が大気開放されているものとしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、インク循環システム50は、メインタンク52とサブタンク53と供給路54と供給ポンプ58と循環路60と循環ポンプ76と開閉弁78と廃液タンク80と排出路82と開閉弁86とを備えるものとしたが、メインタンク52や供給路54,供給ポンプ58を備えないものとしてもよい。
【0035】
上述した実施形態では、インク循環システム50の各構成要素は、紫外線非透過材料によって形成されるものとしたが、紫外線硬化型インクを用いない仕様でインクジェットプリンター20を用いる場合、紫外線非透過材料以外の材料によって形成されるものとしてもよい。
【0036】
上述した実施形態では、供給ポンプ58は、ギヤポンプを用いるものとしたが、メインタンク52側からサブタンク53側にインクを圧送可能であると共にサブタンク53側からメインタンク52側にインクを圧送可能なものであれば如何なるものとしてもよく、例えば、チューブポンプなどを用いるものとしてもよい。循環ポンプ76についても同様に、チューブポンプなどを用いるものとしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、循環路60は、中間部62のコネクター63と往路口部68のコネクター70との接続を解除すると共に中間部62のコネクター64と復路口部72のコネクター74との接続を解除することによって中間部62と往路口部68と復路口部72とに分離可能なものとしたが、コネクターを有さず、一体に形成されるものとしてもよい。この場合、メインタンク52とサブタンク53とをまとめて交換するときには、図2のコネクター70,74より右側の部分としてのインクユニットを交換するのに代えて、循環路60からサブタンク53を外してメインタンク52やサブタンク53を交換すればよい。
【0038】
上述した実施形態では、本発明の液体吐出装置をインクジェットプリンター20に具体化した例を示したが、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体などを吐出する流体吐出装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を溶解した液体を吐出する液体吐出装置、同材料を分散した液状体を吐出する液状体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置としてもよい。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置としてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、本発明の液体吐出装置をインクジェットプリンター20に適用して説明したが、これに限定されるものではなく、吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置の形態であればよく、例えば、ファクシミリ装置や複合機などの他の如何なるOA機器に適用するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
20 インクジェットプリンター、21 プリンター機構、22 キャリッジ、24 印刷ヘッド、29 リニア式エンコーダー、30 紙送り機構、32 駆動モーター、34 紙送りローラー、40 プラテン、41 キャッピング装置、42a キャリッジモーター、42b 従動ローラー、44 キャリッジベルト、46 ガイド、48 メカフレーム、50,50a〜50d インク循環システム、52 メインタンク、53 サブタンク、54 供給路、55 供給源口、56 供給口、57,59 インク検出センサー、58 供給ポンプ、60 循環路、62 中間部、63,64,70,74 コネクター、68 往路口部、69 往路口、72 復路口部、73 復路口、76 循環ポンプ、78 開閉弁、80 廃液タンク、82 排出路、83 分岐点、84 排出口、90 コントローラー、92 CPU,93 ROM、94 RAM、95 インターフェース(I/F)、97 操作パネル、98 表示部、99 操作部、100 ユーザーPC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置であって、
液体が貯留されている貯留部と、
前記吐出ヘッドを含んで構成され、一方の開口端部である往路口が前記吐出ヘッドより低く且つ前記貯留部内に配置されると共に他方の開口端部である復路口が前記吐出ヘッドより低く且つ前記貯留部内で前記往路口より高い位置に配置された循環路と、
前記循環路における前記吐出ヘッドより前記往路口側に設けられて液体を圧送可能な圧送手段と、
前記循環路における前記吐出ヘッドより前記復路口側で該循環路に連通されて開口端部である排出口が前記復路口より低い位置に配置された排出路と、
前記排出路に設けられて開閉可能な開閉弁と、
を備える液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体吐出装置であって、
前記排出路は、前記循環路より大きな径に形成されてなる、
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の液体吐出装置であって、
前記貯留部の交換前または交換後に前記貯留部および前記循環路の液体の排出が指示されたとき、前記開閉弁が開成された状態で前記往路口側から前記吐出ヘッド側に液体が圧送されるよう前記圧送手段と前記開閉弁とを制御する排出用制御を実行する排出用制御手段、
を備える液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3記載の液体吐出装置であって、
前記排出用制御手段は、前記復路口側から前記排出路との連通位置に流れる液体の流量と前記往路口側から前記連通位置に圧送される液体の流量とが等しくなるよう前記圧送手段を制御する手段である、
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の液体吐出装置であって、
前記貯留部を加圧する加圧手段を備え、
前記排出用制御手段は、前記圧送手段と前記開閉弁との制御に加えて、前記貯留部が加圧されるよう前記加圧手段を制御する手段である、
液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171181(P2012−171181A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34886(P2011−34886)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】