説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置、並びにアクチュエーター装置

【課題】 駆動耐久性を向上した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置、並びにアクチュエーター装置を提供する。
【解決手段】 第1電極60上であって、圧電素子300の幅方向における圧電体層70の両端部に対応する領域には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部65が設けられ、補強部65は、圧電素子300の幅方向内側に向かって厚さが漸小する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に変位可能に設けられた圧電素子を有する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置、並びにアクチュエーター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッド等に用いられる圧電素子は、電気機械変換機能を呈する圧電材料からなる圧電体層を2つの電極で挟んだ構成となっている。なお、液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等がある。また、インクジェット式記録ヘッドに搭載される圧電素子としては、例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィー法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−163387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動時には、振動板の圧電素子の幅方向両端部付近に応力が集中し、振動板が破壊されて、駆動耐久性が低下してしまうということがあった。
【0005】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに限定されず、他の装置に搭載されるアクチュエーター装置においても同様に存在する。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、駆動耐久性を向上した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置、並びにアクチュエーター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板と、前記流路形成基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極とを具備し、各圧力発生室に対応する圧電素子と、を備え、前記第1電極上であって、前記圧電素子の幅方向における前記圧電体層の両端部に対応する領域には、前記第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部が設けられ、前記補強部は、前記圧電素子の幅方向内側に向かって厚さが漸小することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、圧電体層の両端部に対応する領域に第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部を設けることにより、圧電素子の幅方向端部における応力集中に対する第1電極の剛性が高まり、圧電素子の駆動耐久性を向上させることができる。また、補強部は、圧電素子の幅方向内側に向かって厚さが漸小することにより、圧電素子の幅方向端部における応力を分散させて、応力集中を抑制することができる。
【0008】
前記補強部は、ビッカース硬度Hvが1000以上の材料からなるのが好ましい。これによれば、効果的に圧電素子の駆動耐久性を向上させることができる。
【0009】
前記補強部から連続して前記圧電素子の幅方向外側に延設される腕部を具備するのが好ましい。これによれば、腕部がエッチングストップ層として機能し、第1電極の膜厚のばらつきを抑制することができる。これにより、圧電素子の共振周波数および変位量のばらつきを抑制したものとすることができる。
【0010】
前記腕部は、前記補強部よりも厚さが薄いのが好ましい。これによれば、第1電極の高い変位量を確保しつつ、圧電素子の駆動耐久性を向上させることができる。
【0011】
前記補強部と前記腕部の境界部分には凹部が設けられており、且つ該凹部の内面が曲面状となっているのが好ましい。これによれば、圧電素子の幅方向端部における第1電極にかかる応力をより効果的に分散させることができる。
【0012】
前記第1電極上であって前記圧電素子の幅方向中央部には、前記第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる第2の補強部が前記圧力発生室の長手方向に亘って設けられているのが好ましい。これによれば、圧電素子の長手方向の駆動耐久性を向上させることができる。
【0013】
前記第2の補強部は、前記圧電素子の幅方向外側に向かって厚さが漸小するのが好ましい。これによれば、第2の補強部に対する応力を分散させて、応力集中を抑制することができる。
【0014】
少なくとも前記圧電体層の側面を覆う絶縁体からなる被覆膜が設けられているのが好ましい。これによれば、大気中の水分に起因する圧電素子の破壊を抑制することができる。
【0015】
さらに本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、信頼性を向上した液体噴射装置を実現できる。
【0016】
さらに本発明の他の態様は、基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極とを具備する圧電素子を備え、前記第1電極上であって、前記圧電素子の幅方向における前記圧電体層の両端部に対応する領域には、前記第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部が設けられ、前記補強部は、前記圧電素子の幅方向内側に向かって厚さが漸小することを特徴とするアクチュエーター装置にある。
かかる態様では、圧電体層の両端部に対応する領域に第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部を設けることにより、圧電素子の幅方向端部における応力集中に対する第1電極の剛性が高まり、圧電素子の駆動耐久性を向上させることができる。また、補強部は、圧電素子の幅方向内側に向かって厚さが漸小することにより、圧電素子の幅方向端部における応力を分散させて、応力集中を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図。
【図3】実施形態1に係る記録ヘッドの要部断面図。
【図4】実施形態1に係る記録ヘッドの要部平面図。
【図5】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。
【図6】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。
【図7】実施形態1に係る記録ヘッドの製造方法を示す断面図。
【図8】実施形態1に係る記録装置の概略構成を示す斜視図。
【図9】実施形態2に係る記録ヘッドの圧電素子及び圧力発生室の要部断面図。
【図10】実施形態3に係る記録ヘッドの圧電素子及び圧力発生室の要部断面図。
【図11】実施形態4に係る記録ヘッドの圧電素子及び圧力発生室の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、流路形成基板の平面図及びそのA−A′断面図であり、図3は、図2(b)のB−B’断面図である。
【0019】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態ではシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には酸化膜からなる弾性膜50が形成されている。
【0020】
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のリザーバー部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバーの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。
【0021】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えばガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
【0022】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
【0023】
圧電体層70は、第1電極60上に形成される電気機械変換作用を示す圧電材料、特に圧電材料の中でもペロブスカイト構造の強誘電体材料からなる。圧電体層70は、ペロブスカイト構造の結晶膜を用いるのが好ましく、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等が好適である。
【0024】
図2及び3に示すように、本実施形態では、第1電極60の圧力発生室12の長手方向の端部(圧電素子300の長手方向の端部)を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電素子300の実質的な駆動部となる圧電体能動部の長手方向の端部(長さ)を規定している。また、第2電極80の圧力発生室12の短手方向の端部(圧電素子300の短手方向の端部)を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電体能動部の短手方向の端部(幅)を規定している。すなわち、圧電体能動部は、パターニングされた第1電極60及び第2電極80によって、圧力発生室12に相対向する領域にのみ設けられていることになる。さらに、本実施形態では、圧電体層70及び第2電極80が、図3に示すように、第2電極80側の幅が狭くなるようにパターニングされ、その側面は傾斜面となっている。
【0025】
ここで、圧電素子300を所定の基板上に設け、当該圧電素子300を駆動させる装置をアクチュエーター装置と称する。本実施形態では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。
【0026】
また、図3に示すように、第1電極60上であって、圧電素子300の幅方向における圧電体層70の両端部に対応する領域には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部65が設けられている。この補強部65は、第1電極60上であって圧電素子300の幅方向における圧電体層70の両端部に対応する領域、具体的には、第1電極60と圧電体層70との間に設けられている。そして、この補強部65から連続して圧電素子300の幅方向外側に腕部66が延設されている。このように補強部65と腕部66は一体であり、補強膜を構成している。
【0027】
言い換えれば、補強膜は、第1電極60と圧電体層70との間に設けられている補強部65と、補強部65から連続して圧電素子300の幅方向外側に延設する腕部66とからなり、圧電素子300に対向する領域に開口しており、端部が圧電体層70に入り込むように設けられている。
【0028】
上述した補強部65は、圧電素子300の幅方向内側に向かって厚さが漸小している。すなわち、補強膜の端部は、圧力発生室12側に向かって厚さが漸小するテーパー状となっている。
【0029】
なお、本実施形態では、腕部66は、圧力発生室12を並設方向に区画する隔壁11に対応する領域まで延設されている。
【0030】
この補強部65は、少なくとも圧電体層70の両端部に対応する領域に設ければよく、圧電素子300(圧電体能動部)の変位を阻害しない範囲であれば、圧電体能動部に対向する領域まで設けられていてもよい。
【0031】
ここで、図4は、流路形成基板上の補強部65、腕部66、及び後述する第2の補強部67の平面図である。
【0032】
図3及び図4に示すように、第1電極60上であって圧電素子300の幅方向中央部には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる第2の補強部67が圧力発生室12の長手方向に亘って設けられている。本実施形態では、第2の補強部67は、端部が圧力発生室12の長手方向端部よりも外側となるように設けた。また、第2の補強部67の両端部は、圧電素子300の幅方向外側に向かって厚さが漸小している。なお、本実施形態では、第2の補強部67は、端部が圧力発生室12の長手方向端部よりも外側となるように設けたが、第2の補強部67は、長手方向に亘って設けられていればよい。例えば、第2の補強部67は、端部が圧力発生室12の長手方向端部より外側であっても内側であってもよく、間欠的に設けられていてもよい。
【0033】
ここで、補強膜(補強部65及び腕部66)及び第2の補強部67は、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる。補強部65、腕部66及び第2の補強部67の材料は、ビッカース硬度Hvが1000以上であるのが好ましく、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、炭窒化チタン(TiCN)、窒化チタンアルミ(TiAlN)、酸化アルミニウム(Al)、二ホウ化チタン(TiB)、炭化バナジウム(VC)、炭化チタン(TiC)、五ホウ化二タングステン(W)、二ホウ化ニオブ(NbB)、炭化ジルコニウム(ZrC)、六ホウ化ランタン(LaB)、炭化タングステン(WC)、五ホウ化二モリブデン(Mo)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、二ホウ化クロム(CrB)、二炭化三クロム(Cr)、二ホウ化バナジウム(VB)、二ホウ化タンタル(TaB)、窒化チタン(TiN)、炭化ニオブ(NbC)、炭化二モリブデン(MoC)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化バナジウム(VN)、炭化タンタル(TaC)、窒化ニオブ(NbN)、窒化クロム(CrN)が挙げられる。補強部65及び腕部66と、第2の補強部67の材料は、後述するように同時に成形することができるという点から同一のものからなるのが好ましいが、異なるものであってもよい。また、補強部65、腕部66、及び第2の補強部67の厚さは、特に限定されるものではなく、振動板の変位量を大きく低下させない程度であればよい。本実施形態では、厚さ50nmのダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いた。
【0034】
このように、圧電体層70の幅方向両端部に対応する領域に、第1電極60よりも硬い材料からなる補強部65を設けることにより、圧電素子300の幅方向端部における応力集中に対する第1電極60の剛性が高まり、圧電素子300の駆動耐久性を向上させることができる。言い換えれば、圧電素子300の駆動を繰り返しても第1電極60を含む振動板が破壊される虞がなくなる。
【0035】
また、補強部65は、圧電素子300の幅方向内側に向かって厚さが漸小していることにより、圧電素子300の幅方向端部における応力を分散させて、第1電極60への応力集中を抑制することができる。これにより、第1電極60を含む振動板の破壊が抑制されて、圧電素子300の駆動耐久性を向上させることができる。また、圧電体層70との接触面積が小さくても第1電極60との接触面積を確保することができるため、圧電素子300の変位特性を低下させることなく、圧電素子300の駆動耐久性を向上させることができる。
【0036】
また、腕部66が圧力発生室12を並設方向に区画する隔壁に対応する領域まで延設されていることにより、圧電体層70や第2電極80をエッチングにより形成する際に、腕部66がエッチングストップ層として作用する。圧電体層70を腕部66が露出するまでエッチングすることにより実質的にエッチングが停止する。これにより、第1電極60がエッチングされることがなく、第1電極60の膜厚のばらつきを抑制することができる。したがって、流路形成基板10の面内での圧電素子300の共振周波数および変位量のばらつきを抑制することができる。これにより、各圧電素子300毎の液体の吐出量のばらつきがないものとなる。
【0037】
圧電素子300の幅方向中央部には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる第2の補強部67を設け、第2の補強部67が圧力発生室の長手方向に亘って設けられていることにより、圧電素子の長手方向の駆動耐久性を向上させることができる。言い換えれば、圧電素子300の駆動を繰り返しても第1電極60を含む振動板が破壊される虞がなくなる。
【0038】
また、第2の補強部67は、圧電素子300の幅方向外側に向かって厚さが漸小していることにより、第2の補強部67端部における応力を分散させて、第1電極60への応力集中を抑制することができる。これにより、第1電極60を含む振動板の破壊が抑制されて、駆動耐久性を向上させることができる。また、圧電体層70との接触面積が小さくても第1電極60との接触面積を確保することができるため、圧電素子300の変位特性を低下させることなく、圧電素子の駆動耐久性を向上させることができる。
【0039】
また、圧電素子300の少なくとも圧電体層70の側面が、耐湿性を有する絶縁材料からなる被覆膜200によって覆われている。本実施形態では、被覆膜200で圧電体層70の側面並びに第2電極80の側面及び上面の周縁部を覆い、被覆膜200は腕部66上面まで延設するようにした。すなわち、第2電極80の上面の略中心領域である主要部は、被覆膜200が設けられておらず、第2電極80の上面の主要部を開口する開口部201が設けられている。
【0040】
開口部201は、被覆膜200を厚さ方向に貫通して圧電素子300の長手方向に沿って矩形状に開口するものであり、例えば、流路形成基板10上の全面に亘って被覆膜200を形成した後、選択的にパターニングすることで形成することができる。
【0041】
このように圧電素子300を被覆膜200で覆うことにより、大気中の水分等に起因する圧電素子300の破壊を抑制することができる。ここで、このような被覆膜200の材料としては、耐湿性を有する材料であればよいが、例えば、酸化シリコン(SiO)、酸化タンタル(TaO)、酸化アルミニウム(AlO)等の無機絶縁材料を用いるのが好ましく、特に、無機アモルファス材料である酸化アルミニウム(AlO)、例えば、アルミナ(Al)を用いるのが好ましい。被覆膜200の材料として酸化アルミニウムを用いた場合、被覆膜200の膜厚を100nm程度と比較的薄くしても、高湿度環境下での水分透過を十分に防ぐことができる。本実施形態では、被覆膜200としてアルミナ(Al)を用いた。
【0042】
また、被覆膜200に開口部201を設けることにより、圧電素子300(圧電体能動部)の変位を阻害することなく、インク吐出特性を良好に保持することができる。
【0043】
この被覆膜200上には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が設けられている。リード電極90は、被覆膜200に設けられた連通孔202を介して一端部が第2電極80に接続されると共に、他端部が流路形成基板10のインク供給路14側まで延設され、延設された先端部は、後述する圧電素子300を駆動する駆動回路120と接続配線121を介して接続されている。
【0044】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、リザーバー100の少なくとも一部を構成するリザーバー部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このリザーバー部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバー100を構成している。
【0045】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0046】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0047】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0048】
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0049】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってリザーバー部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のリザーバー100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバー100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0050】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバー100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0051】
ここで、インクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図5〜図7を参照して説明する。なお、図5〜図7は、インクジェット式記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【0052】
まず、図5(a)に示すように、流路形成基板10が複数一体的に形成されるシリコンウェハーである流路形成基板用ウェハー110の表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)からなる二酸化シリコン膜51を形成する。次いで、図5(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。
【0053】
次いで、図5(c)に示すように、白金からなる第1電極60を絶縁体膜55上に形成する。第1電極60の形成方法は特に限定されないが、例えば、スパッタリング法、化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)などが挙げられる。この第1電極60の材料は、特に限定されず、白金、イリジウム、これらの材料以外の金属又は金属酸化物を用いることができる。本実施形態のように圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ない材料であることが望ましいため、第1電極60の材料としては白金、イリジウム等が好適に用いられる。
【0054】
次に、図5(d)に示すように、補強部65、腕部66、及び第2の補強部67を構成するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜68を第1電極60上に形成する。ダイヤモンドライクカーボン膜68の成膜方法は特に限定されないが、例えば、真空蒸着、スパッタリング法、イオンプレーティング等の化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)などが挙げられる。なお、ダイヤモンドライクカーボン膜68の厚さは、本実施形態では50nmとした。
【0055】
そして、図6(a)に示すように、ダイヤモンドライクカーボン膜68をパターニングして、補強部65、腕部66、及び第2の補強部67を形成する。具体的には、圧電素子(図示なし)の幅方向中央部を残して、圧電素子に対向する領域を除去する。このとき、補強部65の圧力発生室(図示なし)側、及び第2の補強部67の端面が傾斜するようにする。ダイヤモンドライクカーボン膜68のパターニングは、ダイヤモンドライクカーボン膜68上にフォトリソグラフィー法により所定形状に形成したレジストを介してイオンミリング等のドライエッチングにより行う。
【0056】
次に、図6(b)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層70と、例えば、イリジウムからなる第2電極80とを流路形成基板用ウェハー110の全面に形成する。
【0057】
なお、圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その組成は、圧電素子300の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよい。また、圧電体層70の形成方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成した。なお、圧電体層70の形成方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD法やスパッタリング法などの薄膜形成方法を利用して圧電体層70を形成するようにしてもよい。実際には、圧電体層70は、上述したゾル−ゲル法により厚さの薄い圧電体膜を形成する工程を複数回繰り返し行って、複数層の圧電体膜からなる厚さ1300nmの圧電体層70を形成する。
【0058】
次に、図6(c)に示すように、圧電体層70及び第2電極80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。圧電体層70及び第2電極80のパターニングは、フォトリソグラフィー法により第2電極80上に所定形状に形成したレジストを介してドライエッチングすることにより、一括して行うことができる。なお、圧電体層70を補強膜が露出されるまでエッチングすることにより実質的にエッチングが停止する。本実施形態では、補強膜が圧力発生室を並設方向に区画する隔壁に対応する領域にも設けられている、すなわち、第1電極60を覆うように設けられていることにより、第1電極60がオーバーエッチングされることがなく、第1電極60の膜厚のばらつきを抑制することができる。
【0059】
次に、レジストを除去した後、図6(d)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って被覆膜200を形成した後、被覆膜200を所定形状にパターニングすることにより、開口部201を形成する。このとき、図2に示す連通孔202を同時に形成する。
【0060】
次に、リード電極90を形成する。具体的には、図7(a)に示すように、流路形成基板用ウェハー110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなる金属膜を形成後、図7(b)に示すように、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎に金属膜をパターニングすることでリード電極90が形成される。
【0061】
そして、図示しないが、流路形成基板用ウェハー110の圧電素子300側に、シリコンウェハーであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハーを接着剤35によって接合する。なお、保護基板30には、リザーバー部31、圧電素子保持部32等が予め形成されている。また、保護基板30は、例えば、400μm程度の厚さを有するシリコン単結晶基板からなり、保護基板30を接合することで流路形成基板10の剛性は著しく向上することになる。その後、流路形成基板用ウェハー110を所定の厚さにする。
【0062】
次いで、流路形成基板用ウェハー110にマスク膜を新たに形成し、所定形状にパターニングする。そして、流路形成基板用ウェハー110をマスク膜を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
【0063】
その後は、流路形成基板用ウェハー110の圧力発生室12が開口する面側のマスク膜を除去し、流路形成基板用ウェハー110及び保護基板用ウェハーの外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハー110の保護基板用ウェハーとは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハーにコンプライアンス基板40を接合し、これら流路形成基板用ウェハー110等を、図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって上述した構造のインクジェット式記録ヘッドが製造される。
【0064】
また、これらのインクジェット式記録ヘッド1は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図8は、そのインクジェット式記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【0065】
図8に示すように、本実施形態の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置Iは、例えば、ブラック(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異なる色のインクが貯留される貯留室を有するインクカートリッジ(液体貯留手段)2が装着されたインクジェット式記録ヘッド1(以下、記録ヘッド)を具備する。記録ヘッド1はキャリッジ3に搭載されており、記録ヘッド1が搭載されたキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0066】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係る記録ヘッドの圧電素子及び圧力発生室の要部断面図である。本実施形態は、補強膜の形状以外は、実施形態1と同様であるので、同一作用を示す部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0067】
図9に示すように、第1電極60上であって、圧電素子300の幅方向における圧電体層70の両端部に対応する領域には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部65Aが設けられている。そして、この補強部65Aから連続して圧電素子300の幅方向外側に腕部66Aが延設されている。このように補強部65Aと腕部66Aは一体であり、補強膜を構成している。また、補強部65Aは、圧電素子300の幅方向内側に向かって厚さが漸小している。そして、腕部66Aは、補強部65Aよりも厚さが薄くなっている。
【0068】
また、第1電極60上であって圧電素子300の幅方向中央部には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる第2の補強部67が圧力発生室12の長手方向に亘って設けられている。
【0069】
このように、補強膜の腕部66Aを薄くすることにより、実施形態1よりも振動板の拘束力を減少させることができ、実施形態1と比較して振動板の変位量を向上させることができる。
【0070】
補強部65Aを設けることにより、圧電素子300の幅方向端部における応力集中に対する第1電極60の剛性が高くなり駆動耐久性を向上させることができると共に、変位特性に優れたものとすることができる。また、圧電素子300の幅方向端部における応力を分散させて、第1電極60への応力集中を抑制することができる。また、第2の補強部67を設けることにより、圧電素子300の長手方向の駆動耐久性を向上させることができる。また、補強膜の腕部66Aがエッチングストップ層として機能し、第1電極60がエッチングされることがない。したがって、第1電極60の膜厚のばらつきを抑制することができる。
【0071】
本実施形態の補強膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、圧電体層70及び第2電極80をパターニングする際に、補強膜の厚さが半分になるまでエッチングを行うことにより、腕部66Aを形成することができる。
【0072】
(実施形態3)
図10は、実施形態3に係る記録ヘッドの圧電素子及び圧力発生室の要部断面図である。本実施形態は、補強膜の形状以外は、実施形態1と同様であるので、同一作用を示す部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0073】
図10に示すように、第1電極60上であって、圧電素子300の幅方向における圧電体層70の両端部に対応する領域には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部65Bが設けられている。本実施形態では、圧電素子300の幅方向における圧電体層70の両端部に対応する領域に補強部65Bを設け、腕部を設けていない。補強部65Bは、第1電極60と圧電体層70との間に設けられて、圧電素子300の幅方向内側に向かって厚さが漸小している。また、かかる補強部65Bは、圧電素子300の幅方向外側に向かって厚さが漸小している。このような構成とすることにより、振動板の拘束力を実施形態2よりもさらに減少させることができ、変位量を向上させることができる。すなわち、変位特性がさらに優れたものとすることができる。
【0074】
また、第1電極60上であって圧電素子300の幅方向中央部には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる第2の補強部67が圧力発生室12の長手方向に亘って設けられている。
【0075】
補強部65Bを設けることにより、圧電素子300の幅方向端部における応力集中に対する第1電極60の剛性が高くなり、圧電素子300の駆動耐久性を向上させることができる。また、圧電素子300の幅方向端部における応力を分散させて、第1電極60への応力集中を抑制することができる。また、第2の補強部67を設けることにより、圧電素子300の長手方向の駆動耐久性を向上させることができる。
【0076】
本実施形態の補強部65Bの製造方法は特に限定されないが、例えば、圧電体層70及び第2電極80をパターニングする際に、同時に補強部65Bを構成するダイヤモンドライクカーボン膜もパターニングして、第1電極60が露出するようにすればよい。
【0077】
(実施形態4)
図11は、実施形態4に係る記録ヘッドの圧電素子及び圧力発生室の要部断面図である。本実施形態は、補強膜の形状以外は、実施形態1と同様であるので、同一作用を示す部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0078】
図11に示すように、第1電極60上であって、圧電素子300の幅方向における圧電体層70の両端部に対応する領域には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部65Cが設けられている。そして、この補強部65Cから連続して圧電素子300の幅方向外側に腕部66Cが延設されている。このように補強部65Cと腕部66Cは一体であり、補強膜を構成している。すなわち、補強膜は、第1電極60と圧電体層70との間に設けられている補強部65Cと、補強部から連続して圧電素子300の幅方向外側に延設する腕部66Cとからなる。また、補強部65Cは、圧電素子300の幅方向内側に向かって厚さが漸小している。そして、補強膜は、補強部65Cと腕部66Cの境界部分に凹部が設けられている。この凹部は、その内面が曲面状に設けられている。
【0079】
また、第1電極60上であって圧電素子300の幅方向中央部には、第1電極60を形成する膜よりも硬い材料からなる第2の補強部67が圧力発生室12の長手方向に亘って設けられている。
【0080】
このように、圧電体層70に対応する領域との境界部分に凹部が設けられており、且つ該凹部の内面が曲面状となっていることにより、圧電素子300の幅方向端部における振動板への応力をさらに効果的に分散させることができる。これにより、第1電極60を含む振動板の破壊がさらに抑制されて、圧電素子300の駆動耐久性をより向上させることができる。
【0081】
さらに、本実施形態では、凹部の内面を曲面状に形成したため、被覆膜200の補強膜上への付きまわりを向上して、被覆膜200によって圧電素子300を確実に保護して、圧電素子300が破壊されるのを確実に防止することができる。
【0082】
補強部65Cを設けることにより、圧電素子300の幅方向端部における応力集中に対する第1電極60の剛性が高くなり、駆動耐久性を向上させることができる。また、第2の補強部67を設けることにより、圧電素子300の長手方向の駆動耐久性を向上させることができる。また、補強膜の腕部66Cがエッチングストップ層として機能し、第1電極60がエッチングされることがない。したがって、第1電極60の膜厚のばらつきを抑制することができる。
【0083】
さらに、本実施形態では、凹部の内面を曲面状に設けるようにしたため、また、圧電素子300の幅方向端部における応力をさらに効果的に分散させて、第1電極60への応力集中をさらに抑制することができる。これにより、駆動耐久性をさらに向上させることができる。
【0084】
本実施形態の補強膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、圧電体層70及び第2電極80をパターニングする際に、同時に補強膜に至るまでドライエッチングすることで、補強膜の補強部65Cと腕部66Cとの境界部分に凹部を形成する。このような凹部は、ドライエッチングする際の電圧、温度等を適宜変更することで積極的に形成することができる。
【0085】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、流路形成基板10としてシリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス基板、MgO基板等においても本発明は有効である。また、振動板の最下層に二酸化シリコンからなる弾性膜50を設けるようにしたが、振動板の構成は、特にこれに限定されるものではない。
上述した実施形態では、被覆膜200を設けたが、設けなくてもよい。
また、実施形態1〜4では、第2の補強部67を設けたがいずれも設けなくてもよい。
【0086】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0087】
なお、上述の実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0088】
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子に限られず、他の装置に搭載される圧電素子にも適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバー部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 第1電極、 65 補強部、 66 腕部、 67 第2の補強部、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 リザーバー、 120 駆動回路、 121 接続配線、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成された流路形成基板と、
前記流路形成基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極とを具備し、各圧力発生室に対応する圧電素子と、を備え、
前記第1電極上であって、前記圧電素子の幅方向における前記圧電体層の両端部に対応する領域には、前記第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部が設けられ、
前記補強部は、前記圧電素子の幅方向内側に向かって厚さが漸小することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記補強部は、ビッカース硬度Hvが1000以上の材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記補強部から連続して前記圧電素子の幅方向外側に延設される腕部を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記腕部は、前記補強部よりも厚さが薄いことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記補強部と前記腕部の境界部分には凹部が設けられており、且つ該凹部の内面が曲面状となっていることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第1電極上であって前記圧電素子の幅方向中央部には、前記第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる第2の補強部が前記圧力発生室の長手方向に亘って設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記第2の補強部は、前記圧電素子の幅方向外側に向かって厚さが漸小することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項8】
少なくとも前記圧電体層の側面を覆う絶縁体からなる被覆膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項10】
基板上に設けられた第1電極と、前記第1電極上に設けられた圧電体層と、前記圧電体層上に設けられた第2電極とを具備する圧電素子を備え、
前記第1電極上であって、前記圧電素子の幅方向における前記圧電体層の両端部に対応する領域には、前記第1電極を形成する膜よりも硬い材料からなる補強部が設けられ、
前記補強部は、前記圧電素子の幅方向内側に向かって厚さが漸小することを特徴とするアクチュエーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−247511(P2010−247511A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183904(P2009−183904)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】