液体噴射ヘッドユニット及びその製造方法並びに液体噴射装置
【課題】液体噴射ヘッドを高精度に位置決めできるとともに、液体噴射ヘッドの交換を容易に行うことができる液体噴射ヘッドユニット及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル開口11が並設されたノズル列14を備えるインクジェット式記録ヘッド10と、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したプラットフォーム20とを具備し、プラットフォーム20は、インクジェット式記録ヘッド10毎にフォトリソグラフィーにより形成されて当該インクジェット式記録ヘッド10が位置決めされた第1の基準孔21を有する。
【解決手段】ノズル開口11が並設されたノズル列14を備えるインクジェット式記録ヘッド10と、インクジェット式記録ヘッド10を搭載したプラットフォーム20とを具備し、プラットフォーム20は、インクジェット式記録ヘッド10毎にフォトリソグラフィーにより形成されて当該インクジェット式記録ヘッド10が位置決めされた第1の基準孔21を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドがプラットフォームに複数載置された液体噴射ヘッドユニット及びその製造方法並びに液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターやプロッター等のインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置は、カートリッジやタンク等に貯留されたインクなどの液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドが複数設けられた液体噴射ヘッドユニット(以下、ヘッドユニットとも言う)を具備する。
【0003】
複数の液体噴射ヘッドは、共通の保持部材であるプラットフォームに載置されており、複数の液体噴射ヘッドの配置は、各液体噴射ヘッドのノズル開口が並設されたノズル列が並設方向に連続するように行われる。
【0004】
各液体噴射ヘッドは、これらの相対的な位置が高精度に位置決めされた上でプラットフォームに取り付けられている。液体噴射ヘッドの位置決めは、例えば、アクチュエーター装置を駆動して平行板バネ等を移動させ、所定の基準位置に合わせる技術がある(例えば特許文献1参照)。他にも、ガラスマスク等に予め設けられたアライメントマークに液体噴射ヘッドのノズルを精度よく位置決めする技術がある(例えば特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−57430号公報(請求項4、段落0025等)
【特許文献2】特開2008−36512号公報(段落0086〜0111等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、アクチュエーター装置や平行板バネ等の位置決めのための調整機構が液体噴射ヘッド一つ一つに対応してヘッドユニットに設けられているため、液体噴射ヘッドユニット自体が複雑となり、小型化が阻害されるという問題がある。当然、この調整機構に要するコストも発生する。また、特許文献2の技術では、ガラスマスクのアライメントマークに複数の液体噴射ヘッドが位置決めされるように、その位置を調整する必要があるため、位置調整に時間を要してしまう。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドユニットだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドユニットにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体噴射ヘッドを高精度に位置決めできるとともに、液体噴射ヘッドの交換を容易に行うことができる液体噴射ヘッドユニット及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを具備し、前記プラットフォームは、前記液体噴射ヘッド毎にフォトリソグラフィーにより形成されて当該液体噴射ヘッドが位置決めされた第1の基準を有することを特徴とする液体噴射ヘッドユニットにある。
【0010】
かかる態様では、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準に液体噴射ヘッドが位置決めされるため、液体噴射ヘッドを精度良くプラットフォームに取り付けることができる。また、各液体噴射ヘッドを個別にプラットフォームに位置決めするだけでヘッド同士の相対的な位置決めを高精度に行うことができる。
【0011】
ここで、前記プラットフォームは、前記第1の基準が設けられて前記液体噴射ヘッド毎に形成された部材を有することが好ましい。これによれば、第1の基準のプラットフォームに対する取り付けの自由度が向上し、液体噴射ヘッドの相対位置を、用途や目的などに応じて調整することを容易に行うことができる。第1の基準が設けられた部材の取り数を向上できるため、コストの削減を図ることができる。また、第1の基準に破損等が生じてもプラットフォームそのものを交換する必要はなく、破損等した部材だけを交換することができ、交換に掛かるコストを削減できる。
【0012】
また、前記液体噴射ヘッドには、前記第1の基準に位置決めされる第2の基準がフォトリソグラフィーにより形成されていることが好ましい。これによれば、液体噴射ヘッドにもフォトリソグラフィーにより形成された第2の基準が設けられており、この第2の基準を第1の基準に位置決めするので、より一層高精度に、液体噴射ヘッドをプラットフォームに位置決めすることができる。
【0013】
また、前記第2の基準が前記ノズル列を基準とした位置に形成されていることが好ましい。これによれば、各液体噴射ヘッドのノズル列同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0014】
また、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズル列がフォトリソグラフィーにより形成されたノズルプレートを有し、前記第2の基準は、前記ノズルプレートにフォトリソグラフィーにより形成されていることが好ましい。これによれば、ノズル列を基準とする第2の基準をより高精度に所定の位置に形成することができる。
【0015】
また、前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔であり、前記液体噴射ヘッドに設けられた挿通孔と前記第1の基準孔とに位置決めピンが挿通していることが好ましい。これによれば、挿通孔と第1の基準孔とを位置決めピンで位置決めすることができる。
【0016】
また、前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔及び第2の基準孔であり、前記第1の基準孔と前記第2の基準孔とに位置決めピンが挿通していることが好ましい。これによれば、第1の基準孔と第2の基準孔とを位置決めピンで位置決めすることができる。
【0017】
また、前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面であり、前記液体噴射ヘッドの面と前記第1の基準面とが当接していることが好ましい。これによれば、当該面を第1の基準面とに当接させることでこれらを位置決めすることができる。
【0018】
また、前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面及び第2の基準面であり、前記第1の基準面と前記第2の基準面とが当接していることが好ましい。これによれば、第1の基準面と第2の基準面とを当接させることでこれらを位置決めすることができる。
【0019】
また、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル開口よりも液体吐出方向とは反対側の領域に前記第2の基準が設けられていることが好ましい。これによれば、第2の基準は、ノズル開口が形成されたノズル面とは同一面上にはなく、液体噴射ヘッドのノズル開口の側方であってプラットフォームの下方には空間が形成される。かかる空間は、例えば液体噴射ヘッドユニットを有する液体噴射装置において、被噴射媒体を搬送する機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。このような空間にローラー等の部材を配置することで、被噴射媒体とノズル面との間隔を当該部材の厚さにより広げることなく、狭い間隔を維持することができ、高精度な液体の噴射が可能となる。
【0020】
また、前記プラットフォームは、金属からなるサポート基板を有していることが好ましい。これにより、プラットフォームの強度が補強される。
【0021】
また、前記プラットフォームは、金属からなることが好ましい。これによれば、耐久性のあるプラットフォームを形成できる。
【0022】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0023】
かかる態様では、印刷品質を向上すると共に液体噴射ヘッドの交換を容易に行うことができる液体噴射装置を実現できる。
【0024】
また、本発明の他の態様は、複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを備える液体噴射ヘッドユニットの製造方法であって、フォトリソグラフィーにより前記液体噴射ヘッド毎に第1の基準を前記プラットフォームに形成し、複数の前記液体噴射ヘッドをそれぞれ前記第1の基準に位置決めして前記プラットフォームに取り付けることを特徴とする液体噴射ヘッドユニットの製造方法にある。
【0025】
かかる態様では、液体噴射ヘッドを高精度に位置決めできるとともに、液体噴射ヘッドの交換を容易に行うことができる液体噴射ヘッドユニットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るヘッドの概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの要部を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るヘッドの概略斜視図である。
【図7】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの要部を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る第1の基準面と第2の基準面の要部平面図である。
【図10】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態4に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態5に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドユニットの一例であるインクジェット式記録ヘッドユニットの概略斜視図であり、図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、ヘッドユニットとも言う)は、複数のインクジェット式記録ヘッド10(以下、ヘッドとも言う)が載置されたプラットフォーム20を具備する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10(以下、ヘッドとも言う)は、一端面にノズル開口11が設けられたヘッド本体12と、ヘッド本体12のノズル開口11とは反対側の面に固定された流路部材13とを具備する。
【0030】
ヘッド本体12は、ノズル開口11が並設されたノズル列14を具備する。ノズル列14の数は、特に限定されず、例えば、1列であってもよく、2列以上の複数列であってもよい。本実施形態では、1つのヘッド本体12にノズル列14を2列設けるようにした。ここで、本実施形態では、ノズル列14においてノズル開口11が並設された方向を第1の方向とし、第1の方向に交差する方向を第2の方向としている。したがって、2列のノズル列14は、第2の方向に並設されている。
【0031】
なお、ヘッド本体12の内部には、図示していないが、ノズル開口11に連通する流路の一部を構成する圧力発生室と、圧力発生室に圧力変化を生じさせてノズル開口からインクを吐出させる圧力発生手段とが設けられている。
【0032】
圧力発生手段は、特に限定されないが、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を2つの電極で挟んだ圧電素子を用いたものや、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口11から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口11から液滴を吐出させるものなどを用いることができる。また、圧電素子としては、圧力発生室側から下電極、圧電材料及び上電極を積層して撓み変形させる撓み振動型の圧電素子や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子などを用いることができる。
【0033】
流路部材13は、ヘッド本体12のノズル開口11とは反対側の面に固定されて、外部からのインクをヘッド本体12に供給又はヘッド本体12から外部にインクを排出するものである。流路部材13のヘッド本体12に固定された面とは反対側の面には、内部の流路が開口して外部の流路が接続される液体流路口(図示せず)と、外部からの印刷信号等の電気信号が供給されるコネクタ(図示せず)とが設けられている。
【0034】
ヘッド10の第1の方向の両側面には、外側に突出するフランジ部17が設けられ、フランジ部17のノズル列14側の面には、基準部材30が設けられている。この基準部材30は、ヘッド10のフランジ部17に対応する領域のみに形成されていてもよいが、フランジ部17に対応する領域を含んで、ヘッド10の側面を囲むような枠状に形成してもよい。
【0035】
基準部材30には第2の基準の一例である第2の基準孔31がフォトリソグラフィーにより形成されている。詳言すると、第2の基準孔31は、ノズル列14を基準とする所定位置に設けられている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2の基準孔31が第1の基準孔21に位置決めされると、各第1の基準孔21同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0036】
また、第2の基準孔31は、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例であり、フランジ部17に設けられた基準部材30に形成されている。すなわち、第2の基準孔31は、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってサポート基板40の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0037】
このような第2の基準孔31は、ノズル列14を基準とする所定位置に第1の基準孔21と同形状の開口部を有するフォトレジストパターンを基準部材30上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0038】
なお、第2の基準孔31の開口形状は、詳細は後述するが、位置決めピン50が挿通されたときに、位置決めピン50の外周面に外接する形状となっている。またフランジ部17には第2の基準孔31に連通する挿通孔18が設けられている。挿通孔18の開口は第2の基準孔31の開口よりも大きく形成されており、これにより位置決めピン50が挿通孔18には接しないようになっている。これは、挿通孔18の開口が第2の基準孔31よりも小さいと、位置決めピン50の位置が挿通孔18で拘束されてしまうのを防止するためである。
【0039】
本実施形態では、基準部材30はシリコンからなるが、フォトリソグラフィーにより第2の基準孔31を形成し得る材料であれば特に限定されない。このような材料としては、SUSなどの金属や、ガラスなどのエッチング部材を挙げることができる。
【0040】
また、基準部材30には、フランジ部17に設けられた取付孔19と連通する取付孔32が設けられており、これらの取付孔19及び取付孔32を挿通した固定ネジ51により、フランジ部17がプラットフォーム20に固定される。
【0041】
図3は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドユニットの流路部材側の平面図であり、図4(a)は、図3のA−A’断面図であり、図4(b)は図3のB−B’断面図である。
【0042】
図3及び図4(a)を用いて、プラットフォーム20について詳細に説明する。図示するようにプラットフォーム20には、ノズル列14側の面に金属からなるサポート基板40が設けられている。これにより、シリコンからなるプラットフォーム20の強度が補強されている。また、プラットフォーム20には、一つのヘッド10につき一つの保持孔22が設けられ、サポート基板40には保持孔22に連通するように基板側保持孔42が設けられている。
【0043】
プラットフォーム20の保持孔22及びサポート基板40の基板側保持孔42は、ヘッド10のノズル列14側の外周よりも若干大きく、且つフランジ部17よりも小さな開口で設けられている。このため、保持孔22及び基板側保持孔42にヘッド10を挿入すると、ヘッド10のフランジ部17がプラットフォーム20に保持されるようになっている。また、ヘッド10と保持孔22及び基板側保持孔42との間には空隙が生ずるので、ヘッド10がプラットフォーム20に対して第1の方向及び第2の方向に若干移動可能になっている。
【0044】
また、プラットフォーム20には、一つのヘッド10につき二つの第1の基準孔21(第1の基準)が所定位置にフォトリソグラフィーにより形成されている。ここで第1の基準孔21が所定位置に形成されているとは、第1の基準孔21に第2の基準孔31が位置決めされた際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1の基準孔21がプラットフォーム20に形成されていることをいう。すなわち、第1の基準孔21を所定位置に形成すれば、第2の基準孔31を第1の基準孔21に位置決めすると、ヘッド10がプラットフォーム20上に所定の配置で取り付けられることになる。このとき、前記したように第2の基準孔31はノズル列14を基準に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0045】
このような第1の基準孔21は、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0046】
また、第1の基準孔21の開口形状、又は、第2の基準孔31の開口形状のうち少なくとも一方の開口形状は位置決めピン50の平面視方向の形状と同一形状となっているため、位置決めピン50が挿通されたときに位置決めピン50の外周面が第1の基準孔21又は第2の基準孔31の壁面に接する形状となっている。なお、第1の基準孔21の開口形状又は第2の基準孔31の開口形状が、位置決めピン50の平面視方向の形状と同一形状でない場合の第1の基準孔21又は第2の基準孔31の開口形状は、例えば、平行四辺形であってもよい。この場合、位置決めピン50が挿通されたときに第1の基準孔21又は第2の基準孔31の壁面の複数点で当該位置決めピン50と接することになる。要するに、これらの第1の基準孔21・第2の基準孔31の壁面に位置決めピン50が当接され、位置決めピン50の基準孔内における径方向への移動が規制されるように、第1の基準孔21又は第2の基準孔31の開口形状が形成されていればよい。一方、サポート基板40には、第1の基準孔21に連通する挿通孔41が設けられているが、挿通孔41はその開口が第1の基準孔21の開口よりも大きく形成されている。このため位置決めピン50が挿通孔18には接しないようになっている。これは、挿通孔41の開口が第1の基準孔21よりも小さいと、位置決めピン50の位置が挿通孔41で拘束されてしまうのを防止するためである。
【0047】
なお、本実施形態では、プラットフォーム20はシリコンからなるが、フォトリソグラフィーにより第1の基準孔21を形成し得る材料であれば特に限定されない。このような材料としては、SUSなどの金属や、ガラスなどのエッチング部材を挙げることができる。
【0048】
図4(b)を用いて、位置決めされたヘッドについて説明する。図示するように、保持孔22及び基板側保持孔42には、ヘッド10のノズル列14側が挿入されており、フランジ部17が基準部材30を介してプラットフォーム20に保持されている。
【0049】
また、挿通孔18、第2の基準孔31、第1の基準孔21、及び挿通孔41には位置決めピン50が挿通され、取付孔19及び取付孔32(図2参照)には固定ネジ51が挿通され、この固定ネジ51によりフランジ部17がプラットフォーム20に固定されている(図3参照)。
【0050】
上述したように、第1の基準孔21及び第2の基準孔31の開口形状は、これらの内周面が位置決めピン50の外周面に当接するようになっている。一方、これらの第1の基準孔21及び第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、位置決めピン50を第1の基準孔21と第2の基準孔31とに挿通すれば、第1の基準孔21と第2の基準孔31とが高精度に位置決めされる。この結果、各ヘッド10をプラットフォーム20の第1の基準孔21に高精度に配置することができる。
【0051】
さらに、第2の基準孔31は、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準孔31が第1の基準孔21に位置決めされれば、ノズル列14は第1の基準孔21に対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0052】
本実施形態では、各ヘッド10の所定位置として、次のように配設した。すなわち、図1に示すように、ヘッド10のノズル列14(図2参照)におけるノズル開口11の並設方向である第1の方向に複数のヘッド10を配置することで、ヘッド群110を構成し、このヘッド群110を第2の方向に4つ並設するようにした。すなわち、ヘッド10は、第1の方向及び第2の方向に沿って複数配置されている。
【0053】
詳言すると、複数のヘッド10は、ノズル列14が第1の方向に連続するように第1の方向に沿って千鳥状に配置されている。そして、第1の方向にノズル列14が連続するように配置された複数のヘッド10からなるヘッド群110が、第2の方向に2つ並設されている。
【0054】
ここで、各ヘッド群110のノズル列14が、第1の方向に連続するとは、各ヘッド群110の第2の方向で互いに隣接するヘッド10において、一方のヘッド10のノズル列14の端部のノズル開口11と、他方のヘッド10のノズル列14の端部のノズル開口11とが、第1の方向で同一位置となるように配置されていることを言う。
【0055】
このように、各ヘッド群110において、複数のヘッド10のノズル列14が第1の方向で連続するように配置されることで、1つのヘッド10のノズル列14で印刷を行う場合に比べて、広範囲な印刷を高速で行わせることができる。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、各ヘッド10のプラットフォーム20に対する位置決めは、ヘッド10を保持孔22に挿入したのち、第1の基準孔21と第2の基準孔31とに位置決めピン50を挿通するだけで高精度にかつ容易に行うことができる。従来においては、ヘッド10を所定位置に位置決めする際にアクチュエーター装置やアライメントマスクを用いてその位置の微調整を要していたが、本実施形態のヘッドユニット1によれば、このような装置や工程が不要となるからである。また従来のような調整機構をヘッドユニット1に設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、このような位置決めの容易性によれば、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0057】
なお、本実施形態では、第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成したものであるが、必ずしもこれに限られない。図5を用いて、第1の基準孔21のみフォトリソグラフィーにより形成した場合におけるヘッドユニットについて説明する。図5は、ヘッドユニットの断面図である。
【0058】
図示するように、ヘッド10のフランジ部17には、基準部材30は設けられておらず、フランジ部17の挿通孔18が第2の基準として機能している。挿通孔18、第1の基準孔21、及び挿通孔41には位置決めピン50が挿通され、フランジ部17は直接にプラットフォーム20に保持されている。この場合においても、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔21に位置決めピン50を介して挿通孔18が位置決めされるため、第2の基準孔31を有する基準部材30を設けた場合ほどではないものの、ヘッド10を精度良くプラットフォーム20に取り付けることができる。
【0059】
〈実施形態2〉
図6は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0060】
図示するように、フランジ部17のノズル列14側の面には、基準部材30Aが設けられている。
【0061】
基準部材30Aには第2の基準の一例である第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2がフォトリソグラフィーにより形成されている。第2の基準面31A−1は、基準部材30Aの第1の方向側の側面をいい、第2の基準面31A−2は、当該側面に隣接する側面をいう。
【0062】
詳言すると、第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2は、ノズル列14を基準とした位置に形成されている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、実施形態1と同様に、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2の基準面31A−1,2が第1の基準面21A−1,2に当接されると、各第1の基準面21A−1,2同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0063】
また、第2の基準面31A―1及び第2の基準面31A−2は、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例であり、フランジ部17に設けられている。すなわち、第2の基準面31A―1及び第2の基準面31A−2は、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってサポート基板40の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0064】
このような第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2は、ノズル列14を基準とする所定位置に、第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2が現れるように所定形状のフォトレジストパターンを基準部材30A上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。なお、第2の基準面31A−1と第2の基準面31A−2とは直交しており、その境界の角は取り除かれている。
【0065】
図7は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドユニットの流路部材側の平面図であり、図8(a)は、図7のA−A’断面図であり、図8(b)は図7のB−B’断面図である。
【0066】
図7及び図8(a)を用いて、プラットフォーム20Aについて詳細に説明する。図示するように、プラットフォーム20Aには、ノズル列14側の面に金属からなるサポート基板40が設けられている。これにより、シリコンからなるプラットフォーム20の強度が補強されている。また、プラットフォーム20Aには、一つのヘッド10につき一つの開口部23が設けられ、サポート基板40には開口部23に連通するように基板側保持孔42が設けられている。
【0067】
プラットフォーム20の開口部23は、フランジ部17よりも大きな開口で設けられ、サポート基板40の基板側保持孔42は、ヘッド10のノズル列14側の外周よりも若干大きく、且つフランジ部17よりも小さな開口で設けられている。このため、開口部23及び基板側保持孔42にヘッド10を挿入すると、ヘッド10と開口部23及び基板側保持孔42との間には空隙が生ずるので、ヘッド10がプラットフォーム20Aに対して第1の方向及び第2の方向に若干移動可能になっている。
【0068】
また、プラットフォーム20Aには、一つのヘッド10につき第1の基準である第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2がフォトリソグラフィーにより形成されている。本実施形態では、第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2はプラットフォーム20Aの開口部23の内周面の一部として所定位置に形成されている。ここで第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2が所定位置に形成されているとは、第1の基準面21A−1,2に第2の基準面31A−1,2が当接された際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1の基準面21A−1,2がプラットフォーム20に形成されていることをいう。すなわち、第1の基準面21A−1,2を開口部23の内周面の所定位置に形成すれば、第2の基準面31A−1,2を第1の基準面21A−1,2に当接させると、ヘッド10がプラットフォーム20Aの所定位置に取り付けられることになる。このとき、前記したように第2の基準面31A−1,2はノズル列14を基準に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0069】
このような第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2は、開口部23と同時に形成されるものであり、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20A上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。本実施形態では、第1の基準面21A−1と第1の基準面21A−2とは直交している。
【0070】
また、開口部23の内周面における第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2に対向する部分には、板バネ25を介して付勢部材24が設けられている。
【0071】
図7及び図8(b)を用いて、位置決めされたヘッド10について説明する。図示するように、開口部23及び基板側保持孔42には、ヘッド10のノズル列14側が挿入されており、フランジ部17が基準部材30Aを介してサポート基板40に保持されている。さらに、ヘッド10は、付勢部材24を介して板バネ25により第1の基準面21A−1,2方向に押圧されている。
【0072】
図9は、第1の基準面と第2の基準面とを示す要部平面図である。図9(a)に示すように、第2の基準面31A−1は第1の基準面21A−1に当接し、かつ第2の基準面31A−2は第1の基準面21A−2に当接している。また、第1の基準面21A−1と第1の基準面21A−2との境界の角が落とされているが、これは、基準部材30を形成する際に角を残したままであると、その角に生じたバリにより第1の基準面と第2の基準面とが密に当接することが妨げられてしまうからである。角を落としたことにより、第1の基準面と第2の基準面とを密に当接させることが可能となっている。なお、図9(b)に示すように、バリなどの影響を回避するためには、第1の基準面21A−1と第1の基準面21A−2との間に基準部材30Aの角部が当接しないように逃げ部26を設けてもよい。これにより、第2の基準面31A−1と第2の基準面31A−2との境界の角を取り除かなくても、その角は、第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2に当接しないので、角にバリ等が生じていても、第1の基準面21A−1、2と第2の基準面31A−1、2とを密に当接させることができる。
【0073】
上述したように、第1の基準面21A−1,2及び第2の基準面31A−1,2は、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、第2の基準面31A−1,2を第1の基準面21A−1,2に当接させれば、各ヘッド10をプラットフォーム20Aの所定位置に高精度に配置することができる。
【0074】
さらに、第2の基準面31A−1,2は、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準面31A−1,2が第1の基準面21A−1、2に当接されれば、ノズル列14は第1の基準面21A−1,2に対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、各ヘッド10のプラットフォーム20に対する位置決めは、ヘッド10を開口部23及び基板側保持孔42に挿入し、当該ヘッド10を付勢部材24を介して板バネ25に押圧させるだけで高精度にかつ容易に行うことができる。従来においては、ヘッド10を所定位置に位置決めするためにアクチュエーター装置やアライメントマスクを用いてその位置の微調整を要していたが、本実施形態のヘッドユニット1によれば、このような装置や工程が不要となるからである。また従来のような調整機構をヘッドユニットに設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、このような位置決めの容易性によれば、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0076】
なお、本実施形態では、第2の基準面31A−1,2は、フォトリソグラフィーにより形成したものであるが、必ずしもこれに限られない。図10を用いて、第1の基準面31A−1,2のみフォトリソグラフィーにより形成した場合におけるヘッドユニットについて説明する。図10は、ヘッドユニットの断面図である。
【0077】
図示するように、ヘッド10のフランジ部17には、基準部材30Aは設けられておらず、フランジ部17の側面を第2の基準面31Aとして用いている。この場合においても、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面21A−1,2にフランジ部17の側面である第2の基準面31Aが当接して位置決めされるため、第2の基準面31A−1,2を有する基準部材30Aを設けた場合ほどではないものの、ヘッド10を精度良くプラットフォーム20に取り付けることができる。
【0078】
〈実施形態3〉
図11は、実施形態3に係るヘッドユニットの断面図である。実施形態1及び実施形態2と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
図示するように、プラットフォーム20Bには第1の基準として第1のマーク21Bが設けられ、基準部材30Bには第2の基準として第2のマーク31Bが設けられている。
【0080】
基準部材30Bには、各第2のマーク31Bが、フォトリソグラフィーによりノズル列14を基準とする所定位置に設けられている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2のマーク31Bが第1のマーク21Bに位置決めされると、各第1のマーク21B同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0081】
また、第2のマーク31Bは、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例であり、フランジ部17に設けられた基準部材30Bに形成されている。すなわち、第2のマーク31Bは、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってサポート基板40の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0082】
このような第2のマーク31Bは、ノズル列14を基準とする所定位置に開口部を有するフォトレジストパターンを基準部材30上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0083】
プラットフォーム20Bには、各第1のマーク21Bが、フォトリソグラフィーによりプラットフォーム20の所定位置に形成されている。ここで第1のマーク21Bが所定位置に形成されているとは、第1のマーク21Bに第2のマーク31Bが位置決めされた際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1のマーク21Bがプラットフォーム20Bに形成されていることをいう。すなわち、第1のマーク21Bを所定位置に形成すれば、第2のマーク31Bを第1のマーク21Bに位置決めすると、ヘッド10がプラットフォーム20B上に所定の配置で取り付けられることになる。このとき、前記したように第2のマーク31Bはノズル列14を基準に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0084】
このような第1のマーク21Bは、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20B上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0085】
また、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bは同一形状に形成されている。ここで、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bの形状が同一であるとは、平面視において、第1のマーク21Bと第2のマーク31Bとが一致することをいう。本実施形態では、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bは、プラットフォーム20B及び基準部材30Bに同一直径の円形の貫通孔をフォトリソグラフィーにより形成したものである。
【0086】
かかる第1のマーク21Bが設けられたプラットフォーム20Bには、平面視において第2のマーク31Bが第1のマーク21Bに一致した状態で、ヘッド10が固定されている。
【0087】
上述したように、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bは、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、第2のマーク31Bを第1のマーク21Bに一致させれば各ヘッド10をプラットフォーム20Bの所定位置に高精度に配置することができる。
【0088】
さらに、第2のマーク31Bは、ノズル列14を基準に形成されているので、第2のマーク31Bが第1のマーク21Bに位置決めされれば、ノズル列14は第1のマーク21Bに対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、各ヘッド10のプラットフォーム20Bに対する位置決めは、ヘッド10を保持孔22及び基板側保持孔42に挿入し、第2のマーク31Bを第1のマーク21Bに一致させるだけで高精度にかつ容易に行うことができる。従来においては、ヘッド10を所定位置に位置決めするためにアクチュエーター装置やアライメントマスクを用いてその位置の微調整を要していたが、本実施形態のヘッドユニット1によれば、このような装置や工程が不要となるからである。また従来のような調整機構をヘッドユニットに設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、このような位置決めの容易性によれば、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0090】
〈実施形態4〉
実施形態1〜実施形態3においては、第2の基準をフランジ部17等に設けたが、これに限定されず、ノズル開口が設けられたノズルプレートに第2の基準を設けてもよい。
【0091】
図12は、実施形態4に係るヘッドユニットの要部断面図である。実施形態1〜実施形態3と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0092】
図示するように、ヘッド10には、フォトリソグラフィーにより形成されたノズル列14を有するノズルプレート60が設けられており、ノズルプレート60には、第2の基準の一例である第2の基準孔31Cがフォトリソグラフィーにより形成されている。詳言すると、第2の基準孔31Cは、ノズル列14を基準とする所定位置に形成されている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2の基準孔31Cが第1の基準孔21Cに位置決めされると、各第1の基準孔21C同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0093】
このような第2の基準孔31Cは、ノズル列14を基準とする所定位置に第1の基準孔21Cと同形状の開口部を有するフォトレジストパターンをノズルプレート60上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。また、第2の基準孔31Cの開口形状は、位置決めピン50が挿通されたときに、位置決めピン50の外周面に外接する形状となっている。
【0094】
また、プラットフォーム20Cには、ヘッド10毎に第1の基準孔21C(第1の基準)が所定位置にフォトリソグラフィーにより形成されている。ここで第1の基準孔21Cが所定位置に形成されているとは、第1の基準孔21Cに第2の基準孔31Cが位置決めされた際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1の基準孔21Cがプラットフォーム20Cに形成されていることをいう。すなわち、第1の基準孔21Cを所定位置に形成すれば、第2の基準孔31Cを第1の基準孔21Cに位置決めすると、ヘッド10がプラットフォーム20C上に所定の配置で取り付けられることになる。このとき、前記したように第2の基準孔31Cはノズル列14を基準にノズルプレート60に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0095】
第1の基準孔21Cは、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20C上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。また、第1の基準孔21Cの開口形状と、第2の基準孔31Cの開口形状とは、位置決めピン50が挿通されたときに位置決めピン50の外周面に外接する形状となっている。なお、実施形態1にも述べたように、第1の基準孔21C又は第2の基準孔31Cの開口形状は、挿通された位置決めピン50の径方向への移動が規制されるように形成されていればよい。
【0096】
またヘッド本体12及びフランジ部17には第2の基準孔31Cに連通する挿通孔18Cが設けられている。これらの挿通孔18C、第2の基準孔31C、及び第1の基準孔21Cには、位置決めピン50が挿通されている。また、ヘッド10とプラットフォーム20Cとは固定ネジ51により固定されている。
【0097】
上述したように、第1の基準孔21C及び第2の基準孔31Cの開口形状は同形状になっており、これらの内周面が位置決めピン50の外周面に当接するようになっている。一方、これらの第1の基準孔21C及び第2の基準孔31Cは、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、位置決めピン50を第1の基準孔21Cと第2の基準孔31Cとに挿通すれば、第1の基準孔21Cと第2の基準孔31Cとが高精度に位置決めされる。この結果、各ヘッド10をプラットフォーム20Cの所定の位置に高精度に配置することができる。
【0098】
さらに、第2の基準孔31Cは、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準孔31Cが第1の基準孔21Cに位置決めされれば、ノズル列14は第1の基準孔21Cに対しても高精度に位置決めされることとなる。
【0099】
特に本実施形態では、第2の基準孔31Cはノズルプレート60に形成されているので、ノズル開口11の形成と同時に第2の基準孔31Cを形成しうる。このため、合理的に第2の基準孔31Cを形成できる。また、ノズルプレート60が直接プラットフォーム20Cに取り付けられるため、基準部材30など他の部材に第2の基準孔31Cを形成する場合に比較して、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置関係をより一層高精度に位置決めすることができる。
【0100】
〈実施形態5〉
図13は、実施形態5に係るヘッドユニットの断面図である。実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0101】
図13(a)に示すように、プラットフォーム20Dは、第1の基準孔21D(第1の基準)が設けられてヘッド10毎に形成された部材の一例である位置決め部材27を有している。各位置決め部材27は、プラットフォーム基板28に取り付けられており、プラットフォーム20Dは、これらの位置決め部材27及びプラットフォーム基板28から構成されている。
【0102】
本実施形態では、ヘッド10毎に2つの位置決め部材27が形成され、当該位置決め部材27は、保持孔22に挿通したヘッド10のフランジ部17に対向するように、プラットフォーム基板28に取り付けられている。
【0103】
このような位置決め部材27は、シリコンからなり、その表面にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより第1の基準孔21Dが形成されている。基準部材30も同様に、シリコンからなり、その表面にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより第2の基準孔31が形成されている。また、これらの第1の基準孔21D及び第2の基準孔31は、後述する位置決めピン50Aが嵌合する開口形状を有している。
【0104】
プラットフォーム基板28は、SUSなどの金属からなり、ヘッド10のノズル列14側が挿通する保持孔22(図示せず)と、固定ネジ51(図3参照)が螺合する雌ねじ部(図示せず)が設けられている。
【0105】
プラットフォーム20Dは、第1の基準孔21D同士の相対位置が所定の配置となるように各位置決め部材27がプラットフォーム基板28に取り付けられることにより形成されている。このようなプラットフォーム20Dは、例えば、各第1の基準孔21Dの配置を規定する基準が設けられたガラスマスクを用い、その基準に各第1の基準孔21Dの位置が合うように各位置決め部材27をプラットフォーム基板28に取り付けることで形成することができる。本実施形態では、位置決め部材27には予め第1の基準孔21Dに位置決めピン50Aを挿通して固定したものを、ガラスマスクの基準に合うように位置決めしてプラットフォーム基板28に固定してある。
【0106】
ヘッド10はノズル列14側が保持孔22を挿通して、プラットフォーム基板28よりもインクの吐出方向側に突出しており、フランジ部17が基準部材30を介して位置決め部材27に載置されている。また、第1の基準孔21Dと第2の基準孔31とには、位置決めピン50Aが挿通している。第1の基準孔21D及び第2の基準孔31に位置決めピン50Aが挿通することで、第2の基準孔31は、第1の基準孔21Dに位置決めされている。
【0107】
また、固定ネジ51(図3参照)が、取付孔19及び取付孔32(図2参照)を挿通してプラットフォーム基板28に螺合されており、基準部材30を介して位置決め部材27に載置されたヘッド10がプラットフォーム20Dに固定されている。
【0108】
このように、ヘッド10がプラットフォーム20Dに載置され、第2の基準孔31が第1の基準孔21Dに位置決めされると、ヘッド10は、その相対位置が第1の基準孔21D同士の相対位置を保持した状態でプラットフォーム20Dに搭載される。また、実施形態1で説明したように第2の基準孔31はノズル列14を基準に形成されているので、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま配列されている。
【0109】
また、第2の基準孔31は、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例でありフランジ部17に設けられた基準部材30に形成されている。すなわち、第2の基準孔31は、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってプラットフォーム基板28の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0110】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、第1の基準孔21D及び第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、第2の基準孔31を第1の基準孔21Dに位置決めピン50Aを介して位置決めすることで、各ヘッド10をプラットフォーム20Dの所定位置に高精度に配置することができる。また、第2の基準孔31は、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準孔31が第1の基準孔21Dに位置決めピン50Aを介して位置決めされれば、ノズル列14は第1の基準孔21Dに対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0111】
また、本実施形態では、プラットフォーム20Dは、位置決めピン50Aが予め固定された位置決め部材27を有しているので、ヘッド10の第2の基準孔31を位置決めピン50Aに挿通させるだけで、ヘッド10のプラットフォーム20Dに対する位置決めを高精度にかつ容易に行うことができ、また、従来の位置調整機構による調整が不要であるのでヘッド10の取り付けに要する時間を短縮することができる。さらに、位置決めピン50Aへの挿通・固定だけでヘッド10をプラットフォーム20Dに取り付けできるので、ヘッド10の交換も容易である。
【0112】
また、第1の基準孔21Dは、ヘッド10毎に形成された位置決め部材27に設けられているので、第1の基準孔21Dのプラットフォーム基板28に対する取り付けの自由度が向上する。すなわち、位置決め部材27の配置を調整することで、各第1の基準孔21Dの相対位置を調整することができる。これにより、ヘッド10の相対位置を、用途や目的などに応じて調整することを容易に行うことができる。例えば、高密度な印字が可能なヘッドユニット1を構成する場合には、或るヘッド10のノズル列14のノズル開口11の間に、他のヘッド10のノズル列14のノズル開口11が位置するように、位置決め部材27をプラットフォーム基板28に取り付けることで容易に実現することができる。一つの基板に複数の第1の基準孔を設けると、このような微調整が必要となるたびに別の基板に複数の第1の基準孔をフォトリソグラフィにより形成する必要があるが、本実施形態では、第1の基準孔21Dが形成された位置決め部材27をプラットフォーム基板28に追加したり、配置し直したり、若しくはプラットフォーム基板から位置決め部材27を取り外すだけですむ。
【0113】
また、一つの部材に全ての第1の基準孔21Dを設けると、一つの部材からは一つのヘッドユニット1のプラットフォームが形成されるだけであり、その部材には第1の基準孔21Dが設けられていない未使用領域が存在する。一方、本実施形態では、一つの部材から、第1の基準孔21Dが設けられた位置決め部材27を複数形成することができるため、前記した未使用領域を余すことがない。このように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、位置決め部材27の取り数を向上できるため、コストの削減を図ることができる。
【0114】
さらに、位置決め部材27は、ヘッド10毎に個別に形成されているため、プラットフォーム基板28との線膨張係数差による反りが生じにくく、これによる第1の基準孔21Dの変形や位置ズレを防止することができる。また、位置決め部材27が破損や損耗し、交換が必要となっても、プラットフォーム20Dそのものを交換する必要はなく、破損等した位置決め部材27だけを交換すればよい。したがって交換に掛かるコストは、プラットフォーム20Dそのものを交換する場合よりも低コストにすることができる。
【0115】
また、実施形態1に係るヘッドユニット1と同様に、本実施形態に係るヘッドユニット1においても、従来のような調整機構をヘッドユニットに設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0116】
なお、本実施形態では、位置決めピン50Aは、位置決め部材27側に固定されていたがこれに限らず、基準部材30の第2の基準孔31に挿通されて固定されていても良い。また、位置決めピン50Aは、予め位置決め部材27又は基準部材30の何れか一方に固定されている必要もなく、第1の基準孔21Dと第2の基準孔31とを位置合わせした後、位置決めピン50Aを挿通させたものであっても良い。ちなみに、位置決めピン50Aをプラットフォーム20D側に固定すれば、ヘッド10のプラットフォーム20Dへの着脱で位置決めピン50Aにより損耗する物は、交換対象となるヘッド10側の第2の基準孔31である。したがって、交換対象ではないプラットフォーム20Dがヘッド10の交換で破損等することを抑制することができる。
【0117】
また、プラットフォーム20Dは、サポート基板を有していてもよく、サポート基板をプラットフォーム基板28の位置決め部材27とは反対側に接合されたものをプラットフォームとしてもよい。また、プラットフォーム20Dは、位置決め部材27をサポート基板に取り付けたものであっても良い。
【0118】
また、位置決め部材27及び基準部材30はシリコンからなるが、フォトリソグラフィーにより第1の基準孔21D及び第2の基準孔31を形成し得る材料であれば特に限定されない。このような材料としては、SUSなどの金属や、ガラスなどのエッチング部材を挙げることができる。
【0119】
さらに、上述した第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成したものであるが、必ずしもこれに限られない。図13(b)を用いて、第1の基準孔21Dのみフォトリソグラフィーにより形成した場合におけるヘッドユニットについて説明する。
【0120】
図示するように、ヘッド10のフランジ部17には、基準部材30は設けられておらず、フランジ部17の挿通孔18が第2の基準として機能している。挿通孔18、第1の基準孔21D、及び挿通孔18には位置決めピン50Aが挿通されている。この場合においても、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔21Dに位置決めピン50を介して挿通孔18が位置決めされるため、第2の基準孔31を有する基準部材30を設けた場合ほどではないものの、ヘッド10を精度良くプラットフォーム20Dに取り付けることができる。
【0121】
また、第1の基準が実施形態2のように基準面である場合は、本実施形態の位置決め部材27の側面をフォトリソグラフィーで形成された第1の基準面とし、同様に、基準部材30の側面をフォトリソグラフィーで形成された第2の基準面とすればよい。この場合であっても、第1の基準孔21Dをヘッド10毎に形成した位置決め部材27にそれぞれ設けた場合と同様の効果を奏する。
【0122】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0123】
上述した実施形態1〜実施形態4では、プラットフォームは一枚のシリコン板から形成されていたが、複数のシリコン板から形成されたものであってもよい。一枚の大きなシリコン板では十分な強度を得られない場合などに有用である。
【0124】
また、上述した各実施形態のヘッドユニット1は、インクジェット式記録装置に搭載される。図14は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0125】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、ヘッドユニット1が固定されて、紙などの記録シート等の被噴射媒体Sを搬送することで印刷を行う、所謂ライン式記録装置である。具体的には、インクジェット式記録装置Iは、ヘッドユニット1が固定された装置本体2と、被噴射媒体Sを搬送する搬送手段4と、ヘッドユニット1と被噴射媒体Sを挟んで反対側に設けられて被噴射媒体Sを支持する支持部5とを具備する。
【0126】
ヘッドユニット1は、複数のインクジェット式記録ヘッド10が、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向に複数並設されるように配置されている。具体的には、インクジェット式記録ヘッド10には、上述したように、複数のノズル開口11が並設されたノズル列14が1列から複数列設けられている。そして、インクジェット式記録ヘッド10は、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向に向かって、ノズル開口11が並設されるように配置されている。また、複数のインクジェット式記録ヘッド10は、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向に並設され、且つ搬送方向に若干ずらした位置に配置されて、被噴射媒体の搬送方向と交差する方向にノズル列14が連続するように配置されている。すなわち、図14に示す例では、ヘッドユニット1は、被噴射媒体Sの搬送方向が、第2の方向となり、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向が第1の方向となるように配置されている。
【0127】
また、このようなヘッドユニット1の各インクジェット式記録ヘッド10には、図示し
ていないが、インクが貯留されたインクタンクやインクカートリッジなどのインク貯留手段がインクを供給可能に接続されている。インク貯留手段は、例えば、ヘッドユニット1上に保持されていても、また、装置本体2内のヘッドユニット1とは異なる位置に保持されていてもよい。
【0128】
搬送手段4は、ヘッドユニット1に対して被噴射媒体Sの搬送方向の両側に設けられた
第1の搬送手段7と、第2の搬送手段8とを具備する。
【0129】
第1の搬送手段7は、駆動ローラー7aと、従動ローラー7bと、これら駆動ローラー7a及び従動ローラー7bに巻回された搬送ベルト7cとで構成されている。また、第2の搬送手段8は、第1の搬送手段7と同様に駆動ローラー8a、従動ローラー8b及び搬送ベルト8cで構成されている。
【0130】
これらの第1の搬送手段7及び第2の搬送手段8のそれぞれの駆動ローラー7a、8aには、図示しない駆動モータ等の駆動手段が接続されており、駆動手段の駆動力によって搬送ベルト7c、8cが回転駆動することで、被噴射媒体Sをヘッドユニット1の上流及び下流側で搬送する。
【0131】
なお、本実施形態では、駆動ローラー7a、8a、従動ローラー7b、8b及び搬送ベルト7c、8cで構成される第1の搬送手段7及び第2の搬送手段8を例示したが、被噴射媒体Sを搬送ベルト7c、8c上に保持させる保持手段をさらに設けてもよい。保持手段としては、例えば、被噴射媒体Sの外周面を帯電させる帯電手段を設け、この帯電手段によって帯電した被噴射媒体Sを誘電分極の作用により搬送ベルト7c、8c上に吸着させるようにしてもよい。また、保持手段として、搬送ベルト7c、8c上に押えローラーを設け、押えローラーと搬送ベルト7c、8cとの間で被噴射媒体Sを挟持させるようにしてもよい。
【0132】
支持部5は、第1の搬送手段7と第2の搬送手段8との間に、ヘッドユニット1に相対向して設けられたものであり、支持部5は、第1の搬送手段7及び第2の搬送手段8によって搬送された被噴射媒体Sを、ヘッドユニット1に相対向する位置で支持するためのものである。
【0133】
なお、支持部5には、搬送された被噴射媒体Sを支持部5上で吸着する吸着手段を設けるようにしてもよい。吸着手段としては、例えば、被噴射媒体Sを吸引することで吸引吸着するものや、静電気力で被噴射媒体Sを静電吸着するもの等が挙げられる。
【0134】
また、上述した例では、ヘッドユニット1を装置本体2に固定し、搬送手段4が被噴射媒体Sを搬送するようにしたが、搬送手段4は、インクジェット式記録ヘッド10と被噴射媒体Sとを相対的に移動させればよいため、被噴射媒体Sを固定し、搬送手段4がヘッドユニット1を搬送するようにしてもよい。また、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向にもインクジェット式記録ヘッド10を複数設け、被噴射媒体Sを移動することなく、被噴射媒体Sを固定した状態で、被噴射媒体Sの噴射領域の全てに、固定されたインクジェット式記録ヘッド10によって印刷を行うようにしてもよい。すなわち、上述した搬送手段4を実質的に設けないようにしてもよい。もちろん、ヘッドユニット1を搬送方向と交差する方向に移動自在に設け、ヘッドユニット1を搬送方向と交差する方向に移動しながら印刷を行う、所謂シリアル式記録装置にも上述した各実施形態のヘッドユニット1を搭載することもできる。
【0135】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドユニット全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッドユニット等の記録ヘッドユニット、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッドユニット、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッドユニット、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドユニット等にも適用することができる。
【0136】
また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置Iを挙げて説明したが、上述した他の液体噴射ヘッドユニットを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0137】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 11 ノズル開口、 12 ヘッド本体、 13 流路部材、 14 ノズル列、 20、20A、20B、20C、20D プラットフォーム、 21、21C、21D 第1の基準孔、 21A−1,2 第1の基準面、 21B 第1のマーク、 27 位置決め部材、 28 プラットフォーム基板、 30、30A、30B 基準部材、 31、31C 第2の基準孔、 31A−1,2 第2の基準面、 31B 第2のマーク、 40 サポート基板、 50、50A 位置決めピン、 60 ノズルプレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル開口から液体を噴射する液体噴射ヘッドがプラットフォームに複数載置された液体噴射ヘッドユニット及びその製造方法並びに液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式プリンターやプロッター等のインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置は、カートリッジやタンク等に貯留されたインクなどの液体を液滴として噴射可能な液体噴射ヘッドが複数設けられた液体噴射ヘッドユニット(以下、ヘッドユニットとも言う)を具備する。
【0003】
複数の液体噴射ヘッドは、共通の保持部材であるプラットフォームに載置されており、複数の液体噴射ヘッドの配置は、各液体噴射ヘッドのノズル開口が並設されたノズル列が並設方向に連続するように行われる。
【0004】
各液体噴射ヘッドは、これらの相対的な位置が高精度に位置決めされた上でプラットフォームに取り付けられている。液体噴射ヘッドの位置決めは、例えば、アクチュエーター装置を駆動して平行板バネ等を移動させ、所定の基準位置に合わせる技術がある(例えば特許文献1参照)。他にも、ガラスマスク等に予め設けられたアライメントマークに液体噴射ヘッドのノズルを精度よく位置決めする技術がある(例えば特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−57430号公報(請求項4、段落0025等)
【特許文献2】特開2008−36512号公報(段落0086〜0111等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、アクチュエーター装置や平行板バネ等の位置決めのための調整機構が液体噴射ヘッド一つ一つに対応してヘッドユニットに設けられているため、液体噴射ヘッドユニット自体が複雑となり、小型化が阻害されるという問題がある。当然、この調整機構に要するコストも発生する。また、特許文献2の技術では、ガラスマスクのアライメントマークに複数の液体噴射ヘッドが位置決めされるように、その位置を調整する必要があるため、位置調整に時間を要してしまう。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドユニットだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドユニットにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体噴射ヘッドを高精度に位置決めできるとともに、液体噴射ヘッドの交換を容易に行うことができる液体噴射ヘッドユニット及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを具備し、前記プラットフォームは、前記液体噴射ヘッド毎にフォトリソグラフィーにより形成されて当該液体噴射ヘッドが位置決めされた第1の基準を有することを特徴とする液体噴射ヘッドユニットにある。
【0010】
かかる態様では、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準に液体噴射ヘッドが位置決めされるため、液体噴射ヘッドを精度良くプラットフォームに取り付けることができる。また、各液体噴射ヘッドを個別にプラットフォームに位置決めするだけでヘッド同士の相対的な位置決めを高精度に行うことができる。
【0011】
ここで、前記プラットフォームは、前記第1の基準が設けられて前記液体噴射ヘッド毎に形成された部材を有することが好ましい。これによれば、第1の基準のプラットフォームに対する取り付けの自由度が向上し、液体噴射ヘッドの相対位置を、用途や目的などに応じて調整することを容易に行うことができる。第1の基準が設けられた部材の取り数を向上できるため、コストの削減を図ることができる。また、第1の基準に破損等が生じてもプラットフォームそのものを交換する必要はなく、破損等した部材だけを交換することができ、交換に掛かるコストを削減できる。
【0012】
また、前記液体噴射ヘッドには、前記第1の基準に位置決めされる第2の基準がフォトリソグラフィーにより形成されていることが好ましい。これによれば、液体噴射ヘッドにもフォトリソグラフィーにより形成された第2の基準が設けられており、この第2の基準を第1の基準に位置決めするので、より一層高精度に、液体噴射ヘッドをプラットフォームに位置決めすることができる。
【0013】
また、前記第2の基準が前記ノズル列を基準とした位置に形成されていることが好ましい。これによれば、各液体噴射ヘッドのノズル列同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0014】
また、前記液体噴射ヘッドは、前記ノズル列がフォトリソグラフィーにより形成されたノズルプレートを有し、前記第2の基準は、前記ノズルプレートにフォトリソグラフィーにより形成されていることが好ましい。これによれば、ノズル列を基準とする第2の基準をより高精度に所定の位置に形成することができる。
【0015】
また、前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔であり、前記液体噴射ヘッドに設けられた挿通孔と前記第1の基準孔とに位置決めピンが挿通していることが好ましい。これによれば、挿通孔と第1の基準孔とを位置決めピンで位置決めすることができる。
【0016】
また、前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔及び第2の基準孔であり、前記第1の基準孔と前記第2の基準孔とに位置決めピンが挿通していることが好ましい。これによれば、第1の基準孔と第2の基準孔とを位置決めピンで位置決めすることができる。
【0017】
また、前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面であり、前記液体噴射ヘッドの面と前記第1の基準面とが当接していることが好ましい。これによれば、当該面を第1の基準面とに当接させることでこれらを位置決めすることができる。
【0018】
また、前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面及び第2の基準面であり、前記第1の基準面と前記第2の基準面とが当接していることが好ましい。これによれば、第1の基準面と第2の基準面とを当接させることでこれらを位置決めすることができる。
【0019】
また、前記液体噴射ヘッドの前記ノズル開口よりも液体吐出方向とは反対側の領域に前記第2の基準が設けられていることが好ましい。これによれば、第2の基準は、ノズル開口が形成されたノズル面とは同一面上にはなく、液体噴射ヘッドのノズル開口の側方であってプラットフォームの下方には空間が形成される。かかる空間は、例えば液体噴射ヘッドユニットを有する液体噴射装置において、被噴射媒体を搬送する機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。このような空間にローラー等の部材を配置することで、被噴射媒体とノズル面との間隔を当該部材の厚さにより広げることなく、狭い間隔を維持することができ、高精度な液体の噴射が可能となる。
【0020】
また、前記プラットフォームは、金属からなるサポート基板を有していることが好ましい。これにより、プラットフォームの強度が補強される。
【0021】
また、前記プラットフォームは、金属からなることが好ましい。これによれば、耐久性のあるプラットフォームを形成できる。
【0022】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0023】
かかる態様では、印刷品質を向上すると共に液体噴射ヘッドの交換を容易に行うことができる液体噴射装置を実現できる。
【0024】
また、本発明の他の態様は、複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを備える液体噴射ヘッドユニットの製造方法であって、フォトリソグラフィーにより前記液体噴射ヘッド毎に第1の基準を前記プラットフォームに形成し、複数の前記液体噴射ヘッドをそれぞれ前記第1の基準に位置決めして前記プラットフォームに取り付けることを特徴とする液体噴射ヘッドユニットの製造方法にある。
【0025】
かかる態様では、液体噴射ヘッドを高精度に位置決めできるとともに、液体噴射ヘッドの交換を容易に行うことができる液体噴射ヘッドユニットを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るヘッドの概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの要部を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るヘッドの概略斜視図である。
【図7】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの要部を示す平面図である。
【図8】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る第1の基準面と第2の基準面の要部平面図である。
【図10】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態3に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態4に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態5に係るヘッドユニットの要部を示す断面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドユニットの一例であるインクジェット式記録ヘッドユニットの概略斜視図であり、図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、ヘッドユニットとも言う)は、複数のインクジェット式記録ヘッド10(以下、ヘッドとも言う)が載置されたプラットフォーム20を具備する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10(以下、ヘッドとも言う)は、一端面にノズル開口11が設けられたヘッド本体12と、ヘッド本体12のノズル開口11とは反対側の面に固定された流路部材13とを具備する。
【0030】
ヘッド本体12は、ノズル開口11が並設されたノズル列14を具備する。ノズル列14の数は、特に限定されず、例えば、1列であってもよく、2列以上の複数列であってもよい。本実施形態では、1つのヘッド本体12にノズル列14を2列設けるようにした。ここで、本実施形態では、ノズル列14においてノズル開口11が並設された方向を第1の方向とし、第1の方向に交差する方向を第2の方向としている。したがって、2列のノズル列14は、第2の方向に並設されている。
【0031】
なお、ヘッド本体12の内部には、図示していないが、ノズル開口11に連通する流路の一部を構成する圧力発生室と、圧力発生室に圧力変化を生じさせてノズル開口からインクを吐出させる圧力発生手段とが設けられている。
【0032】
圧力発生手段は、特に限定されないが、例えば、電気機械変換機能を呈する圧電材料を2つの電極で挟んだ圧電素子を用いたものや、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口11から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口11から液滴を吐出させるものなどを用いることができる。また、圧電素子としては、圧力発生室側から下電極、圧電材料及び上電極を積層して撓み変形させる撓み振動型の圧電素子や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子などを用いることができる。
【0033】
流路部材13は、ヘッド本体12のノズル開口11とは反対側の面に固定されて、外部からのインクをヘッド本体12に供給又はヘッド本体12から外部にインクを排出するものである。流路部材13のヘッド本体12に固定された面とは反対側の面には、内部の流路が開口して外部の流路が接続される液体流路口(図示せず)と、外部からの印刷信号等の電気信号が供給されるコネクタ(図示せず)とが設けられている。
【0034】
ヘッド10の第1の方向の両側面には、外側に突出するフランジ部17が設けられ、フランジ部17のノズル列14側の面には、基準部材30が設けられている。この基準部材30は、ヘッド10のフランジ部17に対応する領域のみに形成されていてもよいが、フランジ部17に対応する領域を含んで、ヘッド10の側面を囲むような枠状に形成してもよい。
【0035】
基準部材30には第2の基準の一例である第2の基準孔31がフォトリソグラフィーにより形成されている。詳言すると、第2の基準孔31は、ノズル列14を基準とする所定位置に設けられている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2の基準孔31が第1の基準孔21に位置決めされると、各第1の基準孔21同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0036】
また、第2の基準孔31は、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例であり、フランジ部17に設けられた基準部材30に形成されている。すなわち、第2の基準孔31は、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってサポート基板40の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0037】
このような第2の基準孔31は、ノズル列14を基準とする所定位置に第1の基準孔21と同形状の開口部を有するフォトレジストパターンを基準部材30上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0038】
なお、第2の基準孔31の開口形状は、詳細は後述するが、位置決めピン50が挿通されたときに、位置決めピン50の外周面に外接する形状となっている。またフランジ部17には第2の基準孔31に連通する挿通孔18が設けられている。挿通孔18の開口は第2の基準孔31の開口よりも大きく形成されており、これにより位置決めピン50が挿通孔18には接しないようになっている。これは、挿通孔18の開口が第2の基準孔31よりも小さいと、位置決めピン50の位置が挿通孔18で拘束されてしまうのを防止するためである。
【0039】
本実施形態では、基準部材30はシリコンからなるが、フォトリソグラフィーにより第2の基準孔31を形成し得る材料であれば特に限定されない。このような材料としては、SUSなどの金属や、ガラスなどのエッチング部材を挙げることができる。
【0040】
また、基準部材30には、フランジ部17に設けられた取付孔19と連通する取付孔32が設けられており、これらの取付孔19及び取付孔32を挿通した固定ネジ51により、フランジ部17がプラットフォーム20に固定される。
【0041】
図3は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドユニットの流路部材側の平面図であり、図4(a)は、図3のA−A’断面図であり、図4(b)は図3のB−B’断面図である。
【0042】
図3及び図4(a)を用いて、プラットフォーム20について詳細に説明する。図示するようにプラットフォーム20には、ノズル列14側の面に金属からなるサポート基板40が設けられている。これにより、シリコンからなるプラットフォーム20の強度が補強されている。また、プラットフォーム20には、一つのヘッド10につき一つの保持孔22が設けられ、サポート基板40には保持孔22に連通するように基板側保持孔42が設けられている。
【0043】
プラットフォーム20の保持孔22及びサポート基板40の基板側保持孔42は、ヘッド10のノズル列14側の外周よりも若干大きく、且つフランジ部17よりも小さな開口で設けられている。このため、保持孔22及び基板側保持孔42にヘッド10を挿入すると、ヘッド10のフランジ部17がプラットフォーム20に保持されるようになっている。また、ヘッド10と保持孔22及び基板側保持孔42との間には空隙が生ずるので、ヘッド10がプラットフォーム20に対して第1の方向及び第2の方向に若干移動可能になっている。
【0044】
また、プラットフォーム20には、一つのヘッド10につき二つの第1の基準孔21(第1の基準)が所定位置にフォトリソグラフィーにより形成されている。ここで第1の基準孔21が所定位置に形成されているとは、第1の基準孔21に第2の基準孔31が位置決めされた際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1の基準孔21がプラットフォーム20に形成されていることをいう。すなわち、第1の基準孔21を所定位置に形成すれば、第2の基準孔31を第1の基準孔21に位置決めすると、ヘッド10がプラットフォーム20上に所定の配置で取り付けられることになる。このとき、前記したように第2の基準孔31はノズル列14を基準に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0045】
このような第1の基準孔21は、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0046】
また、第1の基準孔21の開口形状、又は、第2の基準孔31の開口形状のうち少なくとも一方の開口形状は位置決めピン50の平面視方向の形状と同一形状となっているため、位置決めピン50が挿通されたときに位置決めピン50の外周面が第1の基準孔21又は第2の基準孔31の壁面に接する形状となっている。なお、第1の基準孔21の開口形状又は第2の基準孔31の開口形状が、位置決めピン50の平面視方向の形状と同一形状でない場合の第1の基準孔21又は第2の基準孔31の開口形状は、例えば、平行四辺形であってもよい。この場合、位置決めピン50が挿通されたときに第1の基準孔21又は第2の基準孔31の壁面の複数点で当該位置決めピン50と接することになる。要するに、これらの第1の基準孔21・第2の基準孔31の壁面に位置決めピン50が当接され、位置決めピン50の基準孔内における径方向への移動が規制されるように、第1の基準孔21又は第2の基準孔31の開口形状が形成されていればよい。一方、サポート基板40には、第1の基準孔21に連通する挿通孔41が設けられているが、挿通孔41はその開口が第1の基準孔21の開口よりも大きく形成されている。このため位置決めピン50が挿通孔18には接しないようになっている。これは、挿通孔41の開口が第1の基準孔21よりも小さいと、位置決めピン50の位置が挿通孔41で拘束されてしまうのを防止するためである。
【0047】
なお、本実施形態では、プラットフォーム20はシリコンからなるが、フォトリソグラフィーにより第1の基準孔21を形成し得る材料であれば特に限定されない。このような材料としては、SUSなどの金属や、ガラスなどのエッチング部材を挙げることができる。
【0048】
図4(b)を用いて、位置決めされたヘッドについて説明する。図示するように、保持孔22及び基板側保持孔42には、ヘッド10のノズル列14側が挿入されており、フランジ部17が基準部材30を介してプラットフォーム20に保持されている。
【0049】
また、挿通孔18、第2の基準孔31、第1の基準孔21、及び挿通孔41には位置決めピン50が挿通され、取付孔19及び取付孔32(図2参照)には固定ネジ51が挿通され、この固定ネジ51によりフランジ部17がプラットフォーム20に固定されている(図3参照)。
【0050】
上述したように、第1の基準孔21及び第2の基準孔31の開口形状は、これらの内周面が位置決めピン50の外周面に当接するようになっている。一方、これらの第1の基準孔21及び第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、位置決めピン50を第1の基準孔21と第2の基準孔31とに挿通すれば、第1の基準孔21と第2の基準孔31とが高精度に位置決めされる。この結果、各ヘッド10をプラットフォーム20の第1の基準孔21に高精度に配置することができる。
【0051】
さらに、第2の基準孔31は、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準孔31が第1の基準孔21に位置決めされれば、ノズル列14は第1の基準孔21に対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0052】
本実施形態では、各ヘッド10の所定位置として、次のように配設した。すなわち、図1に示すように、ヘッド10のノズル列14(図2参照)におけるノズル開口11の並設方向である第1の方向に複数のヘッド10を配置することで、ヘッド群110を構成し、このヘッド群110を第2の方向に4つ並設するようにした。すなわち、ヘッド10は、第1の方向及び第2の方向に沿って複数配置されている。
【0053】
詳言すると、複数のヘッド10は、ノズル列14が第1の方向に連続するように第1の方向に沿って千鳥状に配置されている。そして、第1の方向にノズル列14が連続するように配置された複数のヘッド10からなるヘッド群110が、第2の方向に2つ並設されている。
【0054】
ここで、各ヘッド群110のノズル列14が、第1の方向に連続するとは、各ヘッド群110の第2の方向で互いに隣接するヘッド10において、一方のヘッド10のノズル列14の端部のノズル開口11と、他方のヘッド10のノズル列14の端部のノズル開口11とが、第1の方向で同一位置となるように配置されていることを言う。
【0055】
このように、各ヘッド群110において、複数のヘッド10のノズル列14が第1の方向で連続するように配置されることで、1つのヘッド10のノズル列14で印刷を行う場合に比べて、広範囲な印刷を高速で行わせることができる。
【0056】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、各ヘッド10のプラットフォーム20に対する位置決めは、ヘッド10を保持孔22に挿入したのち、第1の基準孔21と第2の基準孔31とに位置決めピン50を挿通するだけで高精度にかつ容易に行うことができる。従来においては、ヘッド10を所定位置に位置決めする際にアクチュエーター装置やアライメントマスクを用いてその位置の微調整を要していたが、本実施形態のヘッドユニット1によれば、このような装置や工程が不要となるからである。また従来のような調整機構をヘッドユニット1に設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、このような位置決めの容易性によれば、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0057】
なお、本実施形態では、第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成したものであるが、必ずしもこれに限られない。図5を用いて、第1の基準孔21のみフォトリソグラフィーにより形成した場合におけるヘッドユニットについて説明する。図5は、ヘッドユニットの断面図である。
【0058】
図示するように、ヘッド10のフランジ部17には、基準部材30は設けられておらず、フランジ部17の挿通孔18が第2の基準として機能している。挿通孔18、第1の基準孔21、及び挿通孔41には位置決めピン50が挿通され、フランジ部17は直接にプラットフォーム20に保持されている。この場合においても、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔21に位置決めピン50を介して挿通孔18が位置決めされるため、第2の基準孔31を有する基準部材30を設けた場合ほどではないものの、ヘッド10を精度良くプラットフォーム20に取り付けることができる。
【0059】
〈実施形態2〉
図6は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略斜視図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0060】
図示するように、フランジ部17のノズル列14側の面には、基準部材30Aが設けられている。
【0061】
基準部材30Aには第2の基準の一例である第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2がフォトリソグラフィーにより形成されている。第2の基準面31A−1は、基準部材30Aの第1の方向側の側面をいい、第2の基準面31A−2は、当該側面に隣接する側面をいう。
【0062】
詳言すると、第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2は、ノズル列14を基準とした位置に形成されている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、実施形態1と同様に、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2の基準面31A−1,2が第1の基準面21A−1,2に当接されると、各第1の基準面21A−1,2同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0063】
また、第2の基準面31A―1及び第2の基準面31A−2は、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例であり、フランジ部17に設けられている。すなわち、第2の基準面31A―1及び第2の基準面31A−2は、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってサポート基板40の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0064】
このような第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2は、ノズル列14を基準とする所定位置に、第2の基準面31A−1及び第2の基準面31A−2が現れるように所定形状のフォトレジストパターンを基準部材30A上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。なお、第2の基準面31A−1と第2の基準面31A−2とは直交しており、その境界の角は取り除かれている。
【0065】
図7は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドユニットの流路部材側の平面図であり、図8(a)は、図7のA−A’断面図であり、図8(b)は図7のB−B’断面図である。
【0066】
図7及び図8(a)を用いて、プラットフォーム20Aについて詳細に説明する。図示するように、プラットフォーム20Aには、ノズル列14側の面に金属からなるサポート基板40が設けられている。これにより、シリコンからなるプラットフォーム20の強度が補強されている。また、プラットフォーム20Aには、一つのヘッド10につき一つの開口部23が設けられ、サポート基板40には開口部23に連通するように基板側保持孔42が設けられている。
【0067】
プラットフォーム20の開口部23は、フランジ部17よりも大きな開口で設けられ、サポート基板40の基板側保持孔42は、ヘッド10のノズル列14側の外周よりも若干大きく、且つフランジ部17よりも小さな開口で設けられている。このため、開口部23及び基板側保持孔42にヘッド10を挿入すると、ヘッド10と開口部23及び基板側保持孔42との間には空隙が生ずるので、ヘッド10がプラットフォーム20Aに対して第1の方向及び第2の方向に若干移動可能になっている。
【0068】
また、プラットフォーム20Aには、一つのヘッド10につき第1の基準である第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2がフォトリソグラフィーにより形成されている。本実施形態では、第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2はプラットフォーム20Aの開口部23の内周面の一部として所定位置に形成されている。ここで第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2が所定位置に形成されているとは、第1の基準面21A−1,2に第2の基準面31A−1,2が当接された際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1の基準面21A−1,2がプラットフォーム20に形成されていることをいう。すなわち、第1の基準面21A−1,2を開口部23の内周面の所定位置に形成すれば、第2の基準面31A−1,2を第1の基準面21A−1,2に当接させると、ヘッド10がプラットフォーム20Aの所定位置に取り付けられることになる。このとき、前記したように第2の基準面31A−1,2はノズル列14を基準に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0069】
このような第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2は、開口部23と同時に形成されるものであり、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20A上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。本実施形態では、第1の基準面21A−1と第1の基準面21A−2とは直交している。
【0070】
また、開口部23の内周面における第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2に対向する部分には、板バネ25を介して付勢部材24が設けられている。
【0071】
図7及び図8(b)を用いて、位置決めされたヘッド10について説明する。図示するように、開口部23及び基板側保持孔42には、ヘッド10のノズル列14側が挿入されており、フランジ部17が基準部材30Aを介してサポート基板40に保持されている。さらに、ヘッド10は、付勢部材24を介して板バネ25により第1の基準面21A−1,2方向に押圧されている。
【0072】
図9は、第1の基準面と第2の基準面とを示す要部平面図である。図9(a)に示すように、第2の基準面31A−1は第1の基準面21A−1に当接し、かつ第2の基準面31A−2は第1の基準面21A−2に当接している。また、第1の基準面21A−1と第1の基準面21A−2との境界の角が落とされているが、これは、基準部材30を形成する際に角を残したままであると、その角に生じたバリにより第1の基準面と第2の基準面とが密に当接することが妨げられてしまうからである。角を落としたことにより、第1の基準面と第2の基準面とを密に当接させることが可能となっている。なお、図9(b)に示すように、バリなどの影響を回避するためには、第1の基準面21A−1と第1の基準面21A−2との間に基準部材30Aの角部が当接しないように逃げ部26を設けてもよい。これにより、第2の基準面31A−1と第2の基準面31A−2との境界の角を取り除かなくても、その角は、第1の基準面21A−1及び第1の基準面21A−2に当接しないので、角にバリ等が生じていても、第1の基準面21A−1、2と第2の基準面31A−1、2とを密に当接させることができる。
【0073】
上述したように、第1の基準面21A−1,2及び第2の基準面31A−1,2は、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、第2の基準面31A−1,2を第1の基準面21A−1,2に当接させれば、各ヘッド10をプラットフォーム20Aの所定位置に高精度に配置することができる。
【0074】
さらに、第2の基準面31A−1,2は、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準面31A−1,2が第1の基準面21A−1、2に当接されれば、ノズル列14は第1の基準面21A−1,2に対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0075】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、各ヘッド10のプラットフォーム20に対する位置決めは、ヘッド10を開口部23及び基板側保持孔42に挿入し、当該ヘッド10を付勢部材24を介して板バネ25に押圧させるだけで高精度にかつ容易に行うことができる。従来においては、ヘッド10を所定位置に位置決めするためにアクチュエーター装置やアライメントマスクを用いてその位置の微調整を要していたが、本実施形態のヘッドユニット1によれば、このような装置や工程が不要となるからである。また従来のような調整機構をヘッドユニットに設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、このような位置決めの容易性によれば、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0076】
なお、本実施形態では、第2の基準面31A−1,2は、フォトリソグラフィーにより形成したものであるが、必ずしもこれに限られない。図10を用いて、第1の基準面31A−1,2のみフォトリソグラフィーにより形成した場合におけるヘッドユニットについて説明する。図10は、ヘッドユニットの断面図である。
【0077】
図示するように、ヘッド10のフランジ部17には、基準部材30Aは設けられておらず、フランジ部17の側面を第2の基準面31Aとして用いている。この場合においても、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面21A−1,2にフランジ部17の側面である第2の基準面31Aが当接して位置決めされるため、第2の基準面31A−1,2を有する基準部材30Aを設けた場合ほどではないものの、ヘッド10を精度良くプラットフォーム20に取り付けることができる。
【0078】
〈実施形態3〉
図11は、実施形態3に係るヘッドユニットの断面図である。実施形態1及び実施形態2と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
図示するように、プラットフォーム20Bには第1の基準として第1のマーク21Bが設けられ、基準部材30Bには第2の基準として第2のマーク31Bが設けられている。
【0080】
基準部材30Bには、各第2のマーク31Bが、フォトリソグラフィーによりノズル列14を基準とする所定位置に設けられている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2のマーク31Bが第1のマーク21Bに位置決めされると、各第1のマーク21B同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0081】
また、第2のマーク31Bは、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例であり、フランジ部17に設けられた基準部材30Bに形成されている。すなわち、第2のマーク31Bは、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってサポート基板40の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0082】
このような第2のマーク31Bは、ノズル列14を基準とする所定位置に開口部を有するフォトレジストパターンを基準部材30上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0083】
プラットフォーム20Bには、各第1のマーク21Bが、フォトリソグラフィーによりプラットフォーム20の所定位置に形成されている。ここで第1のマーク21Bが所定位置に形成されているとは、第1のマーク21Bに第2のマーク31Bが位置決めされた際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1のマーク21Bがプラットフォーム20Bに形成されていることをいう。すなわち、第1のマーク21Bを所定位置に形成すれば、第2のマーク31Bを第1のマーク21Bに位置決めすると、ヘッド10がプラットフォーム20B上に所定の配置で取り付けられることになる。このとき、前記したように第2のマーク31Bはノズル列14を基準に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0084】
このような第1のマーク21Bは、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20B上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。
【0085】
また、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bは同一形状に形成されている。ここで、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bの形状が同一であるとは、平面視において、第1のマーク21Bと第2のマーク31Bとが一致することをいう。本実施形態では、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bは、プラットフォーム20B及び基準部材30Bに同一直径の円形の貫通孔をフォトリソグラフィーにより形成したものである。
【0086】
かかる第1のマーク21Bが設けられたプラットフォーム20Bには、平面視において第2のマーク31Bが第1のマーク21Bに一致した状態で、ヘッド10が固定されている。
【0087】
上述したように、第1のマーク21B及び第2のマーク31Bは、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、第2のマーク31Bを第1のマーク21Bに一致させれば各ヘッド10をプラットフォーム20Bの所定位置に高精度に配置することができる。
【0088】
さらに、第2のマーク31Bは、ノズル列14を基準に形成されているので、第2のマーク31Bが第1のマーク21Bに位置決めされれば、ノズル列14は第1のマーク21Bに対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0089】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、各ヘッド10のプラットフォーム20Bに対する位置決めは、ヘッド10を保持孔22及び基板側保持孔42に挿入し、第2のマーク31Bを第1のマーク21Bに一致させるだけで高精度にかつ容易に行うことができる。従来においては、ヘッド10を所定位置に位置決めするためにアクチュエーター装置やアライメントマスクを用いてその位置の微調整を要していたが、本実施形態のヘッドユニット1によれば、このような装置や工程が不要となるからである。また従来のような調整機構をヘッドユニットに設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、このような位置決めの容易性によれば、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0090】
〈実施形態4〉
実施形態1〜実施形態3においては、第2の基準をフランジ部17等に設けたが、これに限定されず、ノズル開口が設けられたノズルプレートに第2の基準を設けてもよい。
【0091】
図12は、実施形態4に係るヘッドユニットの要部断面図である。実施形態1〜実施形態3と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0092】
図示するように、ヘッド10には、フォトリソグラフィーにより形成されたノズル列14を有するノズルプレート60が設けられており、ノズルプレート60には、第2の基準の一例である第2の基準孔31Cがフォトリソグラフィーにより形成されている。詳言すると、第2の基準孔31Cは、ノズル列14を基準とする所定位置に形成されている。このノズル列14を基準とする所定位置とは、ヘッド10をノズル列14側から見た平面視において、ノズル列14からX方向及びY方向に所定距離だけ離れた位置をいう。また、当該所定距離は、全てのヘッド10において共通としてあるので、後述するように、第2の基準孔31Cが第1の基準孔21Cに位置決めされると、各第1の基準孔21C同士の相対的な位置関係を保ってノズル列14が配列されることとなる。
【0093】
このような第2の基準孔31Cは、ノズル列14を基準とする所定位置に第1の基準孔21Cと同形状の開口部を有するフォトレジストパターンをノズルプレート60上に形成し、その後エッチングすることにより形成されている。また、第2の基準孔31Cの開口形状は、位置決めピン50が挿通されたときに、位置決めピン50の外周面に外接する形状となっている。
【0094】
また、プラットフォーム20Cには、ヘッド10毎に第1の基準孔21C(第1の基準)が所定位置にフォトリソグラフィーにより形成されている。ここで第1の基準孔21Cが所定位置に形成されているとは、第1の基準孔21Cに第2の基準孔31Cが位置決めされた際に、複数のヘッド10の相対位置が所定の配置となるように第1の基準孔21Cがプラットフォーム20Cに形成されていることをいう。すなわち、第1の基準孔21Cを所定位置に形成すれば、第2の基準孔31Cを第1の基準孔21Cに位置決めすると、ヘッド10がプラットフォーム20C上に所定の配置で取り付けられることになる。このとき、前記したように第2の基準孔31Cはノズル列14を基準にノズルプレート60に形成されているから、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま、配列されることとなる。
【0095】
第1の基準孔21Cは、シリコンの板状部材からなるプラットフォーム20C上にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより形成されている。また、第1の基準孔21Cの開口形状と、第2の基準孔31Cの開口形状とは、位置決めピン50が挿通されたときに位置決めピン50の外周面に外接する形状となっている。なお、実施形態1にも述べたように、第1の基準孔21C又は第2の基準孔31Cの開口形状は、挿通された位置決めピン50の径方向への移動が規制されるように形成されていればよい。
【0096】
またヘッド本体12及びフランジ部17には第2の基準孔31Cに連通する挿通孔18Cが設けられている。これらの挿通孔18C、第2の基準孔31C、及び第1の基準孔21Cには、位置決めピン50が挿通されている。また、ヘッド10とプラットフォーム20Cとは固定ネジ51により固定されている。
【0097】
上述したように、第1の基準孔21C及び第2の基準孔31Cの開口形状は同形状になっており、これらの内周面が位置決めピン50の外周面に当接するようになっている。一方、これらの第1の基準孔21C及び第2の基準孔31Cは、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、位置決めピン50を第1の基準孔21Cと第2の基準孔31Cとに挿通すれば、第1の基準孔21Cと第2の基準孔31Cとが高精度に位置決めされる。この結果、各ヘッド10をプラットフォーム20Cの所定の位置に高精度に配置することができる。
【0098】
さらに、第2の基準孔31Cは、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準孔31Cが第1の基準孔21Cに位置決めされれば、ノズル列14は第1の基準孔21Cに対しても高精度に位置決めされることとなる。
【0099】
特に本実施形態では、第2の基準孔31Cはノズルプレート60に形成されているので、ノズル開口11の形成と同時に第2の基準孔31Cを形成しうる。このため、合理的に第2の基準孔31Cを形成できる。また、ノズルプレート60が直接プラットフォーム20Cに取り付けられるため、基準部材30など他の部材に第2の基準孔31Cを形成する場合に比較して、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置関係をより一層高精度に位置決めすることができる。
【0100】
〈実施形態5〉
図13は、実施形態5に係るヘッドユニットの断面図である。実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0101】
図13(a)に示すように、プラットフォーム20Dは、第1の基準孔21D(第1の基準)が設けられてヘッド10毎に形成された部材の一例である位置決め部材27を有している。各位置決め部材27は、プラットフォーム基板28に取り付けられており、プラットフォーム20Dは、これらの位置決め部材27及びプラットフォーム基板28から構成されている。
【0102】
本実施形態では、ヘッド10毎に2つの位置決め部材27が形成され、当該位置決め部材27は、保持孔22に挿通したヘッド10のフランジ部17に対向するように、プラットフォーム基板28に取り付けられている。
【0103】
このような位置決め部材27は、シリコンからなり、その表面にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより第1の基準孔21Dが形成されている。基準部材30も同様に、シリコンからなり、その表面にフォトリソグラフィーにより所定のフォトレジストパターンを形成し、その後エッチングすることにより第2の基準孔31が形成されている。また、これらの第1の基準孔21D及び第2の基準孔31は、後述する位置決めピン50Aが嵌合する開口形状を有している。
【0104】
プラットフォーム基板28は、SUSなどの金属からなり、ヘッド10のノズル列14側が挿通する保持孔22(図示せず)と、固定ネジ51(図3参照)が螺合する雌ねじ部(図示せず)が設けられている。
【0105】
プラットフォーム20Dは、第1の基準孔21D同士の相対位置が所定の配置となるように各位置決め部材27がプラットフォーム基板28に取り付けられることにより形成されている。このようなプラットフォーム20Dは、例えば、各第1の基準孔21Dの配置を規定する基準が設けられたガラスマスクを用い、その基準に各第1の基準孔21Dの位置が合うように各位置決め部材27をプラットフォーム基板28に取り付けることで形成することができる。本実施形態では、位置決め部材27には予め第1の基準孔21Dに位置決めピン50Aを挿通して固定したものを、ガラスマスクの基準に合うように位置決めしてプラットフォーム基板28に固定してある。
【0106】
ヘッド10はノズル列14側が保持孔22を挿通して、プラットフォーム基板28よりもインクの吐出方向側に突出しており、フランジ部17が基準部材30を介して位置決め部材27に載置されている。また、第1の基準孔21Dと第2の基準孔31とには、位置決めピン50Aが挿通している。第1の基準孔21D及び第2の基準孔31に位置決めピン50Aが挿通することで、第2の基準孔31は、第1の基準孔21Dに位置決めされている。
【0107】
また、固定ネジ51(図3参照)が、取付孔19及び取付孔32(図2参照)を挿通してプラットフォーム基板28に螺合されており、基準部材30を介して位置決め部材27に載置されたヘッド10がプラットフォーム20Dに固定されている。
【0108】
このように、ヘッド10がプラットフォーム20Dに載置され、第2の基準孔31が第1の基準孔21Dに位置決めされると、ヘッド10は、その相対位置が第1の基準孔21D同士の相対位置を保持した状態でプラットフォーム20Dに搭載される。また、実施形態1で説明したように第2の基準孔31はノズル列14を基準に形成されているので、ノズル列14もヘッド10の相対的な位置を保ったまま配列されている。
【0109】
また、第2の基準孔31は、ヘッド10のノズル開口11よりもインク吐出方向とは反対側の領域の一例でありフランジ部17に設けられた基準部材30に形成されている。すなわち、第2の基準孔31は、ノズル列14が形成されたノズル面とは同一面上にはない。これにより、ヘッド10のノズル列14の側方であってプラットフォーム基板28の下方には空間が形成される。かかる空間は、例えばヘッドユニット1を有するインクジェット式記録装置において、給紙機構を構成するローラー等の部材を配置しうるスペースとして利用することができる。これにより、用紙とノズル面との間隔に当該部材の介在することにより当該間隔が広がることが回避され、当該間隔を狭く維持して高精度な印字を行うことが可能となる。
【0110】
以上に説明したように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、第1の基準孔21D及び第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成されているため、樹脂を射出成型して形成するよりも寸法公差が小さいものとなっている。したがって、第2の基準孔31を第1の基準孔21Dに位置決めピン50Aを介して位置決めすることで、各ヘッド10をプラットフォーム20Dの所定位置に高精度に配置することができる。また、第2の基準孔31は、ノズル列14を基準に形成されているので、第2の基準孔31が第1の基準孔21Dに位置決めピン50Aを介して位置決めされれば、ノズル列14は第1の基準孔21Dに対しても高精度に位置決めされることとなる。したがって、かかる位置決めにより、各ヘッド10のノズル列14同士の相対的な位置を高精度に規定することができる。
【0111】
また、本実施形態では、プラットフォーム20Dは、位置決めピン50Aが予め固定された位置決め部材27を有しているので、ヘッド10の第2の基準孔31を位置決めピン50Aに挿通させるだけで、ヘッド10のプラットフォーム20Dに対する位置決めを高精度にかつ容易に行うことができ、また、従来の位置調整機構による調整が不要であるのでヘッド10の取り付けに要する時間を短縮することができる。さらに、位置決めピン50Aへの挿通・固定だけでヘッド10をプラットフォーム20Dに取り付けできるので、ヘッド10の交換も容易である。
【0112】
また、第1の基準孔21Dは、ヘッド10毎に形成された位置決め部材27に設けられているので、第1の基準孔21Dのプラットフォーム基板28に対する取り付けの自由度が向上する。すなわち、位置決め部材27の配置を調整することで、各第1の基準孔21Dの相対位置を調整することができる。これにより、ヘッド10の相対位置を、用途や目的などに応じて調整することを容易に行うことができる。例えば、高密度な印字が可能なヘッドユニット1を構成する場合には、或るヘッド10のノズル列14のノズル開口11の間に、他のヘッド10のノズル列14のノズル開口11が位置するように、位置決め部材27をプラットフォーム基板28に取り付けることで容易に実現することができる。一つの基板に複数の第1の基準孔を設けると、このような微調整が必要となるたびに別の基板に複数の第1の基準孔をフォトリソグラフィにより形成する必要があるが、本実施形態では、第1の基準孔21Dが形成された位置決め部材27をプラットフォーム基板28に追加したり、配置し直したり、若しくはプラットフォーム基板から位置決め部材27を取り外すだけですむ。
【0113】
また、一つの部材に全ての第1の基準孔21Dを設けると、一つの部材からは一つのヘッドユニット1のプラットフォームが形成されるだけであり、その部材には第1の基準孔21Dが設けられていない未使用領域が存在する。一方、本実施形態では、一つの部材から、第1の基準孔21Dが設けられた位置決め部材27を複数形成することができるため、前記した未使用領域を余すことがない。このように、本実施形態に係るヘッドユニット1では、位置決め部材27の取り数を向上できるため、コストの削減を図ることができる。
【0114】
さらに、位置決め部材27は、ヘッド10毎に個別に形成されているため、プラットフォーム基板28との線膨張係数差による反りが生じにくく、これによる第1の基準孔21Dの変形や位置ズレを防止することができる。また、位置決め部材27が破損や損耗し、交換が必要となっても、プラットフォーム20Dそのものを交換する必要はなく、破損等した位置決め部材27だけを交換すればよい。したがって交換に掛かるコストは、プラットフォーム20Dそのものを交換する場合よりも低コストにすることができる。
【0115】
また、実施形態1に係るヘッドユニット1と同様に、本実施形態に係るヘッドユニット1においても、従来のような調整機構をヘッドユニットに設ける必要がないため、ヘッドユニット1の小型化を図ることもできる。また、ヘッドユニット1を具備する液体噴射装置が実際に使用されている現場においてヘッド10の交換作業を行う際などにも有用である。ヘッドユニット1を取り替えることなく、ヘッド10を高精度に位置決めした上で個別に交換することができるからである。
【0116】
なお、本実施形態では、位置決めピン50Aは、位置決め部材27側に固定されていたがこれに限らず、基準部材30の第2の基準孔31に挿通されて固定されていても良い。また、位置決めピン50Aは、予め位置決め部材27又は基準部材30の何れか一方に固定されている必要もなく、第1の基準孔21Dと第2の基準孔31とを位置合わせした後、位置決めピン50Aを挿通させたものであっても良い。ちなみに、位置決めピン50Aをプラットフォーム20D側に固定すれば、ヘッド10のプラットフォーム20Dへの着脱で位置決めピン50Aにより損耗する物は、交換対象となるヘッド10側の第2の基準孔31である。したがって、交換対象ではないプラットフォーム20Dがヘッド10の交換で破損等することを抑制することができる。
【0117】
また、プラットフォーム20Dは、サポート基板を有していてもよく、サポート基板をプラットフォーム基板28の位置決め部材27とは反対側に接合されたものをプラットフォームとしてもよい。また、プラットフォーム20Dは、位置決め部材27をサポート基板に取り付けたものであっても良い。
【0118】
また、位置決め部材27及び基準部材30はシリコンからなるが、フォトリソグラフィーにより第1の基準孔21D及び第2の基準孔31を形成し得る材料であれば特に限定されない。このような材料としては、SUSなどの金属や、ガラスなどのエッチング部材を挙げることができる。
【0119】
さらに、上述した第2の基準孔31は、フォトリソグラフィーにより形成したものであるが、必ずしもこれに限られない。図13(b)を用いて、第1の基準孔21Dのみフォトリソグラフィーにより形成した場合におけるヘッドユニットについて説明する。
【0120】
図示するように、ヘッド10のフランジ部17には、基準部材30は設けられておらず、フランジ部17の挿通孔18が第2の基準として機能している。挿通孔18、第1の基準孔21D、及び挿通孔18には位置決めピン50Aが挿通されている。この場合においても、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔21Dに位置決めピン50を介して挿通孔18が位置決めされるため、第2の基準孔31を有する基準部材30を設けた場合ほどではないものの、ヘッド10を精度良くプラットフォーム20Dに取り付けることができる。
【0121】
また、第1の基準が実施形態2のように基準面である場合は、本実施形態の位置決め部材27の側面をフォトリソグラフィーで形成された第1の基準面とし、同様に、基準部材30の側面をフォトリソグラフィーで形成された第2の基準面とすればよい。この場合であっても、第1の基準孔21Dをヘッド10毎に形成した位置決め部材27にそれぞれ設けた場合と同様の効果を奏する。
【0122】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0123】
上述した実施形態1〜実施形態4では、プラットフォームは一枚のシリコン板から形成されていたが、複数のシリコン板から形成されたものであってもよい。一枚の大きなシリコン板では十分な強度を得られない場合などに有用である。
【0124】
また、上述した各実施形態のヘッドユニット1は、インクジェット式記録装置に搭載される。図14は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0125】
図示するように、本実施形態のインクジェット式記録装置Iは、ヘッドユニット1が固定されて、紙などの記録シート等の被噴射媒体Sを搬送することで印刷を行う、所謂ライン式記録装置である。具体的には、インクジェット式記録装置Iは、ヘッドユニット1が固定された装置本体2と、被噴射媒体Sを搬送する搬送手段4と、ヘッドユニット1と被噴射媒体Sを挟んで反対側に設けられて被噴射媒体Sを支持する支持部5とを具備する。
【0126】
ヘッドユニット1は、複数のインクジェット式記録ヘッド10が、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向に複数並設されるように配置されている。具体的には、インクジェット式記録ヘッド10には、上述したように、複数のノズル開口11が並設されたノズル列14が1列から複数列設けられている。そして、インクジェット式記録ヘッド10は、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向に向かって、ノズル開口11が並設されるように配置されている。また、複数のインクジェット式記録ヘッド10は、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向に並設され、且つ搬送方向に若干ずらした位置に配置されて、被噴射媒体の搬送方向と交差する方向にノズル列14が連続するように配置されている。すなわち、図14に示す例では、ヘッドユニット1は、被噴射媒体Sの搬送方向が、第2の方向となり、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向が第1の方向となるように配置されている。
【0127】
また、このようなヘッドユニット1の各インクジェット式記録ヘッド10には、図示し
ていないが、インクが貯留されたインクタンクやインクカートリッジなどのインク貯留手段がインクを供給可能に接続されている。インク貯留手段は、例えば、ヘッドユニット1上に保持されていても、また、装置本体2内のヘッドユニット1とは異なる位置に保持されていてもよい。
【0128】
搬送手段4は、ヘッドユニット1に対して被噴射媒体Sの搬送方向の両側に設けられた
第1の搬送手段7と、第2の搬送手段8とを具備する。
【0129】
第1の搬送手段7は、駆動ローラー7aと、従動ローラー7bと、これら駆動ローラー7a及び従動ローラー7bに巻回された搬送ベルト7cとで構成されている。また、第2の搬送手段8は、第1の搬送手段7と同様に駆動ローラー8a、従動ローラー8b及び搬送ベルト8cで構成されている。
【0130】
これらの第1の搬送手段7及び第2の搬送手段8のそれぞれの駆動ローラー7a、8aには、図示しない駆動モータ等の駆動手段が接続されており、駆動手段の駆動力によって搬送ベルト7c、8cが回転駆動することで、被噴射媒体Sをヘッドユニット1の上流及び下流側で搬送する。
【0131】
なお、本実施形態では、駆動ローラー7a、8a、従動ローラー7b、8b及び搬送ベルト7c、8cで構成される第1の搬送手段7及び第2の搬送手段8を例示したが、被噴射媒体Sを搬送ベルト7c、8c上に保持させる保持手段をさらに設けてもよい。保持手段としては、例えば、被噴射媒体Sの外周面を帯電させる帯電手段を設け、この帯電手段によって帯電した被噴射媒体Sを誘電分極の作用により搬送ベルト7c、8c上に吸着させるようにしてもよい。また、保持手段として、搬送ベルト7c、8c上に押えローラーを設け、押えローラーと搬送ベルト7c、8cとの間で被噴射媒体Sを挟持させるようにしてもよい。
【0132】
支持部5は、第1の搬送手段7と第2の搬送手段8との間に、ヘッドユニット1に相対向して設けられたものであり、支持部5は、第1の搬送手段7及び第2の搬送手段8によって搬送された被噴射媒体Sを、ヘッドユニット1に相対向する位置で支持するためのものである。
【0133】
なお、支持部5には、搬送された被噴射媒体Sを支持部5上で吸着する吸着手段を設けるようにしてもよい。吸着手段としては、例えば、被噴射媒体Sを吸引することで吸引吸着するものや、静電気力で被噴射媒体Sを静電吸着するもの等が挙げられる。
【0134】
また、上述した例では、ヘッドユニット1を装置本体2に固定し、搬送手段4が被噴射媒体Sを搬送するようにしたが、搬送手段4は、インクジェット式記録ヘッド10と被噴射媒体Sとを相対的に移動させればよいため、被噴射媒体Sを固定し、搬送手段4がヘッドユニット1を搬送するようにしてもよい。また、被噴射媒体Sの搬送方向とは交差する方向にもインクジェット式記録ヘッド10を複数設け、被噴射媒体Sを移動することなく、被噴射媒体Sを固定した状態で、被噴射媒体Sの噴射領域の全てに、固定されたインクジェット式記録ヘッド10によって印刷を行うようにしてもよい。すなわち、上述した搬送手段4を実質的に設けないようにしてもよい。もちろん、ヘッドユニット1を搬送方向と交差する方向に移動自在に設け、ヘッドユニット1を搬送方向と交差する方向に移動しながら印刷を行う、所謂シリアル式記録装置にも上述した各実施形態のヘッドユニット1を搭載することもできる。
【0135】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドユニット全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッドユニット等の記録ヘッドユニット、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッドユニット、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッドユニット、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドユニット等にも適用することができる。
【0136】
また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置Iを挙げて説明したが、上述した他の液体噴射ヘッドユニットを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0137】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 1 インクジェット式記録ヘッドユニット(液体噴射ヘッドユニット)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 11 ノズル開口、 12 ヘッド本体、 13 流路部材、 14 ノズル列、 20、20A、20B、20C、20D プラットフォーム、 21、21C、21D 第1の基準孔、 21A−1,2 第1の基準面、 21B 第1のマーク、 27 位置決め部材、 28 プラットフォーム基板、 30、30A、30B 基準部材、 31、31C 第2の基準孔、 31A−1,2 第2の基準面、 31B 第2のマーク、 40 サポート基板、 50、50A 位置決めピン、 60 ノズルプレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、
複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを具備し、
前記プラットフォームは、前記液体噴射ヘッド毎にフォトリソグラフィーにより形成されて当該液体噴射ヘッドが位置決めされた第1の基準を有する
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記プラットフォームは、前記第1の基準が設けられて前記液体噴射ヘッド毎に形成された部材を有する
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記液体噴射ヘッドには、前記第1の基準に位置決めされた第2の基準がフォトリソグラフィーにより形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
請求項3に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第2の基準が前記ノズル列を基準とした位置に形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記液体噴射ヘッドは、前記ノズル列がフォトリソグラフィーにより形成されたノズルプレートを有し、
前記第2の基準は、前記ノズルプレートにフォトリソグラフィーにより形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔であり、
前記液体噴射ヘッドに設けられた挿通孔と前記第1の基準孔とに位置決めピンが挿通されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
請求項3〜請求項5の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔及び第2の基準孔であり、
前記第1の基準孔と前記第2の基準孔とに位置決めピンが挿通されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面であり、
前記液体噴射ヘッドの面と前記第1の基準面とが当接している
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項9】
請求項3〜請求項5の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面及び第2の基準面であり、
前記第1の基準面と前記第2の基準面とが当接している
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項10】
請求項3〜請求項9の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル開口よりも液体吐出方向とは反対側の領域に前記第2の基準が設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記プラットフォームは、金属からなるサポート基板を有している
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記プラットフォームは、金属からなる
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項13】
請求項1〜請求項12の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項14】
複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを備える液体噴射ヘッドユニットの製造方法であって、
フォトリソグラフィーにより前記液体噴射ヘッド毎に第1の基準を前記プラットフォームに形成し、
複数の前記液体噴射ヘッドをそれぞれ前記第1の基準に位置決めして前記プラットフォームに取り付ける
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニットの製造方法。
【請求項1】
複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、
複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを具備し、
前記プラットフォームは、前記液体噴射ヘッド毎にフォトリソグラフィーにより形成されて当該液体噴射ヘッドが位置決めされた第1の基準を有する
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記プラットフォームは、前記第1の基準が設けられて前記液体噴射ヘッド毎に形成された部材を有する
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記液体噴射ヘッドには、前記第1の基準に位置決めされた第2の基準がフォトリソグラフィーにより形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
請求項3に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第2の基準が前記ノズル列を基準とした位置に形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記液体噴射ヘッドは、前記ノズル列がフォトリソグラフィーにより形成されたノズルプレートを有し、
前記第2の基準は、前記ノズルプレートにフォトリソグラフィーにより形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔であり、
前記液体噴射ヘッドに設けられた挿通孔と前記第1の基準孔とに位置決めピンが挿通されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項7】
請求項3〜請求項5の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準孔及び第2の基準孔であり、
前記第1の基準孔と前記第2の基準孔とに位置決めピンが挿通されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面であり、
前記液体噴射ヘッドの面と前記第1の基準面とが当接している
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項9】
請求項3〜請求項5の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記第1の基準及び前記第2の基準は、フォトリソグラフィーにより形成された第1の基準面及び第2の基準面であり、
前記第1の基準面と前記第2の基準面とが当接している
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項10】
請求項3〜請求項9の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズル開口よりも液体吐出方向とは反対側の領域に前記第2の基準が設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記プラットフォームは、金属からなるサポート基板を有している
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項12】
請求項1〜請求項11の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドユニットにおいて、
前記プラットフォームは、金属からなる
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項13】
請求項1〜請求項12の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニットを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項14】
複数のノズル開口が並設されたノズル列を備える液体噴射ヘッドと、複数の前記液体噴射ヘッドを搭載したプラットフォームとを備える液体噴射ヘッドユニットの製造方法であって、
フォトリソグラフィーにより前記液体噴射ヘッド毎に第1の基準を前記プラットフォームに形成し、
複数の前記液体噴射ヘッドをそれぞれ前記第1の基準に位置決めして前記プラットフォームに取り付ける
ことを特徴とする液体噴射ヘッドユニットの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−30297(P2010−30297A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157356(P2009−157356)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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