説明

液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置

【課題】他の液体吐出流路の動作状態に影響を受けることなく各液体吐出流路から液体を吐出させる。
【解決手段】一表面に開口し平行間隔をあけて形成された複数の吐出溝13を有するアクチュエータ基板3と、アクチュエータ基板3の一表面に接合され、アクチュエータ基板3とは反対側の表面に開口する共通インク室17および共通インク室17から吐出溝13に貫通する複数のスリット19が設けられたカバープレート基板5と、共通インク室17の開口をほぼ閉塞する位置に、全てのスリット19の端部から略一定距離に配置される平坦面を有するフィルタ50とを備える液体噴射ヘッドチップ1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インク等の液体を吐出する複数の吐出ノズルを有する液体噴射ヘッドを用いて被記録媒体に文字や画像を記録する液体噴射記録装置が知られている。例えば、インクジェットヘッドは、複数の吐出溝を有するアクチュエータ基板とインク経路を形成するカバープレート基板とインクの流路部材とによって構成されており、各吐出溝の側壁に電圧を印加してせん断変形させることで吐出ノズルからインクを吐出するようになっている。
【0003】
このようなインクジェットヘッドにおいては、水性インクを使用する場合に、インクに接している電極を通じて導通・短絡が生じてしまうのを防ぐため、吐出溝によって形成される吐出チャンネルをそれぞれ独立した構造にするようになっている。また、カバープレート基板と流路部材とから構成される共通インク室の内部に所定の構造物を設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のインクジェットヘッドチップには、吐出溝に供給されるインク内に存在するごみ等を除去するためのフィルタが設けられている。このような構造物は、通常、共通インク室内部の任意の位置に設けられており、例えば、アクチュエータ基板の表面から2mm以上の間隔をあけて配置されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−190756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインクジェットヘッドチップのように共通インク室内部の任意の位置に構造物を配置した場合、各吐出チャンネルの側壁に電圧を印加してせん断変形させると、近接する吐出チャンネルどうしがクロストーク(圧力変動が他の吐出チャンネルへ伝播すること)を起こし、吐出特性に影響を及ぼす場合がある。具体的には、一部の吐出チャンネルの吐出速度が遅くなり、所望の吐出速度でインクを吐出することができないという場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、他の液体吐出流路の動作状態に影響を受けることなく各液体吐出流路から液体を吐出させることができる液体噴射ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、一表面に開口し平行間隔をあけて形成された複数の液体吐出流路を有するアクチュエータ基板と、該アクチュエータ基板の前記一表面に接合され、該アクチュエータ基板とは反対側の表面に開口するとともに前記液体吐出流路に連通する開口部が設けられたカバープレート基板と、該カバープレート基板の前記開口部をほぼ閉塞する位置に前記アクチュエータ基板との接合面から略一定距離に配置される平坦面を有する構造物とを備える液体噴射ヘッドチップを提供する。
【0009】
本発明によれば、カバープレート基板に設けられた開口部に液体を貯留すると、開口部が各液体吐出流路に液体を供給する共通液体室として機能する。また、各液体吐出流路の側壁をせん断変形させることで液体吐出流路内の容積が変化し、これにより、開口部から各液体吐出流路に振り分けられた液体が液体吐出流路ごとに吐出される。
【0010】
この場合に、開口部をほぼ閉塞する位置に、前記アクチュエータ基板との接合面からほぼ一定距離に平坦面を有する構造物を配置したことで、圧電方式によって側壁をせん断変形させる場合であっても、一部の隣接する液体吐出流路間で圧力変動が伝播してしまう(いわゆる、クロストーク)のを抑制することができる。これにより、全ての液体吐出流路からの液体の吐出を他の液体吐出流路の動作に影響されることなく行うことができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記開口部が、前記アクチュエータ基板とは反対側の表面に開口面を有する凹部と該凹部から前記液体吐出流路に貫通する複数の貫通孔とを備えることとしてもよい。
【0012】
このように構成することで、凹部の開口面から供給された液体が貫通孔を介して液体吐出流路に振り分けられる。したがって、例えば、液体吐出流路に対して1つ置きに貫通孔を配置することで、水性インク用の液体噴射ヘッドチップを構成することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記構造物が異物除去部材であることとしてもよい。
このように構成することで、異物除去部材により、例えば、各液体吐出流路に供給される液体に含まれる塵埃等を除去したり、大きな気泡が液体吐出流路に侵入したりしてしまうのを防ぐことができる。異物除去部材としては、例えば、フィルタや貫通孔を有する板等が挙げられる。
【0014】
また、上記発明においては、前記構造物が、前記アクチュエータ基板との接合面から0.8mmより小さい距離に配置されていることとしてもよい。
このように構成することで、クロストークが生じるのを効率的に防ぎ、複数の液体吐出流路全体の吐出特性をより安定させることができる。
【0015】
本発明は、上記本発明の液体噴射ヘッドチップと、前記カバープレート基板の前記一表面に接合され前記開口部に液体を供給する流路を有する流路部材とを備える液体噴射ヘッドを提供する。
【0016】
本発明は、上記本発明の液体噴射ヘッドを備える液体噴射記録装置を提供する。
本発明によれば、流路部材から液体噴射ヘッドチップに液体を供給し、他の液体吐出流路の動作状態に影響を受けることなく各液体吐出流路から液体を吐出させることができる。例えば、液体としてインクを用いた場合には、被記録媒体における印字品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、他の液体吐出流路の動作状態に影響を受けることなく各液体吐出流路から液体を吐出させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドチップ1、液体噴射ヘッド10および液体噴射記録装置100について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る液体噴射ヘッド10は、例えば、水性インク(液体)を吐出するものであり、図1〜図3に示すように、液体噴射ヘッドチップ1と、液体噴射ヘッドチップ1内にインクを供給する流路(流路部材)9と、液体噴射ヘッドチップ1を駆動する駆動回路等を搭載した配線基板(図示略)とを備えている。これらの各部材は、例えば、アルミニウム等でできた支持プレート31に固定されており、各部材どうしは熱伝導性のよい接着剤や両面テープ等で結合されている。
【0019】
液体噴射ヘッドチップ1は、厚さ約0.8mmのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子からなる略矩形状のアクチュエータ基板3と、アクチュエータ基板3の一表面に接着された厚さ約0.8mmのカバープレート基板5と、アクチュエータ基板3およびカバープレート基板5の端面に接着されたノズルプレート7とを備えている。
【0020】
アクチュエータ基板3は、板厚方向に分極されている。また、アクチュエータ基板3には、カバープレート基板5が設けられた一表面に開口部13Aを有する複数の吐出溝(液体吐出流路)13が平行間隔をあけて設けられている。各吐出溝13は、例えば、約0.36mmの深さを有しており、それぞれ側壁15によって分離されている。
【0021】
各吐出溝13の長手方向の一端は、アクチュエータ基板3の一端面3Aまで延び、他端は他端面3Bまで延びることなく途中位置において深さが徐々に浅くなっている。このような吐出溝13は、例えば、円板状のダイスカッター(図示略)のブレード外径にならった形状になっている。
【0022】
また、各吐出溝13の両側壁15には、吐出溝13の開口部13Aから深さ方向の途中位置まで、アクチュエータ基板3の長手方向に延びる駆動電圧印加用の電極16が蒸着によって形成されている。
【0023】
カバープレート基板5は、アクチュエータ基板3の一表面、すなわち、吐出溝13の開口部13Aが形成されている表面に接着されている。このカバープレート基板5は、アクチュエータ基板3とは反対側の表面に開口面17Aを有する凹状の共通インク室(凹部)17と、共通インク室17からアクチュエータ基板3の吐出溝13が浅くなっている端部に貫通する複数のスリット(貫通孔)19とによって構成されるカバープレート開口部(開口部)16を備えている。
【0024】
アクチュエータ基板3にカバープレート基板5が接着された状態では、吐出溝13の開口部13Aがカバープレート基板5によって閉じられることにより、複数の独立した吐出チャンネル23Aおよびダミーチャンネル23Bが形成されている。
【0025】
吐出チャンネル23Aは、カバープレート基板5のスリット19が貫通した吐出溝13によって形成されるインク流路であり、共通インク室17から供給されたインクが充填されるようになっている。一方、ダミーチャンネル23Bは、カバープレート基板5によって吐出溝13の開口部13Aが閉塞された空洞部であり、インクが流入しないように密閉されている。これら吐出チャンネル23Aおよびダミーチャンネル23Bは、吐出溝13の配列方向に交互に形成されている。
【0026】
共通インク室17には、開口面17Aから離れる方向に向かって内壁面が内側に突出した段差部25が設けられている。この段差部25は、カバープレート基板5のアクチュエータ基板3側表面からの距離が約0.5mmの位置に形成されている。また、平坦面を有するフィルタ(構造物,異物除去部材)50が共通インク室17の開口面17Aを略閉塞するように配置された状態で、段差部25に接着で固定されている。
【0027】
フィルタ50は、約0.1mmの厚さを有しており、全てのスリット19のアクチュエータ基板3側の端部から略一定距離、すなわち、約0.5mmの位置に配置されている。このフィルタ50により、共通インク室17から吐出溝13に供給されるインクに含まれる塵埃等を除去したり、大きな気泡が吐出溝13に侵入したりしてしまうのを防ぐことができる。また、液体噴射ヘッド10の組み立て時等に液体噴射ヘッドチップ1単体で扱ったとしても、埃等が共通インク室17に入り込むのを防ぐことができる。
【0028】
ノズルプレート7は、アクチュエータ基板3の吐出チャンネル23Aおよびダミーチャンネル23Bが開口している一端面3Aに接着されている。ノズルプレート7は、吐出チャンネル23Aの開口に対向する位置にのみノズル孔27を有している。なお、ダミーチャンネル23Bの開口は、ノズルプレート7により封止されている。このノズルプレート7は、例えば、ポリイミドフィルムにエキシマレーザ装置等を用いてノズル孔27が形成されたものである。なお、ノズルプレート7の被記録媒体に対向することとなる面には、撥水性を有する撥水膜(図示略)が形成されており、インクの付着等を防止するようになっている。
【0029】
流路9は、カバープレート基板5の開口面17Aに接着されており、インクタンク(図示略)から供給されるインクを一時的に貯留する圧力調整室(図示略)に接続された連結部9Aを備えている。
【0030】
支持プレート31は、重ね合わされたアクチュエータ基板3およびカバープレート基板5を支持していると共に、ノズルプレート7を支持している。支持プレート31には、吐出溝13の配列方向に延在する嵌合孔33が形成されており、重ね合わされたアクチュエータ基板3およびカバープレート基板5をこの嵌合孔33内に嵌め込んだ状態で両プレート3,5を支持している。支持プレート31の先端側の表面は、アクチュエータ基板3およびカバープレート基板5の先端側の端面と面一となっている。
【0031】
このように構成された液体噴射ヘッド10は、例えば、図4に示すように、プリンタやファックス等に適用されるインクジェット式の記録装置である液体噴射記録装置100に搭載されて使用される。
【0032】
液体噴射記録装置100は、色ごとに設けられた複数の液体噴射ヘッド10と、液体噴射ヘッド10が主走査方向に複数併設して搭載されたキャリッジ103と、フレキシブルチューブからなるインク供給管105を介して液体噴射ヘッド10にインクを供給するインクカートリッジ107とを備えている。
【0033】
キャリッジ103は、一対のガイドレール109A,109Bの長軸方向に移動可能に搭載されている。また、ガイドレール109A,109Bの一端側には駆動モータ111が設けられている。駆動モータ111による駆動力が、この駆動モータ111に連結されたプーリ113Aとガイドレール109A,109Bの他端側に設けられたプーリ113Bとの間に掛け渡されたタイミングベルト115に伝わり、これによりタイミングベルト115の所定の位置に固定されたキャリッジ103が搬送されるようになっている。
【0034】
また、キャリッジ103の搬送方向に直交する方向で、鎖線で示すケース117の両端側には、ガイドレール109A,109Bに沿ってそれぞれ一対の搬送ローラ119が設けられている。これら搬送ローラ119は、キャリッジ103の下方であってキャリッジ103の搬送方向に直交する方向に被記録媒体Sを搬送するものである。
【0035】
このように構成された液体噴射記録装置100においては、搬送ローラ119によって被記録媒体Sを送りつつ、キャリッジ103を被記録媒体Sの送り方向に直交する方向に走査することにより、液体噴射ヘッド10によって被記録媒体S上に文字および画像等が記録されるようになっている。
【0036】
以下、液体噴射記録装置100に搭載された液体噴射ヘッド10の作用について具体的に説明する。
圧力調整室においてインクタンクから供給されたインクが一時的に貯留された後、連結部9Aを介して流路9へと導入され、カバープレート基板5の共通インク室17へと導かれる。そして、共通インク室17において全ての吐出チャンネル23A内にインクが分配供給される。
【0037】
この状態で、所定の吐出チャンネル23Aの両側壁15の電極16に電圧を印加すると、圧電厚みすべり効果により側壁15がせん断変形して吐出チャンネル23A内の容積が変化する。例えば、吐出チャンネル23Aの両側壁15が吐出チャンネル23Aの外側に向かって変形するように、すなわち、ダミーチャンネル23Bの内側に向かって変形するように、分極方向に直交する一方向に電圧を印加する。これにより、吐出チャンネル23A内の容積が増加する分、吐出チャンネル23A内にインクが引き込まれる。
【0038】
次に、側壁15にかかる電圧をゼロにする。すなわち、吐出チャンネル23Aの両側壁15が電圧印加前の変形がない状態になるようにする。これにより、吐出チャンネル23A内の容積が減少して圧力が増加し、ノズル孔27からインクが吐出される。
【0039】
この場合に、共通インク室17の開口面17Aをほぼ閉塞する位置に、全てのスリット19から0.8mmより小さい距離(具体的には、約0.5mmの距離)に平坦面を有するフィルタ50が配置されているで、一部の隣接する吐出チャンネル23Aとダミーチャンネル23Bとの間で圧力変動が伝播してしまう(いわゆる、クロストーク)のを効率的に抑制することができる。
【0040】
これにより、図5に示すように、吐出チャンネル23A全体の吐出特性をほぼ安定させることができ、全ての吐出チャンネル23Aからのインクの吐出を隣接するダミーチャンネル23Bの動作状態に影響されることなく行うことができる。具体的には、各吐出ノズル孔27の吐出速度差は0.2m/s以下で、インク吐出量は±3%以内に抑えることができる。同図において、縦軸は吐出速度(m/sec)を示し、横軸は吐出ノズル孔No.を示している。また、吐出条件は、水性染料インクを用い、吐出周波数18kHzで全てのノズル孔27からインクを吐出させたものである。
【0041】
例えば、各吐出チャンネル23Aの吐出ノズル孔27から吐出されるインクの吐出速度をほぼ等しくすることで、被記録媒体Sにおける文字および画像等の濃度むらの発生を防ぐことができる。
【0042】
ここで、本実施形態に係る液体噴射ヘッドチップ1、液体噴射ヘッド10および液体噴射記録装置100の比較例として、例えば、フィルタ50を全てのスリット19のアクチュエータ基板3側の端部から約2mmの位置に配置した場合について説明する。
この場合、図6に示すように、吐出ノズルの配列方向に周期的に吐出速度が変化する。同図によれば、ノズル孔No.1〜9,81〜97,177付近,249付近で吐出速度が大きく、ノズル孔No.41付近,129付近,217〜233で吐出速度が小さくなっている。このように、比較例のように構成した場合には、吐出チャンネル23A全体の吐出特性を安定させることができない。
【0043】
また、本実施形態においては、フィルタ50を例示して説明したが、全てのスリット19の端部から略一定距離に配置することができる平坦面を有する構造物であればよく、例えば、貫通孔を有する板等を採用することとしてもよい。この場合、全てのスリット19の端部から0.8mmより小さい距離に構造物を配置するのが好ましい。
【0044】
また、本実施形態においては、吐出溝13の配列方向に交互に吐出チャンネル23Aおよびダミーチャンネル23Bが形成されていることとしたが、これに代えて、全ての吐出溝13にカバープレート基板5のスリット19を貫通させて吐出チャンネル23Aだけを形成することとしてもよい。この場合、ノズルプレート7は、すべての吐出チャンネル23Aに対向するピッチでノズル孔27を形成することとすればよい。このようにすることで、全ての吐出溝13(言い換えれば、全ての吐出チャンネル23A)からのインクの吐出を他の吐出溝13(他の吐出チャンネル23A)の動作に影響されることなく行うことができる。
【0045】
また、本実施形態においては、側壁15にかかる電圧をゼロにし、吐出チャンネル23Aの両側壁15が電圧印加前の変形がない状態になるようにする駆動方法を示したが、電圧を逆方向に印加し、吐出チャンネル23Aの両側壁15が吐出チャンネル23Aの内側に向かって変形するように、すなわち、ダミーチャンネル23Bの外側に向かって変形するように、分極方向に直交する他の一方向に電圧を印加してもよい。これにより、吐出チャンネル23A内の容積が減少して圧力が増加し、ノズル孔27からインクが吐出される。
以上のように異なる駆動方法を説明したが、これらの方法においては、インクを安定して吐出するために、さらなるインクの加圧が必要な場合には、側壁15を吐出するチャネル側へ突出するように変形させる。この動作によって、吐出するチャネルの内部の圧力がさらに増加するので、インクをより加圧することができる。ただし、この動作は上述したとおり、インクを安定して吐出させることを目的とするものであるので、必須な動作ではなく必要に応じて適宜使用すればよい。また、上述した各動作を必要に応じて組み合わせて実行することにより、最適なインクの吐出を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態では、液体噴射装置の一例として、インクジェット式の記録装置を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であっても構わない。また、本実施形態では、複数のノズル孔27が配列方向に直線状に一列に配列されていることとしたが、これに代えて、複数のノズル孔27が直線状に配列されてなく縦方向にずらして配列されていてもよい。例えば、複数のノズル孔27が斜めに配列されていてもよく、あるいは、千鳥状に配列されていてもよい。また、ノズル孔27の形状に関しても、円形に限定されるものではない。例えば、三角等の多角形状や、楕円形状や星型形状でも構わない。
【0047】
また、本実施形態では、水性のインクを利用した場合を説明したが、例えば、非導電性の油性インク、ソルベントインクやUVインク等を用いても構わない。なお、油性インクを用いる場合には、液体噴射ヘッドチップ1は上述の、全ての吐出溝13にカバープレート基板5のスリット19を貫通させて吐出チャンネル23Aだけを形成する構成にすればよい。このように液体噴射ヘッドチップを構成することで、いかなる性質のインクであっても使い分けることができる。したがって、水性のインクを利用して記録を行うことができる。特に、導電性を有するインクであっても問題なく利用できるので、インクジェットプリンタの付加価値を高めることができる。なお、その他は同様の作用効果を奏することができる。
また、本実施形態においては、カバープレート基板5のカバープレート開口部16が共通インク室17とスリット19とを備えることとしたが、例えば、カバープレート開口部16がスリット19を備えず全ての吐出溝13に連通する構造としてもよい。このようにすることで、例えば、油性インクを使用する場合に液体噴射ヘッドチップ1を簡易な構成にすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、カバープレート基板5に共通インク室17が形成されていることとしたが、参考例として、アクチュエータ基板3に共通インク室が形成されていてもよい。例えば、アクチュエータ基板3の裏面(吐出溝13が形成された表面の反対側の面)に吐出溝13の配列方向に延びた断面凹状の共通インク室が形成され、この共通インク室の底面に、吐出溝に連通するスリットが形成された構成であってもよい。なお、この場合、支持プレート31の位置を入れ換えて、支持プレート31をカバープレート基板5に重ね合わせるように配置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【図2】図1の液体噴射ヘッドの縦断面図である。
【図3】図1の液体噴射ヘッドチップの拡大断面図である。
【図4】図1の液体噴射ヘッドを搭載する液体噴射装置の概略斜視図である。
【図5】図1の液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置におけるノズル孔No.と吐出速度の関係を示した図である。
【図6】本発明の一実施形態の参考例としてのノズル孔No.と吐出速度の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0050】
1 液体噴射ヘッドチップ
9 流路(流路部材)
10 液体噴射ヘッド
13 吐出溝(液体吐出流路)
16 カバープレート開口部(開口部)
17 共通インク室(凹部)
19 スリット
50 フィルタ(構造物,異物除去部材)
100 液体噴射記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一表面に開口し平行間隔をあけて形成された複数の液体吐出流路を有するアクチュエータ基板と、
該アクチュエータ基板の前記一表面に接合され、該アクチュエータ基板とは反対側の表面に開口するとともに前記液体吐出流路に連通する開口部が設けられたカバープレート基板と、
該カバープレート基板の前記開口部をほぼ閉塞する位置に前記アクチュエータ基板との接合面から略一定距離に配置される平坦面を有する構造物と
を備える液体噴射ヘッドチップ。
【請求項2】
前記開口部が、前記アクチュエータ基板とは反対側の表面に開口面を有する凹部と該凹部から前記液体吐出流路に貫通する複数の貫通孔とを備える請求項1に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項3】
前記構造物が異物除去部材である請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項4】
前記構造物が、前記カバープレート基板の前記アクチュエータ基板との接合面から0.8mmより小さい距離に配置されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体噴射ヘッドチップ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の液体噴射ヘッドチップと、
前記カバープレート基板の前記一表面に接合され前記開口部に液体を供給する流路を有する流路部材と
を備える液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射ヘッドを備える液体噴射記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−131940(P2010−131940A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312367(P2008−312367)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】